(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】定着装置、画像形成装置、定着制御方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2021027181
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】菊地 英之介
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦昭
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159832(JP,A)
【文献】特開平04-067082(JP,A)
【文献】特開2019-168527(JP,A)
【文献】特開2019-105730(JP,A)
【文献】特開2018-112584(JP,A)
【文献】特開2003-233263(JP,A)
【文献】特開2004-085698(JP,A)
【文献】特開2000-305388(JP,A)
【文献】特開昭63-311286(JP,A)
【文献】米国特許第04253008(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱され回転する定着部材と、
前記定着部材の表面との間にトナーの像が形成されたシートを挟持するニップ部を形成し、前記定着部材とともに回転することによって前記シートを搬送する加圧部材と、
前記定着部材の表面に対向して配置された一対の電極に帯電電流を流すことにより前記定着部材の表面を前記トナーの帯電極性と同極性に帯電させる帯電部と、
前記シート上の前記トナーの帯電量の指標値を導出し、前記指標値に応じて前記帯電電流を調節する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記シート上の前記トナーの色ごとの前記トナーの量に応じて前記指標値を導出する
、定着装置。
【請求項2】
加熱され回転する定着部材と、
前記定着部材の表面との間にトナーの像が形成されたシートを挟持するニップ部を形成し、前記定着部材とともに回転することによって前記シートを搬送する加圧部材と、
前記定着部材の表面に対向して配置された一対の電極に帯電電流を流すことにより前記定着部材の表面を前記トナーの帯電極性と同極性に帯電させる帯電部と、
前記シート上の前記トナーの帯電量の指標値を導出し、前記指標値に応じて前記帯電電流を調節する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記シートのサイズを表すサイズ情報を取得し、前記指標値および前記サイズ情報に応じて前記帯電電流を調節する
、定着装置。
【請求項3】
前記制御部は、さらに前記シート上の像が形成された領域における前記トナーの密度を表す密度情報に応じて前記帯電電流を調節する、請求項1
または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着部材は、可撓性の筒状部材であり、内側に配置された支持部材によって支持されている、請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
トナーの像を作像する作像部と、
前記トナーの像をシートに転写する転写部と、
請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の定着装置と、を備える画像形成装置。
【請求項6】
加熱され回転する定着部材と、
前記定着部材の表面との間にトナーの像が形成されたシートを挟持するニップ部を形成し、前記定着部材とともに回転することによって前記シートを搬送する加圧部材と、
前記定着部材の表面に対向して配置された一対の電極に帯電電流を流すことにより前記定着部材の表面を前記トナーの帯電極性と同極性に帯電させる帯電部と、を備える定着装置を制御する定着制御方法であって、
プロセッサーが、前記シート上の前記トナーの帯電量の指標値を導出することと、
前記プロセッサーが、前記指標値に応じて前記帯電電流を調節することと、を含
み、
前記プロセッサーは、前記シート上の前記トナーの色ごとの前記トナーの量に応じて前記指標値を導出する、定着制御方法。
【請求項7】
加熱され回転する定着部材と、
前記定着部材の表面との間にトナーの像が形成されたシートを挟持するニップ部を形成し、前記定着部材とともに回転することによって前記シートを搬送する加圧部材と、
前記定着部材の表面に対向して配置された一対の電極に帯電電流を流すことにより前記定着部材の表面を前記トナーの帯電極性と同極性に帯電させる帯電部と、を備える定着装置を制御する定着制御方法であって、
プロセッサーが、前記シート上の前記トナーの帯電量の指標値を導出することと、
前記プロセッサーが、前記指標値に応じて前記帯電電流を調節することと、を含み、
前記プロセッサーは、前記シートのサイズを表すサイズ情報を取得し、前記指標値および前記サイズ情報に応じて前記帯電電流を調節する、定着制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着部材を帯電させることによってオフセット画像の発生を防ぐ定着装置、画像形成装置および定着制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、定着装置は、シートに形成されたトナーの像を加熱および加圧することにより、前記トナーの像を前記シートに定着させる。前記定着装置は、ヒーター、定着部材および加圧部材を備える。
【0003】
前記定着部材は、前記ヒーターによって加熱され回転する。前記加圧部材は、前記定着部材の表面との間に前記シートを挟持するニップ部を形成し、前記定着部材とともに回転することによって前記シートを搬送する。
【0004】
前記定着装置において、前記定着部材が前記トナーの帯電極性と逆極性に帯電することにより、オフセット画像が前記シートに形成される場合がある。前記オフセット画像は、前記シート上の前記トナーの一部が、前記定着部材の表面へ電気的に吸引された後に前記定着部材から前記シートへ転写されることにより生じるノイズ画像である。
【0005】
一方、前記定着装置は、前記定着部材の表面を放電によって前記トナーの帯電極性と同極性に帯電させる帯電部を備える場合がある(例えば、特許文献1参照)。前記帯電部の作用により、前記オフセット画像の形成が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記定着装置は、前記ヒーターの熱によって揮発成分を放出することが知られている。そして、前記帯電部の放電により、前記揮発成分が増加することが確認されている。
【0008】
前記揮発成分の発生を抑制するためには、前記帯電部の放電電荷の量を抑制すること、即ち、前記帯電部における帯電電流を極力小さくすることが有効である。一方、前記帯電電流が小さすぎると、前記帯電部が前記定着部材を十分に帯電させることができず、前記オフセット画像が発生してしまう。
【0009】
本発明の目的は、オフセット画像の発生を防ぎつつ揮発成分の放出量を抑制できる定着装置、画像形成装置および定着制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の局面に係る定着装置は、定着部材と、加圧部材と、帯電部と、制御部と、を備える。前記定着部材は、加熱され回転する。前記加圧部材は、前記定着部材の表面との間にトナーの像が形成されたシートを挟持するニップ部を形成し、前記定着部材とともに回転することによって前記シートを搬送する。前記帯電部は、前記定着部材の表面に対向して配置された一対の電極に帯電電流を流すことにより前記定着部材の表面を前記トナーの帯電極性と同極性に帯電させる。前記制御部は、前記シート上の前記トナーの帯電量の指標値を導出し、前記指標値に応じて前記帯電電流を調節する。
【0011】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、作像部と、転写部と、前記定着装置とを備える。前記作像部は、トナーの像を作像する。前記転写部は、前記トナーの像をシートに転写する。
【0012】
本発明の他の局面に係る定着制御方法は、前記定着部材と、前記加圧部材と、前記帯電部と、を備える定着装置を制御する方法である。前記定着制御方法は、プロセッサーが、前記シート上の前記トナーの帯電量の指標値を導出することを含む。さらに前記定着制御方法は、前記プロセッサーが、前記指標値に応じて前記帯電電流を調節することを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オフセット画像の発生を防ぎつつ揮発成分の放出量を抑制できる定着装置、画像形成装置および定着制御方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る画像形成装置の構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る画像形成装置における定着装置の構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る画像形成装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、定着装置において帯電電流が出力されたときの定着ベルトの表面電位の変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、定着装置においてシートが通過するときの定着ベルトの表面電位の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
[画像形成装置10の構成]
実施形態に係る画像形成装置10は、電子写真方式でシート9に画像を形成するプリント処理を実行する。
【0017】
図1に示されるように、画像形成装置10は、シート収容部1、シート送出装置2、シート搬送装置3、作像装置4、転写装置45、定着装置47、制御装置8、操作装置801および表示装置802を備える。シート収容部1、シート送出装置2、シート搬送装置3、作像装置4、転写装置45、定着装置47および制御装置8は、筐体である本体部100に収容されている。
【0018】
以下の説明において、シート9が搬送される方向のことを搬送方向D1と称する。また、搬送方向D1に交差する方向のことを幅方向D2と称する。幅方向D2は、搬送方向D1に直交する方向である。
【0019】
シート収容部1は、転写装置45へ搬送されるシート9を収容する。シート収容部1は、シート9が載置されるシート裁置部11および一対のシートカーソル12を備える。一対のシートカーソル12は、シート裁置部11に載置されたシート9の両側で幅方向D2に沿って移動可能に設けられている。
【0020】
具体的には、一対のシートカーソル12は、不図示のラックアンドピニオン機構によって幅方向D2に沿って対称に連動する。
【0021】
一対のシートカーソル12は、シート9における幅方向D2の両端に沿わされる。これにより、一対のシートカーソル12は、シート9を幅方向D2において位置決めする。
【0022】
シート送出装置2は、シート裁置部11上に載置された複数のシート9のうちの最上位の1枚を本体部100内の搬送路30へ送り出す。
【0023】
シート搬送装置3は、複数組の搬送ローラー対31およびシートセンサー32を備える。搬送ローラー対31各々は、搬送路30に配置され、シート9を挟んで回転することによってシート9を搬送路30に沿って搬送する。複数組の搬送ローラー対31のうちの最後段の1組は、シート9を搬送路30から排出トレイ101へ排出する。
【0024】
複数組の搬送ローラー対31は、搬送路30における転写装置45に対し搬送方向D1の上流側に配置された一組のレジストローラー対31aを含む。レジストローラー対31aは、前段の搬送ローラー対31から搬送されてくるシート9を一時停止させた後に予め定められたタイミングで搬送路30の転写位置P1へ向けて搬送を開始する。
【0025】
シートセンサー32は、搬送路30におけるレジストローラー対31aに対し搬送方向D1の上流側の位置でシート9を検出する。なお、レジストローラー対31aに対し搬送方向D1の上流側の位置は、定着装置47に対し搬送方向D1の上流側の位置の一例である。
【0026】
レジストローラー対31aが停止している状況下でシートセンサー32がシート9を検出してから予め定められた時間が経過したときに、レジストローラー対31aが始動する。これにより、シート9が転写位置P1へ向けて搬送されるタイミングが調整される。
【0027】
作像装置4は、感光体41の表面にトナー90の像を作像する作像処理を実行する。本実施形態において、画像形成装置10は、タンデム式のカラープリント装置である。
【0028】
従って、作像装置4は、光走査ユニット40と、複数の現像色に対応する複数の単色作像部4xとを備える。
図1に示される例では、作像装置4は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のトナー90に対応する4つの単色作像部4xを備える。
【0029】
単色作像部4x各々は、ドラム状の感光体41、ドラム帯電装置42、現像装置43およびドラムクリーニング装置44を含む。作像装置4は作像部の一例である。
【0030】
前記作像処理を実行する単色作像部4x各々において、感光体41が回転し、ドラム帯電装置42が感光体41の表面を帯電させる。さらに、光走査ユニット40が、帯電した感光体41各々の表面にビーム光を走査することにより、感光体41各々の表面に静電潜像を書き込む。
【0031】
ドラム帯電装置42各々および光走査ユニット40の作用により、前記現像色各々に対応する単色画像を表す前記静電潜像が、感光体41の表面に形成される。
【0032】
さらに、単色作像部4x各々において、現像装置43は、前記静電潜像が形成された感光体41にトナー90を供給することにより、前記静電潜像をトナー90の像へ現像する。
【0033】
以上により、前記単色画像各々を表すトナー90の像が感光体41各々の表面に作像される。前記作像処理が実行されることにより、感光体41各々は、前記単色画像各々に対応するトナー90の像を担持して回転する。
【0034】
転写装置45は、搬送路30における転写位置P1において、シート9に4つの感光体41上のトナー90の像を転写する。さらに、転写装置45は、シート9を搬送路30の定着位置P2へ向けて搬送する。転写装置45は転写部の一例である。
【0035】
タンデム式の画像形成装置10において、転写装置45は、4つの感光体41に対応する4つの一次転写ローラー451と、中間転写ベルト450と、二次転写ローラー452と、ベルトクリーニング装置453とを含む。無端の中間転写ベルト450は、複数の支持ローラー454によって回転可能に支持されている。
【0036】
4つの一次転写ローラー451は、それぞれ回転しつつトナー90の像を4つの感光体41から中間転写ベルト450へ転写する。これにより、4色のトナー90の像が合成されたカラー画像が中間転写ベルト450上に形成される。前記カラー画像は、4つの前記単色画像の合成画像であり、プリント対象の画像である。
【0037】
単色作像部4x各々において、ドラムクリーニング装置44は、中間転写ベルト450に転写されずに感光体41上に残ったトナー90を、感光体41から除去し回収する。
【0038】
二次転写ローラー452は、中間転写ベルト450上の4色のトナー90の像をシート9に転写する。なお、画像形成装置10において、4つの感光体41および転写装置45の中間転写ベルト450は、それぞれトナー90の像を担持して回転する像担持体の一例である。
【0039】
ベルトクリーニング装置453は、前記シートに転写されずに中間転写ベルト450上に残ったトナーを、中間転写ベルト450から除去し回収する。
【0040】
定着装置47は、定着位置P2において、シート9に転写されたトナー90の像を加熱しつつ加圧する。これにより、定着装置47は、トナー90の像をシート9に定着させる。
【0041】
図2に示されるように、定着装置47は、定着ベルト471、定着ローラー472、ヒーター473、加圧ローラー475およびシート分離部材476を備える。
【0042】
定着ベルト471は、定着ローラー472を内包する可撓性の筒状部材である。定着ベルト471は、ヒーター473によって加熱される。
【0043】
定着ローラー472は、定着ベルト471をその内側で支持する筒状の部材である。定着ローラー472は、筒状の芯金部472aおよび芯金部472aの外周に形成された弾性部472bを有する。なお、定着ローラー472は、定着ベルト471を支持する支持体の一例である。
【0044】
定着ローラー472は回転可能に支持されている。定着ベルト471は、定着ローラー472とともに回転可能である。
【0045】
本実施形態において、定着ベルト471は、導電性の基材と、前記基材の外周に形成された弾性層と、前記弾性層の外周に形成された離型層とを有する。定着ベルト471において、前記基材はニッケルなどを主成分とする金属で構成され、前記弾性層はシリコンゴムまたは発泡樹脂などで構成され、前記離型層は、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂で構成されている。
【0046】
ヒーター473は、定着ベルト471の外周面に対向して配置されている。本実施形態において、ヒーター473は電磁誘導加熱式の加熱装置である。これにより、ヒーター473は、主に定着ベルト471の前記基材を電磁誘導により加熱する。
【0047】
加圧ローラー475は、回転可能に支持され、定着ベルト471の表面との間にトナー90の像が形成されたシート9を挟持するニップ部N1を形成している。ニップ部N1の位置が定着位置P2である。
【0048】
加圧ローラー475も、定着ローラー472と同様に、筒状の芯金部475aおよび芯金部475aの外周に形成された弾性部475bを有する。また、弾性部475bの外周面には、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂で構成された離型層が形成されている。
【0049】
定着ローラー472の芯金部472aおおび加圧ローラー475の芯金部475aは、例えばアルミニウムまたは鉄を主成分とする金属で構成されている。また、定着ローラー472の弾性部472bおよび加圧ローラー475の弾性部475bは、シリコンゴムまたは発泡樹脂などで構成されている。
【0050】
加圧ローラー475は、不図示の駆動機構によって回転駆動される。定着ベルト471および定着ローラー472は、加圧ローラー475に連動して回転する。加圧ローラー475は、定着ベルト471とともに回転することによってシート9を搬送する。
【0051】
定着ベルト471がシート9に形成されたトナー90の像を加熱し、加圧ローラー475がトナー90の像をシート9へ加圧する。これにより、トナー90の像がシート9に定着する。
【0052】
なお、定着ベルト471は、加熱され回転する定着部材の一例である。定着ローラー472は、定着ベルト471の内側に配置された支持部材の一例である。加圧ローラー475は、加圧部材の一例である。
【0053】
定着装置47は、定着帯電装置477をさらに備える。定着帯電装置477は、帯電針477a、シールド部材477bおよび電流出力回路477cを備える。
【0054】
帯電針477aおよびシールド部材477bは、それぞれ定着ベルト471の表面に対向して配置された導電部材である。電流出力回路477cは、帯電針477aおよびシールド部材477bに電圧を印加することによって帯電電流A1を流す。
【0055】
帯電針477aおよびシールド部材477bは、僅かな間隔を隔てて配置されている。帯電電流A1は、放電によって帯電針477aおよびシールド部材477bの間を流れる。
【0056】
定着帯電装置477は、帯電針477aおよびシールド部材477bに帯電電流A1を流すことにより、定着ベルト471の表面をトナー90の帯電極性と同極性に帯電させる。本実施形態において、トナー90の帯電極性は正極性である。帯電針477aおよびシールド部材477bは一対の電極の一例である。定着帯電装置477は帯電部の一例である。
【0057】
定着帯電装置477は、定着ベルト471がトナー90の帯電極性と逆極性に帯電することに起因してオフセット画像がシート9に形成されることを防ぐ。
【0058】
操作装置801は、人の操作を受け付ける装置であり、例えば、操作ボタンおよびタッチパネルを含む。表示装置802は、情報を表示する装置であり、例えば、液晶表示ユニットなどのパネル表示装置を含む。
【0059】
図3に示されるように、制御装置8は、CPU(Central Processing Unit)81と、RAM(Random Access Memory)82、二次記憶装置83および信号インターフェイス84などの周辺機器とを備える。
【0060】
CPU81は、コンピュータープログラムを実行することにより、各種のデータ処理および制御を実行するプロセッサーである。RAM82は、コンピューター読み取り可能な揮発性の記憶装置である。RAM82は、CPU81が実行する前記コンピュータープログラムおよびCPU81が各種の処理を実行する過程で出力および参照するデータを一次記憶する。
【0061】
二次記憶装置83は、コンピューター読み取り可能な不揮発性の記憶装置である。二次記憶装置83は、前記コンピュータープログラムおよび各種のデータの記憶および更新が可能である。例えば、フラッシュメモリーまたはハードディスクドライブの一方または両方が、二次記憶装置83として採用される。
【0062】
信号インターフェイス84は、各種のセンサーが出力する信号をデジタルデータへ変換し、変換後のデジタルデータをCPU81へ伝送する。さらに、信号インターフェイス84は、CPU81が出力する制御指令を制御信号へ変換し、前記制御信号を制御対象の機器へ伝送する。
【0063】
CPU81は、前記コンピュータープログラムを実行することにより実現される複数の処理モジュールを含む。前記複数の処理モジュールは、主制御部8a、搬送制御部8b、プリント制御部8cおよび定着制御部8dなどを含む。
【0064】
主制御部8aは、操作装置801に対する操作に応じて各種の処理を開始させる制御、および、表示装置802の制御などを実行する。
【0065】
搬送制御部8bは、シート送出装置2およびシート搬送装置3を制御する。搬送制御部8bは、プリント処理が実行される際に、複数組の搬送ローラー対31を動作させるとともに、シート送出装置2を予め定められた時間だけ動作させる。これにより、シート収容部1内の最上位のシート9が搬送路30へ送り出され、さらにレジストローラー対31aへ向けて搬送される。
【0066】
さらに、搬送制御部8bは、シートセンサー32によりシート9が検出された時点を基準にしたタイミングで、レジストローラー対31aを一時停止させた後に再作動させる。
【0067】
プリント制御部8cは、シート搬送装置3によるシート9の搬送に同期して、作像装置4にトナー90の像の作像を実行させる。
【0068】
定着制御部8dは、定着装置47のヒーター473および定着帯電装置477を制御する。定着制御部8dは、定着装置47の一部を成している。
【0069】
具体的には、定着制御部8dは、不図示の定着温度センサーの検出温度が予め定められた目標温度になるようにヒーター473の電力を制御する。前記定着温度センサーは、定着ベルト471の温度を検出する。
【0070】
さらに、定着制御部8dは、シート9が定着位置P2を通過するときに電流出力回路477cに帯電電流A1を出力させる。
【0071】
二次記憶装置83は、コンピューター読み取り可能な不揮発性の記憶装置である。二次記憶装置83は、前記コンピュータープログラムおよび各種のデータの記憶および更新が可能である。例えば、フラッシュメモリーまたはハードディスクドライブの一方または両方が、二次記憶装置83として採用される。
【0072】
信号インターフェイス84は、シートセンサー32などの各種のセンサーが出力する信号をデジタルデータへ変換し、変換後のデジタルデータをCPU81へ伝送する。さらに、信号インターフェイス84は、CPU81が出力する制御指令を制御信号へ変換し、前記制御信号を制御対象の機器へ伝送する。
【0073】
ところで、定着装置47は、ヒーター473の熱によって揮発成分を放出することが知られている。そして、定着帯電装置477の放電により、前記揮発成分が増加することが確認されている。
【0074】
前記揮発成分の発生を抑制するためには、定着帯電装置477の放電電荷の量を抑制すること、即ち、定着帯電装置477における帯電電流A1を極力小さくすることが有効である。一方、帯電電流A1が小さすぎると、定着帯電装置477が定着ベルト471の表面を十分に帯電させることができず、前記オフセット画像が発生してしまう。
【0075】
本実施形態において、定着制御部8dは、前記オフセット画像の発生を防ぎつつ前記揮発成分の放出量を抑制するために、帯電電流制御を実行する。前記帯電電流制御については後述する。定着制御部8dが前記帯電電流制御を実行することは、定着制御方法の一例である。
【0076】
ここで、
図4を参照しつつ、帯電電流A1とシート9のサイズとベルト表面電位V1との関係について説明する。ベルト表面電位V1は、定着ベルト471の表面電位である。
【0077】
図4のグラフは、定着装置47において帯電電流A1が出力されたときのベルト表面電位V1の変化の一例を示す。
図4における帯電開始時点T1は、動作中の定着装置47において予め定められた帯電電流A1が流れ始めた時点である。
【0078】
図4において、目標電位範囲R1は、前記オフセット画像の発生を防ぎつつ前記揮発成分の放出量を抑制するために要求されるベルト表面電位V1の目標範囲である。
【0079】
図4のグラフは、帯電電流A1が大きいほど、ベルト表面電位V1の上昇速度が速くなり、かつ、ベルト表面電位V1がより高くなるまで上昇することを示す。そのため、帯電電流A1が大きすぎると、ベルト表面電位V1が目標電位範囲R1を上回り、前記揮発成分の放出量が増大するおそれがある。
【0080】
一方、シート9上のトナー90の帯電量が大きい場合に、トナー90の帯電量が小さい場合に比べ、前記オフセット画像が生じにくい傾向がある。従って、シート9上のトナー90の帯電量が大きい場合に、帯電電流A1が比較的小さく調節されることにより、前記オフセット画像の発生を防ぎつつ前記揮発成分の放出量を抑制することができる。
【0081】
そこで、定着制御部8dは、前記帯電電流制御において、シート9上のトナー90の帯電量の指標値である帯電指標値を導出する。さらに、定着制御部8dは、電流出力回路477cを制御することにより、前記帯電指標値に応じて帯電電流A1を調節する。
【0082】
例えば、定着制御部8dは、シート9上のトナー90の色ごとのトナー90の量に応じて前記帯電指標値を導出する。
【0083】
具体的には、定着制御部8dは、前記プリント対象の画像における現像色ごとの描画画素の数を、前記現像色ごとのトナー90の量を表す単色トナー量として導出する。これにより、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックについての前記単色トナー量が導出される。
【0084】
但し、前記単色トナー量が極端に少ない前記現像色においては、そもそも前記オフセット画像が発生しにくい。そこで、定着制御部8dは、予め定められた下限量を下回る前記単色トナー量を、前記帯電指標値の導出に用いるパラメーターから除外する。還元すれば、定着制御部8dは、前記下限量を上回る前記単色トナー量を前記帯電指標値の導出に用いる。
【0085】
また、イエローのトナー90による前記オフセット画像は、シート9に形成されても目立ちにくい。そのため、イエローに対応する前記下限量が、他の色に対応する前記下限量よりも大きく設定されてもよい。また、イエローが、そもそも前記単色トナー量の導出の対象から除外されてもよい。
【0086】
さらに、定着制御部8dは、前記下限量を上回る前記単色トナー量それぞれに前記現像色に対応する第1補正係数を乗算することによって前記現像色ごとのトナー90の帯電量の指標値である単色指標値を導出する。
【0087】
トナー90の像は、一次転写ローラー451と感光体41との間の一次転写ニップN10を通過するごとに帯電量が上昇する。そのため、前記第1補正係数は、一次転写ニップN10を通過する回数がより多い前記現像色に対応するものほど大きい値に設定されている。
【0088】
一般に、ブラックのトナー90の像は、他の彩色のトナー90の像よりも一次転写ニップN10を通過する回数が少ない。この場合、ブラックに対応する前記第1補正係数が、他の彩色に対応する前記第1補正係数よりも最も小さな値に設定される。
【0089】
また、トナー90の帯電量は、周囲の湿度が高くなるほど小さくなる傾向がある。本実施形態において、画像形成装置10は、画像形成装置10内の湿度を検出する湿度センサー7を備える(
図1参照)。
【0090】
そこで、定着制御部8dは、前記単色トナー量それぞれに、前記現像色に対応する前記第1補正係数と湿度センサー7の検出湿度に対応する第2補正係数とを乗算することにより、前記現像色ごとの前記単色指標値を導出してもよい。
【0091】
上記の場合、定着制御部8dは、湿度センサー7から前記検出湿度を取得する。さらに、定着制御部8dは、予め定められた設定ルールに従って、前記検出湿度に対応する前記第2補正係数を導出する。ここで、定着制御部8dは、前記検出湿度が低い場合よりも高い場合の方が小さな前記第2補正係数を設定する。
【0092】
さらに、定着制御部8dは、補正後の前記単色指標値に応じて前記帯電指標値を導出する。例えば、定着制御部8dは、補正後の前記単色指標値のうちの最小値を前記帯電指標値として導出する。また、定着制御部8dは、補正後の前記単色指標値の平均値を前記帯電指標値として導出してもよい。
【0093】
そして、定着制御部8dは、前記帯電指標値に応じて帯電電流A1を調節する。例えば、定着制御部8dは、前記帯電指標値と予め定められた1つ以上の指標閾値との比較によって前記帯電指標値が複数のランクのいずれに属するかを判定する。この場合、定着制御部8dは、帯電電流A1を、前記ランクの判定結果に予め対応付けられた候補電流値に調節する。
【0094】
前記帯電電流制御が実行されることにより、シート9上のトナー90の像の帯電量が大きいために前記オフセット画像が発生しにくい場合に、帯電電流A1が比較的小さく調節される。これにより、前記揮発成分の放出量が抑制される。その結果、前記オフセット画像の発生を防ぎつつ前記揮発成分の放出量を抑制することが可能である。
【0095】
[第1応用例]
以下、画像形成装置10の第1応用例について説明する。
【0096】
図5に示されるように、ベルト表面電位V1は、シート9のサイズの影響を受ける。
図5のグラフは、定着装置47においてシート9が通過するときのベルト表面電位V1の変化の一例を示す。
【0097】
図5におけるシート到達時点T2は、帯電電流A1が流れていない定着装置47のニップ部N1にシート9の先端部が到達した時点である。
【0098】
図5のグラフは、シート9のサイズが大きいほど、ベルト表面電位V1の下降速度が速くなり、かつ、ベルト表面電位V1がより低くなるまで下降することを示す。シート9のサイズの違いは、シート9の静電容量の違いであると考えられる。シート9の静電容量が大きいほど、定着ベルト471とシート9との間での電荷の移動速度および電荷の移動量が大きくなる。
【0099】
従って、帯電電流A1が小サイズのシート9に対応して設定された場合、大サイズのシート9がニップ部N1を通過するときに、ベルト表面電位V1が目標電位範囲R1を下回り、前記オフセット画像が形成されるおそれがある。
【0100】
一方、帯電電流A1が大サイズのシート9に対応して設定された場合、小サイズのシート9がニップ部N1を通過するときに、ベルト表面電位V1が目標電位範囲R1を上回り、前記揮発成分の放出量が増大するおそれがある。
【0101】
本応用例において、定着制御部8dは、ニップ部N1へ向けて搬送されるシート9のサイズを表すサイズ情報を取得する。例えば、前記サイズ情報は、シート9の長さ情報および幅情報の一方または両方を含む。
【0102】
前記長さ情報は、シート9の搬送方向D1の寸法を表す情報である。前記幅情報は、シート9の幅方向D2の寸法を表す情報である。
【0103】
さらに、本応用例における定着制御部8dは、前記帯電指標値および前記サイズ情報に応じて帯電電流A1を調節する。
【0104】
具体的には、定着制御部8dは、前記帯電指標値が同等である場合に、前記サイズ情報が示すシート9のサイズが大きい場合の方が小さい場合よりも帯電電流A1が大きくなるように調節する。
【0105】
例えば、前記帯電指標値の前記複数のランクと帯電電流A1の複数の候補電流値との対応関係を表す調節データテーブルが、シート9の複数のサイズ範囲ごとに予め用意されている。
【0106】
例えば、前記サイズ範囲は、前記長さ情報または前記幅情報が表す寸法の範囲である。また、前記サイズ範囲が、前記長さ情報および前記幅情報により導出されるシート9の面積の範囲であってもよい。
【0107】
本応用例において、定着制御部8dは、帯電電流A1を、前記サイズ情報に対応する前記サイズ範囲について用意された前記調節データテーブルに前記帯電指標値を適用して得られる前記候補電流値に調節する。
【0108】
例えば、定着制御部8dは、シートセンサー32の検出結果を取得する。さらに、定着制御部8dは、レジストローラー対31aが回転しているときにシート9がシートセンサー32により検出されている時間を前記長さ情報として特定する。
【0109】
なお、シートセンサー32は、シート9の搬送経路における定着装置47に対し搬送方向D1の上流側の位置でシート9を検出するセンサーの一例である。
【0110】
また、画像形成装置10は、一対のシートカーソル12の位置を計測するポテンショメーター13を備える(
図1参照)。ポテンショメーター13は、一対のシートカーソル12の位置を計測することによってシート9の幅方向D2の寸法を計測する。
【0111】
定着制御部8dは、ポテンショメーター13の計測結果を前記幅情報として取得する。なお、ポテンショメーター13は、一対のシートカーソル12の位置を計測することによってシート9の幅方向D2の寸法を計測する幅計測部の一例である。
【0112】
シート9の前記長さ情報および前記幅情報の一方または両方が、操作装置801を通じて入力されてもよい。この場合、定着制御部8dは、操作装置801を通じて前記サイズ情報の一部または全部を取得する。
【0113】
本応用例が採用される場合も、実施形態に係る画像形成装置10が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0114】
[第2応用例]
次に、画像形成装置10の第2応用例について説明する。
【0115】
前記オフセット画像は、シート9上のトナー90の像がソリッド画像である場合よりもドット画像である場合の方が発生しやすい。換言すれば、前記オフセット画像は、シート9上のトナー密度が高い場合よりも前記トナー密度が低い場合に発生しやすい。前記トナー密度は、シート9上におけるトナー90の像の密度である。
【0116】
本応用例において、定着制御部8dは、前記帯電指標値と前記トナー密度を表す密度情報とに応じて帯電電流A1を調節する。
【0117】
例えば、定着制御部8dは、前記プリント対象の画像における予め定められた複数の単位領域ごとに、前記単位領域内における前記現像色ごとの描画画素の数、または、前記単位領域内で前記描画画素が占める比率を単位トナー密度として導出する。
【0118】
前記単位トナー密度が極端に小さい前記現像色においては、そもそも前記オフセット画像が発生しにくい。
【0119】
定着制御部8dは、前記現像色ごとに、前記単位領域ごとの前記単位トナー密度のうち予め定められた下限密度を超える最小値を、前記現像色ごとの前記密度情報として導出する。
【0120】
そして、本応用例における定着制御部8dは、前記帯電指標値と前記密度情報とに応じて帯電電流A1を調節する。
【0121】
具体的には、定着制御部8dは、前記帯電指標値が同等である場合に、前記密度情報が高い密度を表す場合の方が低い密度を表す場合よりも帯電電流A1が大きくなるように調節する。
【0122】
例えば、前記帯電指標値の前記複数のランクと帯電電流A1の複数の候補電流値との対応関係を表す前記調節データテーブルが、複数の密度範囲ごとに予め用意されている。この場合、定着制御部8dは、帯電電流A1を、前記密度情報に対応する前記密度範囲について用意された前記調節データテーブルに前記帯電指標値を適用して得られる前記候補電流値に調節する。
【0123】
また、本応用例が前記第1応用例に適用されてもよい。この場合、前記調節データテーブルが、シート9の前記複数のサイズ範囲と前記複数の密度範囲との組み合わせごとに予め用意されている。
【0124】
そして、定着制御部8dは、帯電電流A1を、前記サイズ情報に対応する前記サイズ範囲と前記密度情報に対応する前記密度範囲との組み合わせについて用意された前記調節データテーブルに前記帯電指標値を適用して得られる前記候補電流値に調節する。
【0125】
本応用例が採用される場合も、実施形態に係る画像形成装置10が採用される場合と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0126】
4 :作像装置
4x :単色作像部
7 :湿度センサー
8 :制御装置
10 :画像形成装置
30 :搬送路
45 :転写装置
47 :定着装置
471 :定着ベルト
472 :定着ローラー
473 :ヒーター
475 :加圧ローラー
477 :定着帯電装置
477a :帯電針
477b :シールド部材
477c :電流出力回路