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特許7581995撮像機能制御システムおよび撮像機能制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】撮像機能制御システムおよび撮像機能制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20241106BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20241106BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20241106BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 B
H04N7/18 J
H04N7/18 E
H04N5/222 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021045532
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144491
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】羽馬 涼太
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋一郎
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053537(JP,A)
【文献】特開平08-020975(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03399744(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/115808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
E02F 9/26
H04N 7/18
H04N 5/222-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の作業機構を動作させるために操作される遠隔操作機構を備える遠隔操作装置と、前記作業機械に搭載され、前記遠隔操作装置が備える遠隔画像出力装置に出力される前記作業機構の少なくとも一部を含む撮像画像を取得する実機撮像装置と、を備えた撮像機能制御システムであって、
前記遠隔操作装置に備えられて前記実機撮像装置の光軸方向を調整するためのスイング操作の操作態様を認識する遠隔制御装置と、
前記実機撮像装置の光軸方向を前記スイング操作の操作態様に応じた角度に変化させるスイング機能を発揮する撮像機能制御要素と、有しており、
前記撮像機能制御要素は、前記遠隔操作装置が操作されることで前記作業機構が動作される作業が行われている第1状態では、前記遠隔操作装置が操作されることで前記作業機構が動作される作業が行われていない第2状態よりも、前記スイング機能を制限する
撮像機能制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像機能制御システムにおいて、
前記撮像機能制御要素が、前記第1状態において、前記スイング操作が停止された際に前記実機撮像装置の姿勢をスイング機能の発揮により前記スイング操作の開始時における前記実機撮像装置の姿勢である所定の初期姿勢に復帰させる一方、前記第2状態において、前記スイング操作が停止された際に前記実機撮像装置の姿勢をそのままに維持させる
撮像機能制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像機能制御システムにおいて、
前記撮像機能制御要素が、前記第1状態において、前記スイング操作が停止された際に、前記実機撮像装置の姿勢が前記スイング操作の開始時における前記実機撮像装置の姿勢である所定の初期姿勢に復帰するまでの間、前記実機撮像装置を通じて取得された撮像画像を前記遠隔画像出力装置に断続的に出力させる、または、前記スイング操作の停止時の撮像画像を前記遠隔画像出力装置に継続的に出力させる
撮像機能制御システム。
【請求項4】
作業機械に搭載され、前記作業機械の作業機構を動作させるために操作される遠隔操作機構を備える遠隔操作装置が備える遠隔画像出力装置に出力される前記作業機構の少なくとも一部を含む撮像画像を取得する実機撮像装置による撮像機能を制御する方法であって、
演算処理装置が実行する工程として、前記遠隔操作装置に備えられた遠隔制御装置により前記実機撮像装置の光軸方向を調整するためのスイング操作の操作態様を認識する処理と、前記実機撮像装置の光軸方向を前記操作態様に応じた角度に変化させるスイング機能を発揮する撮像制御処理と、を含み、
前記撮像制御処理が、前記遠隔操作機構が操作されることで前記作業機構が動作される作業が行われている第1状態では、前記遠隔操作機構が操作されることで前記作業機構が動作される作業が行われていない第2状態よりも、前記スイング機能を制限する工程
を含んでいる撮像機能制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に搭載されている実機撮像装置の撮像機能を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オペレータが作業機械の作業状況を表わす遠隔画像を参照しながら、遠隔操作装置を用いて作業機械を操作する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。オペレータが作業機械を遠隔操作する場合、オペレータが作業機械(実機)に搭乗したうえで実機操作する場合と比較して、当該オペレータにとっては作業機械の周囲の様子を把握する際の感覚が異なる。このため、オペレータとしては実機操作時と同様に、視線の先を様々に変化させて作業機械の周囲の様子を確認するため、当該作業機械に搭載されている実機撮像装置の向きを変化するようにシステムが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-021395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実機撮像装置のスイング機能の自由度が過度に高いまたは低い場合、当該実機撮像装置を通じて取得された撮像画像の変化態様が作業機械のカメラの表示倍率を大きくした設定を解除するのを失念してしまったりカメラの表示倍率が最小(初期)表示倍率に戻り切らなかったりすると、周囲の状況の把握に支障が生じてしまい、作業を行うのに必要な周囲の状況の把握が不十分となる。
【0005】
そこで、本発明は、作業機械の状態に鑑みて、当該作業機械に搭載されている実機撮像装置の撮像機能を適当な形態で制御することにより、オペレータにとっての作業機械の周囲の様子を把握する利便性の向上を図りうるシステム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像機能制御システムは、
作業機械の作業機構を動作させるために操作される遠隔操作機構を備える遠隔操作装置と、前記作業機械に搭載されて前記遠隔操作装置が備える遠隔画像出力装置に出力される前記作業機構の少なくとも一部を含む撮像画像を取得する実機撮像装置と、を備えた撮像機能制御システムであって、
前記遠隔操作装置に備えられて前記実機撮像装置の光軸方向を調整するためのスイング操作の操作態様を認識する遠隔制御装置と、
前記実機撮像装置の光軸方向を前記スイング操作の操作態様に応じた角度に変化させるスイング機能を発揮する撮像機能制御要素と、有しており、
前記撮像機能制御要素は、前記遠隔操作装置が操作されることで前記作業機構が動作される作業が行われている第1状態では、前記遠隔操作装置が操作されることで前記作業機構が動作される作業が行われていない第2状態よりも、前記スイング機能を制限する。
【0007】
当該構成の撮像機能制御システムによれば、第1状態では第2状態と比較して、実機撮像装置のスイング機能が制限される。「スイング機能」とは、パン機能およびチルト機能のうち少なくとも一方の機能を意味する。すなわち、第1状態では第2状態と比較して、実機撮像装置がパン機能およびチルト機能の両方を有している場合には当該両方の機能のうち少なくともいずれか一方の機能が制限され、実機撮像装置がパン機能およびチルト機能のうちいずれか一方の機能のみを有している場合には当該一方の機能が制限される。この結果、遠隔画像出力装置に映り込む実空間領域の変化量が抑制される分だけ、第1状態においてオペレータの注意が散漫になって遠隔操作機構を通じた作業機械の操作に支障が生じる事態が回避されうる。
【0008】
前記構成の撮像機能制御システムにおいて、
前記撮像機能制御要素が、前記第1状態において、前記スイング操作が停止された際に前記実機撮像装置の姿勢をスイング機能の発揮により前記スイング操作の開始時における前記実機撮像装置の姿勢である所定の初期姿勢に復帰させる一方、前記第2状態において、前記スイング操作が停止された際に前記実機撮像装置の姿勢をそのままに維持させる
ことが好ましい。
【0009】
当該構成の撮像機能制御システムによれば、第1状態においてスイング操作が停止された場合、実機撮像装置の姿勢がスイング操作の開始時における当該実機撮像装置の姿勢である初期姿勢に戻される。この結果、実機撮像装置のスイング操作停止時の姿勢に応じた実空間領域の様子をオペレータに把握させた後、当該オペレータによるスイング操作を要せずに、実機撮像装置の初期姿勢に応じた実空間領域の様子をオペレータに把握させることができる。その一方、第2状態においてスイング操作が停止された場合、実機撮像装置の姿勢がそのまま維持される。この結果、作業機械の操作を停止している期間における任意のスイング操作態様に応じて実機撮像装置にスイング機能を発揮させ、当該実機撮像装置を通じて取得された撮像画像に映り込んでいる実空間領域の様子をオペレータに把握させることができる。
【0010】
前記構成の撮像機能制御システムにおいて、
前記撮像機能制御要素が、前記第1状態において、前記スイング操作が停止された際に、前記実機撮像装置の姿勢が前記スイング操作の開始時における前記実機撮像装置の姿勢である所定の初期姿勢に復帰するまでの間、前記実機撮像装置を通じて取得された撮像画像を前記遠隔画像出力装置に断続的に出力させる、または、前記スイング操作の停止時の撮像画像を前記遠隔画像出力装置に継続的に出力させる
ことが好ましい。
【0011】
当該構成の撮像機能制御システムによれば
第1状態において、スイング操作が停止された場合、実機撮像装置の姿勢が初期姿勢に戻される際の撮像画像が遠隔画像出力装置を通じて断続的に出力される(または操作停止時の撮像画像を継続的に出力させる)。この結果、スイング操作が停止されているにもかかわらず撮像画像が変化することへのオペレータの違和感が軽減されうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】遠隔操作支援システムの構成に関する説明図。
図2】遠隔操作装置の構成に関する説明図。
図3】作業機械の構成に関する説明図。
図4】遠隔操作支援システム(撮像機能制御システム)の機能に関する説明図。
図5】作業環境画像に関する説明図。
図6】実機撮像装置のスイング機能の制御態様に関する説明図。
図7】他の実施形態における遠隔操作支援システム(撮像機能制御システム)の機能に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(遠隔操作支援システムの構成)
図1に示されている遠隔操作支援システムは、遠隔操作支援サーバ10と、作業機械40を遠隔操作するための遠隔操作装置20と、により構成されている。遠隔操作支援サーバ10、遠隔操作装置20および作業機械40は相互にネットワーク通信可能に構成されている。遠隔操作支援サーバ10および遠隔操作装置20の相互通信ネットワークと、遠隔操作支援サーバ10および作業機械40の相互通信ネットワークと、は同一であってもよく相違していてもよい。
【0016】
(遠隔操作支援サーバの構成)
遠隔操作支援サーバ10は、データベース102と、第1支援処理要素121と、第2支援処理要素122と、を備えている。データベース102は、撮像画像データ等を記憶保持する。データベース102は、遠隔操作支援サーバ10とは別個のデータベースサーバにより構成されていてもよい。各支援処理要素は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった後述の演算処理を実行する。本実施形態では、遠隔操作支援サーバ10が「撮像機能制御システム」を構成し、第2支援処理要素122が「撮像機能制御要素」を構成する。
【0017】
(遠隔操作装置の構成)
遠隔操作装置20は、遠隔制御装置200と、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、を備えている。遠隔制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0018】
遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211を備えている。遠隔出力インターフェース220は、遠隔画像出力装置221と、音響出力装置222と、遠隔無線通信機器224と、を備えている。
【0019】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体410を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構430を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40のブームシリンダ442を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は作業機械40のアームシリンダ444を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は作業機械40のバケットシリンダ446を動かすために操作される。
【0020】
遠隔操作機構211を構成する各操作レバーは、例えば、図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、オペレータが着座できる任意の形態の着座部であってもよい。
【0021】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一つの操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。同様に、図2に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0022】
左側操作レバー2111および右側操作レバー2112のそれぞれのオペレータにより把持される箇所には、後述するように実機撮像装置412のパン角度およびチルト角度のそれぞれを調節するためのパンスイッチSW1およびチルトイッチSW2のそれぞれが設けられている。左側操作レバー2111および右側操作レバー2112のうち一方のみに、パンスイッチSW1およびチルトイッチSW2の両方が設けられていてもよい。パンスイッチSW1およびチルトイッチSW2のそれぞれは、一定条件下でアクチュエータまたはばねなどの付勢要素によりその操作姿勢が初期操作姿勢に復帰されるように構成されている。実機撮像装置412がスイング機能としてパン機能およびチルト機能のうち一方しか有していない場合、パンスイッチSW1およびチルトイッチSW2のうち一方が省略されてもよい。
【0023】
遠隔画像出力装置221は、例えば図2に示されているように、シートStの前方、左斜め前方および右斜め前方のそれぞれに配置された略矩形状の画面を有する中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212により構成されている。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面(画像表示領域)の形状およびサイズは同じであってもよく相違していてもよい。
【0024】
図2に示されているように、中央遠隔画像出力装置2210の画面および左側遠隔画像出力装置2211の画面が傾斜角度θ1(例えば、120°≦θ1≦150°)をなすように、左側遠隔画像出力装置2211の右縁が、中央遠隔画像出力装置2210の左縁に隣接している。図2に示されているように、中央遠隔画像出力装置2210の画面および右側遠隔画像出力装置2212の画面が傾斜角度θ2(例えば、120°≦θ2≦150°)をなすように、右側遠隔画像出力装置2212の左縁が、中央遠隔画像出力装置2210の右縁に隣接している。当該傾斜角度θ1およびθ2は同じであっても相違していてもよい。
【0025】
中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のそれぞれの画面は、鉛直方向に対して平行であってもよく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。中央遠隔画像出力装置2210、左側遠隔画像出力装置2211および右側遠隔画像出力装置2212のうち少なくとも1つの画像出力装置が、複数に分割された画像出力装置により構成されていてもよい。例えば、中央遠隔画像出力装置2210が、略矩形状の画面を有する上下に隣接する一対の画像出力装置により構成されていてもよい。
【0026】
音響出力装置222は、一または複数のスピーカーにより構成され、例えば図2に示されているように、シートStの後方、左アームレスト後部および右アームレスト後部のそれぞれに配置された中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222により構成されている。中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222のそれぞれの仕様は同じであってもよく相違していてもよい。
【0027】
(作業機械の構成)
作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース41と、実機出力インターフェース42と、作業機構440と、を備えている。実機制御装置400は、画像処理装置30を備えている。画像処理装置30は、状態検知要素31と、画像予測要素32と、画像圧縮要素34と、を備えている。実機制御装置400および画像処理装置30の構成要素のそれぞれは、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0028】
作業機械40は、例えばクローラショベル(建設機械)であり、図3に示されているように、クローラ式の下部走行体410と、下部走行体410に旋回機構430を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体420と、を備えている。上部旋回体420の前方左側部にはキャブ424(運転室)が設けられている。上部旋回体420の前方中央部には作業機構440が設けられている。
【0029】
実機入力インターフェース41は、実機操作機構411と、実機撮像装置412と、測位装置414と、を備えている。実機操作機構411は、キャブ424の内部に配置されたシートの周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ424に設けられている。実機撮像装置412は、例えばキャブ424の内部に設置され、フロントウィンドウおよび左右一対のサイドウィンドウ越しに作業機構440の少なくとも一部を含む環境を撮像する。フロントウィンドウおよびサイドウィンドウのうち一部または全部が省略されていてもよい。測位装置414は、GPSおよび必要に応じてジャイロセンサ等により構成されている。
【0030】
実機出力インターフェース42は、実機無線通信機器422を備えている。
【0031】
図3に示されているように、作業機構としての作業機構440は、上部旋回体420に起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に回動可能に連結されているバケット445と、を備えている。作業機構440には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。
【0032】
ブームシリンダ442は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させるように当該ブーム441と上部旋回体420との間に介在する。アームシリンダ444は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させるように当該アーム443と当該ブーム441との間に介在する。バケットシリンダ446は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット445と当該アーム443との間に介在する。
【0033】
(機能)
前記構成の遠隔操作支援システムおよび撮像機能制御システムの機能について図4に示されているフローチャートを用いて説明する。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。
【0034】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器224を通じて、遠隔操作支援サーバ10に対して環境確認要求が送信される(図4/STEP210)。例えば、オペレータにより遠隔入力インターフェース210を通じて指定操作があったことが、環境確認要求の送信開始要件として定められていてもよい。「指定操作」は、例えば、オペレータが遠隔操作を意図する作業機械40を指定するための遠隔入力インターフェース210におけるタップなどの操作である。
【0035】
遠隔操作支援サーバ10において、環境確認要求が受信された場合、第1支援処理要素121により当該環境確認要求が該当する作業機械40に対して送信される(図4/C10)。
【0036】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて環境確認要求が受信された場合(図4/C40)、実機制御装置400により実機撮像装置412を通じて撮像画像が取得され、かつ、実機無線通信機器422を通じて、当該撮像画像を表わす撮像画像データが遠隔操作装置10に対して送信される(図4/STEP410)。
【0037】
遠隔操作支援サーバ10において、第1支援処理要素121により撮像画像データが受信された場合(図4/C11)、第2支援処理要素122により撮像画像に応じた環境画像データが遠隔操作装置20に対して送信される(図4/STEP110)。環境画像データは、撮像画像データそのもののほか、撮像画像に基づいて生成された模擬的な環境画像を表わす画像データである。
【0038】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器224を通じて環境画像データが受信された場合(図4/C21)、遠隔制御装置200により、環境画像データに応じた環境画像が遠隔画像出力装置221に出力される(図4/STEP212)。
【0039】
これにより、例えば、図5に示されているように、キャブ424を画定する窓枠を通じて、キャブ424の前方において、作業機構440の一部であるブーム441、アーム443および(バケット445による作業対象である)瓦礫または土砂の山が映り込んでいる環境画像が遠隔画像出力装置221に出力される。
【0040】
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により遠隔操作機構211のスイング操作態様が認識され、かつ、遠隔無線通信機器224を通じて、当該スイング操作態様に応じたスイング指令が遠隔操作支援サーバ10に対して送信される(図4/STEP214)。スイング操作態様は、左側操作レバー2111および右側操作レバー2112のそれぞれの把持箇所に設けられた、パンスイッチSW1およびチルトイッチSW2のそれぞれの操作姿勢により特定される(図2参照)。スイッチSW1、SW2は、例えば、操作姿勢(操作量)を検出することができるスライドスイッチやレバー型スイッチであって、スチッチの一方側と他方側への操作量を検出するとともに、操作がなされない場合に中立位置になる。
【0041】
パンスイッチSW1の操作姿勢範囲[θp1,θp2]における任意の操作姿勢θpに応じて、実機撮像装置412のパン角度φpをパン角度範囲[φp1,φp2]におけるパン角度fp(θp)に制御するためのスイング指令が生成される。関数fpは、例えば、関係式(01)により定義されている。
【0042】
p(θp)={(φp2-φp1)/(θp2-θp1)}(θp-θp1)+φp1 ‥(01)。
【0043】
チルトイッチSW2の操作姿勢範囲[θt1,θt2]における任意の操作姿勢θtに応じて、実機撮像装置412のチルト角度φtをチルト角度範囲[φt1,φt2]におけるチルト角度ft(θt)に制御するためのスイング指令が生成される。関数ftは、例えば、関係式(02)により定義されている。
【0044】
t(θt)={(φt2-φt1)/(θt2-θt1)}(θt-θt1)+φt1 ‥(02)。
【0045】
遠隔操作支援サーバ10において、スイング指令が受信された場合、第2支援処理要素122(撮像機能制御要素)により、当該スイング指令が作業機械40に対して送信される(図4/C12)。
【0046】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて通常スイング指令が受信された場合(図4/C42)、実機制御装置400により実機撮像装置412のスイング機能(正確には実機撮像装置412が有するパン駆動機構および/またはチルト駆動機構)が制御され、そのパン角度φpおよび/またはチルト角度φtが調節される(図4/STEP412)。
【0047】
これにより、実機撮像装置412を通じて取得される撮像画像、ひいては遠隔画像出力装置221において出力される環境画像に映り込んでいる実空間領域が変化する(図4/STEP410→‥→STEP212、図5参照)。例えば、実機撮像装置412のパン角度φpの制御により光軸方向が作業機械40の前方から左斜め前方に変化する場合、環境画像に映り込んでいる実空間領域が作業機械40の前方領域から左斜め前方領域に変化する。また、実機撮像装置412のチルト角度φtの制御により光軸方向が前方水平方向から前方斜め下方に変化する場合、環境画像に映り込んでいる実空間領域がそれまでよりも下方の領域に変化する。
【0048】
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により、スイング操作の停止の有無が判定される(図4/STEP216)。例えば、パンスイッチSW1およびチルトイッチSW2のそれぞれの操作姿勢の変化量が閾値以下になった状態(パンスイッチSW1およびチルトイッチSW2のそれぞれが操作されていない状態)が指定期間にわたって継続したか否かに応じて、スイング操作が停止されたか否かが判定される。
【0049】
当該判定結果が肯定的である場合(図4/STEP216‥YES)、遠隔制御装置200により、スイング停止指令が遠隔操作支援サーバ100に対して送信される(図4/STEP218)。その一方、当該判定結果が否定的である場合(図4/STEP216‥NO)、スイング停止指令が生成されることはなく後続の処理が実行される。
【0050】
遠隔操作支援サーバ10において、スイング停止指令が受信された場合(図4/C14)、第2支援処理要素122により、作業機械40との通信結果に基づき、当該作業機械40の状態が判定される(図4/STEP120)。「第1状態」は、作業機械40が操作されうる状態(または作業機械40が作業している状態)である。「第2状態」は、作業機械40が操作されえない状態(または作業機械40が作業を停止している状態)である。例えば、作業機械40の実機操作機構411を構成する油圧遮断レバーが所定姿勢にあるか否かに応じて、当該作業機械40の第1状態および第2状態が判別されてもよい。また、遠隔入力インターフェースとして油圧遮断レバーを模した遠隔油圧遮断レバーが所定姿勢にあるか否かに応じて、当該作業機械40の第1状態および第2状態が判別されてもよい。
【0051】
作業機械40が第1状態にあると判定された場合(図4/STEP120‥1)、第2支援処理要素122により、初期姿勢復帰指令が作業機械40に対して送信される(図4/STEP124)。その一方、作業機械40が第2状態にあると判定された場合(図4/STEP120‥2)、初期姿勢復帰指令が生成されることはなく後続の処理が実行される。
【0052】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて初期姿勢復帰指令が受信された場合(図4/C44)、実機制御装置400により実機撮像装置412のスイング機能が制御され、そのパン角度φpおよび/またはチルト角度φtが初期角度または初期姿勢に調節される(図4/STEP414)。
【0053】
例えば、図6に示されているように、時刻t=tsにおいてスイング操作が開始され、時刻t=t0においてスイング操作が停止され、時刻t=t1においてスイング操作が再開され、時刻t=t2においてスイング操作が停止された場合について考える。
【0054】
この場合、作業機械40の状態が第1状態であれば、図6に一点鎖線で示されているように、実機撮像装置412の姿勢φ=(φp、φt)が、時刻t=t0において初期姿勢φ0に復帰し、時刻t=t1からパンスイッチSW1および/またはチルトイッチSW2の操作態様に応じて変化した後で時刻t=t2において再び初期姿勢φ0に復帰するように制御される。このため、オペレータは時刻t=t1におけるパンスイッチSW1および/またはチルトイッチSW2の操作開始により、実機撮像装置412の姿勢φを初期姿勢φ0から調節することになる。実機撮像装置412の姿勢φが初期姿勢φ0に復帰することに応じて、パンスイッチSW1およびチルトイッチSW2のそれぞれの操作姿勢θが初期操作姿勢θ0に復帰するように、第2支援処理要素122により、遠隔操作装置20に対して初期姿勢復帰指令が送信されてもよい。
【0055】
その一方、作業機械40の状態が第2状態であれば、図6に二点鎖線で示されているように、実機撮像装置412の姿勢φ=(φp、φt)が、時刻t=t0においてそのままの姿勢φ(t1)に維持され、時刻t=t1からパンスイッチSW1および/またはチルトイッチSW2の操作態様に応じて変化した後で時刻t=t2においてそのままの姿勢φ(t2)に維持されるように制御される。このため、オペレータは時刻t=t1におけるパンスイッチSW1および/またはチルトイッチSW2の操作再開により、実機撮像装置412の姿勢φを直前の操作停止時の姿勢φ(t0)から調節することになる。
【0056】
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により遠隔操作機構211の操作態様が認識され、かつ、遠隔無線通信機器224を通じて、当該操作態様に応じた遠隔操作指令が遠隔操作支援サーバ10に対して送信される(図4/STEP220)。
【0057】
遠隔操作支援サーバ10において、第2支援処理要素122により当該遠隔操作指令が受信された場合、第1支援処理要素121により、当該遠隔操作指令が作業機械40に対して送信される(図4/C16)。
【0058】
作業機械40において、実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて操作指令が受信された場合(図4/C46)、作業機構440等の動作が制御される(図4/STEP420)。例えば、バケット445により作業機械40の前方の土をすくい、上部旋回体410を旋回させたうえでバケット445から土を落とす作業が実行される。
【0059】
(作用効果)
当該構成の遠隔操作支援システムを構成する撮像機能制御システムによれば、第1状態では第2状態と比較して、実機撮像装置412のスイング機能が制限される(図4/STEP120‥1→STEP124→C44→STEP414、図6参照)。
【0060】
詳細には、作業機械40が第1状態にある場合、パンスイッチSW1およびチルトイッチSW2の操作停止後、操作再開時の実機撮像装置412の姿勢φが初期姿勢φ0に制限される。この結果、実機撮像装置のスイング操作停止時の姿勢に応じた実空間領域の様子をオペレータに把握させた後、当該オペレータによる遠隔入力インターフェース21(パンスイッチSW1および/またはチルトイッチSW2)を通じたスイング操作を要せずに、実機撮像装置の初期姿勢に応じた実空間領域の様子をオペレータに把握させることができる。
【0061】
その一方、作業機械40が第2状態にある場合、パンスイッチSW1およびチルトイッチSW2の操作停止後、操作再開時の実機撮像装置412の姿勢φが直前の操作停止時における姿勢φのままである。この結果、作業機械40の操作を停止している期間においてオペレータによる遠隔入力インターフェース21(パンスイッチSW1および/またはチルトイッチSW2)を通じた任意のスイング操作態様に応じて実機撮像装置412にスイング機能を発揮させ、当該実機撮像装置412を通じて取得された撮像画像に映り込んでいる実空間領域の様子をオペレータに把握させることができる。
【0062】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、遠隔操作支援サーバ10により撮像機能制御システムが構成され、かつ、第2支援処理要素122により撮像機能制御要素が構成されていたが、他の実施形態として、作業機械40および/または遠隔操作装置20により撮像機能制御システムが構成され、かつ、実機制御装置400および/または遠隔制御装置200により撮像機能制御要素が構成されていてもよい。
【0063】
前記実施形態では、第2状態と比較して第1状態のほうが、遠隔操作装置20におけるスイング操作再開時の実機撮像装置412の姿勢φが制限されるという形態でスイング機能が制限されたが、他の実施形態として、実機撮像装置412の姿勢φの調節幅および/または変化速度が制限されるという形態でスイング機能が制限されてもよい。
【0064】
この場合、図4に示されているフローチャートに代えて図7に示されているフローチャートにしたがって一連の処理が実行されてもよい。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。図7において図4と共通する処理については同一符号を用いるとともにその説明を省略する。
【0065】
遠隔操作支援サーバ10において、スイング指令が受信された場合(図7/C13)、第2支援処理要素122により、作業機械40との通信結果に基づき、当該作業機械40の状態が判定される(図7/STEP120)。作業機械40が「第1状態」にあると判定された場合(図7/STEP120‥2)、第2支援処理要素122により、第1スイング指令が作業機械40に対して送信される(図7/STEP121)。その一方、作業機械40が「第2状態」にあると判定された場合(図7/STEP120‥2)、第2支援処理要素122により、第2スイング指令が作業機械40に対して送信される(図7/STEP122)。
【0066】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて第2スイング指令が受信された場合(図7/C42)、実機制御装置400により実機撮像装置412のスイング機能が、パンスイッチSW1および/またはチルトスイッチSW2の操作態様に応じて通常態様で制御され、そのパン角度φpおよび/またはチルト角度φtが調節される(図7/STEP412)。その一方、作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて第1スイング指令が受信された場合(図7/C41)、実機制御装置400により実機撮像装置412のスイング機能が、パンスイッチSW1および/またはチルトスイッチSW2の操作態様に応じているものの、通常態様よりも制限的な態様で制御される(図7/STEP411)。この際、作業機械40が第1状態である場合と比較して、実機撮像装置412の姿勢φの調節幅および/または変化速度が制限されるという形態でスイング機能が制限される。
【0067】
第1状態において、スイング操作が停止された際に(図6の時刻t=t0およびt=t2参照)、実機撮像装置412の姿勢φが所定の初期姿勢φ0に復帰するまでの間、実機撮像装置412を通じて取得された撮像画像または環境画像を遠隔出力インターフェース22に断続的に出力させ、または、スイング操作の停止時の撮像画像を遠隔出力インターフェース22に継続的に出力させてもよい。この結果、スイング操作が停止されているにもかかわらず撮像画像または環境画像が変化することへのオペレータの違和感が軽減されうる。
【0068】
第1状態において、遠隔入力インターフェース21(パンスイッチSW1および/またはチルトイッチSW2)を通じたスイング操作が入力された際に、実機撮像装置412の位置および/または姿勢がスイング機能の発揮により所定の使用位置および/または使用姿勢に制御されてもよい。これにより、作業機械40による作業と並行して、オペレータがスイング操作を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
10‥遠隔操作支援サーバ、20‥遠隔操作装置、40‥作業機械、102‥データベース、121‥第1支援処理要素、122‥第2支援処理要素(撮像機能制御要素)、200‥遠隔制御装置、210‥遠隔入力インターフェース、211‥遠隔操作機構、220‥遠隔出力インターフェース、221‥遠隔画像出力装置、222‥遠隔音響出力装置、400‥実機制御装置、410‥実機入力インターフェース、420‥実機出力インターフェース、424‥キャブ(運転室)、440‥作業機構、445‥バケット(作業部)、SW1‥パンスイッチ、SW2‥チルトスイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7