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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】燃料電池の希釈装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241106BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20241106BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0662
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021033724
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134544
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】下新原 岳
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-262885(JP,A)
【文献】特開2006-344476(JP,A)
【文献】特開2005-011641(JP,A)
【文献】特開2005-158576(JP,A)
【文献】特開2020-123485(JP,A)
【文献】特開2009-037993(JP,A)
【文献】特開2009-295303(JP,A)
【文献】特開2011-023190(JP,A)
【文献】特開2009-129764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のアノードオフガスを第1希釈室の内部に取り込み可能とするように開口するアノードオフガス取り込み口を有する第1希釈室と、
前記アノードオフガスを前記燃料電池のカソードオフガスを用いて希釈した希釈ガスを第2希釈室の内部から、空気を排出するように構成される排気ダクトに排出可能とするように開口する排気口を有する第2希釈室と、
前記第1及び第2希釈室を連通させるように前記第1及び第2希釈室間に位置する連通室と
を備える希釈装置であって、
前記連通室が、前記カソードオフガスを前記連通室の内部に取り込み可能とするように開口するカソードオフガス取り込み口と、前記第1希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第1連通口と、前記第2希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第2連通口とを有し、
前記第1連通口の開口面積が前記第2連通口の開口面積よりも大きくなっており、
外部から前記アノードオフガス取り込み口を通って前記第1希釈室に向かうガス入室方向が、前記第1希釈室から前記第1連通口を通って前記連通室に向かうガス退室方向に対して90度以上かつ180度未満の角度範囲で異なっており、
前記第1連通口が、前記第1希釈室のガス入室方向の中心に対して前記ガス入室方向にて前記アノードオフガス取り込み口寄りに配置されており、
前記アノードオフガス取り込み口が、前記第1希釈室のガス退室方向の中心に対して前記ガス退室方向にて前記第1連通口寄りに配置されている、希釈装置。
【請求項2】
燃料電池のアノードオフガスを第1希釈室の内部に取り込み可能とするように開口するアノードオフガス取り込み口を有する第1希釈室と、
前記アノードオフガスを前記燃料電池のカソードオフガスを用いて希釈した希釈ガスを第2希釈室の内部から、空気を排出するように構成される排気ダクトに排出可能とするように開口する排気口を有する第2希釈室と、
前記第1及び第2希釈室を連通させるように前記第1及び第2希釈室間に位置する連通室と
を備える希釈装置であって、
前記連通室が、前記カソードオフガスを前記連通室の内部に取り込み可能とするように開口するカソードオフガス取り込み口と、前記第1希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第1連通口と、前記第2希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第2連通口とを有し、
前記第1連通口の開口面積が前記第2連通口の開口面積よりも大きくなっており、
前記第1希釈室及び前記連通室を仕切る仕切り壁を備え、
前記仕切り壁が、前記連通室から前記第1希釈室に張り出すように形成され、
前記第1連通口が、前記仕切り壁を貫通するように形成されている、希釈装置。
【請求項3】
燃料電池のアノードオフガスを第1希釈室の内部に取り込み可能とするように開口するアノードオフガス取り込み口を有する第1希釈室と、
前記アノードオフガスを前記燃料電池のカソードオフガスを用いて希釈した希釈ガスを第2希釈室の内部から、空気を排出するように構成される排気ダクトに排出可能とするように開口する排気口を有する第2希釈室と、
前記第1及び第2希釈室を連通させるように前記第1及び第2希釈室間に位置する連通室と
を備える希釈装置であって、
前記連通室が、前記カソードオフガスを前記連通室の内部に取り込み可能とするように開口するカソードオフガス取り込み口と、前記第1希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第1連通口と、前記第2希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第2連通口とを有し、
前記第1連通口の開口面積が前記第2連通口の開口面積よりも大きくなっており、
前記第2希釈室が、前記第2連通口と前記排気口とを連結し、かつ迷路状に延びる排気経路を有し、
前記排気経路が、前記第2連通口と、前記第2連通口から前記排気口に向かって最初の曲がり角との間で延びるガス溜まり区画を有している、希釈装置。
【請求項4】
燃料電池のアノードオフガスを第1希釈室の内部に取り込み可能とするように開口するアノードオフガス取り込み口を有する第1希釈室と、
前記アノードオフガスを前記燃料電池のカソードオフガスを用いて希釈した希釈ガスを第2希釈室の内部から、空気を排出するように構成される排気ダクトに排出可能とするように開口する排気口を有する第2希釈室と、
前記第1及び第2希釈室を連通させるように前記第1及び第2希釈室間に位置する連通室と
を備える希釈装置であって、
前記連通室が、前記カソードオフガスを前記連通室の内部に取り込み可能とするように開口するカソードオフガス取り込み口と、前記第1希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第1連通口と、前記第2希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第2連通口とを有し、
前記第1連通口の開口面積が前記第2連通口の開口面積よりも大きくなっており、
前記第2希釈室の排気口が複数の貫通孔から構成されている、希釈装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のアノードオフガスを燃料電池のカソードオフガスを用いて希釈するように構成される希釈装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、定置用、自動車用、携帯機器用等の様々な用途に用いることができ、このような燃料電池をさらに普及すべく開発が進められている。燃料電池においては、アノード(燃料極、負極)に供給されるアノードガスと、カソード(空気極、正極)に供給されるカソードガスとを用いて電気化学反応を生じさせて、これによって、発電が行われる。アノードガスとしては、例えば、水素を含む燃料ガス等が用いられ、カソードガスとしては、例えば、空気等が用いられる。
【0003】
このような燃料電池においては、アノードに供給されたアノードガスが、発電のための電気化学反応に用いられずに排出されることがある。このように排出されるアノードガスは、アノードオフガスと呼ばれる。また、カソードに供給されたカソードガスが、発電のための電気化学反応に用いられずに排出されることがある。このように排出されるカソードガスは、カソードオフガスと呼ばれる。
【0004】
しかしながら、アノードオフガスがそのまま大気中に放出されることは好ましくない。そのため、アノードオフガスをカソードオフガス等によって希釈するように構成される希釈装置が用いられている。
【0005】
希釈装置の一例としては、筐体と、この筐体を滞留室及び混合室に分割する仕切り板と、アノードオフガスを滞留室に導入するためのアノードオフガス導入配管と、カソードガスを滞留室に導入するための撹拌ガス配管と、混合室内を貫通する希釈ガス配管とを有する希釈器であって、仕切り板に滞留室及び混合室を連通する連通孔が形成され、かつ混合室内で希釈ガス配管に孔部が形成される、希釈器が挙げられる。このような希釈器においては、カソードガスによって撹拌された滞留室のアノードオフガスが、混合室内で希釈ガス配管の孔部を通って希釈ガス配管に供給され、カソードオフガスが、希釈ガス配管の基端側に供給され、これらアノードオフガス及びカソードオフガスを含む希釈ガスが、希釈ガス配管の先端側から大気に放出される。(例えば、特許文献1、特に、その段落[0035]~[0037]を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-129764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記希釈装置の一例においては、希釈ガス配管内で合流したアノードオフガスとカソードオフガスとは、希釈ガス配管内で同じ方向に単純に流れて、その後、希釈ガス配管の先端側から放出されるに過ぎない。そのため、希釈ガスが、アノードオフガスの濃度が高い状態にあるアノードオフガスの固まりを含んだまま、大気に放出されるおそれがある。すなわち、アノードオフガスが十分に希釈されない状態にある希釈ガスが、大気に放出されるおそれがある。
【0008】
このような実情を鑑みると、燃料電池の希釈装置においては、アノードオフガスを効率的に希釈することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、一態様に係る燃料電池の希釈装置は、燃料電池のアノードオフガスを第1希釈室の内部に取り込み可能とするように開口するアノードオフガス取り込み口を有する第1希釈室と、前記アノードオフガスを前記燃料電池のカソードオフガスを用いて希釈した希釈ガスを第2希釈室の内部から、空気を排出するように構成される排気ダクトに排出可能とするように開口する排気口を有する第2希釈室と、前記第1及び第2希釈室を連通させるように前記第1及び第2希釈室間に位置する連通室とを備える希釈装置であって、前記連通室が、前記カソードオフガスを前記連通室の内部に取り込み可能とするように開口するカソードオフガス取り込み口と、前記第1希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第1連通口と、前記第2希釈室及び前記連通室を連通させるように開口する第2連通口とを有し、前記第1連通口の開口面積が前記第2連通口の開口面積よりも大きくなっており、外部から前記アノードオフガス取り込み口を通って前記第1希釈室に向かうガス入室方向が、前記第1希釈室から前記第1連通口を通って前記連通室に向かうガス退室方向に対して90度以上かつ180度未満の角度範囲で異なっており、前記第1連通口が、前記第1希釈室のガス入室方向の中心に対して前記ガス入室方向にて前記アノードオフガス取り込み口寄りに配置されており、前記アノードオフガス取り込み口が、前記第1希釈室のガス退室方向の中心に対して前記ガス退室方向にて前記第1連通口寄りに配置されている。
【発明の効果】
【0010】
一態様に係る燃料電池の希釈装置においては、アノードオフガスを効率的に希釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る燃料電池の希釈装置を、燃料電池の燃料電池スタック、冷却装置、及び加湿装置と一緒に概略的に示す斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係る希釈装置を、冷却装置の排気ダクトと一緒に概略的に示す斜視図である。
図3図3は、図2のX-X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態に係る希釈装置について、それを設置した燃料電池と一緒に説明する。本実施形態に係る希釈装置を含んだ燃料電池は、自動車用の燃料電池となっている。
【0013】
しかしながら、燃料電池は、自動車用の燃料電池に限定されない。例えば、燃料電池は、フォークリフト等のような自動車以外の車両用の燃料電池とすることができる。例えば、燃料電池は、車両、船舶等の移動体用の燃料電池することができる。例えば、燃料電池は、携帯機器用等の燃料電池とすることができる。特に、燃料電池は、移動体用、携帯機器用等の燃料電池のように、制限されたスペース内に設置することを要求される燃料電池とすることができる。
【0014】
「希釈装置の概略」
図1図3を参照して、本実施形態に係る希釈装置1の概略について説明する。すなわち、本実施形態に係る希釈装置1は、概略的には以下のように構成される。図1及び図2に示すように、希釈装置1は燃料電池に設置される。
【0015】
図3に示すように、希釈装置1は第1希釈室10を有する。第1希釈室10は、燃料電池1のアノードオフガス(図3にて、アノードオフガスの流れを片側矢印Aにより示す)を第1希釈室10の内部に取り込み可能とするように開口するアノードオフガス取込口11を有する。
【0016】
希釈装置1はまた第2希釈室20を有する。第2希釈室20は、希釈ガス(図3にて、希釈ガスの流れを片側矢印Dにより示す)を第2希釈室20の内部から燃料電池の排気ダクト4b(図1及び図2に示す)に排出可能とするように開口する排気口21を有する。ここで、希釈ガスは、アノードオフガスを燃料電池のカソードオフガス(図3にて、カソードオフガスの流れを片側矢印Cにより示す)を用いて希釈したガスである。さらに、図1及び図2に示すように、排気ダクト4bは、空気を排出するように構成される。
【0017】
図3に示すように、希釈装置1は連通室30を有する。連通室30は、第1及び第2希釈室10,20を連通させるように第1及び第2希釈室10,20間に位置する。連通室30は、カソードオフガスを連通室30の内部に取り込み可能とするように開口するカソードオフガス取り込み口31を有する。連通室30は、第1希釈室10及び連通室30を連通させるように開口する第1連通口32を有する。連通室30は、第2希釈室20及び連通室30を連通させるように開口する第2連通口33を有する。第1連通口32の開口面積は、第2連通口33の開口面積よりも大きくなっている。
【0018】
さらに、本実施形態に係る希釈装置1は、概略的には以下のように構成することができる。図3に示すように、外部からアノードオフガス取り込み口31を通って第1希釈室10に向かうガス入室方向(図3にて、片側矢印F1により示す)が、第1希釈室10から第1連通口32を通って連通室30に向かうガス退室方向(図3にて、片側矢印F2により示す)に対して約90度以上かつ約180度未満の角度範囲で異なっている。
【0019】
第1連通口32が、第1希釈室10のガス入室方向の中心10aに対してガス入室方向にてアノードオフガス取り込み口11寄りに配置されている。アノードオフガス取り込み口11は、第1希釈室10のガス退室方向の中心10bに対してガス退室方向にて第1連通口32寄りに配置されている。
【0020】
希釈装置1は、第1希釈室10及び連通室30を仕切る仕切り壁41を有する。以下において、必要に応じて、この仕切り壁41を第1仕切り壁41と呼ぶ。第1仕切り壁41が、連通室30から第1希釈室10に張り出すように形成される。第1連通口32は、第1仕切り壁41を貫通するように形成される。
【0021】
希釈室20は排気経路22を有する。排気経路22は、第2連通口33と排気口21とを連結する。排気経路22はまた迷路状に延びる。排気経路22は、第2連通口33と、この第2連通口33から排気口21に向かって最初の曲がり角23aとの間で延びるガス溜まり区画24aを有する。なお、以下においては、必要に応じて、最初の曲がり角23aを第1曲がり角23aと呼び、かつこのガス溜まり区画24aを、第1ガス溜まり区画24aと呼ぶ。
【0022】
図1及び図2に示すように、第2希釈室20の排気口21は複数の貫通孔21aから構成されている。しかしながら、第2希釈室の排気口は、1つの貫通孔から構成することもできる。
【0023】
「燃料電池の詳細」
図1図3を参照すると、燃料電池は、詳細には次のように構成することができる。図1に示すように、燃料電池は燃料電池スタック2を有する。特に明確に図示はしないが、燃料電池スタック2は、アノード(燃料極、負極)(図示せず)に供給されるアノードガスと、カソード(空気極、正極)(図示せず)に供給されるカソードガスとを用いて電気化学反応を生じさせて、これによって、発電を行うように構成される。この電気化学反応によっては、水もまた生成される。
【0024】
燃料電池スタック2は、電気化学反応に用いられなかったアノードガスである上記アノードオフガスを排出可能に構成される。このアノードオフガスが、燃料電池スタック2から希釈装置1の第1希釈室10のアノードオフガス取り込み口11(図3に示す)に送られる。
【0025】
図1を参照すると、燃料電池は、カソードガスの水分量を調節可能とするように構成される加湿装置3を有する。加湿装置3はまた、水分量を調節した後のカソードガスを燃料電池スタック2に送ることができるように構成されている。加湿装置3は、電気化学反応に用いられなかったカソードガスである上記カソードオフガスを排出可能とするように構成される。このカソードオフガスが、加湿装置3から希釈装置1の連通室30のカソードオフガス取込口31(図3に示す)に送られる。
【0026】
さらに、加湿装置3は、上記電気化学反応によって生成された水を燃料電池スタック2から受け取ることができるように構成される。この水は、カソードガスの水分量の調節に用いることができる。加湿装置3は、希釈装置1の下方に位置し、かつ希釈装置1に隣接している。
【0027】
燃料電池は、燃料電池スタック2を冷却可能とするように構成される冷却装置4を有する。冷却装置4は、燃料電池スタック2の内部の熱を同外部に放出可能とすべく、燃料電池スタック2の内部から同外部に向かう空気の流れ(図1にて、片側矢印Gにより示す)を生じさせるように構成される冷却ファン4aを有する。
【0028】
上記排気ダクト4bは、この冷却ファン4aに接続することができる。この場合、燃料電池、特に、燃料電池スタック2の冷却に用いられた空気を、冷却ファン4aから排気ダクト4bを通って燃料電池の外部に排出することができる。しかしながら、排気ダクトは、これに限定されない。例えば、排気ダクトは、アノードオフガスを希釈するために空気の流れを生じさせるように構成される希釈用のファンに接続されてもよい。
【0029】
図1及び図2を参照すると、冷却装置4は、複数の冷却ファン4aと、これら複数の冷却ファン4aにそれぞれ接続される複数の排気ダクト4bとを有する。特に、冷却装置4は、2つの冷却ファン4aと、これら2つの冷却ファン4aにそれぞれ接続される2つの排気ダクト4bとを有する。
【0030】
しかしながら、冷却ファンの数及び排気ダクトの数は、これらに限定されない。冷却装置は、1つの冷却ファンと、この1つの冷却ファンに接続される1つの排気ダクトとを有することもできる。冷却装置は、3つ以上の冷却ファンと、これら3つ以上の冷却ファンにそれぞれ接続される3つ以上の排気ダクトとを有することもできる。
【0031】
各排気ダクト4bは、その排気軸線4cに沿って延びる。各排気ダクト4bは、その排気軸線4cを囲むように筒状に形成される。複数の排気ダクト4bは、これらの排気軸線を互いに平行とするように実質的に直線状に並んで配置される。さらに、複数の排気ダクト4bは互いに連結されている。複数の排気ダクト4bは、希釈装置1の上方に位置し、かつ希釈装置1と隣接している。
【0032】
複数の冷却ファン4aもまた、このような複数の排気ダクト4bにそれぞれ対応するように配置されている。各冷却ファン4aは、燃料電池スタック2に取り付けられている。より具体的には、燃料電池スタック2の1つの側方面部2aに取り付けられている。
【0033】
「希釈装置の詳細」
図1図3を参照すると、希釈装置1は、詳細には次のように構成することができる。図1図3に示すように、希釈装置1は筐体40を有する。筐体40は、第1希釈室10、第2希釈室20、及び連通室30を画定する。筐体40は、複数の排気ダクト4bと一体に形成されている。しかしながら、筐体は、複数の排気ダクトのうち少なくとも1つとは別体に形成することもできる。
【0034】
第1及び第2希釈室10,20は、ある1つの特定方向(2つの片側矢印L1,L2により示す)に並んでいる。この1つの特定方向を、希釈装置1の長手方向、特に、筐体40の長手方向と定義する。以下においては、必要に応じて、希釈装置1の長手方向、特に、筐体40の長手方向を、単に長手方向と呼ぶ。複数の排気ダクト4bは、この長手方向に並ぶこととなる。
【0035】
さらに、希釈装置1において、アノードオフガス濃度は、長手方向にて第1希釈室10から第2希釈室20に向かうに従って低下するようになっている。そのため、以下においては、必要に応じて、長手方向にて第1希釈室10から第2希釈室20に向かう方向(両側矢印L1により示す)を、希釈促進方向と呼ぶ。
【0036】
図3に示すように、筐体40は、上記第1仕切り壁41を含む。筐体40は、第2希釈室20及び連通室30を仕切る第2仕切り壁42を含む。第2仕切り壁42は、連通室30から第2希釈室20に張り出すように形成される。第2連通口33は、第2仕切り壁42を貫通するように形成される。筐体40は、第1及び2希釈室20,30を仕切る中間仕切り壁43を含む。
【0037】
特に、第1仕切り壁41は、長手方向にて連通室30から第1希釈室10に略円弧形状に張り出すように形成される。第2仕切り壁42もまた、長手方向にて連通室30から第2希釈室20に略円弧形状に張り出すように形成される。
【0038】
第1及び第2仕切り壁41,42は一体となっている。一体となった第1及び第2仕切り壁41,42は、略円筒形状に形成されている。しかしながら、一体となった第1及び第2仕切り壁は、略円筒形状以外の形状に形成することもできる。例えば、一体となった第1及び第2仕切り壁は、希釈推進方向に向かって先細る略台形状に形成することもできる。
【0039】
第1希釈室10内における第1仕切り壁41の長手方向の突出量は、第2希釈室20内における第2仕切り壁42の長手方向の突出量よりも大きくなっている。この場合、略円筒形状である一体の第1及び第2仕切り壁41,42の中心軸線は、長手方向にて第1希釈室10寄りに配置されることとなる。
【0040】
しかしながら、第1希釈室内における第1仕切り壁の長手方向の突出量は、第2希釈室内における第2仕切り壁の長手方向の突出量と略等しくすることもできる。第1希釈室内における第1仕切り壁の長手方向の突出量は、第2希釈室内における第2仕切り壁の長手方向の突出量よりも小さくすることもできる。
【0041】
図2及び図3に示すように、筐体40は、第1仕切り壁41及び中間仕切り壁43と協働して第1希釈室10を画定する第1外周壁44を含む。筐体40は、第2仕切り壁42及び中間仕切り壁43と協働して第2希釈室20を画定する第2外周壁45を含む。第1及び第2外周壁44,45は、長手方向にて互いに隣接する。第1及び第2外周壁44,45は、筐体40の外周壁40a全体を形成するようになっている。
【0042】
第1外周壁44は、燃料電池スタック2と対向する対向面部44aを有する。特に、対向面部44aは、燃料電池スタック2の側方面部2aと対向するように配置することができる。
【0043】
第2外周壁45は、長手方向にて第1外周壁44側に位置する本体部45aを有する。第2外周壁45はまた、長手方向にて第1外周壁44とは反対側に位置する排気部45bを有する。第2外周壁45の本体部45aは、長手方向にて第1外周壁44と隣接する。第2外周壁45の本体部45a及び排気部45bは、長手方向にて互いに隣接する。
【0044】
図1及び図2を参照すると、第1外周壁44及び第2外周壁45の本体部45aは、複数の排気ダクト4bの下方に位置し、かつ複数の排気ダクト4bに隣接する。第2外周壁45の排気部45bは、複数の排気ダクト4bに対して長手方向にシフトするように配置される。
【0045】
第2外周壁45の排気部45bは、本体部45aに対して上方に突出するように形成される突出区域45cを有する。突出区域45cは、複数の排気ダクト4bのうち、希釈促進方向の最も下流端に位置する排気ダクト4b(以下、必要に応じて、「下流端の排気ダクト4b」という)に沿って突出する。突出区域45cは、下流端の排気ダクト4bと長手方向にて当接する。
【0046】
筐体40は、迷路状の排気経路22を形成するために用いられる迷路仕切り壁46を有する。迷路仕切り壁46は、迷路状の排気経路22を画定するために用いられる複数の迷路仕切り部46a,46b,46c,46d,46e,46f,46gを有する。
【0047】
このような筐体40を有する希釈装置1において、第1希釈室10のアノードオフガス取込口11は、第1外周壁44の対向面部44aに形成される。アノードオフガス取込口11の中心軸線11aは、長手方向及び上下方向に略直交する方向(以下、必要に応じて、「幅方向」という)に延びることができる。この場合、ガス入室方向もまた幅方向に沿うこととなる。
【0048】
第1希釈室10は、第1仕切り壁41に対して幅方向の両側にそれぞれ形成される2つのポケット空間10c,10dを有する。第1希釈室10内のアノードオフガスは、これら2つのポケット空間10c,10dにて滞留することができる。
【0049】
連通室30は、幅方向にてアノードオフガス取込口11寄りに位置している。連通室30のカソードオフガス取り込み口31の中心軸線31aは上下方向に沿って延びる。
【0050】
カソードオフガス取り込み口31は、長手方向にて第1希釈室10寄りに位置する。しかしながら、カソードオフガス取り込み口は、長手方向にて第1及び第2希釈室間の略中央に位置することができる。カソードオフガス取り込み口は、長手方向にて第2希釈室寄りに位置することもできる。
【0051】
第1連通口32の中心軸線32aは、幅方向にて第1仕切り壁41の幅方向の略中央と一致するように位置している。第2連通口33の中心軸線33aは、第1連通口32の中心軸線32aよりも幅方向にてアノードオフガス取込口11寄りに位置している。
【0052】
図2に示すように、第2希釈室20の排気口21は、筐体40の第2外周壁45の排気部45bに配置される。特に、排気口21は、この排気部45bの突出区域45cに形成される。さらに、排気口21は、突出区域45cにて長手方向の第1希釈室10側に配置される。排気口21は、排気部45bの突出区域45cに加えて、下流端の排気ダクト4bを貫通するように形成される。
【0053】
第2希釈室20の排気経路22は、希釈促進方向に向かって蛇行するように形成されている。排気経路22は、希釈促進方向にて並ぶn個のガス溜まり区画24a,24b,24c,24d,24e,24f,24g,24hを有する(nは、2以上の整数)。排気経路22は、隣り合うガス溜まり区画24a~24hを繋ぐ曲がり角23a,23b,23c,23d,23e,23f,23gを有する。排気経路22は、(n-1)個の曲がり角23a~23gを有する。
【0054】
n個のガス溜まり区画24a~24h、すなわち、複数のガス溜まり区画24a~24hは、長手方向の長さを異ならせることができる。複数のガス溜まり区画24a~24hの中で、希釈促進方向の最も下流端に位置するガス溜まり区画24hにおける長手方向の長さを最も長くすることができる。
【0055】
一例として、図3においては、排気経路22は、8個のガス溜まり区画24a~24h、すなわち、第1~第8ガス溜まり区画24a~24hを有する。第1~第8ガス溜まり区画24a~24hは、希釈促進方向にてこの順番に並んでいる。この場合、排気経路22は、7個の曲がり角23a~23g、すなわち、第1~第7の曲がり角23a~23gを有する。しかしながら、ガス溜まり区画の数及び曲がり角の数は、これらに限定されない。
【0056】
「希釈装置内のガスの流れ」
図2及び図3を参照して、本実施形態に係る希釈装置1内のガスの流れについて説明する。図3に示すように、希釈装置1において、アノードオフガスが、断続的に、アノードオフガス取り込み口11から第1希釈室10内に流入する。アノードオフガスは、第1希釈室10内のポケット空間10c,10d内に滞留する。この滞留時においては、アノードオフガスの固まりを分散させることができる。
【0057】
カソードオフガスが、連続的に、カソードオフガス取り込み口31から連通室30内に流入する。流入直後におけるカソードオフガスの大部分は、一旦、第1連通口32を通って第1希釈室10内に流入する。このようなカソードオフガスの大部分は、第1希釈室10内のアノードオフガスを希釈する。流入直後におけるカソードオフガスの残りの部分は、第2連通口33を通って第2希釈室20内に流入する。
【0058】
第1希釈室10内のアノードオフガス及びカソードオフガスは、流入直後におけるカソードオフガスの流れに逆らいながら、第1連通口32から連通室30を通って第2連通口33に向かう。その後、第2連通口33を通ったアノードオフガス及びカソードオフガスが、第2希釈室20の迷路状の排気経路22に入る。排気経路22内では、アノードオフガスがカソードオフガスを用いて希釈され、これによって得られる希釈ガスは、迷路状の排気経路22を通って排気口21に到達する。
【0059】
さらに、希釈ガスは、排気口21から下流端の排気ダクト4b内に流れる。排気ダクト4b内で、希釈ガスは、燃料電池スタック2の冷却に用いられた空気によって、燃料電池の外部に送り出される。
【0060】
以上、本実施形態に係る燃料電池の希釈装置1は、燃料電池のアノードオフガスを第1希釈室10の内部に取り込み可能とするように開口するアノードオフガス取り込み口11を有する第1希釈室10と、前記アノードオフガスを前記燃料電池のカソードオフガスを用いて希釈した希釈ガスを第2希釈室20の内部から、空気を排出するように構成される排気ダクト4bに排出可能とするように開口する排気口21を有する第2希釈室20と、前記第1及び第2希釈室10,20を連通させるように前記第1及び第2希釈室10,20間に位置する連通室30とを備える希釈装置1であって、前記連通室30が、前記カソードオフガスを前記連通室30の内部に取り込み可能とするように開口するカソードオフガス取り込み口31と、前記第1希釈室10及び前記連通室30を連通させるように開口する第1連通口32と、前記第2希釈室20及び前記連通室30を連通させるように開口する第2連通口33とを有し、前記第1連通口32の開口面積が前記第2連通口33の開口面積よりも大きくなっている。
【0061】
このような希釈装置1においては、第1希釈室10に取り込まれたアノードオフガスは、連通室30を通過しなければ、第2希釈室20に入ることができず、かつ第2希釈室20の排気口21から排気ダクト4bに排出することができない。そのため、例えば、連通室30にカソードオフガスを供給し続ければ、カソードオフガスの流入圧によって、アノードオフガスが連通室30に入り難くでき、かつアノードオフガスが第1希釈室10に滞留する時間を長くすることができる。よって、第1希釈室10内で、アノードオフガスの固まりを効率的に分散させることができ、さらには、アノードオフガスを効率的に希釈することができる。
【0062】
また、連通室30において第1連通口32の開口面積が第2連通口33の開口面積よりも大きくなっているので、アノードオフガス及びカソードオフガスを、連通室30から第2希釈室20に入り難くすることができる。よって、第1希釈室10及び連通室30内で、アノードオフガスの固まりを効率的に分散させることができ、アノードオフガスが、カソードオフガスと一緒になって第1希釈室10及び連通室30に滞留する時間を長くすることができ、さらには、アノードオフガスを効率的に希釈することができる。
【0063】
本実施形態に係る希釈装置1においては、外部から前記アノードオフガス取り込み口11を通って前記第1希釈室10に向かうガス入室方向が、前記第1希釈室10から前記第1連通口32を通って前記連通室30に向かうガス退室方向に対して90度以上かつ180度未満の角度範囲で異なっている。
【0064】
さらに、本実施形態に係る希釈装置1においては、前記第1連通口32が、前記第1希釈室10のガス入室方向の中心10aに対して前記ガス入室方向にて前記アノードオフガス取り込み口11寄りに配置されており、前記アノードオフガス取り込み口11が、前記第1希釈室10のガス退室方向の中心10bに対して前記ガス退室方向にて前記第1連通口32寄りに配置されている。
【0065】
このような希釈装置1においては、アノードオフガスが、外部からアノードオフガス取り込み口11を通って第1希釈室10に入った直後に、第1希釈室10から第1連通口32を通って連通室30に入ることを抑制することができ、かつアノードオフガスが第1希釈室10に滞留する時間を長くすることができる。さらには、アノードオフガスが、カソードオフガスと一緒になって第1希釈室10に滞留する時間を長くすることができる。
【0066】
本実施形態に係る希釈装置1は、前記第1希釈室10及び前記連通室30を仕切る仕切り壁41を備え、前記仕切り壁41が、前記連通室30から前記第1希釈室10に張り出すように形成され、前記第1連通口32が、前記仕切り壁41を貫通するように形成されている。
【0067】
このような希釈装置1においては、第1希釈室10において、仕切り壁41の張り出し方向の基端側にポケット空間10c,10dが形成される。そのため、ポケット空間10c,10dにアノードガスを滞留させることができ、かつポケット空間10c,10dによって、アノードオフガスが第1希釈室10に滞留する時間を長くすることができる。さらには、ポケット空間10c,10dによって、アノードオフガスが、カソードオフガスと一緒になって第1希釈室10に滞留する時間を長くすることができる。
【0068】
本実施形態に係る希釈装置1においては、前記第2希釈室20が、前記第2連通口33と前記排気口21とを連結し、かつ迷路状に延びる排気経路22を有し、前記排気経路22が、前記第2連通口33と、前記第2連通口33から前記排気口21に向かって最初の曲がり角23aとの間で延びるガス溜まり区画24aを有している。
【0069】
このような希釈装置1においては、アノードオフガス及びカソードオフガスを、第2希釈室20の第1ガス溜まり区画24aにて滞留させることができる。よって、第2希釈室20内で、アノードオフガスの固まりを効率的に分散させることができ、アノードオフガスが、カソードオフガスと一緒になって第2希釈室20に滞留する時間を長くすることができ、さらには、アノードオフガスを効率的に希釈することができる。
【0070】
本実施形態に係る希釈装置1においては、前記第2希釈室20の排気口21が複数の貫通孔21aから構成されている。そのため、アノードオフガスの固まりが第2希釈室20の排気口21に到達した場合であっても、排気口21の複数の貫通孔21aによって、アノードオフガスの固まりを分散させることができる。付随的には、第2希釈室20の排気口21が燃料電池の排気ダクト4bにおける空気の流れを妨げることを防ぐことができる。
【0071】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…希釈装置
4b…排気ダクト
10…第1希釈室、10a…ガス入室方向の中心、10b…ガス退室方向の中心、11…アノードオフガス取込口
20…第2希釈室、21…排気口、21a…貫通孔、22…排気経路、23a…最初の曲がり角、第1曲がり角、24a…ガス溜まり区画、第1ガス溜まり区画
30…連通室、31…カソードオフガス取り込み口、32…第1連通口、33…第2連通口
41…仕切り壁、第1仕切り壁、42…第2仕切り壁
図1
図2
図3