(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
B64D 25/00 20060101AFI20241106BHJP
B64C 27/04 20060101ALI20241106BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20241106BHJP
B64D 27/20 20060101ALI20241106BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241106BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241106BHJP
【FI】
B64D25/00
B64C27/04
B64D27/24
B64D27/20
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
(21)【出願番号】P 2021021607
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 知之
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6751932(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0351999(US,A1)
【文献】特開2020-006812(JP,A)
【文献】特開2019-206235(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112356967(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 25/00
B64C 27/04
B64D 27/24
B64D 27/20
H01M 8/04
H01M 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体であって、
ロータと、
前記ロータを駆動するモータと、
前記モータに電力を供給する燃料電池と、
前記燃料電池に供給する燃料ガスを収容する燃料容器と、
前記燃料容器内の前記燃料ガスを噴射するスラスターと、
前記スラスターを制御する制御部と、を備え、
前記スラスターは、前記燃料電池を介することなく、前記燃料容器に接続されており、
前記制御部は、前記飛行体が予期せず降下したときに、前記スラスターから下方に向けて前記燃料ガスを噴射させる、
飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、飛行体の一例であるドローンが開示されている。このドローンは、燃料電池と、その燃料ガス(例えば、水素等)を収容する燃料容器とを備える。この種の飛行体では、例えば何らかのトラブルが発生したときに、飛行体が予期せず降下するおそれがある。そこで、特許文献1のドローンでは、燃料容器の表面に空気抵抗層が設けられており、飛行体が予期せず降下した場合でも、その降下速度が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の飛行体では、燃料容器の表面に空気抵抗層を設ける必要があり、その分だけ燃料容器の大きさや質量が増大し、ひいては飛行体の大きさ及び質量が増大するという問題があった。
【0005】
本明細書は、燃料容器の表面に空気抵抗層を設けることなく、飛行体が予期せず降下したときに、その降下速度を抑制し得る技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する飛行体は、ロータと、ロータを駆動するモータと、モータに電力を供給する燃料電池と、燃料電池に供給する燃料ガスを収容する燃料容器と、燃料容器内の燃料ガスを噴射するスラスターと、スラスターを制御する制御部と、を備える。制御部は、飛行体が予期せず降下したときに、スラスターから下方に向けて燃料ガスを噴射させる。
【0007】
上記の飛行体では、飛行体が予期せず降下したときに、スラスターから下方に向けて燃料ガスが噴射される。これにより、例えばモータ等に異常が生じており、ロータの駆動が不能又は不全な状況であっても、飛行体の降下速度を抑制することができる。ここで、飛行体が予期せず降下している状況において、スラスターから燃料ガスが噴射されるタイミングは、特に限定されない。但し、一例ではあるが、飛行体が地表に接近したタイミングで、スラスターから燃料ガスが噴射されると、地表に対する飛行体の相対速度は、効果的に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例に係る飛行体の概略構成を示す図であり、(a)は飛行体の側面図を示し、(b)は飛行体の正面図を示す。
【
図2】実施例に係る飛行体の制御系を示すブロック図。
【
図3】飛行体が予期せず降下したときにスラスターから燃料ガスを噴射する処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0009】
図面を参照して、本実施例に係る飛行体10について説明する。
図1(a)、
図1(b)及び
図2に示すように、飛行体10は、本体12と、4つのロータ14と、4つのモータ18と、燃料電池20と、燃料容器22と、4つの脚部24と、4つのスラスター30と、姿勢センサ36と、スラスター30の可動機構38と、制御部40を備えている。なお、図面を見易くするために、
図1(a)では手前側と奥側に配置される2つのロータ14、2つの脚部24及び2つのスラスター30(
図1(b)で図示される2つのロータ14、2つの脚部24及び2つのスラスター30)の図示を省略している。同様に、
図1(b)でも手前側と奥側に配置される2つのロータ14、2つの脚部24及び2つのスラスター30(
図1(a)で図示される2つのロータ14、2つの脚部24及び2つのスラスター30)の図示を省略している。
【0010】
4つのロータ14は、放射状に延びるアーム16を介して本体12に接続されている。アーム16は、飛行体10が平坦面に着地しているときに、平坦面と平行となるように本体12に取り付けられている。4つのロータ14は、飛行体10を上面視したときに、周方向に均等に(すなわち、90度ずつずらして)配置されている。各々のロータ14には、対応する一つのモータ18が同軸に配置されており、4つのロータ14は、4つのモータ18によってそれぞれ回転駆動される。4つのロータ14が回転することにより、揚力が発生して飛行体10は飛行する。なお、本実施例では、飛行体10は4つのロータ14を備えているが、このような構成に限定されない。飛行体10が飛行できればよく、ロータ14の数は4つより多くてもよいし、4つより少なくてもよい。
【0011】
燃料電池20は、本体12内に配置されている。燃料電池20は、各々のモータ18に電力を供給する。燃料容器22は、本体12の下面に当接している。燃料容器22の内部には、燃料ガスが収容されている。燃料容器22は、内部に収容されている燃料ガスを燃料電池20に供給可能に構成されている。燃料ガスは、水素であるが、燃料電池20に燃料として供給可能なガスであれば、その種類は特に限定されない。
【0012】
脚部24は、棒状であり、アーム16の下面に取り付けられている。脚部24は、飛行体10を上面視したときに、下端がアーム16の外側に位置するように斜めに取り付けられている。4つの脚部24は、飛行体10を上面視したときに周方向に均等に(すなわち、90度ずつずらして)配置されている。脚部24は、飛行体10が平坦面に着地しているときに、4つの脚部24の下端のみが平坦面に当接するような寸法とされている。なお、本実施例では、飛行体10は4つの脚部24を備えているが、このような構成に限定されない。脚部は、飛行体10が平坦面に着地しているときに飛行体10を支持できればよく、脚部24の数は4つより多くてもよいし、4つより少なくてもよい。また、脚部は、飛行体10が平坦面に着地しているときに飛行体10を支持可能であればよく、その形状は特に限定されない。
【0013】
スラスター30は、主止弁32と配管34を介して燃料容器22に接続されている。具体的には、主止弁32は、燃料容器22と配管34との間に取り付けられており、配管34は、飛行体10が平坦面に着地しているときに、平坦面と平行となるように本体12に取り付けられている。スラスター30は、配管34の下方に設置されている。主止弁32が開けられると、燃料容器22内の燃料ガスは、配管34内に流入し、配管34を通ってスラスター30に供給される。すなわち、主止弁32が開けられると、スラスター30から燃料容器22内の燃料ガスが噴射する。4つのスラスター30は、飛行体10を下面視したときに周方向に均等に(すなわち、90度ずつずらして)配置されている。なお、本実施例では、飛行体10は4つのスラスター30を備えているが、このような構成に限定されない。スラスター30の数は4つより多くてもよいし、4つより少なくてもよい。
【0014】
姿勢センサ36は、飛行体10の姿勢を検知するセンサである。姿勢センサ36による検知信号は、制御部40に送信される。制御部40は、姿勢センサ36から受信した検知信号に基づいて飛行体10に姿勢を判定している。
【0015】
可動機構38は、スラスター30から噴射する燃料ガスの向きを変更するように構成されている。具体的には、可動機構38は、スラスター30と配管34との間に配置されており(図示は省略)、スラスター30の噴射口が開口する向きを変更する。可動機構38によって、スラスター30は、噴射口が下方に向くように噴射口の向きが変更される。
【0016】
制御部40は、メモリとCPUを含むコンピュータを用いて構成されている。
図2に示すように、制御部40は、モータ18、主止弁32及び可動機構38と接続されており、モータ18、主止弁32及び可動機構38の動作を制御している。また、制御部40は、姿勢センサ36と接続されており、姿勢センサ36から検知信号を取得する。
【0017】
次に、
図3を参照して、制御部40が実行する処理について説明する。制御部40は、
図3に示す処理を実行することによって、飛行体10が予期せず降下したときに、スラスター30から燃料ガスを噴射させることができる。例えば、飛行体10に異常等が生じた場合は、飛行体10に予定又は指示された飛行動作に反して、飛行体10が降下することがある。このような予期しない降下では、飛行体10の降下速度を制御することができず、降下速度が過大なるおそれがある。これを回避するために、本実施例の飛行体10は、予期せず降下する状況が生じた場合に、スラスター30から下方に向かって燃料ガスを噴射することにより、降下速度を低減させることができる。
【0018】
図3に示すように、まず、制御部40は、姿勢センサ36からの検出信号を受信する(S12)。次いで、制御部40は、ステップS12で受信した検出信号に基づいて、飛行体10が所定範囲より傾いているか否かを判定する(S14)。飛行体10が所定範囲より傾いていないとき(ステップS14でNO)、制御部40は、飛行体10の姿勢は正常であると判断する。そして、ステップS12に戻り、ステップS12及びステップS14の処理を繰り返す。
【0019】
一方、飛行体10が所定範囲より傾いているとき(ステップS14でNO)、制御部40は、飛行体10の姿勢が異常であると判断する。このような状態では、飛行体10が正常に飛行しているとは考えられず、飛行体10が予期せず降下していると判断することができる。このため、制御部40は、ステップS12で受信した検出信号に基づいて、可動機構38を駆動する(S16)。具体的には、姿勢センサ36で検知された飛行体10の姿勢に基づいて、制御部40は、スラスター30の噴射口が下方に向けて開口するように可動機構38を駆動する。その後、制御部40は、主止弁32を開弁する(S22)。これにより、燃料容器22内の燃料ガスが、スラスター30から噴射される。スラスター30の噴射口は、可動機構38によって下方に向けられている。このため、スラスター30からは、下方に向かって燃料ガスが噴射される。これにより、飛行体10に上向きの制動力が作用することで、飛行体10の降下速度を低減することができる。
【0020】
また、本実施例では、飛行体10が予期せず降下したときに、燃料容器22内の燃料ガスを噴射している。このような構成を実現するために、飛行体10は、少なくともスラスター30、主止弁32及び配管34を備えればよい。従来の空気抵抗層のように、サイズや質量が比較的に大きな構成を飛行体10に設けることなく、飛行体10が予期せず降下したときに、飛行体10の降下速度を抑制することができる。
【0021】
なお、本実施例では、姿勢センサ36によって飛行体10の姿勢を監視し、その異常を検出することによって、飛行体10の予期しない降下を検出している。しかしながら、飛行体10の予期しない降下を検出し得る限りにおいて、このような構成に限定されない。例えば、飛行体10が加速度センサやGPS(Global Positioning System)等を備え、それらを用いて飛行体10の急降下を検出することによって、飛行体10の予期しない降下を検出してもよい。あるいは、モータ18や燃料電池20といった、飛行体10の構成要素の異常を検出することによって、飛行体10の予期しない降下を検出してもよい。例えばモータ18に異常が生じると、ロータ14を回転させることができなくなる。このため、モータ18に異常が生じたときにも飛行体10が予期せず降下する。さらには、本実施例では、制御部40が、飛行体10の予期しない降下を検出していたが、このよう構成に限定されない。例えば、飛行体10の予期しない降下は、飛行体10とは物理的に分離された外部装置等によって検出されてもよい。例えば、飛行体10が遠隔操作可能な構成である場合には、遠隔操作している操作者や外部の制御システムが飛行体10の予期しない降下を検出したときに、それを示す信号を飛行体10に送信してもよい。このような構成によっても、飛行体10は、自己の予期しない降下を検知することができる。
【0022】
また、本実施例では、スラスター30の噴射方向が、可動機構38によって変更可能に構成されているが、このような構成に限定されない。飛行体10が予期せず降下したときにスラスター30の噴射口が下方を向いていればよく、例えば、飛行体10が自由落下するときに、飛行体10の重量配分によっては、飛行体10の姿勢が大きく傾くことなく維持されることもある。このような場合、スラスター30の噴射口は、概して下方を向くことになるので、スラスター30の噴射方向を調整する可動機構38やそれに類する構成は、必ずしも必要とされない。あるいは、姿勢センサ36を用いて飛行体10の姿勢を監視し、スラスター30の噴射方向が下方に向いたタイミングで、スラスター30から燃料ガスを噴射させてもよい。加えて、又は代えて、飛行体10は、飛行体10の姿勢に応じて、複数のスラスター30から燃料ガスの噴射を選択的に実施してもよい。
【0023】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0024】
10:飛行体
12:本体
14:ロータ
18:モータ
20:燃料電池
22:燃料容器
30:スラスター
32:主止弁
34:配管
36:姿勢センサ
38:可動機構
40:制御部