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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】媒体取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/26 20190101AFI20241106BHJP
   G07D 11/18 20190101ALI20241106BHJP
   G07D 11/245 20190101ALI20241106BHJP
【FI】
G07D11/26
G07D11/18
G07D11/245
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021028548
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129741
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】阿久澤 勇馬
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-127131(JP,A)
【文献】特開昭62-090793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補充回収庫から媒体収納庫への紙幣の補充をする補充処理、又は前記媒体収納庫から前記補充回収庫への紙幣の回収をする回収処理を行なうものであって、前記補充処理又は前記回収処理で検出された異常紙幣を、前記補充回収庫に設けられた異常媒体収納部に収納する媒体取扱装置において、
一時保留部又は媒体出入口と、
前記補充回収庫と前記媒体収納庫との間の搬送制御を行う制御部と、
前記補充回収庫と前記媒体収納庫との間を搬送される紙幣の状態を認識する認識部と
を備え、
前記制御部は、前記認識部より異常紙幣が検出されると、前記一時保留部又は前記媒体出入口に、前記異常紙幣を一時的に退避させるものであり、
前記制御部が、前記補充処理又は前記回収処理を完了後、一時的に退避させた前記異常紙幣の枚数と、前記異常媒体収納部の最大収納数とを比較し、その比較結果に応じて、一時的に退避させた前記異常紙幣を、前記異常媒体収納部又は前記補充回収庫に搬送し、
前記制御部は、
一時的に退避させた前記異常紙幣の枚数が、前記異常媒体収納部の最大収納枚数以下の場合、一時的に退避させた前記異常紙幣を前記異常媒体収納部に搬送し、
一時的に退避させた前記異常紙幣の枚数が、前記異常媒体収納部の最大収納枚数より大きい場合、一時的に退避させた前記異常紙幣を前記補充回収庫に搬送する
ことを特徴とする媒体取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体取扱装置に関するものであり、例えば、紙幣などの媒体を取り扱う媒体取扱装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の媒体取扱装置は、紙幣を金種別に収納する金種別カセットを備えている。金種別カセットの紙幣枚数が不足すると、媒体取扱装置は紙幣を出金できなくなるので、その場合、従来の媒体取扱装置は金種別カセットに紙幣を補充する補充処理を行なう。
【0003】
補充処理の1つの方法として、特許文献1に記載される方法がある。例えば、媒体取扱装置は、紙幣を補充するための補充回収カセットを装着し、その補充回収カセットから金種別カセットに向けて紙幣を搬送して補充する。このとき、補充する紙幣が正常紙幣(異常のない紙幣)であるか否かを判定するため、媒体取扱装置は紙幣を認識部に通過させてリジェクト判定を行う。
【0004】
認識部が正常紙幣であると判定すると、媒体取扱装置は金種別カセットに紙幣を搬送して収納する。他方、認識部が異常紙幣(以下、「リジェクト紙幣」若しくは「リジェクト媒体」と呼ぶ。)と判定すると、媒体取扱装置は、リジェクト紙幣RJを、補充回収カセット内にあるリジェクト部に搬送する。
【0005】
補充処理終了後、オペレータが補充回収カセットを取り外すが、リジェクト紙幣RJは補充回収カセットのリジェクト部内に収納されているので、補充回収カセットと一緒に回収されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-126115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、補充回収カセットのリジェクト部が満杯になってしまうと、リジェクト紙幣の格納先がなくなってしまう。そのため、従来の媒体取扱装置は補充処理を一時的に中断し、オペレータが媒体取扱装置から補充回収カセットを取り出して、リジェクト部からリジェクト紙幣を除去し、再度、オペレータが補充回収カセットを媒体取扱装置にセットし、媒体取扱装置はイニシャライズして補充処理を途中から再開させている。
【0008】
このように、リジェクト部が満杯になってしまうと、媒体取扱装置は補充処理を途中で中断してから、その後媒体取扱装置が補充処理を再開させるまで、オペレータの作業負担が大きく、作業時間も増大するという問題がある。このオペレータ作業の発生頻度は、リジェクト部の媒体の最大収納枚数が少ないほど増加することになる。
【0009】
そのため、上述した課題に鑑み、リジェクト媒体の格納先が満杯になってしまい、一時的に中断した処理を再開させるまでの作業負担を軽減でき、作業時間を短縮化できる媒体取扱装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため、本発明は、補充回収庫から媒体収納庫への紙幣の補充をする補充処理、又は媒体収納庫から補充回収庫への紙幣の回収をする回収処理を行なうものであって、補充処理又は回収処理で検出された異常紙幣媒体を、補充回収庫に設けられた異常媒体収納部に収納する媒体取扱装置において、一時保留部又は接客部と、補充回収庫と媒体収納庫との間の搬送制御を行う制御部と、補充回収庫と媒体収納庫との間を搬送される紙幣の状態を認識する認識部とを備え、制御部は、認識部より異常紙幣が検出されると、一時保留部又は媒体出入口に、異常紙幣を一時的に退避させるものであり、制御部が、補充処理又は回収処理を完了後、一時的に退避させた異常紙幣の枚数と、異常媒体収納部の最大収納数とを比較し、その比較結果に応じて、一時的に退避させた異常紙幣を、異常媒体収納部又は補充回収庫に搬送し、制御部は、一時的に退避させた異常紙幣の枚数が、異常媒体収納部の最大収納枚数以下の場合、一時的に退避させた異常紙幣を異常媒体収納部に搬送し、一時的に退避させた異常紙幣の枚数が、異常媒体収納部の最大収納枚数より大きい場合、一時的に退避させた異常紙幣を補充回収庫に搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リジェクト媒体の格納先が満杯になってしまい、一時的に中断した処理を再開させるまでの作業負担を軽減でき、作業時間を短縮化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る媒体取扱装置の内部構成を示す内部構成図である。
図2】実施形態に係る媒体取扱装置の外観構成を示す外観構成図である。
図3】実施形態に係る媒体取扱装置における制御系の構成を示す構成図である。
図4】第1の実施形態の媒体取扱装置における補充処理の動作を説明する説明図である(その1)。
図5】第1の実施形態の媒体取扱装置における補充処理の動作を説明する説明図である(その2)。
図6】第1の実施形態の媒体取扱装置における補充処理の動作を説明する説明図である(その3)。
図7】第1の実施形態の媒体取扱装置における補充処理の動作を説明する説明図である(その4)。
図8】第1の実施形態の媒体取扱装置における補充処理の動作を説明する説明図である(その5)。
図9】第1の実施形態の媒体取扱装置における補充処理の動作を示すフローチャートである。
図10】第2の実施形態の媒体取扱装置における補充処理の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)第1の実施形態
以下、本発明に係る媒体取扱装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
第1の実施形態は、金融機関等の店舗に設置されるATM(Auto Teller Machine)に本発明を適用する場合を例示する。本発明の媒体取扱装置は、ATMに限らず、金融機関等の窓口業務で用いられる現金処理装置、金融機関の店舗、小売店舗などで用いられる現金処理装置にも適用できる。
【0015】
(A-1)第1の実施形態の構成
図2は、実施形態に係る媒体取扱装置の外観構成を示す外観構成図である。
【0016】
図2において、媒体取扱装置50は、顧客又はオペレータが操作をしたり又は媒体取扱装置50の状態や入力情報等を表示したりする操作表示部53、紙幣を受け入れたり又は紙幣を排出したりする紙幣入出口54、硬貨を受け入れたり又は硬貨を排出したりする硬貨入出口55などを有する。図2には図示しないが、媒体取扱装置50は、キャシュカードやクレジットカード等のカード入出口、明細票排出口、NFC(Near Field Communication)やBluetooth(商標登録)等の近距離無線通信部等を備えるようにしてもよい。
【0017】
図1は、実施形態に係る媒体取扱装置50の内部構成を示す内部構成図である。
【0018】
図1において、媒体取扱装置50は、接客部1、認識部2、一時保留部3、入出金リジェクト部4a、取り忘れリジェクト部4b、複数(図1では3個)の金種別カセット5a~5c、補充回収カセット5d、搬送部17を有する。
【0019】
媒体取扱装置50は、媒体としての紙幣の入金処理、出金処理、補充処理等を行うものである。ここで、入金処理は、顧客から投入された現金に基づいて入金を行う処理であり、出金処理は、顧客に対して現金を支払う出金を行う処理である。補充処理は、補充回収カセット5dに収納されている紙幣を、金種別カセット5a~5cに補充する処理である。回収処理は、金種別カセット5a~5cに収納されている紙幣を補充回収カセット5dに回収する処理である。
【0020】
搬送部17は、媒体取扱装置50の各構成要素の間で紙幣を搬送する部分であり、媒体の搬送に必要な複数の搬送ローラを有する。搬送ローラは搬送部17の搬送路を挟んで互いに対向するように配置されており、回転することにより紙幣に駆動力を伝達する。搬送部17は、媒体取扱装置50のある構成要素から別の構成要素までを一方向に紙幣を搬送するだけでなく、必要に応じて構成要素間で双方向に紙幣を搬送することができる。
【0021】
また、搬送部17は、その分岐点に切替ブレードが配置されており、その切替ブレードが紙幣の搬送先を切り替える構成になっている。また、搬送部17は、適宜、間隔を空けてセンサが配置されており、センサが紙幣の搬送状態を感知する。ここでは、動作の説明に必要な切替ブレードBとセンサ(C1~C3)のみを記載している。
【0022】
さらに、搬送部17は、認識部2の下側において環状の搬送路を形成し、この環状の搬送路は、認識部2を含む上側の搬送路である上側搬送部17aと、金種別カセット5a~5cに接続される下側の搬送路であって、装置の前方に位置する下側前搬送部17bと、補充回収カセット5dに接続される下側の搬送路であって、装置の後方に位置する下側後搬送部17cとに区別することができる。上側搬送部17aと下側前搬送部17bと下側後搬送部17cは独立して駆動することができる。例えば、下側前搬送部17bの搬送モータを駆動させることで下側前搬送部17bに存在する紙幣を搬送しつつ、上側搬送部17aと下側後搬送部17cの駆動を停止することで上側搬送部17aと下側後搬送部17cに存在する紙幣の搬送を停止することができる。
【0023】
接客部1は、顧客により投入された紙幣を受け付けたり、又顧客に対して出金する紙幣を集積したり、顧客との間で紙幣の受け渡しを行う機構である。接客部1は、例えば、媒体取扱装置50の紙幣入出口54に対応する部分である。接客部1は、投入された紙幣を1枚ずつ分離して搬送部17に繰り出す分離手段(例えば、分離ローラ機構)6を有する。また、接客部1は、搬送部17からの紙幣を集積する集積手段も有する。
【0024】
認識部2は、搬送部17により搬送される紙幣の鑑別や計数処理や記番号識別処理等を行う。認識部4は、例えば、光学センサや磁気センサ等を有しており、通過する紙幣状態を認識し、紙幣の真偽判定(真券、偽造券等の判定)、正損判定(汚損券、破損券、損壊券、外形異常券、折れ券等、又は正券の判定)、金種判定、計数処理等を行う。
【0025】
一時保留部3は、搬送部17を介して一時的に紙幣を集積して、紙幣を保留する部分である。一時保留部3の構造は、様々な構造を適用できるが、例えば、紙幣をテープと共にドラムに巻き付けて収納するテープ方式を適用できる。例えば、一時保留部3は、搬送部17から紙幣が搬送されてくると、紙幣をドラムの周側面近傍まで搬送して、ドラムを回転させることにより、紙幣をテープと共にドラムの周側面に巻き付けて収納する。また、一時保留部3が紙幣を繰り出す場合、一時保留部3は、ドラムとテープを巻き取るリールとを紙幣収納時とは逆方向に回転させることで、ドラムの周側面からテープと共に紙幣を引き剥がし、これを搬送部17に引き渡すようになっている。なお、図1では、1個の一時保留部3を備える場合を例示するが、複数個の一時保留部3を備えるものであっても良い。
【0026】
金種別カセット5a~5cは、金種毎に紙幣を収納する媒体収納庫である。金種別カセット5a~5cは、入金時に、入金された紙幣を収納し、その後出金時に、金種別カセット5a~5cに収納されている紙幣を出金する還流型リサイクル用カセットである。例えば、金種別カセット5a~5cは、内部に図示しない昇降可能なステージがあり、このステージ上に紙幣を集積する機構を備えている。また、金種別カセット5a~5cは、ステージ上の紙幣を1枚ずつ分離して搬送部17に繰り出す分離ローラ7a~7cを有する。例えば、金種別カセット5a~5cは、日本円の一万円券、五千円券、千円券毎の金種別の紙幣を収納するようにしてもよい。勿論、金種別カセット5a~5cは日本国以外の通貨にも対応できる。また、金種別カセット5a~5cの個数は特に限定されず、さらに金種別スタッカ25a~25dの用途も、運用に応じて様々なものとすることができる。
【0027】
補充回収カセット5dは、媒体取扱装置50に対して着脱可能なものであり、金種別カセット5a~5cに紙幣を補充したり、金種別カセット5a~5cから紙幣を回収するための補充回収庫である。
【0028】
補充回収カセット5dは、紙幣補充の際に、リジェクト紙幣を回収するリジェクト部5eを有している。補充回収カセット5dは、図示しない昇降可能なステージ上に紙幣を集積させ、ステージ上の紙幣を分離する分離ローラ機構等を有している。さらに、補充回収カセット5dは、リジェクト紙幣をリジェクト部5eに回収するため、搬送部17からのリジェクト紙幣をリジェクト部5eに集積するように構成されており、金種別スタッカ25a~25dの紙幣を回収して収納する収納機構部を有する。
【0029】
入出金リジェクト部4aは、紙幣の入金時又は出金時に、認識部2によりリジェクト判定されたリジェクト紙幣を収納する入出金時のリジェクト紙幣収納カセットである。
【0030】
取り忘れリジェクト部4bは、接客部1に集積した紙幣を顧客が取り忘れたとき、その取り忘れた紙幣を収納するものである。
【0031】
図3は、実施形態に係る媒体取扱装置50における制御系の構成を示す構成図である。
【0032】
図3に示すように、媒体取扱装置50の制御系の構成は、制御部51、記憶部52、操作表示部53、上側搬送部17a、下側前搬送部17b、下側後搬送部17c、分離ローラ6、7a~7d、認識部2を有する。
【0033】
認識部2は、通過する紙幣の状態を判定し、その判定結果を制御部51に与える。
【0034】
制御部51は、媒体取扱装置50の各種機能を司るものである。制御部51は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、入出力インタフェース部等を有するものである。制御部51は、例えば、CPUが記憶部52(例えばROM)に記憶される処理プログラムを実行することにより、媒体取扱装置50の機能を実現するものである。補充処理の際、制御部51が補充回収カセット5dからの紙幣の制御処理の詳細な説明は、動作の項で行う。
【0035】
記憶部52は、処理プログラム、処理プログラムの実行に必要な情報を記憶する記憶装置である。
【0036】
操作表示部53は、液晶ディスプレイと入力装置とが一体となったタッチパネル、又は、タッチレスパネル(非接触型パネル)等を適用できる。操作表示部53は処理メニュー画面を表示し、オペレータの操作により補充処理が選択されると、その旨を制御部51に通知する。これにより、補充処理が開始する。
【0037】
分離ローラ6は、接客部1から1枚ずつ紙幣を分離して繰り出すためのローラである。分離ローラ7a~7cは、金種別カセット5a~5cから1枚ずつ紙幣を分離して繰り出したり又は紙幣を収納したりするローラである。分離ローラ7dは、補充回収カセット5dから1枚ずつ紙幣を分離して繰り出したり又は収納したりするローラである。
【0038】
(A-2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態に係る媒体取扱装置50における補充処理の動作を説明する。
【0039】
図4図8は、第1の実施形態の媒体取扱装置50における補充処理の動作を説明する説明図である。
【0040】
説明便宜上、金種別カセット5bに紙幣を補充する場合を例示する。なお、金種別カセット5a~5cの全て又は一部が満杯(フル)になるまで紙幣を補充するようにしてもよい。
【0041】
オペレータは、媒体取扱装置50に補充回収カセット5dを装着する。オペレータは、媒体取扱装置50の操作表示部53を操作して、処理画面上で補充処理を選択する。そうすると、制御部51は補充処理を開始する。
【0042】
制御部51は、補充回収カセット5dの分離ローラ7dを駆動し、分離ローラ7dは補充回収カセット5dから紙幣を1枚ずつ搬送部17に送り出し、認識部2に向けて搬送する。
【0043】
認識部2は、通過する紙幣の状態に異常があるか否かを判定し、その判定結果を制御部51に通知する。
【0044】
認識部2が、通過した紙幣が正常である(リジェクト紙幣でない)と判定すると、制御部51は搬送部17を制御し、搬送部17は補充すべき金種別カセット5bに向けて紙幣を搬送し、制御部51は当該金種別カセット5bに紙幣を収納させる。図4(A)に示す点線矢印が、正常紙幣の搬送方向である。
【0045】
認識部2が、通過した紙幣がリジェクト紙幣RJであると判定した場合について説明する。
【0046】
図4(B)に示すように、リジェクト紙幣RJを検知すると、制御部51は補充回収カセット5dからの分離を停止する。ここで、リジェクト紙幣RJは、上側搬送部17aに位置している。
【0047】
ここで、補充回収カセット5dから金種別カセット5bまでの搬送方向で、リジェクト紙幣RJの前方には、正常な紙幣が存在しており、リジェクト紙幣RJの後方には、補充回収カセット5dから繰り出された複数枚の紙幣が存在している。
【0048】
次に、リジェクト紙幣RJを下側前搬送部17bに進行させ、リジェクト紙幣RJがセンサC1を通過したことを検知すると、制御部51は上側搬送部17aと下側後搬送部17cの搬送モータを停止させる。つまり、リジェクト紙幣RJの後方に位置する紙幣の搬送は停止され、リジェクト紙幣RJの後方の紙幣は上側搬送部17aまたは下側後搬送部17cに留まる。そして、リジェクト紙幣RJの前方に搬送されている紙幣がセンサC2を通過したことを確認した上で、制御部51は切替ブレードBを制御し、紙幣の搬送方向を金種別カセット5bへ向かう搬送路から金種別カセット5cに向かう搬送路に切り替える。これにより、リジェクト紙幣RJを下側前搬送部17bの搬送路に退避させる。リジェクト紙幣RJの前方に搬送されている紙幣が金種別カセット5bに集積されたことを確認し、かつリジェクト紙幣RJがセンサC3に到達する前に、制御部51は下側前搬送部17bの搬送モータを停止させる。(図5(A)参照)。
【0049】
次に、リジェクト紙幣RJの後方に存在している紙幣を補充回収カセット5dに搬送して収納するため、制御部51は、上側搬送部17aと下側後搬送部17cの搬送路における搬送ローラを逆方向に回転させる(戻し処理起動)。これにより、リジェクト紙幣RJの後方に存在していた紙幣は、搬送方向の逆方向に搬送され、補充回収カセット5dに搬送されて収納される(図5(B)参照)。
【0050】
このとき、制御部51は、下側前搬送部17bの搬送モータを停止させたままなので、リジェクト紙幣RJは、下側前搬送部17bの搬送路上で停止したままである(図5(B)参照)。
【0051】
そして、リジェクト紙幣RJの後方に存在している全ての紙幣が補充回収カセット5dに戻されると(図6参照)、制御部51は、下側前搬送部17bの搬送路における搬送ローラを逆方向に回転させ、リジェクト紙幣RJを一時保留部3に向けて搬送する(図7(A)参照)。このようにして、リジェクト紙幣RJを一時保留部3に退避させることができる(図7(B)参照)。
【0052】
リジェクト紙幣RJを一時保留部3に退避させた後、補充処理を継続して行なうため、制御部51は補充回収カセット5dの紙幣を金種別カセット5bに搬送して補充する。
【0053】
金種別カセット5bへの補充処理が完了すると、制御部51は、以下のようにして、一時保留部3に退避させたリジェクト紙幣RJを回収させる。図8及び図9を参照して説明する。
【0054】
まず、制御部51は、一時保留部3に一時的に退避させたリジェクト紙幣RJの枚数と、リジェクト部5eの最大収納枚数とを比較する(S11)。
【0055】
そして、リジェクト部5eの最大収納枚数が、一時保留部3のリジェクト紙幣RJの枚数以上のとき(S11/YES)、制御部51は、リジェクト紙幣RJを、リジェクト部5eに搬送・収納する(S12/図8(A)参照)。
【0056】
他方、リジェクト部5eの最大収納枚数が、一時保留部3のリジェクト紙幣RJの枚数未満のとき、制御部51は、リジェクト紙幣RJを、補充回収カセット5dに搬送・収納する(S13/図8(B)参照)。
【0057】
例えば、媒体取扱装置50における各構成要素の最大収納枚数は、多い順に、[金種別カセット5a、5b、5c]=[補充回収カセット5d]>[接客部1]>[一時保留部3]>[入出金リジェクト部4a]=[取り忘れリジェクト部4b]>[リジェクト部5e]とする。
【0058】
この例の場合、リジェクト部5eより最大収納枚数が多い一時保留部3にリジェクト紙幣RJを一時的に収納しておくことで、リジェクト部5eが満杯(フル)になり、補充処理が停止してしまうことを回避できる。これによって補充処理を再開させるためのリジェクト紙幣RJの除去作業の回数を減少させることが可能となり、オペレータの作業時間の減少が期待できる。
【0059】
さらに、一時保留部3に保留させている全てのリジェクト紙幣RJをリジェクト部5eに移せない場合は、全てのリジェクト紙幣RJを補充回収カセット5dに移動させることで、1回の移動作業で補充回収カセット5dにリジェクト紙幣RJを移すことできる。その結果、オペレータの除去作業も軽減でき、作業時間も短くなる。
【0060】
(A-3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、一時保留部にリジェクト紙幣を保留させることで、補充処理の停止を回避させることができる。これにより、補充処理の再開を回避でき、オペレータの作業負担が軽減され、作業時間も短くすることができる。
【0061】
(B)第2の実施形態
次に、本発明に係る媒体取扱装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0062】
(B-1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態に係る媒体取扱装置を「媒体取扱装置50A」と表記して説明する。媒体取扱装置50Aの構成は、基本的には、第1の実施形態の媒体取扱装置50の構成と同じなので、第2の実施形態でも図1図3を用いる。
【0063】
(B-2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態に係る媒体取扱装置50Aにおける補充処理の動作を、図4図8図10を用いて説明する。
【0064】
図10は、第1の実施形態の媒体取扱装置50Aにおける補充処理の動作を説明する説明図である。
【0065】
第2の実施形態では、媒体取扱装置50Aが、リジェクト部5e以外の箇所として接客部1に、リジェクト紙幣RJを一時的に退避させる。
【0066】
第1の実施形態の図4図6と同様に、補充処理が開始すると、制御部51は、補充回収カセット5dから1枚ずつ繰り出した紙幣を、認識部2を経由させて金種別カセット5bに搬送する。認識部2は通過する紙幣状態を判定する。
【0067】
認識部2がリジェクト紙幣RJを検出すると(図4(A)参照)、制御部51は補充回収カセット5dからの分離停止を起動し(図4(B)参照)、制御部51は、リジェクト紙幣RJの前方に位置している正常紙幣を金種別カセット5bに収納させる(図5(A)参照)。
【0068】
次に、制御部51は戻し処理を起動し(図5(B)参照)、制御部51は、上側搬送部17aと下側後搬送部17cの搬送路における搬送ローラを逆方向に回転して、リジェクト紙幣RJの後方に位置している紙幣を補充回収カセット5dに戻す(図6参照)。
【0069】
戻し処理が完了すると(図6参照)、制御部51は、下側前搬送部17bの搬送ローラを逆方向に回転させ、リジェクト紙幣RJを接客部1に向けて搬送する(図10(A)参照)。このようにして、リジェクト紙幣RJを接客部1に退避させることができる(図10(B)参照)。
【0070】
第2の実施形態によれば、リジェクト紙幣RJの状態が悪く、テープ方式の一時保留部3で巻くことができないリジェクト紙幣RJが発生した場合でも、リジェクト部5e以外の箇所にリジェクト紙幣RJを一時的に退避することができる。
【0071】
つまり、認識部2は、通過する紙幣の真偽判定だけでなく、紙幣状態、外形等も判定できる。例えば、認識部2は、「重走」、「破れ」、「テープ貼り付け」、「角折れ」、「汚れ」などのチェック項目毎に、チェックの有無やその程度を示す情報(例えば評価値)を判定できる。紙幣状態が良好でないリジェクト紙幣RJをテープ方式の一時保留部3で保留しようとすると、紙詰まり等のジャムが生じてしまう可能性がある。そこで、上述したように、リジェクト紙幣RJを接客部1に一時的に退避させることで、紙幣状態が悪いリジェクト紙幣RJでも一時的に退避させることができる。
【0072】
金種別カセット5bへの補充処理が完了すると、制御部51は、第1の実施形態の図9と同様の処理により、接客部1に一時的に退避させたリジェクト紙幣RJを、補充回収カセット5d又はリジェクト部5eに搬送して回収する。この処理の詳細な説明は省略する。
【0073】
(B-3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した効果を奏することに加えて、テープ方式の一時保留部ではなく接客部に、リジェクト媒体を一時的に退避することで、テープ方式のスタッカで集積・分離することで発生するジャムを減少させる効果が得られる。
【0074】
(C)他の実施形態
上述した第1及び第2の実施形態でも種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態も適用できる。
【0075】
(C-1)第1及び第2の実施形態では、補充処理の際に、認識部2が検出したリジェクト紙幣RJを、制御部51が一時的に退避させる場合を例示した。
【0076】
しかし、制御部51は、補充処理以外の処理でも、リジェクト紙幣RJを一時的に退避させるようにしてもよい。
【0077】
例えば、従来の回収処理の際、制御部51は、金種別カセット5a、5b、5cからの紙幣を、認識部2経由で補充回収カセット5dに搬送している。このとき、正常紙幣についてはそのまま補充回収カセット5dに搬送する。他方、認識部2がリジェクト紙幣RJを検出すると、制御部51はリジェクト紙幣RJをリジェクト部5eに搬送している。
【0078】
これに対して、第1及び第2の実施形態を適用することで、制御部51は、金種別カセット5a、5b、5cからのリジェクト媒体を、一時保留部3又は接客部1に、一時的に退避させる。そして、回収動作完了後に、制御部51は、一時的に退避させたリジェクト紙幣RJの枚数と、リジェクト部5eの最大収納枚数とを比較し、その比較結果に応じて、リジェクト紙幣RJを、補充回収カセット5d又はリジェクト部5eのいずれかに搬送して回収する。
【0079】
(C-2)第1の実施形態では、制御部51が一時保留部3にリジェクト紙幣RJを一時的に退避させ、第2の実施形態では、制御部51が接客部1にリジェクト紙幣RJを一時的に退避させた。
【0080】
しかし、リジェクト紙幣を一時的に退避させる箇所は、補充回収カセット5dのリジェクト部5e以外であれば、他の箇所としてもよい。例えば、リジェクト部5e以外の箇所は、入出金リジェクト部4a又は取り忘れリジェクト部4bとしてもよい。
【0081】
(C-3)また、一時保留部3及び接客部1の両方をリジェクト紙幣の退避先としてもよい。
【0082】
例えば、認識部2がリジェクト紙幣RJの紙幣状態を評価する評価値を求め、紙幣状態の評価値と閾値とを比較する。制御部51は、その比較結果に基づいて、紙幣状態が極めて悪いリジェクト紙幣RJについては接客部1に退避させ、テープ方式でも耐えられる程度の紙幣状態のリジェクト紙幣RJについては一時保留部に退避させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
50…媒体取扱装置、1…接客部、2…認識部、3…一時保留部、4a…入出金リジェクト部、4b…取り忘れリジェクト部、5a~5c…金種別カセット、5d…補充回収カセット、5e…リジェクト部、6…分離ローラ、7a~7d…分離ローラ、17…搬送部、17a…上側搬送部、17b…下側前搬送部、17c…下側後搬送部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10