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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】アウトリガ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 9/12 20060101AFI20241106BHJP
   B66C 23/78 20060101ALI20241106BHJP
   B66F 11/04 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
B60S9/12
B66C23/78 H
B66C23/78 C
B66F11/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020572353
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005896
(87)【国際公開番号】W WO2020166720
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019024145
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 勁太
(72)【発明者】
【氏名】神田 真輔
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078617(JP,A)
【文献】特開平10-230824(JP,A)
【文献】特開2017-024470(JP,A)
【文献】特開平11-059347(JP,A)
【文献】特開昭56-025035(JP,A)
【文献】特開平07-009957(JP,A)
【文献】特開平07-137614(JP,A)
【文献】米国特許第05580095(US,A)
【文献】特開2018-095372(JP,A)
【文献】特開2015-218054(JP,A)
【文献】特開2001-278591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/78
B60S 9/12
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に設けられ、前記走行体を支持しない非接地状態と前記走行体を支持する接地状態とに伸縮可能な複数のアウトリガと、
前記走行体に設けられ、前記走行体の傾斜を検出可能な傾斜センサと、
前記アウトリガの伸縮動作を制御するとともに、前記傾斜センサの検出信号を取得するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記アウトリガを前記非接地状態から1本ずつ伸長させ、その際の前記傾斜センサの検出値に基づいて前記接地状態であるか否かを判定する接地判定処理部を備えるアウトリガ制御装置。
【請求項2】
前記接地判定処理部は、前記傾斜センサの検出値の変化量が、予め設定した閾値を超えた場合に、前記接地状態であると判定する、請求項1に記載のアウトリガ制御装置。
【請求項3】
走行体に設けられ、前記走行体を支持しない非接地状態と前記走行体を支持する接地状態とに伸縮可能な複数のアウトリガと、
前記走行体に設けられ、前記走行体の傾斜を検出可能な傾斜センサと、
前記アウトリガの伸縮動作を制御するとともに、前記傾斜センサの検出信号を取得するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、複数の前記アウトリガを接地したと推定されるまで伸長させた後、複数の前記アウトリガのうちの1本を伸縮させ、この伸縮動作を行った際の前記傾斜センサの検出値の変化が予め設定された閾値を超えた場合に当該伸縮させたアウトリガが前記接地状態であると判定し、前記閾値以下の場合には非接地状態であると判定する接地判定処理部を備える、アウトリガ制御装置。
【請求項4】
前記アウトリガは、前記走行体の前後のそれぞれに左右一対設けられ、
それぞれのアウトリガは、伸縮して前記走行体を上下方向に移動可能なジャッキを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のアウトリガ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アウトリガ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン車、高所作業車、梯子車のような車載のブームや梯子を伸ばして作業を行う作業車などでは、アウトリガを接地させて作業時の車体の姿勢を安定するようにしている。このアウトリガは、走行時には短縮させて非接地状態とし、作業現場において伸長させて接地状態とし、車体を支持するようになっている。
【0003】
このようにアウトリガを用いて車体姿勢を安定させる際には、複数のアウトリガの全てが接地していることが必要である。そこで、アウトリガが接地したことを検出する接地センサを設け、アウトリガが接地しているか否かを検出するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の接地センサは、アウトリガにリミットスイッチ、ポテンショメータ、ロードセルなどのセンサを設け、アウトリガの伸縮量や接地反力などに基づいてアウトリガが接地しているか否かを検出するようにしている。また、各アウトリガに設けられた接地センサは、車載のコントローラと配線を介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-175797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、各アウトリガに接地センサが設けられ、その検出信号が配線を介してコントローラに送られるようになっている。このため、アウトリガの数だけ接地センサが必要であるとともに、この接地センサとコントローラとを接続する配線とが必要である。したがって、センサおよび配線の数の分だけコストを要し、かつ、配線が、走行体と可動部とにまたがって配線されているため、配線を非駆動部に設けたものと比較して、断線などが生じるおそれがあり、その分、信頼性の低下を招くおそれがある。
【0006】
本開示は、上記の問題点に着目してなされたもので、コストおよび信頼性の点で有利なアウトリガ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のアウトリガ制御装置は、
走行体に設けられ、前記走行体を支持しない非接地状態と前記走行体を支持する接地状態とに伸縮可能な複数のアウトリガと、
前記走行体に設けられ、前記走行体の傾斜を検出可能な傾斜センサと、
前記アウトリガの伸縮動作を制御するとともに、前記傾斜センサの検出信号を取得するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記アウトリガを前記非接地状態から1本ずつ伸長させ、その際の前記傾斜センサの検出値に基づいて前記接地状態であるか否かを判定する接地判定処理部を備える。
また、本開示の他のアウトリガ制御装置は、
走行体に設けられ、前記走行体を支持しない非接地状態と前記走行体を支持する接地状態とに伸縮可能な複数のアウトリガと、
前記走行体に設けられ、前記走行体の傾斜を検出可能な傾斜センサと、
前記アウトリガの伸縮動作を制御するとともに、前記傾斜センサの検出信号を取得するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、複数の前記アウトリガを接地したと推定されるまで伸長させた後、複数の前記アウトリガのうちの1本を伸縮させ、この伸縮動作を行った際の前記傾斜センサの検出値の変化が予め設定された閾値を超えた場合に当該伸縮させたアウトリガが前記接地状態であると判定し、前記閾値以下の場合には非接地状態であると判定する接地判定処理部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示のアウトリガ制御装置では、アウトリガの接地判定動作と、走行体に設けた傾斜センサの検出値とにより接地状態であるか非接地状態であるかを判定する。このため、各アウトリガに接地センサを設ける必要が無くなるとともに、各接地センサとコントローラとを接続する配線が不要となる。よって、接地センサおよび配線を削減してコスト低減を図ることが可能であるとともに、断線のおそれが無くなることで、信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1のアウトリガ制御装置を搭載したクレーン車CCの側面図である。
図2図2は、前記クレーン車CCの背面図である。
図3図3は、実施の形態1のアウトリガ制御装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図4図4は、実施の形態1のアウトリガ制御装置の接地判定処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態2のアウトリガ制御装置の接地判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示のアウトリガ制御装置を実現する最良の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(実施の形態1)
以下に、実施の形態1のアウトリガ制御装置A1について説明する。
このアウトリガ制御装置A1は、図1および図2に示すクレーン車CCに搭載されている。そこで、まず、クレーン車CCについて説明する。
【0012】
クレーン車CCは、走行体10と、ブーム20と、アウトリガ30とを備える。走行体10は、車輪11により自走可能な車両の車体である。
【0013】
ブーム20は、走行体10に水平方向に360度旋回可能に設けられた旋回台21に、起伏可能ならびに伸縮可能に設けられている。なお、ブーム20の起伏は、ブーム20と旋回台21との間に設けられた起伏シリンダ22の伸縮により実行される。また、ブーム20の伸縮は、ブームの内部に設けられた伸縮シリンダ23(図3参照)の伸縮により実行される。
【0014】
なお、図1では、ブーム20は、最小長さに短縮された倒伏状態であり、かつ、その先端が走行体10の前方を向いた格納姿勢(走行体10が走行する場合の姿勢)を表している。また、旋回台21を旋回させたり、ブーム20を格納姿勢から伸長させたり、起立させたりして作業を行うことができる。
【0015】
アウトリガ30は、いわゆるH形のもので、第1~第4のアウトリガ301、302、303、304を備える。すなわち、走行体10は、前側に設けられた左右一対の第1のアウトリガ301および第2のアウトリガ302と、後部に設けられた左右一対の第3のアウトリガ303および第4のアウトリガ304とを備える。
【0016】
なお、本明細書の説明で、前後左右上下の各方向は、クレーン車CCによる方向を基準とし、図において矢印FRの方向を前方、矢印RRの方向を後方、矢印Lの方向を左方向、矢印Rの方向を右方向、矢印UPの方向を上方、矢印DNの方向を下方とする。また、各アウトリガ301~304は、同様の構成のものを左右対称に設けているため、以下の説明で、これら4つのうちで特定のものを指す場合のみ301~304の符号を用い、特定のものを指さない場合は、単にアウトリガ30と表記する。
【0017】
アウトリガ30は、走行体10に設けられ、図2に示すように、左右方向に伸縮可能なビーム31と、ビーム31の先端部に設けられ、上下方向に伸縮可能なジャッキ32と、を有する。また、ジャッキ32の下端部には、略円盤状のフロート32aが設けられており、アウトリガ30の接地の際には、このフロート32aが接地する。そして、フロート32aを接地させてジャッキ32を上下に伸縮させることで走行体10を上下に移動させることができる。
【0018】
また、ビーム31およびジャッキ32は、それぞれ、不図示の油圧源(例えば、油圧ポンプおよび油タンク)に接続された油圧シリンダ331、332、333、334(図3参照)を有している。
【0019】
これらの油圧シリンダ331~334は、コントローラ100により制御されるアウトリガ油圧制御部110(図3参照)の作動に基づいて油圧の供給および排出を行うことで伸縮される。これにより、各アウトリガ301~304のビーム31が左右方向に伸縮し、ジャッキ32が上下方向に伸縮する。なお、アウトリガ油圧制御部110は、コントローラ100に制御されて、油圧シリンダ331、332、333、334のそれぞれに、油圧の供給、排出を行う切替弁を有する。
【0020】
なお、コントローラ100は、旋回台21を旋回させる駆動を行う旋回台駆動部21aや、ブーム20の起伏シリンダ22や伸縮シリンダ23を伸縮させるブーム油圧制御部220を制御する。また、コントローラ100は、ブーム20およびアウトリガ30を動作させる操作を行うための操作部200、及び、ブーム20およびアウトリガ30の動作状態を検出するためのセンサ群300と接続されている。
【0021】
センサ群300には、ブーム20の姿勢や旋回台21の旋回角度を検出するセンサや、前述の各シリンダ22、23、331~334に供給する油圧を検出するセンサが含まれるのに加え、走行体10の傾斜角度を検出する傾斜センサ310を有する。
【0022】
この傾斜センサ310は、走行体10の前後方向および左右方向への傾きを検出する、いわゆる二軸傾斜計である。この傾斜センサ310には、クレーン車CCのブーム20の作業時に、走行体10が最適な姿勢(基本的には水平)となるように姿勢を制御する際に、走行体10の傾斜を検出するための既存のセンサを適用できる。
【0023】
さらに、コントローラ100は、アウトリガ30を非接地状態から接地状態となるように動作させる際に、各アウトリガ310~304が接地したか否かの判定を行う接地判定処理を実行する接地判定処理部101を備える。
【0024】
以下に、この接地判定処理部101が実行する接地判定処理の流れについて説明する。本実施の形態1では、この接地判定処理は、アウトリガ30の接地動作と併せて実行されるもので、その処理の流れを図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0025】
まず、最初のステップS101において、コントローラ100は、非接地状態のアウトリガ30のうちの1本を指定する。この指定は、作業者による手動操作に基づいて行われてもよいが、本実施の形態1では、コントローラ100が、自動的に第1のアウトリガ301から第4のアウトリガ304を、順に接地させるアウトリガ30として指定するものとする。したがって、全てのアウトリガ301~304が非接地となっている状態では、まず、コントローラ100は、第1のアウトリガ301を指定する。
【0026】
次のステップS102において、コントローラ100は、その時点の傾斜センサ310の検出値(傾斜状態)を初期値T0として記録する。
そして、続くステップS103において、コントローラ100は、ステップS101にて指定したアウトリガ30(最初は、第1のアウトリガ301)のジャッキ32を連続的に伸長させる。なお、本実施の形態1の場合は、ジャッキ32の伸長動作を行う前に、ビーム31を所定量だけ走行体10の側方に伸長させる。このビーム31の伸長動作は、接地判定処理の実行開始時に、予め、全てのアウトリガ30のビーム31に対して行われてもよいし、ステップS103の処理を行う際に、接地させるアウトリガ30のビーム31に対して行われるようにしてもよい。
【0027】
次のステップS104において、コントローラ100は、傾斜センサ310から検出信号を取得し、傾斜センサ310の検出値Tnと、ステップS102で記録した初期値T0との差分が、予め設定した閾値Tlimを越えているか否かを判定する。検出値Tnと初期値T0との差分が閾値Tlimを越えている場合、ステップS105に進んで、コントローラ100は接地状態と判定する。一方、ステップS104において検出値Tnと初期値T0との差分が閾値Tlimを越えない場合は、ステップS106に進んで、コントローラ100は非接地状態と判定し、ステップS103に戻り、アウトリガ30の伸長動作を継続させる。
【0028】
なお、閾値Tlimは、アウトリガ30が接地した際に生じる走行体10の傾斜量に基づいて予め設定されている。すなわち、非接地状態のアウトリガ30を伸長させて接地し、その状態でさらに伸長を継続すると、走行体10の一箇所が上方に変位し、走行体10の傾斜状態が変化する。したがって、指定した1本のアウトリガ30を伸長させて接地させ、さらに、走行体10をアウトリガ30により支持するために必要なだけ伸長させたときに生じる傾斜量の変化を、実験やシミュレーションにより求める。そして、求めた傾斜量の変化に基づいて、アウトリガ30の接地および必要な伸長が生じたことを判定するために最適な閾値Tlimを設定する。
【0029】
ステップS105において接地状態と判定した場合、ステップS107において、コントローラ100は、ステップS101において指定したアウトリガ30の伸長動作を停止させ、ステップS108に進む。
【0030】
ステップS108において、コントローラ100は、第1~第4の全てのアウトリガ301~304が接地状態となったか否かを判定する。全てのアウトリガ301~304が接地状態となっていない場合は、ステップS109に進んで、コントローラ100は、未接地のアウトリガ30に接地動作を実行させる。また、4本のアウトリガ301~304の全てが接地状態となった場合は、処理を終了する。
【0031】
そして、ステップS109で未接地のアウトリガ30に接地動作を実行させる場合は、ステップS101に戻り、コントローラ100は、非接地状態のアウトリガ30の中から次に接地させるアウトリガ30を指定する。本実施の形態1では、前述したように、第1のアウトリガ301から第4のアウトリガ304の順に、接地させるアウトリガ30が指定される。
【0032】
なお、ステップS102において、コントローラ100は、次のアウトリガ30を伸長させる前の傾斜センサ310の検出値を、その都度、初期値T0として設定する。例えば、第1のアウトリガ301を接地させ所定量伸長させた場合に、走行体10は、水平状態から左前側が上昇した傾斜状態に変化する。そこで、コントローラ100は、第2のアウトリガ302を指定し、伸長させる場合、第2のアウトリガ302を伸長させる前の走行体10の左前側が上昇して傾斜した状態での傾斜センサ310の検出値を初期値T0として記録する。そして、この初期値T0とその後の傾斜センサ310の検出値Tnとの差分に基づいて、次の第2のアウトリガ302が接地状態となってさらに所定量上昇したか判定する。
【0033】
以上のステップS101~S109の処理を、4本のアウトリガ301~304に対してそれぞれ繰り返すことで、4本のアウトリガ301~304が全て接地し、かつ、所定量上昇した状態とすることができる。なお、このアウトリガ30の指定および伸長して接地させる順番は、この順番に限定されるものではなく、例えば、上方から見て時計回りの順や反時計回りの順など他の順番で行ってもよい。
【0034】
(実施の形態1の効果)
(1)実施の形態1のアウトリガ制御装置A1は、走行体10に設けられ、走行体10を支持しない非接地状態と走行体10を支持する接地状態とに伸縮可能な複数のアウトリガ30(301~304)と、走行体10に設けられ、走行体10の傾斜を検出可能な傾斜センサ310と、アウトリガ30の伸縮動作を制御するとともに、傾斜センサ310の検出信号を取得するコントローラ100と、を備える。さらに、コントローラ100は、アウトリガ30に所定の接地判定動作を行わせ、その際の傾斜センサ310の検出値に基づいて接地状態であるか否かを判定する接地判定処理部101を備える。
【0035】
したがって、アウトリガ30の動作と傾斜センサ310の検出とで接地状態であるか否かを判定するため、各アウトリガ30に接地センサを設ける必要が無くなるとともに、各接地センサとコントローラ100とを接続する配線が不要となる。よって、接地センサおよび配線を削減してコスト低減を図ることが可能であるとともに、断線のおそれが無くなることで、信頼性の向上を図ることができる。
【0036】
(2)実施の形態1のアウトリガ制御装置A1は、接地判定処理部101が、接地判定動作としてアウトリガ30を非接地状態から1本ずつ伸長させ、その際の傾斜センサ310の検出値に基づいて接地状態であるか否かを判定する。
【0037】
したがって、傾斜センサ310は、伸長させた1本のアウトリガ30が接地することによる走行体10の姿勢変化(傾斜)を検出するため、例えば、2本などの複数のアウトリガ30を同時に伸長させた場合と比較して、アウトリガ30の接地状態を確実に検出することができ、高い検出精度を得ることができる。
【0038】
(3)実施の形態1のアウトリガ制御装置A1では、接地判定処理部101は、傾斜センサ310の検出値の変化量としての検出値Tnと初期値T0との差分が、予め設定した閾値Tlimを超えたら接地状態と判定する。
【0039】
したがって、アウトリガ30を伸長させる前の走行体10の姿勢にかかわらず、伸長させたアウトリガ30による姿勢変化を高精度で検出することができる。これにより、アウトリガ30の接地状態を、傾斜センサ310の検出値に基づいて高精度で検出することができる。
【0040】
(4)実施の形態1において、アウトリガ30は、走行体10の前後にそれぞれ左右一対設けられ、それぞれのアウトリガ30は、上下方向に伸縮して走行体10を上下方向に移動可能なジャッキ32を有する。
【0041】
したがって、4本のアウトリガ301~304のそれぞれの接地状態を、各アウトリガ301~304の動作と1つの傾斜センサ310により検出することができる。よって、不要となる接地センサおよび配線の数も多く、上記(1)のコストおよび信頼性の効果がより高くなる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、アウトリガ制御装置の他の実施の形態について説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と共通する構成には当該実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略し、当該実施の形態1との相違点のみ説明する。
【0043】
実施の形態2は、実施の形態1の変形例であり、アウトリガ30の動作および傾斜センサ310の検出値に基づく接地判定処理が実施の形態1と異なる。
【0044】
以下に、実施の形態2のアウトリガ制御装置A2による接地判定処理の流れを説明する。実施の形態2における接地判定処理では、まず、全てのアウトリガ301~304の接地動作が行われ、その後、各アウトリガ301~304がそれぞれ接地状態であるか否かが判定される。
【0045】
ここで、まず、各アウトリガ30の接地動作について説明する。この接地動作では、4本のアウトリガ301、302、303、304のビーム31を図2に示すように、左右方向に伸長させ、さらに、ジャッキ32を、接地状態となったと推定されるまで、伸長させる。
【0046】
このジャッキ32の伸長は、作業者が操作部200を手動操作することにより行われてもよいし、コントローラ100による自動制御により行われてもよい。手動操作によりジャッキ32を伸長させる場合は、例えば、接地反力による走行体10の姿勢変化に伴う体感に基づいて接地したか否かが判定される。この場合、ジャッキ32が接地した際の走行体10の姿勢変化を作業者が体感して接地したと推定した時点で、ジャッキ32の伸長動作が停止される。
【0047】
また、自動制御によるジャッキ32の接地動作では、例えば、ビーム31を伸長させた後、接地するのに必要な所定の時間だけ、ジャッキ32の伸長動作が行われる。
【0048】
このようにして、ジャッキ32が接地したと推定されるまでジャッキ32を伸長させた後、次に、コントローラ100(接地判定処理部101)によりジャッキ32が確実に接地しているか否かの判定が行われる。
【0049】
以下に、コントローラ100(接地判定処理部101)による実施の形態2の接地判定処理を図5に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、この接地判定処理は、作業者が操作部200により所定の開始操作を行うことに伴い開始されてもよいし、前述のように自動制御でアウトリガ30を伸長させた場合は、その伸長動作後に自動的に開始されてもよい。
【0050】
まず、最初のステップS201において、コントローラ100は、接地判定動作として4本のアウトリガ301~304のうちの1本のジャッキ32を伸縮させる。この伸縮動作は、ジャッキ32の伸長動作と短縮動作とを交互に繰り返し行うものであり、所定回数あるいは所定時間実行する。
【0051】
次のステップS202において、コントローラ100は、ステップS201によるアウトリガ30のジャッキ32の伸縮動作を行った時の傾斜センサ310の検出信号を取得し、傾斜センサ310の検出値の変化量が予め設定された閾値を超えたか否か判定する。そして、変化量が閾値を超えた場合(肯定)には、コントローラ100は、ステップS201においてジャッキ32の伸縮動作を行ったアウトリガ30が接地状態であると判定する(ステップS203)。一方、変化量が閾値以下の場合(否定)には、コントローラ100は、ステップS201においてジャッキ32の伸縮動作を行ったアウトリガ30が非接地状態であると判定する(ステップS204)。
【0052】
すなわち、4本のアウトリガ301~304のうちの1本(例えば、アウトリガ301)のジャッキ32を、フロート32aが接地した状態で伸縮させると、走行体10は、接地した4点のうちの1点で所定量だけ上下動し、走行体10の傾斜角度が変化する。そこで、予め、4本のアウトリガ30が接地している状態で1本のジャッキ32を所定量伸縮させたときの傾斜角度の変化量を、実験やシミュレーションにより求め、これに基づいて閾値を設定しておく。したがって、ステップS202において、変化量が閾値を超えた場合に、アウトリガ(例えば、第1のアウトリガ301)のフロート32aが接地していると判定することができる。
【0053】
一方、伸縮させたアウトリガ30が接地していない場合は、走行体10の上下動がほとんど生じない。このため、傾斜センサ310の検出値の変化量が閾値を超えない場合、アウトリガ(例えば、第1のアウトリガ301)のフロート32aが接地していないと判定することができる。
【0054】
そして、フロート32aが被接地状態であると判定した場合には、該当するアウトリガ(例えば、第1のアウトリガ301)のジャッキ32を伸長させた上で、再度、ステップS201~S204による接地判定処理を行う。この動作は、フロート32aが接地していると判定するまで、繰り返し実行される。
【0055】
上記のステップS201~S204による接地判定を、4本のアウトリガ301~304について順に1本ずつ行い、判定結果に基づいて4本のアウトリガ301~304の全てを確実に接地させる。
【0056】
なお、すべてのアウトリガ30が接地した後は、走行体10の姿勢制御を行って、例えば、走行体10を水平に制御するが、この制御自体は、本開示の対象ではないため、説明を省略する。
【0057】
以上説明したように、実施の形態2のアウトリガ制御装置A2において、接地判定処理部101は、接地判定動作としてアウトリガ30を伸縮させ、この伸縮動作を行った際の傾斜センサ310の検出値の変化に基づいて接地状態を判定する。
【0058】
したがって、実施の形態2にあっても、上記(1)、(2)、(4)と同様に、4本のアウトリガ30に設ける接地センサおよび配線を削減してコスト低減を図ることが可能であるとともに、断線のおそれが無くなることで、信頼性の向上を図ることができる。また、4本のアウトリガ301~304のそれぞれの接地状態を、各アウトリガ301~304の動作と1つの傾斜センサ310により検出することができる。また、アウトリガ30を伸長させる前の走行体10の姿勢にかかわらず、伸縮させたアウトリガ30による姿勢変化、つまり接地状態を傾斜センサ310の検出値に基づいて検出することができる。
【0059】
以上、実施の形態について説明したが、本開示のアウトリガ制御装置の具体的な構成については上述の実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0060】
例えば、実施の形態では、アウトリガ制御装置をクレーン車CCに適用した例を示したが、アウトリガ制御装置を適用する走行体としては、クレーン車CCに限るものではなく、複数のアウトリガを備えた走行体であればよい。具体的には、クレーン車以外の、高所作業車、梯子車などの作業車の他、掘削装置などの産業機械などにも適用することができる。
【0061】
また、複数のアウトリガ30として、実施の形態では、4本のアウトリガ301~304を示したが、その数は、複数であれば4本に限るものではなく、例えば、左右に一対のアウトリガを設けたものにも適用することができる。さらに、実施の形態では、アウトリガ30として、ビーム31とジャッキ32とを備えたものを示したが、これに限定されず、少なくとも、伸縮して接地するものであればよい。また、走行体10を上下方向に移動可能に伸縮するものであれば、実施の形態で示したジャッキ32のように鉛直方向に伸縮するものに限定されず、例えば、特許第6258598号に記載のような斜め方向で上下に伸縮するものなど他の方向に伸縮するものでもよい。
【0062】
また、実施の形態では、接地判定処理時の接地状態を、初期値T0からの変化量や、アウトリガ30を伸縮させた際の傾斜センサ310の検出値の変化量に基づいて判定するものを示したが、これに限定されない。例えば、アウトリガ30の伸縮時の検出値の変化速度に基づいて変化速度が閾値を超えるか否かにより判定してもよい。すなわち、アウトリガ30が接地している場合は、接地していない場合と比較して、アウトリガ30の伸長動作時や伸縮動作時の傾斜角度の変化速度が速くなるため、この変化速度によりアウトリガ30の接地状態を判定することができる。
【0063】
また、実施の形態では、接地判定処理の際に、1本ずつアウトリガ30の伸長動作又は伸縮動作を行う例を示したが、これに限定されない。例えば、複数のアウトリガ30を同時に動作させて接地判定処理を行ってもよい。具体的には、実施の形態のように、4本のアウトリガ30を備える場合に、4本同時に伸長又は伸縮させると、4本の全てが接地している場合は、走行体10が略一定の傾きで上下することになる。一方、接地していないアウトリガ30が存在する場合、走行体10において接地していないアウトリガ30の方向の変位量が小さく、傾斜センサ310は、接地していないアウトリガ30の方向に傾斜する。このような変位量の違いによる傾斜状態の検出に基づいて、接地状態であるか非接地状態であるかの判定を行ってもよい。同様に、左右などの一対のアウトリガ30を同時に動作させて、その変位量の違いによる傾斜状態の検出に基づいて、接地状態であるか非接地状態であるかを判定するようにしてもよい。
【0064】
さらに、実施の形態1では、アウトリガ30の接地判定動作として伸長動作を行うものを示したが、これに限定されない。例えば、アウトリガ30を伸長させて、接地したと判定した後、実施の形態2のように、伸縮させたり、あるいは、短縮させたりして、その際の変化量に基づいて、接地状態であるか被接地状態であるかを判定するようにしてもよい。
【0065】
2019年2月14日出願の特願2019-024145の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0066】
A1,A2 アウトリガ制御装置
CC クレーン車
10 走行体
20 ブーム
30 アウトリガ
31 ビーム
32 ジャッキ
100 コントローラ
101 接地判定処理部
300 センサ群
301 第1のアウトリガ
302 第2のアウトリガ
303 第3のアウトリガ
304 第4のアウトリガ
310 傾斜センサ
図1
図2
図3
図4
図5