IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大林組の特許一覧

特許7581918液体容器、液体殺菌システム及び液体保存方法
<>
  • 特許-液体容器、液体殺菌システム及び液体保存方法 図1
  • 特許-液体容器、液体殺菌システム及び液体保存方法 図2
  • 特許-液体容器、液体殺菌システム及び液体保存方法 図3
  • 特許-液体容器、液体殺菌システム及び液体保存方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液体容器、液体殺菌システム及び液体保存方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/00 20060101AFI20241106BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20241106BHJP
【FI】
B65D90/00 H
C02F1/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021010954
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114605
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】与謝 国平
(72)【発明者】
【氏名】四本 瑞世
(72)【発明者】
【氏名】緒方 浩基
(72)【発明者】
【氏名】原嶋 寛
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-202292(JP,A)
【文献】特開2019-188280(JP,A)
【文献】特開2010-274031(JP,A)
【文献】特開平04-317789(JP,A)
【文献】特開2016-223275(JP,A)
【文献】実開昭55-176188(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0000911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/00
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌装置により殺菌された液体を流入させる流入部と、
前記流入部により供給された液体を貯蔵する本体部と、
前記本体部において貯留された液体を前記殺菌装置へと排出させる排出部と、
前記流入部から流入させた液体と前記本体部に貯留された液体との混濁を抑制する混濁抑制部とを備え
前記混濁抑制部は、前記本体部において貯蔵された前記液体の液面の上方に配置され、前記流入部から流入させた液体を、前記混濁を抑制した状態で前記液面に向けて散布することを特徴とする液体容器。
【請求項2】
殺菌装置により殺菌された液体を流入させる流入部と、
前記流入部により供給された液体を貯蔵する本体部と、
前記本体部において貯留された液体を前記殺菌装置へと排出させる排出部と、
前記流入部から流入させた液体と前記本体部に貯留された液体との混濁を抑制する混濁抑制部とを備え、
前記混濁抑制部は、前記本体部の内面に前記液体を伝い落とすことを特徴とする液体容器。
【請求項3】
殺菌装置により殺菌された液体を流入させる流入部と、
前記流入部により供給された液体を貯蔵する本体部と、
前記本体部において貯留された液体を前記殺菌装置へと排出させる排出部と、
前記流入部から流入させた液体と前記本体部に貯留された液体との混濁を抑制する混濁抑制部とを備え、
前記混濁抑制部は、前記本体部の内部において、前記流入部から流入させた前記液体を、前記排出部から流出させるまでの流路を構成する仕切材を備えることを特徴とする液体容器。
【請求項4】
請求項1~の何れか1項に記載の液体容器と、
前記液体容器に貯留した前記液体を殺菌する前記殺菌装置と、
前記液体容器から前記殺菌装置に前記液体を供給する殺菌対象液供給経路と、
前記殺菌装置において殺菌された前記液体を前記液体容器に供給する殺菌済液体供給経路とを備えたことを特徴とする液体殺菌システム。
【請求項5】
殺菌装置により殺菌された液体を供給して貯蔵し、前記貯蔵された液体を前記殺菌装置へと排出させる液体容器を用いて、殺菌された前記液体を保存する液体保存方法であって、
前記殺菌装置で殺菌されて前記液体容器に流入させた液体を、前記液体容器の本体部において貯蔵された前記液体の液面に向けて散布することにより、前記殺菌装置で殺菌されて流入させた液体と、前記液体容器に貯留された液体との混濁を抑制した状態で、前記液体が供給されて保存されることを特徴とする液体保存方法。
【請求項6】
殺菌装置により殺菌された液体を供給して貯蔵し、前記貯蔵された液体を前記殺菌装置へと排出させる液体容器を用いて、殺菌された前記液体を保存する液体保存方法であって、
前記殺菌装置で殺菌されて前記液体容器に流入させた液体を、前記液体容器の本体部の内面に伝い落すことにより、前記殺菌装置で殺菌されて流入させた液体と、前記液体容器に貯留された液体との混濁を抑制した状態で、前記液体が供給されて保存されることを特徴とする液体保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬や医薬等に用いられる水等の殺菌された液体を貯蔵する液体容器、これを用いた液体殺菌システム及び液体保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や製薬に使用される水を保存する場合、水中の菌等が増殖しないように、加熱殺菌が行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に開示された医薬品用精製水の製造方法では、非加熱の原水を逆浸透膜装置及び電気再生式純水製造装置に通過させ、その処理水を処理原水として一旦貯留する。そして、この処理原水を加熱しつつ循環させることにより殺菌し、殺菌後に、原水を逆浸透膜装置及び電気再生式純水製造装置に通過させて精製水を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-74109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、加熱殺菌した水は、水中の菌の増殖を抑制するために、高温で保存している。そして、保存した水は、冷却して常温にして使用する。このため、保存及び使用における手間や経済的負担が大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する液体容器は、殺菌装置により殺菌された液体を流入させる流入部と、前記流入部により供給された液体を貯蔵する本体部と、前記本体部において貯留された液体を前記殺菌装置へと排出させる排出部と、前記流入部から流入させた液体と前記本体部に貯留された液体との混濁を抑制する混濁抑制部とを備える。
【0006】
また、上記課題を解決する液体殺菌システムは、請求項1~4の何れか1項に記載の液体容器と、前記液体容器に貯留した前記液体を殺菌する前記殺菌装置と、前記液体容器から前記殺菌装置に前記液体を供給する殺菌対象液供給経路と、前記殺菌装置において殺菌された前記液体を前記液体容器に供給する殺菌済液体供給経路とを備える。
【0007】
更に、上記課題を解決する液体保存方法は、殺菌装置により殺菌された液体を供給して貯蔵し、前記貯蔵された液体を前記殺菌装置へと排出させる液体容器を用いて、殺菌された前記液体を保存する液体保存方法であって、前記殺菌装置で殺菌されて流入させた液体と、前記液体容器に貯留された液体との混濁を抑制した状態で、前記液体が供給されて保存される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、殺菌された液体を効率的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の液体殺菌システムの構成図。
図2】実施形態において経過時間に応じた菌数の減少を示すグラフ。
図3】第1変更例の液体殺菌システムの構成図。
図4】第2変更例の液体殺菌システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1を用いて、液体容器、液体殺菌システム及び液体保存方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態の液体殺菌システムは、液体として、製薬に用いる水を殺菌する水殺菌システムとして説明する。
【0011】
図1に示すように、水殺菌システム10は、水を殺菌するUV装置12、殺菌した水を貯蔵するタンク15を備える。タンク15とUV装置12とは、管路11,13を介して接続される。タンク15内に貯留された水は、殺菌対象液供給経路としての管路11を介してUV装置12に供給される。この管路11には、タンク15側から、ポンプP1、バルブV1、流量計F1及びバルブV2が直列に設けられている。また、この管路11におけるバルブV1と流量計F1との間には、殺菌水を補充するために、原水を濾過や殺菌等の処理した処理原水の補給管(図示せず)が接続される。
【0012】
UV装置12で殺菌された水は、管路13を介してタンク15に供給される。この管路13は殺菌済液体供給経路であって、この管路13にはバルブV3が設けられている。更に、管路13のバルブV3よりも上流側に分岐管路14が設けられている。この分岐管路14は殺菌された水を使用するための管路であり、分岐管路14にはバルブV4が設けられている。
UV装置12は、紫外線を照射することにより、内部を通過する水を殺菌する殺菌装置である。
【0013】
制御装置C1は、ポンプP1、流量計F1及びバルブV1,V2,V3,V4に接続している。制御装置C1は、バルブV1,V2の開閉と、流量計F1が計測した流量に応じたポンプP1の吐出量の調整とを制御することにより、UV装置12に供給する水量を調整する。更に、制御装置C1は、バルブV3,V4の開閉を制御することにより、UV装置12において殺菌した水の供給先を決定する。
【0014】
(タンクの構造)
次に、本実施形態の水殺菌システム10で用いるタンク15の構造について説明する。
タンク15は、円筒形状の容器である本体部15aを備える。この本体部15aの上端部には、管路13の端部が設けられている。更に、本体部15aの上部には、流入部としての流入管16が配置されている。この流入管16は、管路13に接続されている。流入管16は、最下部に設けられた混濁抑制部としての円板部17を備える。円板部17は、水を面内に拡散して散布する散布装置であって、水平に広がった中空部を有する。円板部17の底部には、吐出口となる複数の孔が形成されている。そして、これら複数の孔を介して、水が下方に霧状に落下し、水面W1に撒かれる(散水される)。
本体部15aの最下位置の底面には、管路11が接続されて排出部が形成されている。
【0015】
(殺菌方法)
次に、上述した水殺菌システム10の殺菌方法を説明する。
制御装置C1は、流量計F1で流速を計測しながら、ポンプP1を駆動し、バルブV1,V2を開く。これにより、本体部15aに貯留された水を、管路11を介してUV装置12に供給する。この場合、管路11は、本体部15aの底面に接続されているため、本体部15aの下部に位置する水がUV装置12に供給される。この水は、殺菌されてから時間が経過した水である。
【0016】
そして、制御装置C1は、バルブV3が開いて、UV装置12において殺菌された水を、管路13を介してタンク15に供給する。この場合、管路13を介してタンク15に供給された水は、流入管16の円板部17を介して、本体部15a内に貯蔵された水の液面(水面W1)に静かに降り注ぐように落下し、水面W1を大きく荒らすことなくタンク15の本体部15a内に流入する。本体部15a内には、水が上方から供給されるため、殺菌されてからの時間経過が少ない水が上方に蓄積される。そして、タンク15の本体部15aの底部に蓄積されて殺菌から時間が経過した水から、順次、UV装置12に供給される。
水を使用する場合には、制御装置C1は、バルブV3を閉じ、かつバルブV4を開いて、UV装置12で殺菌したばかりの水を、分岐管路14を介して供給する。
【0017】
図2は、殺菌した水と、タンク15内に蓄積した水との混濁を抑制した場合と、抑制しない(タンク15内に蓄積した水と完全混合する)場合の、殺菌効果を比較する。解りやすくするために、タンク15内に蓄積した水は、菌を含有する水とした。共通条件として、タンク15の容量を1000リットル(L)、UV装置12の処理能力を17L/分、タンク15内の水の初期菌濃度を100cfu/Lとした。図2中の実線は、本実施形態のタンク15のように、水面W1近くにおいて水を供給することにより、混濁を抑制した状態を示す。この場合、この図で示すように、混濁を抑制した状態では、60分(所定時間)で、タンク内に存在していた10万個の菌がほぼ「0」になっている。
【0018】
(作用)
水殺菌システム10のタンク15において、円板部17により、注入される殺菌水は面内に拡散して散布される。その結果、殺菌水は、一か所に偏ることなく、水面W1を不必要に乱さずに降り注ぐ。従って、殺菌直後の水と、殺菌されてから時間が経過した水とが混濁しない。
【0019】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、タンク15において、UV装置12において殺菌した水が、混濁を抑制した状態で、貯留された水面W1に静かに供給される。これにより、タンク15の本体部15a内の水は、殺菌したばかりの水と殺菌してから時間が経過した水が混濁せずに貯留される。そして、タンク15の本体部15aの底面からUV装置12に供給する水が排出されるため、殺菌から時間が経過して菌が増えた水がUV装置12に優先的に供給される。従って、タンク15に貯蔵されている水において、殺菌からの時間が経過した水を効率的に再び殺菌することができる。
【0020】
(2)本実施形態では、タンク15において、貯留された水の水面W1の上方において、供給された水が散布される。これにより、タンク15において、殺菌したばかりの水と殺菌してから時間が経過した水が混合しない構成を実現することができる。
【0021】
(3)本実施形態では、UV装置12により殺菌した水をタンク15に貯蔵する。これにより、加熱殺菌に比べて冷却の必要がなく、速やかに常温水を供給することができる。
【0022】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の水殺菌システム10では、タンク15において、本体部15aの上方に設けた円板部17の孔から殺菌された水を供給した。この場合、円板部17の吐出口と水面W1との距離を一定に維持することが好ましい。例えば、タンク15内に水面W1の高さ(水位)を検出する検出部を設け、水位情報を制御装置C1に供給する。制御装置C1は、水位を一定に保つように、補給管から管路11に供給する処理原水の量を調整する。
または、円板部17と水面W1との距離が一定となるように、水位の検知に応じて、円板部17の位置(高さ)を変更する移動機構を設けてもよい。
【0023】
・上記実施形態の水殺菌システム10のタンク15では、水面W1の上方で、供給された水を散布することにより、新たに供給された水と、タンク15内の水との混濁を抑制する。混濁の抑制方法は、散布に限られない。
【0024】
例えば、図3に示すように、供給される水が壁の内面を伝い落ちるように構成したタンク25を備えた水殺菌システム20としてもよい。具体的には、タンク25の本体部25aの上部には、管路13に接続された流入管26が配置される。この流入管26の下端部には、本体部25aの壁の内側面に端部が当接する混濁抑制部としての拡散部27が設けられている。これにより、UV装置12において殺菌された水は、管路13、本体部25aの流入管26の拡散部27を介して、本体部25aの壁の内側面に伝い落ちるように拡散して、貯留されている水の水面W1に至る。そして、タンク25の本体部25aの底部には、UV装置12に接続する管路11が設けられている。この場合、タンク25の本体部25a内における水の混濁を抑制するために、本体部25aの壁の内側面に沿って流れ落ちる水の流速を遅くする場合には、管路13のバルブV3の開弁状態を調整することが好ましい。
【0025】
・上記実施形態のタンク15においては、流入管16から流入される水を水面W1に散水して供給する円板部17を混濁抑制部として設けた。殺菌して新たにタンク15に供給される水と、既にタンク15内に貯留されている水との混濁を抑制する混濁抑制部は、流入される水を水面W1に混濁しないように供給する構成に限られない。例えば、タンク15に供給された水が貯蔵されている水と一体となった箇所から、タンク15の排出部までの距離を長くした流路を構成することにより、混濁を抑制する混濁抑制部を設けてもよい。
【0026】
例えば、図4に示すように、長い経路を備えたタンク35を有する水殺菌システム30としてもよい。このタンク35の本体部35a内において、水面W1に供給された水から、管路11が接続された流入管36の吐出口から本体部35aの底面部まで長い経路が区画されるように、複数の仕切板38を上下に互い違いに設ける。この仕切板38は、上面及び下面と連通する連通部を形成する仕切材である。そして、タンク35内において、仕切板38を通過することにより、水が通過する流路を長くする。これにより、UV装置12から供給された殺菌されたばかりの水は、管路11が接続された排出部まで遠いので、排出される水と混濁し難い。
【0027】
また、タンク内に、鉛直方向に複数の仕切板や管路を配置し、流入部側から排出部側に向けて、複数の流路を設けてもよい。この場合においても、流路の幅に対して、流路が長くなるため、殺菌直後のタンクに供給された液体と、タンクの排出部付近にある液体との混濁を抑制することができる。なお、タンク内に、少なくとも1つの仕切材を設ければ、タンク内において流入部から流入した液体を排出部から流出させる流路を細長く構成することができ、混濁を抑制することができる。
【0028】
・上記実施形態では、タンク15において貯蔵する水は、UV装置12を用いて殺菌した。タンクにおいて貯蔵する液体を殺菌する装置は、UV装置に限られず、例えば、加熱殺菌を用いた装置も利用可能である。
【0029】
・上記実施形態では、タンク15において貯蔵する液体として水を用いた。タンク15において貯蔵する液体は、水に限られず、殺菌した状態で保存する液体であればよい。
【符号の説明】
【0030】
C1…制御装置、F1…流量計、P1…ポンプ、V1,V2,V3,V4…バルブ、W1…水面、10,20,30…液体殺菌システムとしての水殺菌システム、11…殺菌対象液供給経路としての管路、13…殺菌済液体供給経路としての管路、12…殺菌装置としてのUV装置、14…分岐管路、15,25,35…液体容器としてのタンク、15a,25a,35a…本体部、16,26…流入部としての流入管、17…円板部、27…拡散部、38…仕切板。
図1
図2
図3
図4