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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】車両の走行制御用地図データ制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20241106BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20241106BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20241106BHJP
   G08G 1/00 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
G01C21/26 A
G08G1/0968
G09B29/10 Z
G08G1/00 X
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021034247
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134824
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏原 健之朗
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-008490(JP,A)
【文献】特開2017-110924(JP,A)
【文献】特開2018-018423(JP,A)
【文献】特開平07-083688(JP,A)
【文献】国際公開第2005/101350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G08G 1/00 - 99/00
G09B 23/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の区画データにて構成される地図データを記憶する地図サーバと、
車両の目標走行経路を設定する目標走行経路設定装置と、
前記地図サーバから無線通信により前記地図データを受信し、前記目標走行経路設定装置から目標走行経路を取得し、取得した目標走行経路に沿って前記車両を走行させるための走行制御用地図データを形成し、前記走行制御用地図データを記憶装置に記憶するよう構成された車載の制御ユニットと、
を有する車両の走行制御用地図データ制御装置において、
前記地図データは、第一の地図データと、該第一の地図データよりも精度が低い第二の地図データとを含んでおり、
前記制御ユニットは、前記車両の現在地の情報を取得し、前記現在地から予め設定された所定の距離の範囲について、前記目標走行経路及び前記目標走行経路の周囲である第一の領域の地図を前記第一の地図データの区画データにて形成すると共に、前記第一の領域よりも前記目標走行経路から遠い第二の領域の地図を前記第二の地図データの区画データにて形成することにより、前記走行制御用地図データを形成するよう構成され、
前記制御ユニットは、更に、前記車両の現在地から所定の距離の範囲の境界までの前記目標走行経路に沿う距離が基準値以下になると、前記走行制御用地図データを更新するよう構成された、
車両の走行制御用地図データ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の走行制御用地図データ制御装置において、
前記地図データは、第一の地図データと、該第一の地図データよりも精度が低い第二の地図データと、該第二の地図データよりも精度が低い第三の地図データとを含んでおり、
前記制御ユニットは、前記第一の領域の地図を前記第一の地図データの区画データにて形成し、前記第二の領域の地図を前記第二の地図データの区画データにて形成し、前記第二の領域よりも前記目標走行経路から遠い第三の領域の地図を前記第三の地図データの区画データにて形成することにより、前記走行制御用地図データを形成するよう構成された、
車両の走行制御用地図データ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の走行制御用地図データ制御装置において、前記制御ユニットは、前記車両の車速が高いほど前記基準値が大きくなるよう、車速に応じて前記基準値を可変設定するよう構成された、車両の走行制御用地図データ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の走行制御のための地図データ制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
車両の走行制御を行うためは、地図データが必要であり、車両の走行制御において使用される地図データは、複数の区画データにて構成される。クラウドに設置された地図サーバに格納された地図データが使用される場合には、車両の走行制御に必要なエリアの複数の区画データが、地図サーバからネットワークを介してダウンロードされ、それらの区画データにて地図データが形成され、車両の記憶装置に記憶される。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、複数の区画データにて形成される地図データを更新する地図データ制御装置であって、車両の走行頻度が高いエリアの区画データを他のエリアの区画データよりも優先して更新するよう構成された地図データ制御装置が記載されている。この地図データ制御装置によれば、ユーザにとって重要なエリアの区画データを他のエリアの区画データよりも優先して更新することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-001471号公報
【発明の概要】
【0005】
〔発明が解決しようとする課題〕
一般に、車両の走行制御には自動運転、車線追従走行制御のように、種々の精度の制御があるが、制御の精度が高いほど、地図データの精度が高いことが必要であり、地図データの精度が高いほど、地図データのデータ量の大きさが大きくなる。そのため、精度が高い走行制御に必要な全エリアに亘る走行制御用地図データが形成される場合には、地図データを記憶する記憶装置の記憶容量が非常に大きいことが必要とされる。なお、精度が高い走行制御が行われる場合には、上記公開公報に記載された地図データ制御装置においても、地図データを記憶する記憶装置の記憶容量が非常に大きいことが必要とされる。
【0006】
本発明の主要な課題は、走行制御の精度を低下させることなく地図データのデータ量の大きさを小さくし、これにより地図データを記憶する記憶装置の記憶容量を小さくすることができるよう改良された車両の走行制御用地図データ制御装置を提供することである。
【0007】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、複数の区画データ(地図タイル64~68)にて構成される地図データ(地図データベース26、30)を記憶する地図サーバ(18)と、車両(14)の目標走行経路(62)を設定する目標走行経路設定装置(ナビゲーション装置20)と、地図サーバから無線通信により地図データを受信し、目標走行経路設定装置から目標走行経路を取得し、取得した目標走行経路に沿って車両を走行させるための走行制御用地図データ(60)を形成し、走行制御用地図データを記憶装置(50)に記憶するよう構成された車載の制御ユニット(走行制御ECU22)と、を有する車両の走行制御用地図データ制御装置(10)が提供される。
【0008】
地図データは、第一の地図データ(地図タイル64)と、該第一の地図データよりも精度が低い第二の地図データ(地図タイル66)とを含んでおり、制御ユニット(走行制御ECU22)は、車両(14)の現在地(Pp)の情報を取得し、現在地から予め設定された所定の距離の範囲について、目標走行経路(62)及び目標走行経路の周囲である第一の領域(70)の地図を第一の地図データの区画データにて形成すると共に、第一の領域よりも目標走行経路から遠い第二の領域(72)の地図を第二の地図データの区画データにて形成することにより、走行制御用地図データ(60)を形成するよう構成され、制御ユニット(走行制御ECU22)は、更に、車両(14)の現在地から所定の距離の範囲の境界までの目標走行経路(62)に沿う距離(L)が基準値(Lc)以下になると、走行制御用地図データ(60)を更新するよう構成される。
【0009】
上記の構成によれば、目標走行経路及び目標走行経路の周囲である第一の領域の地図が第一の地図データの区画データにて形成されると共に、第一の領域よりも目標走行経路から遠い第二の領域の地図が第二の地図データの区画データにて形成されることにより、走行制御用地図データが形成される。
【0010】
よって、走行制御用地図データの全体が第一の地図データにて形成される場合に比して、地図データのデータ量の大きさを小さくすることができるので、地図データを記憶する記憶装置の記憶容量を小さくすることができる。また、目標走行経路及び目標走行経路の周囲である第一の領域の地図が第一の地図データの区画データにて形成されるので、走行制御の精度を低下させることなく地図データのデータ量の大きさを小さくすることができる。
また、上記の構成によれば、車両の現在地の情報が取得され、現在地から予め設定された所定の距離の範囲について走行制御用地図データが形成される。よって、例えば現在地から目的地までの距離範囲について走行制御用地図データが形成される場合に比して、地図データのデータ量の大きさを小さくすることができ、記憶装置の記憶容量を更に小さくすることができる。
更に、上記の構成によれば、車両の現在地から所定の距離の範囲の境界までの目標走行経路に沿う距離が基準値以下になると、走行制御用地図データが更新される。よって、車両の現在地から所定の距離の範囲の境界までの目標走行経路に沿う距離の如何に関係なく走行制御用地図データが更新される場合に比して、走行制御用地図データの更新の頻度を低減することができる。
【0011】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、地図データは、第一の地図データ(地図タイル64)と、該第一の地図データよりも精度が低い第二の地図データ(地図タイル66)と、該第二の地図データよりも精度が低い第三の地図データ(地図タイル68)とを含んでおり、制御ユニット(走行制御ECU22)は、第一の領域(70)の地図を第一の地図データの区画データにて形成し、第二の領域(72)の地図を第二の地図データの区画データにて形成し、第二の領域よりも目標走行経路から遠い第三の領域(74)の地図を第三の地図データの区画データにて形成することにより、走行制御用地図データ(60)を形成するよう構成される。
【0012】
上記態様によれば、第一の領域の地図が第一の地図データの区画データにて形成され、第二の領域の地図が第二の地図データの区画データにて形成され、第三の領域の地図が第三の地図データの区画データにて形成されることにより、走行制御用地図データが形成される。よって、走行制御用地図データが第一及び第二の領域よりなり、第一及び第二の領域の地図が、精度及びデータ量の大きさが異なる二種類の地図データの区画データにて形成される場合に比して、目標走行経路から遠くなる方向の精度の低下を穏やかにすることができる。
【0013】
本発明の他の一つの態様においては、制御ユニット(走行制御ECU22)は、車両(14)の車速が高いほど基準値(Lc)が大きくなるよう、車速に応じて基準値を可変設定するよう構成される。
【0014】
上記態様によれば、車両の車速が高いほど基準値が大きくなるよう、車速に応じて基準値が可変設定される。よって、車速が高いほど基準値を大きくすることにより、走行制御用地図データを早く更新し、走行制御用地図データの更新が遅れる虞を低減することができる。
【0015】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いられる名称及び/又は符号が括弧書きで添えられている。しかし、本発明の各構成要素は、括弧書きで添えられた名称及び/又は符号に対応する実施形態の構成要素に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】走行制御装置を備えた車両に適用された本発明による走行制御用地図データ制御装置の実施形態を示す概略構成図である。
図2】実施形態における走行制御用地図データの形成及び車両の走行制御のルーチンを示すフローチャートである。
図3】変形例における走行制御用地図データの形成及び車両の走行制御のルーチンの要部を示すフローチャートである。
図4】実施形態における走行制御用地図データの例の一部を示す図である。
図5】従来の地図データ制御装置における走行制御用地図データの例の一部を示す図である。
図6図4に示された走行制御用地図データについてデータの大きさを示す図である。
図7図5に示された走行制御用地図データについてデータの大きさを示す図である。
図8】変形例における走行制御用地図データの例の一部を示す図である。
図9図8に示された走行制御用地図データについてデータの大きさを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付の図を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<構成>
図1に示されているように、実施形態にかかる走行制御用地図データ制御装置10は、走行制御装置12を備えた車両14に適用されている。地図データ制御装置10は、クラウド16に設置された地図サーバ18と、走行制御装置12の一部であるナビゲーション装置20及び走行制御電子制御ユニット22とを含んでいる。電子制御ユニットはECU(Electric Control Unit)と略称される。
【0019】
地図サーバ18は、管理サーバ24と、HD地図のデータベース26を記憶する記憶装置28と、ADAS地図のデータベース30を記憶する記憶装置32とを含んでいる。管理サーバ24は、記憶装置28及び32に記憶された地図データの検索及び読み出しを行う。HD地図及びADAS地図は、一辺が数100m ~数kmの正方形をなす複数の区画データ(以下「地図タイル」と呼ぶ)にて構成されている。
【0020】
ナビゲーション装置20は、図1には示されていない設定装置が車両の乗員によって操作され、目的地が設定されることにより、車両14の現在地から目的地までの目標走行経路(目標ルート)を設定する目標走行経路設定装置として機能する。ナビゲーション装置20は、SD地図のデータベース34を記憶する記憶装置を内蔵している。SD地図も、一辺が数100m ~数kmの正方形をなす複数の地図タイルにて構成されている。
【0021】
更に、ナビゲーション装置20は、図1には示されていないGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を備えている。GNSS受信機は、車両14の現在地を検出するための「人工衛星からの信号(例えば、GNSS信号)」を受信し、GNSS信号に基づいて車両14の現在地(例えば、緯度及び経度)を取得する。
【0022】
上記3種類の地図、即ちHD地図、ADAS地図及びSD地図は、下記の表1に示された特徴を有している。なお、HDはHigh Definition(高精度)の略であり、ADASはAdvanced Driver-Assistance System(先進運転支援システム)の略であり、SDは、Standard(通常)の略である。
【表1】
【0023】
表1に示されているように、精度はHD地図が最も高く、SD地図が最も低い。コンテンツはHD地図が最も多く、SD地図が最も少ない。データ量の大きさはHD地図が大きく、SD地図が最も小さい。更に、自動運転に使用される地図はHD地図でなければならず、HD地図及びADAS地図によれば高度運転支援が可能であり、目標走行経路からの逸脱の注意喚起のような運転者への注意喚起は、上記3種類の地図の何れによっても可能である。
【0024】
走行制御ECU22は、マイクロコンピュータを含み、マイクロコンピュータは、図1に示されているように、CPU、ROM、RAM、及びインターフェース(I/F)などを含んでいる。ROMは、図2に示されたフローチャートに対応する走行制御用地図データの形成及び車両の走行制御のプログラムを記憶している。CPUは、ROMから制御プログラムをRAMに読み出し、後に詳細に説明するように、図2に示されたフローチャートに従って走行制御用地図データの形成及び車両の走行制御を実行する。
【0025】
ECU22には、ナビゲーション装置20、車両14の前方を撮影するカメラセンサ36、車両14の前方にマイクロ波を放射するレーダセンサ38、無線通信装置40が接続されている。無線通信装置40は、ネットワーク42を介して地図サーバ18と無線通信し、これによりECU22は、地図サーバ18から地図データ、即ちHD地図及びADAS地図のデータを受信する。
【0026】
更に、ECU22には、電動パワーステアリング(EPSと略称する)・ECU44、エンジンECU46、ブレーキECU48及び記憶装置50が接続されている。EPS・ECU44は、図には示されていない電動パワーステアリング装置を制御することにより、車両14の左右の前輪14FL及び14FRを自動的に操舵する。エンジンECU46は、図には示されていないエンジンを制御することにより、駆動輪の駆動力を制御して車両14の駆動力を変化させる。ブレーキECU48は、図には示されていないブレーキ装置を制御することにより、左右の前輪14FL、14FR及び左右の後輪14RL、14RRの制動力を制御して車両14の制動力を変化させる。記憶装置50は、情報の読み書きが可能なハードディスクドライブのような記憶装置である。
【0027】
ECU22は、地図データを形成する際には、ナビゲーション装置20から車両14の現在地Ppの情報(緯度及び軽度)を取得すると共に、ナビゲーション装置20により設定された車両14の目標走行経路を取得する。ECU22は、目標走行経路及びその周囲を第一の領域に設定し、第一の領域よりも目標走行経路から遠い領域を第二の領域に設定し、第二の領域よりも目標走行経路から遠い領域を第三の領域に設定する。次いで、ECU22は、地図サーバ18からそれぞれ第一及び第二の領域用のHD地図のデータ及びADAS地図のデータを無線通信により取得し、ナビゲーション装置20から第三の領域用のSD地図のデータを取得する。
【0028】
ECU22は、第一の領域の地図をHD地図タイルのデータにて形成し、第二の領域の地図をADAS地図タイルのデータにて形成し、第三の領域の地図をSD地図タイルのデータにて形成することにより、走行制御用地図データを形成する。更に、ECU22は、形成した走行制御用地図データを記憶装置50に格納する。
【0029】
図4は、実施形態における走行制御用地図データ60の例の一部を示している。図4において、62は車両14の目標走行経路を示しており、64~68はそれぞれHD地図タイル、ADAS地図タイル及びSD地図タイルを示している。なお、図4に示された目標走行経路62は直線状をなしているが、曲線状をなしていてもよい。各タイルは一辺が2kmの正方形をなしているが、一辺の長さは2km以外の値であってもよい。また、各タイルの縦の辺及び横の辺、それぞれ南北方向及び東西方向に整合しているが、他の方向に整合していてもよい。
【0030】
図4に示された例においては、目標走行経路62の両側の幅1kmの範囲が第一の領域70であり、第一の領域70の両側の幅2kmの範囲が第二の領域72であり、第二の領域72の両側の幅2kmの範囲が第三の領域74である。なお、走行制御用の地図データ60は、目標走行経路62の両側の幅が5kmであるが、5km以外の値であってもよい。また、第一乃至第三の領域70~74の幅は2km以外の値であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0031】
更に、ECU22は、車両の走行制御を実行する際には、車両14の現在地から所定の範囲内の走行制御用の地図データ60を記憶装置50から読み出してRAMに格納する。ECU22は、RAMに格納された走行制御用の地図データに基づいて車両14が目標走行経路62に沿って走行するよう、EPS・ECU44、エンジンECU46及びブレーキECU48に必要な指令信号を出力する自動運転の制御を行う。自動運転の制御においては、カメラセンサ36及びレーダセンサ38により取得された情報も使用される。なお、自動運転の制御は、当技術分野において公知の任意の要領にて行われてよい。
【0032】
<走行制御用地図データの形成及び車両の走行制御>
次に、図2に示されたフローチャートを参照して実施形態における走行制御用地図データの形成及び車両の走行制御のルーチンについて説明する。なお、図2に示されたフローチャートによる制御は、図1には示されていないイグニッションスイッチがオンである状況にて、図1には示されていない自動運転スイッチがオンであるときに、CPUによって所定の時間毎に繰返し実行される。
【0033】
まず、ステップ10においては、CPUは、ナビゲーション装置20から車両14の目標走行経路62を取得し、記憶装置50に格納する。なお、CPUは、後述のステップ70又は90が完了した後にステップ10を実行する際には、ナビゲーション装置20から車両14の目標走行経路62を取得し直す。
【0034】
ステップ20においては、CPUは、例えば図4に示されているように、目標走行経路62及びその周囲を第一の領域70に設定する。更に、CPUは、第一の領域70よりも目標走行経路62から遠い領域を第二の領域72に設定し、第二の領域7よりも目標走行経路62から遠い領域を第三の領域74に設定する。
【0035】
ステップ30においては、CPUは、地図サーバ18からそれぞれ第一の領域70及び第二の領域72用のHD地図タイル64のデータ及びADAS地図タイル66のデータをダウンロードにより取得する。また、CPUは、ナビゲーション装置20から第三の領域74用のSD地図タイル68のデータを取得する。更に、取得した三種類の地図タイルのデータを対応する第一乃至第三の領域70~74に適用することにより、走行制御用地図データ60を形成し、形成した走行制御用地図データ60を記憶装置50に格納する。
【0036】
ステップ40においては、CPUは、車両14の現在地から所定の範囲内の走行制御用地図データ60を記憶装置50から読み出してRAMに格納し、走行制御用の地図データに基づいて車両14が目標走行経路62に沿って走行するよう、自動運転の制御を行う。
【0037】
ステップ50においては、CPUは、車両14がナビゲーション装置20において設定された目的地に到達したか否かを判定する。CPUは、車両14が目的地に到達したと判定したときには、図2に示されたフローチャートによる制御を終了する。これに対し、CPUは、車両14が目的地に到達していないと判定したときには、制御をステップ60へ進める。
【0038】
ステップ60においては、CPUは、車両14が目標走行経路62に沿って走行しているか否かを判定する。CPUは、車両14が目標走行経路62に沿って走行していると判定したときには、制御をステップ40へ戻す。これに対し、CPUは、車両14が目標走行経路62に沿って走行していないと判定したときには、制御をステップ70へ進める。
【0039】
ステップ70においては、CPUは、車両14がHD地図タイル64の領域、即ち第一の領域70を走行しているか否かを判定する。CPUは、車両14がHD地図タイル64の領域を走行していると判定したときには、制御をステップ10へ戻す。これに対し、CPUは、車両14がHD地図タイル64の領域を走行していないと判定したときには、制御をステップ80へ進める。
【0040】
ステップ80においては、CPUは、図1には示されていない警報装置を作動させることにより、車両14の走行制御モードが自動運転以外の制御モードに変更される旨の警報を発生する。なお、警報は、警報音のような聴覚警報、ディスプレイのような視覚警報、振動のような体感警報の何れであってもよい。
【0041】
ステップ90においては、CPUは、車両14の走行制御モードを高精度運転支援の制御モードに変更する。なお、高精度運転支援の制御モードにおいては、ADAS地図のデータを使用して車両14の走行が制御される。高精度運転支援は、例えば車線維持制御のように、ADAS地図のデータを使用して車両が車線を逸脱しないよう運転者の運転を支援する任意の運転支援であってよい。
【0042】
以上の説明から解るように、本実施形態によれば、地図データは、第一の地図データとしての地図タイル64と、地図タイル64よりも精度が低い第二の地図データとしての地図タイル66と、地図タイル66よりも精度が低い第三の地図データとしての地図タイル68とよりなっている。目標走行経路62及び目標走行経路の周囲である第一の領域70の地図が地図タイル64にて形成され、第一の領域よりも目標走行経路62から遠い第二の領域72の地図が地図タイル66にて形成される。更に、第二の領域よりも目標走行経路62から遠い第三の領域74の地図が地図タイル68にて形成され、これにより走行制御用地図データ60が形成される。
【0043】
従って、走行制御用地図データ60の全体が第一の地図データとしての地図タイル64にて形成される場合に比して、地図データのデータ量の大きさを小さくすることができるので、地図データを記憶する記憶装置50の記憶容量を小さくすることができる。また、目標走行経路62及び目標走行経路の周囲である第一の領域70の地図が地図タイル64にて形成されるので、自動運転の精度を低下させることなく地図データのデータ量の大きさを小さくすることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、第一の領域70の地図が地図タイル64にて形成され、第二の領域72の地図が地図タイル66にて形成され、第三の領域74の地図が地図タイル68にて形成される。従って、走行制御用地図データ60が第一及び第二の領域よりなり、第一及び第二の領域の地図が、精度及びデータ量の大きさが異なる二種類の地図タイルにて形成される場合に比して、目標走行経路62から遠くなる方向の精度の低下を穏やかにすることができる。
【0045】
図6は、従来の走行制御用地図データ制御装置における走行制御用地図データ60の例の一部を示す図4と同様の図である。従来の走行制御用地図データ制御装置の場合には、第一乃至第三の領域に相当する領域全体の地図が地図タイル64にて形成される。よって、図7に示されているように、第一乃至第三の領域に相当する領域全体の地図データのデータ量の大きさが大きくなる。
【0046】
これに対し、実施形態によれば、第一乃至第三の領域70~74の地図が、それぞれ地図タイル64~68にて形成されるので、図5に示されているように、従来の走行制御用地図データ制御装置の場合(仮想線)に比して、第一及び第二の領域の地図データのデータ量の大きさを小さくすることができる。
【0047】
<変形例>
図3は、変形例における走行制御用地図データの形成及び車両の走行制御のルーチンの要部を示すフローチャートである。この変形例は、車両14の現在地から目的地までの距離が長い場合に適している。なお、図3において、図2に示されたステップと同一のステップには、図2において付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
【0048】
図3図2との比較から解るように、ステップ10、20、40、50、60~90は実施形態の対応するステップと同様に実行される。CPUは、ステップ20を完了すると、ステップ35を実行し、ステップ50を完了すると、ステップ55を実行する。た
【0049】
ステップ35においては、CPUは、車両14の現在地から予め設定された所定の距離の範囲について、地図サーバ18からそれぞれ第一の領域70及び第二の領域72用のHD地図タイル64のデータ及びADAS地図タイル66のデータをダウンロードにより取得する。また、CPUは、所定の距離の範囲について、ナビゲーション装置20から第三の領域74用のSD地図タイル68のデータを取得する。更に、取得した三種類の地図タイルのデータを対応する第一乃至第三の領域70~74に適用することにより、走行制御用地図データ60を形成し、形成した走行制御用地図データ60を記憶装置50に格納する。
【0050】
ステップ55においては、CPUは、走行制御用地図データ60の更新が必要であるか否かを判定する。なお、地図データ60の更新が必要であるか否かを判定は、例えば車両14の現在地から所定の距離の範囲の境界までの目標走行経路62に沿う距離Lが基準値Lc以下であるか否かの判定により行われてよい。基準値Lcは正の定数であってもよいが、車両14の車速が高いほど大きくなるよう、車速に応じて可変設定されてもよい。
【0051】
この変形例によれば、現在地から予め設定された所定の距離の範囲について走行制御用地図データが形成される。よって、例えば現在地から目的地までの所定の距離範囲について走行制御用地図データ60が形成される実施形態に比して、地図データのデータ量の大きさを小さくすることができ、記憶装置50の記憶容量を更に小さくすることができる。
また、上述のように、地図データ60の更新が必要であるか否かを判定が、車両14の現在地から所定の距離の範囲の境界までの目標走行経路62に沿う距離Lが基準値Lc以下であるか否かの判定により行われてよい。その場合には、車両の現在地から所定の距離の範囲の境界までの目標走行経路に沿う距離の如何に関係なく走行制御用地図データが更新される場合に比して、走行制御用地図データの更新の頻度を低減することができる。
更に、車両14の車速が高いほど基準値Lcが大きくなるよう、車速に応じて基準値が可変設定される場合には、車速が高いほど基準値を大きくすることにより、走行制御用地図データを早く更新し、走行制御用地図データの更新が遅れる虞を低減することができる。
【0052】
図8は、変形例における走行制御用地図データ60の例の一部を示す図4と同様の図である。図8図4との比較から、変形例によれば、実施形態に比して目標走行経路62に沿う地図タイル64~68の数を少なくすることができることが解る。よって、図9に示されているように、地図データのデータ量の大きさを実施形態に比して小さくすることができることが解る。なお、図9において、仮想線は実施形態における地図データのデータ量の大きさを示している。
【0053】
以上においては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0054】
例えば、上述の実施形態及び変形例においては、第一乃至第三の領域70~74にそれぞれHD地図タイル64のデータ、ADAS地図タイル66のデータ及びSD地図タイル68のデータを適用することにより、走行制御用地図データ60が形成される。しかし、走行制御用地図データ60は第一及び第二領域のみよりなっていてもよい。その場合、第一及び第二領域にそれぞれHD地図タイル64のデータ及びADAS地図タイル66のデータが適用されてよく、それぞれADAS地図タイル66のデータ及びSD地図タイル68のデータが適用されてもよく、更には、HD地図タイル64のデータ及びSD地図タイル68が適用されてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態及び変形例においては、走行制御ECU22は車両14の走行制御を行うと共に、走行制御用地図データの形成を行う。しかし、走行制御用地図データの形成は、車両14の走行制御を行うECUとは別のECUにより行われてもよい。
【0056】
更に、上述の実施形態及び変形例においては、SD地図タイル68のデータはナビゲーション装置20の記憶装置に記憶されている。しかし、SD地図タイル68のデータも地図サーバ18の記憶装置に記憶されていてもよい。逆に、ADAS地図タイル66のデータが車載の記憶装置に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…走行制御用地図データ制御装置、12…走行制御装置、14…車両、18…地図サーバ、20…ナビゲーション装置、22…走行制御電子制御ユニット(ECU)、26…HD地図のデータベース、30…ADAS地図のデータベース、34…SD地図のデータベース、60…走行制御用地図データ、62…目標走行経路、64…HD地図タイル、66…ADAS地図タイル、68…SD地図タイル、70…第一の領域、72…第二の領域、74…第三の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9