(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ロータおよびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20241106BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K15/02 K
(21)【出願番号】P 2021008285
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】旭 恭平
(72)【発明者】
【氏名】都築 孝規
(72)【発明者】
【氏名】▲榊▼原 康俊
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-115659(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129205(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0153298(US,A1)
【文献】特開2013-183545(JP,A)
【文献】特開2016-082831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板が複数枚積層されることにより形成され、永久磁石が挿入される磁石挿入部および前記永久磁石を固定する樹脂が充填される磁石固定樹脂充填部を有する磁石収容孔と、前記磁石収容孔とは別個に設けられた磁石非収容孔とを含むロータコアと、
軸方向
の両端部において、
前記ロータコアの径方向の内側には設けられずに、外側に設けられ、前記磁石収容孔の前記磁石固定樹脂充填部に充填された樹脂の両端部の各々と前記磁石非収容孔に充填された樹脂の両端部の各々とを連結する樹脂連結部とを備える、ロータ。
【請求項2】
前記磁石固定樹脂充填部は、前記磁石収容孔の周方向の両側に一対設けられており、
前記軸方向に直交する方向において、前記磁石非収容孔の面積は、一対の前記磁石固定樹脂充填部のうちの一方側の部分の面積以上である、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記径方向において、前記磁石非収容孔は、前記磁石収容孔よりも内側に配置されている、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
前記磁石収容孔および前記磁石非収容孔は、周方向に沿って所定の角度間隔で複数ずつ設けられており、
前記軸方向の一方側から見て、前記樹脂連結部は、複数の前記磁石収容孔および複数の前記磁石非収容孔を覆うような円環形状を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項5】
前記磁石非収容孔と前記磁石収容孔との間の
前記径方向における間隔は、前記磁石非収容孔の周方向の中心から周方向の一方側および他方側に向かって大きくなる、請求項1~4のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項6】
前記磁石固定樹脂充填部に充填された樹脂には、樹脂が充填されていない部分である空隙が形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項7】
電磁鋼板を複数枚積層することによりロータコアを形成する形成工程と、
永久磁石が挿入される磁石挿入部および前記永久磁石を固定する樹脂が充填される磁石固定樹脂充填部を有する前記ロータコアの磁石収容孔内に前記永久磁石を配置する配置工程と、
前記磁石固定樹脂充填部に樹脂を充填しつつ、前記磁石収容孔とは別個に設けられた磁石非収容孔に樹脂を充填するとともに、軸方向
の両端部において、
前記ロータコアの径方向の内側には設けられずに、外側に設けられ、前記磁石固定樹脂充填部に充填された樹脂の両端部の各々と前記磁石非収容孔に充填された樹脂の両端部の各々とを連結する樹脂充填工程とを備える、ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータおよびロータの製造方法に関し、特に、電磁鋼板が複数枚積層されるロータおよびロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁鋼板が複数枚積層されるロータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、電磁鋼板が複数枚積層されるロータが開示されている。このロータは、磁石を収容した貫通孔が形成されたロータコアを備えている。貫通孔は、磁石が収容された収容領域と、磁石が収容されていない第1の周方向端部領域および第2の周方向端部領域とを含んでいる。第1の周方向端部領域および第2の周方向端部領域は、それぞれ、収容領域の周方向の両端部に隣接している。
【0004】
上記特許文献1の第1の周方向端部領域および第2の周方向端部領域には、貫通孔に収容された磁石を固定するための樹脂が充填されている。ここで、ロータでは、磁石のロータコアの軸方向の一方側の軸方向外端部に樹脂を充填させて充填樹脂が形成された後に、第1の周方向端部領域および第2の周方向端部領域に樹脂が流れることにより、第1の周方向端部領域および第2の周方向端部領域に樹脂が充填される。そして、ロータでは、第1の周方向端部領域および第2の周方向端部領域に樹脂が充填された後に、磁石のロータコアの軸方向の他方側の軸方向外端部に樹脂を充填させて充填樹脂が形成される。これにより、貫通孔に収容された磁石が、磁石のロータコアの軸方向の両側の軸方向外端部に形成された充填樹脂によりロータコアの軸方向において固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のロータでは、上記特許文献1には明記されていないが、第1の周方向端部領域および第2の周方向端部領域が小さな領域であるので、第1の周方向端部領域および第2の周方向端部領域に樹脂を流す際に比較的大きな圧力を樹脂に加える必要があると考えられる。このため、上記特許文献1のロータでは、第1の周方向端部領域および第2の周方向端部領域に樹脂を流すことにより充填樹脂を樹脂成形する際、第1の周方向端部領域(磁石固定樹脂充填部)付近のロータコアの部分および第2の周方向端部領域(磁石固定樹脂充填部)付近のロータコアの部分に比較的大きな圧力がかかることに起因してロータコアが変形する場合があるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、樹脂連結部を樹脂成形する際、磁石固定樹脂充填部付近のロータコアの部分にかかる圧力を抑制することによりロータコアが変形することを抑制することが可能なロータおよびロータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるロータは、電磁鋼板が複数枚積層されることにより形成され、永久磁石が挿入される磁石挿入部および永久磁石を固定する樹脂が充填される磁石固定樹脂充填部を有する磁石収容孔と、磁石収容孔とは別個に設けられた磁石非収容孔とを含むロータコアと、軸方向の両端部において、ロータコアの径方向の内側には設けられずに、外側に設けられ、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部に充填された樹脂の両端部の各々と磁石非収容孔に充填された樹脂の両端部の各々とを連結する樹脂連結部とを備える。
【0009】
この発明の第1の局面によるロータでは、上記のように、電磁鋼板が複数枚積層されることにより形成され、永久磁石が挿入される磁石挿入部および永久磁石を固定する樹脂が充填される磁石固定樹脂充填部を有する磁石収容孔と、磁石収容孔とは別個に設けられた磁石非収容孔とを含むロータコアを設ける。そして、ロータには、軸方向において、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部に充填された樹脂の両端部の各々と磁石非収容孔に充填された樹脂の両端部の各々とを連結する樹脂連結部が設けられる。これにより、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部が比較的小さな領域である場合でも、磁石非収容孔に樹脂が流れることにより、磁石固定樹脂充填部に流れる樹脂の圧力を低減することができるので、磁石固定樹脂充填部付近のロータコアの部分にかかる圧力を抑制することができる。その結果、樹脂連結部を樹脂成形する際、磁石収容孔における磁石固定樹脂充填部付近のロータコアの部分にかかる圧力を抑制することによりロータコアが変形することを抑制することができる。また、樹脂を充填する際に樹脂に加えられる圧力を大きくした場合においても、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部に流れる樹脂の圧力を低減させることによりロータコアが変形しにくいので、樹脂連結部を樹脂成形する際に樹脂に加えられる圧力の制限を緩和することができる。その結果、樹脂連結部を樹脂成形する際の成形条件の制限を緩和することができる。
【0010】
上記第1の局面によるロータにおいて、好ましくは、磁石固定樹脂充填部は、磁石収容孔の周方向の両側に一対設けられており、軸方向に直交する方向において、磁石非収容孔の面積は、一対の磁石固定樹脂充填部のうちの一方側の部分の面積以上である。
【0011】
このように構成すれば、磁石非収容孔の面積が磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部の周方向の一方側の部分の面積以上であることにより、磁石非収容孔の樹脂に対する流入抵抗を磁石収容孔における磁石固定樹脂充填部の周方向の一方側の部分の樹脂に対する流入抵抗よりも小さくすることができる。その結果、磁石非収容孔に樹脂が流入しやすくなるので、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部付近のロータコアの部分にかかる圧力を抑制しつつ、容易に樹脂連結部を形成することができる。
【0012】
上記第1の局面によるロータにおいて、好ましくは、径方向において、磁石非収容孔は、磁石収容孔よりも内側に配置されている。
【0013】
このように構成すれば、磁石非収容孔を磁石収容孔よりも径方向において外側に配置した場合と比較して、永久磁石の磁束がロータコアの径方向の外側(ステータ側)に出やすくすることができるので、モータの出力の低下を抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面によるロータにおいて、好ましくは、磁石収容孔および磁石非収容孔は、周方向に沿って所定の角度間隔で複数ずつ設けられており、軸方向の一方側から見て、樹脂連結部は、複数の磁石収容孔および複数の磁石非収容孔を覆うような円環形状を有している。
【0015】
このように構成すれば、複数の磁石収容孔の各々に収容された複数の永久磁石を円環形状の樹脂連結部により、ロータコアの軸方向において固定することができるので、永久磁石のロータコアの軸方向における永久磁石の保持力(固定強度)を確保することができる。
【0016】
上記第1の局面によるロータにおいて、好ましくは、磁石非収容孔と磁石収容孔との間の径方向における間隔は、磁石非収容孔の周方向の中心から周方向の一方側および他方側に向かって大きくなる。
【0017】
このように構成すれば、上記間隔が磁石非収容孔の周方向の中心から周方向の一方側および他方側に向かって大きくなることにより、磁石収容孔に収容された永久磁石のロータコアの径方向の内側の部分から出る磁束の流れを阻害しないようにすることができる。その結果、磁石収容孔に収容された永久磁石のロータコアの径方向の外側(ステータ側)の部分から出る磁束の強さが低下しないようにすることができるので、モータの性能の低下を抑制することができる。
【0018】
上記第1の局面によるロータにおいて、好ましくは、磁石固定樹脂充填部に充填された樹脂には、樹脂が充填されていない部分である空隙が形成されている。
【0019】
このように構成すれば、磁石固定樹脂充填部において樹脂が充填されていない部分である空隙が形成されることにより、磁石固定樹脂充填部に樹脂が満充填されないようにすることができるので、樹脂連結部を樹脂成形する際に樹脂が金型から確実に漏れないようすることができる。したがって、金型から確実に漏れないように金型内に樹脂を充填させるために、上記金型内に注入する樹脂の圧力を所定圧力に調整する保圧工程を行う必要がないので、樹脂連結部を樹脂成形する際に樹脂に加えられる圧力の制限を緩和することができる。その結果、樹脂連結部を樹脂成形する際の成形条件の制限を緩和することができる。
【0020】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面におけるロータの製造方法は、電磁鋼板を複数枚積層することによりロータコアを形成する形成工程と、永久磁石が挿入される磁石挿入部および永久磁石を固定する樹脂が充填される磁石固定樹脂充填部を有するロータコアの磁石収容孔内に永久磁石を配置する配置工程と、磁石固定樹脂充填部に樹脂を充填しつつ、磁石収容孔とは別個に設けられた磁石非収容孔に樹脂を充填するとともに、軸方向の両端部において、ロータコアの径方向の内側には設けられずに、外側に設けられ、磁石固定樹脂充填部に充填された樹脂の両端部の各々と磁石非収容孔に充填された樹脂の両端部の各々とを連結する樹脂充填工程とを備える。
【0021】
この発明の第2の局面によるロータの製造方法では、上記のように、磁石固定樹脂充填部に樹脂を充填しつつ、磁石収容孔とは別個に設けられた磁石非収容孔に樹脂を充填するとともに、軸方向において、磁石固定樹脂充填部に充填された樹脂の両端部の各々と磁石非収容孔に充填された樹脂の両端部の各々とを連結する樹脂充填工程を設ける。これにより、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部が比較的小さな領域である場合でも、磁石非収容孔に樹脂が流れることにより、磁石固定樹脂充填部に流れる樹脂の圧力を低減することができるので、磁石固定樹脂充填部付近のロータコアの部分にかかる圧力を抑制することができる。その結果、樹脂連結部を樹脂成形する際、磁石収容孔における磁石固定樹脂充填部付近のロータコアの部分にかかる圧力を抑制することによりロータコアが変形することを抑制することが可能なロータの製造方法を得ることができる。
【0022】
なお、上記第1の局面によるロータおよび第2の局面によるロータの製造方法において、以下のような構成も考えられる。
【0023】
(付記項1)
すなわち、第2の局面によるロータの製造方法において、樹脂充填工程では、磁石非収容孔の樹脂の充填が完了した後に、磁石固定樹脂充填部に空隙が形成された状態で磁石固定樹脂充填部の樹脂の充填が完了する。
【0024】
このように構成すれば、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部に空隙が形成された場合でも、磁石非収容孔には樹脂が充填されていることにより、磁石非収容孔に充填された樹脂と樹脂連結部とが確実に連結されているので、樹脂連結部により永久磁石をロータコアの軸方向において固定するための強度(固定強度)を確保することができる。
【0025】
(付記項2)
上記第2の局面によるロータの製造方法において、樹脂充填工程では、圧力制御ではなく速度制御により、磁石固定樹脂充填部に樹脂を充填しつつ、磁石収容孔とは別個に設けられた磁石非収容孔に樹脂を充填する。
【0026】
このように構成すれば、圧力制御による上記保圧工程を行うことなく速度制御により樹脂を充填することができるので、樹脂連結部を樹脂成形する際に樹脂に加えられる圧力の制限を緩和することができる。その結果、樹脂連結部を樹脂成形する際の成形条件の制限を緩和することができる。
【0027】
(付記項3)
上記磁石固定樹脂充填部の周方向の一方側の部分の面積以上の面積である磁石非収容孔を備えるロータにおいて、軸方向に直交する方向において、磁石非収容孔の面積は、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部の周方向の一方側の部分の面積の2倍以上である。
【0028】
このように構成すれば、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部と比較して磁石非収容孔に樹脂がより流入しやすくなるので、磁石収容孔における磁石固定樹脂充填部付近のロータコアの部分にかかる圧力をより抑制しつつ、より容易に樹脂連結部を形成することができる。
【0029】
(付記項4)
上記第1の局面によるロータにおいて、好ましくは、磁石収容孔は、周方向に沿って所定の角度間隔で複数設けられており、磁石非収容孔は、周方向における複数の磁石収容孔同士の間の部分に少なくとも一部が設けられるとともに、周方向に沿って所定の角度間隔で隣り合って複数設けられており、軸方向の一方側から見て、樹脂連結部は、複数の磁石収容孔および複数の磁石非収容孔を覆うような円環形状を有している。
【0030】
このように構成すれば、複数の磁石収容孔の各々に収容された複数の永久磁石を円環形状の樹脂連結部により、ロータコアの軸方向において固定することができるので、永久磁石のロータコアの軸方向における永久磁石の保持力(固定強度)を確保することができる。
【0031】
(付記項5)
上記第1の局面によるロータにおいて、ロータコアは、ロータコアの軽量化のため、径方向の中心側に形成された軽量化用孔をさらに含み、磁石非収容孔は、径方向において磁石収容孔と、軽量化用孔との間に配置されている。
【0032】
このように構成すれば、ロータコアの径方向において軽量化用孔よりも内側に磁石非収容孔を配置した場合と比較して、ロータコアの径方向における樹脂連結部の長さを小さくすることができるので、樹脂連結部を樹脂成形するために必要な樹脂の量が増加することを抑制することができる。
【0033】
(付記項6)
上記第1の局面によるロータにおいて、軸方向に沿った断面において、永久磁石の軸方向の一方側端部の位置と、ロータコアの軸方向の一方側端部の位置とは、略一致しているとともに、永久磁石の軸方向の他方側端部の位置と、ロータコアの軸方向の他方側端部の位置とは、略一致している。
【0034】
このように構成すれば、軸方向において永久磁石の一方側端部および他方側端部の両方がロータコア内に配置される場合と比較して、より大きな永久磁石をロータコア内に配置することができるので、モータの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】一実施形態によるロータを示した斜視図である。
【
図2】
図1の101-101線に沿った断面図である。
【
図3】一実施形態のロータのロータコアをZ1方向側から見た平面図である。
【
図5】一実施形態のロータの樹脂連結部、磁石収容孔の磁石固定樹脂充填部および磁石非収容孔に樹脂を充填した状態を示した斜視図である。
【
図7】一実施形態によるロータの製造方法のフローチャートである。
【
図8】一実施形態によるロータを製造する際に使用される上型および金型にロータコアが保持された状態を示した模式である。
【
図9】一実施形態によるロータを製造する際に使用される上型から樹脂を充填した状態を示した模式である。
【
図10】一実施形態の第1変形例によるロータのロータコアをZ1方向側から見た平面図である。
【
図11】一実施形態の第2変形例によるロータのロータコアをZ1方向側から見た平面図である。
【
図12】一実施形態の第3変形例によるロータのロータコアをZ1方向側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図1~
図6を参照して、モータに設けられるロータ100の構成について説明する。モータは、永久磁石1aをロータ100に埋め込んだ埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。
【0038】
以下の説明では、ロータコア10の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、Z方向の一方側をZ1方向側とし、Z方向の他方側をZ2方向側とする。また、C方向の一方側をC1方向側とし、C方向の他方側をC2方向側とする。
【0039】
図1および
図2に示すように、具体的には、ロータ100は、ロータコア10と、樹脂連結部20とを備えている。
【0040】
ロータコア10は、ロータコア10のZ方向に沿った方向に電磁鋼板が複数枚積層されることにより形成されている。ロータコア10は、磁石収容孔1と、軽量化用孔2と、磁石非収容孔3とを含んでいる。
【0041】
図2および
図3に示すように、磁石収容孔1は、永久磁石1aを内部に収容するための貫通孔である。磁石収容孔1は、Z1方向側から見て略矩形形状を有している。磁石収容孔1は、ロータコア10をZ方向に貫通している。Z方向に沿った断面において、永久磁石1aのZ1方向側端部の位置と、ロータコア10のZ1方向側端部の位置とは、略一致している。また、永久磁石1aのZ2方向側端部の位置と、ロータコア10のZ2方向側端部の位置とは、略一致している。
【0042】
図3および
図4に示すように、磁石収容孔1は、磁石挿入部11と、磁石固定樹脂充填部12とを有している。
【0043】
磁石挿入部11は、磁石収容孔1において永久磁石1aが挿入される部分である。すなわち、磁石挿入部11は、磁石収容孔1において所定位置に固定された永久磁石1aを示す部分である。磁石挿入部11は、磁石収容孔1のC方向における中心部分Ca側に設けられている。
【0044】
磁石固定樹脂充填部12は、永久磁石1aを固定する樹脂が充填される部分である。すなわち、磁石固定樹脂充填部12は、磁石収容孔1において永久磁石1aのC方向における位置を固定するための樹脂が充填される部分である。磁石固定樹脂充填部12は、磁石収容孔1のC方向の両側に一対設けられている。ここで、C1方向側の磁石固定樹脂充填部12を第1磁石固定樹脂充填部12aとするとともに、C2方側の磁石固定樹脂充填部12を第2磁石固定樹脂充填部12bとする。
【0045】
第1磁石固定樹脂充填部12aは、磁石収容孔1のC1方向側の端部に配置されている。第1磁石固定樹脂充填部12aは、磁石挿入部11にC方向において隣り合っている。第2磁石固定樹脂充填部12bは、磁石収容孔1のC2方向側の端部に配置されている。第2磁石固定樹脂充填部12bは、磁石挿入部11にC方向において隣り合っている。
【0046】
Z方向に直交する方向において、第1磁石固定樹脂充填部12aの面積Ar1および第2磁石固定樹脂充填部12bの面積Ar2の各々は、磁石挿入部11の面積よりも小さい。
【0047】
このような磁石収容孔1は、C方向に沿って所定の角度θ間隔でロータコア10に複数(10個)設けられている。なお、複数の磁石収容孔1は、2~9個、または、11個以上設けられてもよい。
【0048】
軽量化用孔2は、ロータコア10の軽量化のために形成された貫通孔である。軽量化用孔2は、Z1方向側から見て略矩形形状を有している。軽量化用孔2は、ロータコア10をZ方向に貫通している。軽量化用孔2は、磁石収容孔1とは別個に設けられている。軽量化用孔2は、ロータコア10のR方向の中心Cr側に形成されている。軽量化用孔2は、C方向に沿って所定の角度θ間隔でロータコア10に複数(10個)設けられている。ここで、軽量化用孔2は、複数の磁石収容孔1と同じ所定の角度θ間隔で複数配置されている。なお、複数の軽量化用孔2は、2~9個、または、11個以上設けられてもよい。
【0049】
(磁石非収容孔)
図3および
図4に示すように、磁石非収容孔3は、永久磁石1aが収容されることなく、樹脂を充填するための孔である。磁石非収容孔3は、Z1方向側から見て、磁石非収容孔3のC方向の中心部分CbにおいてR方向の外側に突出した部分を頂点とする略三角形形状を有している。磁石非収容孔3は、ロータコア10をZ方向に貫通している。磁石非収容孔3は、C方向に沿って所定の角度θ間隔で複数(10個)設けられている。ここで、磁石非収容孔3は、複数の磁石収容孔1と同じ所定の角度θ間隔で複数配置されている。なお、複数の磁石非収容孔3は、2~9個、または、11個以上設けられてもよい。
【0050】
複数の磁石非収容孔3の形状は全て同じ形状であるので、以下では複数の磁石非収容孔3のうちの1つについて説明する。
【0051】
磁石非収容孔3は、磁石収容孔1とは別個に設けられている。磁石非収容孔3は、R方向において磁石収容孔1よりも内側に配置されている。磁石非収容孔3は、R方向において軽量化用孔2よりも外側に配置されている。すなわち、磁石非収容孔3は、R方向において、磁石収容孔1と、軽量化用孔2との間に配置されている。
【0052】
Z方向に直交する方向において、磁石非収容孔3の面積Arは、一対の磁石固定樹脂充填部12の一方側の面積Ar1(Ar2)以上である。すなわち、Z方向に直交する方向において、磁石非収容孔3の面積Arは、第1磁石固定樹脂充填部12aの面積Ar1および第2磁石固定樹脂充填部12bの面積Ar2のいずれよりも大きい。詳細には、Z方向に直交する方向において、磁石非収容孔3の面積Arは、磁石固定樹脂充填部12のC方向の一方側の部分の面積Ar1(Ar2)の2倍以上である。また、Z方向に直交する方向において、磁石非収容孔3の面積Arは、第1磁石固定樹脂充填部12aの面積Ar1と、第2磁石固定樹脂充填部12bの面積Ar2とを加算した面積よりも大きい。
【0053】
磁石非収容孔3は、磁石収容孔1に収容された永久磁石1aのR1方向側から出る磁束Maの流れを阻害しない形状を有している。すなわち、上記したように、Z1方向側から見て、磁石非収容孔3のC方向の中心部分CbにおいてR方向のうちの外側に突出した略三角形形状を有している。ここで、磁石非収容孔3のC方向の中心部分Cbと、磁石収容孔1のC方向の中心部分Caとは、R方向において一致している。これにより、磁石非収容孔3と磁石収容孔1との間のR方向における間隔Dは、磁石非収容孔3のC方向の中心部分CbからC方向のC1方向側およびC2方向側に向かって大きくなる。
【0054】
磁石非収容孔3と磁石収容孔1との間のR方向における間隔Dは、磁石非収容孔3のC方向の中心部分Cbと、磁石収容孔1のC方向の中心部分Caとの間の部分において最小である。磁石非収容孔3と磁石収容孔1との間のR方向における間隔Dは、磁石非収容孔3のC1方向の端部と、磁石収容孔1のC1方向の端部との部分において最大である。同様に、磁石非収容孔3と磁石収容孔1との間のR方向における間隔Dは、磁石非収容孔3のC2方向の端部と、磁石収容孔1のC2方向の端部との部分において最大である。
【0055】
磁石非収容孔3のC方向における長さL1は、磁石収容孔1のC方向における長さL2よりも小さい。C方向において、磁石非収容孔3のC1方向の端部は、磁石収容孔1のC1方向側の端部よりも磁石非収容孔3のC方向の中心部分Cb側に位置している。C方向において、磁石非収容孔3のC2方向の端部は、磁石収容孔1のC2方向側の端部よりも磁石非収容孔3のC方向の中心部分Cb側に位置している。
【0056】
(樹脂連結部)
図5に示すように、樹脂連結部20は、Z方向において、磁石収容孔1の磁石固定樹脂充填部12に充填された樹脂の両端部の各々と磁石非収容孔3に充填された樹脂の両端部の各々とを連結するように構成されている。ここで、磁石収容孔1の磁石固定樹脂充填部12に充填された樹脂は、上側樹脂成形部121と、下側樹脂成形部122(
図6参照)とを有している。磁石非収容孔3に充填された樹脂は、柱状部31を有している。
【0057】
詳細には、樹脂連結部20は、Z1方向側に配置された第1樹脂連結部20aと、Z2方向側に配置された第2樹脂連結部20bとを有している。第1樹脂連結部20aは、磁石固定樹脂充填部12に充填された樹脂(
図5の上側樹脂成形部121)のZ1方向側の端部と、磁石非収容孔3に充填された樹脂(
図5の柱状部31)のZ1方向側の端部とを連結している。第2樹脂連結部20bは、磁石固定樹脂充填部12に充填された樹脂(
図6の下側樹脂成形部122)のZ2方向側の端部と、磁石非収容孔3に充填された樹脂(
図5の柱状部31)のZ2方向側の端部とを連結している。
【0058】
第1樹脂連結部20aは、Z1方向側から見て、磁石収容孔1および磁石非収容孔3の両方を覆っている。第1樹脂連結部20aは、Z方向において、ロータコア10のZ1方向側の端部の外側に設けられている。また、第1樹脂連結部20aは、C方向において連続的に繋がっている。すなわち、Z1方向側から見て、第1樹脂連結部20aは、複数の磁石収容孔1および複数の磁石非収容孔3を覆うような円環形状を有している。
【0059】
第2樹脂連結部20bは、Z2方向側から見て、磁石収容孔1および磁石非収容孔3の両方を覆っている。第2樹脂連結部20bは、Z方向において、ロータコア10のZ2方向側の端部の外側に設けられている。また、第2樹脂連結部20bは、C方向において連続的に繋がっている。すなわち、Z2方向側から見て、第2樹脂連結部20bは、複数の磁石収容孔1および複数の磁石非収容孔3を覆うような円環形状を有している。
【0060】
ここで、
図6に示すように、磁石固定樹脂充填部12に充填された樹脂には、樹脂が充填されていない部分である空隙Aが形成されている。空隙Aは、磁石固定樹脂充填部12のZ2方向側の部分に形成されている。空隙Aは、第2樹脂連結部20bのZ1方向側の面よりもZ1方向側に形成されている。詳細には、空隙Aは、上側樹脂成形部121と、下側樹脂成形部122との間に形成されている。
【0061】
空隙Aは、磁石固定樹脂充填部12に樹脂が満充填されないように樹脂の注入量を設定することにより形成される。ここで、空隙AのZ方向における寸法は、樹脂の注入量により設定される。また、空隙AのZ方向の位置は、磁石非収容孔3のZ方向に直交する方向の面積Arに応じて設定される。すなわち、空隙Aは、磁石非収容孔3のZ方向に直交する方向の面積Arを大きくすることによりZ1方向側に配置される。空隙Aは、磁石非収容孔3のZ方向に直交する方向の面積Arを小さくすることによりZ2方向側に配置される。
【0062】
(ロータの製造方法)
以下に、
図7~
図10を参照して、ロータ100の製造方法について説明する。ロータ100の製造方法は、磁石非収容孔3に樹脂を充填させた樹脂により、第1樹脂連結部20aと第2樹脂連結部20bとをZ方向において連結させたロータコア10を製造する製造方法である。
【0063】
図7に示すように、ステップS1において、電磁鋼板を複数枚積層することによりロータコア10を形成する形成工程が行われる。これにより、磁石収容孔1、軽量化用孔2および磁石非収容孔3を含むロータコア10が形成される。ステップS2において、永久磁石1aがロータコア10内に配置される配置工程が行われる。詳細には、永久磁石1aが挿入される磁石挿入部11および永久磁石1aを固定する樹脂が充填される磁石固定樹脂充填部12を有するロータコア10の磁石収容孔1内に永久磁石1aを配置する配置工程が行われる。ステップS3において、上型4および下型5によりロータコア10を型締めする型締め工程が行われる。ここで、ロータコア10のZ方向に直交する方向の外周面を覆うことなく、上型4および下型5によりロータコア10の型締めが行われる(
図8参照)。
【0064】
ステップS4において、磁石非収容孔3および磁石固定樹脂充填部12に樹脂を充填する樹脂充填工程が行われる(
図9参照)。詳細には、樹脂充填工程では、上型4の樹脂注入口から樹脂が注入されることにより、上型4のZ2方向側の面と、ロータコア10のZ1方向側の面との間の空間(第1樹脂連結部20aを形成するための空間)に樹脂が充填される。そして、樹脂充填工程では、磁石固定樹脂充填部12に樹脂が充填されつつ、磁石収容孔1とは別個に設けられた磁石非収容孔3に樹脂が充填される。すなわち、樹脂充填工程では、磁石非収容孔3のZ1方向側からZ2方向側に向けて樹脂が充填されつつ、磁石収容孔1の磁石固定樹脂充填部12のZ1方向側からZ2方向側に向けて樹脂が充填される。この際、樹脂は磁石非収容孔3に主に充填されている。
【0065】
樹脂充填工程では、磁石非収容孔3のZ2方向側から流出する樹脂により、下型5のZ1方向側の面と、ロータコア10のZ2方向側の面との間の空間(第2樹脂連結部20bを形成するための空間)に樹脂が充填される。これにより、Z方向において、磁石固定樹脂充填部12に充填された樹脂の両端部の各々と磁石非収容孔3に充填された樹脂の両端部の各々とが連結される。
【0066】
樹脂充填工程では、下型5のZ1方向側の面と、ロータコア10のZ2方向側の面との間の空間に樹脂が充填された後、磁石固定樹脂充填部12のZ2方向側からZ1方向側に向けて樹脂が充填される。ここで、磁石固定樹脂充填部12に満充填されないような注入量に樹脂の注入量が設定されているので、磁石固定樹脂充填部12に空隙Aが形成される。
【0067】
このように、樹脂充填工程では、磁石非収容孔3の樹脂の充填が完了した後に、磁石固定樹脂充填部12に空隙Aが形成された状態で磁石固定樹脂充填部12の樹脂の充填が完了する。また、樹脂充填工程では、圧力制御ではなく速度制御により、磁石固定樹脂充填部12に樹脂が充填されつつ、磁石収容孔1とは別個に設けられた磁石非収容孔3に樹脂が充填される。そして、ステップS4の後、ロータ100の製造方法が終了する。
【0068】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0069】
本実施形態では、上記のように、ロータ100は、電磁鋼板が複数枚積層されることにより形成され、永久磁石1aが挿入される磁石挿入部11および永久磁石1aを固定する樹脂が充填される磁石固定樹脂充填部12を有する磁石収容孔1と、磁石収容孔1とは別個に設けられた磁石非収容孔3とを含むロータコア10を備えている。そして、ロータ100は、Z方向において、磁石収容孔1の磁石固定樹脂充填部12に充填された樹脂の両端部の各々と磁石非収容孔3に充填された樹脂の両端部の各々とを連結する樹脂連結部20を備えている。これにより、磁石収容孔1の磁石固定樹脂充填部12が比較的小さな領域である場合でも、磁石非収容孔3に樹脂が流れることにより、磁石固定樹脂充填部12に流れる樹脂の圧力を低減することができるので、磁石固定樹脂充填部12付近のロータコア10の部分にかかる圧力を抑制することができる。この結果、樹脂連結部20を樹脂成形する際、磁石固定樹脂充填部12付近のロータコア10の部分にかかる圧力を抑制することによりロータコア10が変形することを抑制することができる。また、樹脂を充填する際に樹脂に加えられる圧力を大きくした場合においても、磁石収容孔1の磁石固定樹脂充填部12に流れる樹脂の圧力を低減させることによりロータコア10が変形しにくいので、樹脂連結部20を樹脂成形する際に樹脂に加えられる圧力の制限を緩和することができる。この結果、樹脂連結部20を樹脂成形する際の成形条件の制限を緩和することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、磁石固定樹脂充填部12は、磁石収容孔1のC方向の両側に一対設けられており、Z方向に直交する方向において、磁石非収容孔3の面積Arは、一対の磁石固定樹脂充填部12のうちの一方側の面積Ar1(Ar2)以上である。これにより、磁石非収容孔3の面積Arが磁石収容孔1の磁石固定樹脂充填部12のC方向の一方側の部分の面積Ar1(Ar2)以上であることにより、磁石非収容孔3の樹脂に対する流入抵抗を磁石収容孔1における磁石固定樹脂充填部12のC方向の一方側の部分の樹脂に対する流入抵抗よりも小さくすることができる。この結果、磁石非収容孔3に樹脂が流入しやすくなるので、磁石収容孔1の磁石固定樹脂充填部12付近のロータコア10の部分にかかる圧力を抑制しつつ、容易に樹脂連結部20を形成することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、R方向において、磁石非収容孔3は、磁石収容孔1よりも内側に配置されている。これにより、磁石非収容孔3を磁石収容孔1よりもR方向の外側に配置した場合と比較して、永久磁石1aの磁束がR方向の外側(ステータ側)に出やすくすることができるので、モータの出力の低下を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、磁石収容孔1および磁石非収容孔3は、C方向に沿って所定の角度θ間隔で複数ずつ設けられている。Z1方向側から見て、樹脂連結部20は、複数の磁石収容孔1および複数の磁石非収容孔3を覆うような円環形状を有している。これにより、複数の磁石収容孔1の各々に収容された複数の永久磁石1aを円環形状の樹脂連結部20により、Z方向において固定することができるので、永久磁石1aのロータコア10のZ方向における永久磁石1aの保持力(固定強度)を確保することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、磁石非収容孔3と磁石収容孔1との間のR方向における間隔Dは、磁石非収容孔3のC方向の中心部分CbからC1方向側およびC2方向側に向かって大きくなる。これにより、上記間隔Dが磁石非収容孔3のC方向の中心部分CbからC1方向側およびC2方向側に向かって大きくなることにより、磁石収容孔1に収容された永久磁石1aのロータコア10のR方向の内側の部分から出る磁束Maの流れを阻害しないようにすることができる。この結果、磁石収容孔1に収容された永久磁石1aのR方向の外側(ステータ側)の部分から出る磁束の強さが低下しないようにすることができるので、モータの性能の低下を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、磁石固定樹脂充填部12に充填された樹脂には、樹脂が充填されていない部分である空隙Aが形成されている。これにより、磁石固定樹脂充填部12において樹脂が充填されていない部分である空隙Aが形成されることにより、磁石固定樹脂充填部12に樹脂が満充填されないようにすることができるので、樹脂連結部20を樹脂成形する際に樹脂が金型から確実に漏れないようすることができる。したがって、金型から確実に漏れないように金型内に樹脂を充填させるために、上記金型内に注入する樹脂の圧力を所定圧力に調整する保圧工程を行う必要がないので、樹脂連結部20を樹脂成形する際に樹脂に加えられる圧力の制限を緩和することができる。この結果、樹脂連結部20を樹脂成形する際の成形条件の制限を緩和することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、ロータ100の製造方法は、磁石固定樹脂充填部12に樹脂を充填しつつ、磁石収容孔1とは別個に設けられた磁石非収容孔3に樹脂を充填するとともに、軸方向において、磁石固定樹脂充填部12に充填された樹脂の両端部の各々と磁石非収容孔3に充填された樹脂の両端部の各々とを連結する樹脂充填工程を備えている。これにより、磁石収容孔1の磁石固定樹脂充填部12が比較的小さな領域である場合でも、磁石非収容孔3に樹脂が流れることにより、磁石固定樹脂充填部12に流れる樹脂の圧力を低減することができるので、磁石固定樹脂充填部12付近のロータコア10の部分にかかる圧力を抑制することができる。この結果、樹脂連結部20を樹脂成形する際、磁石固定樹脂充填部12付近のロータコア10の部分にかかる圧力を抑制することによりロータコア10が変形することを抑制することが可能なロータ100の製造方法を得ることができる。
【0076】
[変形例]
今回開示された上記実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0077】
たとえば、上記実施形態では、磁石非収容孔3は、R方向において磁石収容孔1よりも内側に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁石非収容孔3は、
図10に示す第1変形例のように、磁石非収容孔203は、周方向における複数の磁石収容孔1同士の間の部分に少なくとも一部が設けられるとともに、周方向に沿って所定の角度間隔で隣り合って複数設けられていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、磁石非収容孔3は、Z1方向側(軸方向の一方側)から見て、磁石非収容孔3のC方向(周方向)の中心部分CbにおいてR方向の外側(径方向の外側)に突出した略三角形形状を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図11に示す第2変形例のように、磁石非収容孔303は、軸方向の一方側から見て、円形状を有していてもよい。また、
図12に示す第3変形例のように、磁石非収容孔403は、軸方向の一方側から見て円形状の複数の孔部403aを有していてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、磁石固定樹脂充填部12は、磁石収容孔1のC方向(周方向)の両側に一対設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁石固定樹脂充填部は、磁石収容孔の周方向の片側にのみ設けられてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、磁石非収容孔3と磁石収容孔1との間のR方向(径方向)における間隔Dは、磁石非収容孔3のC方向(周方向)の中心部分CbからC方向(周方向)の一方側および他方側に向かって大きくなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁石非収容孔と磁石収容孔との間の径方向における間隔は、一定であってもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、空隙Aは、磁石固定樹脂充填部12のZ2方向側の部分に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、空隙は、永久磁石の周方向の移動を規制可能な分だけ磁石固定樹脂充填部に樹脂が充填されていれば、それ以外の部分は空隙でもよい。ここで、空隙の磁石固定樹脂充填部における軸方向の位置は、磁石非収容孔の軸方向に直交する面積を調整することにより調整可能である。
【0082】
また、上記実施形態では、磁石非収容孔3のC方向(周方向)の中心部分Cbと、磁石収容孔1のC方向(周方向)の中心部分Caとは、R方向(径方向)において一致している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁石非収容孔の周方向の中心部分と、磁石収容孔の周方向の中心部分とは、径方向において一致していなくてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 磁石収容孔
3 磁石非収容孔
1a 永久磁石
10 ロータコア
11 磁石挿入部
12 磁石固定樹脂充填部
20 樹脂連結部
100 ロータ
A 空隙
Ar (磁石非収容孔の)面積
Ar1、Ar2 (磁石固定樹脂充填部の周方向の一方側の部分の)面積
M 間隔
θ 所定の角度