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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 23/00 20060101AFI20241106BHJP
   B62J 15/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B62J23/00 E
B62J23/00 C
B62J15/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021045861
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144721
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】桂 弘人
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-214627(JP,A)
【文献】実開平3-75088(JP,U)
【文献】特開2009-202826(JP,A)
【文献】特開2005-88659(JP,A)
【文献】実開昭62-127085(JP,U)
【文献】国際公開第2015/159197(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106553721(CN,A)
【文献】特開2019-131085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 23/00
B62J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームの前部に回転可能に支持されたステアリングシャフトに連結され、一対のフォークチューブを有するフロントフォークと、
前記一対のフォークチューブの下端側部分間に設けられた前輪と、
前記一対のフォークチューブ間に設けられ、前記前輪の少なくとも上方を覆うフロントフェンダとを備えた鞍乗型車両であって、
前記フロントフェンダには、前記一対のフォークチューブを保護するために、前記一対のフォークチューブの前方にそれぞれ位置し、前記一対のフォークチューブの一部をそれぞれ覆う一対のフォークガードが設けられ、
前記各フォークガードは前記フロントフェンダから左右方向外側に張り出し、
前記各フォークガードの上部は前記フロントフェンダよりも上方に突出し、
前記各フォークガードの上部は、第1の外面、第2の外面、第3の外面および第4の外面を有し、
前記第1の外面は、前記各フォークガードの上部の前部の左右方向略中間位置から左右方向における外側方向に傾斜しつつ後方に伸長し、
前記第2の外面は、前記第1の外面の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に伸長し、または前記第1の外面の後端部から左右方向における外側方向に前記第1の外面の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に伸長し、
前記第3の外面は、前記各フォークガードの上部の前部の左右方向略中間位置から左右方向における内側方向に傾斜しつつ後方に伸長し、
前記第4の外面は、前記第3の外面の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に伸長し、または前記第3の外面の後端部から左右方向における内側方向に前記第3の外面の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に伸長していることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記各フォークチューブは、アウターチューブと、前記アウターチューブよりも小径であり前記アウターチューブに一端側が挿入されたインナーチューブとを有し、
前記各フォークガードの上部において、前記第1の外面と前記第3の外面とが互いに交わる当該フォークガードの前端は、前記鞍乗型車両の前方視において、当該フォークガードの後方に配置された前記フォークチューブが有する前記インナーチューブの外面のうち左右方向において最も外側の部分よりも左右方向内側かつ当該インナーチューブの外面のうち左右方向において最も内側の部分よりも左右方向外側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記各フォークチューブは、アウターチューブと、前記アウターチューブよりも小径であり前記アウターチューブに一端側が挿入されたインナーチューブとを有し、
前記各フォークガードにおいて、当該フォークガードの上部と交わりかつ前記前輪の回転軸から所定距離上方の位置を通る水平な面で当該フォークガードの上部を切断した切断面と前記第2の外面との境界線の後方への延長線は、当該フォークガードの後方に配置された前記フォークチューブが有する前記インナーチューブの左右方向外側の外面に接することを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記前輪の左後方および右後方に設けられた一対のサイドカバーを備え、
前記一対のサイドカバー間には、走行風を前記一対のサイドカバー間に導入する走行風導入通路が形成され、
前記各フォークガードにおいて、当該フォークガードの上部と交わりかつ前記前輪の回転軸から所定距離上方の位置を通る水平な面で当該フォークガードの上部を切断した切断面と前記第2の外面との境界線の後方への延長線は前記走行風導入通路内を通過することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記前輪の後方に設けられた熱交換器を備え、
前記一対のフォークガードのうちの少なくとも一方のフォークガードにおいて、当該フォークガードの上部と交わりかつ前記前輪の回転軸から所定距離上方の位置を通る水平な面で当該フォークガードの上部を切断した切断面と前記第2の外面との境界線の後方への延長線は前記熱交換器の前面と交わることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記各フォークガードの上部と交わりかつ前記前輪の回転軸から所定距離上方の位置を通る水平な面で当該フォークガードの上部を切断した切断面を上方から見たとき、前記切断面の外形は略五角形であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフォークを保護するフォークガードがフロントフェンダに設けられた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、前輪を支持し、かつ前輪が路面から受けた衝撃を緩和するフロントサスペンションを備えている。鞍乗型車両においては、一般に、このフロントサスペンションとしてフロントフォークが用いられる。
【0003】
また、鞍乗型車両においては、フロントフォークを保護するフォークガードを備えているものがある。フォークガードは、フロントフォークの一部をその前方から覆い、飛び石等がフロントフォークに衝突することを回避する防護壁として機能する。
【0004】
例えば、テレスコピック式フロントフォークは一対のフォークチューブを備え、各フォークチューブはアウターチューブおよびインナーチューブを備えている。インナーチューブの一端側はアウターチューブ内に挿入されている。また、各フォークチューブ内にはオイル等が封入されている。各フォークチューブは、オイルダンパの構造を有し、アウターチューブに対するインナーチューブの伸縮時に生じるオイルの抵抗を利用して振動を減衰する。このような構造を有するテレスコピック式フロントフォークにおいて、例えば、インナーチューブにおいて、アウターチューブに出入りする部分に飛び石等が衝突し、その部分に傷が付くと、アウターチューブに対するインナーチューブの伸縮時に、アウターチューブとインナーチューブとの間に設けられたオイルシールが、インナーチューブに付いた傷により損傷し、フォークチューブ内のオイルが外部に漏れるなどの故障が生じることがある。鞍乗型車両またはフロントフォークにフォークガードを設け、フォークガードにより、インナーチューブにおいてアウターチューブに出入りする部分をその前方から覆うことにより、インナーチューブの当該部分が飛び石等の衝突により傷付くことを抑制することができ、フォークチューブのオイル漏れ等の故障を抑制することができる。
【0005】
下記の特許文献1には、フロントフォークのインナーチューブの損傷を防止するために、フロントフェンダにフォークプロテクタを設けた自動二輪車が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-214627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、フォークガードによれば、フロントフォークを飛び石等の衝突から保護することができる。しかしながら、フォークガードを設けることにより、鞍乗型車両に設けられた熱交換器(例えばラジエータまたはオイルクーラ等)、エンジンまたは排気管等に走行風が当たり難くなり、熱交換器、エンジンまたは排気管等の走行風による冷却効果が低下するという問題がある。
【0008】
具体的には、鞍乗型車両において、フロントフォークは熱交換器、エンジンまたは排気管等の前方に配置されている。また、フォークガードはフロントフォークの前方に配置される。そのため、鞍乗型車両の走行時に、鞍乗型車両の前方から吹く走行風がフォークガードに当たる。走行風がフォークガードに当たることにより、走行風が拡散してその向きが変わり、走行風が熱交換器、エンジンまたは排気管等とは異なる方向に流れることがある。その結果、熱交換器、エンジンまたは排気管等に当たる走行風の量が減少することがある。また、走行風がフォークガードに当たることにより、フォークガードの周囲に空気の渦または乱れが生じることがある。その結果、熱交換器、エンジンまたは排気管等に当たる走行風の流速が低下することがある。熱交換器、エンジンまたは排気管等に当たる走行風の量が減少し、または流速が低下することにより、熱交換器、エンジンまたは排気管等の走行風による冷却効果が低下する。
【0009】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、フロントフォークを保護するフォークガードを備えながらも、熱交換器、エンジンまたは排気管等に走行風が当たり易くなるようにすることができる鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームの前部に回転可能に支持されたステアリングシャフトに連結され、一対のフォークチューブを有するフロントフォークと、前記一対のフォークチューブの下端側部分間に設けられた前輪と、前記一対のフォークチューブ間に設けられ、前記前輪の少なくとも上方を覆うフロントフェンダとを備えた鞍乗型車両であって、前記フロントフェンダには、前記一対のフォークチューブを保護するために、前記一対のフォークチューブの前方にそれぞれ位置し、前記一対のフォークチューブの一部をそれぞれ覆う一対のフォークガードが設けられ、前記各フォークガードは前記フロントフェンダから左右方向外側に張り出し、前記各フォークガードの上部は前記フロントフェンダよりも上方に突出し、前記各フォークガードの上部は、第1の外面、第2の外面、第3の外面および第4の外面を有し、前記第1の外面は、前記各フォークガードの上部の前部の左右方向略中間位置から左右方向における外側方向に傾斜しつつ後方に伸長し、前記第2の外面は、前記第1の外面の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に伸長し、または前記第1の外面の後端部から左右方向における外側方向に前記第1の外面の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に伸長し、前記第3の外面は、前記各フォークガードの上部の前部の左右方向略中間位置から左右方向における内側方向に傾斜しつつ後方に伸長し、前記第4の外面は、前記第3の外面の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に伸長し、または前記第3の外面の後端部から左右方向における内側方向に前記第3の外面の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に伸長していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フロントフォークを保護するフォークガードを備えながらも、熱交換器、エンジンまたは排気管等に走行風が当たり易くなるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例の鞍乗型車両を示す説明図である。
図2図1中の水平面Pで切断した本発明の実施例の鞍乗型車両の断面を上方から見た状態を示す断面図である。
図3】本発明の実施例におけるフロントフェンダおよびフォークガードを示す外観斜視図である。
図4図3中のフロントフェンダおよびフォークガードを前方から見た状態を示す外観図である。
図5図3中のフロントフェンダおよびフォークガードを上方から見た状態を示す外観図である。
図6図3中のフロントフェンダおよびフォークガードを左方から見た状態を示す外観図である。
図7図5中の面Qで切断したフロントフェンダの断面等を図5中の下方から見た状態を示す断面図である。
図8図1中の水平面Pで切断した本発明の実施例におけるフォークチューブおよびフォークガードの断面を上方から見た状態を示す断面図である。
図9図1中の水平面Pで切断した本発明の実施例におけるフォークガードの断面の形状および走行風の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の鞍乗型車両は、車体フレームと、車体フレームの前部に回転可能に支持されたステアリングシャフトに連結され、一対のフォークチューブを有するフロントフォークと、一対のフォークチューブの下端側部分間に設けられた前輪と、一対のフォークチューブ間に設けられ、前輪の少なくとも上方を覆うフロントフェンダとを備えている。
【0014】
フロントフェンダには、一対のフォークチューブを保護するために、一対のフォークチューブの前方にそれぞれ位置し、一対のフォークチューブの一部をそれぞれ覆う一対のフォークガードが設けられている。各フォークガードはフロントフェンダから左右方向外側に張り出し、各フォークガードの上部はフロントフェンダよりも上方に突出している。
【0015】
また、各フォークガードの上部は、少なくとも4つの外面を有している。第1の外面は、各フォークガードの上部の前部の左右方向略中間位置から左右方向における外側方向に傾斜しつつ後方に伸長している。
【0016】
第2の外面は、第1の外面の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に伸長している。なお、第2の外面は、第1の外面の後端部から左右方向における外側方向に、第1の外面の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に伸長していてもよい。
【0017】
第3の外面は、各フォークガードの上部の前部の左右方向略中間位置から左右方向における内側方向に傾斜しつつ後方に伸長している。
【0018】
第4の外面は、第3の外面の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に伸長している。なお、第4の外面は、第3の外面の後端部から左右方向における内側方向に第3の外面の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に伸長していてもよい。
【0019】
本実施形態における各フォークガードの上部において、第1の外面および第3の外面は、フォークガードの上部の前部の左右方向略中間位置から、左右方向における外側方向および内側方向にそれぞれ傾斜しつつ、後方に伸長している。第1の外面と第3の外面とはフォークガードの上部の左右方向略中間位置において互いに交わっており、この第1の外面と第3の外面とが交わっている部分がフォークガードの上部の前端を形成している。このように、フォークガードの上部の前端はフォークガードの左右方向略中間に位置し、第1の外面および第3の外面はフォークガードの上部の前端から後に向かって左右方向に拡開している。
【0020】
また、本実施形態における各フォークガードの上部において、第2の外面の前端部と第1の外面の後端部とは互いに交わっている。第1の外面は左右方向における外側方向に傾斜しつつ後方に伸長し、第2の外面は左右方向に傾斜することなく後方に伸長しているので、第1の外面と第2の外面とのなす角は鈍角である。その結果、第2の外面は第1の外面に対し、左右方向内向きに緩やかに曲がっている。なお、第2の外面が、第1の外面の後端部から左右方向における外側方向に、第1の外面の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に伸長している場合も、第2の外面が左右方向に傾斜することなく後方に伸長している場合と同様に、第2の外面は第1の外面に対し、左右方向内向きに緩やかに曲がった状態になる。
【0021】
また、本実施形態における各フォークガードの上部において、第4の外面の前端部と第3の外面の後端部とは互いに交わっている。第3の外面は左右方向における内側方向に傾斜しつつ後方に伸長し、第4の外面は左右方向に傾斜することなく後方に伸長しているので、第3の外面と第4の外面とのなす角は鈍角である。その結果、第4の外面は第3の外面に対し、左右方向外向きに緩やかに曲がっている。なお、第4の外面が、第3の外面の後端部から左右方向における内側方向に、第3の外面の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に伸長している場合も、第4の外面が左右方向に傾斜することなく後方に伸長している場合と同様に、第4の外面は第3の外面に対し、左右方向外向きに緩やかに曲がった状態になる。
【0022】
各フォークガードの上部において、フォークガードの上部の前端はフォークガードの左右方向略中間に位置し、第1の外面および第3の外面はフォークガードの上部の前端から後に向かって左右方向に拡開しているので、フォークガードの上部にその前方から走行風が当たったとき、その走行風は、フォークガードの上部の左右方向略中間位置において、フォークガードの上部の左右方向外側を流れる走行風と、フォークガードの上部の左右方向内側を流れる走行風とに分かれる。
【0023】
そして、フォークガードの上部の左右方向外側を流れる走行風は、基本的には、第1の外面および第2の外面に沿うように後方に流れる。第2の外面は、左右方向における外側方向に傾斜した第1の外面に対し、左右方向内向きに緩やかに曲がっている。したがって、走行風が第1の外面に沿って流れるときには、走行風の向きは第1の外面に沿って左右方向外側となるが、走行風が第2の外面に沿って流れるときには、走行風の向きは、走行風が第1の外面に沿って流れるときの向きに対して、左右方向内向きに変化する。その結果、走行風がフォークガードの上部の左右方向における外側方向に拡散することが抑制される。
【0024】
また、フォークガードの上部の左右方向内側を流れる走行風は、基本的には、第3の外面および第4の外面に沿うように後方に流れる。第4の外面は、左右方向における内側方向に傾斜した第3の外面に対し、左右方向外向きに緩やかに曲がっている。したがって、走行風が第3の外面に沿って流れるときには、走行風の向きは第3の外面に沿って左右方向内側となるが、走行風が第4の外面に沿って流れるときには、走行風の向きは、走行風が第3の外面に沿って流れるときの向きに対して、左右方向外向きに変化する。その結果、走行風がフォークガードの上部の左右方向における内側方向に拡散することが抑制される。
【0025】
このように、フォークガードの上部に走行風が当たることによって走行風が左右方向に拡散することを抑制することができるので、フロントフォークのフォークチューブを保護するためのフォークガードをフロントフェンダに設けた場合でも、鞍乗型車両において、フロントフォークの後方に設けられた熱交換器、エンジンまたは排気管等に当たる走行風の量の減少を抑制することができる。
【0026】
また、フォークガードの上部の左右方向内側を流れる走行風は、基本的には、第3の外面および第4の外面に沿うように後方に流れるのであるが、フォークガードの上部にその前方から吹き当たる走行風の流速等によっては、フォークガードの上部の左右方向内側を流れる走行風が第3の外面に沿って流れた後、第3の外面と第4の外面とが交わる位置付近で、フォークガードの上部の表面から剥離し、剥離後の走行風に渦または乱れが生じることがある。しかしながら、第3の外面と第4の外面とが交わる位置、すなわちフォークガードの上部の表面から走行風が剥離することのある位置は、フォークガードの上部の前端よりも後方に位置しているので、剥離後に走行風の渦または乱れの生じる範囲を小さくすることができる。
【0027】
同様に、フォークガードの上部の左右方向外側を流れる走行風についても、フォークガードの上部にその前方から吹き当たる走行風の流速等によっては、走行風が、第1の外面と第2の外面とが交わる位置付近で、フォークガードの上部の表面から剥離し、剥離後の走行風に渦または乱れが生じることがある。しかしながら、第1の外面と第2の外面とが交わる位置は、フォークガードの上部の前端よりも後方に位置しているので、剥離後に走行風の渦または乱れの生じる範囲を小さくすることができる。
【0028】
このように、フォークガードの上部に走行風が当たることによって生じることのある走行風の渦または乱れの範囲を小さくすることができるので、フォークガードをフロントフェンダに設けた場合でも、熱交換器、エンジンまたは排気管等に当たる走行風の流速の低下を抑制することができる。
【実施例
【0029】
以下、本発明の鞍乗型車両の実施例について説明する。以下の説明において、前(Fd)、後(Bd)、左(Ld)、右(Rd)、上(Ud)、下(Dd)の方向を述べる場合には、各図中の右下に描いた矢印に従う。
【0030】
(鞍乗型車両)
図1は本発明の実施例の鞍乗型車両1の前側部分を右方から見た状態を示している。図2は、図1中の水平面Pで切断した鞍乗型車両1の断面を上方から見た状態を示している。
【0031】
図1に示すように、鞍乗型車両1は例えば自動二輪車である。鞍乗型車両1は、その骨格を形成する車体フレーム2を備えている。車体フレーム2は、車体フレーム2の前部に配置されたヘッドパイプ3、ヘッドパイプ3から左方および右方にそれぞれ拡開しつつ後方に伸長する2本のメインフレーム4(右側のメインフレームのみ図示)、およびヘッドパイプ3から下方に伸長するダウンチューブ5等を備えている。
【0032】
ヘッドパイプ3にはステアリングシャフト7が挿入されている。ステアリングシャフト7は、ヘッドパイプ3の軸線を中心に回転可能にヘッドパイプ3に支持されている。また、ステアリングシャフト7には、アッパーブラケット8およびロワーブラケット9を介してフロントフォーク11が連結されている。また、フロントフォーク11の下端側部分には前輪17が回転可能に支持されている。また、フロントフォーク11には、前輪17の上方から後方にかけての領域を覆うフロントフェンダ41が取り付けられている。また、アッパーブラケット8の上部にはハンドル20が取り付けられている。利用者のハンドル20の操作により、ステアリングシャフト7、フロントフォーク11、前輪17およびフロントフェンダ41が一体的に回転し、これにより、鞍乗型車両1を左、右に旋回させることができる。
【0033】
フロントフォーク11は、テレスコピック式フロントフォークである。フロントフォーク11は、図2に示すように、一対のフォークチューブ12を備えている。各フォークチューブ12は概ね上下方向に伸長しているが、詳しくは、各フォークチューブ12は、ヘッドパイプ3およびステアリングシャフト7と共に、その下端が上端よりも前に位置するように、鉛直方向に対して25度~30度程度傾斜している。
【0034】
また、各フォークチューブ12はアウターチューブ13およびインナーチューブ14を備えている。本実施例のフロントフォーク11は正立式フロントフォークであり、図1に示すように、インナーチューブ14はアウターチューブ13よりも上方に配置されている。インナーチューブ14はアウターチューブ13よりも小径であり、インナーチューブ14の下端側はアウターチューブ13内に伸縮可能に挿入されている。また、各フォークチューブ12の内部には、コイルスプリングおよびオイルダンパ機構が設けられている。各フォークチューブ12は、前輪17が路面から衝撃を受けたとき、これに応じて収縮し、衝撃を吸収する。
【0035】
一対のフォークチューブ12は、鞍乗型車両1の左右方向中央に配置されたステアリングシャフト7の左方および右方にそれぞれ配置されている。また、各フォークチューブ12のインナーチューブ14の上部は、ステアリングシャフト7にアッパーブラケット8およびロワーブラケット9を介して連結されている。また、前輪17は、一対のフォークチューブ12のアウターチューブ13の下端側部分の間に配置され、これらアウターチューブ13の下端側部分に回転軸Xを中心に回転可能に支持されている。また、フロントフェンダ41は、一対のフォークチューブ12のアウターチューブ13の上部の間に配置され、これらアウターチューブ13の上部に固定されている。
【0036】
また、鞍乗型車両1において、前輪17の後方の左右方向中央にはエンジン21が設けられている。エンジン21は車体フレーム2に支持されている。エンジン21は、クランクケース22、シリンダ23、シリンダヘッド24およびシリンダヘッドカバー25を備えている。エンジン21のシリンダヘッド24の前部には排気管26が接続されている。排気管26は、まず、エンジン21の前方を通り、続いて、エンジン21の下方を通り、後方に伸長している。また、図2に示すように、前輪17の後方、かつエンジン21の上方には、熱交換器としてのオイルクーラ27が設けられている。オイルクーラ27は鞍乗型車両1の左部に配置され、ダウンチューブ5等に支持されている。
【0037】
また、図1に示すように、フロントフォーク11の上部前方には、フロントカバー28が設けられている。フロントカバー28は、フロントフォーク11の上部前方に設けられたメータ類およびヘッドライト等を覆っている。また、前輪17の左後方および右後方には、一対のサイドカバー29が設けられている。ヘッドパイプ3、各メインフレーム4の前部、ダウンチューブ5、フロントフォーク11の上部、およびオイルクーラ27等は一対のサイドカバー29間に配置されている。また、一対のサイドカバー29間には、走行風を一対のサイドカバー29間に導入する走行風導入通路30が形成されている(図2において走行風導入通路30の範囲を破線の矢印で図示)。
【0038】
(フロントフェンダおよびフォークガード)
図3は左前上方から見たフロントフェンダ41およびフォークガード48を示している。図4は前方から見たフロントフェンダ41およびフォークガード48を示し、図5は上方から見たフロントフェンダ41およびフォークガード48を示し、図6は左方から見たフロントフェンダ41およびフォークガード48を示している。図7図5中の面Qで切断したフロントフェンダ41の断面等を図5中の下方から見た状態を示している。
【0039】
図3または図5に示すように、フロントフェンダ41は、上板部42、および上板部42の左側および右側にそれぞれ設けられた一対の横板部43を有している。上板部42は、円弧状に湾曲した形状を有し、前輪17のタイヤの上部を上方から覆う。各横板部43は、概ね三日月の形状を有し、前輪17のタイヤの上部を側方から覆う。上板部42および一対の横板部43は例えば樹脂成形により一体形成されている。また、図6に示すように、各横板部43には、フロントフェンダ41をフロントフォーク11のアウターチューブ13に固定するための固定部44が設けられている。また、図3および図7に示すように、上板部42において、後述する一対のフォークガード48の間に位置する部分には、後方に向かって下方に傾斜した段差部45が形成されている。
【0040】
図3に示すように、フロントフェンダ41には、フロントフォーク11の一対のフォークチューブ12を保護するための一対のフォークガード48が設けられている。一対のフォークガード48はフロントフェンダ41の左側および右側にそれぞれ配置されている。各フォークガード48は、フォークチューブ12の前方に位置し、フォークチューブ12の前部の一部を覆っている。
【0041】
各フォークガード48は、例えば、樹脂成形によりフロントフェンダ41と一体形成されている。各フォークガード48は、フロントフェンダ41の横板部43から左右方向外側に張り出している。また、各フォークガード48は、図1に示すように、フォークチューブ12の伸長方向と平行な方向に伸長している。
【0042】
また、各フォークガード48は、図3に示すように、ガード基部49およびガード突出部50を有している。各フォークガード48の上部は、フロントフェンダ41の上板部42の上面よりも上方に突出している。各フォークガード48において、この上板部42の上面より突出している部分がガード突出部50である。また、各フォークガード48において、上板部42の上面より突出していない部分(各フォークガード48においてガード突出部50以外の部分)がガード基部49である。なお、ガード突出部50は特許請求の範囲の記載における「フォークガードの上部」の具体例である。
【0043】
図1に示すように、各フォークガード48は、フォークチューブ12をその外側から見たときに、インナーチューブ14とアウターチューブ13との境界部分およびその周辺部分をそれらの前方から広く覆っている。各フォークガード48において、ガード突出部50はインナーチューブ14の一部を前方から覆っており、ガード基部49はインナーチューブ14の一部およびアウターチューブ13の一部を前方から覆っている。また、図4に示すように、鞍乗型車両1の前方視において、各フォークガード48のガード突出部50は、インナーチューブ14の一部を左右方向に広く覆っている。また、各フォークガード48のガード基部49は、インナーチューブ14の一部およびアウターチューブ13の一部を左右方向に広く覆っている。ガード基部49の下部の左右方向における端部の位置は、アウターチューブ13の左右方向外側の外面の位置と同じか、またはアウターチューブ13の左右方向外側の外面の位置よりも左右方向外側である。また、各フォークガード48が覆っている範囲には、インナーチューブ14において、アウターチューブ13に出入りする部分の全部または一部が含まれている。また、各フォークガード48において、ガード突出部50がフロントフェンダ41の上板部42の上面よりも上方に突出しているので、フォークガード48がフォークチューブ12を覆う範囲が上方に拡張されており、その結果、フォークガード48がフォークチューブ12を覆う範囲が広くなっている。
【0044】
各フォークガード48によれば、飛び石等が、フロントフォーク11に衝突することを回避してフロントフォーク11を保護することができる。具体的には、各フォークガード48によれば、飛び石等が、インナーチューブ14においてアウターチューブ13に出入りする部分に衝突することを回避することができ、インナーチューブ14においてアウターチューブ13に出入りする部分に傷が付くことを抑制することができる。
【0045】
(ガード突出部)
各フォークガード48のガード突出部50について詳細に説明する。なお、一対のフォークガード48は互いに左右対称の形状を有しているので、ここでは、一対のフォークガード48のうち、左側のフォークガード48のガード突出部50について説明し、右側のフォークガード48のガード突出部50についての説明を省略する。
【0046】
ガード突出部50は6つの外面を有している。すなわち、ガード突出部50は、図6に示すように外前面51および外横面52を有し、さらに、図7に示すように内前面53、内横面54および後面55を有し、さらに、図5に示すように上面56を有している。なお、外前面51、外横面52、内前面53および内横面54はそれぞれ、特許請求の範囲の記載における「第1の外面」、「第2の外面」、「第3の外面」および「第4の外面」の具体例である。
【0047】
図8は、図1中の水平面Pでフォークチューブ12およびガード突出部50を切断した切断面Sを上方から見た状態を示している。図9は、水平面Pで切断したガード突出部50の切断面Sの形状を拡大して示している。水平面Pとは、ガード突出部50と交わり、かつ前輪17の回転軸Xから所定距離D上方の位置を通る水平な面である(図1を参照)。また、図9において、点aと点bとを結ぶ線分abは、切断面Sと外前面51との境界線を示している。また、点bと点cとを結ぶ線分bcは、切断面Sと外横面52との境界線を示している。また、点aと点dとを結ぶ線分adは、切断面Sと内前面53との境界線を示している。また、点dと点eとを結ぶ線分edは、切断面Sと内横面54との境界線を示している。また、点cと点eとを結ぶ線分ceは、概ね、切断面Sと後面55との境界線を示している。
【0048】
図8および図9を見るとわかる通り、外前面51は、ガード突出部50の前部の左右方向略中間位置から左右方向における外側方向に傾斜しつつ後方に直線状に伸長している。また、外横面52は、外前面51の後端部から左右方向における外側方向に、外前面51の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に直線状に伸長している。また、内前面53は、ガード突出部50の前部の左右方向略中間位置から左右方向における内側方向に傾斜しつつ後方に直線状に伸長している。また、内横面54は、内前面53の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に直線状に伸長している。また、後面55は、その左右方向外側の端部が左右方向内側の端部よりも後方に位置するように傾斜しつつ、左右方向に伸長している。
【0049】
また、図9に示すように、点bを通り前輪17の回転軸Xの伸長方向と直交する水平な直線Y2と、切断面Sと外横面52との境界線(線分bc)とのなす角A2は、点aを通り前輪17の回転軸Xの伸長方向と直交する水平な直線Y1と、切断面Sと外前面51との境界線(線分ab)とのなす角A1よりも小さい。また、点dを通り前輪17の回転軸Xの伸長方向と直交する水平な直線Y3と、切断面Sと内横面54との境界線(線分de)とのなす角は0度であり、直線Y1と、切断面Sと内前面53との境界線(線分ad)とのなす角A3よりも小さい。
【0050】
また、外前面51および外横面52はいずれも、左右方向における外側方向に傾斜しつつ後方に伸長し、外横面52の左右方向における傾斜の程度は、外前面51の左右方向における傾斜の程度よりも小さい。したがって、外前面51と外横面52とのなす角A4は鈍角である。その結果、外横面52は外前面51に対し、左右方向内向きに緩やかに曲がっている。また、内前面53は左右方向における内側方向に傾斜しつつ後方に伸長し、内横面54は左右方向に傾斜せずに後方に伸長している。したがって、内前面53と内横面54とのなす角A5は鈍角である。その結果、内横面54は内前面53に対し、左右方向外向きに緩やかに曲がっている。
【0051】
また、本実施例におけるガード突出部50では、前後左右方向において、外前面51の長さ(線分abの長さ)は外横面52の長さ(線分bcの長さ)よりも長い。また、前後左右方向において、内前面53の長さ(線分adの長さ)は内横面54の長さ(線分deの長さ)よりも長い。
【0052】
また、このような外前面51、外横面52、内前面53、内横面54および後面55で囲まれたガード突出部50の切断面Sの外形は略五角形である。一方、上面56は、図6に示すように、略水平な面である。また、上面56の外形は略五角形である。
【0053】
また、図9を見るとわかる通り、外前面51と内前面53とが互いに交わるガード突出部50の前端57は、ガード突出部50の左右方向略中間部に位置している。また、図4および図8を見るとわかる通り、ガード突出部50の前端57は、鞍乗型車両1の前方視において、当該ガード突出部50の後方に配置されたフォークチューブ12が有するインナーチューブ14の下部の外面のうち左右方向において最も外側の部分14Aよりも左右方向内側、かつ当該インナーチューブ14の下部の外面のうち左右方向において最も内側の部分14Bよりも左右方向外側に位置している。なお、図8中の破線K1は、前輪17の回転軸Xの伸長方向と直交し、かつインナーチューブ14の部分14Aに接する水平な直線であり、図8中の破線K2は、前輪17の回転軸Xの伸長方向と直交し、かつインナーチューブ14の部分14Bに接する水平な直線であり、鞍乗型車両1の上方視において、ガード突出部50の前端57は破線K1と破線K2との間に位置している。
【0054】
また、図8に示すように、水平面Pで切断したガード突出部50の切断面Sと外横面52との境界線(線分bc)の後方への延長線Eは、当該ガード突出部50の後方に配置されたフォークチューブ12が有するインナーチューブ14の下部の左右方向外側の外面に接する。また、図2および図8を見るとわかるように、延長線Eは走行風導入通路30内を通過する。また、延長線Eはオイルクーラ27の前面と交わる。
【0055】
ガード突出部50の外前面51、外横面52、内前面53および内横面54は、次に述べるような走行風の流れを形成する機能を有している。すなわち、ガード突出部50の前端57は当該ガード突出部50の左右方向略中間に位置し、外前面51および内前面53はガード突出部50の前端57から後に向かって左右方向に拡開している。したがって、ガード突出部50にその前方から走行風が当たったとき、その走行風は、ガード突出部50の左右方向略中間位置において、ガード突出部50の左右方向外側を流れる走行風と、ガード突出部50の左右方向内側を流れる走行風とに分かれる(図9中の矢印F1、F3参照)。
【0056】
そして、ガード突出部50の左右方向外側を流れる走行風は、基本的には、外前面51および外横面52に沿うように後方に流れる。外横面52は外前面51に対して左右方向内向きに緩やかに曲がっているので、走行風が外前面51に沿って流れるときには、走行風の向きは外前面51に沿って左右方向外側となるが、走行風が外横面52に沿って流れるときには、走行風の向きは、走行風が外前面51に沿って流れるときの向きに対して、左右方向内向きに変化する(図9中の矢印F2参照)。その結果、走行風がガード突出部50の左右方向における外側方向に拡散することが抑制される。
【0057】
また、ガード突出部50の左右方向内側を流れる走行風は、基本的には、内前面53および内横面54に沿うように後方に流れる。内横面54は内前面53に対して左右方向外向きに緩やかに曲がっているので、走行風が内前面53に沿って流れるときには、走行風の向きは内前面53に沿って左右方向内側となるが、走行風が内横面54に沿って流れるときには、走行風の向きは、走行風が内前面53に沿って流れるときの向きに対して、左右方向外向きに変化する(図9中の矢印F4)。その結果、走行風がガード突出部50の左右方向における内側方向に拡散することが抑制される。
【0058】
また、ガード突出部50の左右方向内側を流れる走行風は、基本的には、内前面53および内横面54に沿うように後方に流れるのであるが、ガード突出部50にその前方から吹き当たる走行風の流速等によっては、ガード突出部50の左右方向内側を流れる走行風が内前面53に沿って流れた後、内前面53と内横面54とが交わる位置(図9中の点d)付近で、ガード突出部50の表面から剥離し、剥離後の走行風に渦または乱れが生じることがある。しかしながら、内前面53と内横面54とが交わる位置、すなわちガード突出部50の表面から走行風が剥離することのある位置は、ガード突出部50の前端57よりも後方に位置しているので、剥離後に走行風の渦または乱れの生じる範囲が小さくなる。
【0059】
同様に、ガード突出部50の左右方向外側を流れる走行風についても、ガード突出部50にその前方から吹き当たる走行風の流速等によっては、走行風が、外前面51と外横面52とが交わる位置(図9中の点b)付近で、ガード突出部50の表面から剥離し、剥離後の走行風に渦または乱れが生じることがある。しかしながら、外前面51と外横面52とが交わる位置は、ガード突出部50の前端57よりも後方に位置しているので、剥離後に走行風の渦または乱れの生じる範囲が小さくなる。
【0060】
以上説明した通り、本発明の実施例の鞍乗型車両1が有する各フォークガード48のガード突出部50は、ガード突出部50の前部の左右方向略中間位置から左右方向における外側方向に傾斜しつつ後方に直線状に伸長する外前面51、外前面51の後端部から左右方向における外側方向に外前面51の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に直線状に伸長する外横面52、ガード突出部50の前部の左右方向略中間位置から左右方向における内側方向に傾斜しつつ後方に直線状に伸長する内前面53、および内前面53の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に直線状に伸長する内横面54を有している。この構成により、ガード突出部50に当たる走行風の左右方向における拡散を抑制することができる。したがって、走行風がガード突出部50に当たることによって、オイルクーラ27、エンジン21、排気管26その他の鞍乗型車両1においてフロントフォーク11の後方に配置された部品に当たる走行風の量が減少することを抑制することができる。また、ガード突出部50の外前面51、外横面52、内前面53および内横面54に係る構成により、ガード突出部50に走行風が当たることによって生じることのある走行風の渦または乱れの範囲を小さくすることができる。したがって、走行風がガード突出部50に当たることによって、オイルクーラ27、エンジン21、排気管26その他の鞍乗型車両1においてフロントフォーク11の後方に配置された部品に当たる走行風の流速が低下することを抑制することができる。このように、ガード突出部50によれば、フロントフォーク11の後方に配置された部品に当たる走行風の量の減少および流速の低下を抑制することができるので、フロントフォーク11の後方に配置された部品の走行風による冷却効果がフォークガード48を設けたことによって低下することを抑制することができる。
【0061】
また、ガード突出部50の横断面は、上述したように、外前面51、外横面52、内前面53および内横面54を含む略五角形の形状を有している。この構成によっても、走行風がガード突出部50に当たることに起因する、フロントフォーク11の後方の部品に当たる走行風の量の減少および流速の低下を抑制することができる。よって、フォークガード48を設けたことに起因する、フロントフォーク11の後方の部品の走行風による冷却効果の低下を抑制することができる。
【0062】
また、外前面51と内前面53とが互いに交わるガード突出部50の前端57は、鞍乗型車両1の前方視において、インナーチューブ14の下部の外面のうち左右方向において最も外側の部分14Aよりも左右方向内側、かつ当該インナーチューブ14の下部の外面のうち左右方向において最も内側の部分14Bよりも左右方向外側に位置している。この構成により、ガード突出部50に当たって左右方向外側に流れる走行風と、ガード突出部50に当たって左右方向内側に流れる走行風との双方の拡散を抑制することができる。したがって、走行風がガード突出部50に当たることに起因する、フロントフォーク11の後方の部品に当たる走行風の量の減少を抑制することができる。
【0063】
また、水平面Pで切断したガード突出部50の切断面Sと外横面52との境界線(線分bc)の後方への延長線Eは、当該ガード突出部50の後方に配置されたフォークチューブ12が有するインナーチューブ14の左右方向外側の外面に接する。この構成により、ガード突出部50に当たってガード突出部50の左右方向外側を通過した走行風は、当該ガード突出部50の後方に位置するインナーチューブ14の左右方向外側であって当該インナーチューブ14に極めて接近した領域を通過して後方へ流れる。これにより、ガード突出部50に当たった走行風の左右方向における外側方向への拡散を抑制する効果を高めることができる。これに加え、ガード突出部50に当たってガード突出部50の左右方向外側を通過した走行風が、当該ガード突出部50の後方に位置するインナーチューブ14に当たって拡散することを抑制することができる。
【0064】
また、水平面Pで切断したガード突出部50の切断面Sと外横面52との境界線(線分bc)の後方への延長線Eは、一対のサイドカバー29間に形成された走行風導入通路30内を通過する。この構成により、ガード突出部50に当たった後の走行風の方向を、当該走行風がオイルクーラ27その他の一対のサイドカバー29間に配置された部品に当たるように制御することができる。これにより、一対のサイドカバー29間に配置された部品に当たる走行風の量を増やすことができ、これらの部品の冷却効果を高めることができる。
【0065】
また、水平面Pで切断したガード突出部50の切断面Sと外横面52との境界線(線分bc)の後方への延長線Eはオイルクーラ27の前面と交わる。この構成により、ガード突出部50に当たった後の走行風の方向を、当該走行風がオイルクーラ27に当たるように制御することができる。これにより、オイルクーラ27に当たる走行風の量を増やすことができ、オイルクーラ27の冷却効果を高めることができる。
【0066】
なお、水平面Pで切断したガード突出部50の切断面Sの形状は、図9に示すものに限定されない。ガード突出部50の各外面の前後左右方向における長さ、ガード突出部50の外面のうち互いに交わる2つの外面のなす角等は、特許請求の範囲に記載された最上位の発明と矛盾しない範囲で適宜変更することができる。例えば、上記実施例において、外横面52は、外前面51の後端部から左右方向における外側方向に、外前面51の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に直線状に伸長している場合を例にあげたが、外横面52は、外前面51の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に直線状に伸長していてもよい。また、上記実施例において、内横面54は、内前面53の後端部から左右方向に傾斜せずに後方に直線状に伸長している場合を例にあげたが、内横面54は、内前面53の後端部から左右方向における内側方向に、内前面53の左右方向における傾斜の程度よりも小さい程度傾斜しつつ後方に直線状に伸長していてもよい。また、外前面51、外横面52、内前面53または内横面54は、直線状に伸長してなくてもよく、前後左右方向におけるガード突出部50の中央から外側を向く方向に膨らむように緩やかに湾曲していてもよい。
【0067】
また、上記実施例のフロントフォーク11は正立式であるが、本発明は倒立式フロントフォークを有する鞍乗型車両にも適用することができる。
【0068】
また、上記実施例では、熱交換器としてオイルクーラ27を例にあげ、オイルクーラ27が鞍乗型車両1の左部に配置されている場合を例にあげたが、本発明における熱交換器は、ラジエータ等、他の種類の熱交換器でもよいし、熱交換器は鞍乗型車両1の中央または右部に配置されていてもよい。また、本発明における熱交換器は、鞍乗型車両の左部から右部に渡る大型の熱交換器でもよい。また、本発明は複数の熱交換器を有する鞍乗型車両にも適用することができる。
【0069】
また、本発明は、自動二輪車以外の鞍乗型車両にも適用することができる。
【0070】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鞍乗型車両もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 鞍乗型車両
2 車体フレーム
7 ステアリングシャフト
11 フロントフォーク
12 フォークチューブ
13 アウターチューブ
14 インナーチューブ
17 前輪
27 オイルクーラ(熱交換器)
29 サイドカバー
30 走行風導入通路
41 フロントフェンダ
48 フォークガード
50 ガード突出部(フォークガードの上部)
51 外前面(第1の外面)
52 外横面(第2の外面)
53 内前面(第3の外面)
54 内横面(第4の外面)
57 前端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9