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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ステントデリバリー装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20241106BHJP
【FI】
A61F2/966
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021022296
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022124574
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】福島 寛満
(72)【発明者】
【氏名】片山 貴博
(72)【発明者】
【氏名】山辺 悦朗
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 偉師
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/186692(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95 - 2/97
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管部と、
前記外管部の基端部が固定されている外管ハンドルと、
前記外管部に対して軸方向に摺動可能に挿通されている内管部と、
前記内管部と一体化されており、前記外管ハンドルから基端側に延出している内シャフトと、
前記内シャフトの基端部が固定されているシャフトハンドルと、
を備え、
前記外管ハンドルを前記外管部とともに前記シャフトハンドル側に後退させることによって、前記内管部の先端部を前記外管部から露出させて、前記内管部により保持されたステントを体腔に留置可能であり、
前記外管部は、基端側部分と、前記基端側部分の先端側に連接されている先端側部分と、を有し、
前記基端側部分は、第1樹脂材料を基材として構成されており、
前記先端側部分は、前記第1樹脂材料よりも硬度が低い第2樹脂材料を基材として構成されており、
前記先端側部分と前記基端側部分との境界部の周方向において、前記先端側部分と前記基端側部分との境界線が先端側に凸になっている突出部分と、前記境界線が基端側に凸になっている凹欠部分と、が存在しており、
前記外管部は、編組された金属ワイヤにより網目状に構成された補強層を含み、
一連の前記補強層が、前記基端側部分から前記先端側部分に亘って配置されており、
前記境界部の周方向において互いに隣接する前記突出部分及び前記凹欠部分に関し、
前記外管部の軸方向において、前記突出部分の最大突出箇所と前記凹欠部分の最大凹欠箇所との差分寸法が、前記補強層の網目の目開き1個分の寸法よりも小さいステントデリバリー装置。
【請求項2】
前記境界部の周方向において、複数の前記突出部分と複数の前記凹欠部分とが繰り返し存在している請求項1に記載のステントデリバリー装置。
【請求項3】
前記差分寸法が、前記網目の目開き半個分の寸法よりも大きい請求項1又は2に記載のステントデリバリー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントデリバリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントを体腔に留置するために用いられるステントデリバリー装置としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1のステントデリバリー装置(同文献は、留置具搬送装置と記載)は、体腔に留置されるステント(同文献には、留置具と記載)を保持する管状本体と、管状本体の遠位部を屈曲させることが可能な操作部と、近位側へのステントの移動を制限可能な制限部材と、を備えており、管状本体の遠位部を屈曲させた状態で、管状本体を制限部材に対して相対的に移動させることによって、ステントを体腔に留置可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-078459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、引用文献1のステントデリバリー装置は、体腔に挿入される際の侵襲性を低減する観点から、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、体腔に挿入される際の侵襲性をより低減することが可能な構造のステントデリバリー装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、外管部と、
前記外管部の基端部が固定されている外管ハンドルと、
前記外管部に対して軸方向に摺動可能に挿通されている内管部と、
前記内管部と一体化されており、前記外管ハンドルから基端側に延出している内シャフトと、
前記内シャフトの基端部が固定されているシャフトハンドルと、
を備え、
前記外管ハンドルを前記外管部とともに前記シャフトハンドル側に後退させることによって、前記内管部の先端部を前記外管部から露出させて、前記内管部により保持されたステントを体腔に留置可能であり、
前記外管部は、基端側部分と、前記基端側部分の先端側に連接されている先端側部分と、を有し、
前記基端側部分は、第1樹脂材料を基材として構成されており、
前記先端側部分は、前記第1樹脂材料よりも硬度が低い第2樹脂材料を基材として構成されており、
前記先端側部分と前記基端側部分との境界部の周方向において、前記先端側部分と前記基端側部分との境界線が先端側に凸になっている突出部分と、前記境界線が基端側に凸になっている凹欠部分と、が存在しており、
前記外管部は、編組された金属ワイヤにより網目状に構成された補強層を含み、
一連の前記補強層が、前記基端側部分から前記先端側部分に亘って配置されており、
前記境界部の周方向において互いに隣接する前記突出部分及び前記凹欠部分に関し、
前記外管部の軸方向において、前記突出部分の最大突出箇所と前記凹欠部分の最大凹欠箇所との差分寸法が、前記補強層の網目の目開き1個分の寸法よりも小さいステントデリバリー装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ステントデリバリー装置が体腔に挿入される際の侵襲性をより低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るステントデリバリー装置の模式的な全体図である。
図2図1に示すA-A線に沿った断面図である。
図3図1に示すB-B線に沿った断面図である。
図4図2に示すA-A線に沿った断面図である。
図5】実施形態に係る外管ハンドルの内部構造を示す側面図である。
図6図6(a)は実施形態に係る切替操作部の軸中心に沿った断面図であり、図6(b)は実施形態における螺合部材を示す正面図である。
図7図7(a)は図1に示すC部の部分拡大図であり、図7(b)は図7(a)の断面図である。
図8】実施形態に係るステントデリバリー装置が内視鏡に挿入された状態を示す模式的な図である。
図9図9(a)、図9(b)及び図9(c)は実施形態に係るステントデリバリー装置の動作を説明するための図であり、このうち図9(a)は内管部の先端部が外管部から僅かに露出した状態を示しており、図9(b)は図9(a)に示す状態よりも内管部の先端部が外管部から更に露出した状態を示しており、図9(c)は内管部におけるステントの配置区間の全体が外管部から露出した状態を示している。
図10図10(a)、図10(b)及び図10(c)は実施形態に係るステントデリバリー装置の動作を説明するための図であり、このうち図10(a)は図9(a)と対応する状態における外管ハンドルの位置を示しており、図10(b)は図9(b)と対応する状態における外管ハンドルの位置を示しており、図10(c)は図9(c)と対応する状態における外管ハンドルの位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図1から図10(c)を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。また、図1図2図3図4及び図9(a)においては、ステント200を2点鎖線で示している。また、図6(b)においては、内シャフト50及びリング部材33の図示を省略している。また、図7(b)は、図2に示すA-A線に沿った断面図である。
なお、本発明のステントデリバリー装置100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、以下において、ステントデリバリー装置100の遠位側を先端側、その近位側を基端側ともいう。また、先端部は、遠位端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、基端部とは、近位端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味するものとする。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るステントデリバリー装置100は、外管部10と、外管部10の基端部10aが固定されている外管ハンドル20と、外管部10に対して軸方向に摺動可能に挿通されている内管部40と、内管部40と一体化されており、外管ハンドル20から基端側に延出している内シャフト50と、内シャフト50の基端部が固定されているシャフトハンドル60と、を備えている。
外管ハンドル20を外管部10とともにシャフトハンドル60側に後退させることによって、内管部40の先端部40bを外管部10から露出させて、内管部40により保持されたステント200を体腔に留置可能である。
外管部10は、基端側部分18と、基端側部分18の先端側に連接されている先端側部分17と、を有し、基端側部分18は、第1樹脂材料を基材として構成されており、先端側部分17は、第1樹脂材料よりも硬度が低い第2樹脂材料を基材として構成されている。
図7(a)に示すように、先端側部分17と基端側部分18との境界部12の周方向において、先端側部分17と基端側部分18との境界線が先端側に凸になっている突出部分12aと、境界線が基端側に凸になっている凹欠部分12bと、が存在している。
図7(b)に示すように、外管部10は、編組された金属ワイヤにより網目状に構成された補強層16を含み、一連の補強層16が、基端側部分18から先端側部分17に亘って配置されている。
境界部の周方向において互いに隣接する突出部分12a及び凹欠部分12bに関し、外管部10の軸方向において、突出部分12aの最大突出箇所と凹欠部分12bの最大凹欠箇所との差分寸法(図7(a)に示すL1)が、補強層16の網目16aの目開き1個分の寸法(図7(a)に示すL2)よりも小さい。
なお、網目16aの目開き1個分の寸法L2とは、軸方向における網目16aの開口幅を意味している。
【0011】
本実施形態によれば、先端側部分17は、第1樹脂材料よりも硬度が低い第2樹脂材料を基材として構成されている。すなわち、先端側部分17が基端側部分18よりも柔らかく構成されている(先端側部分17の曲げ剛性が基端側部分18の曲げ剛性よりも低い)ので、ステントデリバリー装置100を体腔に挿入する際に、先端側部分17を体腔の屈曲形状に良好に追従させることが可能な構造を容易に実現できる。
更に、本実施形態によれば、先端側部分17と基端側部分18との境界部12の周方向において、突出部分12aと、凹欠部分12bと、が存在している。これにより、境界部12において、他の部分よりも硬度が低い部分(先端側部分17)と他の部分よりも硬度が高い部分(基端側部分18)とがなだらかに切り替わっている構成となるので、この範囲において、外管部10がキンクしてしまうことを抑制できる。
このように、本実施形態によれば、ステントデリバリー装置100が体腔に挿入される際の侵襲性をより低減することができる。
また、本実施形態によれば、外管部10の軸方向において、突出部分12aの最大突出箇所と凹欠部分12bの最大凹欠箇所との差分寸法L1が、補強層16の網目16aの目開き1個分の寸法L2よりも小さい。このため、先端側部分17と基端側部分18との境界部12の外観が良好となる。
また、本実施形態によれば、一連の補強層16が、基端側部分18から先端側部分17に亘って配置されているので、先端側部分17と基端側部分18との連結強度を確保することができる。
【0012】
ステント200が内管部40に保持されている状態において、ステント200は外管部10の内周面と内管部40の外周面との間に縮径状態で収容されている。そして、ガイドワイヤ300(図10(a)等参照)に沿って外管部10及び内管部40を体腔の所望の部位に挿入した状態で、外管ハンドル20を外管部10とともにシャフトハンドル60側に後退させ、内管部40の先端部40bを外管部10から露出させることによって、ステント200を、縮径状態から展開状態に変形させて、当該所望の部位に留置することができる。より詳細には、内管部40の先端部40bが外管部10から露出するのに伴って、ステント200も外管部10から露出し、ステント200における露出した部分が展開状態となる。すなわち、外管ハンドル20の後退量に応じて、ステント200の展開が進行する。
なお、ステント200の縮径状態とは、ステント200が径方向に圧縮されている状態を意味しており、ステント200の展開状態とは、ステント200が径方向に拡張した状態を意味している。
【0013】
外管部10は、長尺な中空の管状部材である。図2及び図3に示すように、内管部40は、外管部10の内腔に挿通されており、外管部10は内管部40に対してその軸方向に摺動可能である。
本実施形態の場合、外管部10の内径及び外径は軸方向における位置にかかわらず一定であり、したがって、外管部10の肉厚は軸方向における位置にかかわらず一定である。ただし、外管部10の外径や内径は、軸方向における位置に応じて異なっていても良い。
図2及び図4に示すように、外管部10は、例えば、内層14と、内層14の周囲に設けられた外層15と、を備える二層構造であり、外管部10の軸心側から、内層14と外層15との順に積層されて構成されている。また、補強層16は、例えば、外層15に埋設されており、内層14の周囲に配置されている。
なお、外層15の表面には親水層(不図示)が形成されていてもよい。親水層の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの無水マレイン酸系ポリマーやその共重合体、ポリビニルピロリドンなどの親水性の樹脂材料であることが挙げられる。このようにすることにより、外管部10が生体の体腔に挿入される際の摺動抵抗を低減することができる。
【0014】
内層14は、外管部10の最内層であり、例えば、肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定の円管状に形成されている。内層14は、外管部10の先端と基端との両端において開口している。
内層14は、例えば、フッ素系の熱可塑性ポリマー樹脂により構成されている。フッ素系の熱可塑性ポリマー材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などとすることができる。内層14をこのようなフッ素系ポリマー材料で構成することにより、内管部40が外管部10の内腔で摺動する際の摺動抵抗が低減される。
【0015】
外層15は外管部10の最外層である。例えば、外管部10の肉厚の大部分(過半部)は、外層15の肉厚によって占められている。外層15は、例えば、その肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定の円管状に形成されている。
【0016】
ここで、本実施形態の場合、図7(b)に示すように、内層14は、先端側部分17と基端側部分18とに亘って配置されている一連の層である一方で、外層15において、先端側部分17を構成している部分と、基端側部分18を構成している部分と、は互いに個別に成形された後で、相互に一体化されている。
より詳細には、外層15において、先端側部分17を構成している部分は、例えば、第1樹脂材料によって構成されており、基端側部分18を構成している部分は、例えば、第2樹脂材料によって構成されている。
【0017】
本実施形態の場合、外管部10を作成するに際して、先ず、金属ワイヤを内層14の外周面においてメッシュ状に編組して補強層16を形成する。続いて、第2樹脂材料によって構成されている樹脂管を、内層14の先端側部分に対して外挿し、第1樹脂材料によって構成されている樹脂管を、内層14の基端側部分に対して外挿する。そして、先端側部分17の基端と基端側部分18の先端とを互いに突き当てた状態で、不図示の熱収縮チューブを用いて熱融着する。これにより、外層15において、先端側部分17を構成している部分と、基端側部分18を構成している部分とが、径方向おける段差が無い状態で相互に熱融着される。
【0018】
第1樹脂材料は、例えば、1つ又は複数のポリマーを含む。このポリマーは、例えば、ポリエーテルブロックコポリアミドポリマー(例えばPEBAX(登録商標))、コポリエステルエラストマー(例えばArnitel(登録商標)コポリエステルエラストマー)、熱硬化性ポリマー、ポリオレフィン(例えばMarlex(登録商標)ポリエチレン、Marlex(登録商標)ポリプロピレン)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリアミド(例えばVestamid(登録商標))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びシリコーンであることが挙げられる。このポリマーの他には、例えば、ポリアミド(例えばナイロン)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(例えばHytrel(登録商標))、および熱可塑性ポリウレタンエラストマー(例えばPellethane(商標))など熱可塑性ポリマーが挙げられる。
第2樹脂材料は、例えば、第1樹脂材料と同種のポリマーを含んでいてもよく、及び/又は異なる種類のポリマーを含んでいてもよい。
【0019】
また、図7(a)に示すように、境界部12の周方向において、複数の突出部分12aと複数の凹欠部分12bとが繰り返し存在していることが好ましい。
このようにすることにより、境界部12の周方向における複数箇所において、他の部分よりも硬度が低い部分(先端側部分17)と他の部分よりも硬度が高い部分(基端側部分18)とがなだらかに切り替わっている構成となるので、この範囲において、外管部10がキンクしてしまうことをより確実に抑制できる。
なお、図7(a)に示す例では、先端側部分17と基端側部分18との境界線を不規則な波線で示している。すなわち、複数の突出部分12aには、軸方向における寸法が互いに異なる突出部分12aが含まれる。同様に、複数の凹欠部分12bには、軸方向における寸法が互いに異なる凹欠部分12bが含まれる。
なお、例えば、先端側部分17と基端側部分18との境界線よりも先端側において、基端側部分18を構成している第1樹脂材料が島状に存在していてもよい。同様に、当該境界線よりも基端側において、先端側部分17を構成している第2樹脂材料が島状に存在していてもよい。
また、先端側部分17と基端側部分18との境界線は、例えば、規則的な波線状となっていてもよい。
【0020】
外管部10の内径は、内管部40の外径(最大径)よりも大きい寸法に設定されている。このため、外管部10の内腔に内管部40を摺動可能に挿通することができる。
より詳細には、外管部10の内径は、特に限定されないが、1mm以上7mm以下であることが好ましい。外管部10の外径は、特に限定されないが、1.5mm以上8mm以下であることが好ましい。また、外管部10の全長は、特に限定されないが、500mm以上2500mm以下であることが好ましい。
【0021】
上述のように、補強層16は、例えば、外層15に埋設されており、内層14の周囲に配置されている。なお、図1及び図8図10(c)においては、補強層16の図示を省略している。
補強層16は、例えば、内層14の周囲において、金属ワイヤをメッシュ状に編組することにより形成されている。図7(a)では、一例として、網目16aの形状が略菱形をなす補強層16を示している。なお、ここでいう略菱形とは、第一の対角線が第二の対角線よりも長く、かつ当該第1の対角線と当該第二の対角線とが略直交していることを意味している。また、ここでいう略菱形とは、菱形のほか、凧形(カイト形)や、扁平六角形や扁平八角形などの扁平多角形を含む。また、略楕円形は、楕円形や楕円形のほか、卵形などの偏心円形を含む。
補強層16は、例えば、外管部10の先端から基端に亘って配設されている。外管部10は、補強層16によってその全体が補強されている。
なお、補強層16は、例えば、コイル状に巻回された金属ワイヤによって構成されたものであってもよい。また、補強層16は、例えば、外管部10の軸方向における一部分に配設されていてもよい。
【0022】
本実施形態の場合、差分寸法L1が、網目16aの目開き半個分の寸法(寸法L2の1/2の寸法)よりも大きいことも好ましい。
このようにすることにより、第1樹脂材料と第2樹脂材料とが互いにより十分に結合された状態となるので、先端側部分17と基端側部分18とを一層強固に連接された構造を実現できる。
【0023】
また、本実施形態の場合、外管部10の先端の近傍には、例えば、環状のマーカー部材11が埋設されている。
マーカー部材11は、例えば、白金やタングステンなどのX線不透過性の材料によって構成されている。マーカー部材11の位置を指標とすることにより、X線(放射線)観察下において体腔内における外管部10の先端部10bの位置を適確に認識することができる。
ただし、外管部10にマーカー部材11が埋設されていない場合、外管部10の外層15に無機フィラーを混合してもよい。無機フィラーとしては、硫酸バリウムや次炭酸ビスマスなどの造影剤を例示することができる。外層15に造影剤を混合することにより、体腔内における外管部10のX線造影性を向上することができる。
【0024】
図5に示すように、外管ハンドル20は、例えば、中空の部材であり、例えば、一方向に長尺な略直方体形状に形成されている。そして、内シャフト50は外管ハンドル20に対して摺動可能にこの内部に挿通されており、外管ハンドル20を内シャフト50に沿ってシャフトハンドル60側に移動させることによって、外管部10の基端部10aも内シャフト50に沿ってシャフトハンドル60側に後退させることができる。
なお、外管ハンドル20の説明に関し、図5における左側を先端側と称し、図5における右側を基端側と称する。また、先端側及び基端側に向かう方向を先基端方向と称する。
図1及び図5に示すように、外管ハンドル20は、例えば、第1部材22aと、第2部材22bと、を有しており、第1部材22aと第2部材22bとが相互に組み付けられることによって、外管ハンドル20が構成されている。なお、図5においては、第2部材22bの図示を省略しており、これらの図は外管ハンドル20の内部構造が見える状態の側面図となっている。
第1部材22aと第2部材22bとは、互いに同一寸法及び同一外形形状に形成されている。
外管部10の基端は、外管ハンドル20の内部に導入されており、外管部10の基端部10aは、外管ハンドル20の長手方向に沿って配置されている。
【0025】
より詳細には、図5に示すように、本実施形態の場合、外管部10の基端部10aの外周には、固定用リング部材19が設けられている。そして、外管ハンドル20は、収容凹部23を有し、当該収容凹部23に固定用リング部材19が収容されることにより、外管部10は外管ハンドル20に対して固定されている。
固定用リング部材19は、例えば、環状の部材であり、シリコーンゴムやエラストマー等の弾性材料によって構成されている。
固定用リング部材19は、例えば、外管部10に外嵌されることによって、当該外管部10に対して固定されている。
また、図5に示すように、第1部材22aの内側面から立設された4つの壁部によって側面視矩形状の収容凹部23が形成されている。固定用リング部材19は収容凹部23の内部に収容されており、当該収容凹部23によって先基端方向における固定用リング部材19の移動が規制されている。
ここで、収容凹部23には、2つの切欠形状部24cが形成されている。先基端方向に視た各切欠形状部24cの形状は、半円形状となっており、その直径は、外管部10の外径よりも僅かに大きい寸法に設定されている。外管部10において、固定用リング部材19よりも基端側の部分及び先端側の部分は、各切欠形状部24cを介して収容凹部23の外部に突出している。
なお、例えば、第2部材22bの内側面にも同様に、収容凹部23が形成されていてもよい。この場合、固定用リング部材19の一部分は、第1部材22aの収容凹部23の内部に配置され、固定用リング部材19の残りの部分は、第2部材22bの収容凹部23の内部に配置される。
【0026】
外管ハンドル20は、例えば、硬質な樹脂材料によって構成されている。硬質な樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等であることが挙げられる。
【0027】
図1図2及び図3に示すように、内管部40は、例えば、相対的に小径の細径部41と、相対的に大径の太径部42と、を含む。
細径部41及び太径部42の各々は、長尺な中空の管状部材である。細径部41の外径は、太径部42の内径よりも小さい寸法に設定されており、図3に示すように、細径部41の軸方向における一部分は、太径部42の内腔に挿通されている。また、細径部41の全長は、太径部42の全長よりも長い寸法に設定されている。そして、太径部42を基準として、細径部41は、太径部42の先端側の開口から先端側に突出しているとともに、太径部42の基端側の開口から基端側に突出している。
ここで、細径部41において、太径部42の先端よりも先端側の部位は、ステント200が配置される配置区間41aを構成している。ステント200は、細径部41における配置区間41aに外挿された状態で、内管部40の細径部41によって保持されている。
また、細径部41において、太径部42の基端よりも基端側の部位は、内シャフト50の内腔に挿通されている。より詳細には、太径部42の基端側の開口には、内シャフト50の先端部が挿入されており、太径部42の内腔と内シャフト50の内腔とは、互いに連通している。そして、細径部41は、太径部42の内腔と内シャフト50の内腔とに亘って挿通されており、更にはシャフトハンドル60の内部まで至っている。
【0028】
より詳細には、太径部42の先端部には、例えば、内視鏡視認マーカー46が設けられている。よって、細径部41において、内視鏡視認マーカー46よりも先端側の部位が配置区間41aであり、当該配置区間41aにステント200の全体が外挿されている。すなわち、ステント200の基端側には、内視鏡視認マーカー46が配置されている。よって、使用者は、内視鏡による撮影画像に基づいて、内視鏡視認マーカー46の位置を指標として、ステント200の位置を容易に把握することができる。
より詳細には、ステントデリバリー装置100を使用する際には、図8に示すように、内管部40において、少なくとも内視鏡視認マーカー46よりも先端側の部分が、内視鏡400の挿入部の先端から露出した状態となる。
また、内視鏡視認マーカー46の先端は、細径部41に対して固定されている。より詳細には、内視鏡視認マーカー46の先端、及び、細径部41の外周面において当該先端と対応する箇所には、接着剤42aが周回状に塗布されている。これにより、細径部41は、内視鏡視認マーカー46ひいては太径部42に対して固定されている。
内視鏡視認マーカー46の基端は、太径部42の先端側に連接されており、内視鏡視認マーカー46の内腔と太径部42の内腔とは互いに連通している。したがって、細径部41は、内視鏡視認マーカー46の内腔と太径部42の内腔とに亘って挿通されている。内視鏡視認マーカー46の外径は、太径部42の外径と略同等の寸法に設定されている。
内視鏡視認マーカー46は、例えば、太径部42とは別部材の樹脂チューブによって構成されており、太径部42とは異なる色に着色されている。また、本実施形態の場合、基端側部分18は、例えば、着色されており不透明(可視光に対して不透明)となっている一方で、先端側部分17は、例えば、透明(可視光に対して透明)となっている。このため、使用者は、外管部10を介して内視鏡視認マーカー46を視認することができる。
なお、内視鏡視認マーカー46は、例えば、太径部42の先端部にインクを塗布することによって形成されていてもよいし、白金やタングステンなどのX線不透過性の材料によって構成されていてもよい。
【0029】
また、細径部41の先端部には、先端チップ43(図1及び図4参照)が設けられている。先端チップ43は、例えば、先端側に向けて徐々に縮径した円錐状に形成されている。先端チップ43の基端部は、細径部41の先端部に対して連接されており、先端チップ43の内腔と細径部41の内腔とは、互いに連通している。
ステントデリバリー装置100を体腔に挿入する際には、予め体腔内に挿入されているガイドワイヤ300(図9(a)等参照)が、先端チップ43の先端側の開口から内管部40の内腔に挿入される。これにより、ガイドワイヤ300に沿って、外管部10及び内管部40を体腔に挿入することができる。なお、図9(a)~図10(c)においては、ガイドワイヤ300を1点鎖線で示している。
また、本実施形態の場合、先端チップ43の基端と外管部10の先端とは互いに対向している。そして、図4に示すように、先端チップ43の外径は、外管部10の外径と略同等又は当該外径よりも僅かに大きい寸法に設定されており、先端チップ43の内径は、外管部10の内径よりも小さい寸法に設定されている。
このため、例えば、外管ハンドル20を外管部10とともに先端チップ43側に前進させた場合、先端チップ43の基端面に外管部10の先端面が当接することによって、外管部10の更なる前進が規制されるので、外管部10と一体の外管ハンドル20の更なる前進も規制される。なお、以下の説明において、先端チップ43の基端面に外管部10の先端面が当接した状態(図1等参照)を、ステントデリバリー装置100の初期状態とする。
【0030】
更に、本実施形態の場合、細径部41の外周にはステント保持部48(図1等参照)が設けられている。ステント保持部48は、細径部41よりも大径に形成されている。
ステント保持部48は、配置区間41aにおいて、ステント200を保持しており、外管部10の後退又は前進に伴ってステント200が配置区間41aに対して変位してしまうことがステント保持部48によって規制されている。
より詳細には、ステント保持部48は、例えば、樹脂チューブであり、細径部41に外嵌されている。また、ステント保持部48の外周面及び配置区間41aにおけるステント保持部48の配置領域の近傍には、例えば、不図示の接着剤が塗布されており、当該接着剤によってステント保持部48は配置区間41aに対して固定されている。
ステント保持部48の内径は、細径部41の外径と略同等に設定されており、ステント保持部48の外径は、外管部10の内径よりも小さい寸法に設定されているとともに、縮径状態におけるステント200の内径よりも大きい寸法に設定されている。そして、ステント200は、当該ステント200の長手方向における一部分がステント保持部48に外挿された状態で、外管部10の内周面と細径部41の外周面との間で保持されている。より詳細には、ステント200において、ステント保持部48に外挿された部分は、外管部10の内周面とステント保持部48の外周面とによって挟持された状態となっており、これにより外管部10の後退又は前進に伴ってステント200が配置区間41aに対して相対的に軸方向に変位してしまうことが規制されている。
ステント保持部48の長さ寸法(軸方向における寸法)は特に限定されないが、ステント200の長さ寸法に応じて適宜設定されることが好ましい。
【0031】
細径部41は、例えば、フッ素系の熱可塑性ポリマー樹脂により構成されている。フッ素系の熱可塑性ポリマー材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などとすることができる。細径部41をこのようなフッ素系ポリマー材料で構成することにより、細径部41の内腔をガイドワイヤ300が摺動する際の摺動抵抗が低減される。
また、太径部42は、例えば、熱可塑性ポリマー材料によって、その全体が一体成形されている。この熱可塑性ポリマー材料は、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)などのナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン-酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などであることが挙げることができる。
なお、太径部42は、例えば、互いに別体に成形された管状部材どうしを互いに連接させることによって構成された1本の管状体であってもよい。
【0032】
細径部41の外径は、特に限定されないが、0.1mm以上2mm以下であることが好ましい。細径部41の内径は、特に限定されないが、0.05mm以上1mm以下であることが好ましい。また、細径部41の全長は、特に限定されないが、500mm以上3000mm以下であることが好ましい。
太径部42の外径は、特に限定されないが、1mm以上6mm以下であることが好ましい。太径部42の内径は、特に限定されないが、0.5mm以上4mm以下であることが好ましい。また、太径部42の全長は、特に限定されないが、500mm以上2500mm以下であることが好ましい。
【0033】
内シャフト50は、例えば、一方向に長尺な管状に形成されている。内シャフト50の先端部が太径部42の基端部に圧入固定されることによって、太径部42と内シャフト50とは互いに固定されている。なお、太径部42と内シャフト50とは、例えば、接着又は融着によって互いに固定されていてもよい。
本実施形態の場合、内シャフト50における、初期状態において外管ハンドル20よりも基端側に露出している区間が、出没部54を構成している。
シャフトハンドル60は、例えば、円筒状に形成されており、シャフトハンドル60は、太径部42の基端側に連接されており、太径部42の内腔と一連の内腔を有する。ステントデリバリー装置100を使用する際には、例えば、シャフトハンドル60の基端側の開口を介して、細径部41の内腔に生理食塩水や造影剤などを注入することができる。
【0034】
内シャフト50は、例えば、ステンレス鋼(SUS)などの金属材料によって構成されている。また、シャフトハンドル60は、例えば、ポリウレタンやポリアミドなどの樹脂材料によって構成されている。
【0035】
内シャフト50の外径(最大径)は、特に限定されないが、1mm以上6mm以下であることが好ましい。内シャフト50の内径は、特に限定されないが、0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。また、内シャフト50の全長は、特に限定されないが、30mm以上500mm以下であることが好ましい。
【0036】
ここで、図5に示すように、本実施形態の場合、外管ハンドル20は、内シャフト50に対する当該外管ハンドル20の進退を規制する状態と、内シャフト50に対する当該外管ハンドル20の進退が可能な状態と、の切替操作が可能な切替操作部30を含む。
切替操作部30は、弾性体により構成されているとともに内シャフト50が挿通されているリング部材33と、内シャフト50が挿通されているとともにリング部材33を収容している収容部材35と、内シャフト50が挿通されているとともに収容部材35に対して螺合している螺合部材37と、を有する。
本実施形態の場合、螺合部材37を収容部材35に螺入させて収容部材35と螺合部材37との間でリング部材33を圧縮させることにより、内シャフト50に対する切替操作部30の進退が規制されるようになっており、リング部材33の外径は、収容部材35に対して螺合部材37が螺入される螺進方向に向けて縮径している。
これにより、内シャフト50に対する外管ハンドル20の進退を適宜規制することができるので、意図せず外管ハンドル20を動かしてしまうことを抑制でき、所望のタイミング及び後退量で外管ハンドル20をシャフトハンドル60側に後退させることが容易となる。よって、意図したとおりのステント200の留置動作を容易に実現することが可能となる。
【0037】
リング部材33は、例えば、先基端方向を軸方向とする略円筒状に形成されており、リング部材33の内腔に内シャフト50が挿通されている。自然状態におけるリング部材33の内径は、例えば、内シャフト50の外径と略同等の寸法に設定されている。
リング部材33を構成する弾性体は、特に限定されないが、例えば、シリコーンゴムやエラストマー等の弾性材料であることが挙げられる。
【0038】
収容部材35は、螺進方向を軸方向とする円筒状に形成されている。内シャフト50は、収容部材35の内腔に挿通されており、収容部材35に対して当該収容部材35の軸方向に摺動可能である。
より詳細には、図6(a)に示すように、収容部材35は、例えば、螺合部材37が螺入する本体部35aと、切替操作を受け付ける操作受部35bと、を含む。
本体部35a及び操作受部35bの各々は、先基端方向を軸方向とする円筒状に形成されている。また、本体部35aと操作受部35bとは、互いに同軸に配置されている。
本体部35aの内径は、操作受部35bの内径(最大径)よりも小さく、本体部35aの外径は、操作受部35bの外径よりも小さい。
また、操作受部35bの基端部の内腔は、その他の部分の内腔よりも小径に形成されており、操作受部35bの内腔は大径部と小径部とを含む。操作受部35bの内腔の大径部には、リング部材33が収容されている。操作受部35bの内周面の一部分は、操作受部35bの内腔の大径部と小径部の境界部において、先端側を向く段差面を構成している。操作受部35bの軸方向に視た段差面の形状は、円環状となっており、当該段差面は、リング部材33の先端面と対向している。
また、図5に示すように、操作受部35bの外周面には、例えば、その軸方向に延在する複数の溝が当該操作受部35bの周方向において間欠的に配置されており、当該複数の溝と隣り合う溝どうしの間の部分とが、周方向において交互に配置された複数の凹凸を構成している。
【0039】
螺合部材37は、螺進方向を軸方向とする円筒状に形成されている。内シャフト50は、螺合部材37の内腔に挿通されており、螺合部材37に対して当該螺合部材37の軸方向に摺動可能である。
より詳細には、図6(a)及び図6(b)に示すように、螺合部材37は、例えば、収容部材35に対して螺合している螺合部37aと、螺合部37aの先端側に形成されているフランジ部37cと、収容部材35の本体部35aの内腔に挿入されている挿入部37bと、を含む。
螺合部37a及び挿入部37bの各々は、例えば、先基端方向を軸方向とする円筒状に形成されており、互いに同軸に配置されている。螺合部37aの基端は、挿入部37bの先端と連接されている。また、螺合部37aの内腔と挿入部37bの内腔とは互いに連通している。螺合部37aの外径は、例えば、挿入部37bの外径よりも大きい寸法に設定されており、螺合部37aの内径は、例えば、挿入部37bの内径と略同等の寸法に設定されている。
図6(b)に示すように、フランジ部37cの軸方向に視たフランジ部37cの外形形状は、例えば、正六角形状となっており、フランジ部37cの外周面は、6つの面により構成されており、当該6つの面は軸方向に直交する面に形成されている。
径方向におけるフランジ部37cの寸法は、螺合部37aの外径よりも大きい。
【0040】
本実施形態の場合、螺合部材37が先端側から収容部材35の内部に螺入されている
より詳細には、螺合部37aの外周面には、ねじ山が形成されており、螺合部37aは雄ねじ部となっている。また、本体部35aの内周面には、ねじ山が形成されており、本体部35aは雌ねじ部となっている。雌ねじ部と雄ねじ部とを螺合させることによって、螺合部材37と収容部材35とが相互に連結されている。そして、リング部材33は、螺合部37aの基端側の端面と、操作受部35bの段差面と、の間に配置されている。
また、内シャフト50は、螺合部材37の内腔と収容部材35の内腔とに亘って挿通されている。内シャフト50は、螺合部材37の先端側の開口から先端側に突出しているとともに、収容部材35の基端側の開口から基端側に突出している。
【0041】
収容部材35及び螺合部材37の各々は、例えば、硬質な樹脂材料によって構成されている。この樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等であることが挙げられる。収容部材35と螺合部材37とは、互いに同種の樹脂材料によって構成されていてもよいし、互いに異なる樹脂材料によって構成されていてもよい。
【0042】
ここで、外管ハンドル20の内部には、螺合部材37を保持する一対の保持部25と、収容部材35を収容する収容部26と、がそれぞれ形成されている。
一対の保持部25は、外管ハンドル20に対する螺合部材37の回転を規制している一方で、収容部26は、外管ハンドル20に対する収容部材35の回転を許容している。図5に示すように、一対の保持部25は、例えば、収容部26よりも先端側に配置されている。
そして、本実施形態の場合、螺合部材37と収容部材35とのうち、収容部材35を回転させることによって、螺合部材37が螺進方向に向けて移動する。
【0043】
より詳細には、一対の保持部25の各々は、第1部材22aの内側面に立設されている平板状の一対の壁部によって構成されている。一対の壁部の各々は、螺合部材37のフランジ部37cを間に挟んで配置されている。より詳細には、フランジ部37cの外周面を構成する6つの面のうち、いずれか1つの面が、一対の壁部のうち一方の壁部に対して面接触しており、当該面に対して平行な面が、一対の壁部のうち他方の壁部に対して面接触している。
このため、先基端方向における螺合部材37の移動が許容されている一方で、螺合部材37の回転が規制された状態で、螺合部材37は一対の保持部25によって保持されている。ただし、本実施形態の場合、第1部材22aの内側面において、一対の保持部25どうしの間には、螺合部材37が当該保持部25よりも先端側に移動することを規制する規制板27が形成されている。これにより、螺合部材37が規制板27よりも基端側に移動することが規制されている。
なお、先基端方向に視たフランジ部37cの形状は特に限定されず、その外周面が互いに対向した一対の面を有する形状であればよい。
また、このような一対の保持部25は、例えば、第2部材の内側面における第1部材22aの保持部25と対応する位置にも形成されていてもよい。
【0044】
本実施形態の場合、第1部材22aの内側面には、4つの壁部が立設されている。これら4つの壁部の集合体によって側面視略矩形状の枠状の収容部26が形成されている。また、収容部26には、2つの切欠形状部26aが形成されており、2つの切欠形状部26aのうちの一方は本体部35aの先端側への通過を許容しており、他方は内シャフト50の基端側への通過を許容している。これにより、収容部材35は、収容部26の内部に収容された状態で、外管ハンドル20に対して軸回りに回転可能となっている。そして、使用者は、例えば、操作受部35bを軸回りに回転させることによって、切替操作を行うことができる。
なお、このような収容部26は、例えば、第2部材22bの内側面において第1部材22aの収容部26と対応する部位にも形成されていてもよい。
ここで、第1部材22a及び第2部材22bの各々において、操作受部35bと対応する部分には、外管ハンドル20の内部空間と外管ハンドル20の外部とを相互に連通させている開口部22c(図1参照)が形成されている。そして、操作受部35bの周方向における少なくとも一部分は、開口部22cを介して外管ハンドル20の外部から使用者の指がアクセス可能となっている。なお、操作受部35bの一部分は、開口部22cを介して外管ハンドル20の外部に突出していてもよいし、突出してなくてもよい。
開口部22cは、例えば、側面視略矩形状に形成されている。
【0045】
本実施形態の場合、収容部材35に対して螺合部材37が螺入される螺進方向は、基端方向である。
より詳細には、収容部材35の操作受部35bを外管ハンドル20に対して相対的に周方向における一方に回転させる操作(以下、閉操作)によって、内シャフト50に対する外管ハンドル20の進退が規制された状態に切り替えることができる。閉操作にともなって、螺合部材37は、収容部材35に対して螺合するとともに、先端側から基端側に向けて螺進する。この際に、螺合部材37の螺進に伴って、螺進方向において、操作受部35bの段差面と、螺合部材37の螺合部37aの基端側の端面と、が互いに接近することとなる。これにより、操作受部35bの段差面と、と螺合部37aの基端側の端面との間に配置されているリング部材33は、当該面どうしによって押圧されて弾性変形し、軸方向に圧縮された状態となり、当該リング部材33の内径は縮径する。そして、更に閉操作を行うことによって、内シャフト50が先基端方向に圧縮されたリング部材33によって周回状に締め付けられた状態とすることができる。
また、収容部材35の操作受部35bを螺合部材37に対して相対的に周方向における他方向(閉操作における回転方向とは反対方向)に回転させる操作(以下、開操作)によって、内シャフト50に対する外管ハンドル20の進退が可能な状態に切り替えることができる。開操作にともなって、螺合部材37は先端側に向けて移動し、リング部材33は圧縮状態から解放され、内シャフト50に対して切替操作部30が進退可能となる。
ここで、上述のように、螺合部材37を保持している一対の保持部25の間には、規制板27が配置されている。螺合部材37が規制板27に当接することによって、収容部材35と螺合部材37との螺合が完全に解除されてしまうことが規制される。
なお、螺合部材37の螺進方向は、先端側から基端側に限定されず、螺合部材37は、基端側から先端側に向けて螺進するように構成されていてもよい。この場合、先基端方向において、収容部材35と螺合部材37との位置関係が逆転する。
【0046】
以下、本実施形態のステントデリバリー装置100の使用方法の一例を説明する。
以下では、一例として、ステント200を胆管(不図示)の内部に留置する手技にステントデリバリー装置100が用いられる例について説明する。
なお、予め内視鏡400の挿入部の先端部(図8参照)が、十二指腸(不図示)の内部において、十二指腸乳頭部(ファーター乳頭部)の近傍に留置されているとともに、胆管(不図示)内に針孔が形成されており、ガイドワイヤ300の先端部が、当該針孔に対してアンカーされている(係止されている)状態から説明する。
まず、ステントデリバリー装置100を、ガイドワイヤ300に沿って導入する。より詳細には、内管部40の細径部41をガイドワイヤ300に外挿し、内管部40をガイドワイヤの軸方向に沿って基端側から先端側に摺動させながら、内管部40及び外管部10を上記針孔まで送り込む。この際、切替操作部30によって内シャフト50に対する外管ハンドル20の進退が規制された状態としておく。次に、内管部40におけるステント200の配置区間41aが胆管の内部まで挿入されたら、ステント200を留置する。より詳細には、先ず、切替操作部30によって、内シャフト50に対する外管ハンドル20の進退が可能な状態に切り替える。そして、片方の手でシャフトハンドル60を把持しつつ、もう片方の手で外管ハンドル20を外管部10とともにシャフトハンドル60側に後退させることによって、内管部40の先端部40bを外管部10から露出させる(図9(a)及び図10(a)参照)。続いて、内管部40におけるステント200の配置区間41aの全体が外管部10から露出するまで、外管ハンドル20を後退させることによって、ステント200の全体が、縮径状態から展開状態となる(図9(c)及び図10(c)参照)。
そして、外管部10の先端が先端チップと当接するまで、外管ハンドル20を外管部10とともに前進させた状態で、再度、切替操作部30によって内シャフト50に対する外管ハンドル20の進退が規制されている状態に切り替える。この状態で、内管部40及び外管部10を体腔から抜去し、ガイドワイヤ300も体腔から抜去する。
なお、本実施形態の場合、ステント200を留置するに際して、内管部40の先端部40bが外管部10から露出しており、且つ、ステント保持部48が外管部10の内部に収納されている状態(図9(b)及び図10(b)参照)において、外管ハンドル20を前進させると、外管部10はステント200に対して相対的に前進し、当該ステント200を外管部10に再収納することができる。これにより、例えば、体腔における所望の位置以外の位置において、意図せずステント200の展開を開始してしまったとしても、ステント200を外管部10に再収納することによって、外管部10及び内管部40とともに体腔におけるステント200の位置を調整することができる。
【0047】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0048】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)外管部と、
前記外管部の基端部が固定されている外管ハンドルと、
前記外管部に対して軸方向に摺動可能に挿通されている内管部と、
前記内管部と一体化されており、前記外管ハンドルから基端側に延出している内シャフトと、
前記内シャフトの基端部が固定されているシャフトハンドルと、
を備え、
前記外管ハンドルを前記外管部とともに前記シャフトハンドル側に後退させることによって、前記内管部の先端部を前記外管部から露出させて、前記内管部により保持されたステントを体腔に留置可能であり、
前記外管部は、基端側部分と、前記基端側部分の先端側に連接されている先端側部分と、を有し、
前記基端側部分は、第1樹脂材料を基材として構成されており、
前記先端側部分は、前記第1樹脂材料よりも硬度が低い第2樹脂材料を基材として構成されており、
前記先端側部分と前記基端側部分との境界部の周方向において、前記先端側部分と前記基端側部分との境界線が先端側に凸になっている突出部分と、前記境界線が基端側に凸になっている凹欠部分と、が存在しており、
前記外管部は、編組された金属ワイヤにより網目状に構成された補強層を含み、
一連の前記補強層が、前記基端側部分から前記先端側部分に亘って配置されており、
前記境界部の周方向において互いに隣接する前記突出部分及び前記凹欠部分に関し、
前記外管部の軸方向において、前記突出部分の最大突出箇所と前記凹欠部分の最大凹欠箇所との差分寸法が、前記補強層の網目の目開き1個分の寸法よりも小さいステントデリバリー装置。
(2)前記境界部の周方向において、複数の前記突出部分と複数の前記凹欠部分とが繰り返し存在している(1)に記載のステントデリバリー装置。
(3)前記差分寸法が、前記網目の目開き半個分の寸法よりも大きい(1)又は(2)に記載のステントデリバリー装置。
【符号の説明】
【0049】
10 外管部
10a 基端部
10b 先端部
11 マーカー部材
12 境界部
12a 突出部分
12b 凹欠部分
14 内層
15 外層
16 補強層
16a 網目
17 先端側部分
18 基端側部分
19 固定用リング部材
20 外管ハンドル
22a 第1部材
22b 第2部材
22c 開口部
23 収容凹部
24c 切欠形状部
25 保持部
26 収容部
26a 切欠形状部
27 規制板
30 切替操作部
33 リング部材
35 収容部材
35a 本体部
35b 操作受部
37 螺合部材
37a 螺合部
37b 挿入部
37c フランジ部
40 内管部
40a 基端部
40b 先端部
41 細径部
42 太径部
43 先端チップ
46 内視鏡視認マーカー
46a 接着剤
48 ステント保持部
50 内シャフト
54 出没部
60 シャフトハンドル
100 ステントデリバリー装置
200 ステント
300 ガイドワイヤ
400 内視鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10