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  • 特許-易接着性ポリアミドフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】易接着性ポリアミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20241106BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B32B27/34
B65D30/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020555087
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2020023106
(87)【国際公開番号】W WO2021024615
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2019142893
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019144378
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020029081
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020029082
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】濱 貢介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 考道
(72)【発明者】
【氏名】山本 茂知
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-047972(JP,A)
【文献】特開2003-251772(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084845(WO,A1)
【文献】特開2008-149707(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/34
B65D 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の基材層(A層)の少なくとも片面に下記の機能層(B層)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/mのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有することを特徴とする易接着性ポリアミドフィルム。
基材層(A層)はポリアミド6樹脂99~70質量%と少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂1~30質量%を含み、ポリアミド系エラストマーを含まず、機能層(B層)はポリアミド6樹脂70質量%以上を含む。
【請求項2】
前記二軸延伸ポリアミドフィルム中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が1~15%であることを特徴とする前記請求項1に記載の易接着性ポリアミドフィルム。
【請求項3】
少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂が、ポリアミド11、ポリアミド410、ポリアミド610、及びポリアミド1010からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の易接着性ポリアミドフィルム。
【請求項4】
下記の(a)及び(b)を満足することを特徴とする請求項1~いずれかに記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(a)ゲルボフレックステスターを用いたひねり屈曲試験を温度1℃で1000回実施した時のゲルボピンホール欠点数が10個以下、
(b)耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上。
【請求項5】
ポリエチレン系シーラントフィルムと貼り合わせた後のラミネート強度が4.0N/15mm以上であることを特徴とする請求項1~いずれかに記載の易接着性ポリアミドフィルム。
【請求項6】
請求項1~いずれかに記載の易接着性ポリアミドフィルムにシーラントフィルムを積層した積層フィルム。
【請求項7】
請求項に記載された積層フィルムを用いた包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性及び耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性に優れ、かつシーラントフィルムとの耐水接着強度にも優れ、バイオマス由来の原料を用いたカーボンニュートラルな易接着性ポリアミドフィルムに関するものである。本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、食品包装用フィルムなどに好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリアミド6に代表される脂肪族ポリアミドからなる二軸延伸フィルムは、耐衝撃性と耐屈曲ピンホール性に優れており、各種の包装材料フィルムとして広く使用されている。
【0003】
また、スープ、調味料等の液体充填包装向けに、耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性をさらに向上させるため、脂肪族ポリアミドに各種エラストマー(ゴム成分)を混合し、より柔軟化して耐屈曲ピンホール性を向上した二軸延伸ポリアミドフィルムが広く使用されている。
【0004】
上記の耐屈曲ピンホール性を向上させる手段として脂肪族ポリアミドにポリアミド系エラストマーを混合したフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このフィルムは、低温環境下での耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性が良好であり、低温環境下でも屈曲疲労によるピンホールが発生にくい。
【0005】
しかし、ピンホールは、屈曲によって発生する他に摩擦(擦れ)によっても発生する。屈曲によるピンホールと摩擦によるピンホールの改善方法は相反する場合が多い。例えば、フィルムの柔軟性を高くすると、屈曲ピンホールは発生しにくくなるが、柔らかくなった分だけ摩擦によるピンホールが生じ易くなる傾向がある。これに対して二軸延伸ポリアミドフィルムの外面に表面コート剤を設けることによって、耐屈曲性や耐摩擦ピンホール性に優れた包装用の積層体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では摩擦ピンホールの発生防止効果が少ない。また、コーティング工程が必要となる。
更に、脂肪族ポリアミドにポリアミド系エラストマーを混合したフィルムの場合、フィルム製造時に添加したポリアミド系エラストマーが熱劣化するために、ダイスのリップ出口に目ヤニと呼ばれる劣化物を生成しやすい。そして、劣化物はフィルム厚みの精度を悪化させる原因になることがわかった。また、劣化物はそれ自体が落下することで不良製品を生み、フィルム連続生産時の生産効率を低下させる問題があった。
【0006】
また、ポリアミドフィルムをシーラントフィルムとラミネートしたフィルムを液体スープ袋や水物用袋に使用する場合、ラミネートしたフィルム間の接着強度(ラミネート強度とも言う)が十分に高いことが要求される。
【0007】
一方、近年、循環型社会の構築のため、材料分野において化石燃料の原料に代わりバイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラル(環境中での二酸化炭素の排出量と吸収量が同じであるので温室効果ガスである二酸化炭素の増加を抑制できる)な原料である。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、汎用高分子材料であるポリエステルをこれらバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0008】
例えば、特許文献3では、ポリエステルフィルムの分野において、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを含んでなる樹脂組成物であって、ジオール成分単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸成分単位が石油由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50~95質量%含んでなることを特徴とする樹脂組成物及びフィルムが開示されている。
かかる技術によれば、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールに代えて、バイオマス由来のエチレングリコールを用いて製造されたポリエステルであっても、従来の化石燃料由来のエチレングリコールを用いた場合と同等の機械的特性が得られるというものである。
このような背景の中、ポリアミドフィルムにおいても、バイオマス由来の原料を用いたカーボンニュートラルな素材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平11-254615号公報
【文献】特開2001-205761号公報
【文献】特開2012―097163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み創案されたものである。本発明の目的は、耐衝撃性及び耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性に優れ、かつシーラントフィルムとの耐水接着強度にも優れ、バイオマス由来の原料を用いたカーボンニュートラルな易接着性二軸延伸ポリアミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
[1] ポリアミド6樹脂99~70質量%と少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂1~30質量%を含む二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/mのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有することを特徴とする易接着性ポリアミドフィルム。
[2] 下記の基材層(A層)の少なくとも片面に下記の機能層(B層)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/mのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有することを特徴とする易接着性ポリアミドフィルム。
基材層(A層)はポリアミド6樹脂99~70質量%と少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂1~30質量%を含み、機能層(B層)はポリアミド6樹脂70質量%以上を含む。
[3] 前記二軸延伸ポリアミドフィルム中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が1~15%であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の易接着性ポリアミドフィルム。
[4] 少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂が、ポリアミド11、ポリアミド410、ポリアミド610、及びポリアミド1010からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアミド樹脂であることを特徴とする[1]~[3]いずれかに記載の易接着性ポリアミドフィルム。
[5] 下記の(a)及び(b)を満足することを特徴とする[1]~[4]いずれかに記載の易接着性ポリアミドフィルム。
(a)ゲルボフレックステスターを用いたひねり屈曲試験を温度1℃で1000回実施した時のゲルボピンホール欠点数が10個以下、
(b)耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上。
[6] ポリエチレン系シーラントフィルムと貼り合わせた後のラミネート強度が4.0N/15mm以上であることを特徴とする[1]~[5]いずれかに記載の易接着性ポリアミドフィルム。
[7] [1]~[6]いずれかに記載の易接着性ポリアミドフィルムにシーラントフィルムを積層した積層フィルム。
[8] [7]に記載された積層フィルムを用いた包装袋。
【発明の効果】
【0012】
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、ポリアミド6樹脂を主成分とし、特定のバイオマス由来の原料から重合されたポリアミド樹脂をブレンドすることおよび特定の製膜条件を採用することで、耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性、耐摩擦ピンホール性、シーラントフィルムとの接着性が発現するとともに、カーボンニュートラルなポリアミドフィルムが得られる。
また、本発明ではさらに、従来の耐屈曲ピンホール性を向上のために添加したポリアミド系エラストマーと異なり、ダイス内部でポリアミド系エラストマーが劣化することがないので、長時間にわたり、ダイス内面への劣化物の付着やダイスリップ出口への目ヤニの付着を抑制できる。それによって、フィルムの厚み斑の悪化を防止できる。
また、ダイス内面やダイスリップ出口へ劣化物が付着すると厚み斑が悪化するので、生産を止めてダイスのリップを掃除する必要がある。本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、長時間の連続生産を可能にすることができる。
更に、二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/mのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を積層することで、シーラントフィルムとラミネートしたフィルムを液体スープ袋や水物用袋に使用する場合、ラミネートしたフィルム間の接着強度(ラミネート強度とも言う)が高いので、袋の破れの少ない包装袋が提供できる。特に耐水ラミネート強度(水付着条件下でのラミネート強度)が高いのでボイル処理やレトルト処理に使用しても袋の破れの少ない包装袋が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】耐摩擦ピンホール性評価装置の概略図
【符号の説明】
【0014】
1:堅牢度試験機のヘッド部
2:段ボール板
3:サンプル保持用の台紙
4:4つ折りしたフィルムサンプル
5:擦る振幅方向
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の易接着性ポリアミドフィルムを詳細に説明する。
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、ポリアミド6樹脂99~70質量%と少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂1~30質量%からなる二軸延伸ポリアミドフィルム又はポリアミド6樹脂99~70質量%と少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂1~30質量%からなる基材層(A層)の少なくとも片面に下記の機能層(B層)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/mのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有することを特徴とする易接着性ポリアミドフィルムである。
【0016】
[二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)]
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)は、ポリアミド6樹脂を70質量%以上含むことで、ポリアミド6樹脂からなる二軸延伸ポリアミドフィルムが本来持つ、優れた衝撃強度などの機械的強度や酸素などのガスバリア性が得られる。
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)は、少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂を1~30質量%含むことで、耐屈曲ピンホール性が向上する。従来使用されている耐屈曲ピンホール性の改良剤であるポリアミド系エラストマーやポリオレフィン系エラストマーの場合、耐屈曲ピンホール性は向上するが、耐摩擦ピンホール性が悪くなる。少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂を1~30質量%含むことで、耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性が同時に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムが得られる。また、カーボンニュートラルな地上の二酸化炭素の増減に影響が少ないフィルムが得られる。
【0017】
[ポリアミド6樹脂]
本発明に使用するポリアミド6樹脂は、通常、ε-カプロラクタムの開環重合によって製造される。開環重合で得られたポリアミド6樹脂は、通常、熱水でラクタムモノマーを除去した後、乾燥してから押出し機で溶融押出しされる。
ポリアミド6樹脂の相対粘度は、1.8~4.5であることが好ましく、より好ましくは、2.6~3.2である。相対粘度が1.8より小さい場合は、フィルムの衝撃強度が不足する。4.5より大きい場合は、押出機の負荷が大きくなり延伸前の未延伸フィルムを得るのが困難になる。
【0018】
[少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂]
本発明に使用する、少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド11、ポリアミド410、ポリアミド610、及びポリアミド1010、ポリアミドMXD10樹脂、ポリアミド11・6T共重合樹脂などが挙げられる。
【0019】
ポリアミド11は、炭素原子数11である単量体がアミド結合を介して結合された構造を有するポリアミド樹脂である。通常、ポリアミド11は、アミノウンデカン酸又はウンデカンラクタムを単量体として用いて得られる。とりわけアミノウンデカン酸は、ヒマシ油から得られる単量体であるため、カーボンニュートラルの観点から望ましい。これらの炭素原子数が11である単量体に由来する構成単位は、ポリアミド11内において全構成単位のうちの50%以上が好ましく、80%以上が更に好ましく、100%であってもよい。
【0020】
上記ポリアミド11としては、通常、前述したアミノウンデカン酸の重合によって製造される。重合で得られたポリアミド11は、場合によって熱水でラクタムを除去した後、乾燥してから押出し機で溶融押出しされる。
ポリアミド11の相対粘度は、1.8~4.5であることが好ましく、より好ましくは、2.4~3.2である。相対粘度が1.8より小さい場合は、フィルムの衝撃強度が不足する。4.5より大きい場合は、押出機の負荷が大きくなり延伸前の未延伸フィルムを得るのが困難になる。
【0021】
上記ポリアミド610は、炭素原子数6であるジアミンと炭素原子数10であるジカルボン酸とが重合された構造を有するポリアミド樹脂である。通常、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸が利用される。このうちセバシン酸は、ヒマシ油から得られる単量体であるため、カーボンニュートラルの観点から望ましい。これらの炭素原子数6である単量体に由来する構成単位と、炭素原子数10である単量体に由来する構成単位とは、PA610内においてその合計が、全構成単位のうちの50%以上が好ましく、80%以上が更に好ましく、100%であってもよい。
【0022】
上記ポリアミド1010は、炭素原子数10であるジアミンと炭素原子数10であるジカルボン酸とが重合された構造を有するポリアミド樹脂である。通常、ポリアミド1010には、1,10-デカンジアミン(デカメチレンジアミン)とセバシン酸とが利用される。デカメチレンジアミン及びセバシン酸は、ヒマシ油から得られる単量体であるため、カーボンニュートラルの観点から望ましい。これらの炭素原子数10であるジアミンに由来する構成単位と、炭素原子数10であるジカルボン酸に由来する構成単位とは、PA1010内においてその合計が、全構成単位のうちの50%以上が好ましく、80%以上が更に好ましく、100%であってもよい。
【0023】
上記ポリアミド410は、炭素数4である単量体と炭素原子数10であるジアミンとが共重合された構造を有するポリアミド樹脂である。通常ポリアミド410には、セバシン酸とテトラメチレンジアミンとが利用される。セバシン酸としては、環境面から植物油のヒマシ油を原料とするものが好ましい。ここで用いるセバシン酸としては、ヒマシ油から得られるものが環境保護の観点(特にカーボンニュートラルの観点)から望ましい。
【0024】
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)における、少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂の含有量の上限は30質量%であり、20質量%がより好ましい。少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂の含有量が30質量%を超えると、溶融フィルムをキャスティングする時に溶融フィルムが安定しなくなり均質な未延伸フィルムを得るのが難しくなる。
【0025】
[副材料、添加剤]
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)には、他の熱可塑性樹脂、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤や防曇剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の各種の添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0026】
<他の熱可塑性樹脂>
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記のポリアミド6と少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂の他に熱可塑性樹脂を含むことができる。例えば、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂、ポリアミドMXD6樹脂、などのポリアミド系樹脂が挙げられる。
必要に応じてポリアミド系以外の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート等のポリエステル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体等を含有させてもよい。
これらの熱可塑性樹脂の原料はバイオマス由来であると、地上の二酸化炭素の増減に影響を与えないので、環境負荷を低減できるので好ましい。
【0027】
<滑剤>
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)には、滑り性を良くして取扱い易くするために、滑剤として微粒子や脂肪酸アミドなどの有機潤滑剤を含有させることが好ましい。
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムは、滑り性を良くすることで、摩擦による包装袋の破袋を減少させる効果もある。
【0028】
前記微粒子としては、シリカ、カオリン、ゼオライト等の無機微粒子、アクリル系、ポリスチレン系等の高分子系有機微粒子等の中から適宜選択して使用することができる。なお、透明性と滑り性の面から、シリカ微粒子を用いることが好ましい。
前記微粒子の好ましい平均粒子径は0.5~5.0μmであり、より好ましくは1.0~3.0μmである。平均粒子径が0.5μm未満であると、良好な滑り性を得るのに多量の添加量が要求される。一方、5.0μmを超えると、フィルムの表面粗さが大きくなりすぎて外観が悪くなる傾向がある。
【0029】
前記シリカ微粒子を使用する場合、シリカの細孔容積の範囲は、0.5~2.0ml/gであると好ましく、0.8~1.6ml/gであるとより好ましい。細孔容積が0.5ml/g未満であると、ボイドが発生し易くなりフィルムの透明性が悪化し、細孔容積が2.0ml/gを超えると、微粒子による表面の突起ができにくくなる傾向がある。
【0030】
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)には、滑り性を良くする目的で脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを含有させることができる。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドとしては、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドなどが挙げられる。
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムの脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量は、好ましくは0.01~0.40質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.30質量%である。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量が上記範囲未満となると、滑り性が悪くなる傾向がある。一方、上記範囲を越えると、濡れ性が悪くなる傾向がある。
【0031】
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)には、滑り性を良くする目的でポリアミドMXD6樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂などのポリアミド樹脂を添加することができる。特にポリアミドMXD6樹脂が好ましく、1~10質量%添加することが好ましい。
【0032】
<酸化防止剤>
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)には、酸化防止剤を含有させることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましい。フェノール系酸化防止剤は、完全ヒンダードフェノール系化合物又は部分ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。例えば、テトラキス-〔メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が挙げられる。
上記フェノール系酸化防止剤を含有させることにより、二軸延伸ポリアミドフィルムの製膜操業性が向上する。特に、原料にリサイクルしたフィルムを用いる場合、樹脂の熱劣化が起こりやすく、これに起因する製膜操業不良が発生し、生産コスト上昇を招く傾向にある。これに対して、酸化防止剤を含有させることで、樹脂の熱劣化が抑制され操業性が向上する。
【0033】
[機能層(B層)]
本発明における一つの実施態様として、基材層(A層)の少なくとも片面に機能層(B層)を積層して、表面の特性を改善することができる。
B層は、ポリアミド6樹脂を70質量%以上含む層である。
B層は、ポリアミド6樹脂を70質量%以上含むことで優れた衝撃強度などの機械的強度や酸素などのガスバリア性を持った二軸延伸ポリアミドフィルム得られる。
ポリアミド6樹脂としては、前記のA層で使用するポリアミド6樹脂と同様のものを使用できる。
【0034】
B層には、他の熱可塑性樹脂、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤や防曇剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の各種の添加剤をB層の表面に持たせる機能に応じて含有させることができる。
B層を包装袋の外側に用いる場合は、耐摩擦ピンホール性が必要なので、ポリアミド系エラストマーやポリオレフィン系エラストマーのような軟らかい樹脂やボイドを多量に発生させる物質を含有させることは好ましくない。
【0035】
B層には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記のポリアミド6の他に熱可塑性樹脂を含むことができる。例えば、ポリアミドMXD6樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂などのポリアミド系樹脂が挙げられる。
必要に応じてポリアミド系以外の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート等のポリエステル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体等を含有させてもよい。
【0036】
B層には、フィルムの滑り性を良くするために、滑剤として微粒子や有機潤滑剤などを含有させることが好ましい。
滑り性を良くすることで、フィルムの取扱い性が向上するとともに、擦れによる包装袋の破袋が減少する。
【0037】
前記の微粒子としては、シリカ、カオリン、ゼオライト等の無機微粒子、アクリル系、ポリスチレン系等の高分子系有機微粒子等の中から適宜選択して使用することができる。なお、透明性と滑り性の面から、シリカ微粒子を用いることが好ましい。
【0038】
前記の微粒子の好ましい平均粒子径は0.5~5.0μmであり、より好ましくは1.0~3.0μmである。平均粒子径が0.5μm未満であると、良好な滑り性を得るのに多量の添加量が要求される。一方、5.0μmを超えると、フィルムの表面粗さが大きくなりすぎて外観が悪くなる傾向がある。
【0039】
前記のシリカ微粒子を使用する場合、シリカの細孔容積の範囲は、0.5~2.0ml/gであると好ましく、0.8~1.6ml/gであるとより好ましい。細孔容積が0.5ml/g未満であると、ボイドが発生し易くなりフィルムの透明性が悪化する。細孔容積が2.0ml/gを超えると、微粒子による表面の突起ができにくくなる傾向がある。
【0040】
前記の有機潤滑剤としては、脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドを含有させることができる。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドとしては、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドなどが挙げられる。
B層に添加する脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量は、好ましくは0.01~0.40質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.30質量%である。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量が上記範囲未満となると、滑り性が悪くなる傾向がある。一方、上記範囲を越えると、濡れ性が悪くなる傾向がある。
【0041】
B層には、フィルムの滑り性を良くする目的でポリアミド6以外のポリアミド系樹脂、例えば、ポリアミドMXD6樹脂、ポリアミド11、ポリアミド12樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂などを添加することができる。特にポリアミドMXD6樹脂が好ましく、1~10質量%添加することが好ましい。1質量%未満ではフィルムの滑り性改善効果が少ない。10質量%より多い場合は、フィルムの滑り性改善効果が飽和する。
ポリアミドMXD6樹脂はメタキシリレンジアミンとアジピン酸の重縮合で製造される。
ポリアミドMXD6の相対粘度は、1.8~4.5であることが好ましく、より好ましくは、2.0~3.2である。相対粘度が1.8より小さい場合や4.5より大きい場合は、押出機でポリアミド樹脂との混練がしにくい場合がある。
【0042】
B層にフィルムの滑り性を良くする目的で、微粒子、有機潤滑剤、又はポリアミドMXD6樹脂などのポリアミド系樹脂を添加する場合、基材層(A層)へのこれらの添加量を少なくすると、透明性に優れ、かつ滑り性も優れるフィルムが得られるので、好ましい。
【0043】
また、B層には接着性を良くする目的でポリアミド6以外のポリアミド系樹脂を添加することもできる。この場合、ポリアミド6・12共重合樹脂、ポリアミド6・66共重合樹脂などの共重合ポリアミド樹脂が好ましい。
【0044】
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムのB層には、前記のA層と同様に酸化防止剤を含有させることができる。
【0045】
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)及び機能層(B層)に、滑剤や酸化防止剤などの副材料や添加剤を添加する方法としては、樹脂重合時や押出し機での溶融押出し時に添加できる。高濃度のマスターバッチを作製してマスターバッチをフィルム生産時にポリアミド樹脂に添加してもよい。こうした公知の方法により行うことができる。
【0046】
[二軸延伸ポリアミドフィルムの厚み構成]
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、包装材料として使用する場合、通常100μm以下であり、一般には5~50μmの厚みのものが使用され、特に8~30μmのものが使用される。
【0047】
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムの各層の厚み構成において、B層の厚みがフィルム総厚みの大部分を占めた場合、耐屈曲ピンホール性が低下する。従って、本発明において、A層の厚みを、A層とB層の合計厚みの50~93%、特に70~93%とすることが好ましい。
【0048】
[接着改質層]
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/mのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有する。
前記接着改質層は、フィルム製造工程でフィルムをミルロールとして巻き取る前に塗布液を塗布・乾燥して設けられることが好ましい。
塗布液の塗布は、未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、及び/又は2軸延伸フィルムに行うことができる。フィルムを逐次2軸延伸法で製造する場合は、通常、1軸延伸フィルムに塗布液を塗布し乾燥する。フィルムを同時2軸延伸で製造する場合は、通常、未軸延伸フィルムに塗布液を塗布し乾燥する。
【0049】
本発明おける接着改質層を設けるための塗布液は、フィルム製造工程でフィルムをミルロールとして巻き取る前に塗布液を塗布・乾燥して塗布膜を設けるので、製造における安全性と衛生性を確保するために、樹脂の水系分散体を用いることが好ましい。
【0050】
<接着改質層に用いるポリエステル樹脂>
本発明における接着改質層としてポリエステル樹脂を設ける場合、ポリエステル樹脂としては共重合ポリエステル系樹脂を選ぶことができる。共重合ポリエステル系樹脂とはジカルボン酸成分とジオール成分及びその他のエステル形成成分の重縮合物である。共重合ポリエステル系樹脂に構成成分として含有されるジカルボン酸成分としては、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸などの不飽和ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0051】
上記ジカルボン酸成分の他に、水分散性を付与するため、5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホイソフタル酸、4-スルホナフタレン-2,6-ジカルボン酸、5(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸の塩類を用いることができる。なかでも、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を1~10モル%の範囲で使用するのが好ましい。
【0052】
共重合ポリエステル系樹脂に含有されるジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタールなどの脂環族ジオール、4,4’-ビス(ヒドロキシエチル)ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、さらにビス(ポリオキシエチレングリコール)ビスフェノールエーテルなどを挙げることができる。
ポリエステル樹脂は、水系分散体の塗布液として使用することが好ましい。
【0053】
本発明における接着改質層としてポリエステル樹脂を設ける場合、ポリエステル樹脂としては後述のアクリルグラフト共重合ポリエステルが耐水ラミネート強度を高くできるので特に好ましい。
【0054】
<接着改質層に用いるポリウレタン樹脂>
本発明における接着改質層としてポリウレタン樹脂を設ける場合、ポリウレタン樹脂としては、例えば、活性水素を2個以上有するポリオール類と有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるものが挙げられる。
ポリオール類としては、たとえば、飽和ポリエステルポリオール類;ポリエーテルポリオール類(たとえばポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど);アミノアルコール類(たとえばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど);不飽和ポリエステルポリオール類(たとえば不飽和多価カルボン酸単独あるいはこれと飽和多価カルボン酸との混合物と、飽和多価アルコール類と不飽和多価アルコール類との混合物とを重縮合させて得られるもの)、ポリブタジエンポリオール類(たとえば1,2-ポリブタジエンポリオール、1,4-ポリブタジエンポリオールなど)、アクリルポリオール類(各種アクリル系モノマーとヒドロキシル基を有するアクリル酸系モノマーとを共重合させて得られるヒドロキシル基を側鎖に有するアクリルポリオール類)などの不飽和二重結合を有するポリオール類を挙げることができる。
有機ポリイソシアネートとしては、たとえば、芳香族ポリイソシアネート類(たとえばジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなど)、脂肪族ポリイソシアネート類(たとえばへキサメチレンジイソシアネートなど)、脂環族ポリイソシアネート類(たとえばイソホロンジイソシアネートなど)、芳香族・脂肪族ポリイソシアネート類(たとえばキリレンジイソシアネート)、さらにこれらのイソシアネート類と低分子量ポリオールとを予め反応させて得られるポリイソシアネート類を挙げることができる。
【0055】
このポリウレタン樹脂の製造は公知の方法により行うことができる。製造の際には生成プレポリマー中に未反応のイソシアネート基が2個以上存在するようにする必要がある。このイソシアネート基はブロック化することが好ましく、特に水系塗液を調製するときはこのブロック化は必須である。このブロック化はイソシアネートのブロック化として良く知られているものであり、加熱によって遊離イソシアネート基を再生できるものである。ブロック化剤としては、たとえば、重亜硫酸塩類、アルコール類、オキシム類、活性メチレン化合物、イミダゾール類、ラクタム、イミン化合物、アミド化合物、イミド化合物などを挙げることができる。
【0056】
これらブロック化剤とポリウレタンプレポリマー中のイソシアネート基との反応は、常温~100℃の温度で行うことができ、必要に応じてウレタン化触媒を用いることができる。ここでポリウレタンプレポリマーに安定な水分散性、水溶性を付与するために分子内に親水性基を導入するとよい。該親水性基としては、─SOM(ここで、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属である)、-OH、-COOR(ここでRはアンモニア、第三級アミンの残基である)などが例示される。これらのうち特にアンモニア又は第三級アミンで中和されたカルボキシル基が好ましい。アンモニア又は第三級アミンで中和されたカルボキシル基をポリウレタンプレポリマー中に導入するには、たとえば、ポリウレタンプレポリマー合成時の反応原料の一つとしてカルボキシル基含有ポリヒドロキシ化合物を用いる方法、未反応イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基に水酸基含有カルボン酸やアミノ基含有カルボン酸を反応させ、ついで反応生成物を高速攪拌中下でアンモニア水又は第三級アミン水溶液中に添加し中和する方法などの方法がある。
ポリウレタン樹脂は、水系分散体の塗布液にして使用することが好ましい。
【0057】
<接着改質層に用いるポリアクリル樹脂>
本発明における接着改質層としてポリアクリル樹脂を設ける場合、ポリアクリル樹脂としては、アクリル酸又はメタクリル酸、又はその塩類やエステル類を重合して得られるアクリル重合体が挙げられる。
アクリル酸エステル系及びメタクリル酸エステル系単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジルなどを挙げることができる。アクリル酸及びメタクリル酸の塩類としては、たとえば、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウムなどが挙げられる。
これらの必須成分の他に、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノメチル、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミドなどのアクリル酸系単量体を添加してもよい。
ポリアクリル樹脂には、この他に塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、ビニルスルホン酸ソーダなどの単量体を共重合成分として用いることもできる。なお、アクリル重合体には、アクリル酸塩成分、メタクリル酸塩成分、アクリル酸成分、アクリルアミド成分、アクリル酸2-ヒドロキシエチル成分、N-メチロールアクリルアミド成分などの親水性成分が共重合成分として含まれることが塗膜の機能性を高めるために好ましい。また分子側鎖に官能基を有する共重合体であってもよい。また、このアクリル系重合体は、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチルのような硬質成分を主成分として用い、共重合成分として、アクリル酸エステルのような軟質成分を共重合して得ることもできる。
ポリアクリル樹脂は、水系分散体の塗布液にして使用することが好ましい。
【0058】
<接着改質層に用いるアクリルグラフト共重合ポリエステル樹脂>
本発明における接着改質層としてポリエステル樹脂を設ける場合、ポリアクリル樹脂をポリエステル樹脂にグラフト重合した共重合ポリエステルが特に好ましいので、以下に詳細に説明する。
接着改質層を形成させるための塗布液としては、特にポリアクリル樹脂をポリエステル樹脂にグラフト重合した共重合ポリエステルの水系分散体が好ましい。
アクリルグラフト共重合ポリエステル水系分散体中のアクリルグラフト共重合ポリエステル粒子のレーザー光散乱法により測定される平均粒子径は、500nm以下、好ましくは10nm~500nm、さらに好ましくは10nm~300nmである。平均粒子径が500nmを超えると、塗布後の塗膜強度が低下する場合がある。
【0059】
アクリルグラフト共重合ポリエステル水系分散体中のアクリルグラフト共重合ポリエステル粒子の含有量は、通常、1質量%~50質量%、好ましくは3質量%~30質量%である。
本発明に用いられ得るアクリルグラフト共重合ポリエステル水系分散体中の粒子は、水性分散媒体中においてポリエステル主鎖をコアとするコア-シェル構造をとる。
【0060】
上記アクリルグラフト共重合ポリエステル水系分散体から得られる塗布膜は、ポリアミドフィルムとの接着性が非常に優れている。さらに、耐ブロッキング性が非常に優れているため、ガラス転移点の比較的低いフィルム基材においても問題なく使用し得る。また積層体とする場合、印刷インキやシーラント層を積層するときに使用する接着剤との接着性も非常に良好である。得られる積層フィルム(ラミネートフィルムともいう)は、レトルト処理や沸水処理における耐久性が著しく向上する。
【0061】
(アクリルグラフト共重合ポリエステルのポリエステル主鎖)
本発明においてグラフト化ポリエステルの主鎖として用い得るポリエステルは、好適には少なくともジカルボン酸成分とジオール成分とから合成される飽和または不飽和ポリエステルであり、得られるポリエステルは、1種の重合体または2種以上の重合体の混合物であり得る。そして、本来それ自身では水に分散または溶解しないポリエステルが好ましい。本発明に用い得るポリエステルの重量平均分子量は、5000~l00000、好ましくは5000~50000である。重量平均分子量が5000未満であると乾燥塗膜の後加工性等の塗膜物性が低下する。さらに重量平均分子量が5000未満であると、主鎖となるポリエステル自身が水溶化し易いため、形成されるグラフト化ポリエステルが後述するコア-シェル構造を形成し得ない。ポリエステルの重量平均分子量が100000を超えると水分散化が困難となる。水分散化の観点からは100000以下が好ましい。ガラス転移点は、30℃以下、好ましくは10℃以下である。
【0062】
上記ジカルボン酸成分としては、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、少なくとも1種の脂肪族及び/又は脂環族ジカルボン酸、及び少なくとも1種のラジカル重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸を含む、ジカルボン酸混合物であることが好ましい。このジカルボン酸混合物中に含まれる、芳香族ジカルボン酸は、30~99.5モル%、好ましくは40~99.5モル%、脂肪族及び/又は脂環族ジカルボン酸は、0~70モル%、好ましくは0~60モル%、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するジカルボン酸は、0.5~10モル%、好ましくは2~7モル%、より好ましくは3~6モル%である。ラジカル重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸の含有量が0.5モル%未満の場合、ポリエステルに対するラジカル重合性単量体の効果的なグラフト化が行なわれにくく、水系媒体中での分散粒子径が大きくなる傾向があり、分散安定性が低下する傾向がある。
【0063】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等が用いられ得る。さらに、必要に応じて5-スルホイソフタル酸ナトリウムも用い得る。
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、これらの酸無水物等を用い得る。
脂環族ジカルボン酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロへキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸無水物等を用い得る。
【0064】
ラジカル重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸としては、α,β-不飽和ジカルボン酸類としてフマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として2,5-ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を用い得る。これらの内で、フマール酸、マレイン酸および2,5-ノルボルネンジカルボン酸(エンド-ビシクロ-(2,2,1)-5-へプテン-2,3-ジカルボン酸)が好ましい。
【0065】
上記ジオール成分は、炭素数2~10の脂肪族グリコール、炭素数6~12の脂環族グリコール、及びエーテル結合含有グリコールのうちの少なくとも1種よりなる。
炭素数2~10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-へキサンジオール等を用い得る。
炭素数6~12の脂環族グリコールとしては、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を用い得る。
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1~数モル付加して得られるグリコール類、たとえば2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用い得る。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要に応じて用い得る。
【0066】
上記ジカルボン酸成分およびジオール成分の他に、3官能性以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合し得る。
3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングルコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等を用い得る。
3官能性以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用い得る。
3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等を用い得る。
3官能性以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を用い得る。
3官能性以上のポリカルボン酸及び/又はポリオールは、上記ジカルボン酸成分を含む全ポリカルボン酸成分あるいは上記ジオール成分を含む全ポリオール成分に対し0~5モル%、好ましくは、0~3モル%の範囲で使用し得る。
【0067】
(アクリルグラフト共重合ポリエステルのグラフト部分)
本発明に用い得るアクリルグラフト共重合ポリエステルのグラフト部分は、親水性基を有するか、又は後で親水性基に変化させることができる基を有するラジカル重合性単量体を少なくとも1種含む単量体混合物由来のアクリル重合体である。
【0068】
グラフト部分を構成する重合体の重量平均分子量は500~50000、好ましくは4000~50000である。重量平均分子量が500未満の場合には、グラフト化率が低下するのでポリエステルヘの親水性の付与が十分に行なわれなくなり、かつ一般にグラフト部分の重量平均分子量を500未満にコントロールすることは困難である。グラフト部分は分散粒子の水和層を形成する。粒子に十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためにはラジカル重合性単量体由来のグラフト部分の、重量平均分子は500以上であることが望ましい。ラジカル重合性単量体のグラフト部分の重量平均分子量の上限は溶液重合における重合性の点で上記のように50000が好ましい。この範囲内での分子量のコントロールは、重合開始剤量、モノマー滴下時間、重合時間、反応溶媒、及びモノマー組成を適切に選択し、必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行ない得る。ガラス転移点は、30℃以下、好ましくは10℃以下である。
【0069】
ラジカル重合性単量体が有する親水性基としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩、リン酸基等を用い得る。親水性基に変化させ得る基としては、酸無水物、グリシジル、クロル等を用い得る。グラフト化によりポリエステルに導入される親水性基によってグラフト化ポリエステルの水への分散性をコントロールし得る。上記親水性基の中で、カルボキシル基は、そのグラフト化ポリエステルへの導入量を当該技術分野で公知の酸価を用いて正確に決定し得るため、グラフト化ポリエステルの水への分散性をコントロールする上で好ましい。
【0070】
カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等があり、さらに水/アミンに接して容易にカルボン酸を発生するマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、メタクリル酸無水物等が用いられ得る。好ましいカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体はアクリル酸無水物、メタクリル酸無水物及びマレイン酸無水物である。
【0071】
上記親水性基含有ラジカル重合性単量体の他に、少なくとも1種の親水性基を含有しないラジカル重合性単量体を共重合することが好ましい。親水性基含有単量体のみの場合、ポリエステル主鎖に対するグラフト化が円滑に起こらず、良好な共重合ポリエステル水系分散体を得ることが難しい。少なくとも1種の親水性基を含有しないラジカル重合性単量体を共重合することによって初めて効率の高いグラフト化が行なわれ得る。
【0072】
親水性基を含有しないラジカル重合性単量体としては、エチレン性不飽和結合を有しかつ上記のような親水性基を含有しない単量体の1種またはそれ以上の組み合わせが使用される。このような単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキプロピル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシルプロピル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリル酸またはメタクリル酸誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタリン類等の芳香族ビニル化合物;を挙げることができる。これらのモノマーは単独もしくは2つ以上組み合わせて用いられ得る。
【0073】
親水性基含有単量体と親水性基を含有しない単量体の使用比率は、グラフト化ポリエステルに導入する親水性基の量を考慮して決定されるが、通常、質量比(親水性基含有単量体:親水性基を含有しない単量体)として、95:5~5:95、好ましくは90:10~10:90、さらに好ましくは80:20~40:60の範囲である。
【0074】
親水性基含有単量体として、カルボキシル基含有単量体を用いる場合、グラフト化ポリエステルの総酸価は、600~4000eq./10 g、好ましくは700~3000eq./10 g、最も好ましくは800~2500eq./10 gである。酸価が600eq./10 g以下の場合、グラフト化ポリエステルを水に分散したときに粒子径の小さい共重合ポリエステル水系分散体が得にくく、さらに共重合ポリエステル水系分散体の分散安定性が低下する。酸価が4000eq./10 g以上の場合、共重合ポリエステル水系分散体から形成される接着改質層の耐水性が低くなる。
【0075】
アクリルグラフト共重合ポリエステルにおけるポリエステル主鎖とグラフト部分との質量比(ポリエステル:ラジカル重合性単量体)は、40:60~95:5、好ましくは55:45~93:7、さらに好ましくは60:40~90:10の範囲である。
【0076】
ポリエステル主鎖の質量比率が40質量%以下である場合、すでに説明した母体ポリエステルの優れた性能すなわち高い加工性、優れた耐水性、各種基材への優れた密着性を十分に発揮することができず、逆にアクリル樹脂の望ましくない性能、すなわち低い加工性、光沢、耐水性等を付加してしまう。ポリエステルの質量比率が95質量%以上である場合、グラフト化ポリエステルに親水性を付与するグラフト部分の親水性基量が不足して、良好な水性分散体を得ることができない。
【0077】
(アクリルグラフト共重合ポリエステルのグラフト化反応の溶媒)
グラフト化反応の溶媒は、沸点が50~250℃の水性有機溶媒から構成されることが好ましい。ここで水性有機溶媒とは20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/L以上、好ましくは20g/L以上である有機溶媒をいう。沸点が250℃を超える水性有機溶媒は、蒸発速度が遅いため、塗膜形成後の塗膜の高温焼付によっても十分に取リ除き得ないので不適当である。また沸点が50℃以下の水性有機溶媒では、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃以下の温度でラジカルに分解する開始剤を用いねばならないので取扱上の危険が増大し、好ましくない。
【0078】
ポリエステルをよく溶解し、かつ親水性基、特にカルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体及びその重合体を比較的良く溶解する水性有機溶媒(第一群)としては、エステル類、たとえば酢酸エチル;ケトン類、たとえばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロへキサノン;環状エーテル類、たとえばテトラヒドロフラン、ジオキサン、及び1,3-ジオキソラン;グリコールエーテル類、たとえばエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、及びエチレングリコールブチルエーテル;カルビトール類、たとえばメチルカルビトール、エチルカルビトール、及びブチルカルビトール;グリコール類又はグリコールエーテルの低級エステル類、たとえばエチレングリコールジアセテート及びエチレングリコールエチルエーテルアセテート;ケトンアルコール類、たとえばダイアセトンアルコール;N-置換アミド類、たとえばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドン;等を挙げることができる。
【0079】
これに対し、ポリエステルをほとんど溶解しないが、親水性基、特にカルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体及びその重合体を比較的よく溶解する水性有機溶媒(第二群)として、水、低級アルコール類、低級グリコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類等を挙げることが出来る。好ましいのは炭素数1~4のアルコール類及びグリコール類である。
【0080】
グラフト化反応を単一溶媒中で行なう場合は、第一群の水性有機溶媒の一種を用い得る。混合溶媒中で行なう場合は、第一群の水性有機溶媒の複数種又は第一群の水性有機溶媒の少なくとも一種と第二群の水性有機溶媒の少なくとも一種とを用い得る。
【0081】
第一群の水性有機溶媒からの単一溶媒中及び第一群及び第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒中のいずれにおいても、グラフト化反応を行ない得る。しかし、グラフト化反応の進行挙動、グラフト化反応生成物及びそれから導かれる水系分散体の外観、性状等の点から、第一群及び第二群の水性有機溶媒のぞれぞれ一種からなる混合溶媒を使用することが好ましい。この理由は、ポリエステルのグラフト化反応においてポリエステル分子間の架橋により系のゲル化が起こりやすいが、以下のように混合溶媒を用いることによりゲル化が防止され得るからである。
【0082】
第一群の溶媒中では、ポリエステル分子鎖は広がりの大きい鎖ののびた状態にあり、他方、第一群/第二群の混合溶媒中では、ポリエステル分子鎖は広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることが、これら溶液中のポリエステルの粘度測定により確認された。ポリエステル分子鎖が延びた状態では、ポリエステル主鎖中の反応点がすべてグラフト化反応に寄与し得るので、ポリエステルのグラフト化率は高くなるが、同時に分子間の架橋が起こる率も高くなる。他方、ポリエステル分子鎖が糸まり状になっている場合は、糸まり内部の反応点はグラフト化反応に寄与し得ず、同時に分子間の架橋が起こる率も低くなる。よって、溶媒の種類を選択することによってポリエステル分子の状態を調節することができ、それによりグラフト化率及びグラフト化反応による分子間架橋を調節し得る。
【0083】
高いグラフト化率とゲル化抑制の両立は、混合溶媒系において達成し得る。第一群/第二群の混合溶媒の最適の混合比率は、使用するポリエステルの溶解性等によって変わり得るが、通常、第一群/第二群の混合溶媒の質量比率は、95:5~10:90、好ましくは90:10~20:80、さらに好ましくは85:15~30:70の範囲である。
【0084】
(アクリルグラフト共重合ポリエステルのラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤)
用い得るラジカル重合開始剤として、当業者には公知の有機過酸化物類や有機アゾ化合物類を用い得る。
有機過酸化物として、ベンゾイルパ-オキサイド、t-ブチルパ-オキシピバレート、有機アゾ化合物として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等を挙げることができる。
グラフト化反応を行なうためのラジカル重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性単量体に対して、少なくとも0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%以上である。
重合開始剤の他に、グラフト部分の鎖長を調節するための連鎖移動剤、たとえばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール等を必要に応じて用い得る。この場合、ラジカル重合性単量体に対して0~5質量%の範囲で添加されるのが望ましい。
【0085】
(アクリルグラフト共重合ポリエステルのグラフト化反応)
グラフト部分の形成は、上記ポリエステル中のラジカル重合性不飽和二重結合と上記ラジカル重合性単量体とが重合すること及び/又はラジカル重合性不飽和二重結合と上記ラジカル重合性単量体の重合体の活性末端とが反応することにより進行する。グラフト化反応終了後の反応生成物は、目的とするグラフト化ポリエステルの他にグラフト部分を有さないポリエステル及びポリエステルとグラフトしなかったラジカル重合性単量体の重合体を含有する。反応生成物中のグラフト化ポリエステルの生成比率が低く、グラフト部分を有さないポリエステル及びグラフトしなかったラジカル重合性単量体の重合体の比率が高い場合は、安定性の良好な分散体が得られない。
【0086】
通常、グラフト化反応は、加温下で上記ポリエステルを含む溶液に対し、上記ラジカル重合性単量体とラジカル開始剤とを一時に添加して行ない得るか、あるいは別々に一定時間を要して滴下した後、さらに一定時間攪拌下に加温を継続して反応を進行させることによって行い得る。あるいは、必要に応じて、ラジカル重合性単量体の一部を先に添加し、次いで残りのラジカル重合性単量体、重合開始剤を別々に一定時間を要して滴下した後、さらに一定時間攪拌下に加温を継続してグラフト化反応を行い得る。
【0087】
ポリエステルと溶媒との質量比率は、ポリエステルとラジカル重合性単量体との反応性及びポリエステルの溶剤溶解性を考慮して、重合工程中均一に反応が進行する質量比率が選択される。通常、70:30~10:90、好ましくは50:50~15:85の範囲である。
【0088】
<アクリルグラフト共重合ポリエステルの水分散化>
本発明に用いられ得るグラフト化ポリエステルは、固体状態で水系媒体に投入するか、又は親水性溶媒に溶解後、水系媒体に投入することによって、水分散化され得る。特に、親水性の基を有するラジカル重合性単量体として、スルホン酸基及びカルボキシル基のような酸性基を有する単量体を用いた場合、グラフト化ポリエステルを塩基性化合物で中和することによって、グラフト化ポリエステルを容易に平均粒子径500nm以下の微粒子として水に分散して、共重合ポリエステル水系分散体を調製し得る。
【0089】
塩基性化合物としては塗膜形成時、あるいは以下に述べる硬化剤を配合した場合は焼付硬化時に揮散する化合物が望ましい。そのような塩基性化合物としては、アンモニア、有機アミン類等が好ましい。有機アミン類としては、トリエチルアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン等を挙げることができる。
塩基性化合物の使用量は、グラフト部分中に含まれるカルボキシル基を、少なくとも部分中和あるいは完全中和して、水系分散体のpH値を5.0~9.0の範囲にする量が好ましい。
【0090】
塩基性化合物で中和された共重合ポリエステル水系分散体を調製する方法としては、グラフト化反応終了後、反応液から溶媒を、減圧下でエクストルダー等により除去してメルト状又は固体状(ペレット、粉末等)にし、次いでこれを塩基性化合物水溶液に投じて加熱下攪拌すること又はグラフト化反応を終了した時点で直ちに塩基性化合物水溶液を反応液に投入し、さらに加熱攪拌を継続すること(ワン・ポット法)により水系分散体を調製し得る。利便性の点からワン・ポット法が好ましい。この場合、グラフト化反応に用いた溶媒の沸点が100℃以下ならば蒸留によって一部又は全部を容易に取り除き得る。
【0091】
<塗布液に添加する架橋剤>
上記のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂の塗布液には、さらに架橋剤(硬化用樹脂)を配合して硬化を行なうことにより、接着改質層に高度の耐水性を付与することができる。
架橋剤としては、アルキル化フェノール類、クレゾール類等とホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等とホルムアルデヒドとの付加物、この付加物と炭素原子数が1~6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物等のアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物等を用い得る。
これらの架橋剤は、それぞれ単独又は2種以上混合して用い得る。架橋剤の配合量としては、グラフト化ポリエステルに対して、5質量%~40質量%が好ましい。
【0092】
架橋剤の配合方法としては、(1)架橋剤が水溶性である場合、直接水系分散体中に溶解又は分散させる方法、又は(2)架橋剤が油溶性である場合、グラフト化反応終了後、水分散化の前又は後に架橋剤を加えてコア部にポリエステルと共存させる方法を用い得る。これらの方法は、架橋剤の種類、性状により適宜選択し得る。さらに架橋剤には、硬化剤あるいは促進剤を併用し得る。
【0093】
本発明に用いる接着改質層には、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、帯電防止性、滑り性を付与するために、帯電防止剤、無機滑剤、有機滑剤等の添加剤を含有させることができる。帯電防止剤、無機滑剤、有機滑剤等をフィルム表面に塗布する場合、これらの添加剤の脱離を防止するため接着改質層に含有させることが好ましい。
【0094】
[易接着性ポリアミドフィルムの製造方法]
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムに後述の方法で接着改質層を形成することで製造する。
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムは、公知の製造方法により製造することができる。例えば、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法が挙げられる。逐次二軸延伸法は、製膜速度が上げられるので、製造コスト的に有利であるので好ましい。
本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムの作製方法についてさらに説明する。
まず、押出機を用いて原料樹脂を溶融押出しし、Tダイからフィルム状に押出し、冷却ロール上にキャストして冷却し、未延伸フィルムを得る。
樹脂の溶融温度は好ましくは200~300℃である。上記未満であると未溶融物などが発生し、欠点などの外観不良が発生することがあり、上記を超えると樹脂の劣化などが観察され、分子量低下、外観低下が発生することがある。
【0095】
冷却ロール温度は、-30~80℃が好ましく、更に好ましくは0~50℃である。
Tダイから押出されたフィルム状溶融物を回転冷却ドラムにキャストし冷却して未延伸フィルムを得るには、例えば、エアナイフを使用する方法や静電荷を印荷する静電密着法等が好ましく適用できる。特に後者が好ましく使用される。
【0096】
また、キャストした未延伸フィルムの冷却ロールの反対面も冷却することが好ましい。例えば、未延伸フィルムの冷却ロールの反対面に、槽内の冷却用液体を接触させる方法、スプレーノズルで蒸散する液体を塗布する方法、高速流体を吹き付けて冷却する方法等を併用することが好ましい。このようにして得られた未延伸フィルムを二軸方向に延伸して二軸延伸ポリアミドフィルムを得る。
【0097】
MD方向の延伸方法としては、一段延伸又は二段延伸等の多段延伸が使用できる。後述するように、一段での延伸ではなく、二段延伸などの多段のMD方向の延伸が物性面およびMD方向及びTD方向の物性の均一さ(等方性)の面で好ましい。
逐次二軸延伸法におけるMD方向の延伸は、ロール延伸が好ましい。
【0098】
MD方向の延伸温度の下限は好ましくは50℃であり、より好ましくは55℃であり、さらに好ましくは60℃である。50℃未満であると樹脂が軟化せず、延伸が困難となることがある。
MD方向の延伸温度の上限は好ましくは120℃であり、より好ましくは115℃であり、さらに好ましくは110℃である。120℃を超えると樹脂が軟らかくなりすぎ安定した延伸ができないことがある。
【0099】
MD方向の延伸倍率(多段で延伸する場合は、それぞれの倍率を乗じた全延伸倍率)の下限は好ましくは2.2倍であり、より好ましくは2.5倍であり、さらに好ましくは2.8倍である。2.2倍未満であるとMD方向の厚み精度が低下するほか、結晶化度が低くなりすぎて衝撃強度が低下することがある。
MD方向の延伸倍率の上限は好ましくは5.0倍であり、より好ましくは4.5倍であり、最も好ましくは4.0倍である。5.0倍を超えると後続の延伸が困難となることがある。
【0100】
また、MD方向の延伸を多段で行う場合には、それぞれの延伸で上述のような延伸が可能であるが、倍率については、全MD方向の延伸倍率の積は5.0以下となるよう、延伸倍率を調整することが必要である。例えば、二段延伸の場合であれば、一段目の延伸を1.5~2.1倍、二段目の延伸を1.5~1.8倍が好ましい。
【0101】
MD方向に延伸したフィルムは、テンターでTD方向に延伸し、熱固定し、リラックス処理(緩和処理ともいう)する。
TD方向の延伸温度の下限は好ましくは50℃であり、より好ましくは55℃であり、さらに好ましくは60℃である。50℃未満であると樹脂が軟化せず、延伸が困難となることがある。
TD方向の延伸温度の上限は好ましくは190℃であり、より好ましくは185℃であり、さらに好ましくは180℃である。190℃を超えると結晶化してしまい、延伸が困難となることがある。
【0102】
TD方向の延伸倍率(多段で延伸する場合は、それぞれの倍率を乗じた全延伸倍率)の下限は好ましくは2.8であり、より好ましくは3.2倍であり、さらに好ましくは3.5倍であり、特に好ましくは3.8倍である。2.8未満であるとTD方向の厚み精度が低下するほか、結晶化度が低くなりすぎて衝撃強度が低下することがある。
TD方向の延伸倍率の上限は好ましくは5.5倍であり、より好ましくは5.0倍であり、さらに好ましくは4.7であり、特に好ましくは4.5であり、最も好ましくは4.3倍である。5.5倍を超えると著しく生産性が低下することがある。
【0103】
熱固定温度の選択は本発明において重要な要素である、熱固定温度を高くするに従い、フィルムの結晶化および配向緩和が進み、衝撃強度を向上させ、熱収縮率を低減させることができる。一方、熱固定温度が低い場合には結晶化および配向緩和が不十分で熱収縮率を十分に低減させることができない。)また、熱固定温度が高くなりすぎると、樹脂の劣化が進み、急速に衝撃強度などフィルムの強靱性が失われる。
【0104】
熱固定温度の下限は好ましくは180℃であり、より好ましくは200℃である。熱固定温度が低いと熱収縮率が大きくなりすぎてラミネート後の外観が低下する、ラミネート強度が低下する傾向がある。
熱固定温度の上限は好ましくは230℃であり、より好ましくは220℃である。熱固定温度が高すぎると、衝撃強度が低下する傾向がある。
【0105】
熱固定の時間は0.5~20秒であることが好ましい。さらには1~15秒である。熱固定時間は熱固定温度や熱固定ゾーンでの風速とのかね合いで適正時間とすることができる。熱固定条件が弱すぎると、結晶化及び配向緩和が不十分となり上記問題が起こる。熱固定条件が強すぎるとフィルム強靱性が低下する。
【0106】
熱固定処理した後にリラックス処理をすることは熱収縮率の制御に有効である。リラックス処理する温度は熱固定処理温度から樹脂のガラス転移温度(Tg)までの範囲で選べるが、好ましくは熱固定処理温度-10℃~Tg+10℃が好ましい。リラックス温度が高すぎると、収縮速度が速すぎて歪みなどの原因となるため好ましくない。逆にリラックス温度が低すぎるとリラックス処理とならず、単に弛むだけとなり熱収縮率が下がらず、寸法安定性が悪くなる。
【0107】
リラックス処理のリラックス率の下限は、好ましくは0.5%であり、より好ましくは1%である。0.5%未満であると熱収縮率が十分に下がらないことがある。
リラックス率の上限は好ましくは20%であり、より好ましくは15%であり、さらに好ましくは10%である。20%を超えるとテンター内でたるみが発生し、生産が困難になることがある。
【0108】
シーラントフィルムや印刷層との接着強度を上げるため、積層延伸ポリアミドフィルム表面及び/又は接着改質層の表面にコロナ処理や火炎処理等を施してもよい。また、積層延伸ポリアミドフィルムと接着改質層の接着強度を上げるため、積層延伸ポリアミドフィルムの接着改質層側の表面にコロナ処理や火炎処理等を施してもよい。
【0109】
本発明における接着改質層を形成する方法としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂を含む塗布剤を積層延伸ポリアミドフィルムにグラビア方式、リバース方式、ダイ方式、バー方式、ディップ方式等公知の塗布方式で塗布する方法を用いることができる。
【0110】
前記塗布剤の塗布量は、2軸延伸後のポリアミドフィルムに対して固形分として0.01~3g/mが好ましい。更に好ましくは、0.04~0.5g/mになるように塗布する。上記の塗布量であれば、接着改質層と他層との十分な接着強度が得られ、かつフィルム同志のブロッキングの発生を抑制できる。
【0111】
本発明における接着改質層は、二軸延伸ポリアミドフィルム基材に塗布剤を塗布するか、未延伸あるいは一軸延伸後のポリアミドフィルム基材に塗布剤を塗布した後、乾燥し、必要に応じて、さらに一軸延伸あるいは二軸延伸後熱固定を行うことができる。塗布剤塗布後の乾燥温度としては、180℃以上、好ましくは200℃以上で乾燥及び熱固定を行うことにより塗膜が強固になり、接着改質層とポリアミドフィルム基材との接着性が向上する。
【0112】
塗布後に延伸を行う場合、塗布後の乾燥は、塗布フィルムの延伸性を損なわないために塗布フィルムの水分率を0.1~2%の範囲に制御する必要がある。延伸後は200℃以上で乾燥及び熱固定することによリ、塗膜が強固になリ接着改質層とポリアミドフィルム基材との接着性が飛躍的に向上する。
【0113】
こうして得られた本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、製袋品の運搬時に段ボール等の運搬包装との摩擦が生じた場合でもその摩擦でフィルムに削れが生じてそれによって破袋することを抑制できる。また、袋同志の接触することで屈曲疲労によって破袋することを抑制できる。また、ポリアミドフィルムとシーラントフィルム間の耐水接着強度が高いので、高い破袋防止性を発現する。
【0114】
[易接着性ポリアミドフィルムの特性]
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、実施例に記載した測定方法によるゲルボフレックステスターを用いたひねり屈曲試験を温度1℃で1000回実施した時のピンホール欠点数が10個以下である。より好ましくは5個以下である。屈曲試験後のピンホール欠点数が少ないほど耐屈曲ピンホール性が優れており、ピンホール数が10個以下であれば、輸送時などに包装袋に負荷がかかってもピンホールが発生しにくい包装袋が得られる。
【0115】
更に、本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上である。より好ましくは3100cm以上、更に好ましくは3300cm以上である。ピンホールが発生する距離が長いほど耐摩擦ピンホール性に優れており、ピンホールが発生する距離が2900cm以上であれば、輸送時などに包装袋が段ボール箱などと擦れてもピンホールが発生しにくい包装袋が得られる。
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、上記の耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性の両方の特性が優れていることに特徴がある。これらの特性を持った本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、輸送時にピンホールが発生しにくいので包装用フィルムとして極めて有用である。
【0116】
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、160℃、10分での熱収縮率が流れ方向(以下MD方向と略記する)及び幅方向(以下TD方向と略記する)ともに0.6~3.0%の範囲であり、好ましくは、0.6~2.5%である。熱収縮率が、3.0%を超える場合には、ラミネートや印刷など、次工程で熱がかかる場合にカールや収縮が発生する場合がある。また、シーラントフィルムとのラミネート強度が弱くなる場合がある。熱収縮率を0.6%未満とすることは可能ではあるが、力学的に脆くなる場合がある。また、生産性が悪化するので好ましくない。
【0117】
耐衝撃性に優れることが二軸延伸ポリアミドフィルムの特長であるので、本発明の易接着性ポリアミドフィルムの衝撃強度は、0.7J/15μm以上が好ましい。より好ましい衝撃強度は、0.9J/15μm以上である。
【0118】
本発明の易接着性ポリアミドフィルムのヘイズ値は、10%以下であることが好ましい。より好ましくは7%以下、更に好ましくは5%以下である。
ヘイズ値が小さいと透明性や光沢が良いので、包装袋に使用した場合、きれいな印刷ができ商品価値を高める。
フィルムの滑り性を良くするために微粒子を添加するとヘイズ値が大きくなるので、微粒子は機能層のB層のみに入れる方が、ヘイズ値を小さくできる。
【0119】
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、ASTM D6866-16の放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量(バイオマス度ともいう)が、ポリアミドフィルム中の全炭素に対して1~15%含まれることが好ましい。
大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリアミド中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。
【0120】
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、実施例に記載したポリエチレン系シーラントと貼り合わせた後のラミネート強度は、4.0N/15mm以上である。
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、通常シーラントフィルムとラミネートしてから包装袋に加工される。上記のラミネート強度が4.0N/15mm以上であれば、各種の積層構成で本発明の易接着性ポリアミドフィルムを使用して包装袋を作製した場合に、シール部の強度が十分に得られ、破れにくい強い包装袋が得られる。
ラミネート強度を4.0N/15mm以上にするために、本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、コロナ処理、コーティング処理、火炎処理等を施すことができる。
【0121】
さらに、本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、用途に応じて寸法安定性を良くするために熱処理や調湿処理を施すことも可能である。加えて、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したり、印刷加工、金属物や無機酸化物等の蒸着加工を施したりすることも可能である。なお蒸着加工にて形成される蒸着膜としては、アルミニウムの蒸着膜、ケイ素酸化物やアルミニウム酸化物の単一物もしくは混合物の蒸着膜が好適に用いられる。さらにこれらの蒸着膜上に保護層などをコーティングすることにより、酸素や水素バリア性などを向上させることができる。
【0122】
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、シーラントフィルムなどを積層した積層フィルムにしてから、ボトムシール袋、サイドシール袋、三方シール袋、ピロー袋、スタンディングパウチ、ガゼット袋、角底袋などの包装袋に加工される。
シーラントフィルムとしては、未延伸線状低密度ポリエチレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂フィルムなどが挙げられる。
本発明の易接着性ポリアミドフィルムを使用した積層フィルムの層構成としては、本発明の易接着性ポリアミドフィルムを積層フィルム中に有するものであれば特に限定されない。また、積層フィルムに使用するフィルムは、石化由来原料でもバイオマス由来原料でも良いが、バイオマス由来の原料を用いて重合されたポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレン、ポリエチレンフラノエートなどの方が環境負荷の低減という点で好ましい。
【0123】
本発明の積層フィルムの層構成の例としては、/で層の境界を表わすと、例えば、ONY/接/LLDPE、ONY/接/CPP、ONY/接/Al/接/CPP、ONY/接/Al/接/LLDPE、ONY/PE/Al/接/LLDPE、ONY/接/Al/PE/LLDPE、PET/接/ONY/接/LLDPE、PET/接/ONY/PE/LLDPE、PET/接/ONY/接/Al/接/LLDPE、PET/接/Al/接/ONY/接/LLDPE、PET/接/Al/接/ONY/PE/LLDPE、PET/PE/Al/PE/ONY/PE/LLDPE、PET/接/ONY/接/CPP、PET/接/ONY/接/Al/接/CPP、PET/接/Al/接/ONY/接/CPP、ONY/接/PET/接/LLDPE、ONY/接/PET/PE/LLDPE、ONY/接/PET/接/CPP、ONY//Al//PET//LLDPE、ONY/接/Al/接/PET/PE/LLDPE、ONY/PE/LLDPE、ONY/PE/CPP、ONY/PE/Al/PE、ONY/PE/Al/PE/LLDPE、OPP/接/ONY/接/LLDPE、ONY/接/EVOH/接/LLDPE、ONY/接/EVOH/接/CPP、ONY/接/アルミ又は無機酸化物蒸着PET/接/LLDPE、ONY/接/アルミ蒸着PET/接/ONY/接/LLDPE、ONY/接/アルミ蒸着PET/PE/LLDPE、ONY/PE/アルミ蒸着PET/PE/LLDPE、ONY/接/アルミ蒸着PET/接/CPP、PET/接/アルミ蒸着PET/接/ONY/接/LLDPE、CPP/接/ONY/接/LLDPE、ONY/接/アルミ蒸着LLDPE、ONY/接/アルミ蒸着CPPなどが挙げられる。
なお上記層構成に用いた各略称は以下の通りである。
ONY:本発明の易接着性ポリアミドフィルム、PET:延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、LLDPE:未延伸線状低密度ポリエチレンフィルム、CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:延伸ポリプロピレンフィルム、PE:押出しラミネート又は未延伸の低密度ポリエチレンフィルム、Al:アルミニウム箔、EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、接:フィルム同士を接着させる接着剤層、アルミ又は無機酸化物蒸着はアルミニウム又は無機酸化物が蒸着されていることを表わす。
【実施例
【0124】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。特に記載しない場合は、測定は23℃、相対湿度65%の環境の測定室で行った。
(1)フィルムのヘイズ値
(株)東洋精機製作所社製の直読ヘイズメーターを使用し、JIS-K-7105に準拠し測定した。
(2)フィルムの厚み
フィルムのTD方向に10等分して(幅が狭いフィルムについては厚みを測定できる幅が確保できる幅になるよう当分する)、MD方向に100mmのフィルムを10枚重ねで切り出し、温度23℃、相対湿度65%の環境下で2時間以上コンディショニングする。テスター産業製厚み測定器で、それぞれのサンプルの中央の厚み測定し、その平均値を厚みとした。
【0125】
(3)フィルムのバイオマス度
得られたフィルムバイオマス度は、ASTM D6866-16 Method B (AMS)に示された放射性炭素(C14)測定により行った。
(4)フィルムの熱収縮率
試験温度160℃、加熱時間10分間とした以外は、JIS C2318に記載の寸法変化試験法に準じて下記式によって熱収縮率を測定した。
熱収縮率=[(処理前の長さ-処理後の長さ)/処理前の長さ]×100(%)
(5)フィルムの衝撃強度
(株)東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスターを使用し測定した。測定値は、厚み15μm当たりに換算してJ(ジュール)/15μmで表した。
(6)フィルムの動摩擦係数
JIS-C2151に準拠し、下記条件によりフィルム巻外面同士の動摩擦係数を評価した。なお、試験片の大きさは、幅130mm、長さ250mm、試験速度は150mm/分で行った。
【0126】
(7)フィルムの耐屈曲ピンホール性
理学工業社製のゲルボフレックステスターを使用し、下記の方法により屈曲疲労ピンホール数を測定した。
実施例で作製したフィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L-LDPEフィルム:東洋紡社製、L4102)をドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。得られたラミネートフィルムを12インチ×8インチに裁断し、直径3.5インチの円筒状にし、円筒状フィルムの一方の端をゲルボフレックステスターの固定ヘッド側に、他方の端を可動ヘッド側に固定し、初期の把持間隔を7インチとした。ストロークの最初の3.5インチで440度のひねりを与え、その後2.5インチは直線水平運動で全ストロークを終えるような屈曲疲労を、40回/分の速さで1000回行い、ラミネートフィルムに発生したピンホール数を数えた。なお、測定は1℃の環境下で行った。テストフィルムのL-LDPEフィルム側を下面にしてろ紙(アドバンテック、No.50)の上に置き、4隅をセロテープ(登録商標)で固定した。インク(パイロット製インキ(品番INK-350-ブルー)を純水で5倍希釈したもの)をテストフィルム上に塗布し、ゴムローラーを用いて一面に延展させた。不要なインクをふき取った後、テストフィルムを取り除き、ろ紙に付いたインクの点の数を計測した。
【0127】
(8)フィルムの耐摩擦ピンホール性
堅牢度試験機(東洋精機製作所)を使用し、下記の方法により摩擦試験を行い、ピンホール発生距離を測定した。
上記耐屈曲ピンホール性評価で作製したものと同様のラミネートフィルムを、四つ折りにして角を尖らせたテストサンプルを作製し、堅牢度試験機にて、振幅:25cm、振幅速度:30回/分、加重:100g重で、段ボール内面に擦りつけた。段ボールは、K280×P180×K210(AF)=(表材ライナー×中芯材×裏材ライナー(フルートの種類))を使用した。
ピンホール発生距離は、以下の手順に従い算出した。ピンホール発生距離が長いほど、耐摩擦ピンホール性が優れている。
まず、振幅100回距離2500cmで摩擦テストを行った。ピンホールが開かなかった場合は振幅回数20回距離500cm増やして摩擦テストを行った。またピンホールが開かなかった場合は更に振幅回数20回距離500cm増やして摩擦テストを行った。これを繰り返しピンホールが開いた距離に×をつけて水準1とした。振幅100回距離2500cmでピンホールが開いた場合は振幅回数20回距離500cm減らして摩擦テストを行った。またピンホールが開いた場合は更に振幅回数20回距離500cm減らして摩擦テストを行った。これを繰り返しピンホールが開かなかった距離に○をつけて水準1とした。
次に水準2として、水準1で最後が○だった場合は、振幅回数を20回増やして摩擦テストを行い、ピンホールが開かなかったら○、ピンホールが開いたら×を付けた。水準1で最後が×だった場合は、振幅回数を20回減らして摩擦テストを行い、ピンホールが開かなかったら○、ピンホールが開いたら×を付けた。
更に水準3~20として、前の水準で○だった場合は、振幅回数を20回増やして摩擦テストを行い、ピンホールが開かなかったら○、ピンホールが開いたら×を付ける。前の水準で×だった場合は、振幅回数を20回減らして摩擦テストを行い、ピンホールが開かなかったら○、ピンホールが開いたら×を付ける。これを繰り返し、水準3~20に○又は×をつける。
例えば、表1のような結果が得られた。表1を例にしてピンホール発生距離の求め方を説明する。
各距離の○と×の試験数を数える。
最もテスト回数の多かった距離を中央値とし、係数をゼロとする。それより距離が長い場合は、500cmごとに係数を+1、+2、+3・・・、距離が短い場合は、500cmごとに係数を-1、-2、-3・・・とした。
水準1~20までの全ての試験で、穴が開かなかった試験数と穴が開いた試験数を比較して、次のA及びBの場合についてそれぞれの式で摩擦ピンホール発生距離を算出した。
A;全ての試験で、穴が開かなかった試験数が、穴が開いた試験数以上の場合
摩擦ピンホール発生距離=中央値+500×(Σ(係数×穴が開かなかった試験数)/穴が開かなかった試験数)+1/2)
B:全ての試験で、穴が開かなかった試験数が、穴が開いた試験数未満の場合
摩擦ピンホール発生距離=中央値+500×(Σ(係数×穴が開いた試験数)/穴が開いた試験数)-1/2)
【0128】
【表1】
【0129】
(9)ポリエチレン系シーラントとのラミネート強度
耐屈曲ピンホール性評価の説明に記載した方法と同様にして作製したラミネートフィルムを幅15mm×長さ200mmの短冊状に切断し、ラミネートフィルムの一端を二軸延伸ポリアミドフィルムと線状低密度ポリエチレンフィルムとの界面で剥離し、(株式会社島津製作所製、オートグラフ)を用い、温度23℃、相対湿度50%、引張り速度200mm/分、剥離角度90°の条件下でラミネート強度をMD方向とTD方向にそれぞれ3回測定しその平均値で評価した。
【0130】
(10)耐水ラミネート強度(水付着条件下でのラミネート強度) (9)のラミネート強度を測定する際に、上記短冊状ラミネートフィルムの剥離界面に水をスポイトで垂らしながらラミネート強度を測定した。MD方向とTD方向にそれぞれ3回測定し平均値で評価した。
【0131】
(11)キャスト時の製膜安定性
Tダイから溶融樹脂をフィルム状に押出し、冷却ロール上にキャストして冷却し、未延伸フィルムを得る工程を目視で観察し、製膜安定性を以下のとおり評価した。
○:製膜が安定していて均質な未延伸フィルムが得られた。
△:製膜が少し不安定で、未延伸フィルムの幅などに変動がみられたが、二軸延伸することができた。
×:製膜が不安定で未延伸フィルムが不均質なため二軸延伸フィルムを得られなかった。
(12)ダイリップ出口に生成する熱劣化物の発生周期
ダイスのリップの掃除を行ってからフィルムの製膜を開始し、ダイスのリップに熱劣化物が発生するまでの時間を観察した。
【0132】
(13)原料ポリアミドの相対粘度
0.25gのポリアミドを25mlのメスフラスコ中で1.0g/dlの濃度になるように96%硫酸で溶解したポリアミド溶液を20℃にて相対粘度を測定した。
(14)原料ポリアミドの融点
JIS K7121に準じてセイコーインスルメンツ社製、SSC5200型示差走査熱量測定器を用いて、窒素雰囲気中で、試料重量:10mg、昇温開始温度:30℃、昇温速度:20℃/分で測定し、吸熱ピーク温度(Tmp)を融点として求めた。
(15)接着性改質層の塗布量
2軸配向ポリアミドフィルムを10cm×10cmの面積に切り出し、フィルムの接着性改質層面をメチルエチルケトン/トルエン=1/1の混合有機溶剤を染み込ませた布で拭き取り、拭き取り前後の重量を精密天秤(島津製作所社製AUW120D)で測定した。測定した重量差から平方メートル当たりに換算し、塗布量(g/m)を算出した。
【0133】
(実施例1-1)
押出機と380mm巾のTダイよりなる装置を使用し、Tダイから溶融した下記の樹脂組成物をフィルム状に押出し、20℃に温調した冷却ロールにキャストし静電密着させて厚み200μmの未延伸フィルムを得た。
樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)97質量部、及びポリアミド11(アルケマ社製、相対粘度2.5、融点186℃、バイオマス度100%)3.0質量部、多孔質シリカ微粒子(富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径2.0μm、細孔容積1.6ml/g)0.45質量部及び脂肪酸ビスアマイド(共栄社化学株式会社製エチエンビスステアリン酸アミド)0.15質量部からなる樹脂組成物。
得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機に導き、ロールの周速差を利用して、80℃でMD方向に1.73倍延伸した後、70℃でさらに1.85倍延伸した。引き続き、この一軸延伸フィルムにロールコーターで下記の塗布液(A)を塗布した後、70℃の温風で乾燥させつつ、連続的にテンター式延伸機に導き、110℃で予熱した後、TD方向に120℃で1.2倍、130℃で1.7倍、160℃で2.0倍延伸して、215℃で熱固定処理した後、215℃で7%緩和処理をした後に巻き取って接着性改質層(AEG)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。 得られた易接着性ポリアミドフィルムの評価結果を表2に示した。
【0134】
[塗布液(A):アクリルグラフト共重合ポリエステルの水系分散体]
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブにジメチルテレフタレート466質量部、ジメチルイソフタレート466質量部、ネオペンチルグリコール401質量部、エチレングリコール443質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.52質量部を仕込み、160~220℃で4時間かけてエステル交換反応を行った。次いでフマル酸23質量部を加えて200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧したのち0.2mmHgの減圧下で1時間30分攪拌しながら反応させてポリエステルを得た。得られたポリエステルは淡黄色透明で、ガラス転移温度60℃、重量平均分子量は12000であった。NMR測定等により得られた組成は次の通りであった。
・ジカルボン酸成分
テレフタル酸 48モル%
イソフタル酸 48モル%
フマル酸 4モル%
・ジオール成分
ネオペンチルグリコール 50モル%
エチレングリコール 50モル%
攪拌器、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、上記ポリエステル樹脂75質量部とメチルエチルケトン56質量部とイソプロピルアルコール19質量部とを入れ65℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、メタクリル酸17.5質量部とアクリル酸エチル7.5質量部の混合物と、アゾビスジメチルバレロニトリル1.2質量部とを25質量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.2ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、滴下終了後さらに2時間攪拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリング(5g)を行った後、水300質量部とトリエチルアミン25質量部を反応溶液に加え、1時間攪拌してグラフト化ポリエステルの分散体を調整した。その後、得られた分散体の温度を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により溜去して共重合ポリエステル水系分散体を得た。
【0135】
得られた分散体は、白色で平均粒子径300nm、25℃におけるB型粘度は50センチポワズであった。この分散体5gに重水1.25gを添加して固形分濃度を20質量%とした後、DSSを加えて、125MHz13C-NMRを測定した。ポリエステル主鎖のカルボニル炭素のシグナル(160-175ppm)の半値幅は∞(シグナルが検出されない)であり、グラフト部分のメタクリル酸のカルボニル炭素のシグナル(181-186ppm)の半値幅は110Hzであった。グラフト化反応終了時点でサンプリングした溶液を100℃で8時間真空下で乾燥を行い、その固形分について酸価の測定、ポリエステルのグラフト効率の測定(NMRの測定)、および加水分解によるグラフト部分の分子量の測定を行った。固形分の酸価は2300eq./10gであった。H-NMRの測定では、フマル酸由来のシグナル(δ=6.8-6.9ppm、doublet)が全く検出されなかったことから、ポリエステルのグラフト効率は100%であることを確認した。グラフト部分の分子量は、重量平均分子量10000であった。
しかる後、上記の如く得られた水系分散体を、固形分濃度5質量%になるように水で希釈して塗布液(A)を得た。
【0136】
(実施例1-2~1-9)
原料の樹脂組成物を表2のように変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で接着性改質層(AEG)を持つ二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。得られた易接着性ポリアミドフィルムの評価結果を表2に示した。
ただし、実施例1-6及び1-7においては、塗布液として前記塗布液(B):ポリウレタン樹脂の水系分散体を用い、接着性改質層(PU)が積層された易接着性ポリアミドフィルムを得た。
[塗布液(B):ポリウレタン樹脂の水系分散体]
(A)ポリウレタンおよび水系分散液の調製;ジカルボン酸成分としてアジピン酸を;そしてグリコール成分として1、4-ブタンジオール60モル%(グリコール成分の)、およびビスフェノールAのプロピレンオキサイド(1モル)付加物40モル%を用いて、Tgが-5℃のポリエステル(ポリエステルポリオール)を得た。このポリエステルにトルエンジイソシアネートを作用させてウレタンポリマーを得た。これをプレポリマーとし、1、6-ヘキサンジオールを作用させて鎖延長すると共にアミノカルボン酸塩を末端に反応させ、水不溶性でかつ水分散性のポリウレタンを得た。これを撹拌しながら熱水中に分散させ、25%水系分散液を得た。
上記ポリウレタンの水系分散液を固形分が5質量%になるように、イオン交換水およびイソプロピルアルコールの等量混合液中に加え希釈して塗布液(B)を得た。
【0137】
(比較例1-1~1-6)
表2に示した原料の樹脂組成物を使用し、接着性改質層を形成しない以外は実施例1-1と同様の方法で二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。シーラントフィルムとの接着性を良くするために熱固定処理及び緩和処理を行った後にフィルムの表面をコロナ放電処理した。評価結果を表2に示した。
ただし、比較例1-4においてはTダイから溶融樹脂をフィルム状に安定して押出すことができず、均質な未延伸フィルムが得られなかったため二軸延伸ができなかった。
【0138】
【表2】
【0139】
表2に示したとおり、実施例のフィルムは耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性の良好なフィルムが得られた。また、ヘイズが低く透明性が良好で、衝撃強度も強く、シーラントフィルムとのラミネート強度も高く、包装用フィルムとして優れていた。また、接着性改質層の存在のため、ラミネート強度、特に耐水ラミネート強度が優れていた。
比較例1-1及び比較例1-2の耐屈曲ピンホール性を改質する材料を含まない二軸延伸ポリアミドフィルムと比較例1-3のポリアミド11の含有量が少なすぎる二軸延伸ポリアミドフィルムは、耐屈曲ピンホール性が劣っていた。
比較例1-4は、ポリアミド11の含有量が多すぎるため、Tダイから溶融樹脂をフィルム状に安定して押出すことができないため均質な未延伸フィルムが得られず、二軸延伸ポリアミドフィルムが得られなかった。
比較例1-5では、耐屈曲ピンホール性を改質する材料として従来使用されているポリアミドエラストマー(アルケマ社製ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体、商品名「Pebax SA01」)を使用したところ、耐屈曲ピンホール性は良好であるが耐摩擦ピンホール性が劣っていた。また、長時間の生産をした時にダイスに劣化物が付着しやすく、長時間の連続生産ができないという欠点があった。
比較例1-6は、本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムに接着性改質層を設けず、代わりにコロナ処理を行い接着性を上げた。耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性は良好であったが、ラミネート強度及び耐水ラミネート強度が低かった。
【0140】
(実施例2-1)
熱固定処理温度及び緩和処理温度を218℃にした以外は、実施例1-1と同様にして接着性改質層(AEG)を持つ易接着性二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。得られた易接着性ポリアミドフィルムの評価結果を表3に示した。
【0141】
(実施例2-2~2-10及び比較例2-1~2-5)
原料の樹脂組成物を表3のように変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で接着性改質層を持つ易接着性ポリアミドフィルムを得た。得られた易接着性ポリアミドフィルムの評価結果を表3に示した。
尚、少なくとも一部がバイオマス由来の原料からなるポリアミド樹脂であるポリアミド410、ポリアミド610、ポリアミド1010としては、それぞれ下記のものを用いた。
ポリアミド410:(DSM社製、ECOPaXX Q150-E、融点250℃、バイオマス度71%)
ポリアミド610:(アルケマ社製、RilsanS SMNO、融点222℃、バイオマス度62.5%)
ポリアミド1010:(アルケマ社製、RilsanT TMNO、融点202℃、バイオマス度50%)
ただし、実施例2-7においては、塗布液として前記塗布液(B):ポリウレタン樹脂の水系分散体を用い、接着性改質層(PU)が積層された易接着性ポリアミドフィルムを得た。
実施例2-6及び比較例2-2の熱固定処理及び緩和処理は210℃で行った。
また、比較例2-4においてはTダイから溶融樹脂をフィルム状に安定して押出すことができず、均質な未延伸フィルムが得られなかったため二軸延伸ができなかった。
【0142】
【表3】
【0143】
表3に示したとおり、実施例のフィルムは耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性の両方が良好なフィルムが得られた。また、ヘイズが低く透明性が良好で、衝撃強度も強く、シーラントフィルムとのラミネート強度も高く、包装用フィルムとして優れていた。
比較例2-1及び比較例2-2の耐屈曲ピンホール性を改質する効果がある少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂を含まない二軸延伸ポリアミドフィルムと比較例2-3のポリアミド11の含有量が少なすぎる二軸延伸ポリアミドフィルムは、耐屈曲ピンホール性が劣っていた。
比較例2-4は、ポリアミド11の含有量が多すぎるため、Tダイから溶融樹脂をフィルム状に安定して押出すことができず、均質な未延伸フィルムが得られず、二軸延伸ポリアミドフィルムが得られなかった。
比較例2-5は、耐屈曲ピンホール性を改質する材料として従来使用されている前記ポリアミドエラストマーを使用したところ、耐屈曲ピンホール性は良好であるが耐摩擦ピンホール性が劣っていた。また、長時間の生産をした時にダイスに劣化物が付着しやすく、長時間の連続生産ができないという欠点があった。
【0144】
(実施例3-1)
押出機2台と380mm巾の共押出Tダイよりなる装置を使用し、フィードブロック法でB層/A層/B層の構成で積層してTダイから溶融樹脂をフィルム状に押出し、20℃に温調した冷却ロールにキャストし静電密着させて厚み200μmの未延伸フィルムを得た。
A層とB層の樹脂組成物は以下のとおりである。
A層を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)97質量部、及びポリアミド11(集盛社製、相対粘度2.5、融点186℃、バイオマス度100%)3.0質量部からなるポリアミド樹脂組成物。
B層を構成する樹脂組成物:ポリアミド6(東洋紡株式会社製、相対粘度2.8、融点220℃)95質量部、及びポリアミドMXD6(三菱瓦斯化学株式会社製、相対粘度2.1、融点237℃)5.0質量部、多孔質シリカ微粒子(富士シリシア化学株式会社製、平均粒子径2.0μm、細孔容積1.6ml/g)0.54質量部及び脂肪酸ビスアマイド(共栄社化学株式会社製エチエンビスステアリン酸アミド)0.15質量部からなる樹脂組成物。
なお、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みは、合計厚みが15μm、基材層(A層)の厚みが12μm、表裏の機能層(B層)の厚みがそれぞれ1.5μmずつになるように、フィードブロックの構成と押出し機の吐出量を調整した。
得られた未延伸フィルムを、ロール式延伸機に導き、ロールの周速差を利用して、80℃でMD方向に1.73倍延伸した後、70℃でさらに1.85倍延伸した。引き続き、この一軸延伸フィルムにロールコーターで前記塗布液(A)を塗布した後、70℃の温風で乾燥させつつ、連続的にテンター式延伸機に導き、110℃で予熱した後、TD方向に120℃で1.2倍、130℃で1.7倍、160℃で2.0倍延伸して、215℃で熱固定処理した後、215℃で7%緩和処理をした後に巻き取って接着性改質層(AEG)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。は得られた易接着性ポリアミドフィルムの評価結果を表4に示した。
【0145】
(実施例3-2~3-9)
A層とB層の樹脂組成物を表4のように変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で接着性改質層を持つ二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。得られた易接着性ポリアミドフィルムの評価結果を表4に示した。
ただし、実施例3-8及び実施例3-9においては、塗布液として前記塗布液(B):ポリウレタン樹脂の水系分散体を用い、接着性改質層(PU)が積層された易接着性ポリアミドフィルムを得た。
(比較例3-1~3-5)
表4に示した原料の樹脂組成物を使用し、接着性を上げるために接着性改質層を形成しない代わりに熱固定処理及び緩和処理を行った後に線状低密度ポリエチレンフィルムとドライラミネートする側のフィルム表面をコロナ放電処理した。評価結果を表4に示した。
ただし、比較例3-3においてはポリアミド11の含有量が多過ぎるため、Tダイから溶融樹脂をフィルム状に安定して押出すことができず均質な未延伸フィルムが得られなかったため二軸延伸ができなかった。
【0146】
【表4】
【0147】
表4に示したとおり、実施例のフィルムは耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性の良好なフィルムが得られた。また、ヘイズが低く透明性が良好で、かつ滑り性も良好であった。衝撃強度も強く、シーラントフィルムとのラミネート強度も高く、包装用フィルムとして優れていた。また、接着性改質層の存在のため、耐水ラミネート強度が優れていた。
また、実施例3-2、3-6、3-7で得られたフィルムのヘイズと動摩擦係数の値から、B層(機能層)には、微粒子と有機潤滑剤とポリアミドMXD6を含有させると透明性と滑り性の両方の特性が優れた二軸延伸ポリアミドフィルムが得られることがわかる。
比較例3-1のポリアミド11を含まない二軸延伸ポリアミドフィルム及び比較例3-2のポリアミド11の含有量が少ない二軸延伸ポリアミドフィルムは、耐屈曲ピンホール性が劣っていた。また接着性改質層もないので、耐水ラミネート強度も低かった。
比較例3-3は、ポリアミド11の含有量が多すぎるため、Tダイから溶融樹脂をフィルム状に安定して押出すことができないため均質な未延伸フィルムが得られず、二軸延伸ポリアミドフィルムが得られなかった。
比較例3-4では、耐屈曲ピンホール性を改質する材料として従来使用されている前記ポリアミドエラストマーを使用したところ、耐屈曲ピンホール性は良好であるが耐摩擦ピンホール性が劣っていた。また、長時間の生産をした時にダイスに劣化物が付着しやすく、長時間の連続生産ができないという欠点があった。
比較例3-5は、本発明における二軸延伸ポリアミドフィルムに接着性改質層を設けず、代わりにコロナ処理して接着性を上げた。耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性は良好であったが、耐水ラミネート強度が低かった。
【0148】
(実施例4-1)
熱固定処理温度及び緩和処理温度を218℃にした以外は、実施例3-1と同様にして接着性改質層(AEG)を持つ易接着性二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。得られた易接着性ポリアミドフィルムの評価結果を表5に示した。
【0149】
(実施例4-2~4-11及び比較例4-1~4-7)
A層とB層の樹脂組成物、熱固定温度などの製膜条件を表5のように変更した以外は、実施例4-1と同様の方法で易接着性ポリアミドフィルムを得た。得られた易接着性ポリアミドフィルムの評価結果を表5に示した。
ただし、実施例4-8においては、塗布液として前記塗布液(B):ポリウレタン樹脂の水系分散体を用い、接着性改質層(PU)が積層された易接着性ポリアミドフィルムを得た。
実施例4-6及び比較例4-2の熱固定処理及び緩和処理は210℃で行った。
また、比較例4-4においては基材層のポリアミド11の含有量が多過ぎるためTダイから溶融樹脂をフィルム状に安定して押出すことができず、均質な未延伸フィルムが得られなかったため二軸延伸ができなかった。
【0150】
【表5】
【0151】
表5に示したとおり、実施例のフィルムは耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性の両方が良好なフィルムが得られた。また、ヘイズが低く透明性が良好で、衝撃強度も強く、シーラントフィルムとのラミネート強度及び耐水ラミネート強度も高く、包装用フィルムとして優れていた。
比較例4-1及び比較例4-2においては、耐屈曲ピンホール性を改質する効果がある少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂を含まないポリアミドフィルムと比較例4-3のポリアミド11の含有量が少なすぎるポリアミドフィルムは、耐屈曲ピンホール性が劣っていた。
比較例4-4は、ポリアミド11の含有量が多すぎるため、Tダイから溶融樹脂をフィルム状に安定して押出すことができず均質な未延伸フィルムが得られず、二軸延伸ポリアミドフィルムも得られなかった。
比較例4-5においては、A層の厚み及び厚み率が小さいため、フィルムの耐屈曲ピンホール性が劣っていた。
比較例4-6においては、B層のポリアミド6樹脂の量が少ないため、フィルムの耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性が劣っていた。
比較例4-7は、耐屈曲ピンホール性を改質する材料として従来使用されている前記ポリアミドエラストマーを使用したところ、耐屈曲ピンホール性は良好であるが耐摩擦ピンホール性が劣っていた。また、長時間の生産をした時にダイスに劣化物が付着しやすく、長時間の連続生産ができないという欠点があった。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、耐衝撃性及び耐屈曲ピンホール性と耐摩擦ピンホール性が同時に優れていることから、食品包装等の包装材料の用途に好適に用いることができる。また、ラミネート強度及び耐水ラミネート強度が強いので、運搬時やボイル処理などの時に破れにくい各種包装用袋を提供することが出来る。更に、元来地上にあるバイオマス由来の原料から重合された樹脂を用いているので、カーボンニュートラルなフィルムであり、地上の二酸化炭素の増減に影響を少ない点で環境負荷を低減できる。
図1