(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20241106BHJP
H05K 7/12 20060101ALI20241106BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H05K5/02 E
H05K7/12 R
G09F9/00 351
(21)【出願番号】P 2021005953
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】江▲崎▼ 真治
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145788(JP,A)
【文献】特開平06-069666(JP,A)
【文献】特開2014-192410(JP,A)
【文献】特開2014-038891(JP,A)
【文献】特開平11-330718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02;
7/12
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの開口部に取り付けられる電気機器であって、
前記開口部より大きいフランジと、
仮固定具と本固定具とを有する固定具と、
前記仮固定具が前記パネルによって押し込まれることにより、前記固定具を
、前記仮固定具が前記パネルによって押し込まれる前の第1位置から
、第2位置に移動させる移動機構とを備え、
前記第1位置における前記固定具の飛び出し長さより、前記第2位置における前記固定具の飛び出し長さは長く、
前記第2位置は、前記本固定具が前記パネルに対向する位置である電気機器。
【請求項2】
前記本固定具は、前記第2位置において、前記パネル側に移動することにより、前記パネルを前記フランジとの間で挟み付ける請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記第2位置において、前記本固定具は、前記フランジに対向する請求項1または2に記載の電気機器。
【請求項4】
前記第1位置において、前記本固定具は前記開口部に対応する位置にあり、前記仮固定具の一部は前記パネルに対応する位置にある請求項1から3のいずれか1項に記載の電気機器。
【請求項5】
前記仮固定具は、前記パネルに対して傾斜した第1傾斜部を備え、
前記第1傾斜部は、前記電気機器を前記開口部に挿入する時に前記パネルによって押し込まれる請求項1から4のいずれか1項に記載の電気機器。
【請求項6】
パネルの開口部に取り付けられる電気機器であって、
前記開口部より大きいフランジと、
仮固定具と本固定具とを有する固定具と、
前記仮固定具が前記パネルによって押し込まれることにより、前記固定具を第1位置から第2位置に移動させる移動機構とを備え、
前記第1位置における前記固定具の飛び出し長さより、前記第2位置における前記固定具の飛び出し長さは長く、
前記第2位置は、前記本固定具が前記パネルに対向する位置であり、
前記仮固定具は、前記パネルに対して傾斜した第2傾斜部を備え、
前記第2傾斜部は、前記電気機器を前記開口部から抜去する時に前記パネルによって押し込まれ、
前記本固定具は、前記第2傾斜部が前記パネルによって押し込まれることにより、第3位置から第4位置に移動し、
前記第4位置における前記固定具の飛び出し長さより、前記第3位置における前記固定具の飛び出し長さは長
い電気機器。
【請求項7】
前記第4位置は、前記固定具が前記開口部に納まる位置である請求項6に記載の電気機器。
【請求項8】
前記第3位置は、前記第2位置と同一である請求項6または7に記載の電気機器。
【請求項9】
ディスプレイを備える表示器である請求項1から8のいずれか1項に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気機器の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイまたはタッチパネルなどの電気機器を、パネルに取り付けることがある。電気機器をパネルに取り付けるために、特許文献1のように、開口部が設けられたパネルに対し、電気機器を嵌め込み、電気機器正面側のフランジと電気機器背面側から専用の固定具とで、パネルを挟み込むことが一般的である。このような取り付け形態をパネルマウント取り付けという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような電気機器の取り付けは、電気機器の重量が大きいものもあり、またパネルを挟んで電気機器の正面と背面とで二人作業になることが一般的なため、作業性が悪い。
【0005】
本発明の一態様はこの問題を鑑みなされたものであり、電気機器をパネルに取り付けるに際し、一人作業であっても、電気機器のパネルへの取り付け易さを担保しつつ、電気機器をパネルに取り付けられる構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電気機器は、パネルの開口部に取り付けられる電気機器であって、前記開口部より大きいフランジと、仮固定具と本固定具とを有する固定具と、前記仮固定具が前記パネルによって押し込まれることにより、前記固定具を第1位置から第2位置に移動させる移動機構とを備え、前記第1位置における前記固定具の飛び出し長さより、前記第2位置における前記固定具の飛び出し長さは長く、前記第2位置は、前記本固定具が前記パネルに対向する位置である。
【0007】
上記の構成によれば、電気機器を開口部に挿入することで、仮固定具が押し込まれ、固定具が第2位置になる。第2位置において、第1位置よりも固定具の飛び出し長さが長いため、仮固定具によってパネルに対し電気機器を仮固定することができる。よって、電気機器のパネルへの取り付け易さを担保しつつ、電気機器をパネルに取り付けられる。
【0008】
前記本固定具は、前記第2位置において、前記パネル側に移動することにより、前記パネルを前記フランジとの間で挟み付けてもよい。
【0009】
上記の構成によれば、本固定具とフランジとよって、パネルを挟み込み、締め付けることで電気機器を固定することができる。
【0010】
前記第2位置において、前記本固定具は、前記フランジに対向してもよい。
【0011】
上記の構成によれば、本固定具がフランジに対向して位置することができる。そのため、フランジと本固定具でパネルをより強固に挟み込むことができる。
【0012】
前記第1位置において、前記本固定具は前記開口部に対応する位置にあり、前記仮固定具の一部は前記パネルに対応する位置にあってもよい。
【0013】
上記の構成によれば、第1位置において、電気機器をパネルの開口部に挿入することができる。
【0014】
前記仮固定具は、前記パネルに対して傾斜した第1傾斜部を備え、前記第1傾斜部は、前記電気機器を前記開口部に挿入する時に前記パネルによって押し込まれてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、開口部に電気機器を挿入することで、第1傾斜部を開口部が押し込んでもよい。
【0016】
前記仮固定具は、前記パネルに対して傾斜した第2傾斜部を備え、前記第2傾斜部は、前記電気機器を前記開口部から抜去する時に前記パネルによって押し込まれ、前記本固定具は、前記第2傾斜部が前記パネルによって押し込まれることにより、第3位置から第4位置に移動し、前記第4位置における前記固定具の飛び出し長さより、前記第3位置における前記固定具の飛び出し長さは長くてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、電気機器を開口部から抜去するに際し、開口部が第2傾斜部を押すことで、固定具の位置が第3位置から第4位置へと自動で動く。
【0018】
前記第4位置は、前記固定具が前記開口部に納まる位置であってもよい。
【0019】
上記の構成によれば、電気機器を開口部から障害なく抜去することができる。
【0020】
前記第3位置は、前記第2位置と同一であってもよい。
【0021】
上記の構成によれば第3位置と第2位置が同一なため、電気機器を開口部からの抜去時に、第2位置から第4位置へと変化させることができ、1ステップ処理の状態を減らすことができる。
【0022】
前記電気機器は、ディスプレイを備える表示器であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、電気機器のパネルへの取り付け易さを担保しつつ、電気機器をパネルに取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明で対象とする電気機器の一つである表示器の一例を示す外観図である。
【
図4】ホルダーの一例をA断面で半分にした断面図である。
【
図7】ある場合における表示器および固定具の断面図である。
【
図8】別の場合における表示器および固定具の断面図である。
【
図9】さらに別の場合における表示器および固定具の断面図である。
【
図10】第1位置における表示器の背面から見た外観図である。
【
図11】第2位置における表示器の背面から見た外観図である。
【
図12】第3位置における表示器の背面から見た外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
§1 構成例
(電気機器の概要)
まず、本実施形態の主要な構造を説明する前に、本発明の一態様を適用する電気機器の概要について説明する。本発明の一態様で対象とする電気機器は、FA(Factory Automation)関連機器のHMI(Human Machine Interface)として様々な情報をディスプレイに表示する電気機器を対象とする。
【0027】
この電気機器は、工場等において制御コントローラであるPLC(Programmable Logic Controller)に接続して使用される。また、ディスプレイに重ねあわされたタッチパネルおよびボタンなどにより、オペレータの入力を受け付け、PLCのパラメータの変更または制御の変更を受け付けるように構成されており、一般的にプログラマブル表示器と呼ばれている。
【0028】
また、電気機器はプログラマブル表示器に限定されず、温度調整器、計測機、または制御コントローラなどの任意のパネルマウント取り付けを採用した電気機器であってもよい。
【0029】
電気機器の設置環境には防水性が求められる場合もあり、そのような場合では、取り付け状態によっては防水性が保証されない場合がある。防水性が保証できなかった場合の原因を調査すると、電気機器をパネルに仮固定する手段がなく、電気機器がパネルに対し平行に取り付けられず、十分な密着性が得られなかったことが原因であることが多い。
【0030】
(表示器の構成)
図1は、本発明の一態様で対象とする電気機器の一つである表示器の一例を示す外観図(斜視図)である。表示器1(電気機器)は、本体前面1aおよび本体背面1bに分割できる構造をしている。また、本体前面1aは、ディスプレイに重ねあわされたタッチパネルを有し、その外周にフランジ1cを備える。表示器1は、従来技術と異なり、専用の固定金具を用いず、表示器1に内蔵された固定具10を用いてパネルマウントを行う。フランジ1cは、表示器1の前面で本体部から突出した部位であり、パネルに当接する部位である。フランジ1cには凹部があり、凹部にはパッキンが挿入されている。
【0031】
固定具10は、表示器1の本体部に内蔵された固定金具であり、本体前面1aおよび本体背面1bの挟み込みにより、表示器1に固定されている。また、固定具10の一部の状態では、固定具10はパネルに当接することができる。フランジ1cおよび固定具10で、マウントするパネルを挟み込み、パネルマウントを行う。
【0032】
表示器1に固定具10は複数備えられていてもよい。例えば、表示器1の上部両端および下部両端の計4か所にそれぞれ固定具10が備えられている場合に関してこれ以降説明するものとするが、これに限定されない。
【0033】
(固定具10の構成)
図2は、固定具10の一例を示す外観図である。固定具10は、ホルダー11と、第1ロッド12と、第2ロッド13と、仮固定金具14(仮固定具)と、本固定ネジ15(本固定具)と、第1バネ16と、第2バネ17と、を備える。
【0034】
図3は、ホルダー11の一例を示す外観図である。
図4は、ホルダー11のA断面を示す断面図である。ホルダー11は、内部に多数の凹凸を持つ円筒状の部材である。ホルダー11は、円筒部111と、固定リブ112と、複数のノッチ113とにより構成される。
【0035】
円筒部111は、パイプ状の構造である。固定リブ112は、円筒部111から突出するリブであり、他の部材を固定できるようになっており、本体前面1aおよび本体背面1bにより挟み込まれることで、位置が固定される。
【0036】
複数のノッチ113は、傾斜しており、第1ノッチ113aと、第2ノッチ113bと、第3ノッチ113cと、第4ノッチ113dと、第5ノッチ113eとを少なくとも含み、それぞれが円環状に連なっている。第1ノッチ113aと、第2ノッチ113bと、第3ノッチ113cと、第4ノッチ113dと、第5ノッチ113eとのセットが、2セット以上あってもよい。
図3および
図4に例示したホルダー11は、当該セットが6セットある例である。
【0037】
図5は、第1ロッド12の一例を示す外観図である。第1ロッド12は、先端にスター状に複数の突起123をもつ部材である。第1ロッド12は、第1シャフト121と、バネ受け122と、複数の突起123とにより構成される。
【0038】
第1シャフト121は、本体前面1aおよび本体背面1bに対し回転・スライド可能に取り付けられたシャフトである。第1シャフト121の先端には、径方向に突出したバネ受け122が設けられている。バネ受け122の外周には、突起123が複数設けられている。突起123において、傾斜した第1傾斜面123aが、第1ロッド12の端面から突出している。
【0039】
図6は、第2ロッド13の一例を示す外観図である。第2ロッド13は、先端の長手方向側に複数の傾斜面をもつリング132を備える部材である。第2ロッド13は、第2シャフト131と、リング132とにより構成される。
【0040】
第2シャフト131は、仮固定金具14に固定された部材であり、仮固定金具14とともに、本体前面1aおよび本体背面1bに対しスライドする。第2シャフト131の先端には、第2シャフト131の直径よりも大きいリング132が設けられている。リング132は、パイプ状に形成されていてもよく、リング132の端面は、複数の第2傾斜面132aを備える。
【0041】
仮固定金具14は、金属を曲げ加工された金具である。仮固定金具14は、結合部141、第1接触部142、および第2接触部143を含む。仮固定金具14は、第2ロッド13と結合部141で何等かの手段により結合している。結合部141は、L字状であり、一面を第2ロッド13との結合面とし、他の面に本固定ネジ15を結合するネジ穴が設けられている。仮固定金具14は、結合部141の先に、曲げ加工部を介して第1接触部142(第1傾斜部)を備える。また、仮固定金具14は、第1接触部142の先に、曲げ加工部を介して第2接触部143(第2傾斜部)を備える。第1接触部142および第2接触部143は、本体前面1aの表面(またはフランジ1cにおけるパネルに接触する面)に対し、0°でも90°でもない角度をもって傾斜している。
【0042】
本固定ネジ15は、ネジであり、仮固定金具14のネジ穴に挿入されている。本固定ネジ15の先端(フランジ1c側)には、本固定ネジ15の締め付け時のキズ防止用のキャップが備わっていてもよい。
【0043】
第1バネ16は、本体前面1aまたは本体背面1bとバネ受け122との間に反発力を生じさせる圧縮バネである。第1バネ16の内径は、第1シャフト121の直径よりも大きく、第1バネ16の外径は、バネ受け122の直径よりも小さい。そのため、第1バネ16の内部に同軸になるように第1ロッド12を挿入して組み立ててもよい。第1バネにより、本体前面1aまたは本体背面1bに対して、反力が働くため、ホルダー11に対する、第1ロッド12の位置が定まる。
【0044】
第2バネ17は、固定リブ112と仮固定金具14との間に引張力を生じさせる引張バネである。第2バネ17の力は、第1バネ16の力よりも弱い。第2バネ17により、仮固定金具14に対し、ホルダー11へと引っ張る力が働くため、固定具10を仮固定金具14が鉛直下向きになるようにした場合であっても、第2ロッド13がホルダー11に対し伸び切らないようにできる。第2バネ17の力が、仮固定金具14を第1ロッド12側に移動させるよう働くよう第2バネ17が配置されれば、第2バネ17として任意のバネを用いることができる。
【0045】
(固定具10の動作説明)
固定具10は、ホルダー11と、第1ロッド12と、第2ロッド13と、第1バネ16と、第2バネ17と、を含む移動機構により固定具10の総長が変化できる機構である。この機構に関して説明する。
【0046】
図7は、ある状態(第1位置)における表示器1および固定具10の断面図である。
図7に示すように、第1ロッド12と、第2ロッド13とは、ホルダー11に挿入されている。
図4における矢印Bの方向に、第1ロッド12は、突起123からホルダー11に挿入される。また、
図4における矢印Cの方向に、第2ロッド13は、リング132からホルダー11に挿入される。
【0047】
突起123は、いずれかのノッチ113と第1傾斜面123aで対向する。また、突起123の第1傾斜面123aは、リング132のいずれかの第2傾斜面132aと対向する。外力が固定具10に加わっていない場合、第1バネ16が伸びた状態になるため、第1ロッド12は、ホルダー11に押し付けられる。すなわち、第1傾斜面123aで突起123といずれかのノッチ113が当接している。また、この時、第2傾斜面132aで突起123にリング132が当接していてもよい。したがって、突起123と当接するノッチ113に応じて、固定具10の総長は定まる。
【0048】
図7は、突起123が第1ノッチ113aに当接している場合であり、この状態を第1位置と呼ぶ。第1位置において、第1バネ16の反力により第1ロッド12は、
図4における矢印Bの方向に移動しようとするが、突起123と第1ノッチ113aとが当接している。また、当接している面が第1バネ16の反力に対して傾斜しており、第1バネ16の反力によって突起123は当該傾斜面に従って移動しようとするのを側壁113fが抑止している。すなわち、突起123は、第1ノッチ113aにはまり込んでいる。
【0049】
ここで、第2ロッド13を
図4における矢印Cの方向に動作させることで、リング132の第2傾斜面132aが突起123の第1傾斜面123aと当接し、突起123がはまり込んでいた第1ノッチ113aから出る。第1傾斜面123aは第2傾斜面132aに沿って動き、第1傾斜面123aと第2ノッチ113bとが対向するように第1ロッド12は少し回転する。その後、第2ロッド13をフリーにすると、第1バネ16の反力および第1傾斜面123aと第2ノッチ113bとにより、第1ロッド12は第1傾斜面123aの向きに回転する。第1ロッド12が回転したことにより、第1バネ16の反力によって、第1ロッド12は矢印Bの方向に移動できるようになり、
図8のようになる。
【0050】
図8は、別の状態(第2位置)における表示器1および固定具10の断面図である。
図8は、突起123が第3ノッチ113cに当接している場合であり、この状態を第2位置と呼ぶ。第2位置において、第1バネ16の反力により、第1ロッド12は、
図4における矢印Bの方向に移動しようとするが、突起123と第3ノッチ113cとが当接している。また、当接している面が第1バネ16の反力に対して傾斜しており、第1バネ16の反力によって突起123は当該傾斜面に従って移動しようとするのを側壁113gが抑止している。すなわち、突起123は、第3ノッチ113cにはまり込んでいる。
【0051】
ここで、第2ロッド13を
図4における矢印Cの方向に動作させることで、リング132の第2傾斜面132aが突起123の第1傾斜面123aと当接し、突起123がはまり込んでいた第3ノッチ113cから出る。第1傾斜面123aは第2傾斜面132aに沿って動き、第1傾斜面123aと第4ノッチ113dとが対向するように第1ロッド12は少し回転する。その後、第2ロッド13をフリーにすると、第1バネ16の反力および第1傾斜面123aと第4ノッチ113dとにより、第1ロッド12は第1傾斜面123aの向きに回転する。第1ロッド12が回転したことにより、第1バネ16の反力によって、第1ロッド12は矢印Bの方向に移動できるようになり、
図9のようになる。
【0052】
図9は、さらに別の状態(第3位置)における表示器1および固定具10の断面図である。
図9は、突起123が第4ノッチ113dに当接している場合であり、この状態を第3位置と呼ぶ。第3位置において、第1バネ16の反力により、第1ロッド12は、
図4における矢印Bの方向に移動しようとするが、突起123と第4ノッチ113dとが当接している。また、当接している面が第1バネ16の反力に対して傾斜しており、第1バネ16の反力によって突起123は当該傾斜面に従って移動しようとするのを側壁113hが抑止している。すなわち、突起123は、第4ノッチ113dにはまり込んでいる。
【0053】
ここで、第2ロッド13を
図4における矢印Cの方向に動作させることで、リング132の第2傾斜面132aが突起123の第1傾斜面123aと当接し、突起123がはまり込んでいた第4ノッチ113dから出る。第1傾斜面123aは第2傾斜面132aに沿って動き、第1傾斜面123aと第5ノッチ113eとが対向するように第1ロッド12は少し回転する。その後、第2ロッド13をフリーにすると、第1バネ16の反力および第1傾斜面123aと第5ノッチ113eとにより、第1ロッド12は第1傾斜面123aの向きに回転する。第1ロッド12が回転したことにより、第1バネ16の反力によって、第1ロッド12は矢印Bの方向に移動できるようになり、再び
図7のようになる。
【0054】
したがって、第2ロッド13を
図4における矢印Cの方向に動作させることで、突起123とノッチ113との当接箇所が変化し、それに伴い、第1ロッド12の位置が定まる。また、第2バネ17によって、仮固定金具14は、ホルダー11に引っ張られ、仮固定金具14に固定された第2ロッド13が、第1ロッド11に当接し、第2ロッド13の位置が定まる。結果として、固定具10の総長は定まり、突起123とノッチ113との当接箇所が変化するごとに、固定具10の総長が変化する。
【0055】
すなわち、第2位置は、第1位置よりも固定具10の総長が長く、第3位置は、第1位置よりも固定具10の総長が短い。そのため、表示器1に対する固定具10の位置は変化できる。固定具10は、いわゆるノック式ボールペンのノック式機構のような機構を含み、第2ロッド13を矢印Cの方向に動作(ノック)させることで、第1位置から第2位置へと、第2位置から第3位置へと状態を変化させることができる。これにより、固定具10の総長が変化する。
【0056】
§2 使用例
(パネルへの表示器の取り付け方法)
表示器1をパネル2に取り付ける方法に関して説明する。
【0057】
図10は、第1位置における表示器1の背面から見た外観図である。
図11は、第2位置における表示器1の背面から見た外観図である。
【0058】
図7および
図10に示すように、固定具10が第1位置の場合には、表示器1の本体より仮固定金具14の一部は飛び出し(突出)ており、仮固定金具14の一部はパネル2に対応する位置にある。また、第1位置において、本固定ネジ15は、開口部21に対応する位置にある。そのため、表示器1をパネル2に組み付ける際、パネル2の開口部21は、仮固定金具14の第1接触部142に接触し、本固定ネジ15には接触しない。
【0059】
本体前面の表面とパネル2の平面は平行面である。そのため、第1接触部142は、パネル2に対し、0°でも90°でもない角度をもって傾斜している。パネル2が第1接触部142に接触した状態からさらに表示器1をパネル2に対し押し込むことで、第1接触部142は表示器1の内部に押し込まれる。つまり、第1接触部142によって、仮固定金具14を介して、第2ロッド13は、
図4の矢印Cの方向に動作(ノック)しようとする。そのため、パネル2の開口部21が、仮固定金具14を越すことで、固定具10は第1位置から第2位置へと変化する。
【0060】
図8および
図11に示すように、固定具10が第2位置の場合には、表示器1の本体より仮固定金具14の一部および本固定ネジ15が飛び出し(突出)ている。第1位置における固定具10の飛び出し長さより、第2位置における固定具10の飛び出し長さは長い。その結果、第2位置においては、本固定ネジ15は、パネル2に対向する位置であり、本固定ネジ15の先端と、パネル2との間隔は狭く、表示器1の姿勢が大きく崩れることを抑止している。すなわち、第2の位置においては、パネル2に対し、表示器1が仮固定されているといえる。
【0061】
また、この時、第2接触部143は、パネル2に当接してもよい。さらに、パネル2に当接するのに際し、第2接触部143は、パネル2から圧縮力を受けてもよく、その結果、第2接触部143が板バネになり、復元力によってパネル2を挟み込んでもよい。この場合、第2接触部143による板バネでの挟み込みにより、本固定ネジ15の先端による仮固定の場合よりも、より強固に仮固定することができる。
【0062】
また、本固定ネジ15が表示器1の本体から飛び出し、本固定ネジ15がパネル2に対向するようになるため、本固定ネジ15をパネル2に対して締め付けることができるようになる。第2の位置において、本固定ネジ15を締め付けることで、表示器1をパネル2に固定することができる。
【0063】
この時、本固定ネジ15がフランジ1cに対向していた場合、直接的にパネル2をフランジ1cと本固定ネジ15で挟み込むことができる。そのため、強固にパネル2に表示器1を固定することができる。
【0064】
(パネルから表示器の取り外し方法)
表示器1をパネル2から取り外す方法に関して説明する。
【0065】
図12は、第3位置における表示器1の背面から見た外観図である。
【0066】
図8および
図11に示すように、固定具10が第2位置の場合に、表示器1は本固定ネジ15によってパネル2に固定されている。本固定ネジ15を緩め、仮固定金具14をユーザが押すことで、固定具10は第2位置から第3位置へと変化する。すなわち、仮固定金具14が表示器1の本体に収納される。そのため、第3位置においては、仮固定金具14がパネル2の開口部21に収まった位置になるため、表示器1をパネル2から取り外す(抜去する)ことができるようになる。この時、第2位置での固定具10の飛び出し長さは、第3位置での固定具10の飛び出し長さより長い。
【0067】
§3 作用・効果
表示器1をパネル2の開口部21に挿入するだけで、固定具10は第1位置から第2位置に自動で変化し、表示器1はパネル2に仮固定される。そのため、表示器1を保持する必要がないため、作業者は一人作業で組み立てが可能になる。
【0068】
また、表示器1をパネル2に仮固定できるため、パネル2に対して表示器1が傾斜せずに、本固定ネジ15を正確に締め付けることが容易になる。そのため、パッキン1dを均一に正常な力で潰すことができ、防水性能を担保することも容易になる。
【0069】
(変形例1)
パネル2から表示器1を取り外す際に、仮固定金具14をノックすることで、第2位置から第3位置に変化するのではなく、第2位置から第1位置に変化し、さらにもう一度、仮固定金具14をノックすることで、第1位置から第3位置に変化してもよい。この時、固定具10が第1位置から第3位置へと変化するノックは、パネル2に対し0°でも90°でもない傾斜角をもつ第2接触部によって行われてもよい。
【0070】
この場合、抜去するために、一度ノックした状態の第1位置では、仮固定金具14の一部が表示器1の本体より突出しているため、作業者による保持がない場合でも、表示器1が自重によってパネル2の開口部21から抜け落ちることを防止することができる。また、開口部21の内側に第2接触部143の先端が位置してもよく、この場合、開口部21によって表示器1の抜去時に、第2接触部143が、パネル2の開口部21に入り込むことによって、第2接触部143される。
【0071】
また、第1位置では、第2接触部143がパネル2の開口部21よりも突出しているため、表示器1に作業者による外力が加わっていない場合でも、パネル2から表示器1が抜け落ちることを防ぐことができる。そのため、実施形態1の場合と異なり、表示器1を保持する作業者が不要になり、パネル2から表示器1の取り外し作業においても一人作業が可能になる。
【0072】
(変形例2)
第1位置および第2位置を作り出す機構は、いわゆるノック式ボールペンのノック機構に限定されない。
【0073】
例えば、中に本固定ネジ15を設けた2つの状態をもつロッカースイッチのような傾斜面をもつ部材が表示器1に備えられていてもよい。当該ロッカースイッチの傾斜面は、パネル2に対して傾斜(第1位置)しており、パネル2に表示器1を挿入すると、傾斜面をパネル2が乗り上げることで当該ロッカースイッチの状態が切り替わる。当該ロッカースイッチの状態が切り替わることで、当該ロッカースイッチによって、パネル2に対し表示器1が仮固定され、かつ当該ロッカースイッチに含まれた本固定ネジ15によって、表示器1がパネル2に固定できる状態(第2位置)になってもよい。
【0074】
この場合でも、表示器1を保持する作業者が不要になり、一人で表示器1のパネル2への組立作業が可能になる。
【0075】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 表示器(電気機器)
1c フランジ
2 パネル
11 ホルダー(移動機構)
12 第1ロッド(移動機構)
13 第2ロッド(移動機構)
14 仮固定金具(仮固定具、固定具)
15 本固定ネジ(本固定具、固定具)
16 第1バネ(移動機構)
21 開口部
142 第1接触部(第1傾斜部)
143 第2接触部(第2傾斜部)