(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】画像形成システム及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G03G21/00 500
(21)【出願番号】P 2021005666
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 明彦
(72)【発明者】
【氏名】山川 幹彦
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-118454(JP,A)
【文献】特開2007-219407(JP,A)
【文献】特開2018-141931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/34
15/00
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して複数の記録材に画像形成部が形成した画像の基準画像に対する位置ずれ量に基づいて、前記記録材に形成される画像の位置を補正するフィードバック補正を行う画像形成システムであって、
搬送路を搬送される前記記録材の記録材状態を検知する記録材状態検知部と、
前記記録材状態が予め設定された条件を満たさないと判断した場合に、前記位置ずれ量を前記フィードバック補正の対象と
せず、前記位置ずれ量が前記フィードバック補正の対象となる範囲内であっても、前記記録材状態が予め設定された条件を満たさないと判断した場合に、前記位置ずれ量を前記フィードバック補正の対象としない制御部と、を備える
画像形成システム。
【請求項2】
前記搬送路により搬送される前記記録材に画像を形成する前記画像形成部を備え、
前記搬送路に設置される一又は複数の前記記録材状態検知部のうち、少なくとも一つは、前記画像形成部の上流側に設置される
請求項
1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記記録材に形成された前記画像の読取画像に基づいて前記位置ずれ量を算出した以降に、前記フィードバック補正の対象可否を判断する
請求項
2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記制御部は、一の前記記録材状態、又は複数の前記記録材状態の組み合わせに基づいて前記フィードバック補正の対象可否を判断する
請求項
3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記記録材状態検知部は、前記画像形成部の上流側であって、前記記録材を供給する記録材供給部から前記画像形成部までの前記搬送路に設置され、前記記録材の物性値を検知する物性値センサである
請求項
4に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記物性値センサは、前記記録材の剛度、透気度、平滑度、厚さ、含水率、及び抵抗値のうち、少なくとも一つの物性値を前記記録材状態として検知する
請求項
5に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記搬送路として、前記記録材を供給する記録材供給部から前記画像形成部までの第1搬送路、前記記録材に形成された画像を定着する定着部から前記記録材を排紙するまでの第2搬送路、前記画像形成部により前記記録材の第1面に前記画像が形成された後、前記記録材の第2面に前記画像が形成されるまでの第3搬送路、及び前記画像が形成された前記記録材が排出されるまでの第4搬送路が設けられ、
前記記録材状態検知部は、前記第1搬送路、前記第2搬送路、前記第3搬送路及び前記第4搬送路のうち、少なくとも一つに設けられ、前記記録材の搬送状態を検知する搬送状態検知センサである
請求項
3~
6のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記搬送状態検知センサは、前記記録材の曲がり、片寄り、搬送時間、及びカール量のうち、少なくとも一つの搬送状態を前記記録材状態として検知する
請求項
7に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記画像が連続して形成される複数の前記記録材から読み取られた前記読取画像から算出する前記位置ずれ量の移動平均値に基づいて前記フィードバック補正を行う
請求項
3~
6のいずれか一項に記載の画像形成システム。
【請求項10】
連続して複数の記録材に画像形成部が形成した画像の基準画像に対する位置ずれ量に基づいて、前記記録材に形成される画像の位置を補正するフィードバック補正を行う画像形成システムによって行われる画像形成方法において、
前記画像形成システムに設けられる記録材状態検知部が、搬送路を搬送される前記記録材の記録材状態を検知する処理と、
前記画像形成システムに設けられる制御部が、前記記録材状態が予め設定された条件を満たさないと判断した場合に、前記位置ずれ量を前記フィードバック補正の対象と
せず、前記位置ずれ量が前記フィードバック補正の対象となる範囲内であっても、前記記録材状態が予め設定された条件を満たさないと判断した場合に、前記位置ずれ量を前記フィードバック補正の対象としない処理と、を含む
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙に印刷された画像の読取画像を解析することで、用紙に印刷された画像の異常部分を検知する画像検査が行われていた。この画像検査では、例えば、実際に印刷された画像に発生した汚れや色ずれ、基準位置に対する位置ずれ等の画像の異常が検知される。
【0003】
画像形成装置が多量の用紙に連続印刷している間、一部の用紙で印刷した画像の位置ずれが生じることがある。位置ずれとは、本来印刷されるべき位置とは異なる位置に、画像が印刷されることを言う。位置ずれ量が、予め設定された閾値の範囲内であれば、画像形成装置が用紙に印刷する画像の位置自体を補正するフィードバック補正が行われる。画像の位置ずれが許容範囲を超えると、この画像が印刷された用紙はヤレ紙として廃棄される。そこで、連続印刷中の画像位置ずれを防ぐため、搬送路に設けられたレジストローラによる紙曲がり補正や、ローラ揺動による片寄り補正等の用紙姿勢や搬送タイミングを制御することが可能な画像形成装置が従来から提供されていた。
【0004】
なお、印刷時には熱や圧力が用紙に加わって、用紙状態が変化する。このため、画像形成装置が、搬送中の用紙の姿勢を制御するだけでは、画像の位置ずれに対する精度要求を満たすことができなかった。そこで、印刷出力された用紙の読取画像に基づいて画像の位置ずれを補正する、特許文献1に開示された技術が提案されていた。
【0005】
特許文献1には、印字ずれ量が所定の閾値以下であると判別された場合、読取手段が読み取った画像データの異常の有無を判定するために、印刷データと対比可能な画像データに補正し、シートに印刷された画像データの印字ずれ量が所定の閾値より大きい場合には、検品のための画像データの補正を行うことなく、当該シート上に印刷された画像の異常を検知する技術が開示されている。つまり、特許文献1に開示された技術では、印刷出力後の印字ずれ量を読み取った結果を用いて画像フィードバック補正の実施有無が判断されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示された技術では、印刷された画像の基準画像に対する位置ずれ量が所定の閾値以下であれば、画像フィードバック補正が行われる。このため、印刷出力の完了前に用紙状態が異常であっても、印刷出力の完了後に読み取られた画像の位置ずれ量が設定した閾値を超えない範囲であれば、位置ずれ量がフィードバック補正の対象となる。ここで、用紙状態の異常として、例えば、用紙が斜行して搬送されたり、用紙が過剰な水分を含んでいたり、ジョブに設定された紙種とは異なる紙種の用紙が混在していたりする等が想定される。
【0008】
例えば、画像形成装置が連続して複数の用紙に印刷する途中で、突発的に一部の用紙が斜行して搬送されることがある。特許文献1に開示された技術を用いると、斜行して搬送された用紙に印刷された画像の位置ずれ量が閾値を超えない範囲であるときにフィードバック補正が実施される。このため、用紙状態が異常である用紙に対しても印字された画像の位置ずれ量に基づいて不適切なフィードバック補正が行われることがあった。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、不適切なフィードバック補正を行わないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を実現するために、本発明の一側面を反映した、連続して複数の記録材に画像形成部が形成した画像の基準画像に対する位置ずれ量に基づいて、記録材に形成される画像の位置を補正するフィードバック補正を行う画像形成システムは、搬送路を搬送される記録材の記録材状態を検知する記録材状態検知部と、記録材状態が予め設定された条件を満たさないと判断した場合に、位置ずれ量をフィードバック補正の対象とせず、位置ずれ量がフィードバック補正の対象となる範囲内であっても、記録材状態が予め設定された条件を満たさないと判断した場合に、位置ずれ量をフィードバック補正の対象としない制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、記録材状態が予め設定された条件を満たさなければ、位置ずれ量をフィードバック補正の対象としないので、不適切なフィードバック補正が行われなくなる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る画像形成システムの構成例を示す概要構成図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る画像位置ずれと、フィードバック補正の対象とを表すグラフである。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る用紙搬送状態及び用紙物性値のそれぞれについて、フィードバック補正の対象とするか否かを判断するための条件を定義した一覧表である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る画像形成システムの処理の例を示すフローチャートである。
【
図6】従来技術と、本実施の形態に係る技術との違いを示す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0014】
[一実施の形態]
<画像形成システムの構成>
始めに、
図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る画像形成システムの構成例について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る画像形成システム1の構成例を示す概要構成図である。なお、
図1には、本発明の説明に必要と考える要素又はその関連要素を記載しており、本発明の画像形成システムは
図1に示す例に限定されない。
【0015】
画像形成システム1は、画像形成装置2及び検査装置3を備える。画像形成装置2は、静電気を用いて画像の形成を行う電子写真方式によって用紙に画像を形成する画像形成装置の一例である。画像形成装置2は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を重ね合わせるタンデム形式によって、用紙上にカラー画像を形成する。画像形成装置2には、不図示のLAN(Local Area Network)を介して、オペレーターによって操作されるPC70等が接続されている。そして、PC70からLANを介して画像形成装置2にジョブが投入される。画像形成装置2は、PC70から投入されたジョブに従って、画像形成処理等の各種の処理を行う。
【0016】
画像形成装置2は、自動原稿給送装置(ADF:Auto Document Feeder)12を有する画像入力部11、操作表示部13に加えて、給紙トレイ20及び画像形成部30を有するプリンター部10を備える。
【0017】
画像入力部11は、ADF12の原稿台上の原稿から画像を光学的に読み取り、読み取った画像をA/D変換して画像データ(スキャンデータ)を生成する。なお、画像入力部11は、プラテンガラス上で原稿に形成された画像を読み込むこともできる。
【0018】
操作表示部13は、液晶パネル等からなる表示部、及び、タッチセンサ等からなる操作部で構成される。表示部及び操作部は、例えばタッチパネルとして一体に形成される。操作表示部13は、操作部に入力されたオペレーターからの操作の内容を表す操作信号を生成し、該操作信号を制御部50(後述する
図2を参照)に供給する。また、操作表示部13は、制御部50から供給される表示信号に基づいて、表示部に、オペレーターによる操作内容や設定情報等を表示する。なお、操作部をマウスやタブレットなどで構成し、表示部とは別体で構成することも可能である。
【0019】
給紙トレイ20(用紙供給部の一例)は、画像形成部30で画像形成が行われる用紙Sh(記録材の一例)を収容する容器である。なお、本実施形態では、2つの給紙トレイ20を設けた例を挙げたが、給紙トレイ20の個数は1つであってもよく、3個以上であってもよい。各給紙トレイ20には、それぞれ、紙種や坪量等が異なる用紙Shが収容される。画像形成装置2は、記録材の一例である樹脂製のシートにも画像を形成することが可能である。
【0020】
画像形成装置2には、給紙トレイ20から給紙された用紙Shを検査装置3まで搬送する搬送路21が設けられる。搬送路21には、用紙Shを搬送するための複数の搬送ローラが設けられる。この搬送路21のうち、用紙Shを供給する給紙トレイ20から画像形成部30までの搬送路が第1搬送路の一例として用いられる。また、用紙Shに形成された画像を定着する定着部36から用紙Shを排紙するまでの搬送路21が第2搬送路の一例として用いられる。
【0021】
定着部36の下流側では、搬送路21が伸長して検査装置3の搬送路41に接続されている。また、搬送路21には、定着部36の下流側で分岐して、プリンター部10の上流側の搬送路21に合流する反転搬送路22(第3搬送路の一例)が接続されている。このように画像形成部30により用紙Shの表面(第1面の一例)に画像が形成された後、用紙Shの裏面(第2面の一例)に画像が形成されるまでの搬送路が第3搬送路の一例として用いられる。反転搬送路21にも、反転した用紙Shを搬送するための複数の搬送ローラが設けられる。反転搬送路22には、用紙Shを反転させる反転部23が設けられている。反転部23で反転された用紙Shは、反転搬送路22を通して搬送路21の上流側に返される。また、経路の切り替えによって反転した用紙Shが、定着部36の下流側の搬送路21に戻された後、検査装置3に搬送されることもある。
【0022】
画像形成部30は、Y、M、C及びKの各色のトナー画像を形成するための、4つの画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kを備え、搬送路21により搬送される用紙Shに画像を形成する。画像形成ユニット31Y,31M,31C及び31Kはそれぞれ、帯電部、露光部(いずれも不図示)、像担持体としての感光体ドラム32Y,32M,32C,32K、及び、現像部33Y,33M,33C,33Kを備える。
【0023】
現像部33Y,33M,33C,33Kは、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kの各表面(外周部)に、画像に応じた光を照射することにより、各感光ドラムの周上に静電潜像を形成させる。そして、現像部33Y,33M,33C,33Kは、該静電潜像にトナーを付着させることにより、感光体ドラム32Y,32M,32C,32K上にトナー画像を形成する。
【0024】
また、画像形成部30は、中間転写ベルト34、2次転写部35及び定着部36を備える。中間転写ベルト34は、感光体ドラム32Y,32M,32C,32Kに形成された画像が1次転写されるベルトである。2次転写部35は、中間転写ベルト34上に1次転写された各色のトナー画像を、搬送路21を搬送される用紙Shに2次転写するローラである。
【0025】
定着部36は、2次転写部35の用紙搬送方向の下流側に配置されて、画像形成部30から供給されるカラーのトナー画像が形成された用紙Shに対して、定着処理を施す。定着部36が、画像が形成された用紙Shを加熱及び加圧する定着処理を実施することで用紙Shの表面側に、画像形成部30により転写された画像を定着する。定着部36により画像が定着された用紙Shは、搬送路21によって検査装置3に搬送されるか、反転搬送路22を通して反転部23により表裏が反転された後、プリンター部10の上流側で搬送路21に返される。表裏反転された用紙Shは、プリンター部10によって裏面への画像形成が行われる。その後、定着部36によって定着処理が施された用紙Shは、検査装置3に搬送される。なお、画像形成装置2の画像形成部30が用紙Shに画像を形成し、定着部36が画像を用紙Shに定着するまでの処理を「印刷」と呼ぶ。そして、定着部36から搬送路21の下流に用紙Shが搬送されることを「印刷出力」とも呼ぶ。
【0026】
検査装置3は、画像形成装置2から搬送された用紙Shに印刷された画像の正常又は異常を検査する。検査装置3に搬送される用紙Shは、両面又は片面に画像が形成された印刷物である。検査装置3は、画像形成装置2が用紙Shの両面又は片面に形成した画像を読取り、所定の検査を行う。
【0027】
検査装置3は、読取部45が用紙Shの表面及び裏面を読み取った読取画像を、画像形成装置2の制御部50に送信する。制御部50は、検査装置3から受信した読取画像に基づき、基準位置からの位置ずれ量を算出する。そして、制御部50は、連続して複数の用紙Shに画像形成部30が形成した画像の基準画像に対する位置ずれ量に基づいて、用紙Shに形成される画像の位置を補正するフィードバック補正を行う。画像形成部30は、制御部50によりフィードバック補正された画像を、次回以降に搬送路21から搬送される用紙Shに形成する。なお、検査装置3の不図示の制御部が位置ずれ量を算出する処理を行い、画像形成装置2の制御部50が検査装置3から位置ずれ量を受け取って、フィードバック補正の可否を判断してもよい。
【0028】
また、検査装置3は、読取画像と基準画像とを比較して、用紙Shに形成された画像に汚れ、スジ等が生じているかを検査することができる。用紙Shに形成された画像に汚れ、スジ等がなければ、検査装置3は、この画像を正常と判断する。逆に、用紙Shに形成された画像に汚れ、スジ等があれば、検査装置3は、この画像を異常と判断する。そして、検査装置3は、読取画像の検査結果を画像形成装置2の制御部50に送信する。画像形成装置2は、操作表示部13に検査結果と、読取画像とを表示することができる。画像形成装置2のオペレーターは、操作表示部13に表示された内容に基づいて、検査結果と、読取画像の内容を確認することができる。
【0029】
検査装置3は、画像形成装置2から搬送されてきた用紙Shを搬送する搬送路41,42,43、切替部44、読取部45a,45b、測色計46a,46b、搬送路41上を搬送された用紙Shが排紙される排紙トレイ47,48を有する。
【0030】
搬送路41は、画像形成装置2の搬送路21に接続されている。搬送路41は、搬送路21から受け取った用紙Shを検査装置3内で搬送する。用紙Shが排出されるまでの搬送路41は、第4搬送路の一例として用いられる。搬送路41の下流では、搬送路42,43に分岐する。
【0031】
読取部45a,45bは、それぞれイメージセンサー等の画像入力装置の一例である。読取部45a,45bは、例えば、用紙Shの表面に光を投射し、用紙Shからの反射光を画像データとして取り込む。このように読取部45a,45bが用紙Shの画像データを取り込むことを「読取る」と呼ぶ。また、用紙Shの画像データを「読取画像」と呼ぶ。読取部45aは、搬送路41を搬送される用紙Shを搬送路41の下方から読取り、読取部45bは、搬送路41を搬送される用紙Shを搬送路41の上方から読取る。以降の説明では、読取部45a,45bを区別しないため、「読取部45」と総称する。読取部45は、用紙Shの読取画像を、画像形成装置2の制御部50に出力する。制御部50は、読取部45から入力される読取画像をRAM503に保存する。
【0032】
測色計46a,46bは、搬送路41上を搬送された用紙Shの上面及び下面に形成された画像を読み取り、読み取って得た画像情報に基づいて、該画像の色濃度(反射濃度)を測定する色濃度測定装置の一例である。測色計46aは、搬送路41を搬送される用紙Shを搬送路41の下方から読取り、測色計46bは、搬送路41を搬送される用紙Shを搬送路41の上方から読取る。以降の説明では、測色計46a,46bを区別しないため、「測色計46」と総称する。測色計46は、測定した色濃度の情報を、画像形成装置2の制御部50に出力する。なお、測色計46から検査装置3に出力される色濃度の情報が、読取画像に含まれてもよい。
【0033】
検査装置3は、搬送路41に接続される搬送路42,43を備える。搬送路41~43には、用紙Shを搬送するための複数の搬送ローラが設けられる。
【0034】
搬送路42は、搬送路41の途中から分岐する経路であり、検査装置3により検査された用紙Shを、排紙トレイ47(排紙部の一例)に排紙する。排紙トレイ47には、検査装置3によって画像が正常と判定された用紙Sh(「正常用紙」とも呼ぶ)が排紙される。
【0035】
搬送路43についても、搬送路41の途中から分岐する経路であり、検査装置3により検査された用紙Shを、排紙トレイ48(排紙部の一例)に排紙する。排紙トレイ48には、検査装置3によって画像が異常と判定された用紙Sh(「異常用紙」とも呼ぶ)が排紙される。
【0036】
切替部44は、搬送路42,43のいずれかに用紙Shが搬送されるよう、用紙Shの搬送方向を切替える。なお、検査装置3に一つの排紙トレイ47しかない場合、正常用紙と異常用紙が混在して排紙される。この場合、正常用紙と異常用紙は、それぞれ排紙される方向に直交する方向に少しずらして排紙される。
【0037】
また、本実施形態では、画像形成装置2が用紙Shの両面に画像を形成可能であるため、検査装置3が用紙Shの両面を検査する例を挙げた。しかし、検査装置3は、用紙Shの片面だけに画像を形成可能な画像形成装置から搬送された用紙Shの片面だけを検査するように構成してもよい。
【0038】
本実施の形態では、図中に斜線で塗りつぶした領域を、用紙状態検知部を設置可能な搬送路の設置位置P1~P4として表している。用紙状態検知部は、搬送路を搬送される用紙Shの用紙状態を検知する機能を有している。設置位置P1~P4のいずれかに用紙Shの用紙状態(記録材状態の一例)を検知する用紙状態検知部(記録材状態検知部の一例)が設置される。そして、一又は複数の用紙状態検知部が、画像形成装置2及び検査装置3の搬送路に設けられる。用紙状態検知部としては、例えば、用紙Shの物性値を測定するメディアセンサ61、又は、用紙Shの搬送状態を検知する搬送状態検知センサ62がある。
【0039】
設置位置P1は、搬送路21上であって、画像形成部30による用紙Shへの画像形成前の位置(画像形成部30より上流)である。搬送路に設置される一又は複数の用紙状態検知部のうち、少なくとも一つは、画像形成部30の上流側の設置位置P1に設置される。
【0040】
設置位置P2は、搬送路21上であって、画像形成部30による用紙Shへの画像形成後、定着部36の画像定着が行われる直後の位置である。
設置位置P3は、搬送路21に合流する前の反転搬送路22上にある。
設置位置P4は、検査装置3の搬送路41上にある。
【0041】
メディアセンサ61は、用紙Shの物性値を検知する物性値センサの一例であり、画像形成部30の上流側であって、用紙Shを供給する給紙トレイ20から画像形成部30までの搬送路に設置される。このメディアセンサ61は、用紙Shが給紙されてから用紙Shの表面又は裏面に画像が形成されるまでの区間(例えば、設置位置P1)に配置され、用紙Shの物性値(「用紙物性値」と呼ぶ)を検知する。例えば、物性値センサは、用紙Shの剛度、透気度、平滑度、厚さ、含水率、及び抵抗値のうち、少なくとも一つの物性値を用紙状態として検知する。
【0042】
搬送状態検知センサ62は、第1搬送路、第2搬送路、第3搬送路及び第4搬送路のうち、少なくとも一つに設けられ、用紙Shの搬送状態を検知する。例えば、搬送状態検知センサ62は、設置位置P1~P4のうち、少なくとも一つに設置される。この搬送状態検知センサ62は、搬送される用紙Shの曲がり、片寄り、所定区間における搬送時間、及び用紙Shのカール量のうち、少なくとも一つの用紙搬送状態を用紙状態として検知する。このように画像形成システム1には、複数の搬送状態検知センサ62が設置されてもよい。設置位置P1には、メディアセンサ61と搬送状態検知センサ62が共に設けられる。
【0043】
[画像形成装置の制御系の構成]
次に、
図2を参照して、画像形成装置2の制御系の構成例について説明する。
図2は、画像形成装置2の制御系の構成例を示すブロック図である。
画像形成装置2は、通信I/F部51、用紙搬送部24、画像入力部11、画像形成部30、制御部50、記憶部52、定着部36及び操作表示部13を備える。
【0044】
通信I/F部51は、ネットワーク又は専用線を介して、オペレーターが操作する端末であるPC70との間でデータを送受信するインターフェースである。通信I/F部51として、例えばNIC(Network Interface Card)が用いられる。
【0045】
用紙搬送部24は、制御部50による制御に基づいて、
図1に示した搬送路21、反転搬送路22上に設けられた搬送ローラ(図示略)、及び反転部23を駆動する。本実施の形態では、用紙搬送部24が、検査装置3の搬送路41~43に設けられた搬送ローラ及び分岐部44の駆動を制御してもよい。そして、用紙搬送部24は、各搬送路の駆動状態、用紙Shの搬送速度等を制御部50に出力する。
【0046】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、及び入力画像処理部504を備える。
ROM502には、制御部50のCPU501が実行するプログラム又はプログラムの実行時に使用するデータ等が保存される。CPU501は、ROM502に保存されたプログラムを読み出すことにより、画像形成装置2を構成する各部の制御を行う。
RAM503には、CPU501の演算処理の途中に発生した変数やパラメータなどが一時的に書き込まれる。
【0047】
入力画像処理部504は、PC70から通信I/F部51を介して入力したジョブに含まれる入力画像に所定の画像処理を施し、印刷用画像データを作成する。また、入力画像処理部504は、画像入力部11がADF12で読み取った原稿から取得した画像データ、又は、外部から取得した画像データについても画像処理を施し、印刷用画像データを作成する。この印刷用画像データは、画像形成部30に送られる。
【0048】
制御部50は、用紙搬送部24を制御して搬送ローラを駆動させ、用紙Shを搬送路21上で搬送させる。また、制御部50は、入力画像処理部504が作成した印刷用画像データを画像形成部30に出力する。また、制御部50は、画像形成部30を制御して、用紙Shに画像を形成させる。また、制御部50は、定着部36を制御して、画像を用紙Shに定着させる。
【0049】
制御部50は、印刷出力された用紙Shの読取画像と、基準画像との位置ずれを判定した結果を用いて、次回以降に用紙Shに形成される画像の位置ずれを補正するフィードバック補正を可能とする。なお、次回とは、制御部50が位置ずれ量を算出した後、画像のフィードバック補正が間に合うタイミングより後に、画像形成部30に用紙Shが搬送され、用紙Shに画像が形成されるタイミングを表す。このため、制御部50は、用紙Shに形成された画像の読取画像に基づいて位置ずれ量を算出した以降に、フィードバック補正の対象可否を判断する。
【0050】
ただし、制御部50は、メディアセンサ61が測定した物性値の測定結果、及び搬送状態検知センサ62が検知した用紙搬送状態の測定結果を受信して、フィードバック補正の実施可否を判断する。そして、制御部50は、用紙状態が予め設定された条件を満たさないと判断した場合に、位置ずれ量をフィードバック補正の対象としない。なお、条件とは、用紙状態(用紙搬送状態及び用紙物性値)が、後述する
図4に示される項目ごとに規定された閾値の範囲内であるか、又は閾値未満であるかを規定したものである。ある用紙状態が条件を満たすとは、この用紙状態が、閾値の範囲内であるか、又は閾値未満であることを必要とする。一方、ある用紙状態が閾値の範囲外であるか、又は閾値を超えていれば、条件を満たさないと言う。フィードバック補正の実施可否の方法については、後述する
図3以降で説明する。
【0051】
なお、制御部50がフィードバック補正を実施可能と判断した場合であっても、印刷中の用紙Shに対して画像の急激な補正が行われることを防ぐ必要がある。そこで、制御部50は、複数枚の用紙Shに対して印刷出力が終了した時点で、画像が連続して形成される複数の用紙Shから読み取られた読取画像を用いて位置ずれ量の移動平均値を算出する。そして、制御部50は、移動平均値を用いて、画像形成部30が用紙Shに形成する画像の位置をフィードバック補正する制御を行う。移動平均値の算出に用いられる位置ずれ量のデータ点数については、オペレーターが操作表示部13を通じて任意に設定変更することが可能である。
【0052】
また、制御部50は、操作表示部13から操作信号を受信し、該操作信号に応じた制御を行う。さらに、制御部50は、操作表示部13に表示信号を出力し、操作表示部13が、各種操作指示や設定情報を入力するための各種設定画面や各種処理結果等を表示する操作画面を表示パネルに表示する。
【0053】
記憶部52には、制御部50のCPU501がプログラムを実行する際に使用するパラメータや、プログラムを実行して得られたデータなどが保存される。例えば、記憶部52には、各濃度レベルの画像形成条件等の情報が保存される。なお、記憶部52に、CPU501が実行するプログラムを記憶させてもよい。記憶部52は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又は不揮発性メモリ等の不揮発性の記憶媒体が用いられる。この記憶部52には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、画像形成システム1を機能させるためのプログラムが記録されている。ROM502及び記憶部52は、CPU501が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録しており、画像形成システム1によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記憶媒体の一例として用いられる。
【0054】
図3は、画像位置ずれと、フィードバック補正の対象とを表すグラフである。このグラフの横軸は、X方向(紙送り方向に直交する方向)のずれ(「X画像ずれ」と呼ぶ)の量[mm]を表し、縦軸は、Y方向(紙送り方向)のずれ(「Y画像ずれ」と呼ぶ)の量[mm]を表す。
【0055】
図3に示すグラフは、印刷が行われる度に読取部45が読取った読取画像が、基準画像からどの程度ずれたかを示している。図中で画像位置の基準画像からのずれ量を表す位置ずれ点は、(X画像ずれ,Y画像ずれ)の表記で特定される。図中の黒点は、用紙搬送異常がなかった場合に用紙Shに形成された画像の位置ずれ点を表す。また、図中の×印は、用紙搬送異常があった場合に用紙Shに形成された画像の位置ずれ点を表す。
【0056】
図3では、画像の位置ずれの移動平均値が、例えば、(1.0,1.0)の付近で表される。制御部50は、この移動平均値に基づいて、用紙Shに形成する画像の位置に対するフィードバック補正を実施する。例えば、次回以降の印刷処理では、用紙Shに形成する画像の原点(0,0)を、移動平均値(1.0,1.0)の位置に移動させる処理が行われる。
【0057】
(5.0,0.0)と(0.0,5.0)を結ぶ一点鎖線より上の網掛けした領域では、用紙Shがヤレとして検知されること(「ヤレ検知領域」と呼ぶ)を表す。用紙Sh及び画像の少なくとも一つが品質不良であることを「ヤレ」と呼び、ヤレが生じた用紙Shを「ヤレ紙」とも呼ぶ。
【0058】
従来、用紙搬送の異常があり、かつヤレ検知領域内に位置ずれ点があれば、フィードバック補正の対象とはされていなかった。また、用紙搬送の異常が無くても、ヤレ検知領域内に位置ずれ点があれば、フィードバック補正の対象とはされていなかった。いずれの場合も、ヤレ検知領域内に位置ずれ点がある画像が形成された用紙Shは、ヤレ紙として廃棄されていた。
【0059】
一方、用紙搬送の異常があっても、ヤレ検知領域内に位置ずれ点がなければ、この画像が形成された用紙Shは、ヤレ紙として廃棄されていなかった。例えば、図中に一点鎖線の丸で囲んだ×印の位置ずれ点の用紙Shが該当する。×印の点は、規定の条件を満たさない用紙状態である用紙Shの位置ずれ点を表す。例えば、用紙Shが本来使用される紙種でなかったり、用紙Shの含水量が多く、画像がにじんで不鮮明になっていたりする。しかし、従来は、このような用紙Shであっても、画像の位置ずれ量がヤレ検知領域内ではないので、位置ずれ量がフィードバック補正の対象となっていた。
【0060】
本実施の形態に係る制御部50では、ヤレ検知領域内に位置ずれ点がなくても、用紙状態が異常であれば、位置ずれ量がフィードバック補正の対象とされない。制御部50は、用紙状態が異常であると判断した用紙Shをヤレ紙として扱い、例えば、排紙トレイ48に用紙Shを排紙することが可能である。
【0061】
ここで、制御部50は、印刷出力される複数枚の用紙Shから読み取られた複数の読取画像の形成位置の位置ずれを検知し、連続印刷中の次回以降に、画像形成部30が用紙Shに形成する画像の位置をフィードバック補正する。ここで、制御部50はフィードバック補正の実施可否を判断する処理において、センサによって検知された用紙Shの物性値及び搬送状態を組み合わせて用いる。
【0062】
そして、制御部50は、位置ずれ量がフィードバック補正の対象となる範囲内であっても、用紙状態が予め設定された条件を満たさないと判断した場合に、位置ずれ量をフィードバック補正の対象としない。つまり、制御部50は、印刷出力後に読取画像から求めた画像の位置ずれ量が、
図3のヤレ検知領域内ではなくても、位置ずれ量をフィードバック補正の対象としないことがある。
【0063】
上述したように
図3に一点鎖線で×印を囲んで表される位置ずれ量は、従来の技術ではフィードバック補正の対象となっていたが、本実施の形態に係る技術では、フィードバック補正の対象としない。このように制御部50は、搬送路21,反転搬送路22及び搬送路41の少なくともいずれか一つ以上の搬送路の途中で検知された用紙情報及び状態情報が、予め設定した条件を満たさない場合には、この用紙情報及び状態情報が検知された用紙Shの位置ずれ量をフィードバック補正の対象としない。
【0064】
図4は、用紙搬送状態及び用紙物性値のそれぞれについて、フィードバック補正の対象とするか否かを判断するための条件を定義した一覧表である。
【0065】
この一覧表は、項目、判断条件例(閾値)、判断条件定義、判断条件を超える場合(例)を列の名称とし、用紙搬送状態、用紙物性値を行の名称としている。用紙搬送状態の項目には、搬送状態検知センサ62が検知可能な用紙Shの曲がり、片寄り、搬送時間、カール量の項目が含まれる。用紙物性値の項目には、剛度、透気度、平滑度、厚さ、含水率の項目が含まれる。オペレーターは、操作表示部13を通じて、
図4に示す各項目を任意の条件、又は閾値に変更することが可能である。
【0066】
(用紙搬送状態)
始めに、用紙搬送状態の判断条件について説明する。搬送状態検知センサ62は、設置位置P1~P4のいずれかに設置されたものとする。
搬送中の用紙Shの曲がりであれば、許容される閾値は、基準値の±1%以内である。制御部50は、X方向(紙送り方向に直交する方向)の両端部分に設置された搬送状態検知センサ62の検知範囲を用紙Shの両端が通過する時間の差と、用紙Shの搬送速度に基づいて用紙Shの曲がりの量を算出する。曲がりの判断条件定義は、搬送方向に対する用紙傾き量を規定したものである。つまり、用紙Shの搬送方向に対して、±1%以内の傾き量が許容される曲がりとなる。ここで、判断条件を超える場合として、例えば、搬送路上で用紙Shが引っかかったり、スリップしたりして搬送異常が発生した状況が想定される。
【0067】
搬送中の用紙Shの片寄りであれば、許容される閾値は、基準値の±0.5mm以内である。制御部50は、搬送状態検知センサ62(例えば、インラインセンサ)が検知した用紙Shの先端位置に基づいて用紙Shの片寄りの量を算出する。片寄りの判断条件定義は、搬送方向に対する用紙片寄り量を規定したものである。つまり、用紙Shの搬送方向に対して、±0.5mm以内の片寄り量が許容される片寄りとなる。判断条件を超える場合の例は、曲がりの場合と同じである。
【0068】
用紙Shの搬送時間であれば、許容される閾値は、基準値±10%以内である。制御部50は、搬送状態検知センサ62が検知した用紙Shの先端部分の通過時間に基づいて搬送時間を算出する。搬送時間の判断条件定義は、搬送路に規定される区間の搬送時間に対するばらつきを規定したものである。つまり、用紙Shの区間搬送時間に対して、基準値±10%以内の時間のばらつきが許容される搬送時間となる。判断条件を超える場合の例は、曲がりの場合と同じである。
【0069】
用紙Shのカール量であれば、許容される閾値は、30mm以内である。制御部50は、搬送状態検知センサ62が検知した用紙Shの基準高さに対する先端部分の高さの差をカール量として算出する。カール量の判断条件定義は、用紙Shの変形カール量を規定したものである。つまり、カールする前の平坦な用紙Shに対して、30mm以内のカール量が許容されるカール量となる。判断条件を超える場合の例は、用紙特性が悪い用紙Shを使用した場合、用紙Shの保管状態が悪い場合、又は本体(画像形成装置2)にオペレーターが設定する用紙Shの銘柄に間違いがあった場合のいずれかが挙げられる。
【0070】
(用紙物性値)
次に、用紙物性値の判断条件について説明する。制御部50は、例えば、設置位置P1に設置されたメディアセンサ61が検知した用紙Shの物性値を取得する。なお、用紙Shの表面(第1面の一例)に画像が形成された後、用紙Shに画像が定着される際の加圧及び加温により、用紙Shの物性値が元の値から変化する。
【0071】
用紙Shの剛度であれば、許容される閾値は、基準値±10%以内である。剛度の判断条件定義は、通紙する用紙Shの基準値に対するばらつきを規定したものである。つまり、用紙Shの基準値に対して、±10%の変化が許容される剛度となる。判断条件を超える場合の例は、カール量の場合と同じである。
【0072】
用紙Shの透気度であれば、許容される閾値は、基準値±10%以内である。透気度の判断条件定義は、通紙する用紙Shの基準値に対するばらつきを規定したものである。つまり、用紙Shの基準値に対して、±10%の変化が許容される透気度となる。判断条件を超える場合の例は、カール量の場合と同じである。
【0073】
以下、同様に用紙Shの平滑度であれば、許容される閾値は、平滑度の基準値±10%以内である。また、用紙Shの厚さであれば、許容される閾値は、厚さの基準値±50μm内である。また、用紙Shの含水率であれば、許容される閾値は、含水率の基準値±50μm内である。
【0074】
制御部50は、一の用紙状態、又は複数の用紙状態の組み合わせに基づいてフィードバック補正の対象可否を判断する。制御部50が一の用紙状態だけに基づいてフィードバック補正の対象可否を判断する場合、
図4の一覧表の各行に挙げた項目のいずれかが選択される。また、制御部50が複数の用紙状態の組み合わせに基づいてフィードバック補正の対象可否を判断する場合、
図4の一覧表の用紙搬送状態及び用紙物性値の項目毎に、少なくとも一つずつ項目が選択される。なお、用紙搬送状態の項目から選択された複数の項目を組み合わせたり、用紙物性値の項目から選択された複数の項目を組み合わせたりしてもよい。
【0075】
上述したように、メディアセンサ61が用紙Shの物性値を検知するのは、用紙Shの表面に画像が形成及び定着される前であることが望ましい。ただし、用紙Shの表面に画像が形成及び定着された後であっても、制御部50は、用紙Shの裏面(第2面の一例)に画像が形成される前に、メディアセンサ61が検知した用紙Shの電気抵抗値に基づき、用紙Shの状態を判断してもよい。用紙Shの表面に画像が形成及び定着されることで、用紙Shの水分が失われ、用紙Shの電気抵抗値が変化する。このため、制御部50は、用紙Shの電気抵抗値の変化量を算出して、用紙Shの物性値が適切であるかを判断することができる。
【0076】
<画像形成システムの処理例>
次に、画像形成システム1の処理の例について説明する。
図5は、画像形成システム1の処理の例を示すフローチャートである。
【0077】
始めに、オペレーターは、操作表示部13を通じて、これから画像形成システム1に実行させるジョブで用いる用紙Shの用紙銘柄を設定する。制御部50は、用紙銘柄が設定されると、記憶部52に保存している、用紙銘柄に紐付けられている用紙物性値及び用紙搬送状態の各基準値を読み出し、各基準値を確定する(S1)。
【0078】
次に、制御部50は、ジョブに規定される枚数の印刷が終了したか否かを判断する(S2)。制御部50は、規定枚数の印刷が終了したと判断した場合(S2のYES)、本処理を終了する。一方、制御部50は、規定枚数の印刷が終了していないと判断した場合(S2のNO)、印刷を開始する(S3)。
【0079】
ステップS3の後、制御部50は、用紙Shの用紙物性値を取得する(S4)。この際、制御部50は、設置位置P1に設置されたメディアセンサ61が測定した用紙物性値を、このメディアセンサ61から取得する。そして、制御部50は、
図4に示した一覧表の用紙物性値の項目に基づいて、用紙物性値が、判断条件例に示される基準値の範囲外になったか否かを判断する。この際、制御部50は、用紙物性値がNGになった(例えば、基準値の範囲外)と判断した場合、用紙物性値に対応してRAM503に設けられるフラグ領域にフラグ1を立てる。一方、制御部50は、用紙物性値がOKである(例えば、基準値の範囲内)と判断した場合、フラグ1を立てない。
【0080】
次に、制御部50は、用紙Shの用紙搬送状態を取得する(S5)。この際、制御部50は、設置位置P2,P3のいずれか又は両方に設置された搬送状態検知センサ62が測定した用紙搬送状態を、この搬送状態検知センサ62から取得する。そして、制御部50は、
図4に示した一覧表の用紙搬送状態の項目に基づいて、用紙搬送状態が、判断条件例に示される基準値の範囲外になったか否かを判断する。この際、制御部50は、用紙搬送状態がNGになった(例えば、基準値の範囲外)と判断した場合、用紙搬送状態に対応してRAM503に設けられるフラグ領域にフラグ2を立てる。一方、制御部50は、用紙搬送状態がOKである(例えば、基準値の範囲内)と判断した場合、フラグ2を立てない。
【0081】
次に、制御部50は、画像形成部30が画像を形成した用紙Shを印刷出力する(S6)。次に、読取部45は、印刷出力された用紙Shの出力画像を読み取って、読取画像を制御部50に出力する。そして、制御部50は、読取画像と基準画像との位置ずれを測定し、印刷出力された用紙Shの位置ずれが、
図3のヤレ検知領域に含まれるか判断する(S7)。
【0082】
制御部50は、印刷出力された用紙Shの位置ずれが、
図3のヤレ検知領域に含まれる場合に、この用紙Shをヤレと検知する(S8)。制御部50は、ヤレが検知された用紙Shを排紙トレイ48に排紙するように、検査装置3に指示する。制御部50は、ステップS8で用紙Shをヤレと検知した後、ステップS2に戻って再び印刷終了か否かを判断してもよい。
【0083】
一方、制御部50は、印刷出力された用紙Shの位置ずれが、
図3のヤレ検知領域に含まれない場合に、RAM503を参照してフィードバック補正の有無を判定する(S9)。
【0084】
そして、制御部50は、ステップS4、S5にてフラグ1,2を立てた場合、フィードバック補正をNG、すなわち位置ずれをフィードバック補正の対象とせず、この位置ずれに基づくフィードバック補正を行わないと判定する。図中に記載された、「フラグ1:有」とは、フラグ1が立っていることを表し、「フラグ2:有」とは、フラグ2が立っていることを表す。また、図中では、「フラグ1:有 and フラグ2:有」と記載しているが、「フラグ1:有 or フラグ2:有」の場合も、制御部50は、フィードバック補正をNGと判定する。そして、制御部50は、位置ずれに基づくフィードバック補正を行わず、ステップS2に処理を戻す。
【0085】
一方、制御部50は、ステップS4、S5にてフラグ1,2を立てていない場合、フィードバック補正はOK、すなわち位置ずれをフィードバック補正の対象とし、この位置ずれに基づくフィードバック補正を行うと判定する。図中に記載された、「フラグ1:無」とは、フラグ1が立っていないことを表す。同様に、「フラグ2:無」とは、フラグ2が立っていないことを表す。そして、「フラグ1:無 and フラグ2:無」の場合、制御部50は、位置ずれに基づいて、画像形成部30が用紙Shに形成する画像のフィードバック補正を実施する(S10)。その後、制御部50は、ステップS2に処理を戻す。
【0086】
ステップS9又はS10の後に、ステップS2に処理が戻り、印刷が終了していなければ(S2のNO)、引き続き印刷が行われる。このため、ステップS3の印刷開始処理はスキップされ、ステップS4から処理が行われる。
【0087】
ここで、
図5に示したフローチャートは、用紙物性値及び用紙搬送状態を取得する処理を表している。例えば、用紙物性値又は用紙搬送状態を、
図4に示した1項目だけ選択して基準値と比較する場合には、選択した項目に該当する用紙物性値又は用紙搬送状態のフラグ1又はフラグ2だけが用いられる。このため、ステップS4又はS5のいずれかだけが実行されることがある。そして、ステップS9のフィードバック補正判定の処理では、選択された項目に該当する用紙物性値又は用紙搬送状態のフラグ1又はフラグ2の有無が判定される。また、選択された項目に該当する用紙物性値又は用紙搬送状態のフラグ1又はフラグ2が無い場合に、ステップS10のフィードバック補正が実施される。
【0088】
なお、制御部50は、ステップS6の印刷出力の前に、制御部50が用紙物性値を取得する処理(S4)と、用紙搬送状態を取得する処理(S5)を行うようにした。しかし、印刷出力の後に、用紙搬送状態を取得する処理を追加してもよい。例えば、
図1に示した設置位置P2~P4に設置される搬送状態検知センサ62が、印刷出力後に用紙搬送状態を取得することができる。
【0089】
また、
図5に示した処理を用紙Shの表面で1回、裏面で1回ずつ行うため、ステップS5,S6を1回ループさせてもよい。この場合、1回目のステップS4,S5の処理では、制御部50が、表面に画像が印刷される前の用紙Shの用紙物性値と用紙搬送状態を取得した後、用紙Shの表面が印刷出力される。次に、2回目のステップS5の処理では、制御部50が、裏面に画像が印刷される前の用紙Shの用紙搬送状態を取得した後、用紙Shの裏面が印刷出力される。その後、ループを抜けて、用紙Shの表面及び裏面の読取画像に基づく、ステップS7,S8の判定処理が行われてもよい。
【0090】
図6は、従来技術と、本実施の形態に係る技術との違いを示す一覧表である。
【0091】
この一覧表は、ヤレ検知、用紙搬送異常、従来技術、及び本実施の形態に係る技術の各項目を有する。
ヤレ検知の項目には、ヤレ検知が有りと無しのいずれかが格納される。
用紙搬送異常の項目には、用紙搬送の異常有りと無しのいずれかが格納される。
従来技術と、本実施の形態に係る技術の項目には、フィードバック補正有り(〇印)と、フィードバック補正無し(×印)のうち、いずれかが格納される。
【0092】
一覧表の上から順に説明する。
ヤレ検知有り、かつ用紙搬送異常有りの場合、従来技術と、本実施の形態に係る技術では、いずれもフィードバック補正が行われない。
【0093】
ヤレ検知有り、かつ用紙搬送異常無しの場合、従来技術と、本実施の形態に係る技術では、いずれもフィードバック補正が行われない。ただし、本実施の形態に係る技術では、用紙搬送異常の有無だけでフィードバック補正の可否を判断してもよい。この場合、本実施の形態に係る技術の項目に括弧書きで丸印を付加したように、ヤレ検知有り、かつ用紙搬送異常無しの場合においてもフィードバック補正有りとすることが可能である。
【0094】
ヤレ検知無し、かつ用紙搬送異常有りの場合、従来技術ではフィードバック補正が行われていた。このため、用紙搬送異常に気付かないままフィードバック補正が行われることで、用紙搬送が正常になった時に、基準位置に対して大きくずれた位置に画像が形成されることがあった。一方、本実施の形態に係る技術では、ヤレ検知無しであっても、用紙搬送異常有りの場合、フィードバック補正が行われない。このため、用紙搬送が正常になった時に、用紙Shに形成される画像の位置ずれは大きくならない。
【0095】
ヤレ検知無し、かつ用紙搬送異常無しの場合、従来技術と、本実施の形態に係る技術では、いずれもフィードバック補正を行う。すなわち、基準画像に対して読取画像の位置ずれが大きければ、用紙Shに形成される画像の位置ずれがフィードバック補正される。
【0096】
以上説明した一実施の形態に係る画像形成システム1の制御部50は、画像の位置ずれ量を算出してリアルタイムで画像位置のフィードバック補正を行う前に、用紙Shの用紙状態が予め設定された条件を満たすか否かを判断する。そして、制御部50は、用紙状態が条件を満たさないと判断した場合には、画像の位置ずれ量をフィードバック補正の対象としない。このように画像形成装置2の本来の性能とは無関係な用紙Shの突発的な異常が発生しても、不要なフィードバック補正を行わない画像形成システム1を提供することができる。
【0097】
ここで、制御部50は、用紙Shの用紙状態として、用紙物性値及び用紙搬送状態の少なくとも一つをフィードバック補正の可否の判断に用いる。この際、制御部50は、画像の形成前における用紙Shの用紙物性値が判断条件を満たすか確認する。また、制御部50は、画像の形成前後における用紙Shの用紙搬送状態が判断条件を満たすか確認する。そして、制御部50は、読取画像の位置ずれがヤレ検知領域内(
図3を参照)になくても、用紙物性値及び用紙搬送状態のうち、少なくとも一つが条件を満たさなかったと判断した場合に、フィードバック補正を行わない。このため、用紙状態が正常に戻った時に、用紙Shに形成される画像の画像品質の低下を避けることができる。
【0098】
また、
図4に示される用紙搬送状態及び用紙物性値の閾値は、オペレーターが使用する画像形成システム1毎に適切な値を設定することが可能である。このため、オペレーターは、ジョブで設定される用紙Shの紙種、画像形成システム1の設置環境、品質要求に基づいて、デフォルト値より高い判定基準値(例えば、曲がりの閾値を±0.8%とする)を設定することができる。また、オペレーターは、フィードバック補正の対象としない用紙搬送状態及び用紙物性値の組み合わせ等を任意に変更することも可能である。
【0099】
[変形例]
図1に示した画像形成システム1は、画像形成装置2と検査装置3とを組み合わせた構成とした。しかし、画像形成装置2のプリンター部10に検査装置3の構成を組み入れた画像形成システムとしてもよい。この場合、画像形成装置2は、
図1に示した検査装置3を構成する搬送路41,42,43、切替部44、読取部45a,45b、測色計46a,46b、排紙トレイ47,48を備える構成とする。このような構成とした画像形成装置2であっても、制御部50は、上述した用紙Shの用紙状態に基づいて、画像の位置ずれをフィードバック補正するか否かを判断することができる。
【0100】
また、制御部50が取得した用紙状態の情報は、通常、オペレーターに通知することはない。しかし、制御部50は、ステップS9でNGと判定した場合、印刷出力が行われた全ての用紙Shの枚数に対する、フィードバック補正を行わなかった用紙Shの枚数の割合の増加に応じて、操作表示部13等に警告を表示させたり、画像形成システム1の動作を停止させたりしてもよい。このとき、制御部50は、オペレーターに対して、フィードバック補正が行わなかったこと、及び条件を満たさなかった物性値又は用紙搬送状態の内容を通知してもよい。
【0101】
また、オペレーターが画像形成システム1の動作状況を把握するため、制御部50は、フィードバック補正を行わなかったこと、及び条件を満たさなかった物性値又は用紙搬送状態の内容をログデータとして記憶部52に保存することが可能である。また、制御部50は、通信I/F部51の通信機能を使用してログデータをPC70に送信することで、PC70を使用するオペレーターが画像形成システム1の状態を把握することが可能である。また、ログデータは、遠隔地に設けられた監視センターによって収集され、監視センターのオペレーターにより内容が確認されてもよい。
【0102】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…画像形成システム、2…画像形成装置、3…検査装置、10…プリンター部、13…操作表示部、21…搬送路、22…反転搬送路、30…画像形成部、41~43…搬送路、45…読取部、50…制御部、61…メディアセンサ、62…搬送状態検知センサ、P1~P4…設置位置