(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】集塵装置及び集塵方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/20 20220101AFI20241106BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B09B3/20
B01D46/42 Z
(21)【出願番号】P 2021029639
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇
(72)【発明者】
【氏名】大木 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 功
(72)【発明者】
【氏名】西川 心太郎
(72)【発明者】
【氏名】正木 徳諒
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-140799(JP,A)
【文献】特開昭62-009798(JP,A)
【文献】特開2010-069536(JP,A)
【文献】特開2009-285415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/20-3/32
B01D 46/42
A47L 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧発生源により発生した負圧により吸引したダストを固形化する集塵装置であって、
前記負圧発生源により外部から吸引されて自重落下したダストを貯留する貯留槽と、
前記貯留槽内に貯留されたダストを
固形化する成形室
と、前記成形室内に向かって開口し前記成形室の外側に形成される孔部とを有するダスト固形化機構と、
前記ダスト固形化機構が有する前記孔部のエアを、前記
成形室内のダストとの間を仕切って抜き取るエア抜きダクトと、を備える集塵装置。
【請求項2】
前記ダスト固形化機構は、
前記貯留槽の下部内面を構成
し、前記孔部が形成される壁部と、
前記孔部内に配置され、駆動源により前記壁部から前記貯留槽内に進出し、また後退するように駆動される加圧ロッドと、
前記加圧ロッドが進出したときに前記加圧ロッドと協働してダストを圧縮して固形化する停止部材と、を備え、
前記エア抜きダクトは、一端の内部が前記孔部に設けられた通風孔に連通する、請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記エア抜きダクトの他端は、前記貯留槽内のダスト貯留上限位置よりも上方に位置する、請求項2に記載の集塵装置。
【請求項4】
前記貯留槽の下部であって前記成形室の上方には、ダストを撹拌する撹拌機構が設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の集塵装置。
【請求項5】
前記ダストは、ヒュームと固形化阻害物とを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の集塵装置。
【請求項6】
負圧発生源により発生した負圧により吸引したダストを固形化する集塵方法であって、
前記負圧発生源により外部から吸引されて自重落下したダストを貯留槽に貯留すること、
前記貯留槽内に貯留されたダストを成形室で固形化すること、
前記成形室内に
向かって開口し前記成形室の外側に形成される孔部のエアを、前記
成形室内のダストとの間を仕切って抜き取ること、を含む集塵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵装置及び集塵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料等のレーザー加工、プラズマ加工、および溶接などの際に発生するヒュームを含むダストは、作業者が吸引すると健康に深刻な被害を与える恐れがある。
そのため、作業環境を清浄に保つため集塵装置を作動させて、ダストを作業環境から除去することが行われている。
ここで集塵装置に収集されたダストは、かさ密度が小さい状態であり、この状態のままでは取り扱いが難しいため、ダストを圧縮して固形化し、扱いやすい状態(例えば、ペレット状)に加工することが行われる。
扱いやすい状態に加工されたダストは、再溶融等の処理を行うことで再利用可能となる。
【0003】
従来技術の一例である特許文献1には、集塵機で回収するダストをプレダストボックス内で圧縮し固形化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、切りくず及び粉塵等を含むダストの成形性には改善の余地がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、集塵したダストの成形性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決して目的を達成する本発明の一側面は、負圧発生源により発生した負圧により吸引したダストを固形化する集塵装置であって、負圧発生源により外部から吸引されて自重落下したダストを貯留する貯留槽と、貯留槽内に貯留されたダストを成形室で固形化するダスト固形化機構と、負圧により成形室内に流入するエアを、貯留槽内のダストとの間を仕切って抜き取るエア抜きダクトと、を備える。
【0007】
上述の集塵機は、成形室内に流入するエアをエア抜きダクトによって抜き取る構成なので、固形化時(圧縮時)において、ダストは装置内を再飛散しにくくなる。
その結果、ダストの成形性を向上させることができる。
【0008】
本発明の一態様では、ダスト固形化機構は、貯留槽の下部内面を構成する壁部と、壁部に形成された孔部内に配置され、駆動源により壁部から貯留槽内に進出し、また後退するように駆動される加圧ロッドと、加圧ロッドが進出したときに加圧ロッドと協働してダストを圧縮して固形化する停止部材と、を備え、エア抜きダクトは、一端の内部が孔部に設けられた通風孔に連通する。
エア抜きダクトの一端がダストを貯留している貯留槽の下部の壁部に形成された孔部に設けられた通風孔と連通しているので、固形化時(圧縮時)でもダストを再飛散しにくくすることができる。
【0009】
本発明の一態様では、エア抜きダクトの他端は、貯留槽内のダスト貯留上限位置よりも上方に位置する。
ダストを貯留している貯留槽より上方にエア抜きダクトの他端を設けているので、成型室から抜き取ったエアをダスト再飛散の原因となりにくい場所に排気することができる。
【0010】
本発明の一態様では、貯留槽の下部であって成形室の上方には、ダストを撹拌する撹拌機構が設けられている。
ダストを均質にすることで、ダストの成形性を向上させることができる。
【0011】
本発明の一態様では、ダストは、ヒュームと固形化阻害物とを含む。
成形された固形化物における、固形化を阻害する固形化阻害物の含有率が相対的に増大するのを防ぐことができる。
【0012】
本発明の別の側面は、負圧発生源により発生した負圧により吸引したダストを固形化する集塵方法であって、負圧発生源により外部から吸引されて自重落下したダストを貯留槽に貯留すること、貯留槽内に貯留されたダストを成形室で固形化すること、負圧により成形室内に流入するエアを、貯留槽内のダストとの間を仕切って抜き取ること、を含む。
【0013】
上述の集塵方法では、成形室内に流入するエアをエア抜きダクトによって抜き取る構成なので、固形化時(圧縮時)において、ダストは装置内を再飛散しにくくなる。
その結果、ダストの成形性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、集塵したダストの成形性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る集塵装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、撹拌機構及びダスト固形化機構を示す図である。
【
図3】
図3は、撹拌機構、ダスト固形化機構及びエア抜き機構を示す図である。
【
図5】
図5は、エア抜きダクトが設置されていない比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の構成について図面を参照して説明する。
ただし、本発明は、以下の実施形態の記載によって限定解釈されるものではない。
【0017】
<実施形態>
以下では、レーザー加工機から発生するダストを固形化する場合の例を説明する。
このダストは、微細なヒューム及び粗大なスパッタが含まれている。
ヒュームは圧縮して固形化しやすい。
スパッタは、ヒュームよりも質量及びサイズが大きく、固形化しにくい。
従って、発生したダスト(微細なヒュームと粗大なスパッタを含む)を固形化する場合は、微細なヒュームの含有率を高める必要がある。
【0018】
図1は、本実施形態に係る集塵装置3の概略構成を示す図である。
図1に示す集塵装置3は、ダスト導入口31と、ダスト捕捉機構32と、貯留槽33と、撹拌機構34と、ダスト固形化機構35と、エア抜き機構36と、を備える。
集塵装置3は、例えばレーザー加工機から発生するダストを集塵する。
【0019】
ダスト導入口31は、ダスト発生源に伸びる、図示しないダクトが接続され、集塵装置3の負圧発生源で発生させた負圧によりダストを吸引する。
ダスト捕捉機構32は、集塵装置3の上部に設けられ、ダスト導入口31から流動するダストを捕捉して落下させる。
ダスト捕捉機構32は、集塵装置3の上部に負圧を発生させる負圧発生源であるファン320を備える。
なお、ファン320にはフィルタが設けられており、このフィルタは、ファン320へのダストの侵入を防止する。
貯留槽33は、傾斜側壁330を有し、ダスト捕捉機構32で落下したダストを貯留する。
【0020】
図2は、撹拌機構34及びダスト固形化機構35を示す図である。
図2に示す撹拌機構34は、貯留槽33の下方に配置されている。
集塵装置3の運転状態及びダストの再飛散等により、貯留槽33に貯留されたダスト内のヒューム及びスパッタの含有率は変動しうる。
撹拌機構34は、撹拌アーム340を備え、撹拌アーム340の回転等により、貯留槽33の下方で貯留されたダストを撹拌して均質化する。
撹拌により均質化されたダストは、ダスト固形化機構35に移動する。
撹拌機構34によれば、簡便な構造でダストの成分を均質化し、ダストの固形化を安定して行うことができる。
ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、集塵装置3には、撹拌機構34が設けられていなくてもよい。
【0021】
図3は、
図1の撹拌機構34、ダスト固形化機構35及びエア抜き機構36を示す図である。
図4は、
図3に対応する斜視図である。
図3に示すダスト固形化機構35は、撹拌機構34の下方に配置されている。
ダスト固形化機構35は、貯留槽33内に貯留されたダストを成形室350でペレット状に固形化する。
【0022】
ダスト固形化機構35は、成形室350に配置されて成形孔351が設けられた成形部材352と、ロッド353,354と、貯留槽33の下部内面を構成する壁部355と、を備える。
ロッド353は、加圧ロッドであり、壁部355に形成された孔部357内に配置され、図示しない駆動源により壁部355から貯留槽33内に進出し、また後退するように駆動される、成形孔351内に進入及び退避可能なロッドである。
ロッド354は、閉止ロッドであり、成形孔351及び壁部355に形成された孔部356内に配置され、固形化物の成形時には静止し、ロッド353が進出したときにロッド353と協働してダストを圧縮して固形化する停止部材である。
ロッド353は、成形室350に落下して貯留されたダストを成形孔351内に押し込み、成形孔351内ではロッド353の加圧面とロッド354の加圧面とによりダストが押し固められることで、ペレット状の固形化物が成形される。
成形された固形化物は、ロッド353とロッド354との間に挟持され、ロッド353とロッド354とともに成形孔351を通過して、排出孔355まで搬送されて排出される。
【0023】
なお、ここでは、ロッド353は加圧ロッドであり、ロッド354は閉止ロッドであるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロッド353を閉止ロッドとし、ロッド354を加圧ロッドとしてもよいし、ロッド353,354の双方を往復動可能としてもよい。
なお、ロッド353,354の断面形状は、円形であってもよいし、正六角形等の多角形であってもよい。
【0024】
エア抜き機構36は、ダスト固形化機構35から貯留槽33内に負圧により流入するエアを、貯留槽33内に貯留されたダストとの間を仕切ってダスト固形化機構35から抜き取ることで、成形室350へのエアの侵入を防止し、ダスト固形化機構35の成形室350におけるダストの飛散を防止する。
【0025】
エア抜き機構36は、通風孔360と、エア抜きダクト361と、シール部362と、を備える。
通風孔360は、成形室350の外側であって、孔部356,357に設けられている。
エア抜きダクト361は、一端の内部が孔部356,357に設けられた通風孔360に連通し、孔部356,357から抜き取られたエアの退避経路を形成する。
エア抜きダクト361の他端の位置は、特に限定されるものではないが、貯留槽33内のダスト貯留上限位置よりも上方であることが好ましい。
シール部362は、成形室350と通風孔360との間を簡易的にシールする部材である。
なお、壁部355は、エア抜きダクト361を囲み、エア抜きダクト361の経路を確保している。
【0026】
以上説明した本実施形態に係る集塵機3の作動について以下に説明する。
貯留槽33内に貯留されるダスト(微細なヒュームと粗大なスパッタの混合物)が撹拌機構34を経由してダスト固形化機構35の成型室350に落下する。
このとき、エアも同時に成型室350に流入する。
【0027】
成型室350に流入したダストはロッド353とロッド354とにより圧縮される。
このとき、ダストと同時に流入したエアがロッド353とロッド354の圧力により、成型室350から貯留槽33内に逆流する際にエアが微細なヒュームを連れ出して再飛散させることを防止するために、エア抜き機構36によって成型室350内のエアを抜き取る。
具体的には成型室350の孔部356,357に連通している通風孔360によってエアを逃がし、逃がしたエアはエア抜きダクト361を経由して貯留槽33の上方に排気される。
排気される位置は、貯留槽33におけるダスト貯留上限位置よりも上方としてもよい。
【0028】
以上説明した本実施形態に係る集塵機3の効果について、
図5を用いて以下に説明する。
成形されるペレット状の固形化物には、微細なヒューム及び粗大なスパッタが含まれており、固形化物内のスパッタ含有率が高い場合には、成形性が低下してしまい強度を確保することができず、排出孔355から排出される際に固形化物が崩壊してしまう。
エア抜きダクト361が設置されていない場合(比較例の場合)には、ヒュームがロッド354と成形孔351又は孔部356との間隙からのエアの噴出しにより飛散してしまい、成形するペレットのスパッタ含有率が高くなってしまう。
そこで、本実施形態によれば、エア抜きダクト361の設置により、ロッド353,354と成形孔351又は孔部356との間隙からのエアを逃がすことが可能となり、成形室350へのエアの侵入を抑制することができる。
その結果、ダストの飛散、特にヒュームの飛散を抑えることができるので、ヒュームの含有率が高くなり、成形されるペレットの強度を確保することができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る集塵装置3によれば、ダスト固形化機構35の成形室350へのエアの侵入を防止することができ、成形室350におけるダストの飛散、特にヒュームの飛散を防止することができる。
そのため、成形される固形化物内のスパッタ含有率を抑え、固形化物の成形性の低下を抑えることができる。
従って、本実施形態に係る集塵装置3によれば、集塵したダストの成形性を向上させることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、レーザー加工機から発生するダストを固形化する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明は、プラズマ加工機による加工時又は溶接時に発生するダスト等、固形化阻害要因が含まれるダストに適用することができる。
又は、本発明は、固形化阻害要因が含まれないダストにも適用することができる。
この場合、成形時において、ダストが成形孔351に対して粗密状態が生じることなく均質に押し込まれるので、固形化物の強度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0031】
3 集塵装置
33 貯留槽
330 傾斜側壁
34 撹拌機構
340 撹拌アーム
35 ダスト固形化機構
350 成形室
351 成形孔
352 成形部材
353 第1のシリンダロッド
354 第2のシリンダロッド
355 壁部
356,357 孔部
36 エア抜き機構
360 通風孔
361 エア抜きダクト
362 シール部