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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】車両用ドアの開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/611 20150101AFI20241106BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
E05F15/611
B60J5/04 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021003548
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108512
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】上岡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】竹下 直幸
(72)【発明者】
【氏名】辻 琢矢
(72)【発明者】
【氏名】川中 和之
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実公平06-013357(JP,Y2)
【文献】特開2003-278447(JP,A)
【文献】特開2001-049953(JP,A)
【文献】特開2005-141291(JP,A)
【文献】米国特許第09869119(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部の乗降口を開閉自在に覆う観音開き式のフロントドア及びリアドアで構成された車両用ドアを備え、乗員の操作によって前記リアドアを自動的に開閉させる車両用ドアの開閉装置であって、
前記リアドアを閉じるための操作を受け付ける閉扉スイッチと、
前記リアドアの開度が所定角度よりも大きい状態において、前記閉扉スイッチが操作された場合、前記リアドアの閉扉を開始し、前記所定角度で前記リアドアの閉扉を停止する第1閉扉手段と、
前記リアドアの開度が前記所定角度以下の状態において、前記閉扉スイッチが操作された場合、前記リアドアを全閉する第2閉扉手段とを備え
前記閉扉スイッチは、
前記リアドアを前記所定角度まで閉じる操作を受け付ける第1閉扉スイッチと、
前記リアドアを全閉する操作を受け付ける第2閉扉スイッチとで構成された
車両用ドアの開閉装置。
【請求項2】
前記第1閉扉手段は、
前記第2閉扉手段による前記リアドアの閉扉速度よりも遅い閉扉速度で、前記リアドアを閉じる構成である
請求項1に記載の車両用ドアの開閉装置。
【請求項3】
前記所定角度は、
平面視において、車両前後方向に略平行な仮想直線に対して10°の角度である
請求項1または請求項2に記載の車両用ドアの開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば乗員が乗降する乗降口を覆う観音開き式の車両用ドアを、乗員の操作によって自動的に開閉させるような車両用ドアの開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、車両側部に設けた乗員が乗降する乗降口は、車体に開閉自在に支持された車両用ドアで覆われている。
この車両用ドアとしては、例えば、乗降口の前端縁をなす車体に開閉自在に支持されたフロントドアと、乗降口の後端縁をなす車体に開閉自在に支持されたリアドアとで構成された、所謂、観音開き式の車両用ドアが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、観音開き式の車両用ドアを備えた車両は、フロントドア及びリアドアを全開にすることで乗降口を大きく確保できるため、車室内への積載物の積み下ろしが行いやすいという利点がある。
【0004】
そこで、運転席の後方のスペース、つまり後席のスペースを、例えば車椅子の収納スペースとすることで、観音開き式の車両用ドアを備えた車両は、特別な装置を設けることなく、車椅子を車両に積載できる。
【0005】
この際、車椅子を利用する乗員は、運転席に着座した状態で、車椅子の積み下ろしができるが、体格が小柄な場合、全開状態のリアドアに手が届きにくいため、リアドアを自力で閉じられないことがあった。
【0006】
そこで、例えば特許文献1のように、乗員の操作によってリアドアを自動的に閉扉可能にすることで、小柄な乗員や体が不自由な乗員がリアドアを閉じられるようにすることが考えられる。さらに、例えば特許文献2の技術を適用して、リアドアの閉扉速度を途中で減速することで、運転席に着座した乗員が、リアドアを安全に閉じられるようにすることも考えられる。
【0007】
しかしながら、体が不自由な乗員の場合、乗員は、運転席に着座した状態で車椅子などの積載物を車室内に積み込むため、積載物が車室外にはみ出した状態で積み込まれることがある。
【0008】
このような状態でリアドアを自動的に閉じた場合、リアドアと積載物とが接触する、あるいは積載物を挟み込むことで、リアドアを車体に係合できないだけでなく、積載物やリアドアが損傷するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-278447号公報
【文献】特開平6-255370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、観音開き式の車両用ドアにおけるリアドアを、積載物やリアドアの損傷を抑えて安全に閉じられる車両用ドアの開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、車両側部の乗降口を開閉自在に覆う観音開き式のフロントドア及びリアドアで構成された車両用ドアを備え、乗員の操作によって前記リアドアを自動的に開閉させる車両用ドアの開閉装置であって、前記リアドアを閉じるための操作を受け付ける閉扉スイッチと、前記リアドアの開度が所定角度よりも大きい状態において、前記閉扉スイッチが操作された場合、前記リアドアの閉扉を開始し、前記所定角度で前記リアドアの閉扉を停止する第1閉扉手段と、前記リアドアの開度が前記所定角度以下の状態において、前記閉扉スイッチが操作された場合、前記リアドアを全閉する第2閉扉手段とを備え、前記閉扉スイッチは、前記リアドアを前記所定角度まで閉じる操作を受け付ける第1閉扉スイッチと、前記リアドアを全閉する操作を受け付ける第2閉扉スイッチとで構成されたことを特徴とする
【0012】
記リアドアの開度とは、平面視において車両前後方向に略平行な仮想直線に対するリアドアの角度のことをいう。
この発明によれば、車両用ドアの開閉装置は、観音開き式の車両用ドアにおけるリアドアを、積載物やリアドアの損傷を抑えて安全に閉じることができる。
【0013】
具体的には、車両用ドアの開閉装置は、リアドアの閉扉を所定角度で停止するため、リアドアを2段階の過程を経て全閉することができる。このため、車両用ドアの開閉装置は、リアドアの閉扉が所定角度で停止した際、リアドアと積載物とが接触するか否かを乗員に確認させる機会を確保することができる。
【0014】
さらに、リアドアの閉扉が所定角度で停止するため、仮にリアドアと積載物とが接触したとしても、車両用ドアの開閉装置は、リアドアが停止することなく全閉した場合に比べて、積載物とリアドアとが強く接触することを抑えられる。
これにより、車両用ドアの開閉装置は、観音開き式の車両用ドアにおけるリアドアを、積載物やリアドアの損傷を抑えて安全に閉じることができる。
【0015】
さらに、この発明における前記閉扉スイッチは、前記リアドアを前記所定角度まで閉じる操作を受け付ける第1閉扉スイッチと、前記リアドアを全閉する操作を受け付ける第2閉扉スイッチとで構成されたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、車両用ドアの開閉装置は、リアドアを所定角度まで閉じるための操作と、リアドアを全閉するための操作とを、それぞれ別々の閉扉スイッチで受け付けることになる。このため、車両用ドアの開閉装置は、リアドアと積載物とが接触するか否かを乗員に確認させる機会をより確実に確保することができる。
【0017】
さらに、車両用ドアの開閉装置は、第1閉扉スイッチから第2閉扉スイッチへ移行させる動作を乗員に行わせることで、リアドアと積載物とが接触するか否かの確認を、乗員に意識させることができる。
これにより、車両用ドアの開閉装置は、積載物やリアドアの損傷をさらに確実に抑えて、リアドアをより一層安全に閉じることができる。
【0018】
この発明の態様として、前記第1閉扉手段は、前記第2閉扉手段による前記リアドアの閉扉速度よりも遅い閉扉速度で、前記リアドアを閉じる構成であってもよい。
この構成によれば、車両用ドアの開閉装置は、リアドアを車体に係合させるのに必要な閉扉速度よりも遅い速度で、リアドアを所定角度まで閉じることになる。
【0019】
このため、車両用ドアの開閉装置は、リアドアを所定角度まで閉じる過程において、車室外にはみ出した積載物とリアドアとが強く接触することをより防止できる。これにより、車両用ドアの開閉装置は、積載物やリアドアの損傷をより抑えることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記所定角度は、平面視において、車両前後方向に略平行な仮想直線に対して10°の角度であってもよい。
この構成によれば、車両用ドアの開閉装置は、リアドアの係合に必要な慣性力を得られる開度でリアドアの閉扉を停止させることができる。このため、車両用ドアの開閉装置は、リアドアを確実に閉じて車体に係合することができる。
【0021】
さらに、リアドアの閉扉が所定角度で停止した際、車両用ドアの開閉装置は、リアドアを積載物に近接させることができる。このため、車両用ドアの開閉装置は、リアドアを全閉した際にリアドアと積載物とが接触するか否かを、乗員に容易に予測させることができる。
これにより、車両用ドアの開閉装置は、積載物やリアドアの損傷をさらに抑えて、リアドアをさらに安全に閉じることができる
【発明の効果】
【0022】
発明により、観音開き式の車両用ドアにおけるリアドアを、積載物やリアドアの損傷を抑えて安全に閉じられる車両用ドアの開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車両右側から見た車両の外観を示す側面図。
図2】車両用ドアが開いた状態における車両の外観を示す側面図。
図3】車両用ドアが開いた状態における車両の外観を示す平面図。
図4】車両用ドアの開閉装置における内部構成を示すブロック図。
図5】各スイッチの外観を示す平面図。
図6】リアドア閉扉処理の動作を示すフローチャート。
図7】所定角度まで閉じた状態のリアドアを示す平面図。
図8】第1閉扉スイッチ及び第2閉扉スイッチの状態と、リアドアの状態との関係を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の車両1は、右ハンドル車であって、乗員が乗降する乗降口Gを車両用ドア(フロントドア9及びリアドア10)で覆うとともに、乗員の操作によってリアドア10が自動的に開閉するような車両である。このような車両1における車両用ドアの開閉装置20について、図1から図8を用いて説明する。
【0025】
なお、図1は車両右側から見た車両1の側面図を示し、図2は車両用ドアが開いた状態における車両1の側面図を示し、図3は車両用ドアが開いた状態における車両1の平面図を示し、図4は車両用ドアの開閉装置20におけるブロック図を示している。
【0026】
さらに、図5は各スイッチの外観の平面図を示し、図6はリアドア閉扉処理のフローチャートを示し、図7は所定角度まで閉じた状態のリアドア10の平面図を示し、図8は第1閉扉スイッチ22及び第2閉扉スイッチ23の状態と、リアドア10の状態との関係のタイムチャートを示している。
【0027】
また、図中において、矢印Fr及び矢印Rrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。さらに、図中の上側は車両上方を示し、図中の下側は車両下方を示している。
【0028】
まず、車両1は、図1及び図2に示すように、車両右側の前輪2と後輪3との間において、車両前後方向または車両上下方向に延びる閉断面部材で側部車体を構成するとともに、乗員が乗降する乗降口Gを構成している。
【0029】
具体的には、車両1の側部車体は、図1に示すように、車両前後方向に延びるサイドシル4と、サイドシル4の前部から上方へ延びるヒンジピラー5と、サイドシル4の後部から上方へ延びるリアピラー6とを備えている。
【0030】
さらに、車両1の側部車体は、図1に示すように、側面視において、ヒンジピラー5の上端から車両上方後方へ延びるフロントピラー7と、フロントピラー7の上端をリアピラー6の上端に連結するルーフレール8とを備えている。
【0031】
そして、車両1の側部車体は、図2に示すように、乗員が乗降する乗降口Gを、サイドシル4、ヒンジピラー5、リアピラー6、フロントピラー7、及びルーフレール8で囲われた開口で構成している。
【0032】
この乗降口Gは、図1及び図2に示すように、車両前方に配置されたフロントドア9と、フロントドア9の車両後方に配置されたリアドア10とで構成された車両用ドアによって、開閉自在に覆われている。
【0033】
車両1の車両用ドアは、図1及び図2に示すように、フロントドア9がドアヒンジ(図示省略)を介してヒンジピラー5に開閉自在に支持され、リアドア10がドアヒンジ(図示省略)を介してリアピラー6に開閉自在に支持された所謂、観音開き式のドアである。
【0034】
より詳しくは、フロントドア9は、図1及び図2に示すように、運転席Sへの乗降が可能なように、乗降口Gの前部を開閉自在に覆っている。なお、運転席Sの車両後方には、図示を省略した後席が設けられるとともに、後席との間に例えば車椅子などの積載物を収容可能な収容スペースVが設けられている。
【0035】
一方、リアドア10は、図1及び図2に示すように、後席(図示省略)への乗降と、収容スペースVへの積載物の積み下ろしとが可能なように、乗降口Gの後部を開閉自在に覆っている。
なお、リアドア10は、全閉状態において、側部車体であるサイドシル4及びルーフレール8に係合されるとともに、フロントドア9が開いた状態において、開閉可能に構成されている。
【0036】
さらに、リアドア10は、図3に示すように、平面視において、車両前後方向に沿った仮想直線に対するリアドア10の角度(以下、ドア開度θとする)が、0°から80°となる範囲で開閉可能に支持されている。
そして、リアドア10は、運転席Sに着座した乗員が、車室内に設けたスイッチを操作することで、自動的に開閉可能に構成されている。
【0037】
引き続き、上述した車両1のリアドア10を自動的に開閉する車両用ドアの開閉装置20について、図4から図8を用いて詳述する。
車両用ドアの開閉装置20は、図4に示すように、運転席Sに着座した乗員の操作を受け付ける開扉スイッチ21、第1閉扉スイッチ22、及び第2閉扉スイッチ23を備えている。
【0038】
さらに、車両用ドアの開閉装置20は、図4に示すように、車両用ドアの開閉状態を検知するフロントドア開閉検知センサ24及びリアドア開閉検知センサ25と、リアドア10を開閉させる駆動ユニット26とを備えている。
加えて、車両用ドアの開閉装置20は、図4に示すように、リアドア10の開度を検知するドア開度センサ27と、上述した各部の動作を制御する開閉制御部28とを備えている。
【0039】
詳述すると、開扉スイッチ21、第1閉扉スイッチ22、及び第2閉扉スイッチ23は、運転席Sに着座した乗員が操作可能な所定位置、例えばインストルメントパネルに並置されている。
【0040】
開扉スイッチ21は、例えば図5に示すように、乗員から見て最も右側に配置されている。この開扉スイッチ21は、リアドア10を開くための操作を受け付けるスイッチであって、乗員による操作を検知する機能と、乗員による操作を受け付けたことを示す信号を開閉制御部28に出力する機能を有している。
【0041】
また、第1閉扉スイッチ22は、例えば図5に示すように、乗員から見て開扉スイッチ21の左側に配置されている。なお、第1閉扉スイッチ22は、開扉スイッチ21に対して所定間隔を隔てて並置されている。
【0042】
この第1閉扉スイッチ22は、所定角度よりも大きいドア開度θで開いているリアドア10を、所定角度まで閉じるための操作を受け付けるスイッチであって、乗員による操作を検知する機能と、乗員による操作を受け付けたことを示す信号を開閉制御部28に出力する機能を有している。
なお、所定角度は、リアドア10を側部車体に係合させるのに必要な最低限の慣性力を得られる角度であって、本実施形態では、所定角度を10°としている。
【0043】
また、第2閉扉スイッチ23は、例えば図5に示すように、乗員から見て第1閉扉スイッチ22の左側に配置されている。なお、第2閉扉スイッチ23は、開扉スイッチ21と第1閉扉スイッチ22との間隔よりも狭い間隔を隔て、第1閉扉スイッチ22の左側に配置されている。
【0044】
この第2閉扉スイッチ23は、所定開度以下のドア開度θで開いているリアドア10を全閉させるための操作を受け付けるスイッチであって、乗員による操作を検知する機能と、乗員による操作を受け付けたことを示す信号を開閉制御部28に出力する機能を有している。
【0045】
また、フロントドア開閉検知センサ24は、詳細な図示を省略するが、側部車体またはフロントドア9に配置されている。このフロントドア開閉検知センサ24は、フロントドア9の開閉状態を検知する機能と、フロントドア9が開いていることを示す信号を開閉制御部28に出力する機能とを有している。
【0046】
また、リアドア開閉検知センサ25は、詳細な図示を省略するが、側部車体またはリアドア10に配置されている。このリアドア開閉検知センサ25は、リアドア10の開閉状態を検知する機能と、リアドア10が開いていることを示す信号を開閉制御部28に出力する機能とを有している。
【0047】
また、駆動ユニット26は、詳細な図示を省略したモーター、リンク機構、及びアクチュエータなどで構成され、リアドア10の内部に配置されている。なお、駆動ユニット26は、アクチュエータ及び図示を省略したヒンジを介して、リアピラー6に連結されている。
【0048】
この駆動ユニット26は、開閉制御部28からの制御信号に基づいて動作して、リアドア10を開閉させる機能と、駆動ユニット26を構成する各部の動作状態を示す信号を開閉制御部28に出力する機能とを有している。
【0049】
また、ドア開度センサ27は、リアドア10の内部に配置され、ドア開度θを検出する機能と、検出したドア開度θを示す開度信号を開閉制御部28に出力する機能とを有している。
【0050】
また、開閉制御部28は、CPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成され、リアドア10の内部に配置されている。この開閉制御部28は、開扉スイッチ21、第1閉扉スイッチ22、及び第2閉扉スイッチ23との各種信号の授受に係る処理機能を有している。
【0051】
さらに、開閉制御部28は、フロントドア開閉検知センサ24、リアドア開閉検知センサ25、ドア開度センサ27、及び駆動ユニット26との各種信号の授受に係る処理機能と、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
【0052】
なお、開閉制御部28は、開扉スイッチ21、第1閉扉スイッチ22、及び第2閉扉スイッチ23からの信号を取得している間だけ、駆動ユニット26に制御信号を出力して、リアドア10の開閉を行うように構成されている。
【0053】
次に、上述した構成の車両用ドアの開閉装置20において、フロントドア9及びリアドア10が開いた際に、開閉制御部28が開始するリアドア閉扉処理について、図6を用いて説明する。
リアドア閉扉処理を開始すると、開閉制御部28は、図6に示すように、ドア開度センサ27から取得した開度信号に基づいて、ドア開度θが所定角度よりも大きいか否かを判定する(ステップS101)。なお、本実施形態では、上述したように所定角度を10°としている。
【0054】
ドア開度θが所定角度よりも大きい場合(ステップS101:Yes)、開閉制御部28は、第1閉扉スイッチ22からの信号を取得したか否かを判定する(ステップS102)。これにより、開閉制御部28は、乗員による第2閉扉スイッチ23の操作を、ドア開度θが所定角度以下になるまで無効化している。
【0055】
第1閉扉スイッチ22からの信号を取得した場合(ステップS102:Yes)、開閉制御部28は、図6に示すように、乗員が第1閉扉スイッチ22を操作している状態と判定し、駆動ユニット26に制御信号を出力して、リアドア10の閉扉を開始する(ステップS103)。
【0056】
この際、駆動ユニット26は、開閉制御部28からの制御信号に基づいて、後述するステップS107でのリアドア10の閉扉速度よりも遅い閉扉速度で、リアドア10を閉じ始める。
なお、後述するステップS107でのリアドア10の閉扉速度は、所定角度のドア開度θで開いているリアドア10を閉じた際、リアドア10を側部車体に係合させるのに必要な閉扉速度とする。
【0057】
その後、開閉制御部28は、図6に示すように、ドア開度センサ27からの開度信号に基づいて、ドア開度θが所定角度であるか否かを判定する(ステップS104)。
ドア開度θが所定角度の場合(ステップS104:Yes)、開閉制御部28は、駆動ユニット26に制御信号を出力して、リアドア10の閉扉を停止する(ステップS105)。
【0058】
この際、リアドア10は、図7に示すように、平面視において、側部車体に近接した状態で停止する。
リアドア10の閉扉を停止すると、開閉制御部28は、第2閉扉スイッチ23からの信号を取得したか否かを判定する(ステップS106)。
【0059】
第2閉扉スイッチ23からの信号を取得した場合(ステップS106:Yes)、開閉制御部28は、乗員が第2閉扉スイッチ23を操作している状態と判定し、駆動ユニット26に制御信号を出力して、リアドア10の閉扉を再開する(ステップS107)。
この際、駆動ユニット26は、開閉制御部28からの制御信号に基づいて、上述したステップS103でのリアドア10の閉扉速度よりも速く、かつリアドア10を側部車体に係合可能な速度でリアドア10を閉じ始める。
【0060】
その後、開閉制御部28は、図6に示すように、リアドア開閉検知センサ25からの信号、及びドア開度センサ27からの開度信号に基づいて、リアドア10が全閉(ドア開度θが0°)か否かを判定する(ステップS108)。
リアドア10が全閉の場合(ステップS108:Yes)、開閉制御部28は、リアドア10が側部車体に係合されたものとして、リアドア閉扉処理を終了する。
【0061】
一方、リアドア10が全閉でない場合(ステップS108:No)、開閉制御部28は、リアドア10が閉じられている最中、あるいは乗員による第2閉扉スイッチ23の操作が中断されて、リアドア10の閉扉が停止している状態と判定する。その後、開閉制御部28は、処理をステップS101に戻して、リアドア10が全閉されるまで、ステップS101からステップS108の処理を繰り返す。
【0062】
また、図6のステップS101において、ドア開度θが所定角度以下の場合(ステップS101:No)、開閉制御部28は、処理をステップS106に進めて、第2閉扉スイッチ23からの信号を取得したか否かを判定する。これより、開閉制御部28は、ドア開度θが所定角度以下の場合、乗員による第1閉扉スイッチ22の操作を無効化している。
【0063】
また、図6のステップS102において、第1閉扉スイッチ22からの信号を取得していない場合(ステップS102:No)、開閉制御部28は、乗員が第1閉扉スイッチ22を操作していない、あるいは乗員による第1閉扉スイッチ22の操作が中断されたと判定する。その後、開閉制御部28は、ステップS108を介して、処理をステップS101に戻す。
【0064】
また、図6のステップS104において、ドア開度θが所定角度でない場合(ステップS104:No)、開閉制御部28は、リアドア10が閉じられている最中として、ステップS108を介して、処理をステップS101に戻す。その後、開閉制御部28は、ステップS104でドア開度θが所定角度か否かを再度判定する。
【0065】
また、図6のステップS106において、第2閉扉スイッチ23からの信号を取得していない場合(ステップS106:No)、開閉制御部28は、乗員が第2閉扉スイッチ23を操作していない、または第2閉扉スイッチ23の操作が中断されたと判定する。そして、開閉制御部28は、ステップS108を介して、処理をステップS101に戻す。
【0066】
このように、車両用ドアの開閉装置20は、所定角度よりも大きいドア開度θでリアドア10が開いている状態において、第1閉扉スイッチ22の操作を受け付けて、リアドア10を所定角度まで閉扉している。
【0067】
さらに、車両用ドアの開閉装置20は、所定角度以下のドア開度θでリアドア10が開いている状態において、第2閉扉スイッチ23の操作を受け付けてリアドア10を全閉している。
【0068】
次に、上述した車両用ドアの開閉装置20において、第1閉扉スイッチ22及び第2閉扉スイッチ23からの信号と、リアドア10の動作状態との関係の一例を、図8を用いて説明する。なお、リアドア10は、ドア開度θ=80°で開いているものとする。
【0069】
まず、図8の時間T1において、第1閉扉スイッチ22が操作されると、開閉制御部28は、閉扉速度一定でリアドア10を閉じ始める。
そして、図8の時間T2において、ドア開度θが10°になると、開閉制御部28は、第1閉扉スイッチ22からの信号を取得していても、リアドア10の閉扉を停止する。
【0070】
このようにして、車両用ドアの開閉装置20は、ドア開度θが10°以下の場合、第1閉扉スイッチ22の操作を無効化することで、リアドア10と積載物とが接触するか否かを乗員に確認させる機会を確保している。
さらに、図8の時間T3において、乗員が第2閉扉スイッチ23を操作すると、開閉制御部28は、時間T1から時間T2の間での閉扉速度よりも速い閉扉速度で、リアドア10の閉扉を再開する。
【0071】
これにより、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10を勢いよく閉めて側部車体に係合させている。
そして、図8の時間T4において、ドア開度θが0°、すなわちリアドア10が全閉されると、開閉制御部28は、全ての処理を終了する。
【0072】
以上のように、本実施形態における車両用ドアの開閉装置20は、車両側部の乗降口を開閉自在に覆う観音開き式のフロントドア及びリアドア10で構成された車両用ドアを備え、乗員の操作によってリアドア10を自動的に開閉させる装置である。
この車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10を閉じるための操作を受け付ける閉扉スイッチ(第1閉扉スイッチ22及び第2閉扉スイッチ23)を備えている。
【0073】
さらに、車両用ドアの開閉装置20は、ドア開度θが所定角度よりも大きい状態において、第1閉扉スイッチ22が操作された場合、リアドア10の閉扉を開始し、所定角度でリアドア10の閉扉を停止する第1閉扉手段(駆動ユニット26、ドア開度センサ27、開閉制御部28)を備えている。
【0074】
加えて、車両用ドアの開閉装置20は、ドア開度θが所定角度以下の状態において、第2閉扉スイッチ23が操作された場合、リアドア10を全閉する第2閉扉手段(駆動ユニット26、ドア開度センサ27、開閉制御部28)を備えたものである。
【0075】
これによれば、車両用ドアの開閉装置20は、観音開き式の車両用ドアにおけるリアドア10を、積載物やリアドア10の損傷を抑えて安全に閉じることができる。
具体的には、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10の閉扉を所定角度で停止するため、リアドア10を2段階の過程を経て全閉することができる。
【0076】
このため、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10の閉扉が所定角度で停止した際、リアドア10と積載物とが接触するか否かを乗員に確認させる機会を確保することができる。
【0077】
さらに、リアドア10の閉扉が所定角度で停止するため、仮にリアドア10と積載物とが接触したとしても、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10が停止することなく全閉した場合に比べて、積載物とリアドア10とが強く接触することを抑えられる。
これにより、車両用ドアの開閉装置20は、観音開き式の車両用ドアにおけるリアドア10を、積載物やリアドア10の損傷を抑えて安全に閉じることができる。
【0078】
また、第1閉扉手段は、第2閉扉手段によるリアドア10の閉扉速度よりも遅い閉扉速度で、リアドア10を閉じる構成である。
この構成によれば、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10を車体に係合させるのに必要な閉扉速度よりも遅い速度で、リアドア10を所定角度まで閉じることになる。
【0079】
このため、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10を所定角度まで閉じる過程において、車室外にはみ出した積載物とリアドア10とが強く接触することをより防止できる。これにより、車両用ドアの開閉装置20は、積載物やリアドア10の損傷をより抑えることができる。
【0080】
また、所定角度は、平面視において、車両前後方向に略平行な仮想直線に対して10°の角度である。
この構成によれば、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10の係合に必要な慣性力を得られる開度でリアドア10の閉扉を停止させることができる。このため、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10を確実に閉じて車体に係合することができる。
【0081】
さらに、リアドア10の閉扉が所定角度で停止した際、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10を積載物に近接させることができる。このため、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10を全閉した際にリアドア10と積載物とが接触するか否かを、乗員に容易に予測させることができる。
これにより、車両用ドアの開閉装置20は、積載物やリアドア10の損傷をさらに抑えて、リアドア10をさらに安全に閉じることができる。
【0082】
また、閉扉スイッチは、リアドア10を所定角度まで閉じる操作を受け付ける第1閉扉スイッチ22と、リアドア10を全閉する操作を受け付ける第2閉扉スイッチ23とで構成されたものである。
【0083】
この構成によれば、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10を所定角度まで閉じるための操作と、リアドア10を全閉するための操作とを、それぞれ別々の閉扉スイッチ(第1閉扉スイッチ22及び第2閉扉スイッチ23)で受け付けることになる。このため、車両用ドアの開閉装置20は、リアドア10と積載物とが接触するか否かを乗員に確認させる機会をより確実に確保することができる。
【0084】
さらに、車両用ドアの開閉装置20は、第1閉扉スイッチ22から第2閉扉スイッチ23へ移行させる動作を乗員に行わせることで、リアドア10と積載物とが接触するか否かの確認を、乗員に意識させることができる。
これにより、車両用ドアの開閉装置20は、積載物やリアドア10の損傷をさらに確実に抑えて、リアドア10をより一層安全に閉じることができる。
【0085】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の閉扉スイッチは、実施形態の第1閉扉スイッチ22及び第2閉扉スイッチ23に対応し、
以下同様に、
リアドアの開度は、ドア開度θに対応し、
第1閉扉手段は、駆動ユニット26、ドア開度センサ27、及び開閉制御部28に対応し、
第2閉扉手段は、駆動ユニット26、ドア開度センサ27、及び開閉制御部28に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0086】
例えば、上述の実施形態において、ドア開度センサ27を備えた車両用ドアの開閉装置20としたが、これに限定せず、ドア開度センサ27を設けず、駆動ユニット26の各種信号からドア開度θの推定値を算出する構成であってもよい。
【0087】
また、リアドア10を所定角度まで閉じるための操作を第1閉扉スイッチ22で受け付け、リアドア10を全閉するための操作を第2閉扉スイッチ23で受け付ける構成としたが、これに限定しない。例えば、リアドア10を所定角度まで閉じるための操作、及びリアドア10を全閉するための操作を、1つの閉扉スイッチで受け付ける構成であってもよい。
【0088】
また、図6のステップS105において、リアドア10の閉扉が停止した際、リアドア10の安全確認を乗員に促すメッセージを音声で出力する、あるいはメータ内の画面に表示するなどしてもよい。
【0089】
また、0°から80°のドア開度θで開閉可能なリアドア10としたが、これに限定せず、適宜のドア開度θで開閉可能なリアドアであってもよい。
また、所定角度を10°としたが、これに限定せず、リアドア10を側部車体に係合可能であれば、適宜の角度としてもよい。
【符号の説明】
【0090】
9…フロントドア
10…リアドア
20…車両用ドアの開閉装置
22…第1閉扉スイッチ
23…第2閉扉スイッチ
26…駆動ユニット
27…ドア開度センサ
28…開閉制御部
G…乗降口
θ…ドア開度
図1
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図8