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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20241106BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20241106BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H02G3/04 081
H01B7/00 301
H01B7/00 304
H02G3/04
H05K9/00 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021003654
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108578
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田丸 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】木本 裕一
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-181587(JP,A)
【文献】特開2011-254613(JP,A)
【文献】特開2020-021557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線が内部に収容される金属製の筒状部材と、
前記筒状部材から引き出された前記電線の外周を囲う電磁シールド部材と、を有し、
前記電磁シールド部材は、前記筒状部材と電気的に接続されるシート状の金属層と、第1樹脂層と、第2樹脂層と、を有し、
前記金属層は、前記電線に向く内周面と、前記内周面と反対側の外周面と、を有し、前記筒状部材と同種の金属により形成され、
前記第1樹脂層は、前記金属層の前記外周面に形成され、前記金属層よりも高い輻射率を有し、
前記第2樹脂層は、前記金属層の前記内周面に形成され、前記金属層よりも高い輻射率を有するワイヤハーネス。
【請求項2】
前記第1樹脂層は、前記金属層よりも低いヤング率を有し、
前記第2樹脂層は、前記金属層よりも低いヤング率を有する請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記電磁シールド部材は、前記筒状部材の外周面に接続される接続部分を有し、
前記接続部分における前記金属層の前記内周面は、前記第2樹脂層から露出されており、前記筒状部材の前記外周面に直接接触されている請求項又は請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記金属層が前記筒状部材に接触された状態で、前記電磁シールド部材を前記筒状部材に固定する固定部材を更に有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記電磁シールド部材は、前記筒状部材の外周を包囲する筒状に形成されており、
前記固定部材は、前記電磁シールド部材を外側から前記筒状部材に向かって締め付けるカシメリングである請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記固定部材は、前記金属層及び前記筒状部材と同種の金属により形成されている請求項又は請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記電磁シールド部材は、前記電線の長さ方向に沿って延びるスリットを有するシート状に形成されており、
前記電磁シールド部材は、前記電線の長さ方向と交差する第1方向における第1端部と、前記第1端部と前記第1方向において反対側に設けられた第2端部とを有しており、
前記電磁シールド部材は、前記第1端部に前記第2端部を重ね合わせることにより、前記電線の外周を周方向全周にわたって包囲する筒状に形成されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車等の車両に用いられるワイヤハーネスとしては、複数の電線を一括して電磁シールドする電磁シールド部材を備えている。このような電磁シールド部材としては、複数の電線を一括して包囲するように金属箔を筒状に巻いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のワイヤハーネスでは、電磁シールド部材の長さ方向の端部がカシメリングにより金属製のシールドシェルに固定されている。これにより、電磁シールド部材がシールドシェルを通じてアース接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-076899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のワイヤハーネスでは、電磁シールド部材とシールドシェルとが互いに異種の金属からなる場合には、電磁シールド部材とシールドシェルとの接続部に水が付着することで電食(電気化学的腐食)が発生する。
【0005】
本開示の目的は、電磁シールド部材における電食の発生を抑制できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線が内部に収容される金属製の筒状部材と、前記筒状部材から引き出された前記電線の外周を囲う電磁シールド部材と、を有し、前記電磁シールド部材は、前記筒状部材と電気的に接続されるシート状の金属層を有し、前記金属層は、前記筒状部材と同種の金属により形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のワイヤハーネスによれば、電磁シールド部材における電食の発生を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
図2図2は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
図3図3は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略横断面図である。
図4図4は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
図5図5は、変更例のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線が内部に収容される金属製の筒状部材と、前記筒状部材から引き出された前記電線の外周を囲う電磁シールド部材と、を有し、前記電磁シールド部材は、前記筒状部材と電気的に接続されるシート状の金属層を有し、前記金属層は、前記筒状部材と同種の金属により形成されている。
【0010】
この構成によれば、電磁シールド部材の有するシート状の金属層が、筒状部材と同種の金属によって形成される。このため、金属層と筒状部材との接続部分に水が付着した場合であっても、電磁シールド部材及び筒状部材に電食が発生することを抑制できる。これにより、電磁シールド部材と筒状部材との間における電気的接続信頼性が低下することを抑制できる。ここで、本明細書において、同種の金属とは、イオン化傾向が実質的に同じ金属をいう。イオン化傾向が実質的に同じとは、イオン化傾向が同一である場合は勿論、異なる場合であってもイオン化傾向が近接しているために略同じとみなせる場合も含む。
【0011】
[2]前記金属層は、前記電線に向く内周面と、前記内周面と反対側の外周面とを有し、前記電磁シールド部材は、前記金属層の前記外周面に形成された第1樹脂層を有し、前記第1樹脂層は、前記金属層よりも高い輻射率を有することが好ましい。この構成によれば、金属層の輻射率が低い場合であっても、その金属層の外周面が高い輻射率を有する第1樹脂層によって被覆される。このため、第1樹脂層を有さない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。これにより、電磁シールド部材における放熱性を向上させることができる。ひいては、ワイヤハーネスの放熱性を向上させることができる。
【0012】
[3]前記電磁シールド部材は、前記金属層の前記内周面に形成された第2樹脂層を有し、前記第2樹脂層は、前記金属層よりも高い輻射率を有することが好ましい。この構成によれば、金属層の輻射率が低い場合であっても、その金属層の内周面が高い輻射率を有する第2樹脂層によって被覆される。このため、第2樹脂層を有さない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。これにより、電磁シールド部材における放熱性を向上させることができ、ワイヤハーネスにおける放熱性を向上させることができる。
【0013】
[4]前記第1樹脂層は、前記金属層よりも低いヤング率を有し、前記第2樹脂層は、前記金属層よりも低いヤング率を有することが好ましい。この構成によれば、金属層の周面及び周面に、その金属層よりもヤング率の低い第1樹脂層及び第2樹脂層がそれぞれ形成される。このため、金属層のみの単層構造に比べて、電磁シールド部材の柔軟性及び伸長性を高めることができる。これにより、例えば電線の曲げ部において、その曲げ形状に電磁シールド部材が追従しやすくなり、金属層が破れることを抑制できる。
【0014】
[5]前記電磁シールド部材は、前記筒状部材の外周面に接続される接続部分を有し、前記接続部分における前記金属層の前記内周面は、前記第2樹脂層から露出されており、前記筒状部材の前記外周面に直接接触されていることが好ましい。この構成によれば、電磁シールド部材のうち筒状部材の外周面に接続される接続部分では、第2樹脂層から露出された金属層の内周面が筒状部材の外周面に直接接触されている。このため、金属層の内周面に第2樹脂層を形成した場合であっても、金属層と筒状部材とを好適に電気的に接続することができる。
【0015】
[6]前記金属層が前記筒状部材に接触された状態で、前記電磁シールド部材を前記筒状部材に固定する固定部材を更に有することが好ましい。この構成によれば、金属層が筒状部材に接触された状態で、電磁シールド部材が固定部材によって筒状部材に固定される。これにより、電磁シールド部材と筒状部材との電気的導通を安定的に維持することができる。
【0016】
[7]前記電磁シールド部材は、前記筒状部材の外周を包囲する筒状に形成されており、前記固定部材は、前記電磁シールド部材を外側から前記筒状部材に向かって締め付けるカシメリングであることが好ましい。この構成によれば、電磁シールド部材がカシメリングによって外側から筒状部材に向かって締め付けられることにより、電磁シールド部材が筒状部材に固定される。これにより、電磁シールド部材と筒状部材との電気的導通を安定的に維持することができる。
【0017】
[8]前記固定部材は、前記金属層及び前記筒状部材と同種の金属により形成されていることが好ましい。この構成によれば、電磁シールド部材の金属層と筒状部材と固定部材とが全て同種の金属によって形成される。このため、金属層と筒状部材との接続部分、及び電磁シールド部材と固定部材との接続部分に水が付着した場合であっても、各部材間での電食の発生を抑制できる。これにより、金属層と筒状部材との接続部分の構造を、その接続部分を覆うゴム製の防水カバー等を設けない非防水構造とすることもできる。
【0018】
[9]前記電磁シールド部材は、前記電線の長さ方向に沿って延びるスリットを有するシート状に形成されており、前記電磁シールド部材は、前記電線の長さ方向と交差する第1方向における第1端部と、前記第1端部と前記第1方向において反対側に設けられた第2端部とを有しており、前記電磁シールド部材は、前記第1端部に前記第2端部を重ね合わせることにより、前記電線の外周を周方向全周にわたって包囲する筒状に形成されていることが好ましい。この構成によれば、シート状の電磁シールド部材の第1端部に第2端部を重ね合わせることにより、電磁シールド部材が、電線の外周を周方向全周にわたって包囲する筒状をなすように形成される。このため、電線に対して電磁シールド部材を後から容易に取り付けることができる。これにより、ワイヤハーネスの組立作業性を向上させることができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
(ワイヤハーネス10の全体構成)
図1に示すワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器11,12を電気的に接続する。電気機器11,12は、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vに設置されている。電気機器11,12としては、例えば、バッテリ、インバータ、モータ、エアーコンディショナー装置、ウィンカー装置、エアバッグ装置等を挙げることができる。
【0021】
図1及び図2に示すように、ワイヤハーネス10は、1本又は複数本(本実施形態では2本)の電線20と、複数の電線20を電磁シールドする電磁シールド部材30と、電線20の両端部に取り付けられた一対のコネクタ40とを有している。図2に示すように、コネクタ40は、金属製の筒状部材41を有している。
【0022】
図1に示すように、各電線20の一端部は一方のコネクタ40を介して電気機器11と接続され、各電線20の他端部は他方のコネクタ40を介して電気機器12と接続されている。各電線20は、例えば、2次元状又は3次元状に曲げられて形成されている。
【0023】
(電線20の構成)
図2及び図3に示すように、各電線20は、導電性を有する芯線21と、芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有している。各電線20は、自身にシールド構造を有しないノンシールド電線である。各電線20は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。
【0024】
芯線21は、長尺状に形成されている。芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。また、芯線21としては、撚り線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。芯線21の材料としては、例えば、純銅、銅合金、純アルミニウム、アルミニウム合金などの金属材料を用いることができる。
【0025】
芯線21の横断面形状、つまり芯線21の長さ方向と直交する平面によって芯線21を切断した断面形状は、任意の形状とすることができる。芯線21の横断面形状は、例えば、円形状に形成されている。
【0026】
絶縁被覆22は、例えば、各芯線21の外周面を周方向全周にわたって包囲している。絶縁被覆22の外周面は、例えば、芯線21の外周面に対応する形状に形成されている。本実施形態の絶縁被覆22は、内周及び外周の断面形状が円形である円筒状に形成されている。絶縁被覆22は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆22は、例えば、芯線21に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。
【0027】
図2に示すように、各電線20の長さ方向の端部は、コネクタ40の筒状部材41に挿入されている。すなわち、筒状部材41の内部には、各電線20の長さ方向の端部が収容されている。筒状部材41の内部には、電線20及び電磁シールド部材30のうち電線20のみが挿入されている。そして、各電線20は、筒状部材41から引き出されている。
【0028】
(電磁シールド部材30の構成)
電磁シールド部材30は、全体として長尺の筒状に形成されている。電磁シールド部材30は、筒状部材41から引き出された電線20の外周を包囲するように形成されている。電磁シールド部材30は、例えば、複数の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。
【0029】
図4に示すように、電磁シールド部材30は、可撓性を有するシート状に形成されている。電磁シールド部材30は、例えば、電線20の長さ方向に沿って延びる長尺のシート状に形成されている。電磁シールド部材30は、例えば、電線20の長さ方向に沿って延びるスリット31を有している。電磁シールド部材30は、電線20の長さ方向と交差する第1方向に延びる幅を有している。電磁シールド部材30は、例えば、可撓性を有するシート材を電線20の周方向に巻くことによって筒状をなすように形成されている。電磁シールド部材30は、例えば、電線20の長さ方向と交差する第1方向、つまり電磁シールド部材30の幅方向における端部32と、端部32と第1方向において反対側の端部33とを有している。図3に示すように、電磁シールド部材30は、例えば、端部32と端部33とを電線20の径方向に重ね合わせることによって筒状をなすように形成されている。例えば、電磁シールド部材30は、端部32の外周面に端部33を重ね合わせることによって筒状に形成されている。電磁シールド部材30の内周寸法は、例えば、端部32と端部33との重なり幅を調整することにより、複数の電線20の外周寸法に合わせた寸法に調整することができる。電磁シールド部材30は、例えば、複数の電線20の外周を包囲可能な筒状態から、複数の電線20の外周を包囲しないシート状態に戻ることが可能な弾性を有している。
【0030】
電磁シールド部材30は、例えば、金属層35と、樹脂層36と、それら金属層35と樹脂層36とを接着する接着層37とを有している。すなわち、電磁シールド部材30は、金属層35と接着層37と樹脂層36とが順に積層された積層構造を有している。電磁シールド部材30は、例えば、金属層35が電線20に向くように配置されている。すなわち、電磁シールド部材30は、筒状をなす電磁シールド部材30の径方向内側に金属層35が配置されるように形成されている。換言すると、電磁シールド部材30は、筒状をなす電磁シールド部材30の径方向外側に樹脂層36が配置されるように形成されている。以下の説明では、便宜上、電磁シールド部材30を構成する各部材の端面のうち電線20側に向く端面を「内周面」と称し、内周面と反対側の端面を「外周面」と称する。
【0031】
金属層35は、シート状に形成されている。金属層35は、電磁シールド機能を有している。金属層35としては、例えば、金属箔や金属材料からなるシート材を用いることができる。金属層35の材料としては、例えば、純銅、銅合金、純アルミニウム、アルミニウム合金などの金属材料を用いることができる。本実施形態の金属層35は、純アルミニウムからなる金属箔である。
【0032】
接着層37は、金属層35と接着されるとともに、樹脂層36と接着されている。接着層37は、金属層35の外周面と接着されるとともに、樹脂層36の内周面と接着されている。接着層37は、金属層35の外周面を覆うように形成されている。接着層37は、例えば、金属層35の外周面全面を覆うように形成されている。接着層37としては、例えば、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系の接着剤を用いることができる。接着層37としては、例えば、導電性を有する導電性接着剤を用いることもできる。
【0033】
樹脂層36は、シート状に形成されている。樹脂層36は、接着層37の外周面を覆うように形成されている。樹脂層36は、例えば、接着層37の外周面全面を覆うように形成されている。樹脂層36の大きさは、例えば、金属層35の大きさに合わせて形成されている。樹脂層36の材料としては、例えば、金属層35よりも輻射率の高い樹脂材料を用いることができる。樹脂層36の輻射率は、例えば、0.7以上に設定することができる。また、樹脂層36の材料としては、例えば、金属層35よりもヤング率の低い樹脂材料を用いることができる。樹脂層36の材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂層36の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)などの合成樹脂を用いることができる。
【0034】
ここで、金属層35を構成する金属(例えば、アルミニウム)は、一般に熱伝導率の点では優れるものの、輻射率(放射率)の点では優れない場合が多い。例えば、アルミニウムの輻射率は0.1以下である。そこで、金属層35の外周面に、その外周面よりも高い輻射率を有する樹脂層36を接着するようにした。これにより、樹脂層36を形成しない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。
【0035】
このとき、ウィーンの変位則によると、物体から熱放射によって放出される光の波長のピークは、物体の温度に反比例するとされている。また、輻射率は、材料が同じでも物体の温度(光の波長)に応じて異なる値を取る材料があることが知られている。本実施形態では、ワイヤハーネス10が車両V(図1参照)に搭載されることから、樹脂層36としては、車両の使用環境で生じる高温度帯におけるピーク波長に対して高い輻射率を有することが好ましい。
【0036】
電磁シールド部材30の端部32,33の重なり部分では、例えば、端部32における樹脂層36の外周面に対して端部33における金属層35の内周面が接触している。これら端部32,33の重なり部分では、端部32における金属層35と端部33における金属層35とが電線20の径方向に重なって配置されるため、金属層35が二重に重なって巻かれている。
【0037】
本実施形態の電磁シールド部材30は、接着面又は粘着面を有していない。具体的には、本実施形態の電磁シールド部材30は、金属層35の内周面及び樹脂層36の外周面に接着面又は粘着面が形成されていない。電磁シールド部材30は、例えば、図示しない結束部材が巻き付けられることにより、筒状態が維持される。結束部材としては、例えば、テープ部材や結束バンドを用いることができる。結束部材は、例えば、電磁シールド部材30の長さ方向において所定の間隔を空けて設けられている。
【0038】
(ワイヤハーネス10の端部構造)
図2に示すように、電磁シールド部材30の長さ方向の端部は、筒状部材41の外周面に接続されている。すなわち、電磁シールド部材30の長さ方向の端部は、筒状部材41と接続される接続部分である。電磁シールド部材30の長さ方向の端部は、金属層35の内周面が筒状部材41の外周面に接触している。これにより、電磁シールド部材30は、筒状部材41と電気的に接続されている。なお、図示は省略するが、電磁シールド部材30は、筒状部材41を通じて車体パネル等にアース接続(アース接地)されている。
【0039】
ワイヤハーネス10は、例えば、金属層35が筒状部材41に接触された状態で、電磁シールド部材30を筒状部材41に固定するカシメリング50を有している。カシメリング50は、筒状部材41の外周面に取り付けられている。カシメリング50は、筒状部材41の外周面に沿った筒状をなしている。例えば、筒状部材41が円筒状に形成されており、カシメリング50が筒状部材41の外周面に沿った円筒状に形成されている。カシメリング50は、例えば、筒状部材41の外周面との間に電磁シールド部材30の長さ方向の端部を挟む態様で筒状部材41の外側に嵌合されている。そして、カシメリング50が筒状部材41の径方向内側に締め付けられることで、電磁シールド部材30の長さ方向の端部が筒状部材41の外周面に対して直接接触した状態で固定されている。すなわち、電磁シールド部材30の長さ方向の端部は、金属層35の内周面が筒状部材41の外周面に直接接触された状態で、カシメリング50によって外側から筒状部材41に向かって締め付けられて筒状部材41の外周面に固定されている。これにより、電磁シールド部材30と筒状部材41との電気的導通が安定的に維持される。また、カシメリング50によって、電磁シールド部材30の筒状態が維持される。なお、カシメリング50の内周面は、樹脂層36の外周面に接触している。
【0040】
筒状部材41の材料としては、例えば、鉄系、アルミニウム系や銅系の金属材料を用いることができる。筒状部材41は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施していてもよい。すなわち、筒状部材41は、母材の表面にメッキ被膜を形成した構造としてもよい。
【0041】
カシメリング50の材料としては、例えば、鉄系、アルミニウム系や銅系の金属材料を用いることができる。カシメリング50は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施してもよい。すなわち、カシメリング50は、母材の表面にメッキ被膜を形成した構造としてもよい。
【0042】
(金属層35、筒状部材41及びカシメリング50の材料の組み合わせ)
ここで、電磁シールド部材30の金属層35は、筒状部材41と同種の金属によって形成されている。本明細書において、同種の金属とは、イオン化傾向が実質的に同じ金属をいう。イオン化傾向が実質的に同じとは、イオン化傾向が同一である場合は勿論、異なる場合であってもイオン化傾向が近接しているために略同じとみなせる場合も含む。第1金属と第2金属とのイオン化傾向が略同じとみなせる範囲としては、第1金属と第2金属とが電解質を含む水溶液によって電気的に接続された場合において電食が生じない金属の組み合わせを含むとともに、電食が生じるとしても車両等に使用して実用上問題がない程度である金属の組み合わせも含む。金属層35は、筒状部材41の最表面と同種の金属によって形成されている。例えば、筒状部材41が母材の表面にメッキ被膜の形成された構造である場合には、そのメッキ被膜と金属層35とが同種の金属によって形成されている。
【0043】
本実施形態のカシメリング50は、金属層35及び筒状部材41と同種の金属によって形成されている。例えば、カシメリング50が母材の表面にメッキ被膜の形成された構造である場合には、そのメッキ被膜が金属層35と同種の金属によって形成されている。
【0044】
本実施形態では、金属層35が純アルミニウム又はアルミニウム合金により構成されており、筒状部材41がアルミニウム合金により構成されており、カシメリング50がアルミニウム合金により構成されている。具体的には、金属層35の材料としては、純アルミニウムを含む1000系、又は8000系のアルミニウム合金を好適に用いることができる。筒状部材41の材料としては、3000系のアルミニウム合金やダイカスト用アルミニウム合金(ADC材)を用いることができる。ADC材としては、アルミニウム合金ADC3やアルミニウム合金ADC12などを挙げることができる。筒状部材41の材料としては、金属層35が純アルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合には、電食防止の観点から、銅の添加量の少ない3000系のアルミニウム合金を用いることが好適である。また、筒状部材41としては、鉄合金からなる母材に対して溶融アルミニウムメッキを施すことにより、母材の表面にアルミニウムメッキ被膜を形成した構造体を用いることもできる。なお、鉄合金としては、例えば、炭素鋼、特殊鋼やステンレス鋼を用いることができる。本実施形態のカシメリング50としては、鉄合金からなる母材に対して溶融アルミニウムメッキを施すことにより、母材の表面にアルミニウムメッキ被膜を形成した構造体を有している。
【0045】
(外装部材60の構成)
図3に示すように、ワイヤハーネス10は、例えば、電磁シールド部材30の外周を包囲する外装部材60を有している。外装部材60は、全体として長尺の筒状をなしている。外装部材60は、例えば、電磁シールド部材30の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。外装部材60の内部には、電磁シールド部材30及び電磁シールド部材30により被覆された複数の電線20が収容されている。外装部材60は、内部に収容した電線20及び電磁シールド部材30を飛翔物や水滴から保護する。なお、図2では、外装部材60の図示を省略している。
【0046】
外装部材60としては、例えば、金属製や樹脂製のパイプ、コルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。金属製のパイプやコルゲートチューブの材料としては、例えば、アルミニウム系や銅系などの金属材料を用いることができる。樹脂製のパイプやコルゲートチューブの材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。
【0047】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)電磁シールド部材30の金属層35を、筒状部材41と同種の金属によって形成するようにした。本実施形態では、金属層35と筒状部材41とを全てアルミニウム系の金属材料によって形成するようにした。このため、金属層35と筒状部材41との接続部分に水が付着した場合であっても、電食が発生することを好適に抑制できる。これにより、電食に起因して電磁シールド部材30の電磁シールド性能が低下することを抑制できる。また、金属層35と筒状部材41との接続部分の構造を、その接続部分を覆うゴム製の防水カバー等を設けない非防水構造とすることもできる。換言すると、非防水構造とした場合であっても、金属層35及び筒状部材41に電食が発生することを抑制できる。この結果、ワイヤハーネス10の大型化を抑制でき、部品点数の増加を抑制できる。
【0048】
(2)金属層35の外周面に、金属層35よりも高い輻射率を有する樹脂層36を形成するようにした。この構成によれば、金属層35の輻射率が低い場合であっても、その金属層35の外周面が高い輻射率を有する樹脂層36によって被覆される。このため、樹脂層36を有さない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。したがって、例えば電磁シールド部材30の外周面と外装部材60の内周面とが物理的に離れていても、電磁シールド部材30の外周面から輻射によって外装部材60に効率的に熱伝導させることができる。これにより、電磁シールド部材30における放熱性を向上させることができ、ワイヤハーネス10の放熱性を向上させることができる。
【0049】
(3)金属層35の外周面に、金属層35よりもヤング率の低い樹脂層36を形成するようにした。この構成によれば、金属層35のみの単層構造に比べて、電磁シールド部材30の柔軟性及び伸長性を高めることができる。これにより、例えば電線20の曲げ部において、その曲げ形状に電磁シールド部材30が追従しやすくなり、金属層35が破れることを抑制できる。
【0050】
(4)金属層35の内周面及び外周面のうち外周面のみに樹脂層36を形成するようにした。すなわち、金属層35の内周面に樹脂層を形成しないようにした。このため、電磁シールド部材30の長さ方向の端部を筒状部材41に固定する際に、金属層35の内周面を筒状部材41の外周面に直接接触させることができる。これにより、電磁シールド部材30の長さ方向の端部、つまり筒状部材41との接続部分において、樹脂層を剥ぐ等の工程を行わずに、電磁シールド部材30と筒状部材41とを好適に電気的に接続することができる。
【0051】
(5)樹脂層36の材料として導電性を有する樹脂材料を用いた場合には、仮に電線20の曲げ部において金属層35が破れてしまった場合であっても、樹脂層36によって電磁シールド機能を維持することができる。
【0052】
(6)金属層35が筒状部材41に接触した状態で、電磁シールド部材30を筒状部材41に固定するカシメリング50を設けた。この構成によれば、電磁シールド部材30がカシメリング50によって外側から筒状部材41に向かって締め付けられることにより、金属層35の内周面が筒状部材41の外周面に接触した状態で電磁シールド部材30が筒状部材41に固定される。これにより、電磁シールド部材30と筒状部材41との電気的導通を安定的に維持することができる。
【0053】
(7)カシメリング50を、電磁シールド部材30の金属層35及び筒状部材41と同種の金属により形成するようにした。この構成によれば、金属層35と筒状部材41とカシメリング50とが全て同種の金属によって形成される。このため、金属層35と筒状部材41との接続部分、及び電磁シールド部材30とカシメリング50との接続部分に水が付着した場合であっても、各部材間での電食の発生を抑制できる。例えば、金属層35とカシメリング50とが水を介して電気的に接続される場合であっても、金属層35とカシメリング50との間で電食が発生することを抑制できる。これにより、金属層35と筒状部材41との接続部分の構造を、その接続部分を覆うゴム製の防水カバー等を設けない非防水構造とすることができる。
【0054】
(8)シート状の電磁シールド部材30の端部32に端部33を重ね合わせることにより、電磁シールド部材30を、電線20の外周を周方向全周にわたって包囲する筒状に形成するようにした。このため、電線20に対して電磁シールド部材30を後から容易に取り付けることができる。これにより、ワイヤハーネス10の組立作業性を向上させることができる。
【0055】
(9)さらに、端部32と端部33との重なり幅を調整することにより、電線20の外周寸法に合わせて電磁シールド部材30の内周寸法及び外周寸法を容易に調整することができる。これにより、電磁シールド部材30の外周寸法が大型化することを好適に抑制できる。
【0056】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・上記実施形態の電磁シールド部材30では、金属層35の内周面及び外周面のうち外周面のみに樹脂層36を形成するようにしたが、これに限定されない。
例えば図5に示すように、金属層35の外周面に樹脂層36を形成し、金属層35の内周面に樹脂層38を形成するようにしてもよい。本変更例の電磁シールド部材30Aでは、金属層35の内周面に接着層39を介して樹脂層38が接着されている。すなわち、電磁シールド部材30Aは、電磁シールド部材30の内周面側から樹脂層38と接着層39と金属層35と接着層37と樹脂層36とが順に積層された積層構造を有している。電磁シールド部材30Aは、例えば、樹脂層38が電線20に向くように配置されている。
【0058】
接着層39は、金属層35の内周面と接着されるとともに、樹脂層38の外周面と接着されている。接着層39は、金属層35の内周面を覆うように形成されている。接着層39としては、例えば、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系の接着剤を用いることができる。
【0059】
樹脂層38は、シート状に形成されている。樹脂層38は、接着層39の外周面を覆うように形成されている。樹脂層38は、例えば、接着層39の外周面全面を覆うように形成されている。樹脂層38の材料としては、例えば、金属層35よりも輻射率の高い樹脂材料を用いることができる。樹脂層38の輻射率は、例えば、0.7以上に設定することができる。また、樹脂層38の材料としては、例えば、金属層35よりもヤング率の低い樹脂材料を用いることができる。樹脂層38の材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂層38の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンなどの合成樹脂を用いることができる。
【0060】
電磁シールド部材30Aの長さ方向の端部は、筒状部材41の外周面に接続されている。すなわち、電磁シールド部材30Aの長さ方向の端部は、筒状部材41と接続される接続部分である。電磁シールド部材30Aの接続部分では、金属層35の内周面が樹脂層38から露出されており、金属層35の内周面が筒状部材41の外周面に直接接触している。換言すると、電磁シールド部材30Aの接続部分では、金属層35の内周面に接着層39及び樹脂層38が形成されていない。このため、電磁シールド部材30Aの接続部分では、金属層35の内周面を筒状部材41の外周面に直接接触させることができる。これにより、金属層35の内周面に樹脂層38を形成した場合であっても、金属層35と筒状部材41とを好適に電気的に接続することができる。
【0061】
上記構成によれば、金属層35の輻射率が低い場合であっても、その金属層35の内周面が高い輻射率を有する樹脂層38によって被覆される。このため、樹脂層38を有さない場合に比べて、輻射による熱放射を大きくすることができる。したがって、例えば電磁シールド部材30の内周面、ここでは樹脂層38の内周面と電線20の外周面とが物理的に離れていても、電線20の外周面から輻射によって電磁シールド部材30に効率的に熱伝導させることができる。さらに、金属層35の外周面が高い輻射率を有する樹脂層36によって被覆されるため、電磁シールド部材30の外周面から輻射によって外装部材60(図3参照)に効率的に熱伝導させることができる。これにより、ワイヤハーネス10における放熱性を向上させることができる。この結果、電線20の温度上昇を低く抑えることができるため、電線20の芯線21のサイズを小さくしたり、絶縁被覆22の厚みを薄くしたりすることができる。
【0062】
また、金属層35の内周面に、金属層35よりもヤング率の低い樹脂層38を形成したため、樹脂層38を有さない場合に比べて、電磁シールド部材30Aの柔軟性及び伸長性を高めることができる。これにより、例えば電線20の曲げ部において、その曲げ形状に電磁シールド部材30Aが追従しやすくなり、金属層35が破れることをより抑制できる。
【0063】
図5に示した電磁シールド部材30Aから接着層37及び樹脂層36を省略してもよい。この場合の電磁シールド部材30Aは、金属層35と、金属層35の内周面に接着層39により接着された樹脂層38とによって構成される。
【0064】
・上記実施形態の電磁シールド部材30から接着層37及び樹脂層36を省略してもよい。この場合の電磁シールド部材30は、金属層35のみによって構成される。
・上記実施形態では、金属層35の外周面に、接着層37により樹脂層36を接着するようにしたが、これに限定されない。例えば、金属層35の外周面に、その金属層35よりも高い輻射率を有する塗料を塗布する塗装処理によって樹脂層36を形成するようにしてもよい。この場合には、接着層37が省略される。
【0065】
図5に示した電磁シールド部材30Aでは、金属層35の内周面に、接着層39により樹脂層38を接着するようにしたが、これに限定されない。例えば、金属層35の内周面に、その金属層35よりも高い輻射率を有する塗料を塗布する塗装処理によって樹脂層38を形成するようにしてもよい。この場合には、接着層39が省略される。
【0066】
・上記実施形態の電磁シールド部材30の一面に接着層又は粘着層を設けるようにしてもよい。例えば、電磁シールド部材30の端部32の外周面に接着層又は粘着層を設けるようにしてもよい。この構成によれば、電磁シールド部材30の端部32に端部33を重ね合わせた場合に、端部33を端部32に接着させることができる。これにより、カシメリング50等によって固定される前の段階において、電磁シールド部材30がシート状態に戻ることを好適に抑制できる。
【0067】
・上記実施形態の電磁シールド部材30の巻き方は特に限定されない。上記実施形態では、電磁シールド部材30の幅方向の端部32,33同士を重ね合わせることによって、電磁シールド部材30を筒状に形成するようにした。これに限らず、例えば、電磁シールド部材30の幅方向の中間部同士を重ね合わせることによって、電磁シールド部材30を筒状に形成するようにしてもよい。この場合には、電磁シールド部材30の幅方向の端部32,33同士が重なっていなくてもよい。すなわち、端部33の内周面が端部32の外周面に接触していなくてもよい。また、電磁シールド部材30の周方向の全周にわたって2重に重ね合わさるように、電磁シールド部材30を電線20に対して巻くようにしてもよい。
【0068】
・上記実施形態では、筒状に巻く前のシート状態における電磁シールド部材30の内周面及び外周面を平面状に形成したが、これに限定されない。例えば、電磁シールド部材30の内周面及び外周面に複数のスリットを形成するようにしてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、カシメリング50を、鉄合金からなる母材の表面にアルミニウムメッキ被膜を形成した構造体に具体化したが、これに限定されない。例えば、カシメリング50の母材をアルミニウム合金により構成するようにしてもよい。この場合のカシメリング50は、例えば以下のように形成することができる。まず、筒状部材41の外径よりも内径が大きく形成された円筒状のアルミニウム合金製パイプを、筒状部材41の外周を包囲するように設けられた電磁シールド部材30の外側に配置する。すなわち、アルミニウム合金製パイプを、筒状部材41及び電磁シールド部材30と径方向に重なるように、電磁シールド部材30の外側に配置する。続いて、金型等を用いて、アルミニウム合金製パイプを周方向の略全周にわたって径方向内側に押圧する。これにより、アルミニウム合金製パイプが縮径されるように塑性変形されてカシメリング50が形成される。
【0070】
・上記実施形態の金属層35と筒状部材41とカシメリング50とを全て銅系の金属材料によって構成してもよい。また、金属層35と筒状部材41とカシメリング50とを全て錫系の金属材料によって構成してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、カシメリング50を、金属層35及び筒状部材41と同種の金属によって構成するようにした。これに限らず、例えば、カシメリング50を、金属層35及び筒状部材41と異種の金属によって構成するようにしてもよい。
【0072】
・上記実施形態では、筒状部材41の外周面に電磁シールド部材30の端部を電気的に接続した状態で固定する固定部材としてカシメリング50を用いたが、これに限定されない。例えば、カシメリング50の代わりに、金属バンド、樹脂製の結束バンドや粘着テープ等を固定部材として用いてもよい。
【0073】
・上記実施形態では、電磁シールド部材30が接続される筒状部材を、コネクタ40が有する筒状部材41に具体化したが、これに限定されない。例えば、電磁シールド部材30が接続される筒状部材を、外装部材60を構成する金属製パイプに具体化してもよい。この場合には、電磁シールド部材30と筒状部材との接続部分がワイヤハーネス10の長さ方向の中間部に配置される。
【0074】
・上記実施形態では、外装部材60の内部に電磁シールド部材30を設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、外装部材60の外側に電磁シールド部材30を設けるようにしてもよい。この場合の電磁シールド部材30は、外装部材60の外周を包囲するように設けられる。
【0075】
・上記実施形態のワイヤハーネス10から外装部材60を省略してもよい。
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10を構成する電線20を2本としたが、これに限定されない。車両Vの仕様に応じて電線20の本数は変更することができる。例えば、電線20の本数は1本であってもよいし、3本以上であってもよい。例えば、ワイヤハーネス10を構成する電線として、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えば、ランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を追加した構成としてもよい。
【0076】
・車両Vにおける電気機器11と電気機器12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
V 車両
10 ワイヤハーネス
11,12 電気機器
20 電線
21 芯線
22 絶縁被覆
30,30A 電磁シールド部材
31 スリット
32 端部(第1端部)
33 端部(第2端部)
35 金属層
36 樹脂層(第1樹脂層)
37 接着層
38 樹脂層(第2樹脂層)
39 接着層
40 コネクタ
41 筒状部材
50 カシメリング(固定部材)
60 外装部材
図1
図2
図3
図4
図5