(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】熱交換器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 9/26 20060101AFI20241106BHJP
F28F 9/18 20060101ALI20241106BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20241106BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
F28F9/26
F28F9/18
F28D1/053 A
B23K1/00 330K
(21)【出願番号】P 2021013098
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】大谷 優紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 武巳
(72)【発明者】
【氏名】宮川 幸大
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特許第3043050(JP,B2)
【文献】特開2018-189258(JP,A)
【文献】特開2019-138490(JP,A)
【文献】特開平10-339586(JP,A)
【文献】特開平08-086588(JP,A)
【文献】実開平04-115281(JP,U)
【文献】特開2001-059693(JP,A)
【文献】特開2011-214827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/00 - 9/26
F28D 1/00 - 13/00
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列方向及び段方向に配列された熱媒体を流通させる複数の伝熱管と、
前記列方向に配列された複数の前記伝熱管の端部がそれぞれ挿入される複数の挿入孔を有し、前記伝熱管が挿入されて前記列方向に前記熱媒体を連通させる連通流路を形成し、前記連通流路を前記段方向に複数配設する第1ヘッダ部材と、
前記第1ヘッダ部材の側面から前記第1ヘッダ部材の側面の内周面に嵌合され、前記段方向の複数の前記連通流路を閉塞する、前記段方向に配置された複数の突出した第1凸部
と、前記第1ヘッダ部材の外周面に接する複数の突出した第2凸部と、を有する第2ヘッダ部材と、
前記伝熱管に接触する複数のフィンと、
を備える熱交換器。
【請求項2】
前記第1ヘッダ部材は、波板形状の第1波板と、前記第1波板の谷部と接合される第2の板により前記段方向の複数の前記連通流路を形成し、前記第1波板又は前記第2の板は、複数の前記挿入孔を有することを特徴とする
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第2の板は波板形状であって、前記第1波板の谷部と前記第2の板の谷部とが接合されることを特徴とする
請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1ヘッダ部材は、筒形状に前記連通流路を形成し、複数の前記筒形状の前記連通流路が前記段方向に配設されることを特徴とする
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
列方向及び段方向に配列された熱媒体を流通させる複数の伝熱管と、
前記列方向に配列された複数の前記伝熱管の端部がそれぞれ挿入される複数の挿入孔を有し、前記伝熱管が挿入されて前記列方向に前記熱媒体を連通させる連通流路を形成し、前記連通流路を前記段方向に複数配設する第1ヘッダ部材と、
前記第1ヘッダ部材の側面から前記第1ヘッダ部材の側面の内周面に嵌合され、前記段方向の複数の前記連通流路を閉塞する、前記段方向に配置された複数の突出した第1凸部を有する第2ヘッダ部材と、
前記伝熱管に接触する複数のフィンと、
を備え、
前記第1ヘッダ部材の片側の側面は、前記第1凸部により閉塞され、他の側面は塞がったコップ形状であることを特徴とする
熱交換器。
【請求項6】
列方向及び段方向に配列された熱媒体を流通させる複数の伝熱管と、
前記列方向に配列された複数の前記伝熱管の端部がそれぞれ挿入される複数の挿入孔を有し、前記伝熱管が挿入されて前記列方向に前記熱媒体を連通させる連通流路を形成し、前記連通流路を前記段方向に複数配設する第1ヘッダ部材と、
前記第1ヘッダ部材の側面から前記第1ヘッダ部材の側面の内周面に嵌合され、前記段方向の複数の前記連通流路を閉塞する、前記段方向に配置された複数の突出した第1凸部を有する第2ヘッダ部材と、
前記伝熱管に接触する複数のフィンと、
を備え、
前記第2ヘッダ部材は前記段方向に、折り曲げられた折曲部を備えることを特徴とする
熱交換器。
【請求項7】
前記連通流路を形成する前記第1ヘッダ部材の前記内周面の断面及び前記第1凸部の断面の形状は、円、楕円、半円のいずれかであることを特徴とする請求項1から
請求項6のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項8】
列方向に配列された熱媒体を流通させる複数の伝熱管の端部を第1ヘッダ部材の複数の挿入孔に挿入させて前記列方向の前記熱媒体の連通流路を形成する工程と、
段方向に複数配置された突出した第1凸部及び第2凸部を有する第2ヘッダ部材において、前記第1凸部及び前記第2凸部によって前記第1ヘッダ部材の位置決めを行い、前記連通流路を
前記段方向に複数形成する前記第1ヘッダ部材の側面の内周面に、前記第1凸部をそれぞれ篏合させて、前記連通流路の側面を閉塞する工程と、
前記第1ヘッダ部材の前記側面の前記内周面と前記第2ヘッダ部材の前記第1凸部とを嵌合させた箇所をろう付けする工程と、
前記列方向及び前記段方向に配置された複数の前記伝熱管にフィンを組付ける工程と、を備える熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱媒体を流通させる複数の伝熱管を列方向及び段方向にそれぞれ配置させ、列方向に並列する伝熱管の端部を連結する連結ヘッダを備えた熱交換器が検討されている。伝熱管と連結ヘッダは互いに接合され製造される。
例えば特許文献1の熱交換器は、複数の筒状の部材が補強バーに取り付けられた連結ヘッダを備える。筒状の部材には、列方向に並ぶ2本の伝熱管の端部が挿入され、熱媒体を筒状の部材内の空間で連通させている。そして、伝熱管と連結ヘッダはろう付けにより接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の熱交換器は、複数の筒状の部材をそれぞれ補強バーに取り付ける必要があり、それぞれを位置決めするため煩雑であった。また複数の筒状の部材の列方向に挿入された伝熱管の向きにばらつきが生じる虞もあった。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであり、列方向及び段方向の伝熱管を簡単に位置精度よく配置させ、熱媒体を流通させることができる熱交換器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る熱交換器は、列方向及び段方向に配列された熱媒体を流通させる複数の伝熱管と、列方向に配列された複数の伝熱管の端部がそれぞれ挿入される複数の挿入孔を有し、伝熱管が挿入されて列方向に熱媒体を連通させる連通流路を形成し、連通流路を段方向に複数配設する第1ヘッダ部材と、第1ヘッダ部材の側面から第1ヘッダ部材の側面の内周面に嵌合され、段方向の複数の連通流路を閉塞する、段方向に配置された複数の突出した第1凸部と、第1ヘッダ部材の外周面に接する複数の突出した第2凸部と、を有する第2ヘッダ部材と、伝熱管に接触する複数のフィンとを備えたものである。
【0007】
また、本開示に係る熱交換器の製造方法は、列方向に配列された熱媒体を流通させる複数の伝熱管の端部を第1ヘッダ部材の複数の挿入孔に挿入させて列方向の熱媒体の連通流路を形成する工程と、段方向に複数配置された突出した第1凸部及び第2凸部を有する第2ヘッダ部材において、前記第1凸部及び前記第2凸部によって前記第1ヘッダ部材の位置決めを行い、連通流路を段方向に複数形成する第1ヘッダ部材の側面の内周面に、第1凸部をそれぞれ篏合させて、連通流路の側面を閉塞する工程と、第1ヘッダ部材の側面の内周面と第2ヘッダ部材の第1凸部とを嵌合させた箇所をろう付けする工程と、列方向及び段方向に配置された複数の伝熱管にフィンを組付ける工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、列方向に配列された複数の伝熱管が第1ヘッダ部材に挿入されて列方向に熱媒体を連通させる連通流路を形成するとともに、第1ヘッダ部材により連通流路が段方向に複数配設され、第1ヘッダ部材の側面の内周面に段方向に配置された第2ヘッダ部材の複数の突出した第1凸部を嵌合させることにより、第2ヘッダ部材で段方向の複数の連通流路が閉塞されるようにしたので、列方向及び段方向の伝熱管を簡単に位置精度よく配置させ、熱媒体を流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1の熱交換器の一部を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態1の熱交換器の一部を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1の熱交換器の一部を示す展開斜視図である。
【
図5】実施の形態1の熱交換器の一部を示す正面図である。
【
図6】実施の形態1の熱交換器の一部の切断部分の概略図である。
【
図7】実施の形態1の熱交換器の一部を示す断面図である。
【
図8】実施の形態1の熱交換器の一部を示す断面図である。
【
図9】実施の形態2の熱交換器の一部を示す展開斜視図である。
【
図10】実施の形態2の熱交換器の一部を示す正面図である。
【
図11】実施の形態2の熱交換器の一部を示す断面図である。
【
図12】実施の形態2の熱交換器の一部を示す断面図である。
【
図13】実施の形態2の熱交換器の一部を示す斜視図である。
【
図14】実施の形態2の熱交換器の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る熱交換器及び熱交換器の製造方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。図に示す直交座標系XYZにおいて、伝熱管が延在する方向を正面から背面に向かう方向としたときの、左右方向がX軸、上下方向がZ軸、X軸とZ軸とに直交する方向がY軸である。以下、適宜、この座標系を引用して説明する。また、X軸方向を段方向、Z軸方向を列方向とする。また、図では理解を容易にするため、連結ヘッダ周辺のみを図示し、熱媒体を供給、排出するための熱媒体管、継手、ろう材等を省略している。
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1における熱交換器1Aは、熱媒体を流通させる複数の伝熱管210が列方向及び段方向に配列され、列方向に配置された複数の伝熱管210の端部を連結する連結ヘッダ100Aを備える。以下、
図1及び
図2を参照して熱交換器1Aの構成について説明する。
図1は、熱交換器1Aの一部を示す斜視図である。
図2は、伝熱管210の斜視図である。
【0012】
図1に示すように、連結ヘッダ100Aは第1ヘッダ部材110Aと第2ヘッダ部材120Aとを備える。第1ヘッダ部材110Aは、列方向に配置された複数の伝熱管210の端部がそれぞれ挿入される複数の挿入孔112を有し、伝熱管210の挿入方向と垂直なZ軸方向に熱媒体を連通させる連通流路を形成する。第2ヘッダ部材120Aは、段方向に配置された連通流路の側面を両側から閉塞するように、第1ヘッダ部材110Aの内周面にそれぞれ篏合される段方向に配置された複数の突出した第1凸部121Aを有する。第2ヘッダ部材120Aは第1ヘッダ部材110Aの側面の両側に配置される。第1ヘッダ部材110Aと第2ヘッダ部材120Aとの位置は第1凸部121Aが第1ヘッダ部材110Aの内周面に篏合されることにより決定される。
【0013】
伝熱管210は、
図2に示すように、例えば正面視扁平状の断面である。ここで、扁平状とは、正面視で長手方向の両端が半円状に丸められた形状であり、例えば、正面視で平たい長円となる形状である。伝熱管210は、熱媒体を流すための流路となる内部空間を有する。内部空間は、伝熱性を高めるため、例えばY軸方向に延在しZ軸方向に並べられた複数の隔壁211によって仕切られている。伝熱管210の表面には、孔食による熱媒体の漏れを防ぐため、亜鉛を含む犠牲陽極層を設けるのが好ましい。
図1に示すように、複数の伝熱管210は、管軸がY軸方向に直線的に延在し、熱交換率を高めるため、互いの間に隙間を設けてX軸方向及びZ軸方向に配置される。
【0014】
伝熱管210は、熱媒体の熱を伝えるため、複数のフィン220と接触し接合されている。フィン220は、伝熱性を高めるため、例えば矩形状の板形状に形成される。厚さは、例えば0.05mm以下0.2mm以上程度である。
フィン220と伝熱管210は、熱媒体との熱交換率を高めるため、伝熱性に優れた例えばアルミニウム又はアルミニウム合金を材料として用いるとよい。また、フィン220は、使用環境に応じて防食、防汚、親水、撥水等のための表面処理を施すことが好ましい。
【0015】
図3から
図8を参照して、連結ヘッダ100Aについて説明する。
図3は、
図1に示すI領域で熱交換器1Aを切断したときの切断部分の斜視図である。
図4は、その切断部分の展開斜視図である。
図5は、
図3に示す切断部分の正面図である。
図6は、
図3に示す切断部分の概略図である。
図7は、
図5に示すII-II切断線での断面図である。
図8は、
図5に示すIII-III切断線での断面図である。
【0016】
図3に示すように、連結ヘッダ100Aは、例えば円筒状に形成されZ軸方向に延伸する連通流路をX軸方向である段方向に複数形成する。それぞれの連通流路には、列方向に複数の挿入孔112が設けられ、それぞれの挿入孔112に列方向に配置された伝熱管210が挿入される。図示しないが、挿入孔112の周縁にフランジを設けてもよい。フランジを設けることにより、伝熱管210と挿入孔112の接合面積を大きくすることができ、ろう付品質を向上させることができる。フランジは連結ヘッダ100Aの内側に設けてもよく、外側に設けてもよい。挿入された伝熱管210を流れる熱媒体は連結ヘッダ100Aが形成する連通流路を介して連通する。
【0017】
連結ヘッダ100Aは、第1ヘッダ部材110A及び第2ヘッダ部材120Aを備える。第1ヘッダ部材110Aは、例えば段方向に複数の連通流路を形成する2枚の波板が用いられる。例えば
図4に示すように、第1ヘッダ部材110Aは、第1波板111A及び第2波板113Aを備える。第1波板111A及び第2波板113Aは、波形状の曲率の大きい山部Mと、曲率の小さい谷部Vと、X軸方向端部の平滑部Fとを有する。第1波板111Aと第2波板113Aは、それぞれの谷部Vどうし及び平滑部Fどうしをそれぞれ貼り合わせ、段方向に複数の連通流路を形成する。
【0018】
第1ヘッダ部材110Aは、例えば伝熱性の良いアルミニウム、アルミニウム合金等で形成される。その表面には、亜鉛を含む犠牲陽極層を有してもよい。第1ヘッダ部材110Aは、伝熱管210と同材料を用いれば、伝熱管210との接合後のゆがみの発生を小さくすることができる。
【0019】
第1波板111Aの山部Mには、伝熱管210を挿入する挿入孔112が列方向に複数設けられている。挿入孔112に挿入された伝熱管210の端部の位置は、第1波板111Aの谷部Vと同じ高さであることが好ましい。この場合、第1波板111Aの内周面からの距離が確保できる。
挿入孔112に挿入された伝熱管210の端部の位置は、第1波板111Aの谷部Vと同じ高さに限定されない。例えば、伝熱管210と挿入孔112の接合に用いるろう材等が伝熱管210の端部に流れることにより、伝熱管210内の流路を塞ぐことを抑制する観点から、挿入量を確保するため第1波板111Aの谷部Vよりも深く挿入してもよい。伝熱管210の端部が第2波板113Aの距離が近づいて圧力損失が大きくなることを抑制する観点から、伝熱管210の端部を第1波板111Aの谷部Vより浅く挿入してもよい。
【0020】
図5に示すII-II切断線は、第1波板111Aと第2波板113Aが貼り合わされた谷部Vに沿っている。
図6に示す切断部分の概略図は、第1波板111Aと第2波板113Aの山部Mで切断した断面から連通流路内を覗いたものである。
図7はII-II切断線で切断した断面図である。
図5に示す伝熱管210のX軸方向の間隔を伝熱管ピッチTP、
図6に示す第1凸部121Aの第2ヘッダ部材120Aからの突出量を第1凸部高さEH1、第1ヘッダ部材110Aの厚さをT1、第2ヘッダ部材120Aの第1凸部121A以外の厚さをT2、挿入孔112の端から第1ヘッダ部材110Aの端部までの距離をL1、L2、
図7に示す第2凸部122Aの第2ヘッダ部材120Aからの突出量を第2凸部高さEH2とそれぞれ称する。
【0021】
第2ヘッダ部材120Aは第1ヘッダ部材110AのZ軸方向の両側に配置される。連通流路は、第1波板111Aと第2波板113Aにより形成され、第2ヘッダ部材120Aにより閉塞される。
図6に示すように、第2ヘッダ部材120Aは、連通流路に面する方向に突出し、段方向に配置された複数の第1凸部121Aを有し、第1凸部121Aは第1ヘッダ部材110Aの内周面に嵌合される。このように、複数の第1凸部121Aは段方向に配置された複数の連通流路を閉塞するように篏合されることにより、第1ヘッダ部材110Aと第2ヘッダ部材120Aの位置が決定される。
【0022】
第1凸部121Aは連結ヘッダ100Aが形成する連通流路の断面形状に凡そ沿った形状である。例えば略楕円形又は略円形で連通流路に面する方向であるZ軸方向に突出する形状である。第1凸部121Aの突出した凸部の側面は、連結ヘッダ100Aが形成する連通流路の側面の内周面と対面する位置にある。第1凸部高さEH1は、第1ヘッダ部材110Aと第2ヘッダ部材120Aとを位置決めし、接合された構成を保持できる高さであればよい。例えば、厚さT2に対して0.4以上2.5倍以下の範囲であれば、第1凸部121Aの側面と第1ヘッダ部材110Aの内周面をろう付けする際に、ろう付け面積を確保できるため第1ヘッダ部材110Aと第2ヘッダ部材120Aとを接合し易く好ましい。
【0023】
図7に示すように、第2ヘッダ部材120Aは、連通流路に面する方向であるZ軸方向に突出した複数の第2凸部122Aを備える。例えば対向する2つの第2凸部122Aは側面で第1ヘッダ部材110Aの外周面を挟み、第1ヘッダ部材110Aを固定する。第2凸部高さEH2は、第1ヘッダ部材110Aと第2ヘッダ部材120Aとを位置決めし、保持できる高さであればよい。例えば、厚さT2に対して0.4倍以上1倍以下の範囲で、第1凸部高さEH1と同等又は小さくするとよい。第2凸部122Aの形状は限定されないが、プレス成形により作製する場合は例えば略楕円形又は略円形とすれば成形性がよい。
【0024】
第1凸部121A及び第2凸部122Aはどちらも連通流路側に突出しており、その反対側はへこんでいる例を図示したが、連通流路側が突出していれば、その反対側の凹凸はなくてもよい。また、第1凸部121Aと第2凸部122Aを設ける例を図示したが、第1凸部だけでもよい。
【0025】
図8は、
図5に示すIII-III切断線での断面図である。III-III切断線は、第1凸部121A及び第2凸部122Aの突出した凸部の内部で切断している。第1波板111A及び第2波板113AのY軸方向の高さをそれぞれ第1波板高さWH1、第2波板高さWH2、第1波板111A及び第2波板113AのX軸方向の隣り合う波の間隔を波板ピッチWPと称する。
【0026】
第1波板高さWH1と第2波板高さWH2は異なっていてもよいが、第1波板高さWH1と第2波板高さWH2とを等しくすれば金型が共通化でき経済的である。また、波板ピッチWPに対して第1波板高さWH1と第2波板高さWH2の和が大きい場合、第1波板111Aと第2波板113Aの少なくともいずれかの山部Mを急峻にする必要があるが、挿入孔112を有する第1波板111Aの山部Mは緩やかにするのが好ましい。すなわち、第1波板111Aの山部Mの曲率を大きくするために第1波板高さWH1を小さくし、第2波板高さWH2を大きくして第2波板113Aを急峻にすればよい。波板ピッチWPは第1波板111Aと第2波板113Aで等しくなるようにすることで、連通流路が第1波板111A及び第2波板113Aの山部Mにより形成される。そして第2ヘッダ部材120Aの第1凸部121Aは第1波板111A及び第2波板113Aの山部Mに篏合される。波板ピッチWPと伝熱管ピッチTPは等しくするか伝熱管ピッチTPの整数倍となるようにすればよい。
【0027】
図8を用いて、第1凸部121Aによる連結ヘッダ100A及び段方向の伝熱管210の位置決め機構について説明する。第1凸部121AはX軸方向に第1凸部ピッチEP1で複数配列される。
【0028】
第1凸部ピッチEP1は波板ピッチWPと等しくなるように形成され、第1凸部121Aは連結ヘッダ100Aが形成する連通流路の断面形状に凡そ沿った形状である。そのため、第1波板111A及び第2波板113Aを貼り合わせる際に、複数の第1凸部121Aの側面に第1波板111A及び第2波板113Aの山部Mが沿うように配置し、第1ヘッダ部材110Aの内周面に第1凸部121Aを嵌合させる。このように、第1凸部121Aをガイドとすることにより、第2ヘッダ部材120Aに対する第1波板111A及び第2波板113Aの位置を容易に決定することができ、段方向に配置された連通流路の位置精度をよくすることができる。そして、連結ヘッダ100Aの段方向にそれぞれ配置された挿入孔112の位置が決定されているから、段方向に配置された複数の伝熱管210の位置も決定できる。
【0029】
第2ヘッダ部材120Aは、さらに第2凸部122Aを備えてもよい。第2凸部122Aは、X軸方向に第2凸部ピッチEP2で複数配列され、Y軸方向にも複数設けてもよい。第2凸部ピッチEP2は、波板ピッチWPと等しくするか整数倍の間隔とする。
第2凸部122Aの突出した凸部の側面は、例えば第1波板111A及び第2波板113Aの谷部と対面し、複数の第2凸部122Aによって、第1波板111Aと第2波板113Aが離れる方向であるY軸方向に動くことを抑制する。また、波板ピッチWPと第1凸部ピッチEP1及び第2凸部ピッチEP2はそれぞれ等しいか整数倍とすれば、X軸方向に第1波板111Aと第2波板113Aが動くことも抑制できる。さらに、第1波板111A及び第2波板113AはZ軸方向に加圧されても剛性が高いため、第1波板111Aの谷部と第2波板113Aの谷部が離れにくい。このように、第1波板111A、第2波板113A及び第2ヘッダ部材120Aの位置を容易に固定することができ、段方向に配置された連通流路の位置精度を向上することができる。そして、連結ヘッダ100Aの段方向にそれぞれ配置された挿入孔112の位置が決定されているため、段方向に配置された複数の伝熱管210の位置精度も向上することができる。
【0030】
次に、熱交換器1Aの製造方法について説明する。
まず、伝熱管210とフィン220の作製方法について説明する。上述した形状の伝熱管210を、例えば押し出し成形、引き抜き成形、曲げ加工等の加工方法により作製する。また、上述した形状の複数のフィン220を、例えばプレス加工により作製する。フィン220には、伝熱管210を嵌め合わせるための切り欠き部を形成する。材料は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金又はこれらの材料がクラッドされたクラッド材を用いる。その表面には、使用目的に応じて表面処理を施してもよい。
【0031】
次に、第1ヘッダ部材110Aと第2ヘッダ部材120Aを作製する。例えば第1ヘッダ部材110Aを2枚の波板で構成する場合、上述した厚さT1のアルミニウム、アルミニウム合金、又はこれらの材料がクラッドされたクラッド材の板金を、押出加工、プレス加工等により第1波板111A及び第2波板113Aを作製する。第1波板111A側に挿入孔112を設ける場合、挿入孔112は、あらかじめプレス加工、機械加工等により形成しておく。また、上述した厚さT2のアルミニウム、アルミニウム合金、又はこれらの材料がクラッドされたクラッド材の板金を、プレス加工等によって第2ヘッダ部材120Aを作製する。複数の第1凸部121Aは、例えばエンボス加工、ハーフピアス加工、半抜き加工、ダボ加工、絞り加工、鍛造等により加工する。第2凸部122Aを設ける場合は、同様に加工すればよい。また、必要に応じて、第1波板111A、第2波板113A及び第2ヘッダ部材120Aのそれぞれの表面にろう付けに用いられるろう材やフラックス等のろう付材料を塗布するとよい。ろう付材料は、第1波板111Aの挿入孔112周辺と、第1波板111A又は第2波板113Aいずれかの平滑部と谷部とに塗布すればよい。例えば第2ヘッダ部材120Aの第1凸部121A及び第2凸部122Aの側面に塗布してもよく、それ以外の部分にも塗布してもよい。材料にろう材をクラッドされたクラッド材を用いる場合は、ろう材がクラッドされた面にフラックスを塗布すればよい。その場合、フラックスは接合面の少なくとも1面に塗布すればよい。
【0032】
続いて、複数の伝熱管210を、管軸がY軸方向に直線的に延在するように配置し、列方向に配列された複数の伝熱管210の端部を第1ヘッダ部材110Aの複数の挿入孔112に挿入させて列方向の熱媒体の連通流路を形成する。次に、第1ヘッダ部材110Aにより段方向に列方向の連通流路を複数形成し、連通流路を形成する第1ヘッダ部材110Aの側面の内周面に、段方向に複数配置された第2ヘッダ部材120Aの第1凸部121Aをそれぞれ篏合させて、連通流路の側面を閉塞する。
【0033】
そして、第1ヘッダ部材110Aの側面の内周面と第2ヘッダ部材120Aの第1凸部121Aとが嵌合させた箇所をろう付けし、列方向及び段方向に配置された複数の伝熱管210にフィン220を組付けて熱交換器1Aを製造する。ここで、伝熱管210は第1ヘッダ部材110Aを第2ヘッダ部材120Aの第1凸部121Aに嵌合させた後、第1ヘッダ部材110Aの挿入孔112に挿入してもよい。また、列方向と段方向の伝熱管210を並べ、フィン220を組付けて熱交換ユニット200を作製した後で第1ヘッダ部材110Aの挿入孔112に挿入してもよい。
【0034】
このように、列方向に配列された複数の伝熱管210を第1ヘッダ部材110Aに挿入して列方向に連通流路を形成するとともに、第1ヘッダ部材110Aにより連通流路を段方向に複数配設する。さらに、第1ヘッダ部材110Aの側面の内周面に段方向に配置された第2ヘッダ部材120Aの複数の第1凸部121Aを嵌合させることにより、第2ヘッダ部材120Aで段方向の複数の連通流路を閉塞するようにすれば、列方向及び段方向の伝熱管210を簡単に位置精度よく配置させ、熱媒体を流通させることができる。
【0035】
また、第1波板111A、第2波板113A、第2ヘッダ部材120Aを仮組みして連結ヘッダ100Aを作製してもよい。例えば、第2ヘッダ部材120Aには複数の第1凸部121A及び第2凸部122Aを設け、これらをガイドとする。第1波板111A及び第2波板113Aを、第1凸部121A及び第2凸部122Aの凸面を有する面の上に配置する。その上に、もう一枚の第2ヘッダ部材120Aの第1凸部121A及び第2凸部122Aの凸面を有する面を下にして、上下の第2ヘッダ部材120Aを加圧して第1ヘッダ部材110Aの内周面に第2ヘッダ部材120Aの第1凸部121Aを篏合させる。
このように、第1凸部121A及び第2凸部122Aによって、第1波板111Aと第2波板113Aの位置決めをしてもよい。この場合、第2ヘッダ部材120Aを介して上下を加圧するだけで、固定できる。これにより、段方向に配置された連通流路の位置精度をよくすることができる。
【0036】
また、伝熱管210の挿入を仮組みした連結ヘッダ100Aの挿入孔112に挿入してもよい。すなわち、一つの連通流路には列方向に配置された伝熱管210が挿入され、段方向に配置された連通流路にそれぞれ段方向に配置されフィン220が組付けられた熱交換ユニット200の伝熱管210が挿入される。仮組された連結ヘッダ100Aは段方向に配置された連通流路の位置精度がよいため、連結ヘッダ100Aの段方向にそれぞれ配置された挿入孔112の位置も決定され、段方向に配置された複数の伝熱管210と連結ヘッダ100Aの位置精度を向上することができる。
その後又は各工程の間に必要に応じて、部品の接続部分にペーストろう、リングろう等のろう材を供給してろう付けする。図示しないが、この工程で連結ヘッダ100A以外に、熱交換ユニット200に接続される熱媒体管、継手等の部品を組立ててもよい。また、1つの連結ヘッダ100Aに対して第1波板111A及び第2波板113Aのそれぞれの山部Mの数すなわち連通流路の数が多いほど部品数が減少するため、連結ヘッダ100A及び熱交換器1Aの組立にかかる時間が削減でき経済的である。例えば1つの第1ヘッダ部材110Aと第2ヘッダ部材120Aとで複数の連通流路、例えば5個以上の連通流路を形成するのが好ましい。
【0037】
ろう付工程では、伝熱管210が挿入された連結ヘッダ100A及び熱交換ユニット200は、加熱され、ろう材が溶融し部品間の隙間に充填される。その後、冷却してろう材を凝固させる。これにより、段方向に配置された複数の伝熱管210と連結ヘッダ100Aの位置精度よくろう付けされ、熱交換器1Aが製造される。
【0038】
また、第2ヘッダ部材120Aに第1ヘッダ部材110Aの外周面に接する複数の突出した第2凸部122Aを設けることで、第1波板111Aと第2波板113Aが離れる方向であるY軸方向に動くことを抑制する。また、波板ピッチWPと第1凸部ピッチEP1及び第2凸部ピッチEP2はそれぞれ等しいか整数倍とする場合、X軸方向に第1波板111Aと第2波板113Aが動くことを抑制できる。これにより、第1波板111A、第2波板113A及び第2ヘッダ部材120Aを容易に位置決めすることができ、段方向に配置された連通流路の位置精度をよくすることができる。よって、連結ヘッダ100Aの段方向にそれぞれ配置された挿入孔112の位置も決定され、段方向に配置された複数の伝熱管210と連結ヘッダ100Aの位置精度をよくすることができる。
【0039】
また、第1ヘッダ部材110Aは第1波板111A及び第2波板113Aを貼り合わせる構成により、複数の連通流路を少ない部品で作製することができる。
【0040】
また、連結ヘッダ100Aを構成する第1ヘッダ部材110A及び第2ヘッダ部材120Aに位置決め機構がない場合、第1ヘッダ部材110Aと第2ヘッダ部材120Aとの位置がばらつき、ろう材が均一に充填されない。本実施の形態における熱交換器1Aの製造方法は、第1波板111A、第2波板113A及び第2ヘッダ部材120Aを仮組することで、位置精度よく連結ヘッダ100Aを作製できるため、ろう付け品質をよくすることができる。
また、第1凸部121A及び第2凸部122Aを有する第2ヘッダ部材120Aを介して第1波板111A及び第2波板113Aの上下を加圧するだけで、第1波板111Aと第2波板113Aの固定が可能である。そのため、ろう付の際の結束部品及び治具を減らすことができるため、結束部品及び治具の定期的な点検、修理及び交換が不要となり、経済的でろう付品質のよい連結ヘッダ100Aを備える熱交換器1Aを提供することができる。
【0041】
また、第2ヘッダ部材120Aの第1凸部121Aの側面と、第1ヘッダ部材110Aの内周面をろう付けすることで、ろう付け面積を大きくすることができる。さらに、ろう付時の重力方向がZ軸方向の負の方向である場合、L1よりもL2を長くすることで、伝熱管210のろう詰まりを抑制することができる。
【0042】
なお、
図1において、2列の伝熱管210により熱交換ユニット200を構成する例について説明したが、2列以上でもよい。また、1つの連通流路に2つの伝熱管210が挿入されている例について説明したが、3つ以上の伝熱管210が挿入されていてもよい。また
図2において、直線状の伝熱管210を用いる例について説明したが、伝熱管210をU字状としてもよい。
【0043】
また、1つの連結ヘッダ100Aに対して、それぞれ1枚ずつ第1波板111Aと第2波板113Aを用いる例について説明したが、複数枚で形成してもよい。第1波板111A及び第2波板113Aを用いて1つの連結ヘッダ100Aを形成する例を示したが、それぞれ複数枚用いて形成してもよい。また、第1波板111A及び第2波板113Aは両方が波板形状でなくてもよい。例えば山部Mが1つであってもよい。さらに、第2ヘッダ部材120AはX軸方向に複数分割してもよい。これにより、第1波板111A、第2波板113A、第2ヘッダ部材120Aそれぞれが小さくなるため、加工が容易になる。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態1では、第1ヘッダ部材110Aは第1波板111A及び第2波板113Aを備える例を示したが、実施の形態2の熱交換器1Bでは、筒形状の第1ヘッダ部材110B、110C、110Dを備える。以下、
図9―
図11を参照して、実施の形態2に係る熱交換器1Bを説明する。実施の形態2では、実施の形態1と異なる構成について説明する。
図9は、実施の形態2にかかる熱交換器1Bの一部を示す展開斜視図である。
図10は、実施の形態2に係る熱交換器1Bの一部を示す正面図である。
図11は、
図10に示すVI―VI切断線の切断面を図示している。
図10のVI―VI切断線は、第1凸部121Bの突出した凸部の内部で切断している。
【0045】
図9及び
図10に示すように、連結ヘッダ100Bは、実施の形態1と同様に、Z方向に延伸する連通流路が、X方向である段方向に複数配置される。実施の形態1では、第1波板111A及び第2波板113Aを貼り合わせた第1ヘッダ部材110Aを用いることで、複数の連通流路を形成していたが、実施の形態2では、1つの連通流路に対して1つの第1ヘッダ部材110Bを用いる。
【0046】
第1ヘッダ部材110BはZ方向に延伸する例えば円筒形状又は楕円筒形状であり、列方向に複数の挿入孔112を有し、列方向に配置された複数の伝熱管210を流れる熱媒体を連通させる。
【0047】
実施の形態1と同様に、第2ヘッダ部材120Bは、第1ヘッダ部材110BのZ軸方向の両側面を、閉塞するように配置され、連通流路に面する方向に突出した複数の第1凸部121Bを有する。第1凸部121Bは、第1ヘッダ部材110Bの内周面の断面に凡そ沿った形状であり、例えば円形状又は楕円形状である。
【0048】
次に、
図11を用いて、第1凸部121Bによる段方向に配置された複数の伝熱管210と連結ヘッダ100Bとの位置決め機構について説明する。
【0049】
第1凸部ピッチEP1は、伝熱管ピッチTPと等しいか伝熱管ピッチTPの整数倍なるように形成され、第1凸部121Bは連結ヘッダ100Bが形成する連通流路の断面形状に凡そ沿った形状である。上述の連結ヘッダ100Bを組み立てる工程において、複数の第1ヘッダ部材110Bの内周面に第2ヘッダ部材120Bの段方向に配置された複数の第1凸部121Bがそれぞれ篏合する。この際、段方向に複数設けられた第1凸部121Bにより、複数の第1ヘッダ部材110BのX軸方向及びY軸方向の位置が決まる。さらに、第1凸部121Bは連通流路の断面形状及び第1凸部121Bが楕円形状である場合は、Z軸方向の円周方向の回転も抑制することができ、位置決めが容易となる。したがって、段方向に配置された複数の第1ヘッダ部材110Bと第2ヘッダ部材120Bとの位置精度を向上することができ、段方向の複数の伝熱管210の位置精度も向上できる。
【0050】
さらに、
図12を用いて実施の形態2の変形例を説明する。
図12は本発明の実施の形態2に係る熱交換器1Bの変形例のVI―VI切断面での断面である。上述した実施の形態2の第1ヘッダ部材110Bは円筒形状又は楕円筒形状であるのに対し、この例は、第1ヘッダ部材110Cが略半円の外形を有する筒形状である。
【0051】
第1ヘッダ部材110Cは、断面形状が略半円の形状を有する筒形状である。第2ヘッダ部材120Cは、XY平面に対して略半円の断面形状を有する凸部である第1凸部121Cを有する。また、例えば円形状の断面を有する凸部である第2凸部122Cを有してもよい。複数の第1ヘッダ部材110Cの内周面に、複数の第1凸部121Cが篏合されることにより、X軸方向、Y軸方向及びZ方向の円周方向への回転を抑制することができ、段方向に配置された複数の第1ヘッダ部材110Cと第2ヘッダ部材120Cとの位置精度をよくすることができる。さらに、第1凸部121Cは第1ヘッダ部材110Cの内周面の断面形状に凡そ沿った略半円の断面形状とすることで、第1ヘッダ部材110Cの挿入孔112の位置が固定される。これにより、挿入孔112の位置が決まり、段方向に配置された複数の伝熱管210と連結ヘッダ100Cの位置精度をよくすることができる。挿入孔112の位置は、第1ヘッダ部材110Cの曲面側でも平面側でもよい。
【0052】
この例において、円筒形状又は楕円筒形状の第1ヘッダ部材110Bの両側面のみが
図12のような略半円の断面形状でもよい。つまり、伝熱管210が挿入される第1ヘッダ部材110Cの中央付近は、例えば円筒断面又は楕円筒形状であってもよい。
【0053】
さらに、変形例を説明する。
図13は、本発明の実施の形態2に係る熱交換器1Bの一部を示す斜視図である。
図13に示すように、第1ヘッダ部材110Dは、一側面は開口し、他側面は塞がったZ方向に延伸したコップ形状を有する。これにより、開口した一側面のみ複数の第1凸部121Dを有する第2ヘッダ部材120Dで閉塞すればよく、コップ形状の塞がった他側面への第2ヘッダ部材120Dの配置が不要となる。複数の第1ヘッダ部材110Dは一側面に配置した第2ヘッダ部材120Dの複数の第1凸部121Dで位置決めされるため、部品数を削減し経済的に熱交換器1Bを製造することが可能となる。
【0054】
第1ヘッダ部材110B、110Cの作製方法は、上述の連結ヘッダ100を作製する工程において、例えば押出成形、引き抜き成形、電縫加工等の加工方法により作製した円筒材料に、プレス加工又は機械加工により挿入孔112を形成する。必要に応じて、第1ヘッダ部材110B、110Cの両側面を加工して、所望の断面形状にしてもよい。第1ヘッダ部材110Dは、例えば絞り加工やインパクト成形によりコップ形状を形成し、プレス加工又は機械加工により挿入孔112を形成する。
【0055】
このような熱交換器1Bにおいては、列方向及び段方向にそれぞれ配置された複数の伝熱管210と、列方向に配置された複数の伝熱管210の端部がそれぞれ挿入される挿入孔112を有し、列方向に連通流路を形成する複数の筒形状の第1ヘッダ部材110B、110C、110Dと、複数の第1ヘッダ部材110B、110C、110Dの内周面に篏合する段方向に配置された複数の第1凸部121B、121C、121Dが設けられた第2ヘッダ部材120B、120C、120Dとを有する連結ヘッダ100Bが備えられる。そして、連結ヘッダ100Bを作製する際に、複数の第1ヘッダ部材110B、110C、110Dの内周面に第2ヘッダ部材120B、120C、120Dの段方向に設けられた複数の第1凸部121B、121C、121Dがそれぞれ篏合し、第1ヘッダ部材110B、110C、110D及び第2ヘッダ部材120B、120C、120Dを組み立てるため、第2ヘッダ部材120B、120C、120Dに対する複数の第1ヘッダ部材110B、110C、110Dの位置を容易に決定することができる。これにより、段方向に配置された連通流路の位置精度を向上でき、列方向及び段方向の伝熱管210を簡単に位置精度よく配置させ、熱媒体を流通させることができる。
【0056】
また、第1ヘッダ部材110B、110C、110Dを筒形状にすることにより、連通流路内の容積を狭くすることが可能となり、熱媒体の量を減らすことができる。
【0057】
なお、1つの第1ヘッダ部材110B、110C、110Dに対して1つの連通流路を有する例を示したが、複数の連通流路を一体に形成してもよい。これにより、連通流路の断面形状が第1ヘッダ部材110Bのように円形であっても、Z方向の円周方向の回転を防ぐことが可能である。また、部品数を削減することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。
実施の形態1、2では、第1凸部121及び第2凸部122の形状は例えば略楕円柱又は略円柱形状であって、XYでの断面は高さによらず一定として説明したが、突出する方向に断面積が減少するような円錐形状又は円錐台形状でもよい。この場合、第1凸部121の根元側は連通流路の断面よりも大きくするとよい。これにより、第2ヘッダ部材120に第1ヘッダ部材110を差し込むと、第1ヘッダ部材110の端部又は第2ヘッダ部材120の第1凸部121の、片方又は両方がつぶれて圧入することが可能となり、部品間の隙間が小さくなりろう付性が改善される。さらに、圧入した部分では摩擦力が生じるため、第2ヘッダ部材120を介した上下の加圧も不要になり、結束部品や治具を減らすことができる。
【0059】
実施の形態1、2では、1つの熱交換器1A、1Bに対して、1つの連結ヘッダ100がろう付されていた例にについて説明したが、1つの熱交換器1に対して複数の連結ヘッダ100がろう付されていてもよい。熱交換器1は多数の伝熱管210が配列されるため、それにろう付される連結ヘッダ100もX方向に長くなる可能性がある。連結ヘッダ100の1辺が長いと、連結ヘッダ100を作製する際に使用できる装置が制限される、ハンドリングが困難である等、加工難易度が高くなる虞がある。そこで、複数の連結ヘッダ100を用いることで1つ1つの連結ヘッダ100を小さくし、加工を容易にすることができる。
【0060】
また、製造工程において、変形を抑制するために、第2ヘッダ部材120に折曲部123を設けてもよい。
図14のように、例えば第2ヘッダ部材120の両端を折り曲げた折曲部123を段方向に設けることで、第2ヘッダ部材120の剛性が向上し、変形を抑制することができる。また、第2ヘッダ部材120の連通流路を閉塞する部分以外に穴を設けて軽量化してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、1A、1B 熱交換器、100、100A、100B 連結ヘッダ、110、110A、110B、110C、110D 第1ヘッダ部材、111A 第1波板、112 挿入孔、113A 第2波板、120、120A、120B、120C、120D 第2ヘッダ部材、121、121A、121B、121C、121D 第1凸部、122、122A、122C 第2凸部、123 折曲部、200、200A、200B 熱交換ユニット、210 伝熱管、211 隔壁、220 フィン