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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】計測システム及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/24 20060101AFI20241106BHJP
   E02F 7/00 20060101ALI20241106BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01N33/24 E
E02F7/00 Z
G01C3/06 120Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021010308
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114142
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】青山 裕作
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105041(JP,A)
【文献】特開2018-205270(JP,A)
【文献】特開2017-181289(JP,A)
【文献】特開平08-285767(JP,A)
【文献】特開平07-270309(JP,A)
【文献】特開2013-007694(JP,A)
【文献】特開2002-131238(JP,A)
【文献】特開2009-279541(JP,A)
【文献】米国特許第05721759(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00,33/24,
E02F 7/00,
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物を連続的に搬送する帯状の搬送部の下面から離間させて対向配置され、前記搬送部に載置された前記計測対象物の物性を計測する物性計測部と、
前記計測対象物が載置された前記搬送部の下面と前記物性計測部との距離を特定する距離計測部と、
前記特定した距離に応じて、前記物性計測部の計測結果を補正する管理部とを備える計測システム。
【請求項2】
前記搬送部は、搬送面に上載した搬送土を連続的に搬送する搬送方向に延在して移動し、
前記物性計測部は、前記搬送部の下面と隙間を空けて対向配置され、前記搬送面に上載して連続的に搬送される前記搬送土の含水比を計測し、
前記距離計測部は、前記搬送部の下面と対向配置され、前記物性計測部で計測する含水比計測部位に応じた部分の前記搬送部の下面との距離を計測することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記搬送部は、ベルトコンベヤの厚さが既知のベルトであることを特徴とする請求項2に記載の計測システム。
【請求項4】
前記搬送部の下面と前記物性計測部の間の前記隙間が1.5cm以下の条件を満たすように設定されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の計測システム。
【請求項5】
前記搬送部の上方に配置され、前記物性計測部により含水比を計測する前記搬送土の高さを計測する上側距離計測部を更に備えることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の計測システム。
【請求項6】
前記管理部は、距離毎に、前記物性計測部によって前記距離で計測した実測値を、真の含水比に変換するための変換情報を記録した記憶部を更に備えることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の計測システム。
【請求項7】
前記距離計測部の計測結果に応じて前記物性計測部と前記搬送部の下面との距離が維持されるように、前記物性計測部を進退可能に支持する進退機構部を更に備え、
前記管理部は、前記距離計測部の計測結果に基づいて前記進退機構部の駆動を制御することを特徴とする請求項2~6のいずれか1項に記載の計測システム。
【請求項8】
上面の搬送面に上載した搬送土を連続的に搬送する搬送方向に延在して移動する帯状の搬送部と、
前記搬送部の下面と隙間を空けて対向配置され、前記搬送面に上載して順次連続的に搬送されてくる前記搬送土の含水比を計測するための物性計測部と、
前記搬送部の下面と対向配置され、前記物性計測部で計測する含水比計測部位に応じた部分の前記搬送部の下面との距離を計測する距離計測部と、
前記距離計測部の計測結果を取得する管理部とを備えてなる計測システムを用い、
前記搬送面に上載された複数の既知の含水比の搬送土に対し、前記搬送部の下面と前記物性計測部の間の距離を変え、異なる距離毎に含水比を計測し、
前記距離計測部の計測結果に応じて前記物性計測部で計測した計測結果を補正するための変換情報を作成し、
前記物性計測部により、前記搬送面に上載して連続的に搬送されてくる前記搬送土の含水比を計測し、
前記距離計測部の計測結果に応じて、前記物性計測部の計測結果を補正することを特徴とする計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送される計測対象物の物性情報を取得するための計測システム及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築や土木の工事現場において、多様な計測が行なわれている。例えば、工事現場の地面の掘削によって生じた建設発生土の含水比を計測する技術が検討されている(特許文献1を参照。)。この文献に記載された技術において、土質区分装置は、ベルトコンベヤ上で搬送される搬送土の含水比を算出する水分計と、搬送土の断面積を算出するレーザスキャナと、搬送土の重量を取得するベルトスケールとを備える。そして、断面積、重量及び含水比に基づいて乾燥密度を算出し、断面積及び乾燥密度に基づいて、搬送土の土質を判定する制御装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-181289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、計測対象物をベルトコンベヤ等に上載して搬送する場合、上記特許文献1のように、ベルトコンベヤ下部に、ベルトと接触させて計測装置を設置することがある。この場合、ベルトコンベヤや計測装置の接触面に摩耗等が生じる可能性がある。また、ベルトと計測装置とを隙間を空けて配置する場合、上載状況に応じて計測距離が変化し、計測対象物の含水比などの物性を的確に計測できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための計測システムは、計測対象物を連続的に搬送する帯状の搬送部の下面から離間させて対向配置され、前記搬送部に載置された前記計測対象物の物性を計測する物性計測部と、前記計測対象物が載置された前記搬送部の下面と、前記物性計測部との距離を特定する距離計測部と、前記特定した距離に応じて、前記物性計測部の計測結果を補正する管理部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、連続的に搬送される計測対象物の物性情報を、効率的かつ的確に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の計測システムの全体概略図。
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図。
図3】実施形態の計測装置の側面図。
図4】実施形態の計測装置の上面図。
図5】実施形態の計測装置の正面図。
図6】実施形態の計測装置の斜視図。
図7】実施形態のベルトコンベヤと含水比計測装置との距離の説明図。
図8】実施形態の処理手順の説明図。
図9】実施形態の変換情報の説明図。
図10】他の実施形態の計測システムの全体概略図。
図11】他の実施形態の計測システムの全体概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図9を参照し、計測システム及び計測方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、シールド工法によるトンネル掘削において発生するズリ(排土)を、ベルトコンベヤ上で連続的に搬送し、ベルトの搬送面の搬送土(計測対象物)の含水比(物性情報)を連続的に測定する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の計測システムQ1は、計測装置10と、管理装置20とを備え、ベルトコンベヤB0のローラR1の駆動によって連続的に搬送される搬送土SL1の含水比を計測するためのシステムである。また、本実施形態において、計測装置10は、含水比計測装置11、変位計12,13を備える。
【0010】
(ハードウェア構成例)
図2は、管理装置20等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
【0011】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0012】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。
【0013】
入力装置H12は、利用者等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0014】
記憶装置H14は、管理装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する装置である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0015】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、管理装置20における各処理(例えば、後述する制御部21における処理)を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、管理装置20のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0016】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサH15は、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスして利用可能なあらゆる媒体を含む。
【0017】
(計測システムQ1の機能)
図1に示すように、計測装置10は、ベルトコンベヤB0のベルトB1の下方に配置された含水比計測装置11(物性計測部)及び変位計12(下側距離計測部)と、ベルトB1の上方に配置された変位計13(上側距離計測部)とを備える。なお、ベルトB1の厚さは既知であり、本実施形態において、ベルトB1の厚さの変化は、全長に亘って小さく、計測結果に与える影響が非常に小さい。このため、ベルトB1の厚さは常時既知の厚さであるものとして扱うことができる。
【0018】
含水比計測装置11は、放射性同位元素から生じた高速中性子を搬送土SL1に照射し、搬送土SL1中の水の水素原子との衝突により生じる熱中性子を測定することにより、搬送土SL1の含水比を求めるための装置である。この含水比計測装置11は、ベルトB1の幅方向(搬送方向に直交するベルトB1の幅方向)の中央付近に配置される。
【0019】
変位計12,13は、変調したレーザ光を、計測対象物に照射して戻ってくるまでの時間をレーザ光の位相差から求め、計測対象物までの距離を計測するための装置である。
【0020】
本実施形態の変位計12,13は、ベルトB1の幅方向の中央付近において、ベルトB1上の含水比計測部位の部分を間に対向配置される。すなわち、変位計12は、ベルトB1の下方に配置されて、ベルトB1の底面(下面、下部)までの距離を計測する。変位計13は、ベルトB1の上方に配置されて、ベルトB1上の計測対象物の高さ(上載状態)を計測する。
【0021】
図1に示すように、管理装置20(管理部)は、制御部21、変換情報記憶部22、計測情報記憶部23を備える。
制御部21は、取得部211、演算部212、記録処理部213を備える。
【0022】
取得部211は、計測装置10から計測情報(計測信号)を受けて処理を実行するためのものである。
演算部212は、計測装置10から取得部211で受けた計測情報を用いて、放射線(中性子及び/又はガンマ線)の計数率比、距離を求める処理を実行する。この演算部212は、詳細を後述するが、搬送土SL1の含水比を適切に計測するため、距離についての第1基準値、第2基準値に関する情報を保持する。第1基準値は、含水比計測装置11とベルトB1との間隔が離れすぎていないかどうか(変位計12により計測した距離)を判定するために用いられる。また、第2基準値は、ベルトB1において、含水比の計測に必要な量(厚さ)の土が上載されているかどうか(変位計13により計測した搬送土の高さ)を判定するために用いられる。
【0023】
記録処理部213は、算出した変換計数率比を計測情報記憶部23に記録する処理を実行する。
【0024】
変換情報記憶部22には、計測装置10から取得した計測情報によって演算部212で求めた計数率比を、距離に応じて、補正するための変換情報が記録される。この変換情報は、事前準備処理時に記録される。この変換情報には、距離に対して、計数率比に関するデータが記録される。
【0025】
距離データ領域には、変位計12によって計測した距離に関するデータが記録される。
計数率比データ領域には、現場で計測した現場計数率比と標準計数率比との関係に関するデータが記録される。ここで、計数率は、放射線を含水比計測装置11で測定したときの単位時間当たりのカウント数である。放射線源が時間とともに減衰していくため、同じものを測定しても結果が異なる。なお、線源として一般に用いられているコバルト60(60Co)やカリフォルニウム(252Cf)の半減期は、それぞれ5.26年,2.65年である。このため、標準体での値を基準にした計数率(標準体計数率)を定期的に調べておく必要がある。この標準体計数率と、現場で計測した計数率(現場計数率)との比を計数率比(R)と呼ぶ(計数率比(R)=〔現場計数率〕/〔標準体計数率〕)。この計数率比(R)は、計測対象物の密度や含水量の指数関数で表される。
【0026】
計測情報記憶部23には、計測装置10を用いて計測した搬送土の含水比についての計測結果情報が記録される。この計測結果情報は、搬送時に記録される。計測結果情報には、計測日時、計数率比に関するデータが含まれる。
【0027】
計測日時データ領域には、搬送土SL1を計測した年月日及び時刻に関するデータが記録される。
計数率比データ領域には、搬送土の計数率比に関するデータが記録される。
【0028】
(含水比計測装置11及び変位計12の固定方法)
次に、ベルトコンベヤB0への含水比計測装置11及び変位計12の固定方法を説明する。
【0029】
図3図6に示すように、計測システムQ1の固定には、固定フレームF10を用いる。図3は、固定フレームF10を、ベルトコンベヤB0の搬送方向の側面から見た正面図であり、図4は、ベルトコンベヤB0の上方から見た固定フレームF10の上面図である。また、図5は、固定フレームF10の側面図であり、図6は、固定フレームF10の斜視図である。
【0030】
図4に示すように、固定フレームF10は、2本のフレームF11を備える。このフレームF11は、ベルトB1の幅に応じた長さのCチャンネルで構成されている。フレームF11は、ベルトコンベヤB0における搬送方向に対して直交方向に延在して配置される。そして、フレームF11は、ブルマン等の固定具により、ベルトコンベヤB0のベルトB1やローラR1を支持する下部フレームB2に掛け渡して固定される。
【0031】
各フレームF11には、長軸方向に直交するように、一対の長孔H1が設けられている。2本のフレームF11には、長孔H1にネジを挿通してネジ止めすること等により、立設された4本の縦フレームF13が固定される。
【0032】
4本の縦フレームF13の途中には、支持板F14が固定されている。この支持板F14には、含水比計測装置11が設置される。
更に、含水比計測装置11の上面には、4本の縦フレームF13によって支持される保護シートTS1が固定される。この保護シートTS1は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等の摩擦係数が小さい材料により構成され、含水比計測装置11の上面を保護する。
【0033】
また、支持板F14には、下方にフレームF15が固定される。このフレームF15には、ベルトB1の幅方向の中央付近において、変位計12が固定される。
図5に示すように、変位計12の上方位置において、支持板F14、保護シートTS1には、それぞれ開口部H2,H3が設けられている。
【0034】
図6に示すように、開口部H2,H3を介して、変位計12により照射されたレーザ光LL1が、ベルトB1の底面に到達する。
図7は、ベルトB1上の搬送土SL1の重量が異なる場合を示している。搬送土SL1が軽い場合には、含水比計測装置11とベルトB1との距離は「d1」となる。また、搬送土SL1が重い場合の距離は「d2」となる。この場合、距離d1は距離d2よりも長くなる。そこで、本実施形態では、含水比計測装置11とベルトB1との距離に応じて、含水比計測装置11の計測結果を補正する。
【0035】
次に、図8を用いて、計測方法を説明する。ここでは、事前準備処理と搬送時処理とがある。
(事前準備処理)
まず、事前準備処理について説明する。
【0036】
事前準備処理では、複数の標準土の計測処理を実行する(ステップS11)。具体的には、含水率(含水比、計数率比)が異なる複数のサンプル(標準土)を準備する。次に、計測装置10をベルトコンベヤB0に取り付ける。そして、含水比計測装置11を、ベルトコンベヤB0のベルトB1の底面に密着させる。次に、計測装置10の上方のベルトB1に、順次、サンプルを上載する。そして、含水比計測装置11を用いて、ベルトB1上の各サンプルの計数率比(離れ0の場合の計測値である計数率比)を計測する。更に、ベルトB1の高さを変更して、複数の高さ位置で、変位計12を用いてベルトB1の底面までの距離を計測する。例えば、計数率比が「0.2」、「0.3」、「0.5」のサンプルについて、変位計12を用いて計測した距離を0.5cm~3.0cmまで0.5cm刻みで変更して、離れている場合の計数率比(計測値)を計測する。
【0037】
次に、変換情報の作成処理を実行する(ステップS12)。具体的には、計測装置10から任意の距離に配置された計測対象物の計数率比を、「離れ0の場合の計数率比」に変換(補正)するための情報を生成する。ここでは、計測装置10とサンプルとの距離毎に、含水量が異なる各サンプルについて、「離れている場合の計数率比」のマッピングを行なう。そして、距離毎の回帰分析により、計数率比の近似線を算出する。
【0038】
例えば、図9に示すように、変換情報220として、「離れ0の場合の計数率比」と「離れている場合の計数率比」との関係を示したグラフを作成する。図9では、各距離における線形近似線の重相関係数を図示している。そして、重相関係数が0.95以上の条件を用いることが望ましい。ここでは、適切な計測を行なうことができる距離として「3.0cm(第1基準値)」内を用いる。そして、変換情報220を用いることにより、変位計12を用いて計測した距離、その時の含水比計測装置11の計数率比から、搬送土の本来の計数率比を予測することができる。例えば、距離「2.3cm」、計数率比「x1」の場合、距離「2.0cm」の近似線の交点(標準計数率比y01)、距離「2.5cm」の近似線の交点(標準計数率比y02)から、下記式で搬送土の計数率比y1を算出することができる。
【0039】
〔y1〕=y01+〔y02-y01〕*〔2.3-2.0〕/〔2.5-2.0〕
【0040】
(搬送時処理)
次に、図8を用いて、搬送時処理について説明する。
【0041】
まず、管理装置20の制御部21は、計測開始処理を実行する(ステップS21)。具体的には、ベルトコンベヤB0による土の搬送を開始する場合、管理装置20の入力装置H12において開始操作を行なう。この場合、制御部21の取得部211は、含水比計測装置11、変位計12,13を起動する。
【0042】
この場合、管理装置20の制御部21は、計数率比の計測処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部21の取得部211は、計測装置10の含水比計測装置11から計数率比(計数率比実測値)を取得する。
【0043】
更に、管理装置20の制御部21は、距離計測処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御部21の取得部211は、計測装置10の変位計12,13から距離情報を取得する。
【0044】
次に、管理装置20の制御部21は、計測可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS24)。具体的には、制御部21の演算部212は、変位計12から取得した第1距離が第1基準値内かどうかについて判定する。更に、変位計13から取得した第2距離が第2基準値以上かどうかを判定する。ここで、第1距離が第1基準値よりも大きい場合には、ベルトB1が離れすぎているため、計測不可と判定する。また、第2距離が第2基準値未満の場合には、十分な搬送土が上載されていないため、計測不可と判定する。一方、第1距離が第1基準値内であり、かつ第2距離が第2基準値以上の場合には、計測可能と判定する。
【0045】
計測可能と判定した場合(ステップS24において「YES」の場合)、管理装置20の制御部21は、変換処理を実行する(ステップS25)。具体的には、制御部21の演算部212は、変換情報記憶部22に記録された変換情報220を用いて、第1距離及び計数率比実測値から、変換計数率比を算出する。
【0046】
次に、管理装置20の制御部21は、変換値の出力処理を実行する(ステップS26)。具体的には、制御部21の記録処理部213は、現在日時に関連付けて変換計数率比を計測情報記憶部23に記録する。
【0047】
一方、計測不可と判定した場合(ステップS24において「NO」の場合)、管理装置20の制御部21は、計数率比の計測処理(ステップS22)、距離計測処理(ステップS23)以降の処理を実行する。
【0048】
次に、管理装置20の制御部21は、終了かどうかについての判定処理を実行する(ステップS27)。具体的には、ベルトコンベヤB0による土の搬送を終了する場合、管理装置20の入力装置H12において終了操作を行なう。制御部21の取得部211は、入力装置H12における終了操作を検知した場合、計測終了と判定する。
【0049】
入力装置H12における終了操作を検知せず、終了でないと判定した場合(ステップS27において「NO」の場合)、管理装置20の制御部21は、計数率比の計測処理(ステップS22)、距離計測処理(ステップS23)以降の処理を繰り返す。
【0050】
一方、終了と判定した場合(ステップS27において「YES」の場合)、管理装置20の制御部21は、計測終了処理を実行する(ステップS28)。具体的には、制御部21の取得部211は、含水比計測装置11、変位計12,13を停止させる。
【0051】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(a)本実施形態では、変換情報記憶部22には、計測装置10から取得した計数率比を、距離に応じて、補正するための変換情報が記録される。そして、管理装置20の制御部21は、計数率比の計測処理(ステップS22)、距離計測処理(ステップS23)を実行する。これにより、ベルトコンベヤB0のベルトB1から含水比計測装置11を離間させた状態で、的確な計数率比を予測することができる。そして、ベルトB1と含水比計測装置11とが離間しているので、ベルトB1や含水比計測装置11の摩耗等を抑制することができる。
【0052】
(b)本実施形態では、計測可能かどうかについての判定処理(ステップS24)において、制御部21の演算部212は、変位計12から取得した第1距離が第1基準値内かどうかについて判定する。これにより、「離れ0の場合の計数率比」と「離れている場合の計数率比」とが高い相関を示す範囲(本実施形態では、重相関係数が0.95以上)において、的確な計測を行なうことができる。
【0053】
(c)本実施形態では、計測可能かどうかについての判定処理(ステップS24)において、制御部21の演算部212は、変位計13から取得した第2距離が第2基準値以上かどうかを判定する。これにより、ベルトB1に十分な搬送土が上載されていない場合には、計測対象外とすることができる。
【0054】
以上、本発明に係る計測システム及び計測方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
例えば、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。なお、本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
・上記実施形態では、シールド工法によるトンネル掘削において発生する排土の計数率比を算出した。計測対象は、排土に限定されるものではない。例えば、汚染土壌の掘削排土や、造成、盛土などの他の工事や、生コン工場における細骨材、粗骨材の含水比測定などに適用することができる。
【0057】
・上記実施形態では、連続的に搬送される搬送物の物性情報として、搬送土の含水比を取得する。このために、含水比計測装置11により計数率比を取得する。搬送物の物性情報は計数率比に限定されるものではなく、計測対象物までの距離に応じて計測するものに適用することができる。例えば、連続的に搬送される放射性物質の放射線量を遠隔で計測するようにしてもよい。また、搬送土の密度や土質等の物性情報を取得するために適用してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、含水比計測装置11により計数率比を算出する。これに加えて、他の計測装置を併用してもよい。例えば、ベルトコンベヤB0の異なる位置に設けたベルトスケールにおいて湿潤重量を計測するようにしてもよい。この場合には、含水比計測装置11の設置位置とベルトスケールの設置位置との距離を、ベルトコンベヤB0の搬送速度で除算することにより算出される時間差を用いて、同じ搬送土の含水比と湿潤重量とを関連付けて取得することができる。
【0059】
・上記実施形態では、ベルトコンベヤB0を用いて搬送土を搬送する。搬送方法はベルトコンベヤB0を用いる場合に限定されるものではない。帯状の搬送部に上載された計測対象物を計測可能な素材であれば、チェーンコンベヤ、トップチェーンコンベヤ、スラットコンベヤ、エプロンコンベヤ等に適用してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、距離測定装置として、レーザ光による変位計12を用いる。距離の測定方法は、変位計12を用いる場合に限定されるものではない。例えば、Lidar(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)等のリモートセンシング技術を用いて、3次元的に計測対象物の配置位置を特定してもよい。また、3次元カメラ等を用いて距離を測定する装置を用いてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、含水比計測装置11とベルトB1との第1基準値として3.0cmを用いる。精度良く計測できる条件であれば、第1基準値は3.0cmに限定されるものではなく、好ましくは1.5cm以下、より好ましくは1.0cm以下にすることが望ましい。
【0062】
・上記実施形態では、変換情報220として、「離れ0の場合の計数率比」と「離れている場合の計数率比」との関係を示したグラフを用いる。変換情報220はグラフに限定されるものではなく、距離に応じて「離れている場合の計数率比」から、「離れ0の場合の計数率比」を算出できる情報(例えば、関数や早見表)を用いてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、変位計12により計測した距離を用いて、含水比計測装置11の計数率比を補正する。ここで、変位計12により計測した距離を用いて、含水比計測装置11とベルトB1との距離を一定に保つようにしてもよい。
【0064】
例えば、図10に示すように、含水比計測装置11を、ベルトB1との距離を進退可能に支持する進退機構部(アクチュエータ31)に固定する。そして、変位計12で計測した距離に基づいて、アクチュエータ31を駆動して、ベルトB1との間隔を一定の距離に保つようにする。これにより、事前準備処理において、一定の距離でサンプルを計測した変換情報を用いることができる。なお、進退機構部の構成を上記に限定する必要はない。
【0065】
・上記実施形態では、計測装置10に、含水比計測装置11、変位計12,13を同じ場所に設けて、距離と計数率比を計測する。両者の計測位置は同じ場所に限定されるものではない。
【0066】
例えば、図11に示すように、ベルトコンベヤB0のローラR1が同じ間隔L1で配置されているスパンを用いる。そして、異なるスパンにおいて、ローラR1から同じ距離の位置L2に、それぞれ含水比計測装置11、変位計12,13を設けてもよい。この場合には、含水比計測装置11の配置位置と、変位計12,13の配置位置との距離を計測しておく。計測時には、配置位置の距離をベルトB1の搬送速度で除算したタイムラグに応じた異なるタイミングで、同じ搬送土SL1の計数率比と、ベルトB1までの距離とを計測する。そして、計測した距離に応じた変換情報に基づいて計数率比を補正する。この場合には、含水比計測装置11、変位計12,13を、ローラR1から同じ距離に配置することで、ベルトB1の撓みが同じ状態でベルトB1と含水比計測装置11の間の距離、計数率比を求めることができ、本実施形態と同様、精度よく搬送土の含水比を連続的に計測することが可能になる。よって、含水比計測装置11、変位計12,13の配置の自由度を高め、現場の状況に柔軟に対応することができる。
【0067】
ここで、本開示の計測システム、計測方法の作用効果は、例えば、以下のように把握できる。
【0068】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る計測システム(計測システムQ1)は、計測対象物(搬送土SL1)を連続的に搬送する帯状の搬送部(ベルトB1)の下面から離間させて対向配置され、搬送部に載置された計測対象物の物性を計測する物性計測部(含水比計測装置11)と、計測対象物が載置された搬送部の下面と物性計測部との距離を特定する距離計測部(変位計(下側距離計測部)12)と、特定した距離に応じて、物性計測部の計測結果を補正する管理部(管理装置20)とを備える。
上記(1)に記載の計測システムによれば、搬送部の下面と物性計測部との距離に応じて計測結果を補正するため、物性計測部を搬送部の下面から離した状態で計測できる。よって、搬送部の下面や物性計測部に摩耗が生じる等の不都合を解消しつつ、精度よく計測対象物の物性を計測することが可能になる。
【0069】
(2)本開示の別の実施形態に係る計測システムは、上記(1)において、搬送部は、搬送面に上載した搬送土を連続的に搬送する搬送方向に延在して移動し、物性計測部は、搬送部の下面と隙間を空けて対向配置され、搬送面に上載して連続的に搬送される搬送土の含水比を計測し、距離計測部は、搬送部の下面と対向配置され、物性計測部で計測する含水比計測部位に応じた部分の搬送部の下面との距離を計測する。
上記(2)に記載の計測システムによれば、搬送部の下方に含水比を計測する物性計測部が配置されているため、連続的に搬送される搬送土の含水比を計測することができる。よって、搬送部の下面や物性計測部に摩耗が生じる等の不都合を解消しつつ、精度よく搬送土の含水比を連続的に計測することが可能になる。
【0070】
(3)本開示の別の実施形態に係る計測システムは、上記(2)において、搬送部は、ベルトコンベヤの厚さが既知のベルトである。
上記(3)に記載の計測システムによれば、搬送部がベルトコンベヤのベルトであることで、厚さの変化が全長に亘って小さく、全長に亘って計測結果に与える影響を小さくすることができる。言い換えれば、ベルトの厚さが常時既知の厚さであるものとして扱っても精度よく搬送土の含水比(計測対象物の物性)を計測できる。
【0071】
(4)本開示の別の実施形態に係る計測システムは、上記(2)、(3)において、搬送部の下面と物性計測部の間の隙間が1.5cm以下の条件を満たすように設定されている。
上記(4)に記載の計測システムによれば、搬送部の下面と物性計測部の間の隙間を1.5cm以下にすることで、線形近似線の重相関係数が高く、より精度よく的確な計測を行なうことが可能になる。
【0072】
(5)本開示の別の実施形態に係る計測システムは、上記(2)~(4)のいずれか一つにおいて、搬送部の上方に配置され、物性計測部により含水比を計測する搬送土の上面との間の距離を計測する上側距離計測部(変位計13)を更に備える。
上記(5)に記載の計測システムによれば、上側距離計測部を備えることで、計測に必要な搬送土の高さを確認して、好適に含水比の計測を行なうことが可能になる。
【0073】
(6)本開示の別の実施形態に係る計測システムは、上記(2)~(5)のいずれか一つにおいて、管理部は、距離毎に、物性計測部によって、この距離で計測した実測値を、真の含水比に変換するための変換情報を記録した記憶部(変換情報記憶部22)を備える。
上記(6)に記載の計測システムによれば、搬送部と物性計測部の間の距離に応じた変換情報を用いて実測値を補正(変換)し、搬送部に物性計測部を接触させた「距離0」の状態で計測した場合の含水比(真の含水比)を求めることができる。
【0074】
(7)本開示の別の実施形態に係る計測システムは、上記(2)~(6)のいずれか一つにおいて、距離計測部の計測結果に応じて物性計測部と搬送部の下面との距離が維持されるように、物性計測部を進退可能に支持する進退機構部(アクチュエータ31)、距離計測部の計測結果に基づいて進退機構部の駆動を制御する制御部(管理装置20)とを備える。
上記(7)に記載の計測システムによれば、搬送部の下面との距離を一定(略一定を含む)に維持することができ、この一定の距離での変換情報を用いて、計測対象物の物性(含水比)を求めることができる。
【0075】
(8)本開示の少なくとも一実施形態に係る計測方法は、上面の搬送面に上載した搬送土を連続的に搬送する搬送方向に延在して移動する帯状の搬送部と、搬送部の下面と隙間を空けて対向配置され、搬送面に上載して順次連続的に搬送されてくる搬送土の含水比を計測するための物性計測部と、搬送部の下面と対向配置され、物性計測部で計測する含水比計測部位に応じた部分の搬送部の下面との距離を計測する距離計測部と、距離計測部の計測結果を取得する管理部とを備えてなる計測システムを用い、搬送面に上載された複数の既知の含水比の搬送土に対し、搬送部の下面と物性計測部の間の距離を変え、異なる距離毎に含水比を計測し、距離計測部の計測結果に応じて物性計測部で計測した計測結果を補正するための変換情報を作成し、物性計測部により、搬送面に上載して連続的に搬送されてくる搬送土の含水比を計測し、距離計測部の計測結果に応じて、物性計測部の計測結果を補正する。
上記(8)に記載の計測方法によれば、搬送部の下面と物性計測部との距離に応じて、物性計測部の計測結果を補正するため、物性計測部を搬送部の下面から離した状態で計測できる。
【符号の説明】
【0076】
B0…ベルトコンベヤ、B1…ベルト、Q1…計測システム、SL1…搬送土、10…計測装置、11…含水比計測装置、12,13…変位計、20…管理装置、21…制御部、211…取得部、212…演算部、213…記録処理部、22…変換情報記憶部、23…計測情報記憶部。
図1
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