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特許7581982モータ制御装置、及び、モータ制御装置における通信環境の調整方法
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  • 特許-モータ制御装置、及び、モータ制御装置における通信環境の調整方法 図1
  • 特許-モータ制御装置、及び、モータ制御装置における通信環境の調整方法 図2
  • 特許-モータ制御装置、及び、モータ制御装置における通信環境の調整方法 図3
  • 特許-モータ制御装置、及び、モータ制御装置における通信環境の調整方法 図4
  • 特許-モータ制御装置、及び、モータ制御装置における通信環境の調整方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】モータ制御装置、及び、モータ制御装置における通信環境の調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/028 20160101AFI20241106BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H02P29/028
G05B9/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021037326
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137706
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松上 雅一
(72)【発明者】
【氏名】神保 隆一
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161855(JP,A)
【文献】特開2016-206842(JP,A)
【文献】特開2006-277733(JP,A)
【文献】特開平05-304794(JP,A)
【文献】特開2017-163760(JP,A)
【文献】特開2007-011700(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0195758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/028
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータをサーボ制御するモータ制御装置であって、
前記モータの出力軸の変位を検出する複数の検出部を有する安全エンコーダからの検出信号を受信する受信部であって、該安全エンコーダと前記モータ制御装置との間の通信を実現するための通信プロトコル情報に従って変更可能に構成された受信部と、
前記モータ制御装置に接続される前記安全エンコーダが変更される場合、該変更後の第1安全エンコーダに対応する第1通信プロトコル情報を取得する取得部と、
前記取得された第1通信プロトコル情報と前記第1安全エンコーダとの組合せの適否を確認する所定の確認処理を経て、該第1通信プロトコル情報に従って前記受信部を前記第1安全エンコーダに対応する構成に適合させる処理部と、
第1の通信経路で前記安全エンコーダと通信可能に接続され、該第1の通信経路を経て得られた該安全エンコーダの検出信号に基づいて、前記モータのサーボ制御を実行するサーボ制御部と、
前記第1の通信経路とは異なる第2の通信経路で前記安全エンコーダと通信可能に接続され、該第2の通信経路を経て得られた該安全エンコーダの検出信号に基づいて、前記モータの動作に関する安全制御を実行する安全制御部と、
を備え、
前記処理部によって、前記第1通信プロトコル情報に従って前記受信部を前記第1安全エンコーダに対応する構成に適合させた後は、
前記安全制御部は、前記第2の通信経路を経て得られた前記第1安全エンコーダの検出信号に基づいて前記安全制御を実行し、
前記サーボ制御部は、前記第1の通信経路を経た前記第1安全エンコーダからの検出信号の取得は禁止され、前記安全制御部が前記第2の通信経路を経て得られた検出信号を該安全制御部から受け取り、該受け取った検出信号に基づいて前記サーボ制御を実行する、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記受信部が対応可能な種類の一又は複数の安全エンコーダに対応する一又は複数の通信プロトコル情報を保持する保持部を、更に備え、
前記取得部は、前記保持部が保持する前記一又は複数の通信プロトコル情報の中から、前記第1通信プロトコル情報を取得する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記受信部が対応可能な種類の一又は複数の安全エンコーダに対応する一又は複数の通信プロトコル情報を保持する外部装置を通信可能に接続する通信部を、更に備え、
前記取得部は、前記外部装置が保持する前記一又は複数の通信プロトコル情報の中から、前記第1通信プロトコル情報を取得する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記外部装置から所定のセキュリティ信号が入力されたときに、該外部装置と前記モータ制御装置との通信を許可するように構成される、
請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記処理部は、ユーザに変更後の安全エンコーダに対応する通信プロトコルの情報入力を要求し、前記所定の確認処理として、ユーザにより入力された情報と、前記取得部により取得された前記第1通信プロトコル情報とを照合する処理を実行する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記モータ制御装置に接続される前記安全エンコーダが前記第1安全エンコーダを含む複数の安全エンコーダに変更される場合、
前記取得部は、変更後の前記複数の安全エンコーダに対応する所定の通信プロトコル情報を取得し、
前記処理部は、前記取得された所定の通信プロトコル情報と前記複数の安全エンコーダとの組合せの適否を確認する前記所定の確認処理を経て、該所定の通信プロトコル情報に従って前記受信部を前記複数の安全エンコーダに対応する構成に適合させる、
請求項1から請求項の何れか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
モータをサーボ制御するモータ制御装置において、安全エンコーダとの通信環境を調整する方法であって、
前記モータ制御装置は、前記モータの出力軸の変位を検出する複数の検出部を有する安全エンコーダからの検出信号を受信する受信部であって、該安全エンコーダと前記モータ制御装置との間の通信を実現するための通信プロトコル情報に従って変更可能に構成された受信部と、を備え、
第1の通信経路で前記安全エンコーダと通信可能に接続され、該第1の通信経路を経て得られた該安全エンコーダの検出信号に基づいて、前記モータのサーボ制御を実行するサーボ制御部と、
前記第1の通信経路とは異なる第2の通信経路で前記安全エンコーダと通信可能に接続され、該第2の通信経路を経て得られた該安全エンコーダの検出信号に基づいて、前記モータの動作に関する安全制御を実行する安全制御部と、
を備え、
前記方法は、
前記モータ制御装置に接続される前記安全エンコーダが変更される場合、該変更後の第1安全エンコーダに対応する第1通信プロトコル情報を取得するステップと、
前記取得された第1通信プロトコル情報と前記第1安全エンコーダとの組合せの適否を確認する所定の確認処理を経て、該第1通信プロトコル情報に従って前記受信部を前記第1安全エンコーダに対応する構成に適合させるステップと、
前記第1通信プロトコル情報に従って前記受信部を前記第1安全エンコーダに対応する構成に適合させた後は、前記安全制御部に、前記第2の通信経路を経て得られた前記第1安全エンコーダの検出信号に基づいて前記安全制御を実行することを許可し、前記サーボ制御部に、前記第1の通信経路を経た前記第1安全エンコーダからの検出信号の取得を禁止するとともに、前記安全制御部が前記第2の通信経路を経て得られた検出信号を該安全制御部から受け取り、該受け取った検出信号に基づいて前記サーボ制御を実行することを
許可するステップと、
を含む、モータ制御装置における通信環境の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、及び、モータ制御装置における通信環境の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボシステム等の産業システムにおいて、各機器間の動作条件を設定するための手法について、様々な工夫が提案されている。例えば、特許文献1には、通信処理装置の通信方式を、上位装置の指令に応じて変更する技術が開示されている。当該技術では、上位装置は通信処理装置に対して更新する通信プロトコル処理のFPGA(Field Programmable
Gate Array)回路データを送信し、それを受け取った通信処理装置はFPGA回路の再
構成を行うことで、柔軟な通信環境の設定を可能としている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、モータ制御装置において、エンコーダと通信するための通信方式を簡便に変更する技術が開示されている。当該技術では、サーボドライバにおけるフィードバック信号取得部は、再構成可能デバイスを含み、外部から通信方式情報を受信した場合に、その通信方式情報に応じて、再構成可能デバイスを再構成することで、エンコーダとの通信に関する通信方式の変更を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-69777号公報
【文献】特開2019-161855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上位装置からの指令に従いモータ制御装置によりモータのサーボ制御を行うサーボシステムにおいて、作業者に対する安全性をより好適に確保する観点から、システムにおいて故障が生じた場合に安全側に制御する安全機能そのものをサーボシステムが備えるのが好ましい。そこで、モータの出力軸の変位を検出するエンコーダの安全機能が高められた安全エンコーダを利用する場合がある。安全エンコーダは、モータの出力軸の変位を検出する複数の検出部を有するものであり、当該安全エンコーダとモータ制御装置が通信を行い、モータのサーボ制御や安全制御を実現するためには、モータ制御装置は、当該安全エンコーダの検出信号に対応する通信プロトコル情報を有し、当該通信プロトコル情報に従って安全エンコーダからの検出信号を好適に理解する必要がある。
【0006】
上記のような安全エンコーダを利用する場合、安全エンコーダとの通信環境がいたずらに変更されてしまうとモータの安全制御に支障を来す恐れがあるため、一般的には、安全エンコーダを有するモータとモータ制御装置との組合せは固定化されていた。したがって、仮にモータ制御装置はそのままにして、通信プロトコルの異なる安全エンコーダを有するモータを当該モータ制御装置に接続し直すことは不可能であった。このような場合は、新たな安全エンコーダの通信プロトコルに対応するモータ制御装置を別途準備する必要があり、コストの増加を招く結果となっていた。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、モータ制御装置を取り替える必要なく、通信プロトコルの異なる安全エンコーダへの変更を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係るモータ制御装置は、モータをサーボ制御するモータ制御装置であって、前記モータの出力軸の変位を検出する複数の検出部を有する安全エンコーダからの検出信号を受信する受信部であって、該安全エンコーダと前記モータ制御装置との間の通信を実現するための通信プロトコル情報に従って変更可能に構成された受信部と、前記モータ制御装置に接続される前記安全エンコーダが変更される場合、該変更後の第1安全エンコーダに対応する第1通信プロトコル情報を取得する取得部と、前記取得された第1通信プロトコル情報と前記第1安全エンコーダとの組合せの適否を確認する所定の確認処理を経て、該第1通信プロトコル情報に従って前記受信部を前記第1安全エンコーダに対応する構成に適合させる処理部と、を備える。
【0009】
上記モータ制御装置において、安全エンコーダからの検出信号を受信する受信部は、通信プロトコル情報に従って変更可能に構成される。例えば、受信部は、検出信号の受信のための回路構成が変更可能な(回路構成が書き換え可能な)PLD(Programmable Logic
Device)を含み、PLDの一例としてFPGA(Field Programmable Gate Arrays)を
採用でき、また、DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)も採用してよい。
【0010】
ここで、モータ制御装置に接続される安全エンコーダが第1安全エンコーダに変更され、その通信プロトコルも変更されることになる場合、そのまま第1安全エンコーダをモータ制御装置に接続しても、通信プロトコルの種類が異なるため第1安全エンコーダとモータ制御装置との間に通信を構築することができず、モータのサーボ制御や安全制御を実現することができなくなる。そこで、先ず取得部が、変更後の第1安全エンコーダに対応する通信プロトコルに関する情報である第1通信プロトコル情報を取得する。その後、処理部が第1通信プロトコル情報と第1安全エンコーダとの組合せの適否を確認する所定の確認処理を実行する。このように所定の確認処理が行われるのは、安全エンコーダを用いてモータの安全制御を行おうとする場合に、不用意な通信プロトコルの変更が行われてしまうと安全エンコーダとモータ制御装置との通信に支障が生じ、安全制御の実行が阻害されるため、可及的に避けなければならないからである。
【0011】
例えば、前記処理部は、ユーザに変更後の安全エンコーダに対応する通信プロトコルの情報入力を要求し、前記所定の確認処理として、ユーザにより入力された情報と、前記取得部により取得された前記第1通信プロトコル情報とを照合する処理を実行してもよい。すなわち、取得部による第1通信プロトコル情報の取得とは別に、処理部により、変更後の安全エンコーダ(例えば、第1安全エンコーダ)に対応する通信プロトコルの情報入力がユーザに対して要求され、その入力結果と、取得部が取得した第1通信プロトコル情報とが照合される。そして、照合結果に問題が生じなければ、ユーザの意思に適した通信プロトコルが設定されようとしていることを意味し、モータの安全制御に支障が来される恐れは低いと考えられる。
【0012】
そして、処理部による照合結果に問題が無ければ、第1通信プロトコル情報に従って受信部を第1安全エンコーダに対応する構成に適合させる。これにより、変更後の第1安全エンコーダとの通信が可能となるように、受信部の構成が再構築されることになる。なお、処理部による照合結果において問題が生じた場合、例えば、ユーザの入力結果と、取得部が取得した第1通信プロトコル情報とに違い(ずれ)が生じている場合、取得部により取得された第1通信プロトコル情報に従った受信部構成の適合化は実行されない。
【0013】
このように上記モータ制御装置によれば、安全エンコーダを用いたモータの好適な安全制御の環境は担保されながら、モータ制御装置を取り替える必要なく、通信プロトコルの異なる安全エンコーダへの変更が可能となる。
【0014】
ここで、第1通信プロトコル情報を取得する具体的な形態について言及する。第1の形態では、前記受信部が対応可能な種類の一又は複数の安全エンコーダに対応する一又は複数の通信プロトコル情報を保持する保持部を、更に備えてもよい。この場合、前記取得部は、前記保持部が保持する前記一又は複数の通信プロトコル情報の中から、前記第1通信プロトコル情報を取得してもよい。また、第2の形態では、前記受信部が対応可能な種類の一又は複数の安全エンコーダに対応する一又は複数の通信プロトコル情報を保持する外部装置を通信可能に接続する通信部を、更に備えてもよい。この場合、前記取得部は、前記外部装置が保持する前記一又は複数の通信プロトコル情報の中から、前記第1通信プロトコル情報を取得してもよい。なお、これら以外の形態でも、取得部は第1通信プロトコル情報を取得してもよい。
【0015】
なお、上記の第2の形態において、前記通信部は、前記外部装置から所定のセキュリティ信号が入力されたときに、該外部装置と前記モータ制御装置との通信を許可するように構成されてもよい。このような構成を採用することで、外部装置によるモータ制御装置への不用意なアクセスを抑制でき、安全エンコーダを用いたモータの好適な安全制御の環境を担保することができる。
【0016】
ここで、上述までのモータ制御装置は、第1の通信経路で前記安全エンコーダと通信可能に接続され、該第1の通信経路を経て得られた該安全エンコーダの検出信号に基づいて、前記モータのサーボ制御を実行するサーボ制御部と、前記第1の通信経路とは異なる第2の通信経路で前記安全エンコーダと通信可能に接続され、該第2の通信経路を経て得られた該安全エンコーダの検出信号に基づいて、前記モータの動作に関する安全制御を実行する安全制御部と、を更に備えてもよい。そして、前記処理部によって、前記第1通信プロトコル情報に従って前記受信部を前記第1安全エンコーダに対応する構成に適合させた後は、前記安全制御部は、前記第2の通信経路を経て得られた前記第1安全エンコーダの検出信号に基づいて前記安全制御を実行し、前記サーボ制御部は、前記第1の通信経路を経た前記第1安全エンコーダからの検出信号の取得は禁止され、前記安全制御部が前記第2の通信経路を経て得られた検出信号を該安全制御部から受け取り、該受け取った検出信号に基づいて前記サーボ制御を実行してもよい。
【0017】
安全エンコーダが第1安全エンコーダに変更される前は、事前に知られている安全エンコーダの通信プロトコルを共通の基準として、サーボ制御部によるモータのサーボ制御と、安全制御部による安全制御が実行されている。したがって、安全エンコーダの検出信号がそれぞれ異なる第1の通信経路と第2の通信経路とでサーボ制御部と安全制御部に送信されていても、サーボ制御と安全制御は好適に協働した状態で実行されている。一方で、安全エンコーダが第1安全エンコーダに変更されてしまうと、サーボ制御部によるサーボ制御と安全制御部による安全制御の前提となる、第1安全エンコーダとのモータ制御装置との間の通信環境が変更されたことになるため、各制御の内容次第では、制御タイミングのずれ等の支障が生じる恐れがある。そこで、上記のように、第1通信プロトコル情報に従って受信部を第1安全エンコーダに対応する構成に適合させた後は、サーボ制御部は、第1の通信経路を経由して第1安全エンコーダの検出信号を受け取るのではなく、安全制御部を経由して第1安全エンコーダの検出信号を受け取る。この構成を採用することで、サーボ制御部と安全制御部との間では共通の検出信号を利用することになり、安全エンコーダの変更に起因する制御タイミングのずれ等の支障を抑制することができる。
【0018】
また、上述までのモータ制御装置において、前記モータ制御装置に接続される前記安全エンコーダが前記第1の安全エンコーダを含む複数の安全エンコーダに変更される場合、前記取得部は、変更後の前記複数の安全エンコーダに対応する所定の通信プロトコル情報を取得し、前記処理部は、前記取得された所定の通信プロトコル情報と前記複数の安全エンコーダとの組合せの適否を確認する前記所定の確認処理を経て、該所定の通信プロトコ
ル情報に従って前記受信部を前記複数の安全エンコーダに対応する構成に適合させてもよい。このように複数の安全エンコーダに変更される場合にも、本願発明を適用することができる。
【0019】
ここで、本願発明を、モータをサーボ制御するモータ制御装置において、該安全エンコーダとの通信環境を調整する方法の側面から捉えることもできる。この場合、前記モータ制御装置は、前記モータの出力軸の変位を検出する複数の検出部を有する安全エンコーダからの検出信号を受信する受信部であって、該安全エンコーダと前記モータ制御装置との間の通信を実現するための通信プロトコル情報に従って変更可能に構成された受信部を備える。そして、前記方法は、前記モータ制御装置に接続される前記安全エンコーダが変更される場合、該変更後の第1安全エンコーダに対応する第1通信プロトコル情報を取得するステップと、前記取得された第1通信プロトコル情報と前記第1安全エンコーダとの組合せの適否を確認する所定の確認処理を経て、該第1通信プロトコル情報に従って前記受信部を前記第1安全エンコーダに対応する構成に適合させるステップと、を含む。当該方法によれば、安全エンコーダを用いたモータの好適な安全制御の環境は担保されながら、モータ制御装置を取り替える必要なく、通信プロトコルの異なる安全エンコーダへの変更が可能となる。なお、上記のモータ制御装置に関して開示した技術思想は、齟齬が生じない限りにおいて当該方法にも適用することができる。
【0020】
また、上記方法に関し、前記モータ制御装置は、第1の通信経路で前記安全エンコーダと通信可能に接続され、該第1の通信経路を経て得られた該安全エンコーダの検出信号に基づいて、前記モータのサーボ制御を実行するサーボ制御部と、前記第1の通信経路とは異なる第2の通信経路で前記安全エンコーダと通信可能に接続され、該第2の通信経路を経て得られた該安全エンコーダの検出信号に基づいて、前記モータの動作に関する安全制御を実行する安全制御部と、を更に備えてもよい。そして、前記方法は、前記第1通信プロトコル情報に従って前記受信部を前記第1安全エンコーダに対応する構成に適合させた後は、前記安全制御部に、前記第2の通信経路を経て得られた前記第1安全エンコーダの検出信号に基づいて前記安全制御を実行することを許可し、前記サーボ制御部に、前記第1の通信経路を経た前記第1安全エンコーダからの検出信号の取得を禁止するとともに、前記安全制御部が前記第2の通信経路を経て得られた検出信号を該安全制御部から受け取り、該受け取った検出信号に基づいて前記サーボ制御を実行することを許可するステップを、更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0021】
モータ制御装置を取り替える必要なく、通信プロトコルの異なる安全エンコーダへの変更を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のモータ制御装置であるサーボドライバが組み込まれたサーボシステムの概略構成を示す図である。
図2図1に示すサーボシステムの機能をイメージ化した図である。
図3図1に示すサーボシステムにおいて安全エンコーダを変更する際の、サーボドライバでの通信プロトコル変更による通信環境の調整方法の流れを示すフローチャートである。
図4】通信プロトコルが変更された後における、サーボシステムの概略構成を示す第1の図である。
図5】通信プロトコルが変更された後における、サーボシステムの概略構成を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
図1は、本願開示のモータ制御装置であるサーボドライバ4が組み込まれる前のサーボシステム100の概略構成図である。ここで、サーボシステム100は、ネットワーク(フィールドバス)1と、モータ2と、サーボドライバ4と、PLC(Programmable Logic Controller)5とを備える。モータ2は、モータ本体21と安全エンコーダ22を有して
いる。モータ本体21はサーボドライバ4から駆動電流の供給を受け、出力軸を駆動回転させる。安全エンコーダ22は、その出力軸の変位を検出するように構成され、更にその内部で同時にスキャニングを行なうことにより独立した検出信号の出力が可能となるように二重化された回路を有することで、安全機能の向上が図られている。なお、安全エンコーダ22による安全機能は、後述するサーボドライバ4が有する安全制御部52との協働で実現される。
【0024】
モータ2の出力軸はボールねじ15に接続され、ボールねじ15が駆動されることでそこに取り付けられているテーブル16が変位するように構成される。なお、このような形態以外にも、モータ2は、例えば、産業用ロボットのアームや搬送装置のアクチュエータとして当該装置内に組み込まれてもよい。例えば、モータ2は、ACモータである。そして、安全エンコーダ22は、検出されたモータ2の動作(モータ本体21の出力軸の変位)を示すフィードバック信号(「検出信号」に相当する。)を生成するとともに、そのフィードバック信号をサーボドライバ4に送信する。なお、安全エンコーダ22では二重化された通信経路を経てフィードバック信号がサーボドライバ4へと出力される。フィードバック信号は、たとえばモータ2の回転軸の回転位置(角度)についての位置情報、その回転軸の回転速度の情報等を含む。安全エンコーダ22には一般的なインクリメンタル型エンコーダ、アブソリュート型エンコーダを適用することができる。
【0025】
サーボドライバ4は、ネットワーク1を介してPLC5からモータ2の動作(モーション)に関する動作指令信号を受ける。サーボドライバ4は、PLC5からの動作指令信号および安全エンコーダ22からのフィードバック信号に基づいて、後述するサーボ制御部42によってモータ2の駆動に関するサーボ制御を実行し、駆動電流をモータ2に供給する。更に、サーボドライバ4は、安全エンコーダ22からのフィードバック信号に基づいて、後述する安全制御部52によってモータの動作に関する安全制御を実行する。なお、サーボドライバ4への供給電流は、交流電源11からサーボドライバ4に対して送られる交流電力が利用される。本実施例では、サーボドライバ4は三相交流を受けるタイプのものであるが、単相交流を受けるタイプのものでもよい。
【0026】
ここで、サーボシステムの安全機能について説明する。一般にシステムは入力構成、演算構成、出力構成に大別できる。入力構成は、例えば、サーボドライバ4への入力に関するサブシステムであり、一般的にその安全機能は安全エンコーダ22の安全機能に大きく依拠する。演算構成は、サーボドライバ4内での入力から出力を算出するための演算に関するサブシステムであり、例えば、マイクロプロセッサ(MPU)を用いた演算回路の安全機能に依拠する。出力構成は、サーボドライバ4からの出力に関するサブシステムであり、後述するようにサーボ制御部から駆動部44への駆動信号の伝達を遮断する遮断部43の安全機能に依拠する。サーボシステム全体の安全機能は、入力構成、演算構成、出力構成のそれぞれの安全機能を踏まえて決定されるが、その入力構成については安全エンコーダ22の採用が、サーボシステム100の安全機能の向上に寄与することになる。
【0027】
そして、サーボシステム100では、サーボドライバ4に接続されているモータ2を別のモータに変更するとともに、その変更後のモータに搭載されている安全エンコーダに対応する通信プロトコルが、安全エンコーダ22に対応する通信プロトコルと異なっている場合でも、サーボドライバ4を継続して利用することができるように当該サーボドライバ4が構成されている。このようなサーボドライバ4の構成により、ユーザは柔軟にサーボ
システム100を構築することができる。そこで、図2に示す機能ブロックに基づいて、サーボドライバ4を中心にサーボシステム100の概略構成について、以下に説明する。
【0028】
サーボドライバ4は、モータ2のサーボ制御に関連する機能部として、第1受信部41、サーボ制御部42、遮断部43、駆動部44を有し、モータの安全制御に関連する機能部として、第2受信部51、安全制御部52を有し、サーボドライバ4と安全エンコーダ22との通信環境の調整に関連する機能部として、通信部61、取得部62、処理部63を有している。なお、図2においては、ネットワーク1の記載は省略している。
【0029】
第1受信部41は、安全エンコーダ22からのフィードバック信号を受信する機能部であり、安全エンコーダ22からのフィードバック信号は通信経路L1を経由して、第1受信部41に入力される。通信経路L1は、安全エンコーダ22の出力に対応した二重化された経路である。そして、第1受信部41による受信のための安全エンコーダ22とサーボドライバ4との間の通信に関する構成として、第1受信部41は、再構成可能デバイスを含んでいる。当該再構成可能デバイスを、安全エンコーダ22とサーボドライバ4との間の通信を実現するための通信プロトコル情報に従って再構成することで、両者の間の通信方式を変更できる。すなわち、第1受信部41は、安全エンコーダ22が、異なる通信プロトコルの安全エンコーダに変更された場合にも、第1受信部41における通信方式を変更後の安全エンコーダに適合させることで、その変更後においてもサーボドライバ4自体を取り替えることなくモータの駆動を継続することができるように構成されている。一例として、第1受信部41は、再構成可能デバイスとして、回路構成が変更可能なPLD(Programmable Logic Device)を含む。当該PLDの回路構成を通信プロトコルに関連
する情報(通信プロトコル情報)に従って変更することにより、第1受信部41の通信方式を変更できる。なお、PLDの一例としては、FPGA(Field Programmable Gate Arrays)を挙げることができる。第1受信部41の構成の別法として、DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)を用いて構成することもできる。第1受信部41により受信された安全エンコーダ22からのフィードバック信号は、サーボ制御部42に引き渡される。
【0030】
サーボ制御部42は、PLC5から動作指令信号を受けるとともに、第1受信部41が受信した安全エンコーダ22からフィードバック信号を受ける。サーボ制御部42は、動作指令信号およびフィードバック信号に基づいて、位置フィードバック制御、速度フィードバック制御を実行するための指令値を生成する。例えば、サーボ制御部42は、動作指令信号およびフィードバック値に基づくフィードバック制御により、位置指令値及び速度指令値を生成する。なお、当該フィードバック制御で採用されるフィードバック方式は、モータ2が組み込まれる機械装置(搬送装置等)の所定の目的(例えば、荷物の搬送)に好適なサーボループが形成される方式であり、適宜設計することができる。そして、サーボ制御部42で生成されたこれらの指令値は、駆動信号として遮断部43に送られる。
【0031】
次に、遮断部43は、安全制御部52から非常停止指令を受けた場合において、後述する駆動部44にサーボ制御部42からの駆動信号を電気的に通過させないことで、駆動部44を停止させる。これによりサーボ制御部42が駆動信号を送出したとしても、モータ2によるトルクの出力が停止することになる。一方、遮断部43に非常停止指令が入力されない場合には、遮断部43はサーボ制御部42から出力された指令値を伴う駆動信号をそのまま駆動部44に通過させる。
【0032】
駆動部44は、遮断部43を介して、サーボ制御部42からの駆動信号を受ける。駆動部44は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッ
チング素子で構成される回路を有し、サーボ制御部42からの駆動信号に基づいて、スイッチング素子をPWM方式に従ってオン・オフさせるための信号を生成するとともに、そ
の信号に従ってスイッチング素子をオン・オフさせるインバータ装置である。これによりモータ2に交流の駆動電流が供給され、モータ2が駆動される。一方、遮断部43が作動し駆動信号の駆動部44への伝達が遮断されると、駆動部44からの出力がオフに固定される。これによりモータ2への電力供給が停止されるので、モータ2からのトルクの出力が停止することになる。このように第1受信部41、サーボ制御部42、遮断部43、駆動部44は、モータ2のサーボ制御に直接関連する機能部である。
【0033】
次に、モータ2の安全制御に関連する機能部について説明する。第2受信部51は、第1受信部41と同様に、安全エンコーダ22からのフィードバック信号を受信する機能部であり、安全エンコーダ22からのフィードバック信号は通信経路L2を経由して、第2受信部51に入力される。通信経路L2は、安全エンコーダ22の出力に対応した二重化された経路である。そして、第2受信部51による受信のための安全エンコーダ22とサーボドライバ4との間の通信に関する構成として、第2受信部51も第1受信部41と同様に再構成可能デバイスを含んでいる。当該再構成可能デバイスについては、既に述べたとおりである。第2受信部51により受信された安全エンコーダ22からのフィードバック信号は、安全制御部52に引き渡される。
【0034】
そして、安全制御部52は、安全エンコーダ22からのフィードバック信号に基づいてモータ2の動作に関する安全制御を実行する機能部である。具体的には、モータ2の位置や速度等、モータ2の動作状態をフィードバック信号から算出し、その動作状態が予め定められている範囲から逸脱していないか判断を行う。仮に当該範囲から逸脱していると判断される場合には、安全制御部52から遮断部43に対して非常停止指令が出される。モータ2の動作の安全制御としてどのような判断を行うかについては、ユーザが適宜選択し、その判断内容に応じて安全制御部52を構築すればよい。また、安全制御部52には安全エンコーダ22からのフィードバック信号が入力されていることから、安全制御部52は、安全エンコーダ22の動作の故障の発生を判断し、故障が発生していると判断される場合には、安全制御部52から遮断部43に対して非常停止指令が出される。安全エンコーダ22の動作に関連する故障判断は、第2受信部51により受信された二重化されたフィードバック信号を互いに比較する等の公知の手法を用いて実現できる。このように第2受信部51、安全制御部52は、モータ2の安全制御に直接関連する機能部である。
【0035】
次に、サーボドライバ4と安全エンコーダ22との通信環境の調整に関連する機能部について説明する。通信部61は、サーボドライバ4の外部に存在する外部装置10と通信可能に接続するための機能部である。例えば、外部装置10は、パーソナルコンピュータであり、PCU等の演算部とメモリ等のデータの保持部を有する。そして、図2に示す外部装置10は、その保持部に、第1受信部41及び第2受信部51が対応可能な種類の一又は複数の安全エンコーダに対応する一又は複数の通信プロトコル情報を保持している。外部装置10では、これらの通信プロトコル情報は、ユーザの選択によりサーボドライバ4内にダウンロード可能に保持されている。
【0036】
取得部62は、サーボシステム100において、サーボドライバ4に接続されるモータ2が変更され、そこに搭載されている安全エンコーダのための通信プロトコルが、図2に示す安全エンコーダ22に対応する通信プロトコルと異なることになった場合に、その変更後の安全エンコーダに対応する通信プロトコル情報を、通信部61を介して外部装置10から取得する機能部である。なお、取得部62による変更後の安全エンコーダに対応する通信プロトコル情報の取得形態については、図2に示す形態には限られない。例えば、サーボドライバ4が、上記一又は複数の安全エンコーダに対応する一又は複数の通信プロトコル情報を保持する保持部(メモリ)を備えている場合、取得部62は、当該保持部から必要な通信プロトコル情報を取得するようにしてもよい。また、これら以外の取得形態を採用しても構わない。
【0037】
処理部63は、取得部62によって取得された、変更後の安全エンコーダに対応する通信プロトコル情報に従って、第1受信部41と第2受信部51を、その変更後の安全エンコーダに対応する構成に適合させる機能部である。上記の通り、第1受信部41と第2受信部51は、安全エンコーダとサーボドライバ4との間の通信に関する構成として再構成可能デバイスを有している。そこで、処理部63は、変更後の安全エンコーダに対応する通信プロトコル情報を用いて、当該再構成可能デバイスを変更後の安全エンコーダに対応するように再構成する。また、サーボシステム100においては、安全エンコーダ22からのフィードバック信号を用いた安全制御が行われているところ、不用意に第1受信部41と第2受信部51の構成が再構成されてしまうと、当該安全制御に支障を来すことになる。そこで、処理部63は、取得部62により取得された通信プロトコル情報(第1受信部41と第2受信部51に適用されようとする通信プロトコル情報)と、変更後の安全エンコーダ(安全エンコーダ22から変更が予定されている安全エンコーダ)との組合せの適否を確認するための所定の確認処理を行う。当該所定の確認処理を経て、問題が無いことが確認されたら、上記のように第1受信部41と第2受信部51の再構築が行われる。
【0038】
ここで、上記の所定の確認処理を含み、サーボシステム100において、サーボドライバ4に接続されているモータ2を別のモータに変更するとともに、その変更後のモータに搭載されている安全エンコーダに対応する通信プロトコルが、安全エンコーダ22に対応する通信プロトコルと異なっている場合における、サーボドライバ4における通信環境の調整方法について、図3に基づいて説明する。また、上記のようにサーボドライバ4に接続される安全エンコーダが変更された後のサーボシステム100の概略構成を図4に示す。図4に示すように、本実施形態では、モータ2からモータ20に変更されており、変更後のモータ20は、モータ本体210と安全エンコーダ220を有している。モータ本体210は、モータ2のモータ本体21と実質的に同じであるが、安全エンコーダ220に対応する通信プロトコルは、安全エンコーダ22に対応する通信プロトコルとは異なっている。
【0039】
図3に示す通信環境の調整方法は、ユーザにより外部装置10が通信部61を介してサーボドライバ4に接続されてから開始される。先ず、S101では、外部装置10からサーボドライバ4へのアクセスに関するセキュリティの確認処理が行われる。具体的には、サーボドライバ4へのアクセスを可能とするキー情報が事前に外部装置10に付与され、外部装置10は、そのキー情報を使ってサーボドライバ4にアクセス要求を出し、サーボドライバ4が当該要求を認めることで、外部装置10によるサーボドライバ4へのアクセスが許可される。S101の処理が終了すると、S102へ進む。
【0040】
S102では、処理部63によって、ユーザに対して、変更後の安全エンコーダに対応する通信プロトコルの情報入力が要求される。具体的には、処理部63は、通信部61を介して外部装置10に対して、入力要求の指令を送信する。当該指令を受け取った外部装置10は、そのディスプレイに、変更後の安全エンコーダに対応する通信プロトコルの情報の入力を要求する旨を表示し、ユーザによる入力を受け付ける。ユーザの入力が受け付けられると、その入力情報は外部装置10から通信部61を介して処理部63に送られる。なお、この入力された通信プロトコルの情報は、外部装置10から処理部63に送られるだけであり、当該情報に基づいて取得部62による新しい通信プロトコル情報の取得は行われない。S102の処理が終了すると、S103へ進む。
【0041】
S103では、S102での情報入力とは別のユーザの操作をトリガとして、取得部63による安全エンコーダ220に対応する通信プロトコル情報の取得が行われる。当該ユーザの操作は、外部装置10での操作により行われてもよく、サーボドライバ4での操作により行われてもよい。外部装置10からサーボドライバ4に送信された安全エンコーダ
220に対応する通信プロトコル情報は、一次的にサーボドライバ4の保持部(メモリ)に記憶される。その後、S104で、所定の確認処理が行われる。所定の確認処理として、第1に、S103で取得された通信プロトコル情報のバイナリデータに基づいて、通信プロトコル情報に即したデータ形式となっているか等の確認が行われる。
【0042】
次に、第2の処理として、S102でユーザに入力された通信プロトコル情報に関する情報と、S103で取得された安全エンコーダ220に対応する通信プロトコル情報とを照合し、新しく接続される安全エンコーダ220に正しく対応する通信プロトコル情報が取得されているか、すなわち、取得された通信プロトコル情報と安全エンコーダ220との組合せの適否が確認される。上記の通り、新しい通信プロトコル情報に関し、S102の処理とS103の処理は独立している。そのため、第2の処理により両者を照合することで、安全エンコーダを変更しようとするユーザの意思に即した通信プロトコル情報が、サーボドライバ4に適用されようとしていることを確認することができる。S104の処理で問題がなければ、S105の処理が行われる。仮に、S104の処理で問題があった場合には、サーボドライバ4の通信環境の調整処理は中断される。
【0043】
S105では、処理部63が、取得部62によって取得された安全エンコーダ220に対応する通信プロトコル情報を適用して、その通信プロトコル情報に従って、第1受信部41と第2受信部51を、安全エンコーダ220に対応する構成に適合させる。この結果、サーボドライバ4は、安全エンコーダ22と通信を行いモータ2の駆動が可能だった状態から、安全エンコーダ220と通信を行いモータ20の駆動が可能な状態へと遷移する。S105の処理が終了すると、S106へ進む。
【0044】
S106では、S105で安全エンコーダ220と通信可能な状態になったことを踏まえ、安全エンコーダ220とサーボドライバ4との通信経路を変更する処理が行われる。ここで、サーボシステム100において、サーボドライバ4が安全エンコーダ20と接続されている場合は、事前に知られている安全エンコーダ20の通信プロトコルを共通の基準として、サーボ制御部42によるモータ2のサーボ制御と、安全制御部52による安全制御が実行されるようにサーボドライバ4が設計された。そのため、安全エンコーダ22からのフィードバック信号が異なる通信経路L1、L2で、それぞれサーボ制御部42と安全制御部52に送信されていても、サーボ制御と安全制御は好適に協働した状態で実行することが可能であった。しかし、上記のように、サーボドライバ4に接続される安全エンコーダが安全エンコーダ220に変更されてしまうと、当初のサーボドライバ4の設計の前提である、安全エンコーダとサーボドライバ4との間の通信環境が変更されたことになるため、サーボ制御と安全制御の内容次第では、制御タイミングのずれ等の支障が生じる恐れがある。
【0045】
そこで、S106では、通信経路の変更処理として、安全制御部52については、変更前と同じ通信経路L2を経由して得られた安全エンコーダ220のフィードバック信号に基づいて安全制御を実行することが許可される。すなわち、安全エンコーダの変更の前後において、安全制御部52が受け取るフィードバック信号は、第2受信部51により受信されたフィードバック信号とされる。一方で、サーボ制御部42については、変更前の通信経路L1を経由した安全エンコーダ220からのフィードバック信号の取得は禁止される。代わりに、通信経路L2を経由して安全制御部52が受け取った安全エンコーダ220からのフィードバック信号が、安全制御部52からサーボ制御部42に引き渡される。図4において、安全制御部52からサーボ制御部42への引き渡しのための通信経路がL3で表されている。通信経路L3は、サーボドライバ4の内部通信経路であり、SPI(Seral Peripheral Interface)通信経路が例示できる。そして、サーボ制御部42は、その引き渡された安全エンコーダ220のフィードバック信号に基づいてサーボ制御を実行することが許可される。すなわち、安全エンコーダの変更により、サーボ制御部42が受
け取るフィードバック信号も、第2受信部51により受信されたフィードバック信号とされる。この構成を採用することで、サーボ制御部42と安全制御部52との間では共通のフィードバック信号を利用することになり、安全エンコーダ220への変更に起因する制御タイミングのずれ等の支障を抑制することができる。
【0046】
図3に示す通信環境の調整方法により、安全エンコーダを用いたモータの好適な安全制御の環境は担保されながら、サーボドライバ4を取り替える必要なく、通信プロトコルの異なる安全エンコーダへの変更を可能が可能となる。
【0047】
<その他の実施形態>
本願開示のその他の実施形態について、図5に基づいて説明する。図5は、図2に示す構成から安全エンコーダが変更された後の、サーボシステム100の概略構成を示す。本実施形態では、図4に示す場合と同じようにモータ2からモータ20に変更されているとともに、更に、安全エンコーダ221が取り付けられている。安全エンコーダ221は、モータ20により駆動されるボールねじ15の変位(回転角度)を検出可能なエンコーダであって、その内部に変位検出のための検出部を2つ有し、その2つの検出部によって同時にスキャニングを行なうことにより独立した検出信号の出力が可能となるように二重化された回路を有している。なお、別法として、モータ20により駆動され変位するテーブル16の変位を検出可能なリニアエンコーダを安全エンコーダ221として形成してもよい。このような形態では、2つの安全エンコーダ220、221を利用することで、テーブル16の位置制御の精度向上や、サーボシステム100の安全機能向上を図ることができる。
【0048】
このように当初の安全エンコーダ22を複数の安全エンコーダ(安全エンコーダ220、221)に変更する形態においても、図3に示す処理の流れに従って、処理部63により安全エンコーダ220、221に対応する通信プロトコル情報を第1受信部41、第2受信部42に適用することで、変更後の複数の安全エンコーダとサーボドライバ4との通信を構築することができる。なお、本実施形態の場合、安全エンコーダ221からのフィードバック信号は第2受信部51により受信され、そのフィードバック信号は通信経路L3を経由して安全制御部52からサーボ制御部42に引き渡される。
【0049】
<付記1>
モータ(2、20)をサーボ制御するモータ制御装置(4)であって、
前記モータ(2、20)の出力軸の変位を検出する複数の検出部を有する安全エンコーダ(22、220)からの検出信号を受信する受信部(41、51)であって、該安全エンコーダ(22、220)と前記モータ制御装置(4)との間の通信を実現するための通信プロトコル情報に従って変更可能に構成された受信部(41、51)と、
前記モータ制御装置(4)に接続される前記安全エンコーダが変更される場合、該変更後の第1安全エンコーダ(220)に対応する第1通信プロトコル情報を取得する取得部(62)と、
前記取得された第1通信プロトコル情報と前記第1安全エンコーダとの組合せの適否を確認する所定の確認処理を経て、該第1通信プロトコル情報に従って前記受信部(41、51)を前記第1安全エンコーダ(220)に対応する構成に適合させる処理部(63)と、
を備える、モータ制御装置。
【0050】
<付記2>
モータ(2、20)をサーボ制御するモータ制御装置(4)において、該安全エンコーダ(22、220)との通信環境を調整する方法であって、
前記モータ制御装置(4)は、前記モータ(2、20)の出力軸の変位を検出する複数
の検出部を有する安全エンコーダ(22、220)からの検出信号を受信する受信部(41、51)であって、該安全エンコーダ(22、220)と前記モータ制御装置(4)との間の通信を実現するための通信プロトコル情報に従って変更可能に構成された受信部(22、220)を備え、
前記方法は、
前記モータ制御装置(4)に接続される前記安全エンコーダが変更される場合、該変更後の第1安全エンコーダ(220)に対応する第1通信プロトコル情報を取得するステップ(S103)と、
前記取得された第1通信プロトコル情報と前記第1安全エンコーダとの組合せの適否を確認する所定の確認処理を経て、該第1通信プロトコル情報に従って前記受信部(41、51)を前記第1安全エンコーダ(220)に対応する構成に適合させるステップ(S105)と、
を含む、モータ制御装置における通信環境の調整方法。
【符号の説明】
【0051】
2 モータ
4 サーボドライバ
5 PLC
10 外部装置
15 ボールねじ
16 テーブル
22、220、221 安全エンコーダ
41 第1受信部
42 サーボ制御部
51 第2受信部
52 安全制御部
61 通信部
62 取得部
63 処理部
100 サーボシステム
図1
図2
図3
図4
図5