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特許7581915振動デバイスおよび振動デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】振動デバイスおよび振動デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20241106BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241106BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H01L23/12 N
H01L23/14 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021010083
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114007
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松澤 勇介
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-28095(JP,A)
【文献】特開2007-281289(JP,A)
【文献】特開2017-139717(JP,A)
【文献】特開2009-259876(JP,A)
【文献】特表2014-519201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
H01L 23/12-23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに配置されている振動素子と、を有し、
前記ベースは、互いに表裏関係にある第1面および第2面を有する半導体基板と、
前記第2面側に配置され、接続パッドを備える配線層と、前記第2面と前記配線層との
間に配置されている絶縁層と、を含む集積回路と、
前記半導体基板および前記絶縁層を貫通し、前記接続パッドに接続されている貫通電極
と、
前記第2面と前記絶縁層との間に配置され、SiNで構成されたエッチングストップ層
と、
前記第2面と前記配線層との間に前記絶縁層を貫通して配置され、前記半導体基板の平
面視において前記貫通電極を囲んでいる環状の金属層と、を有することを特徴とする振動
デバイス。
【請求項2】
ベースと、
前記ベースに配置されている振動素子と、を有し、
前記ベースは、互いに表裏関係にある第1面および第2面を有する半導体基板と、
前記第2面側に配置され、接続パッドを備える配線層と、前記第2面と前記配線層との
間に配置されている絶縁層と、を含む集積回路と、
前記半導体基板および前記絶縁層を貫通し、前記接続パッドに接続されている貫通電極
と、
前記第2面と前記配線層との間に前記絶縁層を貫通して配置され、前記半導体基板の平
面視において前記貫通電極を囲んでいる環状の金属層と、を有し、
前記金属層は、前記貫通電極を囲んでいる第1金属層と、前記第1金属層を囲んでいる
第2金属層と、を有することを特徴とする振動デバイス。
【請求項3】
前記半導体基板の平面視において、前記金属層は、前記接続パッドに内包されている請
求項1または2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記集積回路は、前記半導体基板の厚さ方向に積層されている複数の前記配線層を有し

前記貫通電極は、複数の前記配線層のうち最も前記半導体基板側に位置する前記配線層
に含まれる前記接続パッドに接続されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の振
動デバイス。
【請求項5】
前記配線層と前記貫通電極とは、同じ材料で構成されている請求項1ないしのいずれ
か1項に記載の振動デバイス。
【請求項6】
前記振動素子は、前記半導体基板の前記第1面側に配置され、
前記ベースとの間に前記振動素子を収容するリッドを有する請求項1ないしのいずれ
か1項に記載の振動デバイス。
【請求項7】
前記振動素子は、前記半導体基板の前記第2面側に配置され、
前記ベースとの間に前記振動素子および前記集積回路を収容するリッドを有する請求項
1ないしのいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項8】
互いに表裏関係にある第1面および第2面を有する半導体基板と、前記第2面側に配置
され、接続パッドを備える配線層と、前記第2面と前記配線層との間に配置されている絶
縁層と、を含む集積回路と、前記第2面と前記配線層との間に前記絶縁層を貫通して配置
されている環状の金属層と、を有するベースを準備するベース準備工程と、
前記半導体基板および前記絶縁層を貫通し、前記金属層の内側を通って前記接続パッド
に接続される貫通電極を形成する貫通電極形成工程と、
前記貫通電極形成工程の後、振動素子を前記ベースに実装する振動素子配置工程と、
含み、
前記貫通電極形成工程は、
ドライエッチングによって前記半導体基板を貫通した後、ウェットエッチングによって
前記絶縁層を貫通することによって前記第1面から前記金属層の内側を通って前記接続パ
ッドに臨む貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔内に導電性材料を配置し前記貫通電極を形成する導電性材料配置工程と、を
含むことを特徴とする振動デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記ベースは、前記第2面と前記絶縁層との間に配置され、SiNで構成されたエッチ
ングストップ層を有する請求項に記載の振動デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスおよび振動デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている半導体基板は、シリコン基板と、シリコン基板上に形成された絶縁層と、絶縁層上に形成された導電パッドと、シリコン基板および絶縁層を貫通し、導電パッドに接続された貫通電極と、を有する。また、貫通電極の形成方法は、ドライエッチングによってシリコン基板に貫通孔を形成する工程と、ウェットエッチングによって絶縁層に貫通孔を形成する工程と、貫通孔に金属材料を充填する工程と、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-519201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1の貫通電極の形成方法では、ウェットエッチングによって絶縁層に貫通孔を形成している。しかしながら、ウェットエッチングは、等方性のエッチングである。そのため、絶縁層にサイドエッチングが生じ、サイドエッチングにより意図せずに発生した空隙に金属材料が侵入することにより、配線のパターン不良(以下「サイドエッチングに起因した配線のパターン不良」とも言う。)が生じるおそれがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の振動デバイスは、ベースと、
前記ベースに配置されている振動素子と、を有し、
前記ベースは、互いに表裏関係にある第1面および第2面を有する半導体基板と、
前記第2面側に配置され、接続パッドを備える配線層と、前記第2面と前記配線層との間に配置されている絶縁層と、を含む集積回路と、
前記半導体基板および前記絶縁層を貫通し、前記接続パッドに接続されている貫通電極と、
前記第2面と前記配線層との間に前記絶縁層を貫通して配置され、前記半導体基板の平面視において前記貫通電極を囲んでいる環状の金属層と、を有する。
【0006】
本発明の振動デバイスの製造方法は、互いに表裏関係にある第1面および第2面を有する半導体基板と、前記第2面側に配置され、接続パッドを備える配線層と、前記第2面と前記配線層との間に配置されている絶縁層と、を含む集積回路と、前記第2面と前記配線層との間に前記絶縁層を貫通して配置されている環状の金属層と、を有するベースを準備するベース準備工程と、
前記半導体基板および前記絶縁層を貫通し、前記金属層の内側を通って前記接続パッドに接続される貫通電極を形成する貫通電極形成工程と、を含み、
前記貫通電極形成工程は、
ドライエッチングによって前記半導体基板を貫通した後、ウェットエッチングによって前記絶縁層を貫通することによって前記第1面から前記金属層の内側を通って前記接続パッドに臨む貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔内に導電性材料を配置し前記貫通電極を形成する導電性材料配置工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る振動デバイスを示す縦断面図である。
図2】ベースの上面を示す平面図である。
図3】貫通電極を囲む金属層を示す縦断面図である。
図4】貫通電極を囲む金属層を示す横断面図である。
図5】振動素子を示す平面図である。
図6】振動デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
図7】振動デバイスの製造方法を説明するための縦断面図である。
図8】振動デバイスの製造方法を説明するための縦断面図である。
図9】振動デバイスの製造方法を説明するための縦断面図である。
図10】振動デバイスの製造方法を説明するための縦断面図である。
図11】振動デバイスの製造方法を説明するための縦断面図である。
図12】振動デバイスの製造方法を説明するための縦断面図である。
図13】振動デバイスの製造方法を説明するための縦断面図である。
図14】振動デバイスの製造方法を説明するための縦断面図である。
図15】第2実施形態に係る振動デバイスを示す縦断面図である。
図16】第3実施形態に係る振動デバイスが有する金属層を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、振動デバイスの好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下では、説明の便宜上、図1図3図7ないし図15中の紙面上側を「上」とも言い、紙面下側を「下」とも言う。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る振動デバイスを示す縦断面図である。図2は、ベースの上面を示す平面図である。図3は、貫通電極を囲む金属層を示す縦断面図である。図4は、貫通電極を囲む金属層を示す横断面図である。図5は、振動素子を示す平面図である。図6は、振動デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図7ないし図14は、振動デバイスの製造方法を説明するための縦断面図である。なお、図1は、図2中のA-A線断面図である。
【0010】
図1に示すように、振動デバイス1は、収容部Sを有するパッケージ10と、収容部S内に収容された振動素子4と、を有する。また、パッケージ10は、振動素子4が実装されたベース2と、振動素子4を覆ってベース2の上面に接合されたリッド3と、を有する。また、ベース2は、半導体基板5と、半導体基板5に配置された集積回路6と、を有する。
【0011】
半導体基板5は、シリコン基板、特にP型のシリコン基板である。ただし、半導体基板5としては、特に限定されず、N型のシリコン基板であってもよい。また、半導体基板5は、シリコン以外の半導体基板、例えば、Ge、GaP、GaAs、InP等の半導体基板であってもよい。
【0012】
半導体基板5は、板状であり、互いに表裏関係にある第1面5aおよび第2面5bを有する。第1面5aは、上面であり、第2面5bは、下面である。また、半導体基板5の表面にはSiO(酸化シリコン)で構成された絶縁膜50が形成されている。ただし、絶縁膜50としては、特に限定されず、例えば、有機絶縁膜であってもよい。
【0013】
また、半導体基板5の第2面5b側には振動素子4と電気的に接続された集積回路6が形成されている。半導体基板5に集積回路6を形成することにより、半導体基板5を有効活用することができる。特に、第2面5b側に集積回路6を形成することにより、第1面5a側に集積回路6を形成する場合と比べて、リッド3との接合領域がない分、集積回路6の形成スペースを広く確保することができる。
【0014】
集積回路6には、振動素子4と電気的に接続され、振動素子4を発振させてクロック信号等の発振信号を生成する発振回路6Aが含まれている。集積回路6には、発振回路6Aの他にも回路が含まれていてもよい。当該回路としては、例えば、発振回路6Aからの出力信号を処理する処理回路が挙げられ、このような処理回路としては、例えば、PLL回路が挙げられる。
【0015】
第2面5b側には、エッチングストップ層61、絶縁層62、配線層63、絶縁層64、配線層65、絶縁層66、パッシベーション膜67および端子層68が順に積層してなる積層体60が形成されている。そして、配線層63、65を介して第2面5bに形成された図示しない複数の能動素子が電気的に接続されて集積回路6が構成される。また、端子層68は、複数の実装端子681を有する。集積回路6は、これら実装端子681を介して外部装置と電気的に接続される。なお、積層体60に含まれる配線層の数は、特に限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0016】
また、ベース2には、その上面側から、半導体基板5、エッチングストップ層61および絶縁層62を厚さ方向に貫通して配線層63に臨む一対の貫通孔21、22が形成されている。後述する振動デバイス1の製造方法でも説明するが、貫通孔21、22は、ドライエッチングによって半導体基板5およびエッチングストップ層61を貫通し、続いてウェットエッチングによって絶縁層62を貫通することにより形成されている。このような形成方法によれば、ウェットエッチング時に貫通孔21、22が配線層63に到達するため、配線層63へのプラズマダメージが抑えられる。また、ドライエッチングにより半導体基板5を貫通するため、高いアスペクト比の貫通孔21、22を形成することができる。そのため、振動デバイス1の信頼性を高めつつ、振動デバイス1の小型化を図ることができる。
【0017】
各貫通孔21、22内には導電性材料Eが充填され、貫通電極210、220が形成されている。貫通電極210、220は、それぞれ、配線層63が有する接続パッド631、632と電気的に接続されている。つまり、貫通電極210、220は、集積回路6に含まれる複数の配線層63、65のうち、最も半導体基板5側に位置する配線層63に含まれる接続パッド631、632に接続されている。これにより、配線層65に含まれる接続パッドに接続する場合と比べ、貫通電極210、220を短くすることができる。そのため、貫通電極210、220の形成が容易となる。ただし、これに限定されず、例えば、貫通電極210、220は、配線層65に含まれる接続パッドに接続されていてもよい。
【0018】
また、図2に示すように、半導体基板5の第1面5a側には、金属バンプ81、82を介して振動素子4と電気的に接続された一対の配線28、29が配置されている。配線28は、貫通電極210を介して集積回路6と電気的に接続され、配線29は、貫通電極220を介して集積回路6と電気的に接続されている。
【0019】
また、図1および図3に示すように、ベース2には、エッチングストップ層61と配線層63との間に絶縁層62を貫通して配置された金属層691、692が形成されている。また、図4に示すように、金属層691、692は、半導体基板5の平面視において、貫通電極210、220を囲む環状をなす。配線層63には、貫通電極210、220と接続された接続パッド631、632が設けられており、半導体基板5の平面視において、金属層691は、接続パッド631に内包され、金属層692は、接続パッド632に内包されている。そのため、金属層691、692の上端は、絶縁層62を貫通してエッチングストップ層61の下面と接し、金属層691、692の下端は、絶縁層62を貫通して接続パッド631、632の上面と接している。
【0020】
このような金属層691、692は、後述する振動デバイス1の製造方法でも説明するように、貫通孔21、22を形成する際のエッチングストップ層であるガードリングとして機能する。金属層691、692を設けることにより、ウェットエッチングによって絶縁層62に貫通孔21、22を形成する際に、金属層691、692より外側へのサイドエッチングが規制され、それ以上の意図しないサイドエッチングを抑制することができる。そのため、サイドエッチングに起因した配線のパターン不良を抑制することができ、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0021】
リッド3は、半導体基板5と同様、シリコン基板である。これにより、半導体基板5とリッド3との線膨張係数が等しくなる。そのため、熱膨張に起因する熱応力の発生が抑えられ、優れた振動特性を有する振動デバイス1となる。また、振動デバイス1を半導体プロセスによって形成することができるため、振動デバイス1を精度よく製造することができると共に、その小型化を図ることができる。ただし、リッド3としては、特に限定されず、シリコン以外の半導体基板、例えば、Ge、GaP、GaAs、InP等の半導体基板を用いてもよい。また、例えば、コバール等の金属基板、ガラス基板等の半導体基板以外の基板を用いることもできる。
【0022】
図1に示すように、リッド3は、その下面に開口し、内部に振動素子4を収容する有底の凹部31を有する。そして、リッド3は、その下面において接合部材7を介してベース2の上面に接合されている。これにより、リッド3とベース2との間に振動素子4を収容する空間である収容部Sが形成される。本実施形態では、金属同士の拡散を利用した拡散接合を用いてリッド3とベース2とが接合されている。ただし、リッド3とベース2との接合方法は、特に限定されない。
【0023】
収容部Sは、気密であり、減圧状態、好ましくはより真空に近い状態となっている。これにより、粘性抵抗が減り、振動素子4の発振特性が向上する。ただし、収容部Sの雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素またはAr等の不活性ガスを封入した雰囲気であってもよく、減圧状態でなく大気圧状態または加圧状態となっていてもよい。
【0024】
図5に示すように、振動素子4は、振動基板41と、振動基板41の表面に配置された電極42と、を有する。振動基板41は、厚みすべり振動モードを有し、本実施形態ではATカット水晶基板から形成されている。ATカット水晶基板は、三次の周波数温度特性を有しているため、優れた温度特性を有する振動素子4となる。また、電極42は、振動基板41の上面に配置された励振電極421と、下面に励振電極421と対向して配置された励振電極422と、を有する。また、電極42は、振動基板41の下面に配置された一対の端子423、424と、端子423と励振電極421とを電気的に接続する配線425と、端子424と励振電極422とを電気的に接続する配線426と、を有する。
【0025】
なお、振動素子4の構成は、上述の構成に限定されない。例えば、振動素子4は、励振電極421、422に挟まれた振動領域がその周囲から突出したメサ型となっていてもよいし、逆に、振動領域がその周囲から凹没した逆メサ型となっていてもよい。また、振動基板41の周囲を研削するベベル加工や、上面および下面を凸曲面とするコンベックス加工が施されていてもよい。
【0026】
また、振動素子4としては、厚みすべり振動モードで振動するものに限定されず、例えば、音叉型の振動素子のように複数の振動腕が面内方向に屈曲振動するものであってもよい。つまり、振動基板41は、ATカット水晶基板から形成されたものに限定されず、ATカット水晶基板以外の水晶基板、例えば、Xカット水晶基板、Yカット水晶基板、Zカット水晶基板、BTカット水晶基板、SCカット水晶基板、STカット水晶基板等から形成されていてもよい。
【0027】
また、振動基板41の構成材料としては、水晶に限定されず、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、ランガサイト、ニオブ酸カリウム、リン酸ガリウム等の圧電単結晶体により構成されていてもよいし、これら以外の圧電単結晶体で構成されていてもよい。さらにまた、振動素子4は、圧電駆動型の振動片に限らず、静電気力を用いた静電駆動型の振動片であってもよい。
【0028】
このような振動素子4は、半導体基板5の第1面5a側に位置している。また、振動素子4は、一対の金属バンプ81、82によってベース2に接合されていると共に配線28、29と電気的に接続されている。金属バンプ81、82は、スタッドバンプ、めっきバンプ等である。なお、振動素子4とベース2との接続方法としては、特に限定されず、例えば、振動素子4は、導電性の接着剤によってベース2に接合されていると共に配線28、29と電気的に接続されていてもよい。
【0029】
以上、振動デバイス1の構成について説明した。次に、振動デバイス1の製造方法について説明する。振動デバイス1の製造方法は、図6に示すように、ベース準備工程S1と、貫通電極形成工程S2と、振動素子配置工程S3と、リッド配置工程S4と、を含んでいる。さらに、貫通電極形成工程S2は、貫通孔形成工程S21と、導電性材料配置工程S22と、を含んでいる。
【0030】
<ベース準備工程S1>
まず、図7に示すように、ベース2を準備する。この段階では、ベース2に貫通電極210、220および配線28、29が形成されていない。つまり、ベース2は、半導体基板5と、半導体基板5の第2面5b側に配置された集積回路6と、集積回路6内に形成された環状の金属層691、692と、を有する。エッチングストップ層61は、SiN(窒化シリコン)で構成され、絶縁層62、64は、SiO(酸化シリコン)で構成されている。また、配線層63、65、端子層68および金属層691、692は、それぞれ、アルミニウム(Al)で構成され、パッシベーション膜67は、ポリイミドで構成されている。ただし、これら各層の構成材料としては、その機能を発揮することができる限り、特に限定されない。
【0031】
<貫通電極形成工程S2>
≪貫通孔形成工程S21≫
次に、図8に示すように、半導体基板5を厚さ方向に貫通する貫通孔211、221を形成する。貫通孔211、221の形成は、ドライエッチング、その中でも特にボッシュ法により行われる。これにより、高いアスペクト比を有する貫通孔211、221を形成することができる。なお、エッチングストップ層61は、本ドライエッチングのストップ層として機能する。特に、エッチングストップ層61をSiN(窒化シリコン)で構成することにより、本ドライエッチングに対して高い選択比を有するエッチングストップ層61となり、オーバーエッチングを効果的に抑制することができる。そのため、例えば、貫通孔211、221が配線層63まで達し、配線層63にプラズマダメージを与えてしまうことを効果的に抑制することができる。その結果、本ドライエッチングに起因した配線のパターン不良が抑制され、高い信頼性を有する振動デバイス1を製造することができる。
【0032】
次に、図9に示すように、貫通孔211、221の下端から掘り進め、エッチングストップ層61を厚さ方向に貫通する貫通孔212、222を形成する。貫通孔212、222の形成は、ドライエッチングにより行われる。ただし、これに限定されず、貫通孔212、222の形成は、ウェットエッチングにより行われてもよい。
【0033】
次に、図10に示すように、貫通孔212、222の下端から掘り進め、金属層691、692の内側を通過して絶縁層62を厚さ方向に貫通する貫通孔213、223を形成する。貫通孔213、223の形成は、ウェットエッチングにより行われる。貫通孔213、223をウェットエッチングにより形成することにより、ドライエッチングで形成したときのような配線層63へのプラズマダメージが生じない。そのため、ドライエッチングに起因する配線のパターン不良を抑制することができる。その代わりに、ウェットエッチングでは、サイドエッチングが生じ、ウェットエッチングに起因する配線のパターン不良が生じるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、貫通孔213、223が金属層691、692の内側を通過するため、金属層691、692によってそれ以上外側へのサイドエッチングが規制される。したがって、意図しないサイドエッチングが抑制される。その結果、サイドエッチングに起因した配線のパターン不良が抑制され、信頼性の高い振動デバイス1を製造することができる。
【0034】
特に、本実施形態では、半導体基板5の平面視で、金属層691、692は、接続パッド631、632に内包され、金属層691、692の下端が接続パッド631、632の上面と接している。そのため、金属層691、692より外側へのエッチング液の侵入を効果的に抑制することができ、意図しないサイドエッチングを効果的に抑制することができる。その結果、ウェットエッチングに起因した配線のパターン不良をより効果的に抑制することができる。
【0035】
以上の工程により、第1面5aから金属層691、692層の内側を通って配線層63の接続パッド631、632に臨む貫通孔21、22が形成される。このような貫通孔21、22の形成方法によれば、配線層63へのプラズマダメージと、サイドエッチングに起因した配線のパターン不良を抑制しつつ、高いアスペクト比を有する貫通孔21、22を形成することができる。そのため、信頼性が高く、小型な振動デバイス1を製造することができる。
【0036】
≪導電性材料配置工程S22≫
次に、図11に示すように、半導体基板5の第1面5aおよび貫通孔21、22の内面に絶縁膜50を形成する。絶縁膜50の形成方法としては、特に限定されず、例えば、CVD(chemical vapor deposition)を用いることができる。次に、図12に示すように、貫通孔21、22の底面に形成された絶縁膜50をエッチングによって除去し、接続パッド631、632を貫通孔21、22内に露出させる。
【0037】
次に、導電性材料Eを第1面5a上に膜状に配置すると共に貫通孔21、22内に充填する。次に、第1面5a上の導電性材料Eをエッチングによりパターニングする。これにより、図13に示すように、配線28、29および貫通電極210、220が一括形成される。なお、導電性材料Eとしては、特に限定されないが、例えば、配線層63と同じ材料を用いることができる。これにより、貫通電極210、220と配線層63との親和性が高まり、これらの接触不良等を効果的に抑制することができる。また、材料を共有することができるため、振動デバイス1の製造コストを削減することもできる。ただし、導電性材料Eとしては、特に限定されず、例えば、チタンタングステン合金(TiW)/銅(Cu)/金(Au)の積層構造とすることもできる。
【0038】
≪振動素子配置工程S3≫
次に、金属バンプ81、82を介して振動素子4を配線28、29上に実装する。
【0039】
≪リッド配置工程S4≫
次に、ベース2の上面にリッド3を接合する。以上により、図14に示すように、振動デバイス1が製造される。
【0040】
以上、振動デバイス1と振動デバイス1の製造方法について詳細に説明した。このような振動デバイス1は、前述したように、ベース2と、ベース2に配置されている振動素子4と、を有する。また、ベース2は、互いに表裏関係にある第1面5aおよび第2面5bを有する半導体基板5と、第2面5b側に配置され、接続パッド631、632を備える配線層63と、第2面5bと配線層63との間に配置されている絶縁層62と、を含む集積回路6と、半導体基板5および絶縁層62を貫通し、接続パッド631、632に接続されている貫通電極210、220と、第2面5bと配線層63との間に絶縁層62を貫通して配置され、半導体基板5の平面視において貫通電極210、220を囲んでいる環状の金属層691、692と、を有する。このような構成の振動デバイス1によれば、絶縁層62を貫通する貫通孔213、223をウェットエッチングにより形成しても、金属層691、692がガードリングとして機能し、それ以上のサイドエッチングが規制される。そのため、例えば、ドライエッチングのときのようなプラズマダメージを配線層63に与えず、かつ、サイドエッチングに起因した配線のパターン不良が抑制される。そのため、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0041】
また、前述したように、半導体基板5の平面視において、金属層691、692は、接続パッド631、632に内包されている。これにより、金属層691、692より外側へのエッチング液の侵入をより効果的に抑制することができ、サイドエッチングに起因した配線のパターン不良をより効果的に抑制することができる。
【0042】
また、前述したように、集積回路6は、半導体基板5の厚さ方向に積層されている複数の配線層63、65を有し、貫通電極210、220は、複数の配線層63、65のうち最も半導体基板5側に位置する配線層63に含まれる接続パッド631、632に接続されている。これにより、貫通電極210、220をなるべく短くすることができ、貫通電極210、220の形成が容易となる。
【0043】
また、前述したように、ベース2は、第2面5bと絶縁層62との間に配置され、SiNで構成されたエッチングストップ層61を有する。これにより、半導体基板5をドライエッチングして貫通孔211、221を形成する際のオーバーエッチングを抑制することができ、配線層63へのプラズマダメージを効果的に抑制することができる。
【0044】
また、前述したように、配線層63と貫通電極210、220とは、同じ材料で構成されている。これにより、貫通電極210、220と配線層63との親和性が高まり、これらの接触不良等を効果的に抑制することができる。また、材料を共有することができるため、振動デバイス1の製造コストを削減することもできる。
【0045】
また、前述したように、振動素子4は、半導体基板5の第1面5a側に配置されている。また、振動デバイス1は、ベース2との間に振動素子4を収容するリッド3を有する。これにより、振動素子4を保護することができる。また、第2面5b側に集積回路6を形成することにより、第1面5aに集積回路6を形成する場合と比べて、リッド3との接合領域がない分、集積回路6の形成スペースを広く確保することができる。
【0046】
また、前述したように、振動デバイス1の製造方法は、互いに表裏関係にある第1面5aおよび第2面5bを有する半導体基板5と、第2面5b側に配置され、接続パッド631、632を備える配線層63と、第2面5bと配線層63との間に配置されている絶縁層62と、を含む集積回路6と、第2面5bと配線層63との間に絶縁層62を貫通して配置されている環状の金属層691、692と、を有するベース2を準備するベース準備工程S1と、半導体基板5および絶縁層62を貫通し、金属層691、692の内側を通って接続パッド631、632に接続される貫通電極210、220を形成する貫通電極形成工程S2と、を含む。また、貫通電極形成工程S2は、ドライエッチングによって半導体基板5を貫通した後、ウェットエッチングによって絶縁層62を貫通することによって第1面5aから金属層691、692の内側を通って接続パッド631、632に臨む貫通孔21、22を形成する貫通孔形成工程S21と、貫通孔21、22内に導電性材料Eを配置し貫通電極210、220を形成する導電性材料配置工程S22と、を含む。このような方法によれば、絶縁層62を貫通する貫通孔213、223をウェットエッチングにより形成しても、金属層691、692がガードリングとして機能し、それ以上のサイドエッチングが規制される。そのため、例えば、ドライエッチングのときのようなプラズマダメージを配線層63に与えず、かつ、サイドエッチングに起因した配線のパターン不良が抑制される。そのため、信頼性の高い振動デバイス1となる。
【0047】
また、前述したように、ベース2は、第2面5bと絶縁層62との間に配置され、SiNで構成されたエッチングストップ層61を有する。これにより、半導体基板5をドライエッチングして貫通孔211、221を形成する際のオーバーエッチングを抑制することができ、配線層63へのプラズマダメージを効果的に抑制することができる。
【0048】
<第2実施形態>
図15は、第2実施形態に係る振動デバイスを示す縦断面図である。
【0049】
本実施形態の振動デバイス1は、ベース2の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、図15において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0050】
図15に示すように、本実施形態のベース2は、前述した第1実施形態に対して上下が反転しており、半導体基板5の上面側すなわち第2面5b側に集積回路6が形成されている。また、半導体基板5の上面側に振動素子4が配置され、振動素子4と集積回路6とが一対の金属バンプ81、82を介して接合されている。なお、集積回路6は、半導体基板5の第2面5bにリッド3との接合スペースを確保するために、第2面5bの外周部を除くようにしてベース2に対してひと回り小さく形成されている。このような構成によれば、振動素子4と共に集積回路6を収容部S内に収容して保護することができる。
【0051】
集積回路6の端子層68には、前述した第1実施形態の実装端子681に替え、振動素子4と配線層65とを電気的に接続する配線682、683が配置されている。また、半導体基板5の第1面5a側には、前述した配線28、29に替え、複数の実装端子26が配置されている。各実装端子26は、それぞれ、絶縁層62を貫通して形成された環状の金属層693内を通って半導体基板5、エッチングストップ層61および絶縁層62を貫通する貫通電極230を介して集積回路6と電気的に接続されている。なお、貫通電極230は、前述した第1実施形態の貫通電極210、220と同じ構成であり、金属層693は、前述した第1実施形態の金属層691、692と同じ構成である。また、これらは、前述した第1実施形態と同様の方法により形成されている。
【0052】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1では、振動素子4は、半導体基板5の第2面5b側に配置されている。また、振動デバイス1は、ベース2との間に振動素子4および集積回路6を収容するリッド3を有する。これにより、振動素子4および集積回路6を保護することができる。
【0053】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0054】
<第3実施形態>
図16は、第3実施形態に係る振動デバイスが有する金属層を示す横断面図である。
【0055】
本実施形態の振動デバイス1は、金属層691、692の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動デバイス1と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、図16において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0056】
図16に示すように、本実施形態の振動デバイス1では、同心的に配置された複数の金属層691を有する。具体的には、複数の金属層691には、最内に位置し、貫通電極210を囲む第1金属層691aと、第1金属層691aの外側に位置し、第1金属層691aを囲む第2金属層691bと、第2金属層691bの外側に位置し、第2金属層691bを囲む第3金属層691cと、が含まれる。このような構成によれば、3重の金属層691によってエッチング液の漏れを阻止することができるため、サイドエッチングに起因した配線のパターン不良をより確実に抑制することができる。ただし、金属層691の数としては、特に限定されず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0057】
同様に、本実施形態の振動デバイス1では、同心的に配置された複数の金属層692を有する。具体的には、複数の金属層692には、最内に位置し、貫通電極220を囲む第1金属層692aと、第1金属層692aの外側に位置し、第1金属層692aを囲む第2金属層692bと、第2金属層692bの外側に位置し、第2金属層692bを囲む第3金属層692cと、が含まれる。このような構成によれば、3重の金属層692によってエッチング液の漏れを阻止することができるため、サイドエッチングに起因した配線のパターン不良をより確実に抑制することができる。ただし、金属層692の数としては、特に限定されず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0058】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1では、金属層691、692は、貫通電極210、220を囲んでいる第1金属層691a、692aと、第1金属層691a、692aを囲んでいる第2金属層691b、692bと、を有する。これにより、サイドエッチングに起因した配線のパターン不良をより確実に抑制することができる。
【0059】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0060】
以上、本発明の振動デバイスおよび振動デバイスの製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…振動デバイス、10…パッケージ、2…ベース、21…貫通孔、210…貫通電極、211…貫通孔、212…貫通孔、213…貫通孔、22…貫通孔、220…貫通電極、221…貫通孔、222…貫通孔、223…貫通孔、230…貫通電極、26…実装端子、28…配線、29…配線、3…リッド、31…凹部、4…振動素子、41…振動基板、42…電極、421…励振電極、422…励振電極、423…端子、424…端子、425…配線、426…配線、5…半導体基板、5a…第1面、5b…第2面、50…絶縁膜、6…集積回路、6A…発振回路、60…積層体、61…エッチングストップ層、62…絶縁層、63…配線層、631…接続パッド、632…接続パッド、64…絶縁層、65…配線層、66…絶縁層、67…パッシベーション膜、68…端子層、681…実装端子、682…配線、683…配線、7…接合部材、81…金属バンプ、82…金属バンプ、691…金属層、691a…第1金属層、691b…第2金属層、691c…第3金属層、692…金属層、692a…第1金属層、692b…第2金属層、692c…第3金属層、693…金属層、E…導電性材料、S…収容部、S1…ベース準備工程、S2…貫通電極形成工程、S21…貫通孔形成工程、S22…導電性材料配置工程、S3…振動素子配置工程、S4…リッド配置工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16