(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ハイブリッド自動車
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20241106BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20241106BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20241106BHJP
F02P 5/15 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60W20/16 ZHV
B60K6/445
F02P5/15 E
(21)【出願番号】P 2021037075
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須 隼平
(72)【発明者】
【氏名】浅見 良和
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-214308(JP,A)
【文献】特開2016-113946(JP,A)
【文献】特開2007-32318(JP,A)
【文献】特開2013-19310(JP,A)
【文献】特開2012-51430(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3480046(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
F02P 5/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化触媒を有する浄化装置が取り付けられたエンジンと、
前記エンジンの出力軸に動力を入出力可能なモータと、
前記浄化触媒を暖機するための触媒暖機要求がなされている場合において、前記エンジンを負荷運転するアイドルオフのときには、前記モータで前記エンジンの回転数をフィードバック制御しながら、前記エンジンの点火時期が前記エンジンの暖機を促進するための第1点火時期となるように前記エンジンを制御し、前記エンジンをアイドル運転するアイドルオンのときには、前記モータを値0のトルク指令で制御しながら、前記エンジンの点火時期が前記第1点火時期と異なる第2点火時期となり且つ前記エンジンの回転数がアイドル回転数となるように前記エンジンを制御する制御装置と、
を備えるハイブリッド自動車であって、
前記制御装置は、
前記触媒暖機要求がなされている場合において、
前記アイドルオフのとき且つ前記モータのトルクに基づく前記エンジンの燃焼悪化条件が成立しているときには、前記モータのトルクを用いて演算される積分項を用いて前記エンジンの点火時期をフィードバック制御し、
前記アイドルオンのとき且つ前記エンジンの回転数に基づく前記燃焼悪化条件が成立しているときには、前記エンジンの回転数を用いて演算される前記積分項を用いて前記エンジンの点火時期をフィードバック制御し、
前記アイドルオンから前記アイドルオフに移行するときには、前記アイドルオフに移行する前の前記アイドルオン時の前記積分項を記憶し、その後、前記アイドルオンになったときには、記憶している前記アイドルオン時の前記積分項を用いて前記エンジンの点火時期を制御し、
前記アイドルオフから前記アイドルオンに移行するときには、前記アイドルオンに移行する前の前記アイドルオフ時の前記積分項を記憶し、その後、前記アイドルオフになったときには、記憶している前記アイドルオフ時の前記積分項を用いて前記エンジンの点火時期を制御する、
ハイブリッド自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと、モータと、を備えるハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車両としては、エンジンと、モータと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。エンジンは、走行用の動力を出力する。モータは、エンジンの出力軸に動力を入出力する。この車両では、触媒の暖機要求中は、モータでエンジンの回転数をフィードバック制御しながらエンジンの点火時期を遅角させる触媒暖機制御を実行する。そして、触媒暖機制御中に、モータの出力が所定の上限値を超えたときには、点火時期の遅角量を減らす。これにより、エンジンの失火を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド車両では、エンジンの燃焼の悪化を抑制するため、触媒暖機制御中にエンジンをアイドル運転するアイドルオン時には、エンジンの点火時期が、エンジンを負荷運転するアイドルオフ時の点火時期としての第1点火時期と異なる第2点火時期となるようにエンジンを制御することが考えられる。アイドルオンからアイドルオフへ移行するときやアイドルオフからアイドルオンに移行するときには、点火時期を適正に変化させて、エンジンの燃焼の悪化を抑制することが重要な課題として認識されている。
【0005】
本発明のハイブリッド車両は、エンジンの燃焼の悪化を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車両は、
浄化触媒を有する浄化装置が取り付けられたエンジンと、
前記エンジンの出力軸に動力を入出力可能なモータと、
前記浄化触媒を暖機するための触媒暖機要求がなされている場合において、前記エンジンを負荷運転するアイドルオフのときには、前記モータで前記エンジンの回転数をフィードバック制御しながら、前記エンジンの点火時期が前記エンジンの暖機を促進するための第1点火時期となるように前記エンジンを制御し、前記エンジンをアイドル運転するアイドルオンのときには、前記モータを値0のトルク指令で制御しながら、前記エンジンの点火時期が前記第1点火時期と異なる第2点火時期となり且つ前記エンジンの回転数がアイドル回転数となるように前記エンジンを制御する制御装置と、
を備えるハイブリッド自動車であって、
前記制御装置は、
前記触媒暖機要求がなされている場合において、
前記アイドルオフのとき且つ前記モータのトルクに基づく前記エンジンの燃焼悪化条件が成立しているときには、前記モータのトルクを用いて演算される積分項を用いて前記エンジンの点火時期をフィードバック制御し、
前記アイドルオンのとき且つ前記エンジンの回転数に基づく前記エンジンの燃焼悪化条件が成立しているときには、前記エンジンの回転数を用いて演算される積分項を用いて前記エンジンの点火時期をフィードバック制御し、
前記アイドルオンから前記アイドルオフに移行するときには、前記アイドルオフに移行する前の前記アイドルオン時の前記積分項を記憶し、その後、前記アイドルオンになったときには、記憶している前記アイドルオン時の前記積分項を用いて前記エンジンの点火時期を制御し、
前記アイドルオフから前記アイドルオンに移行するときには、前記アイドルオンに移行する前の前記アイドルオフ時の前記積分項を記憶し、その後、前記アイドルオフになったときには、記憶している前記アイドルオフ時の前記積分項を用いて前記エンジンの点火時期を制御する、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、触媒暖機要求がなされている場合において、アイドルオフのとき且つ前記モータのトルクに基づくエンジンの燃焼悪化条件が成立しているときには、モータのトルクを用いて演算される積分項を用いてエンジンの点火時期をフィードバック制御し、アイドルオンのとき且つエンジンの回転数に基づくエンジンの燃焼悪化条件が成立しているときには、エンジンの回転数を用いて演算される積分項を用いてエンジンの点火時期を制御する。そして、アイドルオンからアイドルオフに移行するときには、アイドルオフに移行する前のアイドルオン時の積分項を記憶し、その後、アイドルオンになったときには、記憶しているアイドルオン時の積分項を用いてエンジンの点火時期を制御する。さらに、アイドルオフからアイドルオンに移行するときには、アイドルオンに移行する前のアイドルオフ時の積分項を記憶し、その後、アイドルオフになったときには、記憶しているアイドルオフ時の積分項を用いてエンジンの点火時期を制御する。エンジンの燃焼悪化条件が成立している場合において、アイドルオフのときとアイドルオンのときとで、異なるパラメータを用いて演算した積分項を用いてエンジンの点火時期をフィードバック制御する。そのため、アイドルオフからアイドルオンに移行したときや、アイドルオンからアイドルオフに移行したときに、積分項が急変して、適正な点火時期の制御ができなくなり、エンジンの燃焼状態が悪化することがある。本発明では、アイドルオンからアイドルオフに移行するときには、アイドルオフに移行する前のアイドルオン時の積分項を記憶し、その後、アイドルオンになったときには、記憶しているアイドルオン時の積分項を用いてエンジンの点火時期を制御し、アイドルオフからアイドルオンに移行するときには、アイドルオンに移行する前のアイドルオフ時の積分項を記憶し、その後、アイドルオフになったときには、記憶しているアイドルオフ時の積分項を用いてエンジンの点火時期を制御することにより、アイドルオンからアイドルオフに移行するときやアイドルオンからアイドルオフに移行するときの積分項の急変を抑制する。この結果、エンジンの燃焼の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例としての内燃機関の制御装置を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【
図3】HVECU70により実行される第1点火時期設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図4】HVECU70により実行される第2点火時期設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図5】HVECU70により実行される移行時点火時期設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図6】アイドル状態とエンジン22の回転数NeとモータトルクTm1とRAMに記憶している積分項Ion、積分項Ioffの時間変化の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の実施例としての内燃機関の制御装置を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
図2は、エンジン22の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、
図1に示すように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを備える。
【0012】
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関として構成されている。
図2に示すように、エンジン22は、エアクリーナ122により清浄された空気を吸気管123に吸入してスロットルバルブ124やサージタンク125を通過させると共に、吸気管123のサージタンク125よりも下流側で燃料噴射弁126から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。そして、エンジン22は、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室129に吸入し、吸入した混合気を点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させる。この爆発燃焼のエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動がクランクシャフト26の回転運動に変換される。燃焼室129から排気バルブ133を介して排気管134に排出される排気は、浄化装置136を介して外気に排出される。浄化装置136は、それぞれ、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)136aを有する。
【0013】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24により運転制御されている。エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。
【0014】
エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。また、吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトや排気バルブ133を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジションθcaも挙げることができる。さらに、スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ124aからのスロットル開度THや、吸気管123に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa、吸気管123に取り付けられた温度センサ149からの吸気温Ta、サージタンク125に取り付けられた圧力センサ150からのサージ圧Psも挙げることができる。加えて、排気管134の浄化装置136よりも上流側に取り付けられた上流側空燃比センサ152からの検出空燃比AFuや、排気管134の浄化装置136よりも下流側に取り付けられた下流側空燃比センサ154からの検出空燃比AFdも挙げることができる。
【0015】
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力される。エンジンECU24から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ124bへの駆動制御信号、燃料噴射弁126への駆動制御信号や、点火プラグ130への制御信号を挙げることができる。
【0016】
エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算する。また、エアフローメータ148からの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて体積効率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算する。
【0017】
プラネタリギヤ30は、シングルピニオンタイプの遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、ダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
【0018】
モータMG1は、例えば同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、例えば同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。インバータ41,42は、モータMG1,MG2の駆動に用いられると共に電力ライン54を介してバッテリ50に接続されている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
【0019】
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。モータECU40に入力される信号としては、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2や、モータMG1の各相に流れる相電流を検出する電流センサ41a、41bからのモータMG1の各相の相電流Iu1、Iv1、モータMG2の各相に流れる相電流を検出する電流センサからのモータMG2の各相の相電流Iu2,Iv2を挙げることができる。モータECU40からは、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力される。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU40は、回転位置センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の電気角θe1,θe2や回転数Nm1,Nm2を演算する。
【0020】
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、上述したように、電力ライン54を介してインバータ41,42に接続されている。このバッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52により管理されている。
【0021】
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。バッテリECU52に入力される信号としては、例えば、バッテリ50の端子間に取り付けられた電圧センサ51aからのバッテリ50の電圧Vbや、バッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサ51bからのバッテリ50の電池電流Ib、バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからのバッテリ50の温度Tbを挙げることができる。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU52は、電流センサ51bからの電池電流Ibの積算値に基づいて蓄電割合SOCを演算する。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。
【0022】
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。HVECU70に入力される信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。また、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速Vも挙げることができる。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、エンジン22の運転を伴わずに走行する電動走行モード(EV走行モード)や、エンジン22の運転を伴って走行するハイブリッド走行モード(HV走行モード)で走行する。
【0024】
EV走行モードでは、HVECU70は、最初に、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて走行に要求される(駆動軸36に要求される)要求トルクTd*を設定する。続いて、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に要求トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。モータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42の複数のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0025】
HV走行モードでは、HVECU70は、最初に、EV走行モードと同様に、要求トルクTd*を設定する。続いて、要求トルクTd*に駆動軸36の回転数Ndを乗じて走行に要求される要求パワーPd*を演算し、要求パワーPd*からバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22に要求される要求パワーPe*を演算する。ここで、駆動軸36の回転数Ndとしては、例えば、モータMG2の回転数Nm2や、車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数が用いられる。そして、エンジン22から要求パワーPe*が出力されると共に要求トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*を設定する。さらに、そして、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにモータMG1でエンジン22の回転数Neがフィードバック制御されるようにモータMG1のトルク指令Tm1*を設定し、要求トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する。そして、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。エンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいて運転されるようにエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御などを行なう。モータECU40によるモータMG1,MG2(インバータ41,42)の制御については上述した。
【0026】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、エンジン22の浄化触媒136aを暖機する際の動作について説明する。
【0027】
実施例のハイブリッド自動車20では、HV走行での走行時に、エンジン22の浄化触媒136aの温度が所定温度(例えば、350℃,400℃,450℃など)以下であるときなど浄化触媒136aを暖機するための触媒暖機要求がなされているときには、以下の制御が実行される。
【0028】
触媒暖機要求がなされている場合において、要求パワーPe*が値0以上のときなどエンジン22を負荷運転するときには、上述したHV走行時の制御と同様の処理でエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とモータMG1、MG2のトルク指令Tm1*、Tm2*とを設定する。そして、後述する第1点火時期設定ルーチンにより目標点火時期Tf*を設定する。エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*と目標点火時期Tf*については、エンジンECU24に送信する。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*については、モータECU40に送信する。エンジンECU24は、受信した目標回転数Ne*と目標トルクTe*と目標点火時期Tf*に基づいてエンジン22が運転されるようにエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御などを行なう。モータECU40は、上述したように、インバータ41,42を制御する。即ち、エンジン22を負荷運転するときには、モータMG1でエンジン22でエンジン22の回転数Neをフィードバック制御する。
【0029】
図3は、HVECU70により実行される第1点火時期設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。第1点火時期設定ルーチンは、触媒暖機要求がなされている場合において、エンジン22を負荷運転するときに、HVECU70の図示しないCPUにより、繰り返し実行される。
【0030】
第1点火時期設定ルーチンが実行されると、HVECU70のCPUは、モータMG1の相電流Iu1,Iv1を入力する処理を実行する(ステップS100)。相電流Iu1、Iv1は、電流センサ41a、41bにより検出されたものをモータECU40を介して通信により入力している。
【0031】
続いて、入力した相電流Iu1、Iv1に基づいてモータMG1から出力されているトルクとしてのモータトルクTm1を設定する(ステップS110)。この設定は、相電流Iu1、Iv1とモータMG1からの出力されている出力トルクとの関係を第1関係として予め定めておき、相電流Iu1、Iv1が与えられると相電流Iu1、Iv1と第1関係とから導出した出力トルクをモータトルクTm1に設定する。
【0032】
モータトルクTm1を設定すると、モータトルクTm1から前回本ルーチンを実行したときに設定したモータトルクTm1(前回Tm1)を減じた値をトルク変化量ΔTm1に設定し(ステップS120)、トルク変化量ΔTm1が閾値dtm1ref以下であるか否かを判定する(ステップS130)。閾値dtm1refは、モータMG1から出力するトルクが大きく減少したか否かを判定するための閾値であり、負の値として設定される。エンジン22の燃焼状態が悪化すると、エンジン22から出力されるトルクが大きく減少することから、エンジン22の回転数Neをフィードバック制御しているモータMG1の出力トルクも大きく減少する。したがって、モータMG1の出力トルクが大きく減少したときには、エンジン22の燃焼状態が悪化していると考えられる。したがって、ステップS130は、エンジン22の燃焼状態が悪化する条件としての燃焼悪化条件が成立しているか否かを判定する処理となっている。
【0033】
ステップS130でトルク変化量ΔTm1が閾値dtm1refより大きいときには、燃焼悪化条件が成立していないと判断して、エンジン22の目標点火時期Tf*に最遅角Tlを設定し(ステップS140)、目標点火時期Tf*をエンジンECU24に送信して(ステップS160)、第1点火時期設定ルーチンを終了する。ステップS140の最遅角Tlは、エンジン22の設定可能な点火時期の範囲として予め定められた範囲のうち最も遅い時期(タイミング)である。目標点火時期Tf*を受信したエンジンECU24は、目標点火時期Tf*(最遅角Tl)で点火するように(点火時期が目標点火時期Tf*となるように)点火プラグ130を制御する。このように、点火時期を最遅角Tlとすることにより、浄化触媒136aを暖機できる。
【0034】
ステップS130でトルク変化量ΔTm1が閾値dtm1ref以下のときには、燃焼悪化条件が成立していると判断して、前回本ルーチンを実行したときの目標点火時期Tf*と設定しているトルク指令Tm1*とステップS110で設定したモータトルクTm1と次式(1)とを用いて目標点火時期Tf*を設定する(ステップS150)。式(1)中、第2項は、モータトルクTm1をトルク指令Tm1*に近づけるためのエンジン22の点火時期のフィードバック制御における比例項である。「Kp1」は、比例項のゲインである。第3項は、エンジン22の点火時期のフィードバック制御における積分項である。「Ki1」は、積分項のゲインである。
【0035】
Tf*=前回Tf*+Kp1・(Tm1*-Tm1)+Ki1・∫(Tm1*-Tm1)dt・・・(1)
【0036】
続いて、式(1)の第2項を比例項Poffとして図示しないRAMに記憶し、第3項を積分項Ioffとして図示しないRAMに記憶し(ステップS160)、目標点火時期Tf*をエンジンECU24に送信して(ステップS170)、第1点火時期設定ルーチンを終了する。ステップS160では、既にRAMに比例項Poff、積分項Ioffが記憶されているときには、記憶されている比例項Poff、積分項IoffにステップS160の比例項Poff、積分項Ioffを上書きする。したがって、RAMには、アイドルオフからアイドルオンに移行する前に最後に設定された比例項Poff、積分項Ioffが記憶される。ステップS170で目標点火時期Tf*を受信したエンジンECU24は、目標点火時期Tf*で点火するように(点火時期が目標点火時期Tf*となるように)点火プラグ130を制御する。こうした制御により、エンジン22の燃焼の悪化を抑制することができる。
【0037】
触媒暖機要求がなされている場合において、要求パワーPe*が値0でエンジン22をアイドル運転するときには、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する。そして、要求トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*については、モータECU40に送信する。モータECU40は、上述したように、インバータ41,42を制御する。そして、後述する第2点火時期設定ルーチンによりエンジン22の目標点火時期Tf*を設定する。そして、目標点火時期Tf*で点火するように(点火時期が目標点火時期Tf*となるように)点火プラグ130を制御すると共に、エンジン22が予め定められたアイドル回転数Nidlでアイドル運転(自立運転)されるように、エンジン22の点火制御を除くエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御などを行なう。
【0038】
図4は、HVECU70により実行される第2点火時期設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。第2点火時期設定ルーチンは、触媒暖機要求がなされている場合において、エンジン22をアイドル運転するときに、HVECU70の図示しないCPUにより繰り返し実行される。
【0039】
第2点火時期設定ルーチンが実行されると、HVECU70のCPUは、エンジン22の回転数Neを入力する処理を実行する(ステップS200)。回転数Neは、エンジンECU24により演算されたものを通信により入力している。
【0040】
続いて、入力した回転数Neから前回本ルーチンを実行したときに入力した回転数Neを減じた値を回転数変化量ΔNeに設定し(ステップS210)、回転数変化量ΔNeが閾値dNeref以下であるか否かを判定する(ステップS220)。閾値dNerefは、エンジン22の回転数Neが大きく減少したか否かを判定するための閾値であり、負の値として設定される。エンジン22をアイドル運転しているときにエンジン22の燃焼状態が悪化すると、エンジン22の回転数Neが減少する。したがって、ステップS220は、エンジン22の燃焼状態が悪化する条件としての燃焼悪化条件が成立しているか否かを判定する処理となっている。
【0041】
ステップS220で回転数変化量ΔNeが閾値dNerefより大きいときには、燃焼悪化条件が成立していないと判断して、エンジン22の目標点火時期Tf*に最遅角Tlより進角した(最遅角Tlの時期(タイミング)より早い時期(タイミング)の)所定時期Taを設定し(ステップS230)、目標点火時期Tf*をエンジンECU24に送信して(ステップS250)、第2点火時期設定ルーチンを終了する。所定時期Taは、エンジン22をアイドル運転する際の点火時期として予め定められた点火時期である。目標点火時期Tf*を受信したエンジンECU24は、目標点火時期Tf*(所定時期Ta)で点火するように(点火時期が目標点火時期Tf*となるように)点火プラグ130を制御する。このように、点火時期を所定時期Taとすることにより、エンジン22をアイドル運転しながら、浄化触媒136aを暖機できる。
【0042】
ステップS220で回転数変化量ΔNeが閾値dNeref以下のときには、燃焼悪化条件が成立していると判断して、前回本ルーチンを実行したときの目標点火時期Tf*とアイドル回転数NidlとステップS200で入力したエンジン22の回転数Neと次式(2)とを用いて目標点火時期Tf*を設定する(ステップS240)。ステップS240の式(2)中、第2項は、エンジン22の回転数Neをアイドル回転数Nidlに近づけるための点火時期のフィードバック制御における比例項である。「Kp2」は、比例項のゲインである。第3項は、エンジン22の回転数Neをアイドル回転数Nidlに近づけるための点火時期のフィードバック制御における積分項である。「Ki2」は、積分項のゲインである。
【0043】
Tf*=前回Tf*+Kp2・(Nidl-Ne)+Ki2・∫(Nidl-Ne)dt・・・(2)
【0044】
続いて、式(2)の第2項を比例項Ponとして図示しないRAMに記憶し、第3項を積分項Ionとして図示しないRAMに記憶し(ステップS250)、目標点火時期Tf*をエンジンECU24に送信して(ステップS260)、第2点火時期設定ルーチンを終了する。ステップS250では、既に比例項Pon、積分項Ionが記憶されているときには、既に記憶している比例項Pon、積分項Ionに新しい比例項Pon、積分項Ionを上書きする。したがって、RAMには、最後に設定された比例項Pon、積分項Ionが記憶されている。ステップS260で目標点火時期Tf*を受信したエンジンECU24は、目標点火時期Tf*で点火するように(点火時期が目標点火時期Tf*となるように)点火プラグ130を制御する。こうした制御により、エンジン22の燃焼の悪化を抑制しつつ、エンジン22をアイドル運転することができる。
【0045】
次に、触媒暖機要求がなされている場合において、アイドルオンとアイドルオフとの間で制御を移行する際の動作について説明する。
図5は、HVECU70により実行される移行時点火時期設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。移行時点火時期設定ルーチンは、触媒暖機要求がなされている場合において、アイドルオフからアイドルオンに移行するとき、または、アイドルオンからアイドルオフに移行するときに、HVECU70のCPUにより実行される。
【0046】
移行時点火時期設定ルーチンが実行されると、HVECU70のCPUは、アイドルオンからアイドルオフへの移行か否かを判定する処理を実行する(ステップS300)。アイドルオンからアイドルオフへの移行ではないとき、即ち、アイドルオフからアイドルオンへの移行のときには、図示しないRAMに記憶されている比例項Poffと積分項Ionとを入力する(ステップS310)。比例項Poffは、アイドルオフ時に最後に記憶された値、つまり、アイドルオンになる直前のアイドルオフでの比例項Poffである。積分項Ionは、1つ前のアイドルオン時に最後にRMAに記憶された積分項Ionである。
【0047】
こうして比例項Poffと積分項Ionとを入力すると、入力した比例項Poffと積分項Ionと本ルーチンを実行する直前に設定された目標点火時期Tf*(前回Tf*)と次式(3)とを用いて目標点火時期Tf*を設定して(ステップS320)、目標点火時期Tf*をエンジンECU24に送信して(ステップS350)、移行時点火時期設定ルーチンを終了する。ステップS350で目標点火時期Tf*を受信したエンジンECU24は、目標点火時期Tf*で点火するように(点火時期が目標点火時期Tf*となるように)点火プラグ130を制御する。したがって、アイドルオフからアイドルオンになったときには、記憶している1つ前のアイドルオンの終了時の積分項Ionを用いてエンジン22の点火時期を制御する。
【0048】
Tf*=前回Tf*+Poff+Ion ・・・(3)
【0049】
ステップS300でアイドルオンからアイドルオフへの移行のときには、図示しないRAMに記憶されている比例項Ponと積分項Ioffとを入力する(ステップS330)。比例項Ponは、アイドルオン時に最後に記憶された値、即ち、アイドルオフになる直前のアイドルオンでの比例項Ponである。積分項Ioffは、1つ前のアイドルオフ時に最後に記憶された積分項Ioffである。
【0050】
こうして比例項Ponと積分項Ioffとを入力すると、入力した比例項Ponと積分項Ioffと本ルーチンを実行する直前に設定された目標点火時期Tf*(前回Tf*)と次式(4)とを用いて目標点火時期Tf*を設定して(ステップS340)、目標点火時期Tf*をエンジンECU24に送信して(ステップS350)、移行時点火時期設定ルーチンを終了する。ステップS350で目標点火時期Tf*を受信したエンジンECU24は、目標点火時期Tf*で点火するように(点火時期が目標点火時期Tf*となるように)点火プラグ130を制御する。したがって、アイドルオンからアイドルオフになったときには、記憶している1つ前のアイドルオフの終了時の積分項Ioffを用いてエンジン22の点火時期を制御する。
【0051】
Tf*=前回Tf*+Pon+Ioff ・・・(4)
【0052】
図6は、アイドル状態とエンジン22の回転数NeとモータトルクTm1とRAMに記憶している積分項Ion、積分項Ioffの時間変化の一例を説明するための説明図である。図中、破線の四角で囲まれた領域で、燃焼悪化条件が成立している期間である。破線の丸で囲まれた領域にアイドルオン時、アイドルオフ時の最後にRAMに記憶された積分項Ion、Ioffが含まれている。
【0053】
図示するように、アイドルオフからアイドルオンに移行したときには(時間t2)、アイドルオンとなる直前のアイドルオフのときの積分項Ioffではなく、1つ前のアイドルオン時の積分項Ion(時間t1の直前の積分項)を用いて目標点火時期Tf*を設定する。アイドルオンからオフに移行したときには(時間t3)、アイドルオフとなる直前のアイドルオンのときの積分項Ionではなく、1つ前のアイドルオフ時の積分項Ioff(時間t2の直前の積分項)を用いて目標点火時期Tf*を設定する。このようにして目標点火時期Tf*を設定する理由は以下の通りである。
【0054】
図3の第1点火時期設定ルーチンや
図4の第2点火時期設定ルーチンでは、エンジン22の燃焼悪化条件が成立している場合において、アイドルオフのときとアイドルオンのときとで、異なるパラメータを用いて演算した積分項を用いてエンジン22の点火時期をフィードバック制御する。そのため、アイドルオフからアイドルオンに移行したときや、アイドルオンからアイドルオフに移行したときに、フィードバック制御の積分項が急変して、適正な点火時期の制御ができなくなり、エンジン22の燃焼状態が悪化することがある。実施例では、アイドルオンからアイドルオフに移行するときには、アイドルオフに移行する前のアイドルオン時の積分項Ionを記憶し、その後、アイドルオンになったときには、記憶しているアイドルオン時の積分項Ionを用いてエンジン22の点火時期を制御する。そして、アイドルオフからアイドルオンに移行するときには、アイドルオンに移行する前のアイドルオフ時の積分項Ioffを記憶し、その後、アイドルオフになったときには、記憶しているアイドルオフ時の積分項Ioffを用いてエンジン22の点火時期を制御する。これにより、アイドルオンからアイドルオフに移行するときやアイドルオンからアイドルオフに移行するときの積分項の急変を抑制でき、アイドルオンからアイドルオフへ移行するときやアイドルオフからアイドルオンに移行するときに、エンジン22の燃焼の悪化を抑制できる。
【0055】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、触媒暖機要求がなされている場合において、アイドルオフのとき且つモータトルクTmに基づくエンジン22の燃焼悪化条件が成立しているときには、モータトルクTmを用いて演算される積分項Ioffを用いてエンジン22の点火時期をフィードバック制御し、アイドルオンのとき且つエンジン22の回転数Neに基づくエンジン22の燃焼悪化条件が成立しているときには、エンジン22の回転数を用いて演算される積分項Ionを用いてエンジン22の点火時期をフィードバック制御し、アイドルオンからアイドルオフに移行するときには、アイドルオフに移行する前のアイドルオン時の積分項Ionを記憶し、その後、アイドルオンになったときには、記憶しているアイドルオン時の積分項Ionを用いてエンジン22の点火時期を制御し、アイドルオフからアイドルオンに移行するときには、アイドルオンに移行する前のアイドルオフ時の積分項Ioffを記憶し、その後、アイドルオフになったときには、記憶しているアイドルオフ時の積分項Ioffを用いてエンジン22の点火時期を制御することにより、エンジン22の燃焼の悪化を抑制できる。
【0056】
実施例のハイブリッド自動車20によれば、
図3の第1点火時期設定ルーチンのステップS150や
図4の第2点火時期設定ルーチンのステップS240で、目標点火時期Tf*を比例項と積分項とを用いて設定している。しかしながら、比例項を用いずに積分項のみ用いて目標点火時期Tf*を設定しても構わない。
【0057】
実施例では、本発明を、エンジン22とプラネタリギヤ30とモータMG1,MG2とを備えるハイブリッド自動車20に適用している。しかしながら、本発明を、エンジンと1つのモータとを備えるいわゆる1モータハイブリッド自動車に適用してもよい。さらに、列車や建設車両などの自動車とは異なるハイブリッド車両に適用してもよい。
【0058】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG1が「モータ」に相当し、エンジンECU24とモータECU40とHVECU70とが「制御装置」に相当する。
【0059】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0060】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ハイブリッド車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジンECU、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 プラネタリギヤ、36 駆動軸、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータECU、41,42 インバータ、41a,41b,51b 電流センサ、43,44 回転位置センサ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51c 温度センサ、52 バッテリECU、54 電力ライン、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、123 吸気管、124 スロットルバルブ、124a スロットルバルブポジションセンサ、124b スロットルモータ、125 サージタンク、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、129 燃焼室、130 点火プラグ、132 ピストン、133 排気バルブ、134 排気管、136 浄化装置、136a 浄化触媒、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 圧力センサ、152 上流側空燃比センサ、154 下流側空燃比センサ、MG1,MG2 モータ。