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特許7581991紫外線照射装置およびそれを備える画像記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】紫外線照射装置およびそれを備える画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241106BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20241106BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20241106BHJP
   H01L 33/64 20100101ALI20241106BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 307
B41J2/01 401
H01L33/00 L
H01L33/62
H01L33/64
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021042205
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2021150649
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020046592
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 真裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-246954(JP,A)
【文献】特開2006-021435(JP,A)
【文献】特開2010-188729(JP,A)
【文献】特開2007-083629(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215095(JP,U)
【文献】特開2012-101367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
H01L 33/00
H01L 33/62
H01L 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有して主走査方向に移動する吐出ヘッドにより被印刷物に吐出される紫外線硬化型のインクを硬化させる紫外線照射装置であって、
前記主走査方向に第1ピッチで並んで配置され、かつ前記主走査方向に直交する方向である副走査方向に前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチで並んで配置された、紫外線を発光する複数の発光ダイオードチップを備え、
前記被印刷物は、各前記発光ダイオードチップの紫外線照射面との距離がハイギャップとなる低部、および前記紫外線照射面との距離が前記ハイギャップよりも小さいローギャップとなる高部を含み、
前記紫外線照射装置は、前記複数の発光ダイオードチップによる紫外線の照度が、前記低部のうちの前記複数のノズルのうち前記副走査方向の最外部に位置するノズルにより前記インクが吐出された領域において、前記吐出されたインクが硬化するのに必要とされる最低照度以上となるように前記被印刷物に前記紫外線を照射する、紫外線照射装置。
【請求項2】
前記複数の発光ダイオードチップによる紫外線の照度が、前記低部のうちの前記副走査方向の最外部に位置する前記ノズルにより前記インクが吐出された前記領域において前記最低照度以上となるように前記複数の発光ダイオードチップを制御する制御部をさらに備えた、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記照度が、前記低部のうちの前記副走査方向の最外部に位置する前記ノズルにより前記インクが吐出された前記領域において前記最低照度以上となるように、前記紫外線照射面から前記被印刷物までの前記距離に関する情報に基づいて前記複数の発光ダイオードチップを制御する、請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記紫外線照射面から前記被印刷物までの前記距離を検出する距離検出器をさらに備え、
前記制御部は、前記照度が、前記低部のうちの前記副走査方向の最外部に位置する前記ノズルにより前記インクが吐出された前記領域において前記最低照度以上となるように、前記距離検出器により検出された前記距離に基づいて前記複数の発光ダイオードチップを制御する、請求項3に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記紫外線照射装置は、前記複数の発光ダイオードチップのそれぞれの輝度が互いに等しい状態において、前記複数の発光ダイオードチップによる紫外線の前記照度が、前記低部のうちの前記副走査方向の最外部に位置する前記ノズルにより前記インクが吐出された前記領域において前記最低照度以上となるように前記被印刷物に前記紫外線を照射する、請求項1に記載された紫外線照射装置。
【請求項6】
前記最低照度は、1.1W/cmである、請求項1乃至5の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記高部において、前記複数の発光ダイオードチップによる紫外線の最高照度は、前記第1ピッチと前記第2ピッチとが同じである場合に得られる前記複数の発光ダイオードチップによる紫外線の最高照度以下である、請求項1乃至6の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記高部における最高照度が、4.5W/cm以下である、請求項1乃至7の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記ハイギャップは7mm以上である、請求項1乃至8の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
前記ハイギャップと前記ローギャップとの差は5mm以上である、請求項1乃至9の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項11】
前記ハイギャップは18mm以下である、請求項1乃至10の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項12】
前記ローギャップは2mm以上である、請求項1乃至11の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項13】
前記第1ピッチをxとし、前記第2ピッチをyとすると、1.4x≦yが成り立っている、請求項1乃至12の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項14】
前記第1ピッチをxとし、前記第2ピッチをyとすると、y≦2.1xが成り立っている、請求項1乃至13の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項15】
前記第1ピッチは4mm以上である、請求項1乃至14の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項16】
前記複数の発光ダイオードチップを支持する支持基板と、
前記支持基板の面のうち前記複数の発光ダイオードチップが設けられた面と反対側の面に設けられたヒートシンクであって、前記支持基板の面と直交する方向に延在する複数のフィンを有するヒートシンクをさらに備えた、請求項1乃至15の何れか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項17】
複数のノズルを有して主走査方向に移動する吐出ヘッドにより被印刷物に吐出される紫外線硬化型のインクを硬化させる紫外線照射装置であって、
前記主走査方向に第1ピッチで並んで配置され、かつ前記主走査方向に直交する方向である副走査方向に前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチで並んで配置された、紫外線を発光する複数の発光ダイオードチップと、
前記被印刷物は、各前記発光ダイオードチップの紫外線照射面との距離がハイギャップとなる低部、および前記紫外線照射面との距離が前記ハイギャップよりも小さいローギャップとなる高部を含み、
前記紫外線照射装置は、前記複数の発光ダイオードチップによる紫外線の照度が、前記低部のうちの前記複数の発光ダイオードチップのうち前記副走査方向の最外部に位置する最外発光ダイオードチップに対向して配置される領域において、前記吐出されたインクが硬化するのに必要とされる最低照度以上となるように前記被印刷物に前記紫外線を照射する、紫外線照射装置。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項に記載の紫外線照射装置および前記吐出ヘッドが設けられたキャリッジを備える、画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置および当該紫外線照射装置を備える画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば特許文献1に示されるように、インクジェットプリンタ等の画像記録装置に用いられ、紫外線により硬化する紫外線硬化型のインクに対して紫外線を照射する紫外線照射装置(特許文献1では紫外線光源と記載)が知られている。この文献に開示される紫外線照射装置は、被印刷物に着弾されたインク液滴に向けて紫外線を照射することで、当該インクを硬化させて被印刷物に定着させる。このように紫外線硬化型のインクを用いれば、例えば用紙以外の樹脂や金属等にも印刷を行うことが可能となると共に光沢感のある被印刷物が得られる。
【0003】
上記文献の紫外線照射装置には複数の発光ダイオードチップが支持基板上に設けられている。この発光ダイオードチップは、支持基板の長手方向と短手方向とに沿ってマトリクス状に配置される。支持基板の長手方向における発光ダイオードチップの配列ピッチは、支持基板の短手方向における発光ダイオードチップの配列ピッチよりも大きく設定される。このような構成において、配列ピッチの小さい方向に被印刷物を搬送しつつ紫外線を被印刷物に連続的に照射することで、紫外線硬化型のインクに含有されるモノマーが酸素に結合されてしまうという酸素阻害の現象が生じ難くなるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-288457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、紫外線照射装置を備える画像記録装置では、吐出ヘッドと被印刷物とを相対移動させながら印刷を行う場合に、吐出ヘッドのノズルから被印刷物上のインク滴の着弾位置までの距離が変化するような立体的な形状を有する被印刷物に対して印刷することが求められている。このような立体的な形状を有する被印刷物に対しては、ノズルからの距離が小さい部分(ローギャップ印刷される部分)へのインク滴吐出による印刷と、ノズルから距離が大きい部分(ハイギャップ印刷される部分)へのインク滴吐出による印刷と、が行われる。この後、発光ダイオードチップと被印刷物とを相対移動させながら、被印刷物に対しては紫外線が照射されるが、ローギャップ印刷された部分は、発光ダイオードチップの紫外線照射面との距離も小さくなり、ハイギャップ印刷された部分は、発光ダイオードチップの紫外線照射面との距離も大きくなる。このように、被印刷物に高低差がある場合、インクを硬化させ難いのはハイギャップ印刷された部分であるため、紫外線の照射条件はハイギャップ印刷される部分の照度に基づいて決められる。しかしながら、上記従来の紫外線照射装置においては、被印刷物の搬送方向とは異なる方向における照射光量のむらについては言及されているが、ハイギャップ印刷される部分について言及されていない。そのため、ハイギャップ印刷された部分において、発光ダイオードチップの配列ピッチが大きい方向の端部における照度は低くなり、それ故インクの硬化むらが生じてしまう。一方、上記の通りハイギャップ印刷された部分の照度に基づき照射条件を決めることに伴い、ローギャップ印刷された部分に対しては過剰な光量を照射することになりかねないため、被印刷物の紫外線照射による温度上昇の抑制を図る必要もある。
【0006】
そこで、本発明は、ハイギャップ印刷された部分においてインクの硬化むらを抑制することでインク硬化性を向上することができると共に、ローギャップ印刷された部分における被印刷物の温度上昇を抑制することができる紫外線照射装置およびそれを備える画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紫外線照射装置は、複数のノズルを有して主走査方向に移動する吐出ヘッドにより被印刷物に吐出される紫外線硬化型のインクを硬化させる紫外線照射装置であって、前記主走査方向に第1ピッチで並んで配置され、かつ前記主走査方向に直交する方向である副走査方向に前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチで並んで配置された、紫外線を発光する複数の発光ダイオードチップを備え、前記被印刷物は、各前記発光ダイオードチップの紫外線照射面との距離がハイギャップとなる低部、および前記紫外線照射面との距離が前記ハイギャップよりも小さいローギャップとなる高部を含み、前記紫外線照射装置は、前記複数の発光ダイオードチップによる紫外線の照度が、前記低部のうちの前記複数のノズルのうち前記副走査方向の最外部に位置するノズルにより前記インクが吐出された領域において、前記吐出されたインクが硬化するのに必要とされる最低照度以上となるように前記被印刷物に前記紫外線を照射するものである。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、複数のノズルを有して主走査方向に移動する吐出ヘッドにより被印刷物に吐出される紫外線硬化型のインクを硬化させる紫外線照射装置であって、前記主走査方向に第1ピッチで並んで配置され、かつ前記主走査方向に直交する方向である副走査方向に前記第1ピッチよりも大きい第2ピッチで並んで配置された、紫外線を発光する複数の発光ダイオードチップと、前記被印刷物は、各前記発光ダイオードチップの紫外線照射面との距離がハイギャップとなる低部、および前記紫外線照射面との距離が前記ハイギャップよりも小さいローギャップとなる高部を含み、前記紫外線照射装置は、前記複数の発光ダイオードチップによる紫外線の照度が、前記低部のうちの前記複数の発光ダイオードチップのうち前記副走査方向の最外部に位置する最外発光ダイオードチップに対向して配置される領域において、前記吐出されたインクが硬化するのに必要とされる最低照度以上となるように前記被印刷物に前記紫外線を照射するものである。
【0009】
本発明に従えば、第2ピッチを第1ピッチよりも大きくすることによって、ローギャップとなる高部が印刷されたときに、最高照度を必要以上に低下させることなく被印刷物の温度上昇を抑制することができる。また、ハイギャップとなる低部に印刷された部分において副走査方向の端部領域における紫外線の照度をインクが硬化するのに必要な最低照度以上とすることで、ハイギャップとなる低部に印刷された部分においてインクの硬化むらを抑制することができ、それ故インク硬化性を向上することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ローギャップとなる高部に印刷された部分における被印刷物の温度上昇を抑制できると共に、ハイギャップとなる低部に印刷された部分におけるインク硬化性を向上することができる紫外線照射装置およびそれを備える画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る画像記録装置を示す斜視図である。
図2図1のキャリッジに搭載された吐出ヘッドおよび紫外線照射装置の配置例を示す平面図である。
図3図1の画像記録装置の構成を示すブロック図である。
図4図1の吐出ヘッドにおけるノズル列および紫外線照射装置における発光ダイオードチップの配置例を示す底面図である。
図5】紫外線照射装置の内部構成を概略的に示す図である。
図6】ハイギャップおよびローギャップを示す図である。
図7】シミュレーションにより得た、第1ピッチに対する第2ピッチの比率と発光ダイオードチップへの供給電流値との関係を示すグラフである。
図8】シミュレーションにより得た、第1ピッチに対する第2ピッチの比率と最高照度との関係を示すグラフである。
図9】シミュレーションにより得た、ノズル列における副走査方向の位置と照度との関係を示すグラフである。
図10】変形例の画像記録装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る紫外線照射装置およびそれを備える画像記録装置について図面を参照して説明する。以下に説明する紫外線照射装置および画像記録装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る画像記録装置1を示す斜視図である。図1において、互いに直交する方向を、上下方向、左右方向、および前後方向とする。なお、左右方向が後述の主走査方向Dsであり、前後方向が後述の副走査方向Dfである。この画像記録装置1は、印刷用紙等の被印刷物Wへの印刷のみならず、例えば各種グッズ等である樹脂等の被印刷物W(図6)に印刷するグッズプリントをも行うものである。なお、被印刷物Wは3Dプリンタにより形成された造形物であってもよい。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の画像記録装置1は、筐体2と、キャリッジ3と、操作キー4と、表示部5と、プラテン6と、上部カバー7とを備える。また、画像記録装置1は図3の制御ユニット19を備える。
【0015】
筐体2は箱状に形成されている。筐体2は前面に開口部2aを有すると共に背面に図略の開口部を有している。筐体2の右側前方の位置には操作キー4が設けられている。また、操作キー4の後方の位置には表示部5が設けられている。操作キー4はユーザによる操作入力を受け付ける。表示部5は例えばタッチパネルで構成され、所定情報を表示する。表示部5の一部は所定のタイミングで操作キーとしても機能する。制御ユニット19は、操作キー4からの入力又は図略の通信インタフェースを介する外部入力に基づき印刷機能を実現すると共に表示部5の表示を制御する。
【0016】
キャリッジ3は主走査方向Dsに沿って往復動可能に構成されている。図2に示すように、キャリッジ3には、2つの吐出ヘッド10(10A,10B)および2つの紫外線照射装置40(40A,40B)が搭載されている。吐出ヘッド10としては、例えば紫外線硬化型のインクを吐出するインクジェットヘッドを用いることができる。また、紫外線照射装置40は、紫外線を発光する複数の発光ダイオードチップDT(図4)を有し、吐出ヘッド10により吐出された上記インクを硬化させるための紫外線を照射する。吐出ヘッド10Aおよび吐出ヘッド10Bは副走査方向Dfに沿って並んで配置されている。吐出ヘッド10Bは吐出ヘッド10Aの前方に配置されている。また、紫外線照射装置40Aおよび紫外線照射装置40Bは副走査方向Dfに沿って並んで配置されている。紫外線照射装置40Bは紫外線照射装置40Aの前方に配置されている。さらに、吐出ヘッド10Aおよび紫外線照射装置40Aは主走査方向Dsに沿って並んで配置されている。紫外線照射装置40Aは吐出ヘッド10Aの右方に配置されている。また、吐出ヘッド10Bおよび紫外線照射装置40Bは主走査方向Dsに沿って並んで配置されている。紫外線照射装置40Bは吐出ヘッド10Bの右方に配置されている。
【0017】
ここで、図2において、印刷処理における1パス時にはキャリッジ3は主走査方向Dsの左方に移動する。これにより、印刷処理時において吐出ヘッド10および紫外線照射装置40は左方に移動する。この場合、吐出ヘッド10は主走査方向Dsの左方に移動しつつ被印刷物Wにインクを吐出し、紫外線照射装置40は主走査方向Dsの左方に移動しつつ被印刷物Wに着弾したインクに紫外線を照射する。これによって、印刷処理時のキャリッジ3の移動方向において吐出ヘッド10よりも後方側に紫外線照射装置40が位置されるので、被印刷物Wに着弾した直後のインクに対して紫外線を照射することができる。
【0018】
また、印刷処理の1パスが終了すると、キャリッジ3は主走査方向Dsの右方に移動して主走査方向Dsの所定位置に戻る。これにより、吐出ヘッド10および紫外線照射装置40は主走査方向Dsの右方に移動する。この場合、吐出ヘッド10はインクを吐出することなく主走査方向Dsの右方に移動し、紫外線照射装置40は主走査方向Dsの右方に移動しつつ、印刷処理時に吐出されたインクに対して紫外線を照射する。これによって、インクに対して紫外線を十分に照射することができ、当該インクの硬化性を向上することができる。
【0019】
本実施形態において、吐出ヘッド10Aは、カラーインクと総称されることがあるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のインクを吐出する。吐出ヘッド10Aにはこれらの各インクを吐出するノズル列NLが副走査方向Dfに沿ってそれぞれ延在して設けられる。各ノズル列NLは主走査方向Dsに沿って一定間隔で設けられる。なお、各ノズル列NLの主走査方向Dsにおける配置順序は、図2に示すような左側からイエロー(Y)色のインクを吐出するノズル列NL、マゼンタ(M)色のインクを吐出するノズル列NL、シアン(C)色のインクを吐出するノズル列NL、およびブラック(K)色のインクを吐出するノズル列NLの順に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0020】
一方、吐出ヘッド10Bは、ホワイト(W)のインクおよびクリア(Cr)のインクを吐出する。吐出ヘッド10Bにはこれらの各インクを吐出するノズル列NLが副走査方向Dfに沿ってそれぞれ延在して設けられる。各ノズル列NLは主走査方向Dsに沿って一定間隔で設けられる。吐出ヘッド10Bにおける各ノズル列NLの主走査方向Dsにおける間隔は、吐出ヘッド10Aにおける各ノズル列NLの主走査方向Dsにおける間隔と異なってもよいし(図2の例)、同じにしてもよい。なお、各ノズル列NLの主走査方向Dsにおける配置順序は、図2に示すような左側からホワイト(W)色のインクを吐出するノズル列NL、およびクリア(K)色のインクを吐出するノズル列NLの順に限定されるものではなく、逆に配置することもできる。以上の6色のインクが被印刷物Wに吐出されることで当該被印刷物Wにカラー画像が印刷される。具体的に、被印刷物Wとしての布帛にカラー画像を印刷する際には、当該布帛の色や布帛の材質への影響を低減するために、下地インクとして白インクが先に吐出され、当該白インクの上にカラーインクが吐出される。なお、クリアインクは光沢を付与する場合や印刷部分の保護を行う場合に吐出される。
【0021】
プラテン6は被印刷物Wを載置可能に構成されている。プラテン6は所定の厚みを有し、例えば副走査方向Dfを長手方向とする矩形状の板材により構成される。プラテン6は図略のプラテン支持台により、取り外し可能に支持されている。上記のプラテン支持台は被印刷物Wへの印刷を実行する印刷位置と被印刷物Wをプラテン6から取り外す着脱位置との間で移動可能に構成されている。印刷位置とはプラテン6が吐出ヘッド10に対向する位置であり、着脱位置とは上記のプラテン支持台が筐体2の外側に配置される位置であって被印刷物Wをプラテン6上に載置可能な位置である。印刷時には、プラテン6が副走査方向Dfに移動するので、プラテン6上に載置された被印刷物Wは副走査方向Dfに搬送される。
【0022】
上部カバー7は、その前部を持ち上げると、回動可能に構成された基端を支点として上方へ回動するように構成されている。これにより、筐体2の内部が露出するようになっている。
【0023】
次に、本実施形態の画像記録装置1の各構成の機能についてブロック図を参照しつつ説明する。図3に示すように、本実施形態の画像記録装置1は、上述の構成要素の他、モータドライバIC30,31、ヘッドドライバIC32,36、搬送モータ33、キャリッジモータ34、照射装置ドライバIC37,38、内部電源15、および受電部16を備えている。なお、画像記録装置1は吐出ヘッド10に供給するためのインクを貯留する図略のインクタンクを備える。
【0024】
制御ユニット19は、CPU20、記憶部(ROM21、RAM22、EEPROM23、HDD24)およびASIC25を有している。CPU20は、画像記録装置1の制御部であり、上記記憶部に接続されていると共に各ドライバIC30~32,36~38および表示部5を制御する。
【0025】
CPU20は、ROM21に記憶された所定のプログラムを実行することにより、種々の機能を実行する。CPU20は、制御ユニット19に1つのプロセッサとして実装されていてもよいし、互いに協働する複数のプロセッサとして実装されていてもよい。
【0026】
ROM21には、CPU20が印刷処理を実行させるための印刷制御プログラムが記憶されている。RAM22にはCPU20の演算結果が記憶される。EEPROM23にはユーザが入力した各種の初期設定情報が格納されている。HDD24には特定情報などが記憶される。この特定情報は、外部漏洩が好ましくない機密性の高い情報であり、例えばユーザに関する情報、画像記録装置1が外部から受信し且つ送信元を特定するユーザIDを含むジョブデータ、ジョブデータ中のユーザIDを含むユーザ使用履歴情報、パスワードとセキュアジョブに関するデータとを含むセキュアジョブデータ、印刷履歴、およびクラウド設定データ等が含まれる。ユーザに関する情報には、例えば、電話帳情報、Eメールアドレス情報、画像記録装置1の管理者(セキュリティ管理者)情報、およびネットワーク設定情報等が含まれる。CPU20は、画像記録装置1がジョブデータを受信した場合、当該ジョブデータ中のユーザIDを含むユーザ使用履歴情報をHDD24に記憶させる。
【0027】
ASIC25には、モータドライバIC30,31と、ヘッドドライバIC32,36と、照射装置ドライバIC37,38とが接続されている。CPU20は、ユーザから印刷ジョブを受け付けると、印刷制御プログラムに基づいて、印刷指令をASIC25へ出力する。ASIC25は、印刷指令に基づいて各ドライバIC30~32,36~38を駆動する。CPU20は、モータドライバIC30により搬送モータ33を駆動することでプラテン6を副走査方向Dfに移動させ、被印刷物Wを搬送させる。また、CPU20は、モータドライバIC31によりキャリッジモータ34を駆動してキャリッジ3を移動させる。また、CPU20は、ヘッドドライバIC32,36により、移動するキャリッジ3に搭載された吐出ヘッド10からインクを吐出させ、搬送される被印刷物Wに画像データを印刷させる。さらに、CPU20は、照射装置ドライバIC37,38により紫外線照射装置40A,40Bからインクを硬化させるための紫外線を照射させる。このような流れで印刷処理が行われる。なお、制御ユニット19は紫外線照射装置40A、40Bの制御も行うため、制御ユニット19を本実施形態の紫外線照射装置の一部と捉えてもよい。制御ユニット19、及び制御ユニット19の内部のCPU20はそれぞれ「制御部」の一例である。
【0028】
内部電源15は筐体2内の所定位置に設けられている。内部電源15は画像記録装置1の本体電源スイッチがOFF状態にあるときに制御ユニット19を動作可能にする。内部電源15は、例えば二次電池である。また、受電部16は筐体2から外部に露出するように設けられ、外部電源から電力の供給を受ける。本体電源スイッチがON状態にあるときには、外部からの電力が受電部16を介して画像記録装置1の各部へ供給される。本体電源スイッチの状態によらずに内部電源15には外部からの電力が受電部16を介して供給され、内部電源15はこの電力により充電される。
【0029】
続いて、本実施形態の紫外線照射装置40における複数の発光ダイオードチップDTの配置について説明する。本実施形態において、発光ダイオードチップDTは紫外線を発生させる半導体素子である。なお、以下では紫外線照射装置40Aおよび吐出ヘッド10Aについて代表的に説明するが、紫外線照射装置40Bおよび吐出ヘッド10Bについても紫外線照射装置40Aおよび吐出ヘッド10Aと同様に構成することができる。
【0030】
図4に示すように、紫外線照射装置40Aは平面視において例えば矩形状に形成された支持基板41を備えている。支持基板41は例えばアルミ基板である。なお、支持基板41を例えば銅等の他の金属で形成してもよい。各発光ダイオードチップDTは支持基板41上に配置される。
【0031】
各発光ダイオードチップDTは、インクに紫外線を照射する。これにより、当該インクに含まれる光重合開始剤が反応し、当該インクに含まれるモノマーが重合し、当該インクが被印刷物Wに定着される。各発光ダイオードチップDTはマトリクス状に配置される。各発光ダイオードチップDTは、例えば、支持基板41の長手方向および短手方向に沿った辺を有する矩形状の単位格子の中心を基準として配置される。これにより、各発光ダイオードチップDTは、主走査方向Dsに沿って一定間隔で配置されると共に、副走査方向Dfに沿って一定間隔で配置されている。したがって、各発光ダイオードチップDTは、主走査方向Dsと平行な行方向および副走査方向Dfと平行な列方向に沿って配置される。図4においては、左右方向に並ぶ発光ダイオードチップDTが11行あり、前後方向に並ぶ発光ダイオードチップDTが5列ある例が示されている。副走査方向Dfに沿って一定間隔で並んで配置された複数の発光ダイオードチップDTの群をチップ列DLとする。したがって、図4には5つのチップ列DLが配置された例が示されている。なお、支持基板41に配置される発光ダイオードチップDTの数、チップ列DLの数、チップ行の数は上記に限定されるものではなく、1パス時の積算光量や消費電力等に基づいて決定される。
【0032】
吐出ヘッド10Aには、上述の通り4つのノズル列NLが設けられている。各ノズル列NLは、副走査方向Dfに沿って一定間隔で並んで配置された複数のノズルNzを含む。インクはノズルNzから吐出される。各ノズル列NLにおいて副走査方向Dfの前端に位置するノズルNzから副走査方向Dfの後端に位置するノズルNzまでの距離をノズル長Lhとする。なお、図4にはブラック(K)インクを吐出するノズル列NLのみ図示しており、その他の3つのノズル列については省略されている。
【0033】
紫外線照射装置40Aの各発光ダイオードチップDTは、当該発光ダイオードチップDTによる紫外線の発光領域が副走査方向Dfにおいてノズル列NLよりも大きくなるように配置される。これによって、各チップ列DLの副走査方向Dfにおける長さ、すなわち、各チップ列DLにおいて副走査方向Dfの前端に位置する発光ダイオードチップDT(発光ダイオードチップDTの前端)から副走査方向Dfの後端に位置する発光ダイオードチップDT(発光ダイオードチップDTの後端)までの距離を発光長Ldとするとき、この発光長Ldをノズル長Lhよりも大きくすることができる。したがって、ノズル列NLの前端および後端に位置するノズルNzから吐出されたインク滴に対しても紫外線を良好に照射することができる。換言すれば、紫外線照射装置40と吐出ヘッド10とがキャリッジ3に取り付けられた状態においては、ノズル列Nzとチップ列DLとは互いに平行であり、且つ主走査方向Dsに離間している。副走査方向Dfにおいてチップ列DLの前端(一端)はノズル列Nzの前端(一端)より前側(外側)にあり、チップ列DLの後端(他端)はノズル列Nzの後端(他端)より後側(外側)にある。
【0034】
ここで、紫外線照射装置40の放熱構造について説明する。図5に示すように、紫外線照射装置40は、複数の発光ダイオードチップDTを支持する上述の支持基板41と、支持基板41の面のうち複数の発光ダイオードチップDTが設けられた面(下面)とは反対側の面(上面)に設けられた板状のヒートシンク42とを備える。このヒートシンク42は、支持基板41上に配置された元部42aと、当該元部42a上において上方向に延在する複数の放熱板(フィン)42bとを備えている。各放熱板42bは等間隔で配置されている。また、支持基板41の下面には図略の電子部品が設けられており、これらの電子部品には各発光ダイオードチップDTに対応して複数の電極45が設けられる。各電極45には各発光ダイオードチップDTが電気的に接続される。各電極45の一部を露出させた状態で支持基板41の下面は絶縁膜44で覆われている。このような構成において、各発光ダイオードチップDTにより生じた熱がヒートシンク42を介して上方に放熱されるようになっている。
【0035】
図4に戻り、各発光ダイオードチップDTは、主走査方向Dsに第1ピッチxで並んで配置されている。また、各発光ダイオードチップDTは、副走査方向Dfに第2ピッチyで並んで配置されている。第2ピッチyは第1ピッチxよりも大きい。具体的には、1.4x≦y≦2.1xが成り立つように第1ピッチxおよび第2ピッチyが決定される。「ピッチ」とは、互いに隣接する発光ダイオードチップDTの光軸間の距離を意味する。第1ピッチxは1mm~10mmであってよく、2mm~7mmであってよく、4mm~6mmであってよい。
【0036】
本実施形態の画像記録装置1は、ローギャップおよびハイギャップにおいて被印刷物に印刷を行うことができる。以下、詳しく説明する。図6に示すように、被印刷物Wは、例えば、発光ダイオードチップDTの紫外線照射面TSとの距離がハイギャップGHとなる低部T1、および紫外線照射面TSとの距離がハイギャップGHよりも小さいローギャップGLとなる高部T2を含む。ハイギャップGHは、例えば18mmである。また、ローギャップGLは、例えば2mmである。本実施形態では、ローギャップGLの下限である2mm離れた被印刷物Wの高部T2における最高照度が4.5W/cm以下となるように第2ピッチyが調整される。このローギャップGLの下限(2mm)は、組付け精度のばらつきを考慮して被印刷物Wと吐出ヘッド10や発光ダイオードチップDTとが擦過しないように設定される値である。また、ハイギャップGHの上限である18mm離れた被印刷物Wの低部T1において、ノズル列の端部に対応する位置の照度が1.1W/cmとなるように発光ダイオードチップDTに供給する電流値が設定される。このハイギャップGHの上限(18mm)は、インク滴の着弾ずれが所定範囲におさまり、きれいな画像を印刷し得る距離として設定される値である。
【0037】
このような構成において、発光ダイオードチップDTの紫外線照射面TSと被印刷物Wとの距離がローギャップGLとなる被印刷物Wの一部分である高部T2に対する、吐出ヘッド10の1パス時に得られる複数の発光ダイオードチップDTによる紫外線の最高照度(ピーク照度)は、第1ピッチxと第2ピッチyとが同じである場合(従来の構成。なお、発光ダイオードチップの数、チップ列DLの数、及びチップ行の数はそれぞれ本実施形態と同一である)に1パス時に得られる紫外線の最高照度以下である。また、紫外線照射面TSと被印刷物Wとの距離がハイギャップGHとなる被印刷物Wの一部分である低部T1に対する複数の発光ダイオードチップDTによる紫外線の照度であって、複数のノズルNzのうち副走査方向Dfの端部(ノズル端)に位置するノズルNzによりインクが吐出された領域に対する複数の発光ダイオードチップDTによる紫外線の照度は、吐出されたインクが硬化するのに必要とされる最低照度以上である。なお、上記のインクが硬化するとは、印字ジョブの完了後に、指先でこすり、指先が汚れず且つ印刷面に指紋やすり跡が付かない状態を指す(JIS K 5600-1-1 4.3.5 c)硬化乾燥に基づく)。
【0038】
印刷動作において、制御ユニット19は、例えば、複数の発光ダイオードチップDTにより発せられた紫外線の照度が、ノズル列NLの最も外側に配置されたノズルNzからインク滴が吐出される領域において、被印刷物Wの低部T1のインクの硬化に必要な最低照度以上となるように照射装置ドライバIC38を制御してもよい。ノズル列NLの最も外側に配置されたノズルNzからインク滴が吐出される領域は複数の発光ダイオードチップDTのうち副走査方向Dfの最も外側に位置する発光ダイオードチップDTに対向して配置される領域であり得る。
【0039】
制御ユニット19は、複数の発光ダイオードチップDTにより発せられた紫外線の照度の制御を、例えば、複数の発光ダイオードチップDTへの供給電流を変化させ、複数の発光ダイオードチップDTの輝度を変化させることにより行う。複数の発光ダイオードチップDTの輝度は互いに同一であってよい。制御ユニット19は複数の発光ダイオードチップDTの輝度を、これらが互いに同一である状態を保ったまま変化させてもよい。
【0040】
制御ユニット19は、発光ダイオードチップDTの紫外線照射面TSと被印刷物Wとの間の距離に関する情報(距離情報DI)を取得して、当該情報に基づいて複数の発光ダイオードチップDTにより発せられた紫外線の照度を制御してもよい。被印刷物Wの低部T1のインクの硬化に必要な最低照度(本実施形態では1.1W/cm)を実現するために必要な発光ダイオードチップDTの輝度は、ハイギャップGHの大きさによって異なる。即ち、ハイギャップGHが大きくなるほど、印刷物Wの低部T1のインクの硬化に必要な最低照度を実現するために必要な発光ダイオードチップDTの輝度も大きくなる。したがって例えば、発光ダイオードチップDTの紫外線照射面TSと被印刷物Wとの間の距離に基づいて複数の発光ダイオードチップDTの輝度を制御することで、紫外線照射の効率を高め、印刷品質を向上させることができる。
【0041】
制御ユニット19は、距離情報DIをジョブデータの一部として外部装置から取得し得る。この場合、距離情報DIは外部装置(例えばPC)において、画像処理ソフトウェアやプリンタドライバ等により被印刷物Wの表面の座標(位置データ、配置データ)を把握することにより生成される。
【0042】
図10に示すように、本実施形態の画像記録装置1は、発光ダイオードチップDTの紫外線照射面TSと被印刷物Wとの間の距離を検出する距離検出器50を備えてもよい。この場合、制御ユニット19は、距離検出器50の検出値に基づいて距離情報DIを生成してもよい。
【0043】
距離検出器50は、カメラ(撮像素子、ステレオカメラ)、光学センサ等の、距離の検出が可能な任意のデバイスであってよい。距離検出器50は例えば、キャリッジ3の下面に設けられてもよい。距離検出器50を本実施形態の紫外線照射装置の一部とみなすこともできる。
【0044】
以下、第1ピッチxおよび第2ピッチyを決定する際に1.4x≦y≦2.1xとした理由について説明する。このような第1ピッチxに対する第2ピッチyの比率(y/x)を決定する際には、十分なインク硬化性の確保の観点(以下、第1観点と呼ぶ)と、被印刷物Wに対する熱損傷の抑制の観点(以下、第2観点と呼ぶ)とを考慮する。
【0045】
第1観点においては、設定され得る第1ピッチxのうちの最大値にて各発光ダイオードチップDTを配置した構成により、発光ダイオードチップDTの紫外線照射面TSと被印刷物Wとの距離がハイギャップGHとなる被印刷物Wの低部T1へ印刷を行う場合、十分なインク硬化性を確保するのに少なくとも必要な照度(以下、最低照度と記載する)を得なければならない。これは、ローギャップ印刷された部分、および、設定され得る第1ピッチxのうちの最大値以外の第1ピッチxにて各発光ダイオードチップDTを配置した構成によりハイギャップ印刷された部分においては、それぞれ上記の最低照度以上の照度が得られるという理由に基づいている。この場合の最低照度は例えば1.1W/cmである。また、各発光ダイオードチップDTへの供給電流を大きくすればするほど最低照度以上の照度を得ることが可能ではあるが、現実的には発光ダイオードチップDTの定格による制限があり、当該定格に基づけば、発光ダイオードチップDTに入力できる電流の最大値は例えば1A(アンペア)となる。
【0046】
図7は第1ピッチxに対する第2ピッチyの比率と発光ダイオードチップDTへの供給電流値との関係を示すグラフである。図7においては、第1ピッチxを固定値(本例ではx=4mm,5mm,6mm)とし、各第1ピッチxに対する第2ピッチyの比率を変化させた場合において上記最低照度を得ることができる電流値(発光ダイオードチップDTへの供給電流値)が示されている。
【0047】
上記3つの第1ピッチxのうち最大値は6mmであり、上述の通り発光ダイオードチップDTに入力できる電流値(最大値)は1Aであるので、図7からy/x=2.1を取得することができる。したがって、第2ピッチyの上限値として、y≦2.1xであれば、発光ダイオードチップDTへの供給電流が定格電流を超えることなく最低照度を得ることができる。
【0048】
一方、第2観点においては、設定され得る第1ピッチxのうちの最小値にて各発光ダイオードチップDTを配置した構成によりローギャップ印刷される部分においては、発光ダイオードチップDTの照度を、被印刷物Wに対する熱損傷を抑制するのに制限される最高照度以下に抑えなければならない。これは、上記ローギャップ印刷される部分以外の部分、すなわち、ハイギャップ印刷される部分、および、設定され得る第1ピッチxのうちの最小値以外の第1ピッチxにて各発光ダイオードチップDTを配置した構成によりローギャップ印刷される部分においては、それぞれ発光ダイオードチップDTの照度を最高照度以下に抑えることができるという理由に基づいている。この場合の最高照度は例えば4.5W/cmである。
【0049】
図8は第1ピッチxに対する第2ピッチyの比率と発光ダイオードチップDTの最高照度との関係を示すグラフである。図8において破線で示される曲線は、第1ピッチxを固定値(本例ではx=4mm)とし、当該第1ピッチxに対する第2ピッチyの比率を変化させた場合における最高照度の変化を示している。
【0050】
ここで、(1)発光ダイオードチップDTの個体性能のばらつきや当該発光ダイオードチップDTの組み付け精度(組み付け高さの精度)のばらつき、および(2)支持基板41の寸法ばらつきや発光ダイオードチップDTの支持基板41への実装ばらつきに起因して上記曲線が変動する場合がある。そこで、本実施形態では、これら(1)および(2)のばらつきを考慮して、第2ピッチyの下限値を見出す。詳細には、上記(1)のばらつき(最高照度が高くなってしまう方のばらつき)を考慮すると、第1ピッチxに対する第2ピッチyの比率と発光ダイオードチップDTの最高照度との関係は、図8において二点鎖線の曲線(同図の第1ばらつきの曲線)で示されるようになる。この場合の最高照度は、ばらつきのない場合の最高照度(同図の破線)に比べて1.1W/cm程度増加する。
【0051】
次に、上記(2)のばらつきを考慮すると、二点鎖線の曲線を基準としてy/xが±0.2程度変動する。y/xが-0.2変動した場合の曲線は図8において点線(同図の第2ばらつき(-0.2)の曲線)で示され、y/xが0.2変動した場合の曲線は同図において一点鎖線(同図の第2ばらつき(+0.2)の曲線)で示されている。被印刷物Wに対する熱損傷を抑制するという第2観点においては、+0.2変動する場合に最高照度が4.5W/cmになるときのy/xを取得すればよいため、図8からy/x=1.4を取得することができる。したがって、第2ピッチyの下限値として、1.4x≦yであれば、被印刷物Wに対する熱損傷を抑制又は防止することができる。以上によって、1.4x≦y≦2.1xの関係を得ることができる。
【0052】
続いて、ノズル列NLにおける副走査方向Dfの位置と照度との関係について説明する。図9はシミュレーションにより得たノズル列NLにおける副走査方向Dfの位置と照度との関係を示すグラフである。図9には、第1ピッチをx=5mmの固定値とし、第1ピッチxに対する第2ピッチyの比率をy/x=0.7,0.8,1.0,1.2,1.4,1.7,2.0,2.5,3.0の9種とし、ローギャップ印刷されたノズル列NLにおける副走査方向Dfの部分における照度が示される。また、図9には、第1ピッチをx=5mmの固定値とし、第1ピッチxに対する第2ピッチyの比率をy/x=3.0とし、ハイギャップ印刷されたノズル列NLにおける副走査方向Dfの部分における照度が示される(図9中の実線参照)。図9に示すように、ローギャップ印刷された部分において最高照度を4.5W/cm以下に抑えることができ、かつ、ハイギャップ印刷された部分において1.1W/cm以上の照度を得られることを確認することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態の紫外線照射装置40によれば、第2ピッチyを第1ピッチxよりも大きくすることによって、ローギャップ印刷された部分において、最高照度を必要以上に低下させることなく被印刷物Wの温度上昇を抑制することができる。また、ハイギャップ印刷された部分において副走査方向Dfの端部領域における紫外線の照度をインクが硬化するのに必要な最低照度以上とすることで、ハイギャップ印刷された部分においてインクの硬化むらを抑制することができ、それ故インク硬化性を向上することができる。
【0054】
すなわち、本実施形態では、制御ユニット19は、照度ムラが生じ得る副走査方向Dfにおいて、被印刷物Wの低部T1の副走査方向の端部領域の照度(即ち紫外線照射面TSから届く紫外線が最も少ない領域の照度)をインクを硬化させるのに必要な最低限の照度以上として、被印刷物Wに吐出されたインクが良好に硬化されることを担保している。一方で、副走査方向Dfにおける発光ダイオードチップDTの周期を大きくして、被印刷物Wの低部T1の副走査方向の端部領域の照度をインクを硬化させるのに必要な最低限の照度以上とすることに伴う他の領域における照度の高まり(特に、高部T2に対する照度の高まり)を抑制している。
【0055】
また、本実施形態では、最低照度が1.1W/cmであることにより、ハイギャップ印刷された部分においても、十分なインク硬化性を確保することができる。
【0056】
また、本実施形態では、ローギャップ印刷された部分における吐出ヘッド10の1パス時に得られる複数の発光ダイオードチップDTによる紫外線の最高照度が、第1ピッチxと第2ピッチyとが同じである場合に1パス時に得られる紫外線の最高照度以下であることで、ローギャップ印刷された部分において熱損傷を受けることを抑制又は防止することができる。
【0057】
また、本実施形態では、ローギャップ印刷された部分(高部T2)における最高照度が4.5W/cm以下であることによって、当該高部T2が熱損傷を受けることを抑制又は防止することができる。
【0058】
また、本実施形態では、ハイギャップGHが7mm以上である状態でハイギャップ印刷された部分においても、副走査方向Dfの端部領域における紫外線の照度をインクが硬化するのに必要な最低照度以上とすることができる。これにより、インクの硬化むらを抑制することができ、それ故インク硬化性を向上することができる。
【0059】
また、本実施形態では、ハイギャップGHとローギャップGLとの差が5mm以上である状態でハイギャップ印刷された部分においても、副走査方向Dfの端部領域における紫外線の照度をインクが硬化するのに必要な最低照度以上とすることができる。これにより、インクの硬化むらを抑制することができ、それ故インク硬化性を向上することができる。
【0060】
また、本実施形態では、ハイギャップGHが18mm以下である状態でハイギャップ印刷された部分において、ノズル列の端部に対応する位置の照度が1.1W/cmとなるように発光ダイオードチップDTに供給する電流値が設定される。これにより、ノズル列の端部に対応する部分に吐出されたインクの硬化性を向上することができる。
【0061】
また、本実施形態では、ローギャップGHが2mm以上である状態でローギャップ印刷された部分においても、最高照度を必要以上に増大させることなく被印刷物Wの温度上昇を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1ピッチxと第2ピッチyとの関係において、1.4x≦yが成り立っていることにより、ローギャップ印刷された部分に対する熱損傷を抑制又は防止することができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1ピッチxと第2ピッチyとの関係において、y≦2.1xが成り立っていることにより、発光ダイオードチップDTへの供給電流が定格電流を超えることなく、インク硬化に必要な最低照度を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、第1ピッチxが4mm以上であることで、被印刷物Wに対する熱影響を確実に抑制又は防止することができる。
【0065】
また、本実施形態では、紫外線照射装置40がヒートシンク42を備えることで、各発光ダイオードチップDTにより生じた熱をヒートシンク42を介して上方に放熱することができる。
【0066】
さらに、上述した紫外線照射装置40を画像記録装置1に設けることで、画像記録装置1において、ハイギャップ印刷された部分においてインクの硬化むらを抑制することでインク硬化性を向上することができると共に、ローギャップ印刷された部分における被印刷物Wの温度上昇を抑制することができる。
【0067】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0068】
上記実施形態では、第1ピッチxおよび第2ピッチyを決定する際にy≦2.1xとすることとしたが、これに限らず、インク硬化性の更なる向上のために、例えばy≦2.0xとしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、第1ピッチxおよび第2ピッチyを決定する際に1.4x≦yとすることとしたが、これに限らず、上述の第1ばらつきおよび第2ばらつきの大小に応じてy/xの値を決定することができる。第1ばらつきおよび第2ばらつきが大きくなるようであれば、例えば1.5x≦yとしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、ハイギャップGHを18mmとし、ローギャップGLを2mmとしたが、ハイギャップGHおよびローギャップGLは上記の値に限定されるものではなく、ローギャップGLがハイギャップGHよりも小さければよい。例えば、ハイギャップGHは7mm以上であり、ハイギャップGHとローギャップGLとの差は5mm以上である。
【0071】
さらに、上記実施形態では、キャリッジ3に2つの吐出ヘッド10(10A,10B)および2つの紫外線照射装置40(40A,40B)を搭載することとしたが、これに限らず、吐出ヘッド10Aおよび紫外線照射装置40Aのみを搭載してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 画像記録装置
3 キャリッジ
10,10A,10B 吐出ヘッド
40,40A,40B 紫外線照射装置
41 支持基板
42 ヒートシンク
42b 放熱板
Df 副走査方向
Ds 主走査方向
DT 発光ダイオードチップ
Nz ノズル
T1 被印刷物の低部
T2 被印刷物の高部
TS 紫外線照射面
W 被印刷物
x 第1ピッチ
y 第2ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10