IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7581942液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置
<>
  • 特許-液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置 図1
  • 特許-液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置 図2
  • 特許-液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置 図3
  • 特許-液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置 図4
  • 特許-液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置 図5
  • 特許-液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置 図6
  • 特許-液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置 図7
  • 特許-液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241106BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/015 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021020742
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123420
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岩 賢嗣
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172348(JP,A)
【文献】特開2008-273177(JP,A)
【文献】特開2017-13270(JP,A)
【文献】特開2017-127138(JP,A)
【文献】特開2019-147247(JP,A)
【文献】特開2018-144303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力対象の駆動パルス波形を表す入力信号に所定の遅延を生じさせる第1の遅延回路と、
前記入力信号と前記第1の遅延回路の出力信号とに基づいて第1の切替信号を出力する第1の切替制御部と、
前記第1の切替信号に応じて第1の電圧の出力有無を切り替える第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子の出力とつながっており、第2の電圧の出力有無を切り替える第2のスイッチング素子とを有し、前記第1の電圧と前記第2の電圧との組み合わせにより前記駆動パルス波形を有する駆動信号を液滴吐出素子に出力する第1のレベル変換回路と、
を有する第1の信号生成部を備え、
前記第1の遅延回路は、前記入力信号の立ち上がりと立ち下がりとで前記遅延の大きさを異ならせる第1の調整回路を有する
ことを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
前記第1の信号生成部は、前記入力信号と前記第1の遅延回路の出力信号とに基づいて第2の切替信号を出力する第2の切替制御部を有し、
前記第2のスイッチング素子は、前記第2の切替信号に応じて前記第2の電圧の出力有無を切り替え、
前記第1の切替信号と前記第2の切替信号とは、前記第1のスイッチング素子による前記第1の電圧の出力期間と、前記第2のスイッチング素子による前記第2の電圧の出力期間との間に前記第1の電圧及び前記第2の電圧がいずれも出力されない期間を含むように切り替わる
ことを特徴とする請求項1記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第1の調整回路は、前記立ち上がりの開始から前記第1の遅延回路の出力信号の電圧が前記第1の切替制御部に係る所定の基準電圧に達するまでの時間と、前記立ち下がりの開始から前記出力信号の電圧が前記所定の基準電圧に達するまでの時間との差を150nsec以内とすることを特徴とする請求項1又は2記載の駆動回路。
【請求項4】
前記第1の遅延回路は、第1の抵抗素子と、当該第1の抵抗素子の一端と接地面とを電気的に接続するキャパシターと、前記第1の抵抗素子に対して並列に位置し、直列につながっているダイオード及び第2の抵抗素子とを有し、
前記ダイオード及び前記第2の抵抗素子が前記第1の調整回路に含まれる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記第1の切替制御部に係る基準電圧は、前記入力信号の電圧幅の中間値よりも小さく、
前記ダイオードは、前記第1の遅延回路の出力側にアノードが位置しており、前記第1の遅延回路の入力側にカソードが接続していることを特徴とする請求項4記載の駆動回路。
【請求項6】
出力対象の駆動パルス波形を表す入力信号に所定の遅延を生じさせる第2の遅延回路と、
前記第2の遅延回路の出力信号とに基づいて第3の切替信号を出力する第3の切替制御部と、
前記第3の切替信号に応じて第3の電圧の出力有無を切り替える第3のスイッチング素子と、前記第3のスイッチング素子の出力とつながっており、第4の電圧の出力有無を切り替える第4のスイッチング素子とを有し、前記第3の電圧と前記第4の電圧との組み合わせにより前記駆動パルス波形の駆動信号を液滴吐出素子に出力する第2のレベル変換回路と、
を有する第2の信号生成部を備え、
前記第2の遅延回路は、前記入力信号の立ち上がりと立ち下がりとで前記遅延の大きさを異ならせる第2の調整回路を有し、
前記第1の信号生成部は、前記液滴吐出素子の第1端へ第1の入力信号に応じた第1の駆動信号を出力し、
前記第2の信号生成部は、前記液滴吐出素子の前記第1端とは反対の第2端へ第2の入力信号に応じた第2の駆動信号を出力し、
前記第1の調整回路及び前記第2の調整回路のうち少なくとも一方は、前記第1の入力信号の立ち下がりにおける遅延の大きさと前記第2の入力信号の立ち上がりにおける遅延の大きさ、又は前記第2の入力信号の立ち下がりにおける遅延の大きさと前記第1の入力信号の立ち上がりにおける遅延の大きさを等しくする
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項7】
出力対象の駆動パルス波形を表す入力信号に所定の遅延を生じさせる第3の遅延回路と、
前記第3の遅延回路の出力信号に基づいて第4の切替信号を出力する第4の切替制御部と、
前記第4の切替信号に応じて第5の電圧の出力有無を切り替える第5のスイッチング素子と、前記第5のスイッチング素子の出力につながっており、第6の電圧の出力有無を切り替える第6のスイッチング素子とを有し、前記第5の電圧と前記第6の電圧との組み合わせにより前記駆動パルス波形の駆動信号を液滴吐出素子に出力する第3のレベル変換回路と、
を有する第3の信号生成部を備え、
前記第3の遅延回路は、前記入力信号の立ち上がりと立ち下がりとで前記遅延の大きさを異ならせる第3の調整回路を有し、
前記第1の信号生成部は、前記液滴吐出素子の第1端へ第1の入力信号に応じた第1の駆動信号を出力し、
前記第3の信号生成部は、前記液滴吐出素子の前記第1端とは反対の第2端へ第3の入力信号に応じた第3の駆動信号を出力し、
前記第3の入力信号は、前記第1の入力信号と等しい駆動パルス波形を含み、
前記第3の調整回路は、前記第1の駆動信号の立ち上がりに係る遅延の大きさと前記第3の駆動信号の立ち上がりに係る遅延の大きさとをそろえる、又は前記第1の駆動信号の立ち下がりに係る遅延の大きさと前記第3の駆動信号の立ち下がりに係る遅延の大きさとをそろえる
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動回路と、
前記駆動回路から入力される前記駆動信号に応じて駆動される液滴吐出素子と、
前記液滴吐出素子の動作に応じて液滴を吐出するノズルと、
を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液滴吐出ヘッドの駆動回路及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクなどの液体に圧力変動を付与してノズルから吐出させる液滴吐出装置がある。圧力変動の付与には、アクチュエーターにパルス状の駆動信号を印加して変形させるものが知られている。駆動信号の生成には、複数の供給電圧間で出力を切り替えることによって矩形波を生成する方法がある。
【0003】
駆動信号の波形は、液体に付与される圧力変動の周波数分布や振幅に影響するので、駆動信号は、精度よく生成されて出力される必要がある。特許文献1には、供給電圧と接地電圧とをそれぞれ選択的に出力するトランジスターを備える駆動回路において、出力電圧を帰還させて入力電圧と比較して、供給電圧及び接地電圧の出力有無をそれぞれ細かく制御することで、台形状の駆動信号の波形を入力信号波形から大きく外れないようにして、波形精度を向上させる技術が開示されている。また、この出力有無の切り替えにおいて、供給電圧の供給路と接地電圧の供給路とが同時にオンされると、供給電圧が直接接地面に流れて電力が消費される。そこで、特許文献1では、バッファー回路により供給電圧を出力させる閾値と接地電圧を出力させる閾値とを異ならせることで、一方の電圧の出力開始より前に他方の電圧の出力を停止させ、同時に両方の電圧が出力されないようにされている。
【0004】
しかしながら、矩形波などの急峻な電圧変化を伴う入力信号では、入力信号自体で2つの異なるタイミングを定めるのが難しい。そこで、入力信号の変化に所定の遅延を加えた遅延信号に基づいて異なるタイミングを定める技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-147247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、簡易な構成で正確な電圧閾値を定めるのは難しく、単一の閾値が中心からずれたり、複数の閾値が対称にならなかったりすることで、入力信号の立ち上がり時と信号の立ち下がり時とで切り替わりタイミングに非対称が生じやすい。その結果、パルス幅やパルス間隔などが正確な値とならずに駆動信号の波形やタイミングが正確にならないという課題がある。
【0007】
この発明の目的は、より正確な駆動信号を出力可能な駆動回路及び液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
出力対象の駆動パルス波形を表す入力信号に所定の遅延を生じさせる第1の遅延回路と、
前記入力信号と前記第1の遅延回路の出力信号とに基づいて第1の切替信号を出力する第1の切替制御部と、
前記第1の切替信号に応じて第1の電圧の出力有無を切り替える第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子の出力とつながっており、第2の電圧の出力有無を切り替える第2のスイッチング素子とを有し、前記第1の電圧と前記第2の電圧との組み合わせにより前記駆動パルス波形を有する駆動信号を液滴吐出素子に出力する第1のレベル変換回路と、
を有する第1の信号生成部を備え、
前記第1の遅延回路は、前記入力信号の立ち上がりと立ち下がりとで前記遅延の大きさを異ならせる第1の調整回路を有する
ことを特徴とする駆動回路である。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の駆動回路において、
前記第1の信号生成部は、前記入力信号と前記第1の遅延回路の出力信号とに基づいて第2の切替信号を出力する第2の切替制御部を有し、
前記第2のスイッチング素子は、前記第2の切替信号に応じて前記第2の電圧の出力有無を切り替え、
前記第1の切替信号と前記第2の切替信号とは、前記第1のスイッチング素子による前記第1の電圧の出力期間と、前記第2のスイッチング素子による前記第2の電圧の出力期間との間に前記第1の電圧及び前記第2の電圧がいずれも出力されない期間を含むように切り替わる
ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の駆動回路において、
前記第1の調整回路は、前記立ち上がりの開始から前記第1の遅延回路の出力信号の電圧が前記第1の切替制御部に係る所定の基準電圧に達するまでの時間と、前記立ち下がりの開始から前記出力信号の電圧が前記所定の基準電圧に達するまでの時間との差を150nsec以内とすることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の駆動回路において、
前記第1の遅延回路は、第1の抵抗素子と、当該第1の抵抗素子の一端と接地面とを電気的に接続するキャパシターと、前記第1の抵抗素子に対して並列に位置し、直列につながっているダイオード及び第2の抵抗素子とを有し、
前記ダイオード及び前記第2の抵抗素子が前記第1の調整回路に含まれる
ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の駆動回路において、
前記第1の切替制御部に係る基準電圧は、前記入力信号の電圧幅の中間値よりも小さく、
前記ダイオードは、前記第1の遅延回路の出力側にアノードが位置しており、前記第1の遅延回路の入力側にカソードが接続していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の駆動回路において、
出力対象の駆動パルス波形を表す入力信号に所定の遅延を生じさせる第2の遅延回路と、
前記第2の遅延回路の出力信号とに基づいて第3の切替信号を出力する第3の切替制御部と、
前記第3の切替信号に応じて第3の電圧の出力有無を切り替える第3のスイッチング素子と、前記第3のスイッチング素子の出力とつながっており、第4の電圧の出力有無を切り替える第4のスイッチング素子とを有し、前記第3の電圧と前記第4の電圧との組み合わせにより前記駆動パルス波形の駆動信号を液滴吐出素子に出力する第2のレベル変換回路と、
を有する第2の信号生成部を備え、
前記第2の遅延回路は、前記入力信号の立ち上がりと立ち下がりとで前記遅延の大きさを異ならせる第2の調整回路を有し、
前記第1の信号生成部は、前記液滴吐出素子の第1端へ第1の入力信号に応じた第1の駆動信号を出力し、
前記第2の信号生成部は、前記液滴吐出素子の前記第1端とは反対の第2端へ第2の入力信号に応じた第2の駆動信号を出力し、
前記第1の調整回路及び前記第2の調整回路のうち少なくとも一方は、前記第1の入力信号の立ち下がりにおける遅延の大きさと前記第2の入力信号の立ち上がりにおける遅延の大きさ、又は前記第2の入力信号の立ち下がりにおける遅延の大きさと前記第1の入力信号の立ち上がりにおける遅延の大きさを等しくする
ことを特徴とする。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の駆動回路において、
出力対象の駆動パルス波形を表す入力信号に所定の遅延を生じさせる第3の遅延回路と、
前記第3の遅延回路の出力信号に基づいて第4の切替信号を出力する第4の切替制御部と、
前記第4の切替信号に応じて第5の電圧の出力有無を切り替える第5のスイッチング素子と、前記第5のスイッチング素子の出力につながっており、第6の電圧の出力有無を切り替える第6のスイッチング素子とを有し、前記第5の電圧と前記第6の電圧との組み合わせにより前記駆動パルス波形の駆動信号を液滴吐出素子に出力する第3のレベル変換回路と、
を有する第3の信号生成部を備え、
前記第3の遅延回路は、前記入力信号の立ち上がりと立ち下がりとで前記遅延の大きさを異ならせる第3の調整回路を有し、
前記第1の信号生成部は、前記液滴吐出素子の第1端へ第1の入力信号に応じた第1の駆動信号を出力し、
前記第3の信号生成部は、前記液滴吐出素子の前記第1端とは反対の第2端へ第3の入力信号に応じた第3の駆動信号を出力し、
前記第3の入力信号は、前記第1の入力信号と等しい駆動パルス波形を含み、
前記第3の調整回路は、前記第1の駆動信号の立ち上がりに係る遅延の大きさと前記第3の駆動信号の立ち上がりに係る遅延の大きさとをそろえる、又は前記第1の駆動信号の立ち下がりに係る遅延の大きさと前記第3の駆動信号の立ち下がりに係る遅延の大きさとをそろえる
ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項8記載の発明は、
請求項1~7のいずれか一項に記載の駆動回路と、
前記駆動回路から入力される前記駆動信号に応じて駆動される液滴吐出素子と、
前記液滴吐出素子の動作に応じて液滴を吐出するノズルと、
を備えることを特徴とする液滴吐出装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、液滴吐出素子に対し、より正確な駆動信号を出力することが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】液滴吐出装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態の液滴吐出装置の駆動回路からアクチュエーターにかけての回路構成を示す図である。
図3】信号生成部への入力信号、出力される駆動信号、及び信号生成部内での電圧変化を示す図である。
図4】変形例1の駆動回路を説明する図である。
図5】変形例1の駆動回路における電圧変化と、アクチュエーターへの印加電圧の変化とを示す図である。
図6】変形例2の駆動回路を示す図である。
図7】変形例3の駆動回路を示す図である。
図8】変形例3の駆動回路における入力信号と、出力される駆動信号との対応関係と、アクチュエーターへの印加電圧との例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、液滴吐出装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態の液滴吐出装置1は、例えば、インクを吐出するインクジェット記録装置である。液滴吐出装置1は、搬送部51と、ヘッド駆動制御部52と、液滴吐出ヘッド53と、制御部61と、記憶部62と、通信部7と、表示部8と、操作受付部9などを備える。
【0020】
搬送部51は、液滴吐出装置1により画像などを記録する対象となる媒体を液滴吐出ヘッド53のインク吐出面と対向させながら当該インク吐出面に対して相対移動させる。搬送部51は、搬送駆動部511を有する。搬送駆動部511は、例えば、媒体が載置される無端状のベルトが架け渡されたローラーを有し、当該ローラーを所定速度で回転動作させることで無端状のベルト及び当該ベルト上の媒体を所定速度で周回移動させる。
【0021】
ヘッド駆動制御部52は、記録対象の画像の各画素データに応じて適切なタイミングで液滴吐出ヘッド53のアクチュエーター200を駆動する駆動信号を得るための駆動電圧信号を出力する。ヘッド駆動制御部52は、基板上などにまとめて形成されてもよいし、液滴吐出装置1の各部に分散して配置されていてもよい。また、ヘッド駆動制御部52の構成の一部又は全部は、液滴吐出ヘッド53が有するものであってもよい。ヘッド駆動制御部52は、ヘッド制御部521と、信号制御部522などを備える。
【0022】
ヘッド制御部521は、CPUと記憶部などを備え、記録対象の画像データの有無や画像データの内容に応じてヘッド駆動制御部52の動作を制御する。記憶部には、ノズルNからインクを吐出させたりノズルN内のインクの液面(メニスカス)を振動させたりするための駆動信号の波形パターンのデータが予め保持されている。信号制御部522は、図示略のクロック信号(同期信号)に応じた適切なタイミングでヘッド制御部521から取得される波形信号(入力信号)をヘッド駆動部531に出力する。駆動信号の波形パターンは、複数種類保持されていて、予め定められた順番及びタイミングで切り替えられてもよい。
【0023】
液滴吐出ヘッド53は、媒体に対してインクを吐出して画像などを記録、形成する。液滴吐出ヘッド53は、ヘッド駆動部531と、ノズルNなどを備える。
【0024】
ヘッド駆動部531は、各ノズルNからのインク吐出タイミングに合わせてインクを吐出させる動作を行う。ヘッド駆動部531は、駆動回路100と、アクチュエーター200(液滴吐出素子)などを有する。アクチュエーター200は、印加された電圧に応じて変形する。駆動回路100は、信号生成部101(第1の信号生成部)を有する。
駆動回路100は、記録対象の画像データなどに基づいて信号制御部522から入力された入力信号を適切なタイミングで組み合わせて駆動信号を生成し、当該駆動信号の各アクチュエーター200への出力有無の切替を行う。駆動信号がアクチュエーター200へ出力されることで、アクチュエーター200が変形し、ノズルN内のインクに圧力変動が付与されて、インクがノズルNから吐出されたり、ノズルN内で振動を生じたりする。
【0025】
ノズルNは、各々アクチュエーター200の変形動作に応じて付与された圧力変動に従ってインクを吐出する。ノズルNの開口は、媒体(媒体の搬送面)と対向する一の面(ノズル面)に所定のパターンで配列されている。配列のパターンは特には限られないが、例えば、搬送部51による媒体の搬送方向に垂直な方向に画像解像度に応じた間隔で並んだ複数のノズル開口の配列が搬送方向について1又は数箇所に設けられたものである。あるいは、ノズル開口が搬送方向についても多数の位置に分散している二次元ヘッドであってもよい。
【0026】
液滴吐出装置1は、例えば、搬送移動される媒体に対して固定された液滴吐出ヘッド53からインクが吐出されて画像が記録されていくラインヘッドによるワンパス方式のものであるが、インクの吐出動作中に液滴吐出ヘッド53と媒体とが一定速度で相対移動するものであれば特には限られない。ノズルNの開口が二次元配置されている場合には、相対移動方向について異なる位置のノズルNからのインク吐出タイミングは、相対移動速度に応じて各々ずらされるように駆動制御される。
【0027】
制御部61は、演算処理を行うCPU611と、CPU611に対して作業用のメモリー空間を提供して一時データを記憶するRAM612などを備え、液滴吐出装置1の動作を統括制御する。
【0028】
記憶部62は、動作制御に係るプログラム及び設定データなどを記憶する。記憶部62は、不揮発性メモリー及び/又はHDD(Hard Disk Drive)などを有する。また、記憶部62は、通信部7を介して外部から取得された記録対象の画像データ621及びその処理データなどを記憶可能であってよい。これらのデータの記憶用に、記憶部62は、DRAMなどの揮発性メモリーを有していてもよい。
【0029】
通信部7は、外部機器との通信を制御してデータの送受信を行う。通信部7は、例えば、ネットワークカードなどを備え、LANを用いたTCP/IPなどの通信規格に基づいてデータ通信の制御を行う。接続される外部機器には、画像記録命令及び記録対象データを出力する各種コンピューター端末が含まれる。また、後述のように、インクの飛翔速度を検出する検出器からの検出結果を直接又はコンピューター端末などを介して取得可能であってよい。
【0030】
表示部8は、制御部61の制御に基づいて表示画面に各種表示を行わせる。表示画面としては、例えば、液晶ディスプレイが挙げられる。表示画面には、例えば、画像記録動作に係るステータスの表示及び設定の選択画面の表示などが含まれる。また、表示部8には、LEDランプなどが含まれていてよく、例えば、主電源からの電力供給有無、及び/又はステータスの異常状態の有無などを報知可能であってよい。
【0031】
操作受付部9は、ユーザーなどによる外部からの入力操作を受け付けて、入力信号として制御部61に出力する。操作受付部9としては、例えば、表示画面に重ねて設けられたタッチパネルが挙げられる。また、操作受付部9は、押しボタンスイッチ及び/又はロータリースイッチなどが含まれていてもよい。
【0032】
次に、本実施形態の液滴吐出装置1の駆動回路について説明する。
図2は、本実施形態の液滴吐出装置1の駆動回路100からアクチュエーター200にかけての回路構成を示す図である。
【0033】
信号生成部101は、入力信号Sinに応じた駆動信号Smを生成して出力する。駆動回路100は、遅延回路10(第1の遅延回路)と、論理回路21、22(それぞれ、第1の切替制御部及び第2の切替制御部)と、レベル変換回路30(第1のレベル変換回路)と、吐出選択部40とを有する。駆動信号Smは、吐出選択部40により出力有無が切り替えられ、出力される場合には、アクチュエーター200の一端(第1端)に出力される。アクチュエーター200の上記第1端と反対側の第2端は、接地(筐体接地)されている。
【0034】
なお、ここでは、1つのアクチュエーター200に対する1つの信号生成部101が示されているが、信号生成部101は、複数(例えば、2個)のアクチュエーター200に対してそれぞれ個別の吐出選択部40を介して駆動信号Smを出力するものであってもよい。また、複数のアクチュエーター200のグループ、例えば、グループごとにインクの吐出タイミングが異なるなど、に各々対応する複数の信号生成部101を有し、当該複数の信号生成部101に対してそれぞれ入力信号Sinが分配入力されてもよい。入力信号Sinの振幅は、通常のデジタル信号で表される程度の電圧、例えば、3V程度などであってよく、後述の供給電圧Vcよりも小さい。
【0035】
遅延回路10は、入力信号Sinと、当該入力信号Sinに対して所定の遅延を生じさせた遅延信号Sdとを並列に出力する。遅延回路10は、例えば、抵抗素子R1(第1の抵抗素子)と、抵抗素子R1の一端と接地面との間を電気的に接続するキャパシターC1とを有するRC回路を含む。RC回路は、周知のように低域通過フィルターであり、入力信号Sinの高周波数成分が除去されて矩形波よりも立ち上がり及び立ち下がりが緩やかな波形となる。時定数τは、抵抗素子R1の抵抗値RとキャパシターC1の電気容量Cにより、τ=RCとして表される。
【0036】
遅延回路10は、更に、調整回路11(第1の調整回路)を有する。調整回路11は、抵抗素子R1に並列に位置する抵抗素子R2(第2の抵抗素子)及びこの抵抗素子R2に接続されている(抵抗素子R2に対して直列につながっている)ダイオードD1とを有する。ダイオードD1は、ここでは、遅延回路10の出力側にアノードが位置し、入力側にカソードが位置している。これにより、ダイオードD1に電流が流れる向き(アノードからカソードへの向き)でのみ、抵抗素子R2が機能して、上記時定数に係る抵抗値が抵抗素子R1の抵抗値と抵抗素子R2の抵抗値との合成抵抗に低下する。すなわち、電流が入力信号Sinの入力側へ流れる場合には、時定数τが低下して遅延信号Sdの遅延の大きさが減少する。すなわち、遅延信号Sdの遅延の大きさは、信号の変化の向き、入力信号Sinがパルス信号の場合にその立ち上がりと立ち下がりとで互いに異なる。
【0037】
遅延回路10から出力される入力信号Sin及び遅延信号Sdは、それぞれ2分割されて各々論理回路21、22に入力される。ここでは、論理回路21は、NAND素子であり、入力信号Sinと遅延信号Sdの論理積を反転した切替信号Sc1(第1の切替信号)をレベル変換回路30へ出力する。論理回路22は、NOR素子であり、入力信号Sinと遅延信号Sdの論理和を反転した切替信号Sc2(第2の切替信号)をレベル変換回路30へ出力する。
【0038】
レベル変換回路30は、pnpトランジスターTr1(第1のスイッチング素子)及びnpnトランジスターTr2(第2のスイッチング素子)を有する。pnpトランジスターTr1のベースには、上記の切替信号Sc1が入力され、エミッターが供給電圧Vcに接続されている。コレクター(出力)は、npnトランジスターTr2のコレクターとつながっている。npnトランジスターTr2のベースには、上記の切替信号Sc2が入力され、エミッターは接地されている。pnpトランジスターTr1及びnpnトランジスターTr2のコレクター間から駆動信号Smが出力される。切替信号Sc1は、供給電圧Vc(第1の電圧)の出力有無を切り替え、切替信号Sc2は、接地電圧(第2の電圧)の出力有無を切り替える。レベル変換回路30が、切替信号Sc1、Sc2が排他的にpnpトランジスターTr1及びnpnトランジスターTr2をオンさせるプッシュプル型の構成を有することで、駆動信号Smは、供給電圧Vcと接地電圧との間で切り替わる。これら供給電圧Vcと接地電圧との組み合わせにより駆動パルス波形を有する駆動信号Smが吐出選択部40を介してアクチュエーター200へ出力される。供給電圧Vcは、アクチュエーター200の駆動に必要な電圧であり、例えば、15Vなどである。すなわち、入力信号Sinは電圧振幅が増幅されて駆動信号Smに変換される。また、供給電圧Vcから供給される電流も増幅されることで、駆動信号Smは、入力信号Sinが電力増幅されたものとなる。
【0039】
吐出選択部40は、アクチュエーター200を動作させるか否かを切り替える。吐出選択部40は、出力対象の画像データなどに基づいてオンオフの切替がなされる。
【0040】
アクチュエーター200は、両端への印加電圧に応じて変形する。上述のように、アクチュエーター200の一端は接地されているので、供給電圧Vcが出力されている間にはアクチュエーター200が変形し、接地電圧が出力されている状態及び駆動信号Smの出力が吐出選択部40によりオフされている場合には、アクチュエーター200の変形が解消されている。アクチュエーター200は、ノズルに連通するインク流路に沿って位置しており、その変形に応じた圧力変動をインク流路内のインクに付与することで、インクをノズルから吐出させる。
切替動作を行うレベル変換回路30のpnpトランジスターTr1及びnpnトランジスターTr2、並びに吐出選択部40は、駆動ICとして基板上にまとめて形成されていてよい。
【0041】
次に、本実施形態の駆動回路による駆動信号の出力について説明する。
駆動回路100の信号生成部101は、予め定められた波形、ここでは、矩形状の入力信号Sin(矩形波)を電力増幅した駆動信号Smを出力する。駆動信号Smの電圧振幅は、供給電圧Vcと接地電圧との差分、すなわち、供給電圧Vcにより定まる。
【0042】
図3は、信号生成部101への入力信号Sin、出力される駆動信号Sm、及び信号生成部101内での電圧変化を示す図である。
ここでは、入力信号Sinは、矩形波であり、下端電圧(ローレベル)と上端電圧(ハイレベル)との間(電圧幅)で変化する。基準電圧(接地電圧)から急激に電圧が変化する部分を立ち上がりといい、変化後の電圧が維持された後に、急激に基準電圧に戻る部分を立ち下がりという。すなわち、基準電圧と変化後の電圧との大小関係には関係ない。
【0043】
入力信号Sinから遅延回路10により高周波数成分が除去された遅延信号Sdの電圧V(Sd)の経過時間tに応じた変化は、指数関数を用いてV(Sd)=(α/RC)(1-exp(-t/τ))と表されるので(αは振幅)、立ち上がりは上に凸となり、立ち下がりは下に凸となる。また、時定数τが大きくなるほど立ち上がり及び立ち下がりが遅くなる。
【0044】
論理回路21、22の出力変化に係る基準電圧Vthは、ここでは、入力信号Sinの電圧幅内で中間値よりも小さく(下端電圧<基準電圧Vth<(上端電圧+下端電圧)/2)。供給電圧Vcが正の場合、上述のように、電圧の立ち下がり時には調整回路11を電流が流れることで、時定数τに含まれる抵抗値Rが抵抗素子R1、R2の合成抵抗となって立ち上がり時よりも小さくなるので、遅延信号Sdの立ち下がりは、立ち上がりよりも速くなって、立ち下がり開始タイミングteから論理回路21、22の基準電圧Vthへの到達時間は、調整回路11がない場合よりも短くなる。調整回路11の抵抗素子R2の抵抗値は、立ち上がり開始タイミングtbから基準電圧Vthに上昇するタイミングtb1までの時間と、立ち下がり開始タイミングteから基準電圧Vthに低下するタイミングte2までの時間とが略同一の時間dt1となるように設定される。ここでいう略同一の範囲は、例えば、時間差が150nsecであるが、これは、駆動信号Sm(入力信号Sin)のパルス幅に応じて定められてもよい。すなわち、パルス幅に対するずれ量の比率が略同一に係る基準の範囲内となるように抵抗素子R2の抵抗値が定められてもよい。また、pnpトランジスターTr1及びnpnトランジスターTr2などの応答速度やベース電圧に対する動作の遷移特性などに応じて意味がある範囲での調整がなされればよい。
【0045】
破線で示したように、調整回路11がない場合には、遅延信号Sdの立ち下がり時の電圧変化は、立ち上がり時の電圧変化と同一の時定数で表される非線形変化となり、ここでは、立ち下がり開始タイミングteから基準電圧Vthに低下するタイミングte1までの時間dt2は、時間dt1よりも長くなる。
【0046】
論理回路21はNAND素子であるので、論理回路21から出力される切替信号Sc1は、入力信号Sin及び遅延信号Sdのいずれもが基準電圧Vth以上である場合にローレベルであり、いずれかが基準電圧Vth未満である場合にはハイレベル(ローレベルよりも高い電圧)である。したがって、入力信号Sinの立ち上がり開始タイミングtbから時間dt1が経過して遅延信号Sdも基準電圧Vth以上となったタイミングtb1で切替信号Sc1がハイレベルからローレベルに変化する。また、立ち下がり時には、入力信号Sinが立ち下がる立下り開始タイミングteで即座に切替信号Sc1がローレベルからハイレベルに変化する。pnpトランジスターTr1は、切替信号Sc1がローレベルの間、供給電圧Vcをコレクターから出力する(第1の電圧の出力期間)。
【0047】
論理回路22はNOR素子であるので、論理回路22が出力する切替信号Sc2は、入力信号Sin及び遅延信号Sdのいずれもが基準電圧Vth未満である場合にハイレベルであり、少なくとも一方が基準電圧Vth以上となると、ローレベルである。したがって、入力信号Sinの立ち上がり開始タイミングtbでハイレベルからローレベルに変化し、入力信号Sinの立ち下がり開始タイミングteから時間dtだけ遅れたタイミングte2で遅延信号Sdが基準電圧Vthを下回ると、ローレベルからハイレベルに変化する。npnトランジスターTr2は、切替信号Sc2がハイレベルの間、接地電圧をコレクターから出力する(第2の電圧の出力期間)。
【0048】
切替信号Sc1がローレベルとなる期間(タイミングtb1~立ち下がり開始タイミングte)は、切替信号Sc2がハイレベルである期間(立ち上がり開始タイミングtb以前及びタイミングte2以降)と重ならず、かつ前後に上記の時間dt1を挟んでいる。したがって、pnpトランジスターTr1とnpnトランジスターTr2とが同時にオンされることはなく(排他的な切り替わり)、供給電圧Vcから接地面への貫通電流は流れない。時間dt1の間は、供給電圧Vcも接地電圧もいずれも出力されない期間であり、短い間ではそれ以前の電圧が保持されるので、駆動信号Smにおける電圧の変化は、接地電圧への低下がタイミングtb1であり、また、供給電圧Vcへの上昇がタイミングte2である。すなわち、駆動信号Smは、常に入力信号Sinの切り替わりから時間dt1遅延して、入力信号Sinと同じパルス幅で出力される。したがって、液滴の吐出量及び吐出速度は正確に保たれる。吐出タイミングは時間dt1だけ遅延するので、必要に応じて、液滴を着弾させる対象の媒体の位置を調整してもよい。
【0049】
[変形例1]
上記実施の形態では、アクチュエーター200の同一側へ印加される駆動信号Smの調整を例に挙げて説明したが、アクチュエーター200の異なる側へそれぞれ印加される駆動信号Smp、Smnのタイミングを合わせるのに本開示の内容が用いられてもよい。
【0050】
図4は、変形例1の駆動回路100aを説明する図である。
駆動回路100aは、アクチュエーター200の一端(第1端)に吐出選択部40を介して接続された信号生成部101(以下の各変形例では、「第1の信号生成部(信号生成部101)」と記す)と、アクチュエーター200の上記第1端とは反対側の端(第2端)に吐出選択部40aを介して接続された第2の信号生成部1012と、を有する。
【0051】
第1の信号生成部(信号生成部101)は、入力信号Sin1(駆動パルス波形を表す第1の入力信号)及びその遅延信号Sd1に応じて駆動信号Smn(第1の駆動信号)を出力し、第2の信号生成部1012は、入力信号Sin2(第2の入力信号)及びその遅延信号Sd2に応じて駆動信号Smp(第2の駆動信号)を出力する。駆動信号Smn、Smpの振幅に係る供給電圧Vc1、Vc2(第3の電圧)は、互いに異なっていてもよい。
【0052】
第1の信号生成部(信号生成部101)の回路構成は、上記実施形態の信号生成部101と同一であり、各々同一の符号を付して詳しい説明を省略する。第2の信号生成部1012は、調整回路11と同一構成の調整回路11a(第2の調整回路)を有し、遅延回路10と同一の構成の遅延回路10a(第2の遅延回路)と、論理回路21、22とそれぞれ同一の論理回路21a(第3の切替制御部)及び論理回路22aと、供給電圧Vc2の出力有無を切り替えるpnpトランジスターTr1a(第3のスイッチング素子)及び接地電圧(第4の電圧)の出力有無を切り替えるnpnトランジスターTr2a(第4のスイッチング素子)を有し、レベル変換回路30と同一の構成により論理回路21aが出力する切替信号Sc3及び論理回路22aが出力する切替信号Sc4に応じた駆動信号Smpをアクチュエーター200へ出力するレベル変換回路30a(第2のレベル変換回路)などを有する。すなわち、第2の信号生成部1012の回路構成は、第1の信号生成部(信号生成部101)と同一である。
【0053】
例えば、アクチュエーター200をせん断モードで変形させる場合には、このように、アクチュエーター200の両端に駆動信号が出力されてもよい。この場合には、例えば、各吐出選択部40に属する複数のアクチュエーター200のうち、隣り合う2つのアクチュエーター200のうち一方の第1端と他方の第2端に1つの回路(第1の信号生成部(信号生成部101)など)により共通の駆動信号が出力されてもよい。アクチュエーター200は、並んでいる順番に3グループに区分けされて、各々異なる吐出周期でインクを吐出するように定められてもよい。
【0054】
この変形例1の駆動回路100aでは、入力信号Sin2の立ち上がりと立ち下がりに係る遅延の大きさが調整回路11aにより互いに異なるように調整されることで、駆動信号Smnの立ち上がりタイミングと駆動信号Smpの立ち下がりタイミング、及び/又は駆動信号Smnの立ち下がりタイミングと駆動信号Smpの立ち上がりタイミングとが(すなわち、遅延の大きさが)そろえられる。ここでそろえられる範囲は、例えば、200nsec以下とすることができる。あるいは、上記と同様に、駆動信号のパルス幅に応じ、パルス幅が短いほどより小さいずれの範囲にそろえられるように所定の比率などで定められてもよい。また、pnpトランジスターTr1、Tr1a及びnpnトランジスターTr2、Tr2aなどの応答速度やベース電圧に対する動作の遷移特性などに応じて意味がある範囲での調整がなされればよい。
【0055】
図5は、変形例1の駆動回路100aにおける電圧変化と、アクチュエーター200への印加電圧の変化とを示す図である。
【0056】
第1の信号生成部(信号生成部101)への入力信号Sin1の駆動パルス(基準電圧ではない部分)と第2の信号生成部1012への入力信号Sin2の駆動パルスは、入れ違いのタイミングであり、入力信号Sin2の立ち下がりと同時に入力信号Sin1が立ち上がる。入力信号Sin2に応じた駆動信号Smpの立ち下がりタイミングと、入力信号Sin1に応じた駆動信号Smnの立ち上がりタイミングとをそろえる場合にも、上記実施形態と同様に、立ち下がり時の遅延信号の時定数τを立ち上がり時の時定数τを異ならせることが有効である。
【0057】
入力信号Sin1を遅延回路10により遅延させた遅延信号Sd1の立ち上がり遅延と、入力信号Sin2を遅延回路10により遅延させた遅延信号Sd2の立ち上がり遅延は、いずれも時間dt1である。これにより、駆動信号Smp及び駆動信号Smnは、入力信号Sin1及び入力信号Sin2をそれぞれ時間dt1ずつ遅らせた同一幅のパルス信号となる。したがって、遅延信号Sd2の立ち下がり遅延も時間dt1とされることで、入力信号Sin1に応じた駆動信号Smnの立ち上がりが入力信号Sin2に応じた駆動信号Smpの立ち下がりと同時に定められる。
【0058】
駆動信号Smnと駆動信号Smpは、アクチュエーター200の反対側に入力されるので、駆動信号Smn、Smpは、アクチュエーター200に対して正負反対の印加電圧となる。すなわち、アクチュエーター200には、駆動信号Smnと駆動信号Smpとにより反対向きの電圧が続けて印加される。変形例1以下では、第2端の電圧が第1端の電圧よりも高い場合に正の印加電圧として示す。
【0059】
[変形例2]
第1端に接続される第1の信号生成部(信号生成部101)がこのような遅延回路10により貫通電流を抑制している場合、第2端の側で貫通電流を抑制する必要がない場合でも、同じように遅延回路を有する回路により駆動信号が生成されることで、駆動信号の立ち上がり及び立ち下がりのタイミングをそろえることができる。
【0060】
図6は、変形例2の駆動回路100bを示す図である。第2の信号生成部1012bは、変形例1における第2の信号生成部1012と異なり、遅延回路10aが出力する遅延信号Sd2のみが論理回路23に入力される。論理回路23が出力する切替信号Sc3a(第3の切替信号)は2分割されて、それぞれpnpトランジスターTr1a及びnpnトランジスターTr2aに入力される。その他の構成は同一であるので、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0061】
論理回路23は、NOT素子であり、遅延信号Sd2を反転する。論理回路23が出力する切替信号Sc3aが単純に2分割されることで、pnpトランジスターTr1aの出力反転、すなわち、供給電圧Vc2の出力有無が切り替わるタイミングと、npnトランジスターTr2aの出力反転、すなわち、接地電圧の出力有無が切り替わるタイミングとは、同一となる。したがって、両者の間に時間dtは存在しない。この回路では、レベル変換回路30aの出力が切り替わる遷移状態において、供給電圧Vc2から接地面へ若干の貫通電流が流れる。例えば、供給電圧Vc2の大きさ(絶対値)が供給電圧Vc1の大きさよりも小さい場合や、供給電圧Vc2の出力頻度が供給電圧Vc1の出力頻度よりも小さい場合などには、このような回路構成の駆動回路100bであってもよい。
【0062】
このような場合に、単純に入力信号Sin2をそのまま論理回路23に入力すると、第1の信号生成部(信号生成部101)における入力信号Sin1に対する駆動信号Smnの遅延の分だけ駆動信号Smn、Smp間でタイミングがずれる。したがって、この場合でも、第2の信号生成部1012bは、調整回路11aを含む遅延回路10aを有していてよい。
【0063】
[変形例3]
上記では、駆動信号の電圧が予め固定の供給電圧Vcで一定であったが、複数の供給電圧から選択的に出力される場合もある。また、駆動信号を出力しない場合には、単に駆動信号を出力させないだけではなく、両端に同一の電圧を印加することとしてもよい。このような場合には、複数の互いに異なる供給電圧をそれぞれアクチュエーター200の同一端に出力する信号生成部を複数有し、これらの出力を選択的に切り替えればよい。
【0064】
図7は、変形例3の駆動回路100cを示す図である。
この駆動回路100cは、第1の信号生成部(信号生成部101c)、第2の信号生成部1012c及び第3の信号生成部1013を備える。第2の信号生成部1012c、第3の信号生成部1013は、それぞれアクチュエーター200の同一の側(第2端)につながっており、第1の信号生成部(信号生成部101c)は、アクチュエーター200の上記と反対の側(第1端)につながっている。
【0065】
第1の信号生成部(信号生成部101c)は、入力信号Sin1に応じた駆動信号Smnを出力し、第2の信号生成部1012cは、入力信号Sin2に応じた駆動信号Smp1を出力し、第3の信号生成部1013は、入力信号Sin3(第3の入力信号)に応じて遅延信号Sd3に基づく駆動信号Smp2(第3の駆動信号)を出力する。ここでは、第3の信号生成部1013の駆動信号Smp2の振幅に係る供給電圧(第5の電圧)は、第1の信号生成部(信号生成部101c)の供給電圧Vc1と同一である。第1の信号生成部(信号生成部101c)は、上記実施の形態の第1の信号生成部(信号生成部101c)から吐出選択部40を削除したものである。第2の信号生成部1012cは、上記変形例2で示した第2の信号生成部1012bとは、吐出選択部40aと異なる位置に吐出選択部40bが位置している点が異なる。その他の構成は同一であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
第3の信号生成部1013は、調整回路11と同一の調整回路11c(第3の調整回路)を有し、遅延回路10と同一の構成により入力信号Sin3に対して遅延信号Sd3を出力する遅延回路10c(第3の遅延回路)と、論理回路23と同一であって、遅延信号Sd3(第3の遅延回路の出力信号)の入力に対して切替信号Sc5(第4の切替信号)が出力される論理回路23c(第4の切替制御部)と、レベル変換回路30と同一の構成であって、供給電圧Vc1の出力有無を切り替えるpnpトランジスターTr1c(第5のスイッチング素子)及び接地電圧(第6の電圧)の出力有無を切り替えるnpnトランジスターTr2c(第6のスイッチング素子)に対して、それぞれ切替信号Sc5が入力されて、駆動信号Smp2を出力するレベル変換回路30c(第3のレベル変換回路)などを備える。すなわち、第3の信号生成部1013は、変形例2の第2の信号生成部1012bとは、吐出選択部40aとは異なる位置に吐出選択部40cが位置している点が異なる。その他の構成は同一の構成であるので、詳しい説明を省略する。
【0066】
ここでは、入力信号Sin3は、入力信号Sin1と同一である。入力信号Sin1が分割されて、一方が入力信号Sin3として入力されるのであってもよい。第3の信号生成部1013の遅延回路10cは、第1の信号生成部(信号生成部101c)の遅延回路10aと同一の遅延の大きさに定められ、供給電圧Vc1も同一である。第3の信号生成部1013から出力される駆動信号Smp2は、駆動信号Smnと等しく、入力信号Sin3(入力信号Sin1)に対して時間dt1だけ遅延した振幅が供給電圧Vc1となる矩形パルスである。すなわち、駆動信号Smp2の立ち上がりは、駆動信号Smnの立ち上がりと同一のタイミングである。ここでいう同一の範囲は、上記変形例1で説明したものと同様に、例えば、200nsec以下とすることができる。あるいは、駆動信号のパルス幅に応じ、パルス幅が短いほどより小さいずれの範囲にそろえられるように所定の比率などで定められてもよい。また、pnpトランジスターTr1、Tr1a、Tr1c及びnpnトランジスターTr2、Tr2a、Tr2cなどの応答速度やベース電圧に対する動作の遷移特性などに応じて意味がある範囲での調整がなされればよい。
【0067】
吐出選択部40b、40cは、選択的にいずれかがオンされて、駆動信号Smp1又は駆動信号Smp2が出力されてもよいし、両方がオフ状態となる場合があってもよい。オンされている吐出選択部40b、40cを含む第2の信号生成部1012c、第3の信号生成部1013のいずれかから出力される駆動信号がアクチュエーター200の第2端に入力される。
【0068】
図8は、変形例3の駆動回路100cにおける入力信号Sin1~Sin3と、出力される駆動信号Smn、Smp1、Smp2との対応関係と、アクチュエーター200への印加電圧との例を示す図である。
【0069】
第1の信号生成部(信号生成部101c)は、上述のように、吐出選択部を有さないので、入力信号Sinから時間dt1遅延して供給電圧Vc1に応じた振幅の駆動信号Smnが毎回出力される。
【0070】
液滴を吐出させる場合には、第2の信号生成部1012cの吐出選択部40bがオンされて、第3の信号生成部1013の吐出選択部40cがオフされる。第2の信号生成部1012cに入力された入力信号Sin2のタイミングtpでの立ち上がりから時間dt1遅延して、供給電圧Vc2に応じた振幅の駆動信号Smp1が出力されて、タイミングtb1まで継続される。タイミングtb1では、入力信号Sin1から時間dt遅延した駆動信号Smnが入れ替わりで立ち上がるので、印加電圧の正負が反転する。このとき、吐出選択部40cに応じて、入力信号Sin3に応じた駆動信号Smp2は出力されない。
【0071】
液滴を吐出させない場合には、第2の信号生成部1012cの吐出選択部40bがオフされて、第3の信号生成部1013の吐出選択部40cがオンされる。第2の信号生成部1012cへは、タイミングtp3で入力信号Sin2が入力されるが、時間dt1遅延したタイミングtp4において駆動信号Smp1が出力されない。タイミングtb3からタイミングtb4の間に第1の信号生成部(信号生成部101c)及び第3の信号生成部1013にそれぞれ入力される入力信号Sin1、Sin3に応じて、各々時間dt1遅延したタイミングtb4からタイミングte4までの間に駆動信号Smn、Smp2が出力される。駆動信号Smn、Smp2は、アクチュエーター200の両端に同一の電圧、同一波形で印加されるので、結果としてアクチュエーター200の両端間には電圧差が生じず、印加電圧はゼロのままである。これに応じて、アクチュエーター200は変形しない。なお、第3の信号生成部1013への供給電圧が第1の信号生成部(信号生成部101c)への供給電圧Vc1と異なっていてもよい。この場合には、供給電圧の差分に応じた電圧がアクチュエーター200に対して印加されることになる。
【0072】
このように、駆動信号Smp1の立ち下がりに対して、駆動信号Smn、Smp2の立ち上がりのタイミングが適正にそろえられる。また、駆動信号Smn、Smp2の立ち上がり及び立ち下がりも適正なタイミングとなり、これらのパルス幅も一致させることができる。
なお、変形例1と同様に、第2の信号生成部1012c及び第3の信号生成部1013は、いずれも又は一方が論理回路23としてNOT素子を有するのではなく、NAND素子とNOR素子の組合せなどを有していてもよい。
【0073】
以上のような調整回路11における抵抗素子R2の抵抗値は、設計上概ね定められるが、駆動回路100(液滴吐出装置1)の出荷前検査などで調整可能であってもよい。
【0074】
以上のように、本実施形態の液滴吐出装置1の駆動回路100は、出力対象の駆動パルス波形(矩形波)を表す入力信号Sinに所定の遅延を生じさせる遅延回路10と、入力信号Sinと遅延回路10の出力信号とに基づいて切替信号Sc1を出力する論理回路21と、切替信号Sc1に応じて供給電圧Vcの出力有無を切り替えるpnpトランジスターTr1と、pnpトランジスターTr1の出力とつながっており、接地電圧の出力有無を切り替えるnpnトランジスターTr2とを有し、供給電圧Vcと接地電圧との組み合わせにより上記の駆動パルス波形を有する駆動信号Smをアクチュエーター200に出力するレベル変換回路30と、を有する信号生成部101を備える。遅延回路10は、入力信号Sinの立ち上がりと立ち下がりとで遅延の大きさを異ならせる調整回路11を有する。
このように、タイミング制御に遅延回路10を用いてレベル変換回路30の動作を制御する場合に、遅延回路での遅延の大きさは、論理回路21、22などの基準電圧Vthに応じて違いが生じ得る。したがって、信号の立ち上がりと立ち下がりとでは、変化前の電圧から基準電圧Vthへの到達時間が異なることで、出力される駆動信号のパルス幅やタイミングなどに想定からずれが生じ得る。そこで、遅延回路10が調整回路11を有し、立ち上がりと立ち下がりとで遅延の大きさを異ならせることが可能な構成とすることで、上記到達時間が等しくなるように調整することができる。これにより、従来よりも正確な駆動信号を出力して、より適正な液量、タイミング及び飛翔速度の液滴を吐出させることが可能になる。
【0075】
また、信号生成部101は、入力信号Sinと遅延回路10の出力する遅延信号Sdとに基づいて切替信号Sc2を出力する論理回路22を有する。npnトランジスターTr2は、この切替信号Sc2に応じて接地電圧の出力有無を切り替える。切替信号Sc1と切替信号Sc2とは、pnpトランジスターTr1による供給電圧Vcの出力期間と、npnトランジスターTr2による接地電圧の出力期間との間に供給電圧Vc及び接地電圧がいずれも出力されない期間(時間dt1)を含むように切り替わる。
このように、遅延信号Sdは、第1の電圧(供給電圧Vc)と第2の電圧(接地電圧)のいずれも出力させない期間(デッドタイム)を生じさせるのに用いられてよい。このデッドタイムが設けられることで、駆動電圧が供給電圧Vcと接地電圧との間で切り替える遷移状態において、供給電圧Vcの電力源と接地電圧の接地面とが直接つながり、貫通電流が流れて電力消費が増大するのを抑えることができる。このような場合に、上記のように立ち上がりと立ち下がりの遅延の大きさを互いに異ならせるように調整可能とすることで、より正確な駆動信号を出力させることができる。
【0076】
また、調整回路11は、入力信号Sinの立ち上がりの開始から遅延回路10が出力する遅延信号Sdの電圧が論理回路21に係る所定の基準電圧Vthに達するまでの時間と、入力信号Sinの立ち下がりの開始から遅延信号Sdの電圧が基準電圧Vthに達するまでの時間との差を150nsec以内とする。
これにより、現在使用されている液滴吐出装置1における液滴の吐出性能を向上させ、より精度よく液滴を媒体に着弾させることが可能となる。
【0077】
また、遅延回路10は、抵抗素子R1と、抵抗素子R1の一端と接地面とを電気的に接続するキャパシターC1と、抵抗素子R1に対して並列に位置し、直列につながっているダイオードD1及び抵抗素子R2とを有する。これらのうち、ダイオードD1及び抵抗素子R2が調整回路11に含まれる。
このように、RC回路で遅延を生じさせる場合に、ダイオードD1によって立ち上がりと立ち下がりの一方だけで電流が流れる抵抗素子R2を付加することで、RC回路の時定数を立ち上がりと立ち下がりとで容易に異ならせることができる。このような容易な構成であれば、コスト、手間や駆動回路100のサイズをほとんど増大させずに駆動信号をより正確に出力し、より精度よく液滴を吐出させることが可能となる。
【0078】
また、論理回路21に係る基準電圧Vthは、入力電圧Vinの電圧幅の中間値よりも小さく、ダイオードD1は、遅延回路10の出力側にアノードが位置しており、遅延回路10の入力側にカソードが接続している。このように、立ち上がり前の入力信号Sinの電圧により近い基準電圧Vthの場合には、同じ遅延の大きさ(時定数τ)であれば、電圧上昇時の方が電圧低下時よりも速く基準電圧Vthに到達するので、電圧低下時、すなわち、入力信号Sinの入力側へ電流が流れる場合の時定数τを更に小さくすることで、電圧上昇時(ここでは立ち上がり時)と電圧低下時(ここでは立ち下がり時)の遅延の大きさを近づけることができる。これにより、容易により正確な駆動信号Smを出力することが可能になる。
【0079】
また、変形例1、2の液滴吐出装置1は、出力対象の駆動パルス波形を表す入力信号に所定の遅延を生じさせる遅延回路10aと、遅延回路10aの出力する遅延信号Sd2とに基づいて切替信号Sc3を出力する論理回路21a又は切替信号Sc3aを出力する論理回路23と、切替信号Sc3、Sc3aに応じて供給電圧Vc2の出力有無を切り替えるpnpトランジスターTr1aと、pnpトランジスターTr1aの出力とつながっており、接地電圧の出力有無を切り替えるnpnトランジスターTr2aとを有し、供給電圧Vc2と接地電圧との組み合わせにより駆動パルス波形(矩形波)の駆動信号Smpをアクチュエーター200を出力するレベル変換回路30aと、を有する第2の信号生成部1012、1012bを備える。遅延回路10aは、入力信号Sin2の立ち上がりと立ち下がりとで遅延の大きさを異ならせる調整回路11aを有する。第1の信号生成部(信号生成部101)は、アクチュエーター200の第1端へ入力信号Sin1に応じた駆動信号Smnを出力し、第2の信号生成部1012、1012bは、アクチュエーター200の第1端とは反対の第2端へ入力信号Sin2に応じた駆動信号Smpを出力する。調整回路11及び調整回路11aのうち少なくとも一方は、入力信号Sin1の立ち下がりにおける遅延の大きさと入力信号Sin2の立ち上がりにおける遅延の大きさ、又は入力信号Sin2の立ち下がりにおける遅延の大きさと入力信号Sin1の立ち上がりにおける遅延の大きさを等しくする。
このように、アクチュエーター200の両端にそれぞれ信号生成回路が接続されて各々駆動信号が入力される場合、各々の駆動信号のタイミング及びパルス幅を調整するだけでなく、一方の駆動信号の立ち上がりと他方の駆動信号の立ち下がりのタイミングも調整することができる。よって、駆動回路100a、100bでは、より正確に駆動信号を出力することができ、これにより、より適正な位置及び量の液滴を媒体に着弾させることができるようになる。
【0080】
また、変形例3の駆動回路100cは、出力対象の駆動パルス波形(矩形波)を表す入力信号Sin3に所定の遅延を生じさせる遅延回路10cと、遅延回路10cの出力する遅延信号Sd3に基づいて切替信号Sc5を出力する論理回路23cと、切替信号Sc5に応じて供給電圧Vc1の出力有無を切り替えるpnpトランジスターTr1cと、pnpトランジスターTr1cの出力につながっており、接地電圧の出力有無を切り替えるnpnトランジスターTr2cとを有し、供給電圧Vc1と接地電圧との組み合わせにより上記駆動パルス波形の駆動信号Smp2をアクチュエーター200に出力するレベル変換回路30cと、を有する第3の信号生成部1013を備える。遅延回路10cは、入力信号Sin3の立ち上がりと立ち下がりとで遅延の大きさを異ならせる調整回路11cを有する。第1の信号生成部(信号生成部101c)は、アクチュエーター200の第1端へ入力信号Sin1に応じた駆動信号Smnを出力し、第3の信号生成部1013は、アクチュエーター200の第1端とは反対の第2端へ入力信号Sin3に応じた駆動信号Smp2を出力する。入力信号Sin3は、入力信号Sin1と等しい駆動パルス波形(振幅は異なってもよい)を含む。調整回路11cは、駆動信号Smnの立ち上がりに係る遅延の大きさと駆動信号Smp2の立ち上がりに係る遅延の大きさとをそろえる、又は駆動信号Smnの立ち下がりに係る遅延の大きさと駆動信号Smp2の立ち下がりに係る遅延の大きさとをそろえる。
このように、アクチュエーター200の両端に駆動信号Smn、Smp2を入力させる場合であって、当該駆動信号Smn、Smp2が同一であり、互いに相殺することでアクチュエーター200を動作させない場合に、各駆動信号Smn、Smp2の立ち上がりと立ち下がりの遅延の大きさをそろえるだけではなく、駆動信号Smn、Smp2の間で立ち上がり同士及び/又は立ち下がり同士をそろえるように調整回路11cが定められる。これにより、両端の駆動信号Smn、Smp2の間でずれが抑制され、不要な電圧印加によるノズルN内のインクの乱れや吐出を低減させることができる。
【0081】
また、本実施形態の液滴吐出装置1は、上記の駆動回路100、100a~100cのいずれかと、駆動回路100、100a~100cから入力される駆動信号に応じて駆動されるアクチュエーター200と、アクチュエーター200の動作に応じて液滴を吐出するノズルNと、を備える。この液滴吐出装置1によれば、より正確な駆動信号によって、より精度よく適正な分量及び速度で液滴の吐出を行うことができる。
【0082】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、論理回路21~23の基準電圧Vthが、入力信号Sinや遅延信号Sdの上端電圧と下端電圧の中間値よりもローレベル入力電圧に近い(中間値より小さい)ものとして説明したが、これに限られない。この基準電圧Vthの大きさに応じて、遅延信号の立ち上がり開始から基準電圧となるまでの所要時間と立ち下がり開始から基準電圧になるまでの所要時間との大小関係が変化するので、長い方を短くする調整回路を有していればよい。また、基準電圧Vthが同一の駆動回路100内の論理回路21と論理回路22とで異なっていてもよい。この場合でも、遅延量(時定数)及びパルス幅が適切になるように、調整回路11の調整がなされてもよい。
【0083】
また、調整回路11は、上記遅延が大きい方の遅延を小さくするものに限らず、遅延が小さい方を大きくするものであってもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、並列の抵抗素子R2にダイオードD1を直列に接続させたが、調整回路は、この形態に限られない。例えば、直列に並んでいる複数の抵抗素子の一部を短絡させるバイパス線を有し、当該バイパス線の途中にダイオードが位置していることで、短絡の有無に応じて合成抵抗が変化するものであってもよい。
【0085】
また、上記実施の形態では、立ち上がりと立ち下がりの両方で電流が流れる抵抗素子R1と、ダイオードD1により立ち下がりのみで電流が流れる抵抗素子R2とが並列に位置しているものとして説明したが、これに限られない。立ち上がりのみで電流が流れるように、第1の抵抗素子と直列に、ダイオードD1と反対向きのダイオードが位置していてもよい。あるいは、抵抗素子R1と抵抗素子R2にそれぞれ反対向きのダイオードが直列に接続されており、各抵抗素子R1、R2は、それぞれ立ち上がり専用及び立ち下がり専用として区別されていてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、遅延回路10がRC回路であるものとして説明したが、これに限られない。その他の回路、例えば、抵抗素子の代わりに/加えてインダクターを有するLC回路やRLC回路などであってもよい。
【0087】
また、上記実施の形態では、レベル変換回路30がバイポーラートランジスターの組合せを有するプッシュプル型のものとして説明したが、これに限られない。例えば、FETの組合せ、すなわち、NチャンネルFETとPチャンネルFETの組合せを有するものであってもよい。また、単純なプッシュプル型ではなく、各トランジスターが各々ブートストラップ構造などを有していて、npnトランジスターとnpnトランジスター、又はNチャンネルFETとNチャンネルFETのように、同一構造の組合せのレベル変換回路により電力増幅がなされるものであってもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、論理回路21、22に対する入力電圧の立ち上がり時と立ち下がり時で基準電圧Vthが同一であるものとして説明したが、基準電圧Vthが異なっていてもよい。この場合でも、立ち上がりの開始タイミングから立ち上がり時の基準電圧Vthまでの変化に要する時間と、立ち下がり開始タイミングから立ち下がり時の基準電圧Vthまでの変化に要する時間とがほぼ同一となるように調整回路11が動作する構成となっていればよい。
【0089】
また、切替制御部は、論理回路21~23などでなくてもよい。他の素子や回路などであってもよい。
【0090】
また、上記変形例1及び変形例2では、第1の信号生成部(信号生成部101)から出力される駆動信号Smnの立ち上がりと第2の信号生成部1012から出力される駆動信号Smpの立ち下がりとが同時である場合について説明したが、これに限られない。これらが互いに異なるタイミングである場合でも両タイミング間の間隔を正確に定めるために、駆動回路100a、100bが上記回路構成を有していてもよい。
【0091】
また、上記変形例3では、第2の信号生成部1012cと第3の信号生成部1013のいずれかから選択的に駆動信号がアクチュエーター200の第2端に出力されるものとしたが、第2の信号生成部1012cがなくてもよい。反対に、第1の信号生成部(信号生成部101c)以外の信号生成部が第1端に接続され、いずれかから選択的に駆動信号がアクチュエーター200の第1端に出力される構成であってもよい。
【0092】
また、入力信号Sin3は、完全に入力信号Sin1と同一でなくてもよい。一部分に入力信号Sin1と同一の部分を含むものであってもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、駆動パルス波形は矩形波であるものとして説明したが、遅延回路が有効に機能する立ち上がり及び立ち下がりの明確な波形であれば、これに限られるものではない。
【0094】
また、上記実施の形態では、液滴吐出素子として電気信号を機械運動に変換するアクチュエーター200を例に挙げて説明したが、これに限られない。電気信号を熱に変換して液体を加熱することにより液滴を吐出させる構成などであってもよいし、電気信号に応じて電磁誘導により生じる磁場に応じた機械運動(変形)を生じる素子などであってもよい。
【0095】
また、吐出される液滴は、インクに限られない。他の種々の液体であってもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0096】
1 液滴吐出装置
7 通信部
8 表示部
9 操作受付部
10、10a、10c 遅延回路
11、11a、11c 調整回路
21~23、21a、22a、23c 論理回路
30、30a、30c レベル変換回路
40、40a~40c 吐出選択部
51 搬送部
511 搬送駆動部
52 ヘッド駆動制御部
521 ヘッド制御部
522 信号制御部
53 液滴吐出ヘッド
531 ヘッド駆動部
61 制御部
611 CPU
612 RAM
62 記憶部
621 画像データ
100、100a~100c 駆動回路
101、101c 信号生成部
1012、1012b、1012c 第2の信号生成部
1013 第3の信号生成部
200 アクチュエーター
C1 キャパシター
D1 ダイオード
N ノズル
R1、R2 抵抗素子
Sc1~Sc5、Sc3a、 切替信号
Sd、Sd1~Sd3 遅延信号
Sin、Sin1~Sin3 入力信号
Sm、Smn、Smp、Smp1、Smp2 駆動信号
Tr1、Tr1a、Tr1c pnpトランジスター
Tr2、Tr2a、Tr2c npnトランジスター
Vc、Vc1、Vc2、Vc3 供給電圧
Vin 入力電圧
Vth 基準電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8