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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14
B41J2/14 605
B41J2/14 305
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021019166
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022122087
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 次郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 祥嗣
(72)【発明者】
【氏名】関口 恭裕
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039275(JP,A)
【文献】特開2016-137638(JP,A)
【文献】特開2010-214847(JP,A)
【文献】特開2015-036238(JP,A)
【文献】米国特許第06003971(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が供給される複数のマニホールドと、
各前記マニホールドに対応して連通し液体を吐出する複数のノズルを含む1又は複数のノズル列と、
隣り合う一方の前記マニホールドと他方の前記マニホールドとを直接的に接続する連通路と、を備え、
記一方のマニホールドと接続される前記ノズル列の数である第1数と前記他方のマニホールドと接続される前記ノズル列の数である第2数とが異なる場合は、前記第1数と前記第2数とが同じである場合に比べ、前記連通路の流路断面積が大きい、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記マニホールドと各前記ノズルとの間に個別に配置された複数のディセンダをさらに備え、
前記第1数と前記第2数とが異なる場合における前記連通路と当該連通路に最も近い位置に配置された前記ディセンダとの間隔は、隣り合う前記ディセンダ間の間隔以下である、請求項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1数と前記第2数とが同じである場合における前記連通路の流路抵抗は、1000~2000kPa・s/mlである、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1数と前記第2数とが異なる場合における前記連通路の流路抵抗は、100~300kPa・s/mlである、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記連通路は、前記一方のマニホールドの上端と前記他方のマニホールドの上端とを接続する第1連通路、および前記一方のマニホールドの下端と前記他方のマニホールドの下端とを接続する第2連通路を含む、請求項1乃至の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記連通路は2層のプレートの各々をハーフエッチングして形成されている、請求項1乃至の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記マニホールドに連通する供給絞り路をさらに備え、
前記供給絞り路の上流端は前記連通路の外に配置されている、請求項1乃至の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記マニホールドに連通する供給絞り路をさらに備え、
前記供給絞り路の上流端は前記連通路内に配置されている、請求項1乃至の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記複数のマニホールドは、前記ノズル列に沿う方向と交差する幅方向において並設された第1乃至第4マニホールドを含み、
前記第1マニホールドおよび前記第4マニホールドにはそれぞれ1つの前記ノズル列が設けられ、
前記第2マニホールドおよび前記第3マニホールドにはそれぞれ2つの前記ノズル列が設けられ、
前記第2マニホールドと前記第3マニホールドとを接続する前記連通路の流路断面積は、前記第1マニホールドと前記第2マニホールドとを接続する前記連通路の流路断面積および前記第3マニホールドと前記第4マニホールドとを接続する前記連通路の流路断面積よりも小さい、請求項1乃至の何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主走査方向に並設された第1乃至第3供給マニホールドが設けられた液体吐出ヘッドが開示されている。この液体吐出ヘッドにおいては、各供給マニホールドには2列のノズル列が配置されている。供給マニホールドの長手方向においてこれら6列のノズル列の一端はそれぞれ供給孔に接続され、それらの他端は連通路によって互いに連通されている。このような連通路を設けることによって、供給マニホールドの末端付近に生じる圧力集中が緩和され、この末端付近に配置されたノズルによる吐出と他のノズルによる吐出とのばらつきを抑える効果が奏される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-075404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、連通路における液体の流れは当該連通路に接続された各供給マニホールド間における流量差によってのみ生じるものであるため、上記従来構成では連通路の流路断面積が大き過ぎる場合には、微弱な流れしか起きず当該連通路にエアが残留する恐れがあった。一方、連通路の流路断面積が小さ過ぎる場合には、当該連通路内の圧力の逃げ場がなく供給マニホールドの末端付近の圧力集中が改善しない恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明は、隣り合うマニホールド同士を接続する連通路における残留エアを抑えると共に圧力集中を抑えることができる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出ヘッドは、液体が供給される複数のマニホールドと、各前記マニホールドに対応して連通し液体を吐出する複数のノズルを含む1又は複数のノズル列と、隣り合う一方の前記マニホールドと他方の前記マニホールドとを直接的に接続する連通路と、を備え、前記連通路の流路断面積は、前記一方のマニホールドと接続される前記ノズル列の数である第1数と前記他方のマニホールドと接続される前記ノズル列の数である第2数とが同じである場合と、前記第1数と前記第2数とが異なる場合とで、異なっているものである。
【0007】
本発明に従えば、第1数(一方のマニホールドにおけるノズル列の数)および第2数(他方のマニホールドにおけるノズル列の数)に関わらず連通路の流路断面積が一定である従来態様に比べて、連通路に適切な流量の液体を流すことができる。詳しくは、連通路の流路断面積が大き過ぎる場合には、微弱な流れしか起きず当該連通路にエアが残留する。一方、連通路の流路断面積が小さ過ぎる場合には、当該連通路内の圧力の逃げ場がなく圧力集中が改善しない恐れがある。本発明では連通路の流路断面積が第1数と第2数との異同に基づき異なるようにしたので、連通路に適切な流量の液体を流して残留エアを抑えると共に圧力集中を抑えることができる。具体的には、第1数と第2数とが異なる場合、一方のマニホールドと他方のマニホールドとの間で流量差が生じ易いので、連通路におけるエア残りの恐れは小さい。しかし、連通路の流路断面積が小さいと圧力集中が起きてしまうため、当該圧力集中を抑えるべく比較的大きめの流路断面積を有する連通路を設ける。これに対して、第1数と第2数とが同じ場合、圧力集中は比較的起き難いが、上記流量差が生じ難いのでエア残りの恐れが大きくなる。そのため、連通路におけるエアを排出するのに十分な流れを形成するという観点で比較的小さめの流路断面積を有する連通路を設ける。以上によって、残留エアを抑えると共に圧力集中を抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、隣り合うマニホールド同士を接続する連通路における残留エアを抑えると共に圧力集中を抑えることができる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の概略構成を示す平面図である。
図2図1の液体吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
図3図1の液体吐出ヘッドにおける液体流路を示す平面図である。
図4】マニホールド孔および供給孔を示す斜視図である。
図5】マニホールド孔、供給孔および区隔壁を示す平面図である。
図6】隣り合う供給マニホールド同士を連通させる連通路を示す平面図である。
図7】連通路を形成するプレートの断面図である。
図8】(a)は連通路と供給絞り路との位置関係を示す平面図であり、(b)は連通路と供給絞り路との位置関係を示す変形例に係る平面図である。
図9】連通路の変形例を示す斜視図である。
図10】供給マニホールドの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図面を参照して説明する。以下に説明する液体吐出ヘッドは本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッド20は液体吐出装置10に設けられる。この液体吐出装置10は、液体を吐出する液体吐出ヘッド20の他に、貯留タンク12、キャリッジ16、一対の搬送ローラ15、一対のガイドレール17、およびサブタンク18を備える。なお、液体吐出装置10において図略のプラテン上に例えば印刷用紙である被吐出媒体Wが配置される。
【0012】
キャリッジ16には液体吐出ヘッド20およびサブタンク18が搭載されている。キャリッジ16は、被吐出媒体Wの搬送方向(副走査方向)に直交する主走査方向に延在する一対のガイドレール17に支持され、当該ガイドレール17に沿って主走査方向に往復動する。これにより、液体吐出ヘッド20は主走査方向に往復動する。液体吐出ヘッド20はチューブ12aを介して貯留タンク12に接続されている。
【0013】
一対の搬送ローラ15は主走査方向に沿って互いに平行に配置されている。搬送ローラ15は図略の搬送モータが駆動されると回転し、これによりプラテン上の被吐出媒体Wが搬送方向に搬送されるようになっている。
【0014】
貯留タンク12には液体の一例であるインクが貯留されている。貯留タンク12は、液体吐出ヘッド20に液体を供給すべくチューブ12aを介して液体吐出ヘッド20に接続されている。また、貯留タンク12は液体がインクである場合には当該インクの種類ごとに設けられている。貯留タンク12は、例えば4つ設けられ、液体としてブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクがそれぞれ貯留されている。なお、以下では液体としてインクを使用する場合について説明する。
【0015】
続いて、液体吐出ヘッド20の断面構成について説明する。図2は液体吐出ヘッド20の構成を示す断面図である。図2に示すように、液体吐出ヘッド20は貯留タンク12からのインクを用いて液滴を吐出する複数のノズル21を有する。液体吐出ヘッド20は流路形成体と容積変更部の積層体を有している。流路形成体には、その内部にインク流路が形成され、その下面である吐出面40aに複数のノズル孔21aが開口している。また、上記の容積変更部は駆動されてインク流路の容積を変更する。このとき、ノズル孔21aではメニスカスが振動してインクが吐出される。
【0016】
液体吐出ヘッド20の上述の流路形成体は複数のプレートの積層体であり、容積変更部は振動板55およびアクチュエータ(圧電素子)60を含む。振動板55の上には絶縁膜56が接続されており、当該絶縁膜56の上には後述の共通電極61が接続されている。
【0017】
複数のプレートは、下から順に、ノズルプレート46、スペーサプレート47、第1流路プレート48、第2流路プレート49、第3流路プレート50、第4流路プレート51、第5流路プレート52、第6流路プレート53、および第7流路プレート54を含んで積層されている。
【0018】
各プレートには大小種々の孔および溝が形成されている。各プレートが積層された流路形成体の内部では孔および溝が組み合わされて、複数のノズル21、複数の個別流路64および供給マニホールド22がインク流路として形成されている。なお、供給マニホールド22および後述の供給マニホールド122がマニホールドに相当する。
【0019】
ノズル21はノズルプレート46を積層方向に貫通し形成されている。ノズルプレート46の吐出面40aには、ノズル21の先端である複数のノズル孔21aが配列方向に複数並んでノズル列を形成している。なお、上記配列方向は積層方向に直交する方向である。
【0020】
供給マニホールド22は、インクの吐出圧力が付与される後述の圧力室28に対してインクを供給する。供給マニホールド22は、上記配列方向に延在しており、複数の個別流路64の各一端にそれぞれ接続されている。すなわち、供給マニホールド22はインクの共通流路として機能する。供給マニホールド22は、第1流路プレート48~第4流路プレート51を積層方向に貫通した貫通孔および第5流路プレート52の下面から窪んだ窪みが積層方向に重なって形成されている。
【0021】
ノズルプレート46はスペーサプレート47の下方に配置されている。そのスペーサプレート47は例えばステンレス鋼材で形成される。スペーサプレート47は、例えばハーフエッチングによりノズルプレート46側の面からスペーサプレート47の厚み方向に凹むことで、ダンパ部47aを成す薄肉部分とダンパ空間47bとが形成される凹部45を有している。このような構成によって、供給マニホールド22とノズルプレート46との間にはバッファー空間としてのダンパ空間47bが形成されている。
【0022】
複数の個別流路64は供給マニホールド22にそれぞれ接続されている。個別流路64は、その上流端が供給マニホールド22に接続され、その下流端がノズル21の基端に接続されている。個別流路64は、第1連通孔25、個別絞り路である供給絞り路26、第2連通孔27、圧力室28、およびディセンダ29で構成されており、これらの構成要素はこの順で配置される。
【0023】
第1連通孔25は、その下端が供給マニホールド22の上端に接続し、供給マニホールド22から積層方向の上方に延び、第5流路プレート52における上側部分を積層方向に貫通している。
【0024】
供給絞り路26の上流端は第1連通孔25の上端に接続されている。供給絞り路26は、例えばハーフエッチングにより形成され、第6流路プレート53の下面から窪んだ溝により構成されている。また、第2連通孔27は、その上流端が供給絞り路26の下流端に接続され、供給絞り路26から積層方向の上方に延び、第6流路プレート53を積層方向に貫通して形成されている。
【0025】
圧力室28は、その上流端が第2連通孔27の下流端に接続されている。圧力室28は、第7流路プレート54を積層方向に貫通して形成されている。
【0026】
ディセンダ29は、スペーサプレート47、第1流路プレート48、第2流路プレート49、第3流路プレート50、第4流路プレート51、第5流路プレート52、および第6流路プレート53を積層方向に貫通して形成されている。ディセンダ29は、その上流端が圧力室28の下流端に接続され、下流端がノズル21の基端に接続されている。ノズル21は、例えば積層方向においてディセンダ29に重なり、幅方向においてディセンダ29の中央に配置されている。
【0027】
振動板55は、第7流路プレート54の上に積層されており、圧力室28の上端開口を覆っている。
【0028】
アクチュエータ60は、共通電極61、圧電層62および個別電極63を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極61は、絶縁膜56を介して振動板55の全面を覆っている。圧電層62は、絶縁膜56および共通電極61を介して振動板55の全面を覆っている。個別電極63は、圧力室28ごとに設けられ、圧電層62上に配置されている。1つの個別電極63、共通電極61および両電極で挟まれた部分の圧電層62により1つのアクチュエータ60が構成される。
【0029】
個別電極63はドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、図略の制御部から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極63に印加する。これに対し、共通電極61は常にグランド電位に保持されている。このような構成において、圧電層62の活性部が駆動信号に応じて2つの電極61,63と共に面方向に伸縮する。これに伴い、振動板55が協働して変形し、圧力室28の容積を増減する方向に変化する。これによって、ノズル21からインクを吐出させるための吐出圧力が圧力室28に付与される。
【0030】
以上のような液体吐出ヘッド20において、ポンプが駆動すると、インクはサブタンク18から供給孔24を介して供給マニホールド22に流入する。そして、インクは供給マニホールド22から第1連通孔25を介して供給絞り路26に流入し、供給絞り路26から第2連通孔27を介して圧力室28に流入する。そして、インクはディセンダ29を流れ、ノズル21に流入する。ここで、アクチュエータ60により圧力室28に吐出圧力が付与されると、ノズル孔21aからインクが吐出される。
【0031】
次に、液体吐出ヘッド20における全体的な液体流路の構成について説明する。図3図1の液体吐出ヘッド20における液体流路を示す平面図である。図3に示すように、液体吐出ヘッド20は液体が供給されて例えば略正方形状の供給孔24を有している。この供給孔24は配管を介してサブタンク18に接続されている。供給孔24は例えば筒状に形成され、配列方向(供給マニホールド22の延在方向)の一方端に設けられている。
【0032】
供給孔24の下方に複数の供給マニホールド22が配置されている。本実施形態では、複数の供給マニホールド22として例えば4つの供給マニホールド22a,22b,22c,22dが配列方向にこの順でそれぞれ延在して配置されている。隣り合う供給マニホールド22同士は連通路75によって直接的に接続されている。具体的には、供給マニホールド22aと供給マニホールド22bとは連通路75aによって直接的に接続されている。供給マニホールド22bと供給マニホールド22cとは連通路75bによって直接的に接続されている。供給マニホールド22cと供給マニホールド22dとは連通路75cによって直接的に接続されている。連通路75a,75b,75cの詳細は後述する。なお、供給マニホールド22の数は4つに限定されない。供給マニホールド22aが第1マニホールドに相当し、供給マニホールド22bが第2マニホールドに相当し、供給マニホールド22cが第3マニホールドに相当し、供給マニホールド22dが第4マニホールドに相当する。
【0033】
次いで、供給孔24に連通する複数のマニホールド孔70および隣り合うマニホールド孔70同士を区画する区隔壁72について図面を参照しつつ説明する。
【0034】
図4はマニホールド孔70および供給孔24を示す斜視図であり、図5はマニホールド孔70、供給孔24および区隔壁72を示す平面図である。なお、図4および図5は液体としてブラックインクを用いる場合の構成又は4色インク(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)を用いる場合の構成である。また、供給孔24、供給マニホールド22および後述のマニホールド孔70は液体流路であり空洞であるが、図4および図5では理解を容易にするためにその空洞を外線で図示している。後述の図6および図8乃至図10も同様である。
【0035】
図4に示すように、各供給マニホールド22はそれぞれマニホールド孔70を有している。供給マニホールド22a,22b,22c,22dが有するマニホールド孔をそれぞれ70a,70b,70c,70dとする。マニホールド孔70a,70b,70c,70dはそれぞれ配列方向に長い。また、各マニホールド孔70は配列方向に対して斜めに延びている。詳しくは、図5において、マニホールド孔70aを規定する内側線は配列方向に対して斜めに延びている。マニホールド孔70bを規定する一方線は配列方向に平行に延びているが、他方線は当該配列方向に対して斜めに延びている。また、マニホールド孔70cを規定する一方線は配列方向に平行に延びているが、他方線は当該配列方向に対して斜めに延びている。さらに、マニホールド孔70dを規定する内側線は配列方向に対して斜めに延びている。このような構成において、マニホールド孔70aとマニホールド孔70bとを区画する区隔壁72は配列方向に対して斜めに延在し、マニホールド孔70bとマニホールド孔70cとを区画する区隔壁72は配列方向に平行に延在し、マニホールド孔70cとマニホールド孔70dとを区画する区隔壁72は配列方向に対して斜めに延在する。また、本実施形態では、マニホールド孔70a,70b,70c,70dはその幅が配列方向に段階的に広くなる形状を有する。
【0036】
マニホールド孔70a,70b,70c,70dは供給孔24の下方に位置している。マニホールド孔70a,70b,70c,70dはそれぞれ供給孔24に連通している。これにより、供給マニホールド22a,22b,22c,22dがそれぞれ供給孔24に連通する。
【0037】
図5に示すように、供給マニホールド22a,22b,22c,22dのうち隣り合う一方の供給マニホールドと他方の供給マニホールドとが区隔壁72により区画されている。これにより、マニホールド孔70a,70b,70c,70dについても、隣り合う一方のマニホールド孔と他方のマニホールド孔とが区隔壁72により区画されている。
【0038】
供給マニホールド22a,22b,22c,22dは各区隔壁72よりも下方に配置された共通空間71にてそれぞれ連通している。共通空間71の下流端は各区隔壁72の一端および他端よりも下流側に位置している。
【0039】
次に、図6は隣り合う供給マニホールド22同士を連通させる連通路75を示す平面図である。図6に示すように、各供給マニホールド22に対応して1又は複数のノズル列NRが接続されている。各ノズル列NRは複数のノズル21を含み、それぞれ配列方向に延在する。
【0040】
図6において、マニホールド22aおよび供給マニホールド22dにはそれぞれ幅方向の片側に1つのノズル列NRが接続されている。詳しくは、供給マニホールド22aのノズル列NRは当該供給マニホールド22aの幅方向内側に接続され、供給マニホールド22dのノズル列NRは当該供給マニホールド22dの幅方向内側に接続されている。一方、供給マニホールド22bおよび供給マニホールド22cにはそれぞれ幅方向の両側に併せて2つのノズル列NRが接続されている。
【0041】
ここで、幅方向に隣り合う供給マニホールド22同士を直接的に接続する連通路75が設けられている。これにより、隣り合う一方の供給マニホールド22と他方の供給マニホールド22とが連通路75によって直接的に連通されている。
【0042】
詳細には、供給マニホールド22aと供給マニホールド22bとは連通路75aによって接続されている。これにより、供給マニホールド22aと供給マニホールド22bとが連通路75aを介して連通している。また、供給マニホールド22bと供給マニホールド22cとは連通路75bによって接続されている。これにより、供給マニホールド22bと供給マニホールド22cとが連通路75bを介して連通している。さらに、供給マニホールド22cと供給マニホールド22dとは連通路75cによって接続されている。これにより、供給マニホールド22cと供給マニホールド22dとが連通路75cを介して連通している。
【0043】
上記のような構成において、連通路75の流路断面積は、幅方向に隣り合う一方の供給マニホールド22と接続されるノズル列NRの数である第1数と他方の供給マニホールドと接続されるノズル列の数である第2数とが同じである場合と、上記第1数と上記第2数とが異なる場合とで、異なっている。本実施形態では、第1数と第2数とが異なる場合は、第1数と第2数とが同じである場合に比べ、連通路75の流路断面積が大きい。
【0044】
具体的に図6においては、隣り合う供給マニホールド22bおよび供給マニホールド22cにはそれぞれ2列のノズル列NRが接続されている。そのため、第1数と第2数とは同じである。これに対して、供給マニホールド22aには1列のノズル列NRが接続されているが、供給マニホールド22bには2列のノズル列NRが接続されている。そのため、第1数と第2数とは異なっている。また、供給マニホールド22cには2列のノズル列NRが接続されているが、供給マニホールド22dには1列のノズル列NRが接続されている。そのため、第1数と第2数とは異なっている。したがって、供給マニホールド22bと供給マニホールド22cとを接続する連通路75bの流路断面積は、供給マニホールド22aと供給マニホールド22bとを接続する連通路75aの流路断面積よりも小さい。この場合、連通路75bの流路断面積の最大値が連通路75aの流路断面積の最小値よりも小さいものとする。同様に、上記連通路75bの流路断面積は、供給マニホールド22cと供給マニホールド22dとを接続する連通路75cの流路断面積よりも小さい。この場合、連通路75bの流路断面積の最大値が連通路75cの流路断面積の最小値よりも小さいものとする。
【0045】
本実施形態において、第1数と第2数とが同じである場合における連通路75の流路抵抗、具体的に図6における連通路75bの流路抵抗は、例えば1000~2000kPa・s/mlである。一方、第1数と第2数とが異なる場合における連通路75の流路抵抗、具体的に図6における連通路75a,75cの各流路抵抗は、それぞれ例えば100~300kPa・s/mlである。
【0046】
ここで、本実施形態において、連通路75とディセンダ29とが上下に重ならないことを前提としつつ連通路75の幅を出来るだけ大きくするという趣旨の下、以下のように構成することができる。ここでは、第1数と第2数とが異なる場合における連通路75と当該連通路75に最も近い位置に配置されたディセンダ29との間隔は、隣り合うディセンダ29間の間隔以下となっている。具体的に、例えば図6においては、連通路75cと当該連通路75cに最も近い位置に配置されたディセンダ29との間隔d1は、隣り合うディセンダ29間の間隔d2以下となっている。これにより、連通路75の幅を大きくすることができる。なお、上記のd2は例えば400~500μmであり、上記のd1は例えば100~400μmである。
【0047】
以上説明した連通路75を次の通り形成することができる。図7に示すように、連通路75は2層のプレートP1,P2の各々をハーフエッチングして形成される。なお、連通路75の幅方向一端および幅方向他端にはそれぞれ対応する供給マニホールド22が接続されているが、図7では連通路75を形成するプレートP1,P2の断面構造の理解を容易にするために各供給マニホールド22の図示を省略している。また、積層された2層のプレートP1,P2は、図2の第1流路プレート48、第2流路プレート49、第3流路プレート50、第4流路プレート51および第5流路プレート52のうちの何れか2つのプレートに相当する。
【0048】
次いで、本実施形態における連通路75と供給絞り路26との位置関係について説明する。図8(a)は連通路75と供給絞り路26との位置関係を示す平面図であり、同図(b)は連通路75と供給絞り路126との位置関係を示す変形例に係る平面図である。
【0049】
図8(a)に示すように、本実施形態では、供給マニホールド22に連通する複数の供給絞り路26のうち、供給孔24の側と反対側(つまり末端)の供給絞り路26の上流端26bは連通路75の外に配置されている。すなわち、平面視において供給絞り路26の上流端26bと連通路75とは互いに重ならない位置に配置されている。なお、符号26aは供給絞り路26の下流端である。これに対して、以下のように構成してもよい。すなわち図8(b)に示すように、供給マニホールド22に連通する複数の供給絞り路126のうち、供給孔24の側と反対側(つまり末端)の供給絞り路126の上流端126bは連通路75内に配置されてもよい。つまり、平面視において供給絞り路126の上流端126bと連通路75とが互いに重なる位置に配置されてもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の液体吐出ヘッド20によれば、第1数(一方の供給マニホールド22におけるノズル列NRの数)および第2数(他方の供給マニホールド22におけるノズル列NRの数)に関わらず連通路の流路断面積が一定である従来態様に比べて、連通路に適切な流量の液体を流すことができる。詳しくは、連通路75の流路断面積が大き過ぎる場合には、微弱な流れしか起きず当該連通路75にエアが残留する。一方、連通路75の流路断面積が小さ過ぎる場合には、当該連通路75内の圧力の逃げ場がなく圧力集中が改善しない恐れがある。本実施形態では連通路75の流路断面積が第1数と第2数との異同に基づき異なるようにしたので、連通路75に適切な流量の液体を流して残留エアを抑えると共に圧力集中を抑えることができる。具体的には、第1数と第2数とが異なる場合、一方の供給マニホールド22と他方の供給マニホールド22との間で流量差が生じ易いので、連通路75におけるエア残りの恐れは小さい。しかし、連通路75の流路断面積が小さいと圧力集中が起きてしまうため、当該圧力集中を抑えるべく比較的大きめの流路断面積を有する連通路75を設ける。これに対して、第1数と第2数とが同じ場合、圧力集中は比較的起き難いが、上記流量差が生じ難いのでエア残りの恐れが大きくなる。そのため、連通路75におけるエアを排出するのに十分な流れを形成するという観点で比較的小さめの流路断面積を有する連通路75を設ける。以上によって、残留エアを抑えると共に圧力集中を抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態では、第1数と第2数とが異なる場合は、第1数と第2数とが同じである場合に比べ、連通路75の流路断面積が大きい。第1数と第2数とが異なる場合、一方の供給マニホールド22と他方の供給マニホールド22との間で流量差が生じ易いので、連通路75におけるエア残りの恐れは小さい。しかし、連通路75の流路断面積が小さいと圧力集中が起きてしまうため、比較的大きめの流路断面積を有する連通路75を配置することによって圧力集中を抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態では、第1数と第2数とが異なる場合における連通路75と当該連通路75に最も近い位置に配置されたディセンダ29との間隔d1が、隣り合うディセンダ29間の間隔d2以下である。この場合、連通路75と当該連通路75に最も近い位置に配置されたディセンダ29との間隔d2が隣り合うディセンダ29間の間隔d1以下となる程に連通路75の幅を大きくすることができる。これにより、圧力集中をより抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、第1数と第2数とが同じである場合における連通路75の流路抵抗は、1000~2000kPa・s/mlである。これにより、連通路75におけるエア残りをより抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態では、第1数と第2数とが異なる場合における連通路75の流路抵抗は、100~300kPa・s/mlである。これにより、連通路75におけるエア残りをより抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態では、連通路75は2層のプレートP1,P2の各々をハーフエッチングして形成されている。これにより、ハーフエッチングによって各層に肉厚部分を残すことができる。これにより構造安定性に繋がる。
【0056】
また、本実施形態では、供給絞り路26の上流端26bは連通路75の外に配置されている。これによって、連通路75内のエアが供給絞り路26に侵入することを防ぎ易くなる。これにより、エアに起因した吐出不良を防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態では、供給絞り路126の上流端126bが連通路75内に配置されてもよい。これにより、流量が増大したときに圧力集中を緩和すべく、供給絞り路126の上流端126bが連通路75内に入るほど当該連通路75の幅を広くすることができる。また、上流端126bを介して連通路75におけるエアを排出することができる。
【0058】
さらに、本実施形態では、供給マニホールド22bと供給マニホールド22cとを接続する連通路75bの流路断面積は、供給マニホールド22aと供給マニホールド22bとを接続する連通路75aの流路断面積よりも小さい。また、上記連通路75bの流路断面積は、供給マニホールド22cと供給マニホールド22dとを接続する連通路75cの流路断面積よりも小さい。この点につき、供給マニホールド22bに接続されたノズル列NRの数と、当該供給マニホールド22bに隣り合う供給マニホールド22cに接続されたノズル列NRの数とが同じである場合には、エアを排出するのに十分な流れを形成するという観点で、連通路75bの流路断面積を比較的小さめにすることができる。
【0059】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0060】
上記実施形態では、隣り合う供給マニホールド22同士を1つの連通路75で接続することとしたが、これに限定されるものではない。図9は上述した連通路75の変形例である連通路175を示す斜視図である。なお、以下では供給マニホールド22aと供給マニホールド22bとを接続する連通路175について代表的に説明するが、供給マニホールド22bと供給マニホールド22cとを接続する連通路および供給マニホールド22cと供給マニホールド22dとを接続する連通路にも同様に適用することができる。
【0061】
図9に示すように、変形例に係る連通路175は第1連通路175aおよび第2連通路175bを含む。第1連通路175aは一方の供給マニホールド22aの上端と他方の供給マニホールド22bの上端とを接続する。また、第2連通路175bは一方の供給マニホールド22aの下端と他方の供給マニホールド22bの下端とを接続する。このような構成によって、第1連通路175aによってエアを排出することができ、第2連通路175bによってダンパ機能を確保することができる。
【0062】
また、上記実施形態の図6においては、4つの供給マニホールド22(22a,22b,22c,22d)が設けられる態様について説明したが、これに限定されるものではない。図10に示すように、3つの供給マニホールド122(122a,122b,122c)が設けられる態様を採用してもよい。隣り合う供給マニホールド122同士は連通路76によって接続されている。供給マニホールド122aには幅方向の内側に1列のノズル列NRが接続される。一方、供給マニホールド122b,122cにはそれぞれ幅方向の両側に併せて2列のノズル列NRが接続される。したがって、隣り合う供給マニホールド122aと供給マニホールド122bとの関係において、第1数と第2数とは異なる。これに対して、隣り合う供給マニホールド122bと供給マニホールド122cとの関係において、第1数と第2数とは同じである。この場合、供給マニホールド122aと供給マニホールド122bとを接続する連通路76aの流路断面積は、供給マニホールド122bと供給マニホールド122cとを接続する連通路76bの流路断面積よりも大きい。この場合、連通路76aの各流路断面積、つまり連通路76aにおいて流れ方向に垂直な各面で切断した際の各断面積のそれぞれが、連通路76bの同義の各流路断面積のうち最大値よりも大きい。
【0063】
さらに、上記実施形態では、供給孔24を正方形状に形成したが、これに限られるものではなく、供給孔24を例えば円形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 液体吐出装置
20 液体吐出ヘッド
21 ノズル
22,22a,22b,22c,22d 供給マニホールド
24 供給孔
26,126 供給絞り路
26b,126b 供給絞り路の上流端
29 ディセンダ
75,75a,75b,75c,75d,175 連通路
76,76a,76b 連通路
122,122a,122b,122c 供給マニホールド
175a 第1連通路
175b 第2連通路
NR ノズル列
P1,P2 プレート
図1
図2
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図10