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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】マイクロLEDディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/32 20160101AFI20241106BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G09G3/32 A
G09G3/20 621E
G09G3/20 622K
G09G3/20 623V
G09G3/20 641A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021026892
(22)【出願日】2021-02-23
(65)【公開番号】P2022128556
(43)【公開日】2022-09-02
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】五所野尾 浩一
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-68082(JP,A)
【文献】特開2004-361794(JP,A)
【文献】特開2018-14475(JP,A)
【文献】特開2012-98441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0161378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリシック型で複数の発光部がマトリクス状に配列されたマイクロLEDディスプレイ素子と、前記マイクロLEDディスプレイ素子を駆動する駆動装置と、を有したマイクロLEDディスプレイにおいて、
前記マイクロLEDディスプレイ素子は複数の領域に分割され、各前記領域は複数の前記発光部が配列されており、各前記領域ごとに独立に駆動装置によって駆動され、
前記駆動装置は、
行ごとに設けられた走査線と、
列ごとに設けられたデータ線と、
前記領域内の前記発光部のうち発光させる行の前記走査線を順に1つずつ選択して走査する走査線回路と、
前記発光部ごとに設けられ、前記走査線回路によって選択された行はオンとなって前記発光部に電流が流れる状態となり、選択されていない行はオフとなって前記発光部に電流が流れないように制御するトランジスタと、
前記領域内の前記発光部の列ごとに設けられ、前記データ線を介して前記発光部に電流を流し、前記発光部に流す電流をパルス変調してデューティー比を制御するPWM回路と、
を有し、
各前記トランジスタのソースは、各前記発光部のアノードに接続され、
各行の各前記トランジスタのゲートは、その対応する行の前記走査線に並列接続され、
各列の各前記トランジスタのドレインは、その対応する列の前記データ線に並列接続されている、ことを特徴とするマイクロLEDディスプレイ。
【請求項2】
前記マイクロLEDディスプレイ素子は、各前記発光部ごとにp電極が設けられ、n電極は各前記発光部で共通化されている、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロLEDディスプレイ。
【請求項3】
各前記領域は、前記発光部の配列の行数が10~100である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロLEDディスプレイ。
【請求項4】
前記マイクロLEDディスプレイ素子および前記駆動装置は、実装基板上に実装されており、前記駆動装置は、マイクロLEDディスプレイ素子の下部に実装されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロLEDディスプレイ。
【請求項5】
前記トランジスタは、前記マイクロLEDディスプレイ素子内にモノリシックに形成されている、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロLEDディスプレイ。
【請求項6】
前記マイクロLEDディスプレイ素子および前記駆動装置のうち前記走査線回路および前記PWM回路は、実装基板上に実装されており、
前記走査線回路および前記PWM回路は、マイクロLEDディスプレイ素子の下部に実装されている、請求項5に記載のマイクロLEDディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノリシック型のマイクロLEDディスプレイに関するものであり、特に駆動方式に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの高精細化が求められており、マイクロLEDディスプレイが注目されている(特許文献1~3)。マイクロLEDディスプレイは、1~100μmオーダーの微小なLEDをマトリクス状に配列したディスプレイである。特許文献1には、マイクロLEDを個々のチップとしたものが記載されており、特許文献2、3には、1つの基板上に複数のマイクロLEDを作製したモノリシック型のマイクロLEDディスプレイが記載されている。モノリシック型は微細化の点で優れている。
【0003】
マイクロLEDディスプレイの駆動方式としては、パッシブマトリクスとアクティブマトリクスが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-207293号公報
【文献】特開2018-14475号公報
【文献】特開2020-119967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、パッシブマトリクスでは、1行ずつ順次スキャンして駆動する方式のため、行が増えると1行当たりの発光時間が減少し、明るくすることが困難であった。また、サブピクセルごとにn電極を設ける必要があり、マイクロLEDディスプレイを微細化することが困難であった。このため、通常、マイクロLEDディスプレイはアクティブマトリクスにより駆動していた。
【0006】
一方、アクティブマトリクスでは、各サブピクセルの明るさの情報を保持する回路と、その情報を元にして駆動する回路とが必要であり、構成がパッシブマトリクスに比べて複雑となる問題があった。また、アクティブマトリクスでは、電流の大きさで各サブピクセルの明るさを制御しようとすると、色が変化してしまう問題があった。これは、LEDの発光波長は電流の大きさによって変化するためである。発光波長が変化しないように、各サブピクセルの明るさをPWM制御することが考えられるが、PWM回路のサイズは大きく、サブピクセルのサイズを小さくすることができない。
【0007】
このように、従来のパッシブマトリクスやアクティブマトリクスは、モノリシック型のマイクロLEDディスプレイの駆動には適していなかった。
【0008】
そこで本発明の目的は、モノリシック型のマイクロLEDディスプレイの駆動をより適したものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、モノリシック型で複数の発光部がマトリクス状に配列されたマイクロLEDディスプレイ素子と、マイクロLEDディスプレイ素子を駆動する駆動装置と、を有したマイクロLEDディスプレイにおいて、マイクロLEDディスプレイ素子は複数の領域に分割され、各領域は複数の発光部が配列されており、各領域ごとに独立に駆動装置によって駆動され、駆動装置は、行ごとに設けられた走査線と、列ごとに設けられたデータ線と、領域内の発光部のうち発光させる行の前記走査線を順に1つずつ選択して走査する走査線回路と、発光部ごとに設けられ、走査線回路によって選択された行はオンとなって発光部に電流が流れる状態となり、選択されていない行はオフとなって発光部に電流が流れないように制御するトランジスタと、領域内の発光部の列ごとに設けられ、データ線を介して発光部に電流を流し、発光部に流す電流をパルス変調してデューティー比を制御するPWM回路と、を有し、各トランジスタのソースは、各発光部のアノードに接続され、各行の各トランジスタのゲートは、その対応する行の走査線に並列接続され、各列の各トランジスタのドレインは、その対応する列のデータ線に並列接続されている、ことを特徴とするマイクロLEDディスプレイである。
【0010】
本発明において、マイクロLEDディスプレイ素子は、各発光部ごとにp電極が設けられ、n電極は各発光部で共通化されていてもよい。
【0011】
本発明において、各領域は、発光部の配列の行数が10~100であってもよい。
【0012】
本発明において、マイクロLEDディスプレイ素子および駆動装置は、実装基板上に実装されており、駆動装置は、マイクロLEDディスプレイ素子の下部に実装されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マイクロLEDディスプレイを複数の領域に分割して駆動するため、1行当たりの発光時間の減少を抑制することができる。また、各領域はアクティブマトリクスで駆動するため、マイクロLEDディスプレイのn電極をサブピクセルごとに設ける必要はなく、共通化することができ、微細化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1のマイクロLEDディスプレイの構成を示した図。
図2】マイクロLEDディスプレイ素子1の構成を示した図。
図3】駆動装置2の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1のマイクロLEDディスプレイの構成を示した図である。図1に示すように、実施例1のマイクロLEDディスプレイは、モノリシック型のマイクロLED素子1と、駆動装置2と、によって構成されている。
【0017】
(マイクロLEDディスプレイ素子1の構成)
まず、マイクロLEDディスプレイ素子1の構成について説明する。図2は、マイクロLED素子1の構成を示した図であり、図2(a)は上面から見た図、図2(b)は図2(a)におけるA-Aでの断面図である。
【0018】
マイクロLEDディスプレイ素子1は、1つの素子に複数の発光部がマトリクス状に配列されたモノリシック型のIII 族窒化物半導体からなる発光素子である。図2のように、マイクロLEDディスプレイ素子1は、基板10と、n層11と、発光層12と、p層13と、p電極14と、n電極15と、を有している。また、マイクロLEDディスプレイ素子1は、単色のディスプレイであり、1つのピクセルは1つのサブピクセルで構成されている。マイクロLEDディスプレイ素子1は基板10裏面側から光を取り出すフリップチップ型の素子であり、実装基板3にフェイスダウンで実装されている。
【0019】
次に、マイクロLEDディスプレイ素子1の各構成要素について説明する。
【0020】
基板10は、III 族窒化物半導体を成長させる成長基板であり、たとえばサファイア、GaN、SiCである。
【0021】
n層11は、基板10上に設けられたn型の半導体層である。発光層12は、n層11上に設けられた半導体層であり、MQW構造やSQW構造の層である。たとえば、AlGaNからなる障壁層とINGaNからなる井戸層を交互に積層させた青色発光の層である。p層13は、発光層12上に設けられたp型の半導体層である。
【0022】
p電極14は、p層13上に複数設けられ、マトリクス状のパターンに配列されている。このp電極14が配置されている領域の直下の発光層12がそれぞれ発光し、1ピクセルとなる。言い換えれば、p電極14はピクセルごとに配置されている。p電極14の材料は、たとえばITO、IZO、Agなどである。
【0023】
n電極15は、マイクロLEDディスプレイ素子1の外周に沿った矩形の環状のパターンである。マイクロLEDディスプレイ素子1の外周はエッチングによりn層11に達する溝が設けられており、その溝の底面に露出するn層11上にn電極15が設けられている。n電極は1つであり、各ピクセルに共通となっている。n電極15の材料は、たとえばTi/Alなどの積層体である。
【0024】
マイクロLEDディスプレイ素子1は、各ピクセルを分離するための溝を設けておらず、n電極14も各ピクセルで共通化されている。そのため、微細化が可能となっている。
【0025】
(駆動装置2の構成)
図3(a)は、マイクロLEDディスプレイの領域の分割について示した図であり、図3(b)は、駆動装置2の回路図を示している。
【0026】
図3(a)のように、マイクロLEDディスプレイのピクセルは、複数の領域に分割されており、その領域ごとに駆動装置2が設けられている。そして、駆動装置2によって各領域が独立に駆動される。領域の分割の仕方は任意であるが、たとえば次のように分割するとよい。行方向については行数が10~100となるように分割し、列方向には分割しない。もちろん、列方向に領域を分割してもよい。以下、説明を簡単にするため、領域A、Bの2分割であるとする。
【0027】
駆動装置2は、走査線回路20と、PWM回路21と、走査線22と、データ線23と、トランジスタ24と、を有している。また、図3(b)の回路図中、マイクロLEDディスプレイのピクセルをLED25として示す。走査線回路20やPWM回路21は、LSI素子として実現され、実装基板3上に実装されている。駆動装置2、特に走査線回路20やPWM回路21は、マイクロLEDディスプレイ素子1の下部に実装してもよい。マイクロLEDディスプレイ全体としての面積を小さくすることができ、小型化を図ることができる。
【0028】
走査線回路20は、マイクロLEDディスプレイの行ごとに設けられた走査線22のうち、1つを順に選択して導通させる回路である。
【0029】
PWM回路21は、マイクロLEDディスプレイの列ごとに設けられていて、データ線23が接続されている。PWM回路21は、LED25に流す電流をパルス変調する回路であり、デューティー比によってLED25の明るさを制御する回路である。PWM制御とすることにより、LED25の発光波長にずれを生じさせることなく明るさを制御することができる。
【0030】
このように、PWM回路21は列ごとに設けられるため、LED25ごとにPWM回路21を設ける場合よりも回路数を少なくすることができ、マイクロLEDディスプレイの微細化を図ることができる。
【0031】
走査線22は、マイクロLEDディスプレイの行ごとに設けられている。走査線22は、対応する行の各トランジスタ24のゲートに並列接続されている。
【0032】
データ線23は、マイクロLEDディスプレイの列ごとに設けられている。データ線23は、対応する列の各トランジスタ24のドレインに並列接続されている。
【0033】
トランジスタ24は、ピクセルごとに設けられている。トランジスタ24のゲートは走査線22に接続され、ドレインはデータ線23に接続され、ソースはLED25のアノード(p電極14)に接続されている。トランジスタ24のオンオフはゲートへの電圧印加によって制御され、オン状態のときは線路が導通してLED25に電流が流れる状態となり、オフ状態のときは線路が遮断してLED25に電流が流れない。
【0034】
次に、駆動装置2によるマイクロLEDディスプレイの駆動について説明する。
【0035】
マイクロLEDディスプレイの表示のための信号が入力されると、領域Aと領域Bとでそれぞれ独立して駆動装置2によって各ピクセル(LED25)の発光が制御される。
【0036】
領域Aでは、走査線回路20によって発光させる行が順に走査される。つまり、ある1つの走査線22が選択されて導通し、その走査線22に接続された複数のトランジスタ24のゲートに電圧が印加される。たとえば、領域Aにおける一番上の行から順に一番下の行まで順に走査される。これにより、走査線回路20によって選択された行のトランジスタ24がオンとなり、LED25に電流を流すことが可能な状態となる。
【0037】
そして、列方向については、PWM回路21の制御によってLED25に流す電流のデューティー比が制御され、各列のLED25の発光強度が制御される。なお、走査線回路20によって選択されていない行のLED25については、トランジスタ24がオフとなっているため発光しない。
【0038】
同様に、領域Bにおいても走査線回路20によって発光させる行が順に走査され、PWM回路21によって各列のLED25の発光強度が制御される。以上のように領域A、Bの各ピクセルの発光が制御され、その結果、マイクロLEDディスプレイ全体の各ピクセルの発光が制御される。
【0039】
ここで、領域A、BにおいてLED25は1行ずつ発光するので、一行当たりの発光時間は短くなる。しかし、ディスプレイの領域をA、Bに分けることで走査数を低減しているため、全体を走査する場合よりも発光時間を長くすることができる。また、各LED25の発光強度もPWM回路21によって十分に明るくなるように制御可能である。したがって、パッシブマトリクスの場合のような問題は生じず、ピクセル数を増大させることが可能である。
【0040】
以上、実施例1のマイクロLEDディスプレイによれば、マイクロLEDディスプレイを複数の領域に分割して駆動するため、1行当たりの発光時間の減少を抑制することができる。そのため、ピクセル数を増大させることが可能である。
【0041】
また、マイクロLED素子1においてn電極15をサブピクセルごとに設ける必要がなく、共通化することができる。また、各サブピクセルを素子分離する必要はなく、n層11がサブピクセルごとに分離されている必要もない。また、PWM回路21は列ごとに設けられるため、回路規模の増大が抑制されている。そのため、マイクロLEDディスプレイの微細化が可能である。
【0042】
このように、実施例1は、モノリシック型のマイクロLEDディスプレイの駆動に適した方式となっている。
【0043】
なお、実施例1のマイクロLEDディスプレイは単色のディスプレイであるが、フルカラーのディスプレイにも当然適用可能である。その場合、青色、緑色、赤色の各色の発光層を有した構造でもよいし、青色と緑色の発光層を有し、赤色は青色光を変換することで得る構造でもよいし、紫外線を発光する発光層を有し、紫外線を青色、緑色、赤色の各色に変換する構造でもよい。
【0044】
また、実施例1では、駆動回路2のトランジスタ24は実装基板3に実装されているが、マイクロLEDディスプレイ素子1内にモノリシックに作製されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、たとえば、VR、ARのヘッドマウントディスプレイやプロジェクタとして利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1:マイクロLEDディスプレイ素子
2:駆動装置
10:基板
11:n層
12:発光層
13:p層
14:p電極
15:n電極
20:走査線回路
21:PWM回路
22:走査線
23:データ線
24:トランジスタ
25:LED
図1
図2
図3