(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液体噴射装置、及び、液体噴射ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241106BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 303
B41J2/17
(21)【出願番号】P 2021031443
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】冨松 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 大記
(72)【発明者】
【氏名】八木 理
(72)【発明者】
【氏名】大野 健太
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-089310(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115353(WO,A1)
【文献】特開2012-011560(JP,A)
【文献】特開2020-199638(JP,A)
【文献】特開2020-199645(JP,A)
【文献】特開2010-214743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する
複数のノズルを有するノズルプレートを
それぞれが有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップを保持するとともに前記複数のヘッドチップの夫々へ液体を供給する流路を有し、樹脂によって形成されたホルダーと、
前記複数のヘッドチップ及び前記ホルダーを収容し、前記ホルダーよりも熱伝導率の高い材料によって形成されたホルダーカバーと、
前記ホルダーカバー及び前記複数のヘッドチップが固定され、
前記複数のノズルプレートのそれぞれを露出する複数の開口が形成され、金属によって形成された固定板と、を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジに搭載され、前記ホルダーカバー及び前記固定板を介して前記複数のヘッドチップの夫々の内部の液体を加熱する加熱部と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記ホルダーカバーは、前記ホルダーを保持する保持部と、前記保持部から前記複数のヘッドチップが並ぶ第1方向に延ばすように設けられた第1フランジ部と、前記保持部から前記第1方向とは反対方向に延ばすように設けられた第2フランジ部と、を有し、
前記第1フランジ部は、前記キャリッジに対する前記液体噴射ヘッドの位置決めを行うための第1位置決め部を有し、
前記第2フランジ部は、前記キャリッジに対する前記液体噴射ヘッドの位置決めを行うための第2位置決め部を有し、
前記加熱部は、前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部を介して前記ホルダーカバーを加熱する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記ホルダーカバーには、前記キャリッジに前記液体噴射ヘッドを固定するためのねじが挿通される孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記キャリッジは、前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部と当接されることで前記液体噴射ヘッドと位置決めされ、金属によって形成されたスペーサーと、前記スペーサーを保持し金属によって形成されたキャリッジ本体部とを有し、
前記加熱部は、前記スペーサーを加熱することで前記スペーサーを介して前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部を加熱する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記キャリッジは、前記スペーサーと前記キャリッジ本体部との間に設けられ、前記ホルダーカバーよりも熱伝導率が低い断熱材を更に有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体噴射ヘッドは、前記ホルダーカバーの前記固定板とは反対側に積層され、前記ホルダーに液体を供給する流路を有する樹脂によって形成された流路部材を備える、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記液体噴射ヘッドは、前記ホルダーカバーとは積層方向に間隔を空けて前記ホルダーに積層された回路基板を有し、
前記ホルダーカバーは、前記ホルダーを保持する保持部と、前記保持部から前記複数のヘッドチップが並ぶ第1方向に位置するように設けられた第1フランジ部と、前記第1方向とは反対方向に位置するように設けられた第2フランジ部と、を有し、
前記ホルダーカバーは、金属によって形成され、
前記第1フランジ部は、前記ホルダーカバーに対する前記回路基板の位置決めを行うための第3位置決め部を有し、
前記第2フランジ部は、前記ホルダーカバーに対する前記回路基板の位置決めを行うための第4位置決め部を有する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記回路基板と前記複数のヘッドチップのうち一のヘッドチップと接続し、駆動回路を有する配線部材を備え、
前記ホルダーは、前記配線部材を挿通するための開口を有し、
前記駆動回路の一部又は全部は、前記開口内に配置される、
ことを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記ホルダーカバーは、前記ホルダーと前記ヘッドチップとの間に設けられ、前記複数のヘッドチップが並ぶ第1方向に交差する第2方向に延在する梁部を有する、
ことを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
加熱部を搭載するキャリッジに搭載される液体噴射ヘッドであって、
液体を噴射する
複数のノズルを有するノズルプレートを
それぞれが有する複数のヘッドチップと、
前記複数のヘッドチップを保持するとともに前記複数のヘッドチップの夫々へ液体を供給する流路を有し、樹脂によって形成されたホルダーと、
前記複数のヘッドチップ及び前記ホルダーを収容し、前記ホルダーよりも熱伝導率の高い材料によって形成されたホルダーカバーと、
前記ホルダーカバー及び前記複数のヘッドチップが固定され、
前記複数のノズルプレートのそれぞれを露出する複数の開口が形成され、金属によって形成された固定板と、を有し、
前記複数のヘッドチップの夫々の内部の液体は、前記加熱部によって前記ホルダーカバー及び前記固定板を介して加熱される、
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記ホルダーカバーは、
前記キャリッジに対して前記液体噴射ヘッドを位置決めするための第1位置決め部と、
前記キャリッジに対して前記液体噴射ヘッドを位置決めするための第2位置決め部と、を有し、
前記加熱部は、前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部を介して前記ホルダーカバーを加熱する、
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置、及び、液体噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式のプリンターに代表されるように、インク等の液体を噴射する液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置が知られている。例えば、特許文献1には、複数のヘッドチップを保持するとともに複数のヘッドチップへ液体を供給する流路を形成するホルダーを有する液体噴射装置が開示されている。この液体噴射装置が有するホルダーは、樹脂によって形成されている。また、特許文献2には、複数のヘッドチップの夫々の内部の液体を加熱する加熱部を有する液体噴射ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-89310号公報
【文献】特開2010-214743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の液体噴射装置において、特許文献2に記載のように、複数のヘッドチップの夫々の内部の液体を加熱させることがある。しかしながら、特許文献1に記載の液体噴射装置では、複数のヘッドチップが、一般的に熱伝導率が低い樹脂によって形成されたホルダーによって保持されているため、液体噴射ヘッドの外部から、複数のヘッドチップの夫々の内部の液体を加熱させることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の問題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体噴射装置の一態様は、液体を噴射するノズルを有するノズルプレートを有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップを保持するとともに前記複数のヘッドチップの夫々へ液体を供給する流路を有し、樹脂によって形成されたホルダーと、前記複数のヘッドチップ及び前記ホルダーを収容し、前記ホルダーよりも熱伝導率の高い材料によって形成されたホルダーカバーと、前記ホルダーカバー及び前記複数のヘッドチップが固定され、金属によって形成された固定板と、を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジに搭載され、前記ホルダーカバー及び前記固定板を介して前記複数のヘッドチップの夫々の内部の液体を加熱する加熱部と、を備える。
【0006】
以上の問題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体噴射ヘッドの一態様は、加熱部を搭載するキャリッジに搭載される液体噴射ヘッドであって、液体を噴射するノズルを有するノズルプレートを有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップを保持するとともに前記複数のヘッドチップの夫々へ液体を供給する流路を有し、樹脂によって形成されたホルダーと、前記複数のヘッドチップ及び前記ホルダーを収容し、前記ホルダーよりも熱伝導率の高い材料によって形成されたホルダーカバーと、前記ホルダーカバー及び前記複数のヘッドチップが固定され、金属によって形成された固定板と、を有し、前記複数のヘッドチップの夫々の内部の液体は、前記加熱部によって前記ホルダーカバー及び前記固定板を介して加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体噴射装置10の部分的な構成図。
【
図5】
図2に示す液体噴射ヘッド20のa-a断面図。
【
図6】
図2に示す液体噴射ヘッド20のb-b断面図。
【
図9】液体噴射ヘッド20をキャリッジ18に取り付けた状態を示す外観斜視図。
【
図10】液体噴射ヘッド20をキャリッジ18に取り付ける場合の分解斜視図。
【
図11】
図7に示す液体噴射ヘッド20をキャリッジ18に取り付けた状態のc-c断面図。
【
図12】第3変形例におけるキャリッジ18Aの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
1.第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体噴射装置10の部分的な構成図である。第1実施形態の液体噴射装置10は、液体の例示であるインクを印刷用紙等の媒体11に噴射するインクジェット方式の印刷装置である。
図1に示す液体噴射装置10は、制御装置12と搬送機構14とキャリッジ18と液体噴射ヘッド20とを具備する。制御装置12は、液体噴射装置10の各要素を統括的に制御する。
【0010】
搬送機構14は、制御装置12による制御のもとで媒体11を、副走査方向である+Y方向に沿って搬送する。キャリッジ18は、制御装置12による制御のもとで、主走査方向である+X方向及び-X方向に往復する。媒体11の搬送とキャリッジ18の往復とに並行して液体噴射ヘッド20が媒体11にインクを噴射することで媒体11の表面に所望の画像が形成される。更に、液体噴射ヘッド20によるインクの噴射方向を、+Z方向と表記する。以下、+X方向及び-X方向を「X軸方向」と総称し、以下、+Y方向及び+Y方向の反対方向である-Y方向を「Y軸方向」と総称し、+Z方向及び+Z方向の反対方向である-Z方向を、「Z軸方向」と総称する。
【0011】
キャリッジ18は、-Z方向の面上に液体噴射ヘッド20を搭載する。更に、液体噴射ヘッド20の-Z方向には、複数種のインクを別々に貯留する複数の液体容器C1~C4を収容する液体収容部17が設けられている。本実施形態におけるインクは、例えば、UVインクである。UVは、Ultra Violetの略である。UVインクは、低温で高粘度であり、高温で低粘度であるという性質がある。噴射性能を向上させるため、UVインクは、高温状態で使用することが必要である。ただし、本実施形態におけるインクは、UVインクに限定されるものではなく、一般的な印刷用途で使用される水系インクや有機溶剤系インクであってもよい。インクは、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの合計4色の液体である。本実施形態の液体容器C1~C4には夫々、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのインクが収容される。なお、液体容器C1~C4の構成や数は例示したものに限られない。
【0012】
液体噴射ヘッド20は、複数のヘッドチップ70を備える。各ヘッドチップ70は、内部に流路が形成される部材を備える流路構造体である。本実施形態では、X軸方向に沿って並ぶように、4個のヘッドチップ70を配列した場合を例示する。ヘッドチップ70の各々には、ノズル列が2個ずつ配置されている。複数のヘッドチップ70の夫々は、Y軸方向に延在しており、各ノズル列は、Y軸方向に沿って直線状に配列された複数のノズルNの集合である。なお、ヘッドチップ70やノズル列の数や配列は例示したものに限られない。液体噴射ヘッド20は、インクが流通する流路や、流路を流通するインクをろ過するフィルターを備える。
【0013】
図1に例示される通り、液体噴射ヘッド20には、制御装置12から、液体噴射ヘッド20を駆動するための駆動信号Comと、液体噴射ヘッド20を制御するための制御信号SIと、が供給される。そして、液体噴射ヘッド20は、制御信号SIによる制御のもとで駆動信号Comにより駆動され、液体噴射ヘッド20に設けられた複数のノズルNの一部又は全部から、+Z方向にインクを噴射させる。
【0014】
1.1.液体噴射ヘッド20の構造
図2~
図7を用いて、液体噴射ヘッド20の構造について説明する。
【0015】
図2は、液体噴射ヘッド20の外観斜視図である。
図3は、液体噴射ヘッド20の分解斜視図である。
図4は、任意のヘッドチップ70の断面図である。但し、
図4では、ヘッドチップ70に加えて、固定板29を表示してある。
図5は、
図2に示す液体噴射ヘッド20のa-a断面図である。
図6は、
図2に示す液体噴射ヘッド20のb-b断面図である。a-a断面及びb-b断面は、XZ平面に平行な断面である。但し、図面の煩雑化を防ぐため、
図5及び
図6内のヘッドチップ70内の図示を省略してある。
図7は、液体噴射ヘッド20の底面図である。
【0016】
図2及び
図3に示すように、本実施形態における液体噴射ヘッド20は、流路ユニット202とヘッド本体204とを備える。ヘッド本体204には、上述した4個のヘッドチップ70が収容される。流路ユニット202は、液体容器C1~C4からのインクとして、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックをヘッド本体204の各ヘッドチップ70に供給する。
【0017】
図4に示すように、ヘッドチップ70は、流路形成基板71と、流路形成基板71の-Z方向の表面に積層された圧力室形成基板72と、圧力室形成基板72の-Z方向に積層された振動板73と、流路形成基板71の+Z方向の表面に配置されたノズルプレート74及びコンプライアンス部75とを有する。ノズルNは、ノズルプレート74に形成される。なお、1つのヘッドチップ70には、ノズルNの各列に対応する構造が略線対称に形成されるから、以下ではノズルNの1列分に便宜的に着目してヘッドチップ70の構造を説明する。
【0018】
流路形成基板71は、インクの流路を構成する平板状の部材である。本実施形態の流路形成基板71には、開口712と供給流路714と連通流路716とが形成される。供給流路714及び連通流路716はノズルN毎に形成され、開口712は、複数のノズルNにわたり連続する。圧力室形成基板72は、相異なるノズルNに対応する複数の開口722が形成された平板状の部材である。流路形成基板71や圧力室形成基板72は、例えばシリコンの単結晶基板で形成される。
【0019】
コンプライアンス部75は、ヘッドチップ70の流路内の圧力変動を抑制する機構であり、封止板752と支持体754とを含んで構成される。封止板752は、可撓性を有するフィルム状の樹脂部材であり、支持体754は、流路形成基板71の開口712及び各供給流路714が閉塞されるように封止板752を流路形成基板71に固定する。支持体754は、ステンレス鋼等の金属によって形成される。
【0020】
振動板73は、弾性的に振動可能な平板状の部材であり、例えば酸化シリコン等の弾性材料で形成された弾性膜と、酸化ジルコニウム等の絶縁材料で形成された絶縁膜との積層で構成される。振動板73と流路形成基板71とは、圧力室形成基板72に形成された各開口722の内側で相互に間隔をあけて対向する。各開口722の内側で流路形成基板71と振動板73とに挟まれた空間は、インクに圧力を付与する圧力室Cとして機能する。本実施形態では、Y軸方向に沿って配列された複数の圧力室Cの列は、X軸方向に沿って2列配列する。
【0021】
図4に示すように、流路形成基板71及び保護板76には支持体77が固定される。支持体77は、例えば樹脂材料の成型で一体に形成される。本実施形態の支持体77は、流路形成基板71の開口712とともに液体貯留室Rを形成する空間772と、液体貯留室Rに連通する供給口774とが形成される部材である。液体貯留室Rには、供給口774から導入されたインクが貯留される。液体貯留室Rに貯留されたインクは、複数の供給流路714により各圧力室Cに分配及び充填され、各圧力室Cから連通流路716とノズルNとを通過して+Z方向に噴射される。
【0022】
振動板73には配線部材78の端部が接合される。配線部材78は、駆動信号Com及び電源電圧を各圧電素子732に伝送するための配線が形成された配線基板である。4個のヘッドチップ70の各々に、1つずつ配線部材78が接続されている。配線部材78は、例えば、FPC、COF、又はFFC等の可撓性の配線基板が好適に採用される。ここで、FPCとは、Flexible Printed Circuitの略称である。COFは、Chip on Filmの略称である。FFCとは、Flexible Flat Cableの略称である。
【0023】
図3及び
図6に示すように、配線部材78は、駆動回路781を有する。なお、
図3に示す4個のヘッドチップ70のうち2個のヘッドチップ70について、配線部材78の-X方向の面に駆動回路781が設けられており、残り2個のヘッドチップ70について、配線部材78の+X方向の面に駆動回路781が設けられている。
図3では、配線部材78の+X方向の面に設けられた駆動回路781を、破線で表示してある。駆動回路781は、制御信号SIのもとで、圧電素子732に対して、駆動信号Comを供給するか否かを切り替える電気回路である。各配線部材78は、後述する回路基板26に接続される。
【0024】
図2及び
図3に示すように、流路ユニット202は、ケース22とホルダーカバー23とからなる部材内に、各構成部品を収容して形成されている。ケース22は、例えば樹脂材料の射出成型で形成され、ホルダーカバー23に積層されている。
図3及び
図7に示すように、ケース22とホルダーカバー23は、複数のねじ24で固定される。更に、
図3及び
図7に示すように、ケース22には、Z軸方向に貫通する複数の貫通孔227が形成されている。複数の貫通孔227は、液体噴射ヘッド20をキャリッジ18に固定するために用いられる。
【0025】
図5及び
図6に示すように、ケース22の+Z方向には空間S1が形成されている。ホルダーカバー23は、XY平面に略平行な内底面232を有する。内底面232は、4個の配線部材78の夫々を挿通するための4個の開口234を有する。4個の開口234は、Y軸方向に延在するように設けられる。Y軸方向に延在する4個の開口によって、内底面232は、Y軸方向に延在する3つの梁部236を有する。内底面232に対して-Z方向には、空間S2が形成されており、内底面232に対して+Z方向には空間S3が形成されている。
なお、+Y方向及び-Y方向は、「第2方向」の一例である。
【0026】
図5及び
図6に示すように、ホルダーカバー23の空間S2には、シール部材25と、回路基板26と、ホルダー27とが収容されている。
図5に示すように、回路基板26は、ホルダーカバー23とはZ軸方向に間隔d1を空けてホルダー27に積層される。
なお、Z軸方向、すなわち、+Z方向及び-Z方向は、「積層方向」の一例である。
【0027】
ホルダー27は、第1ホルダー271と、第2ホルダー272とを有する。空間S2には、第1ホルダー271と第2ホルダー272とが、-Z方向から順次積層されている。ホルダーカバー23の空間S3には、複数のヘッドチップ70が収容されており、ホルダーカバー23は、固定板29によって+Z方向から閉じられる。ケース22の空間S1には、フィルターユニットG1が収容されている。フィルターユニットG1は、シール部材25の回路基板26とは反対側である-Z方向に積層される。
【0028】
図5及び
図6に示すように、フィルターユニットG1は、積層された複数の構成部材221、222、及び、223を備える流路構造体である。構成部材221、222、及び、223は、内部にインクの流路が形成される部材である。構成部材221、222、及び、223内に形成される流路については、図示を省略する。構成部材222内の流路の途中には、上述したフィルターが設けられている。なお、
図3では、ケース22の+Z方向の面にフィルターユニットG1が固定されている状態を示しているため、フィルターユニットG1は図示されていない。また、フィルターユニットG1の代わりにフィルターを備えない流路が形成された流路部品を代わりに配置してもよい。フィルターユニットG1は、樹脂材料の射出成型で形成される。フィルターユニットG1は、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂によって構成される。熱可塑性樹脂は、例えばザイロン、LCP、PPS、又はPPである。ザイロンは、商標登録である。LCPは、液晶ポリマーである。PPSは、ポリフェニレンサルファイドである。PPは、ポリプロピレンである。熱硬化性樹脂は、例えばエポキシ樹脂やフェノール樹脂である。
【0029】
回路基板26は、制御装置12から供給される駆動信号Com及び制御信号SI等を中継する基板である。回路基板26には、各ヘッドチップ70の配線部材78に電気的に接続される端子部262が形成されるとともに、制御装置12との接続のためのコネクター264やその他の電子部品等を実装している。端子部262とコネクター264は、電気的接合部である。本実施形態の回路基板26には、4つのヘッドチップ70の配線部材78に対応する4つの端子部262が回路基板26の-Z方向に形成されている。また、コネクター264にはFFC等の配線部材が接続され、回路基板26は、FFCを介して制御装置12から駆動信号Comを受信するようになっている。FFCは、Flexible Flat Cableの略である。本実施形態の回路基板26のコネクター264は、+X方向と-X方向との夫々の端部から露出するように配置される。
【0030】
また、回路基板26には、
図3及び
図5に示すように、Z軸方向に貫通する貫通孔267が設けられる。更に、回路基板26には、
図5に示すように、Z軸方向に貫通する貫通孔268が設けられる。貫通孔267及び貫通孔268は、ホルダーカバー23に対する回路基板26の位置決めに用いられる。
【0031】
第1ホルダー271及び第2ホルダー272は、インクの流路が形成される平板状の流路構造体である。第1ホルダー271及び第2ホルダー272は、樹脂材料の射出成型で形成される。第1ホルダー271及び第2ホルダー272は、例えば、フィルターユニットG1と同様に、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂によって構成される。第1ホルダー271の-Z方向の面には、-Z方向に突出した複数の流路273が形成されている。なお、第1ホルダー271は、8個の流路273を有するが、図面の煩雑化を避けるため、
図3及び
図6の夫々においては8個の流路273のうち2個の流路273のみ符号を付して表示してある。複数の流路273の各々は、回路基板26に形成された貫通孔を通り、シール部材25の貫通孔を介して、構成部材221、222、223の流路に連通されている。
【0032】
また、第2ホルダー272には、Z軸方向に延びる複数の流路274が形成されている。なお、第2ホルダー272は、8個の流路274を有するが、図面の煩雑化を避けるため、
図3及び
図6の夫々においては8個の流路274のうち2個の流路274のみ符号を付して表示してある。複数の流路274の各々は、複数の流路273の夫々に連通している。各ヘッドチップ70には、各流路273及び各流路274を介してインクが導入される。
【0033】
更に、第1ホルダー271は、4個の配線部材78の夫々を挿通するための4個の開口275を有する。同様に、第2ホルダー272は、4個の配線部材78の夫々を挿通するための4個の開口276を有する。開口275及び開口276は、Z軸方向に貫通する孔である。
【0034】
ホルダーカバー23は、第1ホルダー271及び第2ホルダー272よりも熱伝導率の高い材料によって形成される。樹脂材料よりも熱伝導率の高い材料は、例えば、金属、及び、樹脂材料よりも熱伝導率の高いセラミックスがある。ホルダーカバー23の形成に好適な金属は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、及び、マグネシウム合金である。樹脂材料よりも熱伝導率の高いセラミックスは、例えば、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、サファイア、アルミナ、窒化珪素、サーメット、及び、イットリアである。以下の記載では、ホルダーカバー23は、金属によって形成されているとして説明する。
【0035】
前述したように、ホルダーカバー23の空間S3には、複数のヘッドチップ70が収容されている。複数のヘッドチップ70は、X軸に沿って空間S3内に並設されている。制御装置12から回路基板26と配線部材78を介して供給される駆動信号Comに応じて、各ヘッドチップ70の各圧電素子732が振動する。圧電素子732を振動させて圧力室C内の圧力を変動させることで、圧力室C内に充填されたインクがノズルプレート74の各ノズルNから噴射される。
【0036】
固定板29は、平板状の部材である。固定板29は、金属によって形成される。固定板29の形成に好適な金属は、例えば、ステンレス鋼である。
図3及び
図7に示すように、固定板29には、各ヘッドチップ70のノズルプレート74に対応する形状の4つの開口292がヘッドチップ70毎に形成されている。開口292は、Y方向に長尺な矩形状である。開口292の内側にノズルプレート74が位置する状態で、各ヘッドチップ70が固定板29の-Z方向の面に例えば接着剤で固定される。これにより、各ノズル列のノズルNが、開口292内に夫々配置される。なお、
図7では、図示の煩雑化を防ぐため、4個のヘッドチップ70が有するノズルNのうち、一部のノズルNのみ表示してある。
【0037】
図3及び
図6に示すように、ケース22の-Z方向の面には、-Z方向へ突出する複数のパイプを有し、当該複数のパイプ内の夫々には液体容器C1~C4からインクを導入する複数の流路225が設けられている。流路225は、液体容器C1~C4内のインクを、構成部材221、222、223内の流路、第1ホルダー271の流路273、及び第2ホルダー272の流路274を介して各ヘッドチップ70に導入する。
【0038】
図5及び
図6に示すシール部材25は、板状の弾性部材である。シール部材25は、フィルターユニットG1内の流路と第1ホルダー271の流路273とを液密に接続する貫通孔が形成されている。
【0039】
1.2.液体噴射ヘッド20の位置決めと回路基板26の位置決めとについて
図5、
図6、
図8、及び、
図9を用いて、キャリッジ18に対する液体噴射ヘッド20の位置決めと、ホルダーカバー23に対する回路基板26の位置決めについて説明する。
【0040】
図5及び
図6に例示するように、ホルダーカバー23は、保持部UCと、第1フランジ部U1と、第2フランジ部U2とを有する。保持部UCは、ホルダー27を保持する。第1フランジ部U1は、保持部UCから-X方向に延ばすように設けられている。保持部UCから-X方向に延ばすように設けるとは、具体的には、保持部UCの-X方向の端部が、-X方向に所定距離延びたような形状を為すことである。第2フランジ部U2は、保持部UCから+X方向に延ばすように設けられている。
なお、-X方向は、複数のヘッドチップ70が並ぶ方向であり、「第1方向」の一例である。複数のヘッドチップ70が並ぶ方向とは、複数のヘッドチップ70の夫々の任意の位置が並ぶ方向である。複数のヘッドチップ70の夫々の位置の点は、例えば、複数のヘッドチップ70の夫々の-Y方向の端部でもよいし、複数のヘッドチップ70の夫々の中心でもよいし、複数のヘッドチップ70の夫々の+Y方向の端部でもよい。
【0041】
1.2.1.キャリッジ18に対する液体噴射ヘッド20の位置決めについて
図6及び
図7に例示するように、第1フランジ部U1は、キャリッジ18に対する液体噴射ヘッド20の位置決めを行うための第1位置決め部PS1を有する。第2フランジ部U2は、キャリッジ18に対する液体噴射ヘッド20の位置決めを行うための第2位置決め部PS2を有する。具体的には、第1位置決め部PS1及び第2位置決め部PS2は、+Z方向に突出する略柱体である。更に、
図6に示すように、第1位置決め部PS1の+Z方向の面には、-Z方向に凹む凹部RE1が設けられ、第2位置決め部PS2の+Z方向の面には、-Z方向に凹む凹部RE2が設けられる。以下の説明において、凹部RE1及び凹部RE2を、「凹部RE」と総称することがある。凹部REは、b-b断面には出現しないため、
図6では、凹部REの輪郭を破線で表してある。
図6に示すように、第2位置決め部PS2は、第1位置決め部PS1及び第2位置決め部PS2の並び方向であるX軸方向に関して、第1位置決め部PS1よりも大きい。同様に、凹部RE2は、X軸方向に関して、凹部R1よりも大きい。
【0042】
図8は、キャリッジ18の外観斜視図である。
図9は、液体噴射ヘッド20をキャリッジ18に取り付けた状態を示す外観斜視図である。
図10は、液体噴射ヘッド20をキャリッジ18に取り付ける場合の分解斜視図である。
【0043】
図8、
図9、及び、
図10に示すように、キャリッジ18は、スペーサー181と、キャリッジ本体部182とを有する。更に、キャリッジ18には、第1ヒーター185と、第2ヒーター186とが搭載される。スペーサー181及びキャリッジ本体部182は、金属によって形成される。スペーサー181及びキャリッジ本体部182の形成に好適な金属は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、及び、マグネシウム合金である。+Z方向の平面視において、キャリッジ本体部182は、スペーサー181より大きい。以下、+Z方向の平面視を、単に、「平面視」と称する。
なお、第1ヒーター185と、第2ヒーター186とが、「加熱部」に相当する。
【0044】
図10に示すように、キャリッジ本体部182は、XY平面に略平行な平板状の部材であり、Z軸方向に貫通する貫通孔1821を有する。平面視において、貫通孔1821の縁は、略矩形である。貫通孔1821は、-Z方向に向かって径が広がる。径が広がることによって、貫通孔1821は、段差が形成されている。貫通孔1821に形成される段差にスペーサー181を嵌合することにより、キャリッジ本体部182は、スペーサー181を保持する。更に、スペーサー181と、キャリッジ本体部182とは、複数のねじ191で固定される。なお、キャリッジ本体部182は、平板状の形状に限られず、平板の外周部から-Z方向へ立設された壁を含む凹部形状でもよい。
【0045】
図8及び
図10に示すように、スペーサー181は、XY平面に略平行な平板状の部材であり、Z軸方向に貫通する貫通孔1811と、-Z方向に突出する複数の柱状部1812とを有する。平面視において、貫通孔1811は、略矩形である。貫通孔1811は、-Z方向に向かって、-X方向及び+X方向に向かって径が広がる。-X方向に向かって径が広がることにより、底部1815が形成されており、+X方向に向かって径が広がることにより、底部1816が形成されている。底部1815の-Z方向の面には、-Z方向に突出する凸部1817が設けられている。底部1816の-Z方向の面には、-Z方向に突出する凸部1818が設けられている。
また、図示を省略しているが、キャリッジ18は、キャリッジ本体部182に対するスペーサー181の位置決めを可能とする位置決め部を有してもよい。この位置決め部は、例えば、Y軸方向に延在する複数の調整ねじによって構成される。
【0046】
第1ヒーター185及び第2ヒーター186は、ホルダーカバー23及び固定板29を介して複数のヘッドチップ70の夫々の内部に充填されたインクを加熱する。言い換えれば、第1ヒーター185及び第2ヒーター186が発生した熱が、ホルダーカバー23及び固定板29を経由してヘッドチップ70内のインクに伝導することによって、複数のヘッドチップ70の夫々の内部のインクが加熱される。本実施形態では、第1ヒーター185及び第2ヒーター186は、XY平面に略平行な平板状の部材である。なお、第1ヒーター185及び第2ヒーター186の各形状は、必ずしも平板上の部材に限られない。第1ヒーター185及び第2ヒーター186は、例えばフィルムヒーターやセラミックヒーターなど、任意のヒーターを採用することができる。第1ヒーター185は、Z軸方向に貫通する貫通孔1851を有する。
図8に示すように、凸部1817が貫通孔1851に挿通され、第1ヒーター185は、底部1815に載置される。同様に、
図8に示すように、凸部1818が貫通孔1861に挿通され、第2ヒーター186は、底部1816に載置される。更に、凸部1817が第1位置決め部PS1に設けられた凹部RE1に嵌合し、且つ、凸部1818が第2位置決め部PS2に設けられた凹部RE2に嵌合することにより、液体噴射ヘッド20がキャリッジ18に対して位置決めされる。
【0047】
複数の柱状部1812のいくつかの+Z方向の面には、+Z方向に突出する凹部が設けられる。複数のねじ193は、ケース22に設けられた複数の貫通孔227に1対1に対応する。複数のねじ193の夫々を、対応する貫通孔227を挿通させ、複数の柱状部1812のいずれかに設けられた凹部に螺合させることにより、液体噴射ヘッド20がキャリッジ18のスペーサー181に位置決めされた位置で、液体噴射ヘッド20がキャリッジ18のスペーサー181に固定される。
【0048】
1.2.2.ホルダーカバー23に対する回路基板26の位置決めについて
図5に示すように、第1フランジ部U1は、ホルダーカバー23に対する回路基板26の位置決めを行うための第3位置決め部PS3を有する。第2フランジ部U2は、ホルダーカバー23に対する回路基板26の位置決めを行うための第4位置決め部PS4を有する。具体的には、第3位置決め部PS3及び第4位置決め部PS4は、-Z方向に突出する略柱体である。
【0049】
図5に示すように、第3位置決め部PS3が貫通孔267を貫通し、且つ、第4位置決め部PS4が貫通孔268を貫通することによって、回路基板26がホルダーカバー23に対して位置決めされる。回路基板26は、ホルダーカバー23とはZ軸方向に間隔d1を空けて設けられている。一方、Z軸方向に垂直なX軸方向及びY軸方向では、回路基板26は、第3位置決め部PS3及び第4位置決め部PS4に当接する。ホルダーカバー23が回路基板26に対して接触する部分は、第3位置決め部PS3及び第4位置決め部PS4のみである。ホルダーカバー23が金属によって形成されるため、回路基板26の貫通孔267及び貫通孔268の内周面には配線を設けない。
【0050】
1.3.第1ヒーター185の熱伝導経路
第1ヒーター185の熱伝導経路について、
図11及び
図5を用いて説明する。
【0051】
図11は、
図8に示す液体噴射ヘッド20をキャリッジ18に取り付けた状態のc-c断面図である。c-c断面は、XZ平面に平行な断面である。ただし、
図11に示す断面図は、図面の煩雑化を防ぐため、第1位置決め部PS1付近のみを表示してある。更に、
図11に示す断面図では、図面の煩雑化を防ぐため、ヘッドチップ70内の図示を省略してある。
【0052】
図11では、第1ヒーター185から液体噴射ヘッド20のインクまでの熱伝導経路HTP1を示してある。
図11では、ヘッドチップ70内の図示を省略してあるため、熱伝導経路HTP1のうちのヘッドチップ70内の熱伝導経路についても図示を省略してある。ヘッドチップ70内の熱伝導経路については、
図4に示す。
【0053】
まず、
図11を用いて、第1ヒーター185からヘッドチップ70までの熱伝導経路について説明する。第1ヒーター185は、スペーサー181の底部1815に載置されている。更に、
図11に示すように、第1位置決め部PS1の+Z方向の先端は、第1ヒーター185の-Z方向の面に当接する。第1ヒーター185が発した熱は、スペーサー181の凸部1817、及び、第1位置決め部PS1の+Z方向の先端を介してホルダーカバー23に伝導する。ホルダーカバー23は、熱伝導率が比較的高い金属により形成されており、熱が伝わりやすい。ホルダーカバー23は、樹脂によって形成された第2ホルダー272と、金属によって形成された固定板29とに当接する。金属は樹脂と比較して熱伝導率が高いため、ホルダーカバー23内の熱は、固定板29に伝導する。固定板29に伝導した熱は、ヘッドチップ70内に伝導する。
なお、本実施形態では、第1位置決め部PS1の+Z方向の先端は、第1ヒーター185の-Z方向の面に当接するが、第1位置決め部PS1の+Z方向の先端が、第1ヒーター185の-Z方向の面に当接しなくてもよい。第1位置決め部PS1の+Z方向の先端が、第1ヒーター185の-Z方向の面に当接しなくても、第1ヒーター185が発した熱は、凸部1817を介してホルダーカバー23に伝導する。
【0054】
次に、
図4を用いて、ヘッドチップ70内の熱伝導経路について説明する。固定板29には、コンプライアンス部75が当接する。固定板29に伝導した熱は、コンプライアンス部75を介して、流路形成基板71に伝導する。コンプライアンス部75を構成する支持体754は、熱伝導率が高い金属によって形成されるため、支持体754の熱は、封止板752に伝導する。封止板752は、熱伝導率が低い樹脂によって形成されるが、流路形成基板71と比較して薄いため、封止板752に伝導した熱は、流路形成基板71に伝導する。流路形成基板71に伝導した熱は、開口712、供給流路714、及び、連通流路716内のインクに伝導する。以上により、第1ヒーター185によって、複数のヘッドチップ70の夫々の内部のインクが加熱される。
【0055】
また、
図11に示すように、駆動回路781の一部は、第2ホルダー272の開口276内に配置される。駆動回路781の一部が開口276内に配置されるとは、開口276の延在方向に対して垂直方向、すなわち、XY平面に平行な方向に見て、駆動回路781と開口276とが一部重なることを意味する。
【0056】
図示を省略するが、第2ヒーター186も、ホルダーカバー23及び固定板29を介して、複数のヘッドチップ70の夫々の内部のインクを加熱する。
【0057】
1.4.第1実施形態のまとめ
以上説明したように、第1実施形態における液体噴射装置10は、液体噴射ヘッド20と、キャリッジ18と、第1ヒーター185と、第2ヒーター186とを有する。液体噴射ヘッド20は、複数のヘッドチップ70と、ホルダー27と、ホルダーカバー23と、固定板29とを有する。複数のヘッドチップ70の夫々は、インクを噴射するノズルNを有するノズルプレート74を有する。ホルダー27は、複数のヘッドチップ70を保持するとともに複数のヘッドチップ70の夫々へインクを供給する流路を有し、樹脂によって形成されている。ホルダーカバー23は、複数のヘッドチップ70及びホルダー27を収容し、ホルダー27よりも熱伝導率の高い材料によって形成されている。固定板29は、ホルダーカバー23及び複数のヘッドチップ70が固定され、金属によって形成されている。キャリッジ18は、液体噴射ヘッド20を搭載する。第1ヒーター185及び第2ヒーター186は、キャリッジ18に搭載され、ホルダーカバー23及び固定板29を介して複数のヘッドチップ70の夫々について、内部のインクを加熱する。
UVインクの様な、高温状態で使用することが必要であるインクを使用する場合、噴射性能を向上させるため、ヘッドチップの近傍のインク、より好ましくは、ノズルN近傍のインクを加熱することが望まれる。しかしながら、熱伝導率が低い樹脂によって形成されたホルダーのみによって複数のヘッドチップを保持される液体噴射ヘッドでは、液体噴射ヘッドの外部から、複数のヘッドチップの夫々の内部の液体を加熱させることが困難である。また、ホルダーを、樹脂よりも熱伝導率の高い金属又はセラミックスによって形成することにより、液体噴射ヘッドの外部に配置されたヒーターで、ヘッドチップ内のインクを加熱する態様が考えられる。しかしながら、ホルダーに形成される流路の形状が複雑であるため、この態様では、ホルダーに形成される流路を金属又はセラミックスで精度良く形成することが難しく、液体噴射ヘッドの製造コストが上昇する。
そこで、本実施形態における液体噴射ヘッド20は、樹脂よりも熱伝導率が高い材料によって形成されたホルダーカバー23を有する。従って、第1ヒーター185及び第2ヒーター186が、ホルダーカバー23を介してヘッドチップ70内のインクを加熱できる。更に、流路を有するホルダー27は、樹脂によって形成されているため、液体噴射ヘッド20の製造コストが上昇することを抑制できる。更に、本実施形態の液体噴射ヘッド20は、液体噴射ヘッド20内に第1ヒーター185及び第2ヒーター186が設けられている構成と比較して、第1ヒーター185及び第2ヒーター186の配線が容易になる。配線が容易になる理由は、液体噴射ヘッド20内に第1ヒーター185及び第2ヒーター186が設けられている構成では、液体噴射ヘッド20内の第1ヒーター185及び第2ヒーター186の配線と、この配線と液体噴射ヘッド20外の配線との接合部分とについて考慮する必要があるためである。更に、本実施形態の液体噴射装置10は、液体噴射ヘッド20内に第1ヒーター185及び第2ヒーター186が設けられている構成と比較して、液体噴射ヘッド20内の第1ヒーター185及び第2ヒーター186の配線と液体噴射ヘッド20外の配線の接合部分がないため、液体噴射ヘッド20の交換も容易である。
【0058】
ホルダーカバー23は、ホルダー27を保持する保持部UCと、保持部UCから複数のヘッドチップ70が並ぶ-X方向に延ばすように設けられた第1フランジ部U1と、保持部UCから+X方向に延ばすように設けられた第2フランジ部U2と、を有する。第1フランジ部U1は、キャリッジ18に対する液体噴射ヘッド20の位置決めを行うための第1位置決め部PS1を有する。第2フランジ部U2は、キャリッジ18に対する液体噴射ヘッド20の位置決めを行うための第2位置決め部PS2を有する。第1ヒーター185は、第1位置決め部PS1を介してホルダーカバー23を加熱する。また、第2ヒーター186は、第2位置決め部PS2を介してホルダーカバー23を加熱する。
印刷品質を向上させるため、キャリッジ18に対する液体噴射ヘッド20の精度の良い位置決めが必要である。本実施形態では、この位置決めのためにキャリッジ18との接触が必要である第1位置決め部PS1を、熱伝導経路HTP1に含めている。第1ヒーター185から液体噴射ヘッド20のインクまでの熱伝導経路に、第1位置決め部PS1を含まない態様では、キャリッジ18とホルダーカバー23との隙間を埋める金属部品を用意する必要がある。従って、本実施形態は、第1ヒーター185からヘッドチップ70内のインクまでの熱伝導経路に第1位置決め部PS1を含まない態様と比較して、液体噴射装置10の部品品数を削減できるため、液体噴射装置10の製造が容易になる。
【0059】
キャリッジ18は、第1位置決め部PS1及び第2位置決め部PS2と当接されることで液体噴射ヘッド20と位置決めされ、金属によって形成されたスペーサー181と、スペーサー181を保持し金属によって形成されたキャリッジ本体部182とを有する。第1ヒーター185及び第2ヒーター186は、スペーサー181を加熱することでスペーサー181を介して第1位置決め部PS1及び第2位置決め部PS2を加熱する。
図8等に示すように、キャリッジ本体部182は、スペーサー181を保持するため、スペーサー181より大きく、表面積が広い。表面積が広くなると、熱放射が発生しやすくなる。従って、本実施形態は、キャリッジ本体部182を介してヘッドチップ70内のインクを加熱する態様と比較して、熱放射によって放熱されることが抑制できるため、インクに対する加熱効率が低下することを抑制できる。インクに対する加熱効率は、第1ヒーター185及び第2ヒーター186が発生した熱量に対するヘッドチップ70内のインクを加熱した熱量の割合である。
【0060】
液体噴射ヘッド20は、ホルダーカバー23の固定板29とは反対側に積層され、ホルダー27に液体を供給する流路225を有する樹脂によって形成されたケース22を備える。ケース22は、「流路部材」の一例である。
金属と比較して熱伝導率が低い樹脂によって形成された流路部材としてのケース22により、ホルダーカバー23に伝導した熱が、-Z方向に放熱されることを抑制できる。
【0061】
液体噴射ヘッド20は、ホルダーカバー23とはZ軸方向に間隔を空けてホルダー27に積層された回路基板26を有する。ホルダーカバー23は、金属によって形成される。第1フランジ部U1は、ホルダーカバー23に対する回路基板26の位置決めを行うための第3位置決め部PS3を有する。第2フランジ部U2は、ホルダーカバー23に対する回路基板26の位置決めを行うための第4位置決め部PS4を有する。
平面視において回路基板26の中心付近に第3位置決め部PS3及び第4位置決め部PS4が位置するよりも、平面視において回路基板26の中心から互いに離れた位置に第3位置決め部PS3及び第4位置決め部PS4が位置することにより、位置決めの精度が向上する。従って、X軸方向で互いに離れた第1フランジ部U1及び第2フランジ部U2について、第1フランジ部U1が第3位置決め部PS3を有し、第2フランジ部U2が第4位置決め部PS4を有することにより、保持部UCが第3位置決め部PS3及び第4位置決め部PS4を有する態様と比較して、回路基板26を精度良く配置できる。また、本実施形態では、液体噴射ヘッド20の外部から複数のヘッドチップ70の夫々の内部のインクを加熱するためにホルダーカバー23を金属によって形成しているが、回路基板26は、導電性の材料でもある金属により形成されたホルダーカバー23に対して、第3位置決め部PS3及び第4位置決め部PS4でのみ当接するため、ホルダーカバー23と回路基板26との絶縁性を担保できる。
【0062】
液体噴射装置10は、回路基板26と複数のヘッドチップ70のうちいずれか1つのヘッドチップ70と接続し、駆動回路781を有する配線部材78を備える。第1ホルダー271は、配線部材78を挿通するための開口275を有する。同様に、第2ホルダー272は、配線部材78を挿通するための開口276を有する。駆動回路781の一部は、開口276内に配置される。
駆動回路781の一部が、樹脂によって形成された第2ホルダー272の開口276内に配置されることにより、第1ヒーター185及び第2ヒーター186によって加熱されて高温になったホルダーカバー23によって駆動回路781が異常動作することを抑制できる。更に、樹脂は絶縁性を有するため、開口276に駆動回路781が接触したとしても、駆動回路781の配線が短絡することを抑制できる。
【0063】
ホルダーカバー23は、ホルダー27とヘッドチップ70との間に設けられ、Y軸方向に延在する梁部236を有する。
梁部236が加熱されることによって、空間S3内の空気を介して、空間S3に設けられた複数のヘッドチップ70を加熱できる。
【0064】
2.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0065】
2.1.第1変形例
第1実施形態において、キャリッジ18は、スペーサー181とキャリッジ本体部182とにより構成されるが、キャリッジ18は、スペーサー181とキャリッジ本体部182とを一体で構成されてもよい。第1変形例において、キャリッジ18は、金属によって形成される。第1ヒーター185及び第2ヒーター186は、第1変形例におけるキャリッジ18、並びに、第1位置決め部PS1及び第2位置決め部PS2を介して複数のヘッドチップ70夫々の内部のインクを加熱する。
【0066】
2.2.第2変形例
第1実施形態及び第1変形例において、ケース22が、キャリッジ18に対して液体噴射ヘッド20を固定するためのねじ193に用いられる貫通孔227を有したが、これに限らない。例えば、ホルダーカバー23が、キャリッジ18に対して液体噴射ヘッド20を固定するためのねじに用いられる貫通孔を有してもよい。例えば、第2変形例における第1フランジ部U1及び第2フランジ部U2は、前述の貫通孔を有する。
第2変形例によれば、第1ヒーター185及び第2ヒーター186は、キャリッジ18に対して液体噴射ヘッド20を固定するためにキャリッジ18との接触が必須になるねじを介してヘッドチップ70内のインクを加熱することができ、第1実施形態と比較して、インクに対する加熱効率を向上できる。
【0067】
2.3.第3変形例
第1実施形態、及び、第2変形例において、キャリッジ18は、断熱材を有してもよい。
【0068】
図12は、第3変形例におけるキャリッジ18Aの断面図である。より詳細には、
図12に示す断面図は、
図8に示す液体噴射ヘッド20を、第3変形例におけるキャリッジ18Aに取り付けた状態のc-c断面図である。
【0069】
図12に示すように、キャリッジ18Aは、スペーサー181と、キャリッジ本体部182と、断熱材183とを有する。断熱材183は、スペーサー181とキャリッジ本体部182との間に設けられており、ホルダーカバー23よりも熱伝導率が低い。ホルダーカバー23よりも熱伝導率が低い材料は、例えば、樹脂、及び、ホルダーカバー23を形成する金属よりも熱伝導率が低いセラミックスである。また、断熱材183は、ホルダー27よりも熱伝導率が低いことがより好ましい。
【0070】
以上、第3変形例によれば、第1ヒーター185及び第2ヒーター186が発生した熱が、キャリッジ本体部182に伝導し、放熱してしまうことを抑制できる。
【0071】
2.4.第4変形例
第1実施形態、第2変形例、及び、第3変形例において、第1位置決め部PS1及び第2位置決め部PS2には、凹部REが設けられ、スペーサー181は、凸部1817及び凸部1818を有したがこれに限らない。例えば、スペーサー181が、+Z方向に凹む凹部を有し、第1位置決め部PS1及び第2位置決め部PS2が、-Z方向に突出する突出部を有してもよい。スペーサー181が有する凹部と、第1位置決め部PS1及び第2位置決め部PS2が有する突出部とが嵌合することにより、液体噴射ヘッド20がキャリッジ18に対して位置決めされる。
【0072】
2.5.第5変形例
以上の各態様において、複数のヘッドチップ70は、X軸方向に一列に並んでいるが、X軸方向に千鳥状に配置されてもよい。例えば、最も-X方向に位置するヘッドチップ70と、-X方向から3番目に位置するヘッドチップ70とが、X軸方向に平行な第1直線に沿って並び、-X方向から2番目に位置するヘッドチップ70と、最も+Z方向に位置するヘッドチップ70とが、第1直線に平行な第2直線に沿って並んでもよい。
【0073】
2.6.第6変形例
以上の各態様において、駆動回路781の一部は、第2ホルダー272の開口276内に配置されるが、駆動回路781の全てが、第2ホルダー272の開口276内に配置されてもよい。又は、駆動回路781の一部が、第1ホルダー271の開口275内に配置され、駆動回路781の残余の部分が、第2ホルダー272の開口276内に配置されてもよい。
【0074】
2.7.第7変形例
以上の各態様において、複数のヘッドチップ70の夫々は、Y軸方向に延在しているが、Y軸方向のようにX軸方向に直交する方向に限らなく、X軸方向に交差する方向に延在していてもよい。複数のヘッドチップ70の夫々がX軸方向に交差する特定の方向に延在する場合、ホルダーカバー23が有する梁部236も、前述の特定の方向に延在する。
【0075】
2.8.第8変形例
以上の各態様において、第1ヒーター185は底部1815に載置され、第2ヒーター186は底部1816に載置されるが、これに限らない。例えば、第1ヒーター185は、ホルダーカバー23の保持部UCの-X方向の側面に張り付けられてもよいし、固定板29の-X方向の面に張り付けられてもよいし、ホルダーカバー23の保持部UCの+Y方向の側面に貼り付けられていてもよい。同様に、第2ヒーター186は、保持部UCの+X方向の側面に張り付けられてもよいし、ホルダーカバー23の保持部UCの-Y方向の側面に貼り付けられていてもよい。また、第1ヒーター185は、ホルダーカバー23の保持部UCの+Y方向の側面を加熱するように、キャリッジ18のうち当該側面に対して+Y方向に位置する部分に設けられていてもよい。同様に、第2ヒーター186は、ホルダーカバー23の保持部UCの-Y方向の側面を加熱するように、キャリッジ18のうち当該側面に対して-Y方向に位置する部分に設けられていてもよい。
【0076】
2.9.第9変形例
以上の各態様において、液体噴射ヘッド20を搭載したキャリッジ18をX方向に沿って反復的に往復させるシリアルヘッドを例示したが、液体噴射ヘッド20を媒体11の全幅にわたり配列したラインヘッドにも本発明を適用可能である。
【0077】
2.10.第10変形例
上述した実施形態では、圧力室Cに機械的な振動を付与する圧電素子732を利用した圧電方式の液体噴射ヘッド20を例示したが、加熱により圧力室Cの内部に気泡を発生させる発熱素子を利用した熱方式の液体噴射ヘッドを採用することも可能である。
【0078】
2.11.第11変形例
上述した実施形態では、ケース22の流路225は、キャリッジ18に搭載された液体収容部17からインクが供給される構成を例示したが、キャリッジ18の外部に配置された液体収容部からチューブを介してインクが供給される構成でも構わない。
【0079】
2.12.第12変形例
貫通孔267及び貫通孔268の一方の開口形状は、貫通孔267及び貫通孔268の並び方向であるX軸方向に長尺なオーバル形であってもよい。製造誤差によって第3位置決め部PS3及び第4位置決め部PS4の位置がX軸方向にずれてしまったとしても、貫通孔267及び貫通孔268に第3位置決め部PS3及び第4位置決め部PS4が挿入できなくなることを抑制できる。
【0080】
2.13.その他の変形例
上述した実施形態で例示した液体噴射装置10は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置10の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルター及び有機ELディスプレイ等を形成する製造装置として利用される。ELは、Electro Luminescenceの略である。FEDは、Field Emission Displayの略である。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
【0081】
3.付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0082】
好適な態様である態様1に係る液体噴射装置は、液体を噴射するノズルを有するノズルプレートを有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップを保持するとともに前記複数のヘッドチップの夫々へ液体を供給する流路を有し、樹脂によって形成されたホルダーと、前記複数のヘッドチップ及び前記ホルダーを収容し、前記ホルダーよりも熱伝導率の高い材料によって形成されたホルダーカバーと、前記ホルダーカバー及び前記複数のヘッドチップが固定され、金属によって形成された固定板と、を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジに搭載され、前記ホルダーカバー及び前記固定板を介して前記複数のヘッドチップの夫々の内部の液体を加熱する加熱部と、を備える。
態様1に係る液体噴射ヘッドは、樹脂よりも熱伝導率が高い材料によって形成されたホルダーカバーを有する。従って、加熱部が、ホルダーカバーを介してヘッドチップ内のインクを加熱できる。更に、流路を有するホルダーは、樹脂によって形成されているため、液体噴射ヘッドの製造コストが上昇することを抑制できる。
【0083】
態様1の具体例である態様2において、前記ホルダーカバーは、前記ホルダーを保持する保持部と、前記保持部から前記複数のヘッドチップが並ぶ第1方向に延ばすように設けられた第1フランジ部と、前記保持部から前記第1方向とは反対方向に延ばすように設けられた第2フランジ部と、を有し、前記第1フランジ部は、前記キャリッジに対する前記液体噴射ヘッドの位置決めを行うための第1位置決め部を有し、前記第2フランジ部は、前記キャリッジに対する前記液体噴射ヘッドの位置決めを行うための第2位置決め部を有し、前記加熱部は、前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部を介して前記ホルダーカバーを加熱する。
態様2によれば、加熱部からのインクまでの熱伝導経路に第1位置決め部及び第2位置決め部を含まない態様と比較して、液体噴射装置の部品品数を削減できるため、液体噴射装置の製造が容易になる。
【0084】
態様2の具体例である態様3において、前記ホルダーカバーには、前記キャリッジに前記液体噴射ヘッドを固定するためのねじが挿通される孔が形成されている。
加熱部は、キャリッジに対して液体噴射ヘッドを固定するためにキャリッジとの接触が必須になるねじを介してヘッドチップ内の液体を加熱することができ、態様1と比較して、液体に対する加熱効率を向上できる。
【0085】
態様2又は態様3の具体例である態様4において、前記キャリッジは、前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部と当接されることで前記液体噴射ヘッドと位置決めされ、金属によって形成されたスペーサーと、前記スペーサーを保持し金属によって形成されたキャリッジ本体部とを有し、前記加熱部は、前記スペーサーを加熱することで前記スペーサーを介して前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部を加熱する。
態様5によれば、キャリッジ本体部を介してヘッドチップ内の液体を加熱する態様と比較して、熱放射によって放熱されることが抑制できるため、液体に対する加熱効率が低下することを抑制できる。
【0086】
態様4の具体例である態様5において、前記キャリッジは、前記スペーサーと前記キャリッジ本体部との間に設けられ、前記ホルダーカバーよりも熱伝導率が低い断熱材を更に有する。
態様5によれば、加熱部が発生した熱が、キャリッジ本体部に伝導することを抑制できる。
【0087】
態様1から態様5までのいずれか1つの態様の具体例である態様6において、前記液体噴射ヘッドは、前記ホルダーカバーの前記固定板とは反対側に積層され、前記ホルダーに液体を供給する流路を有する樹脂によって形成された流路部材を備える。
態様6によれば、金属と比較して熱伝導率が低い樹脂によって形成された流路部材により、ホルダーカバーに伝導した熱が、ホルダーカバーの固定板とは反対側に放熱されることを抑制できる。
【0088】
態様1から態様6までのいずれか1つの態様の具体例である態様7において、前記液体噴射ヘッドは、前記ホルダーカバーとは積層方向に間隔を空けて前記ホルダーに積層された回路基板を有し、前記ホルダーカバーは、前記ホルダーを保持する保持部と、前記保持部から前記複数のヘッドチップが並ぶ第1方向に位置するように設けられた第1フランジ部と、前記第1方向とは反対方向に位置するように設けられた第2フランジ部と、を有し、前記ホルダーカバーは、金属によって形成され、前記第1フランジ部は、前記ホルダーカバーに対する前記回路基板の位置決めを行うための第3位置決め部を有し、前記第2フランジ部は、前記ホルダーカバーに対する前記回路基板の位置決めを行うための第4位置決め部を有する。
態様7では、液体噴射ヘッドの外部からヘッドチップ内のインクを加熱するためにホルダーカバーを金属によって形成しているが、回路基板は、導電性の材料でもある金属により形成されたホルダーカバーに対して、第3位置決め部及び第4位置決め部でのみ当接するため、ホルダーカバーと回路基板との絶縁性を担保できる。
【0089】
態様7の具体例である態様8において、前記回路基板と前記複数のヘッドチップのうち一のヘッドチップと接続し、駆動回路を有する配線部材を備え、前記ホルダーは、前記配線部材を挿通するための開口を有し、前記駆動回路の一部又は全部は、前記開口内に配置される。
態様8によれば、駆動回路の一部又は全部が、樹脂によって形成されたホルダーの開口内に配置されることにより、加熱部によって加熱されて高温になったホルダーカバーによって駆動回路が異常動作することを抑制できる。更に、樹脂は絶縁性を有するため、ホルダーの開口に駆動回路が接触したとしても、駆動回路の配線が短絡することを抑制できる。
【0090】
態様1から態様8までのいずれか1つの態様の具体例である態様9において、前記ホルダーカバーは、前記ホルダーと前記ヘッドチップとの間に設けられ、前記複数のヘッドチップが並ぶ第1方向に交差する第2方向に延在する梁部を有する。
態様9によれば、梁部が加熱されることによって、梁部を壁面の一部とする空間内の空気を介して、この空間に設けられた複数のヘッドチップを加熱できる。
【0091】
好適な態様である態様10に係る液体噴射ヘッドは、加熱部を搭載するキャリッジに搭載される液体噴射ヘッドであって、液体を噴射するノズルを有するノズルプレートを有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップを保持するとともに前記複数のヘッドチップの夫々へ液体を供給する流路を有し、樹脂によって形成されたホルダーと、前記複数のヘッドチップ及び前記ホルダーを収容し、前記ホルダーよりも熱伝導率の高い材料によって形成されたホルダーカバーと、前記ホルダーカバー及び前記複数のヘッドチップが固定され、金属によって形成された固定板と、を有し、前記複数のヘッドチップの夫々の内部の液体は、前記加熱部によって前記ホルダーカバー及び前記固定板を介して加熱される。
態様10に係る液体噴射ヘッドは、樹脂よりも熱伝導率が高い材料によって形成されたホルダーカバーを有する。従って、加熱部が、ホルダーカバーを介してヘッドチップ内のインクを加熱できる。更に、流路を有するホルダーは、樹脂によって形成されているため、液体噴射ヘッドの製造コストが上昇することを抑制できる。
【符号の説明】
【0092】
10…液体噴射装置、11…媒体、12…制御装置、14…搬送機構、17…液体収容部、18…キャリッジ、18A…キャリッジ、20…液体噴射ヘッド、22…ケース、23…ホルダーカバー、24,191,193…ねじ、25…シール部材、26…回路基板、27…ホルダー、29…固定板、70…ヘッドチップ、71…流路形成基板、72…圧力室形成基板、73…振動板、74…ノズルプレート、75…コンプライアンス部、76…保護板、77…支持体、78…配線部材、181…スペーサー、182…キャリッジ本体部、183…断熱材、185…第1ヒーター、186…第2ヒーター、202…流路ユニット、204…ヘッド本体、221,222,223…構成部材、225…流路、227…貫通孔、232…内底面、234…開口、236…梁部、262…端子部、264…コネクター、267,268…貫通孔、271…第1ホルダー、272…第2ホルダー、273…流路、275,276,292,712,722…開口、714…供給流路、716…連通流路、732…圧電素子、752…封止板、754…支持体、772…空間、774…供給口、781…駆動回路、1811…貫通孔、1812…柱状部、1815,1816…底部、1817,1818…凸部、1821…貫通孔、1851…貫通孔、1861…貫通孔、C…圧力室、C1,C2,C3,C4…液体容器、Com…駆動信号、G1…流路部材、HTP1…熱伝導経路、N…ノズル、PS1…第1位置決め部、PS2…第2位置決め部、PS3…第3位置決め部、PS4…第4位置決め部、R…液体貯留室、RE1,RE2…凹部、S1,S2,S3…空間、SI…制御信号、U1…第1フランジ部、U2…第2フランジ部、UC…保持部。