(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】払戻装置、払戻方法、および払戻プログラム
(51)【国際特許分類】
G07B 15/00 20110101AFI20241106BHJP
G07B 11/11 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G07B15/00 J
G07B11/11
(21)【出願番号】P 2021035912
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 健
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-134629(JP,A)
【文献】特開平7-85324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 11/00 - 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗車券の券面に形成された光学的読取コードが示す第1乗車券情報を読み取るコード読取部と、
前記第1乗車券情報に基づき、この第1乗車券情報を読み取った乗車券が磁気データで第2乗車券情報が記録された磁気光学併用券であるかどうかを判定する判定部と、
前記判定部によって前記磁気光学併用券であると判定された乗車券が投入口に投入されたことを条件に、その乗車券の価値に対する払い戻しを行う払戻部と、
前記第1乗車券情報を読み取った乗車券に対して、前記払戻部によって払い戻しが行われると、この乗車券の無効化を上位装置に指示する指示部と、を備えた払戻装置。
【請求項2】
前記払戻部は、前記判定部によって前記磁気光学併用券でないと判定され乗車券については、前記投入口に投入されなくても、その乗車券の価値に対する払い戻しを行う、請求項1に記載の払戻装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1乗車券情報に含まれる券種コードによって、この第1乗車券情報を読み取った乗車券が前記磁気光学併用券であるかどうかを判定する、請求項1、または2に記載の払戻装置。
【請求項4】
前記第1乗車券情報は、識別番号、発券日時、発券駅、および発券金額を示す情報を含み、
前記第2乗車券情報は、発券日時、発券駅、発券金額、および使用状態を示す情報を含み、識別番号を示す情報を含まない請求項1~3のいずれかに記載の払戻装置。
【請求項5】
前記投入口に投入された乗車券が前記磁気光学併用券であると、この乗車券から前記第2乗車券情報を読み取る磁気データ読取部を備え、
前記払戻部は、前記コード読取部が読み取った前記第1乗車券情報と、前記磁気データ読取部が読み取った前記第2乗車券情報と、を突き合せて、前記投入口に投入された乗車券が前記第1乗車券情報を読み取った乗車券であると判定すると、この乗車券の価値に対する払い戻しを行う、請求項1~4のいずれかに記載の払戻装置。
【請求項6】
前記払戻部は、前記投入口に投入された乗車券が前記第1乗車券情報を読み取った乗車券でないと判定すると、その旨を出力する出力部を備えた請求項5に記載の払戻装置。
【請求項7】
コード読取部で、乗車券の券面に形成された光学的読取コードが示す第1乗車券情報を読み取るコード読取ステップと、
前記第1乗車券情報に基づき、この第1乗車券情報を読み取った乗車券が磁気データで第2乗車券情報が記録された磁気光学併用券であるかどうかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで、前記磁気光学併用券であると判定した乗車券が投入口に投入されたことを条件に、その乗車券の価値に対する払い戻しを行う払戻ステップと、
前記第1乗車券情報を読み取った乗車券に対して、前記払戻ステップで払い戻しが行われると、この乗車券の無効化を上位装置に指示する指示ステップと、
をコンピュータが実行する払戻方法。
【請求項8】
コード読取部で、乗車券の券面に形成された光学的読取コードが示す第1乗車券情報を読み取るコード読取ステップと、
前記第1乗車券情報に基づき、この第1乗車券情報を読み取った乗車券が磁気データで第2乗車券情報が記録された磁気光学併用券であるかどうかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで、前記磁気光学併用券であると判定した乗車券が投入口に投入されたことを条件に、その乗車券の価値に対する払い戻しを行う払戻ステップと、
前記第1乗車券情報を読み取った乗車券に対して、前記払戻ステップで払い戻しが行われると、この乗車券の無効化を上位装置に指示する指示ステップと、
をコンピュータに実行させる払戻プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、利用者が誤購入したキップ等の乗車券に対して払い戻しを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者が誤購入したキップ等の乗車券を回収して、この乗車券に対する払い戻しを行う機能を備えた券売機があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
鉄道会社は、運用コストを低減させる対応の1つとして、磁気券を光学的読取券に切り替える(磁気券を廃止する)ことを検討している。非接触式のICカードの普及により、現在使用されている磁気券の多くは、利用者が券売機で購入したキップである。光学的読取券とは、乗車券情報を示す光学的読取コード(例えば、QRコード(登録商標)等の二次元バーコード)を券面に形成(印字)した乗車券である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各駅に設置されている駅務機器(自動改札機、券売機、精算機等)が、光学的読取券を処理できる構成のものに置き換えられ、各駅で光学的読取券を処理できるシステムが構築されなければ、磁気券を廃止することはできない。すなわち、磁気券の廃止には、ある程度の移行期間を要する。この移行期間は、光学的読取券を処理できる駅務機器が設置された駅と、光学的読取券を処理できる駅務機器が設置されていない駅と、が混在した運用環境になる。このことから、駅務システムの移行期間には、利用者が利用する駅務機器に応じて、磁気券、または光学的読取券として選択的に使用できる乗車券(ここでは、磁気光学併用券と言う。)が用いて運用されることになる。
【0006】
ここで言う、光学的読取券を処理できる駅務機器とは、磁気券が処理できない機器を指すわけではない(磁気券を処理するための構成を有していてもよい。)。また、駅務システムの移行期間に使用される乗車券は、磁気光学併用券に限られるわけでない(磁気券や光学的読取券も使用される。)。
【0007】
駅務システムの移行期間には、利用者が誤って購入した磁気光学併用券に対する払い戻しが行える装置が必要になる。
【0008】
この発明の目的は、磁気光学併用券に対する払い戻しを、不正行為に対するセキュリティを確保して行える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の払戻装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0010】
コード読取部は、乗車券の券面に形成された光学的読取コード(例えば、QRコード(登録商標)等の二次元バーコード)が示す第1乗車券情報を読み取る。判定部は、第1乗車券情報に基づき、この第1乗車券情報を読み取った乗車券が磁気データで第2乗車券情報が記録された磁気光学併用券であるかどうかを判定する。払戻部は、判定部によって磁気光学併用券であると判定された乗車券が投入口に投入されたことを条件に、その乗車券の価値に対する払い戻しを行う。さらに、指示部が、払戻部が第1乗車券情報を読み取った乗車券に対して払い戻しを行うと、この乗車券の無効化を上位装置に指示する。
【0011】
この構成では、磁気光学併用券に対して払い戻しを行うとき、磁気光学併用券を回収する。また、指示部が、払い戻しを行った磁気光学併用券を無効化することを上位装置に指示する。これにより、払い戻しを行った磁気光学併用券の券面に形成されていた光学的読取コードが、払い戻し前(回収される前)に、コピー等によって複製されていても、複製された光学的読取コードで鉄道を不正に利用することはできない。また、磁気光学併用券は、回収されるので、磁気券として使用されることもない。
【0012】
また、磁気光学併用券ではなく、光学的読取券については、払い戻しを行うときに回収してもよいし、回収しなくてもよい。但し、指示部が、払い戻しを行った光学的読取券を無効化することを上位装置に指示する。
【0013】
このように、磁気光学併用券に対する払い戻しを、不正行為に対するセキュリティを確保して行える。
【0014】
また、判定部は、例えば、第1乗車券情報に含まれる券種コードによって、この第1乗車券情報を読み取った乗車券が磁気光学併用券であるかどうかを判定する構成であってもよい。この場合、券面に形成されている光学的読取コードが示す情報に、磁気光学併用券であるかどうかを示す情報を含ませておいてもよい。
【0015】
また、例えば、第1乗車券情報は、識別番号、発券日時、発券駅、および発券金額を示す情報を含み、第2乗車券情報は、発券日時、発券駅、発券金額を示す情報を含み、識別番号を示す情報を含まない。
【0016】
また、例えば、投入口に投入された乗車券が磁気光学併用券であると、この乗車券から第2乗車券情報を読み取る磁気データ読取部を備え、
払戻部は、コード読取部が読み取った第1乗車券情報と、磁気データ読取部が読み取った第2乗車券情報と、を突き合せて、投入口に投入された乗車券が第1乗車券情報を読み取った乗車券であると判定すると、この乗車券の価値に対する払い戻しを行う、構成にしてもよい。
【0017】
このように構成すれば、払い戻しを行う磁気光学併用券を確実に回収できる。
【0018】
また、例えば、払戻部は、投入口に投入された乗車券が第1乗車券情報を読み取った乗車券でないと判定すると、その旨を出力する出力部を備えてもよい。
【0019】
このように構成すれば、磁気光学併用券の払い戻しを、不正に行っている者の存在を駅係員等に知らせることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、磁気光学併用券に対する払い戻しを、不正行為に対するセキュリティを確保して行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この例の払戻装置を適用した駅務システムの構成を示す概略図である。
【
図2】この例の払戻機の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図4】この例の払戻機の動作を示すフローチャートである。
【
図5】変形例1の払戻機の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図6】変形例1の払戻機の動作を示すフローチャートである。
【
図7】変形例2の払戻機の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図8】変形例2の払戻機の動作を示すフローチャートである。
【
図9】変形例3の払戻機の動作を示すフローチャートである。
【
図10】変形例4の払戻機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0023】
<1.適用例>
図1は、この例の払戻機を適用した駅務システムの構成を示す概略図である。駅には、払戻機1、券売機2、および自動改札機3等の駅務機器が設置されている。
図1では、A駅、およびB駅の2つの駅を例示している。この駅務システムに属する駅が、A駅、およびB駅の2つの駅であるという意味ではない。また、各駅に設置されている払戻機1、券売機2、および自動改札機3は、1台であってもよいし、複数台であってもよい。また、
図1では、特に図示していないが、各駅には、精算機、チャージ機等の他の種類の駅務機器も設置されている。
【0024】
各駅に設置されている払戻機1、券売機2、自動改札機3等の駅務機器は、ネットワーク5を介して上位装置4と通信可能に接続されている。
【0025】
券売機2は、利用者に対してキップ等の乗車券を発券する。券売機2毎に、その券売機2が発券する乗車券の種類は決まっている。ここで言う乗車券の種類とは、磁気券、光学的読取券、および磁気光学併用券である。自動改札機3は、利用者に対して改札処理を行う。自動改札機3毎に、その自動改札機3で改札処理に使用できる乗車券の種類(1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。)は決まっている。払戻機1は、券売機2で乗車券として発券された光学的読取券、および磁気光学併用券に対して払い戻しを行う。
【0026】
この例で言う磁気券は、乗車券情報を磁気データで記録した乗車券である(以下で説明する光学的読取コードが券面に形成されていない乗車券である。)。ここでは、光学的読取コードが示す乗車券情報と区別するため、磁気データで記録されている乗車券情報を第2乗車券情報と言う。磁気券は、磁気データの記録容量が比較的小さい。このため、第2乗車券情報には、発券駅(券売機2が設置されている駅)、発券日時、発券金額、および使用状態が含まれているが、磁気券の識別番号が含まれていない。磁気券は、券面に識別番号が印字されている。また、使用状態は、未使用状態(駅への入場に使用されていない状態)、入場済み状態(駅への入場に使用され、駅からの出場に使用されていない状態)、出場済み状態(駅への入場、および駅からの出場に使用された状態)の3つである。自動改札機3は、改札処理で磁気券として使用された乗車券に対して、磁気データで記録されている使用状態を書き換える(更新する)。また、自動改札機3は、改札処理で磁気券として使用された乗車券に対して、磁気データで記録されている使用状態を書き換えることなく、その乗車券を回収することもある。改札処理で磁気券として使用できる乗車券は、磁気券、および磁気光学併用券である。
【0027】
光学的読取券は、券面に乗車券情報を示す光学的読取コード(例えば、QRコード(登録商標)等の二次元バーコード)が形成されている。光学的読取券は、乗車券情報が磁気データで記録されていない乗車券である。ここでは、磁気データで記録されている乗車券情報と区別するため、光学的読取コードが示す乗車券情報を第1乗車券情報と言う。自動改札機3等の駅務機器は、光学的読取券に対して使用状態を書き換える(更新する)ことはできない。光学的読取券の使用状態は、上位装置4において管理される。具体的には、上位装置4が光学的読取券の識別番号と、その光学的読取券の使用状態とを対応付けて管理する。光学的読取コードが示す第1乗車券情報には、発券駅、発券日時、発券金額、識別番号、券種(光学的読取券、または磁気光学併用券)等が含まれているが、上記した通り使用状態が含まれていない。
【0028】
磁気光学併用券は、上記した第1乗車券情報を示す光学的読取コードが券面に形成されているとともに、第2乗車券情報が磁気データ記録されている乗車券である。上位装置4は、磁気光学併用券の識別番号と、使用状態とを対応付けて管理する。但し、磁気光学併用券は、磁気券として自動改札機3で使用されると、実際の使用状態(磁気データで記録されている使用状態)と、上位装置4で管理している使用状態とが相違する。また、磁気光学併用券は、光学的読取券として自動改札機3で使用されると、実際の使用状態(上位装置4で管理している使用状態)と、磁気データで記録されている使用状態とが相違する。
【0029】
上位装置4は、券売機2から光学的読取券、または磁気光学併用券の発券通知を受信すると、識別番号、使用状態(この時点では、未使用状態)、および無効化フラグ(この時点では、有効を示す「0」)を対応づけて記憶する。
【0030】
また、上位装置4は、自動改札機3から光学的読取券、または磁気光学併用券について使用状態の更新通知を受信すると、対応する光学的読取券、または磁気光学併用券の使用状態を通知された状態に更新する。また、上位装置4は、払戻機1から光学的読取券、または磁気光学併用券について払戻通知を受信すると、対応する光学的読取券、または磁気光学併用券の無効化フラグを、有効を示す「0」から無効を示す「1」に更新する。
【0031】
上位装置4は、駅務機器から、光学的読取券、または磁気光学併用券について状態の問い合わせがあると、使用状態、および無効化フラグの値を駅務機器に回答する。
【0032】
払戻機1は、乗車券の券面に形成されている光学的読取コードを読み取り、この乗車券が光学的読取券、または磁気光学併用券のどちらであるかを判定する。払戻機1は、光学的読取コードを読み取った乗車券が光学的読取券であれば、その乗車券の状態を上位装置4から取得する。払戻機1は、光学的読取コードを読み取った光学的読取券の使用状態が未使用状態であり、且つ無効化フラグが「0」であれば、この乗車券に対して払い戻しを行う。また、払戻機1は、上位装置4に対して、今回払い戻しを行った乗車券の払戻通知を送信する。上位装置4は、払戻機1から払戻通知を受信した乗車券の無効化フラグを「1」に更新する。
【0033】
また、払戻機1は、光学的読取コードを読み取った乗車券が磁気光学併用券であれば、その乗車券の状態を上位装置4から取得する。払戻機1は、光学的読取コードを読み取った磁気光学併用券の使用状態が未使用状態であり、且つ無効化フラグが「0」であれば、この乗車券が投入口から払戻機1本体に投入されるのを待つ。払戻機1は、乗車券が投入口に投入されると、この乗車券に対して払い戻しを行う。また、払戻機1は、上位装置4に対して、今回払い戻しを行った乗車券の払戻通知を送信する。上位装置4は、払戻機1から払戻通知を受信した乗車券の無効化フラグを「1」に更新する。
【0034】
このように、払戻機1は、磁気光学併用券については、払い戻し時に回収するので、払い戻しを行った磁気光学併用券が磁気券として駅務機器で使用されるのを防止できる。すなわち、払戻機1は、磁気光学併用券に対する払い戻しを、不正行為(磁気券としての不正利用)に対するセキュリティを確保して行える
なお、払戻機1は、光学的読取券についても、払い戻し時に回収する構成であってもよい。
【0035】
<2.構成例>
図2は、払戻機の主要部の構成を示すブロック図である。
図3は、払戻機の外観を示す概略図である。この例の払戻機1は、制御ユニット11と、コード読取部12と、回収部13と、表示・操作部14と、貨幣処理部15と、通信部16とを備えている。
【0036】
制御ユニット11は、払戻機1本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット11は、判定部11a、払戻部11b、および指示部11cを有する。制御ユニット11が有する判定部11a、払戻部11b、および指示部11cについては、後述する。
【0037】
コード読取部12は、読取領域12aに翳された光学的読取コードを撮像し、撮像した光学的読取コードが示す情報を取得する。読取領域12aは、
図3に示すように、払戻機1の前面に設けられている。
【0038】
回収部13は、投入口13aに投入された乗車券を本体内部に設けた回収ボックス(不図示)に搬送し回収する。投入口13aは、
図3に示すように、払戻機1の前面に設けられている。
【0039】
表示・操作部14は、利用者に対する操作案内画面を表示器14aに表示するとともに、払戻機1本体に対する利用者の入力操作を受け付ける。表示器14aは、
図3に示すように、払戻機1の前面に設けられている。また、表示器14aの画面上には、タッチパネル14bが貼付されている。表示・操作部14は、タッチパネル14b上の押圧位置を検知することにより、利用者の入力操作を検知する。また、表示・操作部14は、利用者が入力操作を行うボタンも有している。
【0040】
貨幣処理部15は、紙幣、および硬貨を利用者に放出する。紙幣は、紙幣放出口15aに放出され、硬貨は硬貨受け皿15bに放出される。紙幣放出口15a、および硬貨受け皿15bは、
図3に示すように、払戻機1の前面に設けられている。
【0041】
通信部16は、ネットワーク5を介した上位装置4との通信を実行する。
【0042】
次に、制御ユニット11が有する判定部11a、払戻部11b、および指示部11cについて説明する。
【0043】
判定部11aは、コード読取部12において読み取った光学的読取コードが乗車券にかかるものであるかどうか(光学的読取券、または磁気光学併用券の券面に印字されている光学的読取コードであるかどうか)を判定する。この判定は、読み取った光学的読取コードが示す情報が、乗車券情報であるかどうかによって行える。
【0044】
また、判定部11aは、読み取った光学的読取コードが乗車券にかかるものであれば、その光学的読取コードが券面に印字されている乗車券が光学的読取券、または磁気光学併用券のどちらであるかを判定する。乗車券の券面に形成されている光学的読取コードが示す情報には、その乗車券の券種(光学的読取券、または磁気光学併用券)を示す情報が含まれている。
【0045】
また、判定部11aは、払い戻しを要求された乗車券に対して、その乗車券の価値に相当する貨幣の払い戻しを許可するかどうかの判定も行う。
【0046】
払戻部11bは、利用者に対して払い戻す金額(払戻金額)を算出する。払戻部11bは、算出した払戻金額を放出することを貨幣処理部15に指示する。払戻金額は、例えば、今回払い戻す乗車券の発券金額と同じ金額(価値)である。
【0047】
指示部11cは、通信部16を制御して、払い戻しを行った乗車券の払戻通知を上位装置4に送信させる。
【0048】
払戻機1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる払戻プログラムを実行したときに、判定部11a、払戻部11b、および指示部11cとして動作する。また、メモリは、この発明にかかる払戻プログラムを展開する領域や、この払戻プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる払戻方法を実行するコンピュータである。
【0049】
<3.動作例>
図4は、この例の払戻機の動作を示すフローチャートである。払戻機1は、コード読取部12において、光学的読取コードの読み取りが行われるのを待つ(s1)。利用者が、光学的読取コードを読取領域12aに翳すことにより、コード読取部12において、光学的読取コードの読み取りが行われる。
【0050】
判定部11aは、s1で、読み取ったのが乗車券(光学的読取券、または磁気光学併用券)の光学的読取コードであるかどうかを判定する(s2)。判定部11aは、s2で、今回読み取った光学的読取コードが示す情報が第1乗車券情報であるかどうかを判定する。払戻機1は、判定部11aが乗車券でないと判定すると、本処理を終了し、s1に戻る。
【0051】
払戻機1は、判定部11aが乗車券であると判定すると、その乗車券の状態を上位装置4に問い合わせ(s3)、その応答を待つ(s4)。払戻機1は、通信部16において上位装置4と通信する。s3で、上位装置4に送信する状態の問い合わせには、今回光学的読取コードを読み取った乗車券の識別番号が含まれている。
【0052】
払戻機1は、s4で、上位装置4からの応答を受信すると、判定部11aが、使用状態が未使用状態であり、且つ無効化フラグが「0」の有効券かどうかを判定する(s5)。払戻機1は、判定部11aが未使用状態でない、または有効券でないと判定すると、本処理を終了し、s1に戻る。
【0053】
判定部11aは、未使用状態であり、且つ有効券であると判定すると、今回光学的読取コードを読み取った乗車券が光学的読取券、または磁気光学併用券のどちらであったかを判定する(s6)。乗車券の券種は、今回読み取った光学的読取コードが示す第1乗車券情報に含まれている。
【0054】
判定部11aは、s6で磁気光学併用券であると判定すると、今回光学的読取コードを読み取った乗車券が投入口13aに投入され、回収部13によって回収されるのを待つ(s7、s8)。払戻機1は、回収部13が今回光学的読取コードを読み取った乗車券を回収すると、s9以降の処理を実行する。
【0055】
また、払戻機1は、s6で、判定部が光学的読取券であると判定すると、s7、s8の処理を行わず、s9以降の処理を実行する。
【0056】
s9では、払戻部11bが、今回光学的読取コードを読み取った乗車券の価値(発券金額)に応じた金額を払い戻し金額として算出し、貨幣処理部15に対して、算出した払い戻し金額の貨幣の放出を指示する。貨幣処理部15は、この指示にしたがって、紙幣、および硬貨の放出を行う。すなわち、今回光学的読取コードを読み取った乗車券の価値に相当する貨幣が利用者に放出される。
【0057】
また、払戻機1は、指示部11cが、通信部16を制御して、今回光学的読取コードを読み取った乗車券の無効化を指示する無効化通知を上位装置4に送信し(s10)、s1に戻る。上位装置4は、無効化通知を受信すると、対応する乗車券の無効化フラグを「0」から「1」に更新する。
【0058】
このように、利用者は、光学的読取券、または磁気光学併用券を誤購入したとき、払戻機1において、誤購入した光学的読取券、または磁気光学併用券の払い戻しを行える。したがって、利用者の利便性の向上が図れるとともに、利用者が誤購入した光学的読取券、または磁気光学併用券の払い戻しに対応する駅係員の手間も削減できる。
【0059】
また、払戻機1は、払い戻しを行った乗車券(光学的読取券、および磁気光学併用券)については、上位装置4に無効化を指示するので、その光学的読取コードがコピー等によって複製されていても、その複製された光学的読取コードを自動改札機3等の駅務機器で不正に使用されるのを防止できる。駅務機器は、光学的読取コードを読み取ると、上位装置4に対して状態の問い合わせを行い、上位装置4からの応答(上位装置4から通知された状態)に基づいて駅務処理を行う。
【0060】
さらに、払戻機1は、磁気光学併用券については、払い戻しを行うときに回収するので、この磁気光学併用券が磁気券として不正に使用されるのを防止できる。すなわち、払戻機1は、磁気光学併用券に対する払い戻しを、不正行為に対するセキュリティを確保して行える。
【0061】
なお、上記の例では、払戻機1は、光学的読取券については、払い戻し時に回収しない構成として説明したが、光学的読取券についても、磁気光学併用券と同様に回収してもよい。また、
図4に示したs1~s10にかかる処理の順番は、あくまでも1例であり、その順番については、運用環境等に応じて適宜入れ替えてもよい。
【0062】
<4.変形例>
・変形例1
図5は、変形例1の払戻機の主要部の構成を示すブロック図である。この変形例1の払戻機1Aは、上記した例の回収部13を、磁気処理部17に置き換えた構成である。この磁気処理部17は、上記した回収部13と同様に、投入口13aに投入された乗車券を本体内部に設けた回収ボックスに搬送し回収する機能を有している。また、磁気処理部17は、回収ボックスへ搬送している乗車券に磁気ヘッドを当接させ、この乗車券に磁気データで記録されている第2乗車券情報を読み取る構成を有している。
【0063】
図6は、この変形例1の払戻機の動作を示すフローチャートである。
図6では、
図4と同じ処理については、同じステップ番号を付している。また、ここでは、
図4に示した処理と同じ処理については、その説明を省略する。
【0064】
この変形例1の払戻機1Aは、上記した例と同様に、s1~s6にかかる処理を実行し、s7で、乗車券(磁気光学併用券)が投入口13aに投入されるの待つ。払戻機1Aは、投入口13aに投入され、回収ボックスへ搬送している乗車券に磁気ヘッドを当接させて、この乗車券に磁気データで記録されている第2乗車券情報を読み取る(s11)。判定部11aは、第2乗車券情報に含まれている乗車券の使用状態が未使用状態であるかどうかを判定する(s12)。このs12では、投入口13aに投入された磁気光学併用券が、すでに自動改札機3で磁気券として使用された乗車券であるかどうかを判定している。
【0065】
払戻機1Aは、s12で、判定部11aが未使用状態でないと判定すると、今回投入口13aに投入され第2乗車券情報を読み取った乗車券を利用者に返却し(s13)、s1に戻る。s13では、磁気処理部17が、乗車券を投入口13a(または、図示していない磁気券返却口)に搬送し、放出する。
【0066】
払戻機1Aは、s6で光学的読取券であると判定したとき、またはs12で未使用状態であると判定したとき、s8~s10にかかる処理を行う。
【0067】
この変形例1の払戻機1Aは、磁気券として使用された磁気光学併用券に対して、発券金額に相当する価値を払い戻すのを禁止できる。すなわち、この変形例1の払戻機1Aは、磁気券として使用した後に、磁気光学併用券の払い戻しを行うという、不正行為に対するセキュリティを確保できる。
【0068】
なお、
図6に示したs1~s13にかかる処理の順番は、あくまでも1例であり、その順番については、運用環境等に応じて適宜入れ替えてもよい。
【0069】
・変形例2
図7は、変形例2の払戻機の主要部の構成を示すブロック図である。この変形例2の払戻機1Bは、報知部18を追加的に備えている点で、上記した例の払戻機1Aと相違する。報知部18は、磁気券として使用した後に、磁気光学併用券の払い戻しを行うという、不正行為を駅係員等に通知するための構成である。例えば、報知部18は、警備室等に設けられた報知器に接続され、この報知器に対して報知信号を出力する。報知器は、報知信号が入力されると、警備室等に在室している駅係員に対して不正行為が行われている可能性を報知する。報知部18が、この発明で言う出力部に相当する。
【0070】
なお、報知器は、払戻機1Bに設けた表示ランプ等としてもよい。
【0071】
図8は、この変形例2の払戻機の動作を示すフローチャートである。
図8では、
図6と同じ処理については、同じステップ番号を付している。また、ここでは、
図6に示した処理と同じ処理については、その説明を省略する。
【0072】
この変形例2の払戻機1Bは、
図8に示すように、s14にかかる処理を追加的に実行する点で、変形例1の払戻機1Aと相違する。
【0073】
この変形例2の払戻機1Bは、判定部11aがすでに自動改札機3で磁気券として使用された乗車券であると判定すると、s13で今回投入口13aに投入された乗車券を利用者に返却するとともに、報知部18において、利用者が不正な払い戻し操作を行っている可能性があることを通知する報知信号を出力する(s14)。
【0074】
この変形例2の払戻機1Bは、磁気券として使用された磁気光学併用券に対して、発券金額に相当する価値を払い戻すのを禁止し、また、利用者が不正な払い戻しにかかる操作を行っている可能性があることを駅係員等に知らせることができる。
【0075】
なお、
図8に示したs1~s14にかかる処理の順番は、あくまでも1例であり、その順番については、運用環境等に応じて適宜入れ替えてもよい。
【0076】
・変形例3
この変形例3の払戻機1Aは、
図5に示した変形例1と同じ構成である。
図9は、この変形例3の払戻機の動作を示すフローチャートである。
図9では、
図6と同じ処理については、同じステップ番号を付している。また、ここでは、
図6に示した処理と同じ処理については、その説明を省略する。
【0077】
この変形例3の払戻機1Aは、s1~s7、およびs11にかかる処理を行うと、今回第1乗車券情報を読み取った乗車券と、投入口13aに投入された乗車券とが同じ乗車券であるかどうかを判定する(s21)。s21では、第1乗車券情報、および第2乗車券情報のそれぞれに含まれている、発券駅、発券日時、および発券金額を突き合せて、これらが一致していれば同じ乗車券であると判定する。
【0078】
この変形例3の払戻機1Aは、s21で同じ乗車券であると判定すると、s8~s10にかかる処理を行い、s1に戻る。また、この変形例3の払戻機1Aは、s21で同じ乗車券でないと判定すると、s13にかかる処理を行い、s1に戻る。
【0079】
この変形例3の払戻機1Aは、第1乗車券情報を読み取らせた乗車券が投入口13aに投入されなければ、払い戻し行わない。すなわち、この変形例3の払戻機1Aは、利用者が、乗車券でない紙媒体や、使用済みの乗車券等を投入口13aに投入して、第1乗車券情報を読み取らせた磁気光学併用券の発券金額に相当する価値の払い戻しを行うという、不正行為に対するセキュリティを確保できる。
【0080】
なお、
図9に示したs1~s11、s13、s21にかかる処理の順番は、あくまでも1例であり、運用環境等に応じて適宜入れ替えてもよい。
【0081】
変形例4
この変形例4の払戻機1Bは、
図7に示した変形例2と同じ構成である。
図10は、この変形例4の払戻機の動作を示すフローチャートである。
図10では、
図8と同じ処理については、同じステップ番号を付している。また、ここでは、
図8に示した処理と同じ処理については、その説明を省略する。
【0082】
この変形例4の払戻機1Bは、s1~s7、およびs11にかかる処理を行うと、変形例3の払戻機1Aと同様に、今回第1乗車券情報を読み取った乗車券と、投入口13aに投入された乗車券とが同じ乗車券であるかどうかを判定する(s21)。
【0083】
この変形例4の払戻機1Bは、s21で同じ乗車券であると判定すると、s8~s10にかかる処理を行い、s1に戻る。また、この変形例4の払戻機1Bは、s21で同じ乗車券でないと判定すると、s13にかかる処理を行う。また、この変形例4の払戻機1Bは、報知部18において、利用者が不正な払い戻し操作を行っている可能性があることを通知する報知信号を出力する(s14)。
【0084】
この変形例4の払戻機1Bは、変形例3の払戻機1Aと同様に、第1乗車券情報を読み取らせた乗車券が投入口13aに投入されなければ、払い戻し行わない。すなわち、この変形例3の払戻機1Aは、利用者が、乗車券でない紙媒体や、使用済みの乗車券等を投入口13aに投入して、第1乗車券情報を読み取らせた磁気光学併用券の発券金額に相当する価値の払い戻しを行うという、不正行為に対するセキュリティを確保できる。また、利用者が不正な払い戻しにかかる操作を行っている可能性があることを駅係員等に知らせることができる。
【0085】
なお、
図10に示したs1~s11、s13、s14、s21にかかる処理の順番は、あくまでも1例であり、その順番については、運用環境等に応じて適宜入れ替えてもよい。
【0086】
また、払戻機1は、券売機、精算機等の他の種類の駅務機器と一体化した機器として構成してもよい。より具体的には、払戻機1が、利用者に対して乗車券や、精算券を発券するための構成を備えていてもよい。
【0087】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0088】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
乗車券の券面に形成された光学的読取コードが示す第1乗車券情報を読み取るコード読取部(12)と、
前記第1乗車券情報に基づき、この第1乗車券情報を読み取った乗車券が磁気データで第2乗車券情報が記録された磁気光学併用券であるかどうかを判定する判定部(11a)と、
前記判定部(11a)によって前記磁気光学併用券であると判定された乗車券が投入口に投入されたことを条件に、その乗車券の価値に対する払い戻しを行う払戻部(11b)と、
前記第1乗車券情報を読み取った乗車券に対して、前記払戻部(11b)によって払い戻しが行われると、この乗車券の無効化を上位装置に指示する指示部(11c)と、を備えた払戻装置(1)。
【符号の説明】
【0089】
1、1A、1B…払戻機
2…券売機
3…自動改札機
4…上位装置
5…ネットワーク
11…制御ユニット
11a…判定部
11b…払戻部
11c…指示部
12…コード読取部
12a…読取領域
13…回収部
13a…投入口
14…操作部
14a…表示器
14b…タッチパネル
15…貨幣処理部
16…通信部
17…磁気処理部
18…報知部