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特許7581940超音波診断装置、設定制御方法および設定制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】超音波診断装置、設定制御方法および設定制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021019069
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022122023
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 亮汰
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智仁
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-178905(JP,A)
【文献】特開平09-192130(JP,A)
【文献】特開平06-022965(JP,A)
【文献】特開平06-103364(JP,A)
【文献】特開2010-154980(JP,A)
【文献】特開2010-068904(JP,A)
【文献】特開2020-130736(JP,A)
【文献】特開2015-181907(JP,A)
【文献】特開平06-090052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動子がアレイ状に配置された超音波プローブを駆動することで被検体の超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
前記超音波画像の関心領域を設定する設定部と、
設定された前記関心領域の位置に応じて、1回のスキャンにおける前記超音波プローブのスキャン方式を異ならせて設定するスキャン制御部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記スキャン制御部は、前記超音波プローブにおけるスキャン可能範囲で前記関心領域が設定される場合、前記関心領域の設定前よりも、前記関心領域内の音響線の密度が高くなるように前記関心領域の設定後における前記スキャン方式を設定する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記スキャン制御部は、前記関心領域の位置に応じて、前記複数の振動子に係る各音響線のうち、隣り合う2つの音響線の音響線間角度の設定方法を変更する、
請求項1または請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記スキャン制御部は、
前記各音響線と各振動子の面とが交差するビーム発点を通る接線と、前記ビーム発点に対応する音響線とが垂直に交差する第1スキャン方式と、
前記第1スキャン方式とは異なるスキャン方式であり、前記各音響線が所定点で交差する第2スキャン方式と、
を設定可能であり、
前記関心領域の位置に応じて、前記第1スキャン方式および前記第2スキャン方式の何れかを選択する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記スキャン制御部は、
前記各音響線と各振動子の面とが交差するビーム発点を通る接線と、前記ビーム発点に対応する音響線とが垂直に交差する第1スキャン方式と、
前記超音波プローブの振動子面のスキャン方向の中央を通る法線と、前記各音響線とが交差する点を複数にする第3スキャン方式と、
を設定可能であり、
前記関心領域の位置に応じて、前記第1スキャン方式および前記第3スキャン方式の何れかを選択する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記スキャン制御部は、
前記超音波プローブの振動子面のスキャン方向の中央を通る法線と、前記各音響線とが交差する点を複数にする第3スキャン方式を設定可能であり、
前記関心領域の位置に応じて、前記音響線間角度を決定するパラメーターを変更する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記スキャン制御部は、
前記各音響線と各振動子の面とが交差するビーム発点を通る接線と、前記ビーム発点に対応する音響線とが垂直に交差する第1スキャン方式と、
前記第1スキャン方式とは異なるスキャン方式であり、前記各音響線が所定点で交差する第2スキャン方式と、
前記超音波プローブの振動子面のスキャン方向の中央を通る法線と、前記各音響線とが交差する点を複数にする第3スキャン方式と、
の少なくとも2つを設定可能であり、
前記関心領域の位置に応じて、前記少なくとも2つの何れかを選択する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記超音波診断装置は、前記超音波プローブの振動子面のスキャン方向における幅よりも広い広視野範囲に係る超音波画像を生成可能であり、
前記スキャン制御部は、前記広視野範囲に係る超音波画像が生成される場合において設定された関心領域の位置に応じて前記スキャン方式を設定する、
請求項1~7の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
超音波画像の関心領域内を拡大表示する信号を出力する表示処理部と、
前記表示処理部の信号に基づいて前記超音波画像を表示する表示部と、
を備える、
請求項1~8の何れか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
複数の振動子がアレイ状に配置された超音波プローブを駆動することで被検体の超音波画像を生成する超音波診断装置の設定制御方法であって、
前記超音波画像の関心領域を設定し、
設定された前記関心領域の位置に応じて、1回のスキャンにおける前記超音波プローブのスキャン方式を異ならせて設定する、
設定制御方法。
【請求項11】
複数の振動子がアレイ状に配置された超音波プローブを駆動することで被検体の超音波画像を生成する超音波診断装置設定制御プログラムであって、
コンピューターに、
前記超音波画像の関心領域を設定する第1処理と、
設定された前記関心領域の位置に応じて、1回のスキャンにおける前記超音波プローブのスキャン方式を異ならせて設定する第2処理と、
を実行させる設定制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置、設定制御方法および設定制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医用画像診断装置の一つとして、超音波を被検体に向けて送信し、その反射波を受信して受信信号に所定の信号処理を行うことにより、被検体内部の形状、性状または動態を超音波画像として可視化する超音波診断装置が知られている。超音波診断装置は、超音波プローブを体表に当てる、または、体内に挿入するという簡単な操作で超音波画像を取得することができるので、安全であり、被検体にかかる負担も小さい。
【0003】
電子スキャン方式の超音波診断装置では、例えば、複数の振動子をアレイ状に配置した超音波プローブ(いわゆるアレイプローブ)を用いて、各振動子の駆動タイミングを電子的に変化させることにより、超音波のビーム方向および超音波の形状を制御できるフェーズドアレイ技術が利用される。電子スキャン方式では、連続する複数の振動子からなる振動子群を、振動子の配列方向に順次シフトして駆動することにより、振動子の配列方向(以下、「スキャン方向」と称する)に沿って診断対象をスキャンすることができる。
【0004】
また、電子スキャン方式の一例として、超音波のビーム方向を変化させる台形スキャン(トラペゾイドスキャン)が実用化されている。このような台形スキャンを行うことにより、複数の振動子の全体幅よりも広い範囲のスキャンをすることが可能となるので、超音波診断装置における診断領域を拡大することができる。
【0005】
ところで、超音波診断装置で生成する超音波画像の一部の領域を関心領域として設定する場合がある。関心領域の部分は、例えば、ユーザーが超音波画像の中で詳細な観察を求める部分であることを考慮すると、高解像度化した画像であることが望まれる。
【0006】
例えば、特許文献1には、関心領域内の走査線数を増加させる制御を行うことで、当該関心領域の画質の向上を図っている。また、特許文献2には、超音波画像の拡大時に、各走査線上のサンプリング点の数を増やしたり、走査線の密度を上げる等して、超音波画像の拡大時のぼやけを抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-217981号公報
【文献】特開2011-239906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2のように領域内の音響線(走査線)の数を増やすような構成であると、設定可能な関心領域の範囲が限定されやすい。関心領域は、被検者に応じて様々な箇所に設定される可能性がある。特に、上記の台形スキャンを行う場合、隣り合う2つの超音波間の音響線間角度が通常のスキャンを行うよりも広くなるので、関心領域の位置の設定範囲も広くなる。そのため、特許文献1,2に記載の構成であると、関心領域の位置によっては、その関心領域に係る画像を生成できないおそれがあった。
【0009】
本発明の目的は、様々な関心領域位置に対応することが可能な超音波診断装置、設定制御方法および設定制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る超音波診断装置は
複数の振動子がアレイ状に配置された超音波プローブを駆動することで被検体の超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
前記超音波画像の関心領域を設定する設定部と、
設定された前記関心領域の位置に応じて、1回のスキャンにおける前記超音波プローブのスキャン方式を異ならせて設定するスキャン制御部と、
を備える。
【0011】
本発明に係る設定制御方法は、
複数の振動子がアレイ状に配置された超音波プローブを駆動することで被検体の超音波画像を生成する超音波診断装置の設定制御方法であって、
前記超音波画像の関心領域を設定し、
設定された前記関心領域の位置に応じて、1回のスキャンにおける前記超音波プローブのスキャン方式を異ならせて設定する。
【0012】
本発明に係る設定制御プログラムは、
複数の振動子がアレイ状に配置された超音波プローブを駆動することで被検体の超音波画像を生成する超音波診断装置設定制御プログラムであって、
コンピューターに、
前記超音波画像の関心領域を設定する第1処理と、
設定された前記関心領域の位置に応じて、1回のスキャンにおける前記超音波プローブのスキャン方式を異ならせて設定する第2処理と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、様々な関心領域位置に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る超音波診断装置の外観を示す図である。
図2】超音波プローブにおけるスキャン可能範囲の一例を示す図である。
図3】超音波診断装置の制御系の主要部を示すブロック図である。
図4】音響線角度を説明するための図である。
図5】トラペゾイドスキャンにおけるスキャン可能範囲の一例を示す図である。
図6】スキャン方式によって音響線間角度が異なることを説明するための図である。
図7】制御部におけるスキャン方式の設定制御の動作例の一例を示すフローチャートである。
図8】偏向角変動係数の値を決定するための関数の一例を示す図である。
図9】偏向角変動係数の値によって音響線間角度が異なることを説明するための図である。
図10】偏向角変動係数の値を決定するための関数の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る超音波診断装置Aの外観を示す図である。図2は、超音波プローブ2におけるスキャン可能範囲の一例を示す図である。図3は、超音波診断装置Aの制御系の主要部を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、超音波診断装置Aは、超音波診断装置本体1および超音波プローブ2を備える。超音波診断装置本体1と超音波プローブ2は、ケーブル3を介して接続される。なお、超音波プローブ2は、超音波診断装置本体1と無線通信を介して接続されてもよい。
【0018】
超音波診断装置Aは、被検体内の形状、性状または動態を超音波画像として可視化し、画像診断するために用いられる。超音波診断装置Aは、表示モードとして、Bモード画像のみを表示させるBモードを有する。なお、超音波診断装置Aは、Bモード画像上にカラードプラ法によって得られるCFM(Color Flow Mapping)画像を重畳して表示させるCFMモードを有していてもよい。
【0019】
超音波プローブ2は、被検体に対して超音波を送信するとともに、被検体で反射された超音波エコーを受信し、受信信号に変換して超音波診断装置本体1に送信する。超音波プローブ2は、電子スキャン方式に対応可能なプローブであり、例えば、リニアプローブ、コンベックスプローブまたはセクタプローブを適用することができる。本実施の形態では、超音波プローブ2として、より広い診断領域に対応可能なもの(例えばコンベックスプローブ)を適用した場合について説明する。
【0020】
図2に示すように、超音波プローブ2は、振動子アレイ23を有している。振動子アレイ23は、スキャン方向に配置された複数の振動子231により構成される。
【0021】
複数の振動子231は、振動子面Sが円弧上に並ぶように配列される。そのため、スキャン方向は、振動子面Sによって構成される円弧に沿う方向(例えば、図示における反時計回り方向)となる。このような振動子アレイ23により、超音波診断装置Aにおける診断領域Rは、扇形状の領域となる。なお、図2では、複数の振動子231のそれぞれを曲線でつないだ線で示している。
【0022】
超音波プローブ2によれば、駆動する振動子231をスキャン方向に順次切り替えることにより、超音波をスキャン方向に収束させることができる(いわゆる電子フォーカス)。
【0023】
なお、診断領域Rには、振動子231の数に対応した音響線が通るが、図2では、図面の見易さを考慮して超音波の音響線は2本のみ示している。また、図2に示される2本の音響線は、複数の振動子231のうち、スキャン方向で隣り合う2つの振動子231に対応するものである。
【0024】
超音波診断装置本体1は、超音波プローブ2からの受信信号を用いて、被検体の内部状態を超音波画像として可視化する。図3に示すように、超音波診断装置本体1は、送信部11、受信部12、Bモード信号処理部14、表示処理部15、表示部16、操作入力部17、および制御部40等を備える。
【0025】
送信部11、受信部12、Bモード信号処理部14および表示処理部15は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)等の、各処理に応じた少なくとも一つの専用ハードウェア(電子回路)で構成される。
【0026】
制御部40は、演算/制御装置としてのCPU(Central Processing Unit)、主記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を有する。ROMには、基本プログラムや基本的な設定データが記憶される。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムを実行することにより、超音波診断装置本体1の各機能ブロック(送信部11、受信部12、Bモード信号処理部14、表示処理部15および表示部16)の動作を集中制御する。
【0027】
本実施の形態では、機能ブロックを構成する各ハードウェアと制御部40とが協働することにより、各機能ブロックの機能が実現される。なお、制御部40がプログラムを実行することにより、各機能ブロックの一部または全部の機能が実現されるようにしてもよいし、それぞれの機能ブロックが、プログラムを実行可能な構成を有していてもよい。
【0028】
制御部40は、超音波画像の関心領域を設定する設定部41と、超音波プローブ2のスキャン方式を設定するスキャン制御部42とを有する。関心領域は、超音波画像の一部の領域であり、例えば、観察者(ユーザー)が超音波診断装置Aの診断領域の中で詳細な観察を求める部分となる領域である。
【0029】
スキャン方式としては、通常スキャン方式(以下、通常スキャン)と、トラペゾイドスキャン方式(以下、トラぺゾイドスキャン)とが挙げられる。通常スキャンおよびトラペゾイドスキャンにおいては、送受信する音響線角度θがスキャン条件に含まれる。
【0030】
図4に示すように、音響線角度θは、音響線ALと振動子面Sの中心法線NVとのなす角である。音響線ALは、各振動子231の各ビームの中心線である。中心法線NVは、振動子面Sの円弧の中心であるプローブ原点Oと、振動子面Sが構成する円弧のスキャン方向の中央の位置Pを通る法線である。
【0031】
音響線角度θは、各振動子231のビーム発点L毎に設定され、中心法線NVを基準として符号(±)付の角度で表される。具体的には、音響線角度θは、例えば中心法線NVに対して右側を+の符号を付けて表され、中心法線NVに対して左側を-の符号を付けて表される。また、ビーム発点Lとは、超音波の音響線ALと振動子面Sとが交差する点である。
【0032】
通常スキャンは、プローブ原点Oを基準としたスキャン方式(第1スキャン方式)である。通常スキャンでは、ビーム発点Lを通る接線と、ビーム発点Lに対応する音響線AL1とが垂直に交差しており、各振動子231の音響線AL1がプローブ原点O(第1所定点)で交差する。また、複数の振動子231は、等間隔に並べられているので、隣り合う2つの音響線ALの音響線間角度Δθが全て等しくなっている。音響線間角度Δθは、スキャン方向における上流側の音響線ALと、下流側の音響線ALとがなす角度である。
【0033】
トラペゾイドスキャンは、例えば、中心法線NV上の仮想原点VOを基準としたスキャン方式である。トラペゾイドスキャンでは、例えば、所定の振動子231Aにおける音響線AL2と中心法線NVとが交差する点が仮想原点VOとなる。
【0034】
トラペゾイドスキャンでは、仮想原点VOがプローブ原点Oからずれるため、音響線間角度Δθが、各音響線間で一様になりにくい。例えば、仮想原点VOをプローブ原点Oに対して振動子231側(-側)にずらした場合、音響線間角度Δθが、通常スキャンよりも広がりやすくなる(図5等参照)。そのため、トラペゾイドスキャンでは、通常スキャンよりも診断領域を拡大することが可能となる。つまり、超音波診断装置Aは、超音波プローブ2の振動子面Sのスキャン方向における幅よりも広い広視野範囲に係る超音波画像を生成可能である。
【0035】
ここで、所定の振動子231Aにおける仮想原点VOの位置PO(以下、仮想原点位置PO)と音響線角度θとの間には、以下の式(1)の関係が成り立つ。仮想原点位置POは、仮想原点VOと振動子面Sの中央の位置Pとの距離で表される。
θ=arctan[CR×sinθ/{PO-CR×(1-cоsθ)}] ・・・(1)
CRは、振動子面Sが構成する円弧の半径に対応する長さである。θは、所定の振動子231Aにおいて通常スキャンの場合の音響線角度である。なお、上記のスキャン条件には、音響線角度θに代えて仮想原点位置POが用いられても良い。
【0036】
また、仮想原点VOは、中心法線NV上の任意の位置、または、後述する関数に基づく位置となる。スキャン制御部42におけるスキャン方式の設定制御については後述する。
【0037】
図3に示すように、送信部11は、制御部40の指示に従って、送信信号(駆動信号)を生成して、超音波プローブ2に出力する。具体的には、送信部11は、制御部40によって設定されたスキャン方式に基づいて、超音波プローブ2の駆動を制御する。図示を省略するが、送信部11は、例えば、クロック発生回路、パルス発生回路、パルス幅設定部及び遅延回路を有する。
【0038】
クロック発生回路は、パルス信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる。パルス発生回路は、所定の周期で予め設定された電圧振幅のバイポーラー型の矩形波パルスを発生させる。パルス幅設定部は、パルス発生回路から出力される矩形波パルスのパルス幅を設定する。パルス発生回路で生成された矩形波パルスは、パルス幅設定部への入力前又は入力後に、超音波プローブ2の個々の振動子231ごとに異なる配線経路に分離される。遅延回路は、生成された矩形波パルスを、振動子231ごとの駆動タイミングに応じて遅延させ、超音波プローブ2に出力する。
【0039】
振動子231の駆動タイミングを制御することで、1回のスキャンで送信される複数の超音波の音響線角度θを異ならせることができる。
【0040】
受信部12は、制御部40の指示に従って、超音波プローブ2からの受信信号を受信し、Bモード信号処理部14へ出力する。図示を省略するが、受信部12は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を有する。
【0041】
増幅器は、超音波プローブ2の各振動子231により受信された超音波に応じた受信信号を予め設定された所定の増幅率でそれぞれ増幅する。A/D変換回路は、増幅された受信信号を所定のサンプリング周波数でデジタルデータに変換する。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子231に対応した配線経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)する。
【0042】
Bモード信号処理部14は、制御部40の指示に従って、受信部12からのBモード画像用の受信データに、包絡線検波処理、対数圧縮処理等を施して、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することで、Bモード画像データを生成する。
【0043】
表示処理部15は、制御部40の指示に従って、Bモード信号処理部14において生成された画像データを、表示部16に対応する表示信号に変換して出力し、表示部16にBモード画像を表示させる。なお、表示処理部15は、超音波プローブ2の種類に応じた座標変換及び画素補間を行うDSC(Digital Scan Converter)を含む。
【0044】
また、表示処理部15は、操作入力部17等から関心領域を拡大表示する指令を受けた場合、関心領域に対応する画像データを拡大表示する表示信号を表示部16に出力する。
【0045】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTディスプレイ等で構成される。表示部16は、制御部40の指示に従って、表示処理部15からの表示信号に基づいて画像を表示する。
【0046】
操作入力部17は、例えば、診断に関する情報の入力を受け付ける。操作入力部17は、例えば、複数の入力スイッチを有する操作パネル、キーボード、及びマウス等を有する。ユーザーは、操作入力部17を介して、関心領域、診断部位、超音波プローブ2の種類等を設定することができる。
【0047】
なお、表示部16および操作入力部17の少なくとも一方には、超音波診断装置本体1と通信可能に接続された外部装置(例えば、タブレット端末)を適用することもできる。
【0048】
次に、スキャン制御部42におけるスキャン方式の設定制御の詳細について説明する。
【0049】
スキャン制御部42は、設定部41により設定された関心領域の位置(以下、関心領域位置)に応じて超音波プローブ2のスキャン方式を設定する。設定部41による関心領域の設定は、例えば操作入力部17がユーザーによって操作されること等により行われる。
【0050】
具体的には、スキャン制御部42は、広視野範囲に係る超音波画像が生成される場合において設定された関心領域位置に応じてスキャン方式を設定する。スキャン制御部42は、超音波プローブ2におけるスキャン可能範囲で、関心領域が設定される場合、関心領域の設定前よりも、関心領域内の音響線の密度が高くなるように関心領域の設定後におけるスキャン方式を設定する。
【0051】
スキャン可能範囲は、超音波診断装置Aにおける診断可能な領域の最大範囲となる範囲である。図5に示すように、トラペゾイドスキャンでは、仮想原点VOを、通常スキャンのプローブ原点Oと比べて-側(下側)に位置させる場合がある。この場合、スキャン方向の端部の振動子231への音響線AL21が、通常スキャンにおける当該端部の振動子231への音響線AL11よりも上側に位置する。つまり、トラペゾイドスキャンでは、診断領域Rの扇形状(R2の部分)を通常スキャンの診断領域の扇形状(図2におけるR1の部分)よりも拡大することが可能となっている。
【0052】
トラペゾイドスキャンには、仮想原点固定式の方式(以下、固定式)と、仮想原点移動式の方式(以下、移動式)との2種類のスキャン方式が存在する。
【0053】
固定式のトラペゾイドスキャン(第2スキャン方式)は、通常スキャン方式とは異なるスキャン方式であり、1回のスキャンにおいて仮想原点VOの位置が固定されたスキャン方式である。固定式のトラペゾイドスキャンでは、通常スキャンのプローブ原点O(振動子面Sの円弧の中心)の位置とは異なる位置に仮想原点VOが設定されており、仮想原点VOで各音響線が交差する。
【0054】
移動式のトラペゾイドスキャン(第3スキャン方式)は、通常スキャン方式とは異なるスキャン方式であり、1回のスキャンにおいて仮想原点VOの位置が移動するスキャン方式である。移動式のトラペゾイドスキャンでは、振動子231毎に仮想原点位置POが変動する。つまり、移動式のトラペゾイドスキャンでは、上記の中心法線NVと各音響線とが交差する点が複数になる。
【0055】
移動式のトラペゾイドスキャンにおける音響線角度θは、以下の式(2)および式(3)の関数で表される。
【0056】
θ=sgn(L)×β×|CR×sinθα ・・・(2)
PO=(CR×sinθ)/tan{sgn(L)×β×|CR×sinθα}+CR×(1-cоsθ) ・・(3)
sgn(L):ビーム発点の符号
α、β:偏向角変動係数
【0057】
ここで、偏向角変動係数α、βは、音響線間角度Δθを制御するための特性値であり、αを定数とし、スキャン方向の最下流側の端部に位置する振動子231のビーム発点L、および、これに対応する音響線角度θを規定すると、βが求まる関係を有している。
【0058】
上記のようなトラペゾイドスキャンを用いることで、超音波診断装置Aのスキャン可能範囲が、通常スキャンの第1診断領域R1(図2参照)よりも広い第2診断領域R2まで拡大することが可能となり、ひいては広視野範囲に係る超音波画像を生成することが可能となる。
【0059】
また、図6に示すように、トラペゾイドスキャンにおける音響線間角度Δθは、通常スキャンにおける音響線間角度Δθよりも広くなりやすい。図6におけるAL12で囲まれた領域は、通常スキャンにおける2つの隣り合う振動子231に係る音響線で挟まれた領域であり、AL22で囲まれた領域は、トラペゾイドスキャンにおける当該振動子231に係る音響線で挟まれた領域である。
【0060】
このように、音響線間角度Δθが広くなるトラペゾイドスキャンでは、通常スキャンよりも、診断領域における音響線の密度が低いので、通常スキャンにおける診断領域での画像データよりも、トラペゾイドスキャンにおける診断領域での画像データの画質が悪くなることとなる。
【0061】
スキャン制御部42は、関心領域位置に応じて音響線間角度Δθの設定方法を変更する。具体的には、スキャン制御部42は、関心領域位置に応じて通常スキャンおよびトラペゾイドスキャンの何れかを選択する。
【0062】
ここで、超音波診断装置Aが、通常スキャンと、プローブ原点Oよりも-側に位置する仮想原点VOを基準とした固定式のトラペゾイドスキャンとの2通りのスキャン方式を適用可能であるとする。
【0063】
この超音波診断装置Aを用いて、トラペゾイドスキャンを適用して、第1診断領域R1よりも広い第2診断領域R2での診断が行われた際に、第2診断領域R2において関心領域が設定されたとする。
【0064】
例えば、関心領域位置が第2診断領域R2における第1診断領域R1を含む部分(I1の領域)に設定された場合、この領域における関心領域位置では、通常スキャンおよびトラペゾイドスキャンの2通りのスキャン方式を適用することが可能である。
【0065】
スキャン制御部42は、設定された関心領域位置において2つ以上のスキャン方式を適用可能である場合、音響線密度が最も高いスキャン方式を選択する。
【0066】
診断領域が拡大されるトラペゾイドスキャンの場合、それぞれの音響線間角度Δθが通常スキャンの音響線間角度Δθよりも広くなりやすいので、関心領域が第1診断領域R1内に位置すると、通常スキャンを適用した方が関心領域I1内の音響線密度が高くなる。そのため、スキャン制御部42は、通常スキャンをスキャン方式として設定する。
【0067】
また、関心領域位置が第2診断領域R2における端部位置(I2の領域)に設定された場合、この領域における関心領域位置では、通常スキャンの範囲外となるため、トラペゾイドスキャンのスキャン方式のみを適用することが可能である。そのため、スキャン制御部42は、トラペゾイドスキャンをスキャン方式として設定する。
【0068】
次に、制御部40におけるスキャン方式の設定制御を実行するときの動作例について説明する。図7は、制御部40におけるスキャン方式の設定制御の動作例の一例を示すフローチャートである。図7における処理は、例えば、超音波診断装置Aがトラペゾイドスキャンによる診断の実行中に適宜実行される。
【0069】
図7に示すように、制御部40は、関心領域位置が設定されたか否かについて判定する(ステップS101)。判定の結果、関心領域位置が設定されていない場合(ステップS101、NO)、処理はステップS105に遷移する。
【0070】
一方、関心領域位置が設定された場合(ステップS101、YES)、制御部40は、関心領域位置が通常スキャンの範囲内であるか否かについて判定する(ステップS102)。
【0071】
判定の結果、関心領域位置が通常スキャンの範囲内である場合(ステップS102、YES)、制御部40は、スキャン方式を通常スキャンに設定する(ステップS103)。一方、関心領域位置が通常スキャンの範囲内ではない場合(ステップS102、NO)、制御部40は、スキャン方式をトラペゾイドスキャンに設定する(ステップS104)。
【0072】
ステップS103またはステップS104の後、制御部40は、超音波診断装置Aにおける診断が終了したか否かについて判定する(ステップS105)。判定の結果、診断が終了していない場合(ステップS105、NO)、処理はステップS101に戻る。一方、診断が終了した場合(ステップS105、YES)、本制御は終了する。
【0073】
以上のように構成された本実施の形態によれば、関心領域位置に応じてスキャン方式を設定するので、適切なスキャン方式により、関心領域位置をスキャンすることができる。
【0074】
具体的には、制御部40が、スキャン方向の端部位置よりも中央側の位置に関心領域位置が設定される場合、関心領域内の音響線の密度が高くなるようにスキャン方式を設定するので、中央側においての関心領域の画質を向上させることができる。また、スキャン方向の端部位置においては、当該端部位置の範囲に対応したスキャン方式(トラペゾイドスキャン)が設定されるので、関心領域の画像データを確実に確保することができる。
【0075】
すなわち、本実施の形態では、関心領域の画質を向上させつつ、様々な関心領域位置に対応することができる。
【0076】
なお、上記実施の形態では、固定式のトラペゾイドスキャンを例示したが、本発明はこれに限定されず、移動式のトラペゾイドスキャンが適用されても良い。移動式のトラペゾイドスキャンの場合、例えば偏向角変動係数βの値を適宜設定することにより、診断領域の範囲を設定すれば良い。
【0077】
また、移動式のトラペゾイドスキャンにおいては、偏向角変動係数βの値を固定値としても良いが、可変値としても良い。
【0078】
通常スキャンで診断可能な領域(第1診断領域R1)内に関心領域位置が設定される場合、スキャン方式は通常スキャンとなるが、第2診断領域R2を含む位置に関心領域位置が設定される場合、スキャン方式はトラペゾイドスキャンとなる。通常スキャンとトラペゾイドスキャンとでは、音響線の密度が異なるため、通常スキャンで生成された関心領域の画像データを観察した後に、トラペゾイドスキャンで生成された関心領域の画像データをユーザーが観察した場合、例えば音響線間角度Δθが、トラペゾイドスキャンの場合が通常スキャンの場合よりも大きくなるため、両方の画像データの画質の変動幅が目立つ可能性がある。
【0079】
つまり、偏向角変動係数βの値を固定値とすると、関心領域位置が第1診断領域R1と第2診断領域R2との境界(図5における音響線AL11に対応する線)をまたぐか否かによって関心領域に係る画質が大幅に変わる可能性がある。
【0080】
そのため、スキャン制御部42は、関心領域位置に応じて偏向角変動係数β(音響線間角度Δθを決定するパラメーター)を変更する。具体的には、スキャン制御部42は、偏向角変動係数βの値が、スキャン方向における端部位置に向かうにつれ、徐々に大きくなるように、関心領域位置に応じて偏向角変動係数βの値を決定する。
【0081】
例えば、図8に示すように、診断領域R内の第1位置から第2位置までの間において、偏向角変動係数βの値が直線状に増加する関数に従って、スキャン制御部42は偏向角変動係数βの値を決定する。図8における縦軸は偏向角変動係数βの値、横軸は診断領域R内におけるスキャン方向の位置を示している。図8における0は、中心法線NVの位置を示し、第1位置は、例えば、通常スキャンがスキャン方式で設定される、最下流位置を示しており、第2位置は、診断領域Rの端部位置を示している。
【0082】
なお、図8は、中心法線NVよりも+側の位置に対応した関数を示しており、中心法線NVよりも-側の位置に対応した関数は、+側の位置に対応した関数を、中心法線NVに対して左右対称にしたものとなる。
【0083】
そして、スキャン制御部42は、決定した偏向角変動係数βの値に応じたトラペゾイドスキャンにスキャン方式を設定する。
【0084】
こうすると、図9に示すように、診断領域Rにおいて、第1位置よりも上流側の領域が関心領域位置に設定された場合、通常スキャン(偏向角変動係数βの値が0)がスキャン方式として設定される。通常スキャンの音響線間角度Δθは、例えば、音響線AL13で囲まれた範囲に対応する。
【0085】
また、診断領域Rにおいて、第2位置を含む領域が関心領域位置に設定された場合、偏向角変動係数βの値が図8の最大値に決定されたトラペゾイドスキャンがスキャン方式として設定される。この場合のトラペゾイドスキャンの音響線間角度Δθは、例えば、音響線AL23で囲まれた範囲に対応する。
【0086】
また、診断領域Rにおいて、第1位置と第2位置との中間位置である第3位置を含む領域が関心領域位置に設定された場合、偏向角変動係数βの値が図8における第3位置に対応する値に決定されたトラペゾイドスキャンがスキャン方式として設定される。この場合のトラペゾイドスキャンの音響線間角度Δθは例えば、音響線AL3で囲まれた範囲に対応する。この範囲は、音響線AL13で囲まれた範囲よりも大きく、音響線AL23で囲まれた範囲よりも小さくなっている。
【0087】
つまり、第3位置におけるトラペゾイドスキャンの音響線間角度Δθが、第1位置に係る音響線間角度と第2位置に係る音響線間角度との間の値となる。その結果、観察者が、スキャン方式が切り替わる境界の上流側および下流側の両方の関心領域を観察した場合でも、両方の関心領域の画質の変動幅を低減することができる。
【0088】
また、上記実施の形態では、選択可能なスキャン方式の中に通常スキャンが含まれていたが、本発明はこれに限定されず、選択可能なスキャン方式の中に通常スキャンが含まれていなくても良い。
【0089】
この場合、図10に示すように、スキャン制御部42は、図8と同様に、移動式のトラペゾイドスキャンにおける偏向角変動係数βを、関心領域位置に応じて変更するように、スキャン方式を設定する。図10では、図8において通常スキャンの範囲において偏向角変動係数βの値が負の値に設定されている。
【0090】
偏向角変動係数βの値が負の値に設定されると、仮想原点VОの位置がプローブ原点Oより+側の位置になるため、音響線間角度Δθが狭まり、ひいては当該診断領域内の音響線の密度が高くなる。
【0091】
そのため、例えば、関心領域位置が診断領域におけるスキャン方向の中央部を含む範囲に設定された場合、偏向角変動係数が負の値に設定され、端部位置に向かうにつれ、偏向角変動係数が大きくなり、端部位置においては、最大値となる偏向角変動係数に到達する値に設定される。
【0092】
こうすることで、診断領域の中央部が端部よりも音響線の密度が高くなるので、関心領域位置が中央部付近に設定された場合、中央部付近の関心領域の画像データの画質を向上させることができる。
【0093】
また、移動式のトラペゾイドスキャンにおいて、偏向角変動係数(音響線間角度の設定方法)を関心領域位置に応じて変更する以外に、固定式のトラペゾイドスキャンにおいて、関心領域位置に応じて仮想原点VOの位置を変更するようにしても良い。
【0094】
また、上記実施の形態では、移動式のトラペゾイドスキャンと、固定式のトラペゾイドスキャンとを別々に取り扱っていたが、本発明はこれに限定されず、スキャン方式の選択肢に移動式のトラペゾイドスキャンおよび固定式のトラペゾイドスキャンを含めても良い。
【0095】
例えば、固定式のトラペゾイドスキャンは、仮想原点VOの位置が、プローブ原点Oよりも-側に位置する場合、特開2020-130736号公報にも記載の通り、スキャン方向の端部側の方が、中央側よりも音響線間角度が小さくなることが一般的に知られている。
【0096】
そして、例えば特開2020-130736号公報に記載の技術のように、超音波診断装置Aにおいて、スキャン方向の中央側を音響線間角度が小さくなるように設定する移動式のトラペゾイドスキャンが適用されていたとする。
【0097】
このような場合において、スキャン制御部42は、スキャン方向の中央側に関心領域位置が設定された場合、移動式のトラペゾイドスキャンを設定し、スキャン方向の端部側に関心領域位置が設定された場合、固定式のトラペゾイドスキャンを設定する。つまり、スキャン制御部42は、関心領域位置に応じて、移動式のトラペゾイドスキャンおよび固定式のトラペゾイドスキャンの何れかを選択する。
【0098】
こうすることで、診断領域を広くしながら、関心領域の画質を向上させることができる。
【0099】
また、スキャン制御部42が通常スキャン、固定式のトラペゾイドスキャンおよび移動式のトラペゾイドスキャンの何れかを選択可能な構成であっても良い。
【0100】
また、上記実施の形態では、広視野範囲に係る超音波画像が生成される場合において設定された関心領域位置に応じてスキャン方式を設定していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、通常の範囲(通常スキャンのスキャン範囲)に係る超音波画像が生成される場合において設定された関心領域位置に応じてスキャン方式を設定しても良い。
【0101】
この場合、診断領域の中央部においては、仮想原点の位置をプローブ原点の位置よりも+側に設定して音響線間角度が狭まるようなトラペゾイドスキャンをスキャン方式の選択肢に含めるようにすると良い。
【0102】
また、上記実施の形態では、移動式のトラペゾイドスキャンが、式(2)および式(3)の関数に関する方式であったが、本発明はこれに限定されず、式(2)および式(3)の関数以外の関数に関する方式であっても良い。
【0103】
また、上記実施の形態では、円弧状の振動子面を有する超音波プローブを例示したが、本発明はこれに限定されず、直線状の振動子面等、円弧状の振動子面以外の振動子面を有する超音波プローブであっても良い。例えば、超音波プローブとしてリニアプローブを用いる場合、特開2020-130736号公報に記載の関数に関する方式が移動式のトラペゾイドスキャンとなる。
【0104】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0105】
A 超音波診断装置
1 超音波診断装置本体
2 超音波プローブ
11 送信部
12 受信部
14 Bモード信号処理部
15 表示処理部
16 表示部
17 操作入力部
23 振動子アレイ
231 振動子
40 制御部
41 設定部
42 スキャン制御部
AL 音響線
θ 音響線角度
Δθ 音響線間角度
VO 仮想原点
L ビーム発点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10