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特許7581999物体検知装置、物体検知方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】物体検知装置、物体検知方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/41 20060101AFI20241106BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20241106BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20241106BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01S7/41
G01S7/02 210
G01N22/00 S
G01N22/00 Y
G01V3/12 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021047049
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146207
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山之内 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】有吉 正行
(72)【発明者】
【氏名】小倉 一峰
(72)【発明者】
【氏名】住谷 達哉
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-230466(JP,A)
【文献】特開2014-219238(JP,A)
【文献】特表2016-532091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0019050(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G01N 22/00
G01V 3/12
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に向けて電波を照射する複数の送信アンテナを備えた送信手段と、
前記物体から反射された前記電波を受信する複数の受信アンテナを備え、前記受信アンテナで受信した受信信号から中間周波数信号を生成する受信手段と、
前記中間周波数信号から前記物体の3次元空間内における反射振幅である3次元反射振幅の分布を計算する3次元反射振幅計算手段と、
2次元面と垂直な深さ方向に対し前記3次元反射振幅が取り得る最大値から、前記2次元面内における反射振幅である2次元反射振幅を計算する2次元反射振幅計算手段と、
前記2次元反射振幅を前記2次元反射振幅の最大値で規格化する事で前記物体の反射率を計算し、前記反射率から前記物体の複素誘電率絶対値を計算する複素誘電率絶対値計算手段と、
を備えた事を特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記2次元面と垂直な深さ方向に対し前記3次元反射振幅が最大値を取る深さ位置を計算する深さ位置計算手段と、
前記深さ位置ないし前記2次元反射振幅から、前記物体の厚さを計算する厚さ計算手段と、
前記2次元反射振幅と前記複素誘電率絶対値と前記厚さから、前記物体の誘電率を計算する誘電率計算手段と、
を備えた事を特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記複素誘電率絶対値と前記誘電率から、前記物体の誘電損失を計算する誘電損失計算手段と、
を備えた事を特徴とする請求項2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記厚さ計算手段は、前記深さ位置のヒストグラムを計算する深さヒストグラム計算手段と、
前記深さ位置のヒストグラムのピーク位置から前記物体の基準位置を計算する基準位置計算手段と、を備えており、
前記厚さ計算手段は、前記深さ位置と前記基準位置の差分から前記物体の厚さを計算する事、
を特徴とする請求項2ないし3に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記厚さ計算手段は、
深さ方向に垂直な面内における反射振幅の和を計算し、
前記反射振幅の和の深さ方向依存性がピークとなる深さ位置から前記物体の基準位置を計算し、
前記深さ位置と前記基準位置の差分から前記物体の厚さを計算する事、
を特徴とする請求項2ないし3に記載の物体検知装置。
【請求項6】
複数の深さ方向に対し前記深さ位置のヒストグラムないし前記反射振幅の和の深さ方向依存性を計算し、前記ヒストグラムないし前記反射振幅の和のピーク値が最大になる深さ方向から前記物体の向きを計算する向き計算手段を備えており、
前記厚さ計算手段は、前記向き計算手段が計算した前記物体の向きに沿った前記物体の厚さを計算する事、
を特徴とする請求項4ないし5に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記複素誘電率絶対値ないし前記誘電率ないし前記誘電損失を画像として出力する画像出力手段と、を備えた事、
を特徴とする請求項3のいずれか一項に記載の物体検知装置。
【請求項8】
前記複素誘電率絶対値、前記誘電率、及び前記誘電損失の少なくとも一つを用いて、前記物体を識別する物体識別手段と、
を備えた事を特徴とする請求項3に記載の物体検知装置。
【請求項9】
前記反射振幅から前記物体の位置を計算する位置計算手段と、
複数の深さ方向に対し前記深さ位置のヒストグラムないし前記反射振幅の和の深さ方向依存性を計算し、前記ヒストグラムないし前記反射振幅の和のピーク値が最大になる深さ方向から前記物体の向きを計算する向き計算手段と、
を備えており、
前記位置計算手段が計算した前記物体の位置と、前記向き計算手段が計算した前記物体の向きから、前記物体が前記物体検知装置の方向を向いていると判断された場合において、前記物体識別手段は、前記複素誘電率絶対値、前記誘電率、及び前記誘電損失の少なくとも一つを用いて、前記物体を識別する事、
を特徴とする請求項8に記載の物体検知装置。
【請求項10】
電波によって物体を検知するための物体検知方法であって、
複数の送信アンテナを備えた送信手段から前記物体に向けて電波を照射するステップと、
複数の受信アンテナを備えた受信手段で前記物体から反射された前記電波を受信し、更に前記受信アンテナで受信した受信信号から中間周波数信号を生成するステップと、
反射振幅前記中間周波数信号から前記物体の3次元空間内における反射振幅である3次元反射振幅を計算するステップと、
反射振幅2次元面と垂直な深さ方向に対し前記3次元反射振幅が取り得る最大値から、前記反射振幅2次元面内における反射振幅である2次元反射振幅を計算するステップと、
前記2次元反射振幅を前記2次元反射振幅の最大値で規格化する事で前記物体の反射率を計算し、前記反射率から前記物体の複素誘電率絶対値を計算するステップと、
を有する事を特徴とする物体検知方法。
【請求項11】
前記反射振幅2次元面と垂直な深さ方向に対し前記3次元反射振幅が最大値を取る深さ位置を計算するステップと、
前記深さ位置ないし前記2次元反射振幅から前記物体の厚さを計算するステップと、
前記2次元反射振幅と前記複素誘電率絶対値と前記厚さから、前記物体の誘電率を計算するステップと、
を有する事を特徴とする請求項10に記載の物体検知方法。
【請求項12】
前記複素誘電率絶対値と前記誘電率から、前記物体の誘電損失を計算するステップと、
を有する事を特徴とする請求項11に記載の物体検知方法。
【請求項13】
前記複素誘電率絶対値ないし前記誘電率ないし前記誘電損失を用いて、前記物体を識別するステップと、
を有する事を特徴とする請求項12に記載の物体検知方法。
【請求項14】
物体に向けて電波を照射する複数の送信アンテナを備えた送信手段と、
前記物体から反射された前記電波を受信する複数の受信アンテナを備え、更に、前記受信アンテナで受信した受信信号から中間周波数信号を生成する受信手段と、
プロセッサと、を備える物体検知装置に、
前記中間周波数信号から前記物体の3次元空間内における反射振幅である3次元反射振幅を計算するステップと、
反射振幅2次元面と垂直な深さ方向に対し前記3次元反射振幅が取り得る最大値から、前記反射振幅2次元面内における反射振幅である2次元反射振幅を計算するステップと、
前記2次元反射振幅を前記2次元反射振幅の最大値で規格化する事で前記物体の反射率を計算し、前記反射率から前記物体の複素誘電率絶対値を計算するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項15】
前記反射振幅2次元面と垂直な深さ方向に対し前記3次元反射振幅が最大値を取る深さ位置を計算するステップと、
前記深さ位置ないし前記2次元反射振幅から前記物体の厚さを計算するステップと、
前記2次元反射振幅と前記複素誘電率絶対値と前記厚さから、前記物体の誘電率を計算するステップと、
を実行させる請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記複素誘電率絶対値と前記誘電率から、前記物体の誘電損失を計算するステップと、
を実行させる請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
前記複素誘電率絶対値ないし前記誘電率ないし前記誘電損失を用いて、前記物体を識別するステップと、
を実行させる請求項16に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を検知対象物に照射し、対象物から反射された電波により検知対象物の存在を認識ないし識別するための物体検知装置、物体検知方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波(マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波など)は、光と異なり、物体を透過する能力が優れている。特許文献1において、衣服下や鞄内に隠された物品に対し、レーダ装置から衣服や鞄を透過する電波を照射し、この物品で反射された電波を前記レーダ装置で受信し、受信した電波に基づいてこの物品を画像化して検査する装置が提案されている。
【0003】
また、電波を用いて物質の誘電率を遠隔測定する技術が提案されている。誘電率は物質毎に固有の値を取るため、誘電率の測定を物質の同定に用いる事ができる。特に誘電率は爆発物や薬物などの同定に有用である。
【0004】
特許文献2と非特許文献1では、レーダ装置から電波を物質に照射し、物質から反射された電波をレーダ装置で受信し、受信した電波に基づいて中間周波数信号を生成し、中間周波数信号から物質の誘電率を推定する方法が提案されている。具体的には、測定対象となる物質の誘電率を未知変数とした幾何光学モデル(geo optics modeling)が用いられる。幾何光学モデルは、未知変数である誘電率の値を与えれば中間周波数信号を算出できる。そして、中間周波数信号の測定値を最も良く再現する幾何光学モデルの誘電率の値から、前記物質の誘電率を推定する。
【0005】
特許文献3では、レーダとカメラを備えた物体検知装置で誘電率を測定する方法が提案されている。具体的にはレーダ装置から物質と背景反射体に電波を照射し、物質と背景反射体から反射された電波に基づいて3次元マイクロ波イメージを生成する。この物体検知装置は、3次元マイクロ波イメージとカメラ画像を用いて、物体検知装置から物質及び背景反射体までの距離を測定し、さらに測定で得た距離から誘電率を推定する。
【0006】
また、特許文献4には、電波を送信信号として物質に照射し、物質から反射された電波を受信信号として受信し、送信信号と受信信号をミキシングすることで中間周波数信号を生成することが記載されている。中間周波数信号は、物体の位置分布を表すスペクトルを算出する際に用いられる。
【0007】
また特許文献5には、定在波レーダを用いて人の体内の異物又は異常部位を検知するための状態検知装置が記載されている。この状態検知装置は、送信波と、外部の測定対象にて反射した反射波を受信した受信波と、を合成することにより合成波を検知する。そして状態検知装置は、この合成波の周波数の強度分布から、その直流成分を除去し、フーリエ変換して、距離スペクトルを求める。
【0008】
なお、特許文献6には、患者の体部位の3次元画像を生成するシステムにおいて、複数のアンテナ素子を用いること、及び、マイクロ波の周波数範囲にわたって体部位の反射係数データを収集することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2014/0167784号明細書
【文献】米国特許第8946641号明細書
【文献】特許第5260799号公報
【文献】国際公開第2018/147025号
【文献】特開2018-011923公報
【文献】特開2008-512175公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】K. Haddadi et al,. "Geometrical Optics-Based Model for Dielectric Constant and Loss Tangent Free-Space Measurement", IEEE Trans. Instrum. Meas., vol. 63, no. 7, pp. 1818-1823, Jul. 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2と非特許文献1における幾何光学を基づいて物質の誘電率を推定する方法は、単一の送信アンテナ及び受信アンテナを用いる事を前提としている。単一の送信アンテナ及び受信アンテナを用いる場合、レーダ装置のノイズの影響を受けやすく、物質の誘電率を精度よく推定する事が難しいという課題がある。
【0012】
特許文献3では、複数の送信アンテナ及び受信アンテナで構成されたアンテナアレイで3次元マイクロ波イメージを生成している。アンテナアレイを用いる場合は、単一の送信アンテナ及び受信アンテナを用いる特許文献2と非特許文献1における方法と異なり、レーダ装置のノイズの影響を受けにくい。
【0013】
一方、特許文献3はレーダ装置に加えカメラ装置が必要となる。このためカメラによるコスト増加の問題がある。さらにレーダとカメラの同期動作も必要となる。測定対象物が移動する場合、レーダとカメラの同期ずれが誘電率の測定誤差となる課題がある。
【0014】
本発明の課題の一例は、電波を用いて物体の誘電率を測定する際に、コストの上昇を抑制しつつ測定精度を上げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、電波によって物体を検知するための物体検知装置であって、前記物体に向けて電波を照射する複数の送信アンテナを備えた送信手段と、前記物体から反射された前記電波を受信する複数の受信アンテナを備え、更に、前記受信アンテナで受信した受信信号から中間周波数信号を生成する受信手段と、前記中間周波数信号から前記物体の3次元空間内における反射振幅の分布を計算する3次元反射振幅計算手段と、2次元面と垂直な深さ方向に対し前記3次元反射振幅が取り得る最大値から、前記2次元面内における反射振幅を計算する2次元反射振幅計算手段と、前記2次元反射振幅を前記2次元反射振幅の最大値で規格化する事で前記物体の反射率を計算し、前記反射率から前記物体の複素誘電率絶対値を計算する複素誘電率絶対値計算手段と、を備えた事を特徴とする物体検知装置である。
【0016】
また、本発明の一態様は、電波によって物体を検知するための物体検知方法であって、複数の送信アンテナを備えた送信手段から前記物体に向けて電波を照射するステップと、 複数の受信アンテナを備えた受信手段で前記物体から反射された前記電波を受信し、更に前記受信アンテナで受信した受信信号から中間周波数信号を生成するステップと、3次元反射振幅計算手段で、前記中間周波数信号から前記物体の3次元空間内における反射振幅を計算するステップと、2次元反射振幅計算手段で、2次元面と垂直な深さ方向に対し前記3次元反射振幅が取り得る最大値から、前記2次元面内における反射振幅を計算するステップと、複素誘電率絶対値計算手段で、前記2次元反射振幅を前記2次元反射振幅の最大値で規格化する事で前記物体の反射率を計算し、前記反射率から前記物体の複素誘電率絶対値を計算するステップと、を有する事を特徴とする物体検知方法である。
【0017】
また、本発明の一態様は、前記物体に向けて電波を照射する複数の送信アンテナを備えた送信手段と、前記物体から反射された前記電波を受信する複数の受信アンテナを備え、更に、前記受信アンテナで受信した受信信号から中間周波数信号を生成する受信手段と、プロセッサと、を備える物体検知装置において、3次元反射振幅計算手段で、前記中間周波数信号から前記物体の3次元空間内における反射振幅を計算するステップと、2次元反射振幅計算手段で、2次元面と垂直な深さ方向に対し前記3次元反射振幅が取り得る最大値から、前記2次元面内における反射振幅を計算するステップと、複素誘電率絶対値計算手段で、前記2次元反射振幅を前記2次元反射振幅の最大値で規格化する事で前記物体の反射率を計算し、前記反射率から前記物体の複素誘電率絶対値を計算するステップと、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電波を用いて物体の誘電率を測定する際に、コストの上昇を抑制しつつ測定精度を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態における物体検知装置の構成を示した構成図である。
図2】実施の形態における物体検知装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態における物体検知装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】物体検知装置と対象物の位置関係の一例を説明する図である。
図5】深さ位置のヒストグラムを示す図である。
図6】物体検知装置の構成の一例を示すブロック図である。
図7】物体検知装置と対象物の位置関係の一例を説明する図である。
図8】深さ位置のヒストグラムを示す図である。
図9】深さ位置のヒストグラムを示す図である。
図10】物体検知装置と対象物の位置関係の一例を説明する図である。
図11】物体検知装置と対象物の位置関係の一例を説明する図である。
図12】物体検知装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による送信装置および送信方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以降に示す各図面において、同一または相当部分の部位については、同一符号を付して示すこととし、その説明は繰り返さないことにする。
【0021】
以下、本発明の実施の形態における、物体検知装置、物体検知方法、及びプログラムについて、図1図12を参照しながら説明する。本実施の形態では、レーダ装置のノイズの影響を受けにくく、かつレーダ以外の他センサに起因するコスト及び誤差を無くした誘電率測定を実現する、物体検知装置、物体検知方法、及びプログラムが開示される。
【0022】
(第一の実施の形態)
[装置構成]
最初に図1を用いて本実施の形態1における物体検知装置の構成について説明する。図1に示す本実施の形態における物体検知装置1000は、電波によって物体を検知するための装置である。図1に示すように、物体検知装置1000は、送信部1101と、受信部1102と、演算装置1211とを備えている。
【0023】
次に、図2に本実施の形態における送信部1101と受信部1102の内部構成を示す。図2に示す例において、送信部1101は、発振器1201と、可変振幅位相器1207と、送信アンテナ1202とを備えている。また、受信部1102は、受信アンテナ1203と、ミキサ1204と、インターフェイス回路1205とを備えている。更に、図1でも示したように、送信部1101と受信部1102とは、端子1208を介して接続されている。送信アンテナ1202と受信アンテナ1203は、複数のアンテナで構成されたアンテナアレイである。
【0024】
次に、図3に本実施の形態における演算装置1211の内部構成を示す。本実施の形態における演算装置1211は、図3で示すように、3次元反射振幅計算部1301と、2次元反射振幅計算部1302と、複素誘電率絶対値計算部1303と、対象物厚さ計算部1304と、誘電率計算部1305と、誘電損失計算部1306と、物質同定部1307と、対象物深さ位置計算部1308を備えている。各機能部の詳細については、後述する。
【0025】
[装置動作]
次に図1ないし図3において示した本実施の形態1における物体検知装置の動作について説明する。
【0026】
図1に示した装置構成において、送信部1101は、対象物配置面1005上に存在する検知対象(以下、「対象物」と表記する)1003に向けて、送信信号となる電波1002を照射する。電波1002の照射は、送信アンテナ1202によって行われる。
【0027】
図1における受信部1102は、対象物1003で反射された電波1004を受信信号として受信する。この受信は、受信アンテナ1203によって行われる。受信部1102は、更に、受信した受信信号に、送信部1101で生成された送信信号をミキシングして、中間周波数信号(以下「IF(Intermediate Frequency)信号」と表記する。)を生成する。具体的には、図1に示すように、送信部1101は、受信部1102に向けて、端子1208を経由して送信信号を出力する。受信部1102は、対象物1003から反射された電波の受信結果(すなわち受信信号)と、端子1208を経由して得た送信信号とをミキシングして、IF信号を生成する。また、送信部1101は、生成したIF信号を演算装置1211に出力する。
【0028】
図2で内部構成に示した送信部1101において、発振器1201は、RF信号(電波)を生成する。発振器1201で生成されたRF信号は、可変振幅位相器1207において振幅と位相を所望値に変更された上で出力される。可変振幅位相器1207から出力されたRF信号(電波)は、送信アンテナ1202から電波1002として対象物1003に照射される。電波1002の周波数帯域は任意であるが、例えばマイクロ波帯(3GHzから30GHz)ないしミリ波帯(30GHzから300GHz)の帯域から周波数帯域を選択して設定する事が望ましい。
【0029】
図2で内部構成に示した受信部1102において、対象物1003で反射された電波1004は、受信アンテナ1203によって受信される。ミキサ1204は、発振器1201から端子1208を経由して入力されてきたRF信号と受信アンテナ1203で受信された電波(受信信号)とを、ミキシングする事で、IF信号を生成する。ミキサ1204で生成されたIF信号は、インターフェイス回路1205を経由して、演算装置1211へと送信される。インターフェイス回路1205は、アナログ信号であるIF信号を、演算装置1211で扱えるデジタル信号に変換する機能を持ち、得られたデジタル信号を演算装置1211へと出力する。
【0030】
図3で内部構成に示した演算装置1211において、受信部1102から出力されたIF信号は3次元反射振幅計算部1301に入力される。3次元反射振幅計算部1301は、受信部1102から出力されたIF信号に基づいて、3次元位置(x,y,z)における対象物1003から反射される反射波の振幅として定義される反射振幅p(x,y,z)を3次元反射振幅として計算する。3次元反射振幅の計算方法としては、例えばビームフォーマ法が挙げられる。3次元位置(x,y,z)については、x軸とy軸は図1内の対象物配置面1005に平行であり、z軸は対象物配置面1005に垂直とする。
【0031】
対象物深さ位置計算部1308には、3次元反射振幅計算部1301で計算された3次元反射振幅p(x,y,z)が入力される。対象物深さ位置計算部1308は、2次元位置(x,y)における対象物1003のz軸方向の位置を示す深さ位置zd(x,y)を計算する。具体的には、式(1)で示すように2次元位置(x,y)の各点において3次元反射振幅p(x,y,z)を最大化するz軸方向の位置として計算される。
【0032】
zd(x,y) = argmaxz[p(x,y,z)],・・・(1)
【0033】
2次元反射振幅計算部1302には、3次元反射振幅計算部1301で計算された3次元反射振幅p(x,y,z)が入力される。2次元反射振幅計算部1302は、入力された3次元反射振幅p(x,y,z)に基づいて、2次元位置(x,y)を引数とする対象物1003の2次元反射振幅pd(x,y)を計算する。具体的に2次元反射振幅pd(x,y)は、式(2)で示すように2次元位置(x,y)の各点においてzを変化させた場合における3次元反射振幅p(x,y,z)の最大値として計算される。
【0034】
pd(x,y) = maxz[p(x,y,z)] = p(x,y,zd(x,y)), ・・・(2)
【0035】
複素誘電率絶対値計算部1303には、2次元反射振幅計算部1302で計算された2次元反射振幅pd(x,y)が入力される。複素誘電率絶対値計算部1303は、入力された2次元反射振幅pd(x,y)に基づいて、2次元位置(x,y)における対象物1003の複素誘電率の絶対値|εc(x,y)|を計算する。
【0036】
具体的には、複素誘電率絶対値計算部1303は、まず、以下の式(3)に基づいて、2次元反射振幅pd(x,y)をその最大値で規格化した値から対象物1003の反射率R(x,y)を計算する。
【0037】
R(x,y) = pd(x,y)/max(x,y)[pd(x,y)],・・・(3)
【0038】
次に、複素誘電率絶対値計算部1303は、以下の式(4)に基づいて、対象物1003の反射率R(x,y)から対象物1003の複素誘電率の絶対値|εc(x,y)|を計算する。
【0039】
c(x,y)| = [1+R(x,y)]2/[1-R(x,y)]2,・・・(4)
【0040】
対象物厚さ計算部1304には、対象物深さ位置計算部1308で計算された深さ位置zd(x,y)が入力される。対象物厚さ計算部1304は、入力された深さ位置zd(x,y)に基づいて、2次元位置(x,y)における対象物厚さd(x,y)と基準深さ位置zref(x,y)を計算する。
【0041】
まず、基準深さ位置zref(x,y)の具体的な計算方法を以下に示す。ここでは、物体検知装置1000と対象物1003の位置関係が図4で示した配置になる場合を例として説明する。図4は上面図であり、物体検知装置1000と対象物1003を上からy軸方向に沿って見た図である。図4で示した配置において、対象物1003、1003、・・・、1003Kの表面のz軸方向の位置をそれぞれz1、z2、・・・、zKとする(Kは対象物1003の数)。
対象物厚さ計算部1304に入力された深さ位置zd(x,y)から、定義域(x,y)の点数と同じ個数分の深さzdの数値が得られる。対象物厚さ計算部1304は、深さzdの数値の分布状況を、深さzdのヒストグラムN(zd)によって計算する。図4の配置の場合に対応したヒストグラムN(zd)の例を図5に示す。図5で示すように、ヒストグラムN(zd)は対象物1003、1003、・・・、1003Kの表面におけるz軸方向の位置z1、z2、・・・、zKでピークを取る。そして対象物厚さ計算部1304は、2次元位置(x,y)における深さ位置zd(x,y)がzi-1 ≦ zd(x,y) < ziを満たす場合、基準深さ位置zref(x,y)を以下の式(5)で設定する。
【0042】
zref(x,y) = zi・・・(5)
【0043】
そして対象物厚さ計算部1304は、対象物厚さd(x,y)を、深さ位置zd(x,y)と基準深さ位置zref(x,y)を用いて、以下の式(6)で計算する。
【0044】
d(x,y) = zref(x,y)-zd(x,y)・・・(6)
【0045】
上記の例において、対象物厚さ計算部1304はx-y面内に含まれる深さ位置zdの数N(zd)をカウントしたヒストグラムのピーク値から対象物1003、1003、・・・、1003Kの表面におけるz軸方向の位置z1、z2、・・・、zKを検出している。別の手段として、対象物厚さ計算部1304は、x-y面内における3次元反射振幅p(x,y,z)のx-y面内における和として得られる関数g(z)=Σ(x,y)[p(x,y,z)]のピークが得られるz軸方向の位置から、対象物1003、1003、・・・、1003Kの表面におけるz軸方向の位置z1、z2、・・・、zKを検出してもよい。
【0046】
誘電率計算部1305には、2次元反射振幅計算部1302で計算された2次元反射振幅pd(x,y)と、複素誘電率絶対値計算部1303で計算された複素誘電率の絶対値|εc(x,y)|および反射率R(x,y)と、対象物厚さ計算部1304で計算された対象物厚さd(x,y)および基準深さzref(x,y)が入力される。誘電率計算部1305は、入力されたデータに基づいて2次元位置(x,y)における対象物1003の誘電率εr(x,y)を計算する。なおここで誘電率εr(x,y)は複素誘電率εc(x,y)の実部に相当する。
【0047】
誘電率εr(x,y)の具体的な計算方法を以下に示す。誘電率計算部1305は、入力された2次元反射振幅pd(x,y)、基準深さzref(x,y)、および反射率R(x,y)を用いて、以下の式(7)に基づいて2次元位置(x,y)における電波吸収量Δa(x,y)を計算する。
【0048】
Δa(x,y)=pd(x,y)/p[x,y,zref(x,y)]/[1-R(x,y)]2, ・・・(7)
【0049】
次に誘電率計算部1305は、計算した電波吸収量Δa(x,y)および入力された対象物厚さd(x,y)を用いて、以下の式(8)に基づいて2次元位置(x,y)における吸収係数α(x,y)を計算する。
【0050】
α(x,y)=-ln(Δa(x,y))/2d(x,y), (8)
【0051】
次に誘電率計算部1305は、計算した吸収係数α(x,y)および入力された複素誘電率の絶対値|εc(x,y)|を用いて、以下の式(9)に基づいて2次元位置(x,y)における誘電率εr(x,y) を計算する。
【0052】
εr(x,y)= |εc(x,y)|-2(λα(x,y)/2π)2. (9)
ここで、式(9)内におけるλは送信部1101が送信した電波の波長である。
【0053】
誘電損失計算部1306には、複素誘電率絶対値計算部1303で計算された複素誘電率の絶対値|εc(x,y)|と、誘電率計算部1305で計算された誘電率εr(x,y)が入力される。誘電損失計算部1306は、入力されたデータに基づいて2次元位置(x,y)における対象物1003の誘電損失εi(x,y)を計算する。なおここで誘電損失εi(x,y)は複素誘電率εc(x,y)の虚部に相当する。
【0054】
誘電率εi(x,y)の具体的な計算方法を以下に示す。誘電損失計算部1306は、入力された複素誘電率の絶対値|εc(x,y)|および誘電率εr(x,y)を用いて、以下の式(10)に基づいて2次元位置(x,y)における誘電損失εi(x,y)を計算する。
【0055】
εi(x,y)=sqrt(|εc(x,y)|2r(x,y)2). (10)
【0056】
複素誘電率絶対値計算部1303で計算された複素誘電率の絶対値|εc(x,y)|と、誘電率計算部1305で計算された誘電率εr(x,y)と、誘電損失計算部1306で計算された誘電損失εi(x,y)は、それぞれ2次元の画像として出力されてもよい。
【0057】
物質同定部1307には、複素誘電率絶対値計算部1303で計算された複素誘電率の絶対値|εc(x,y)|と、誘電率計算部1305で計算された誘電率εr(x,y)と、誘電損失計算部1306で計算された誘電損失εi(x,y)の内少なくとも一つが入力される。物質同定部1307は、様々な物質における複素誘電率絶対値ないし誘電率ないし誘電損失の値を記憶したデータベースを有している。物質同定部1307は、物質同定部1307に入力された複素誘電率の絶対値|εc(x,y)|ないし誘電率εr(x,y)ないし誘電損失εi(x,y)の内少なくとも一つをこのデータベースの値と照合する事で、対象物1003の構成物質を同定する。
【0058】
(第二の実施の形態)
次に第二の実施の形態について説明する。第二の実施の形態では、図7で示すように、対象物1003の表面が、物体検知装置1000の送信アンテナ1202と受信アンテナ1203で構成される開口面1400に対し平行でない場合の物体検知方法を提供する。
[装置構成]
第二の実施の形態における装置構成は、図1図2、および図6で示される。図1図2は第一の実施の形態と共通であるため、説明は繰り返さない。
【0059】
図6は第二の実施の形態における演算装置1211の内部構成を示す。図6で示した第二の実施の形態における演算装置1211の内部構成は、図3で示した第一の実施の形態における演算装置1211の内部構成に、対象物向き計算部1309を追加したものになっている。対象物向き計算部1309以外の構成要素については、図3で示した第一の実施の形態と図6で示した第二の実施の形態で共通である。
【0060】
[装置動作]
図7で示した配置において、対象物1003の表面は、物体検知装置1000の開口面1400に対し角度θ0だけ傾いているものとする。またz軸およびx軸を角度θ0だけ傾けた軸をz(θ0)軸およびx(θ0)軸とする。角度θ0は未知変数であるため、測定結果に基づいて角度θ0の値を計算する必要がある。第二の実施の形態では、対象物向き計算部1309において角度θ0の値を計算する。
【0061】
角度θ0の値の計算方法を以下で説明する。対象物深さ位置計算部1308は、z軸およびx軸を角度θだけ傾けた軸であるz(θ)軸およびx(θ)軸を設定する。対象物深さ位置計算部1308は、3次元反射振幅計算部1301から入力された3次元反射振幅p(x,y,z)を最大化するz(θ)軸方向の位置として深さ位置zd[x(θ),y.θ]を計算する。
【0062】
zd[x(θ),y.θ] = argmaxz(θ)[p(x,y,z)],・・・(11)
【0063】
ここで計算された深さ位置zd[x(θ),y.θ]は対象物向き計算部1309に入力される。
【0064】
次に、対象物向き計算部1309は、入力された深さ位置zd[x(θ),y.θ]に基づいて、x(θ)-y面内に含まれる深さ位置zd[x(θ),y.θ]の数N[zd(θ)]をカウントしたヒストグラムを計算する。
【0065】
図7の配置の場合に対応した深さ位置zd[x(θ),y.θ]のヒストグラムN[zd(θ)]の例を、図8および図9に示す。図8は角度θが0度の場合のz軸方向に沿った深さ位置のヒストグラムであり、図9は角度θが対象物1003の傾き角θ0に一致する場合のz(θ0)軸方向に沿った深さ位置のヒストグラムを図示している。図8で示した場合のように設定した角度θが対象物1003の傾き角θ0と一致しない場合、ヒストグラムの最大値maxzd[N(zd)]は低下する。一方、図9で示した場合のように設定した角度θが対象物1003の傾き角θ0と一致する場合、ヒストグラムの最大値maxzd(θ0)[N[zd0)]]は向上する。したがって、対象物向き計算部1309は、設定角度θに対するヒストグラム最大値の依存性を計算し、ヒストグラム最大値が最も大きくなる角度θの値を対象物1003の実際の傾き角θ0の計算値として用いる事が望ましい。
【0066】
第一の実施の形態と同じく、第二の実施の形態においても、深さ位置zd[x(θ),y. θ]のヒストグラムN[zd(θ)]の代わりに、3次元反射振幅p(x(θ),y,z(θ))のx(θ)-y面内における和として得られる関数g(z(θ))=Σ(x(θ),y)[p(x(θ),y,z(θ))]を用いてもよい。
【0067】
対象物厚さ計算部1304は、対象物向き計算部1309が計算した対象物1003の傾き角θ0の計算値と、対象物深さ位置計算部1308が計算した深さ位置から、傾き角θ0の場合の深さ位置zd[x(θ0),y. θ0]のヒストグラムN[zd0)]を計算する。さらに対象物厚さ計算部1304は、ヒストグラムN[zd0)]のピーク値から、第一の実施の形態と同じ手順で基準深さ位置zref(x(θ0),y)と対象物厚さd(x(θ0),y)を計算する。
【0068】
さらに2次元反射振幅計算部1302は、3次元反射振幅計算部1301から入力された3次元反射振幅p(x,y,z)と、対象物向き計算部1309で計算された対象物1003の傾き角θ0の計算値に基づいて、2次元位置(x(θ0),y)の各点においてz(θ0)を変化させた場合における3次元反射振幅の最大値として、2次元反射振幅pd[x(θ0),y]を式(12)で示すように計算する。
【0069】
pd(x(θ0),y) = maxz(θ0)[p[x(θ0),y,z(θ0)]]・・・(12)
【0070】
以下、複素誘電率絶対値計算部1303と、対象物厚さ計算部1304と、誘電率計算部1305と、誘電損失計算部1306は、深さ位置zd(x,y)と2次元反射振幅pd(x,y)と対象物厚さd(x,y)と基準深さ位置zref(x,y)の代わりに、傾き角θ0に基づく深さ位置zd[x(θ0),y. θ0]と2次元反射振幅pd[x(θ0),y]と対象物厚さd(x(θ0),y)と基準深さ位置zref(x(θ0),y)を入力データとして、第一の実施の形態と同一の処理を行い、複素誘電率絶対値と誘電率と誘電損失を計算する。
【0071】
第二の実施の形態においても、物質同定部1307は、物質同定部1307に入力された複素誘電率絶対値、誘電率、及び誘電損失の内少なくとも一つを上記したデータベースの値と照合する事で、対象物1003の構成物質を同定する。
【0072】
図10で示すように、対象物1003が物体検知装置1000の方向を向いている場合は、物体検知装置において受信される対象物1003から反射される電波の強度は十分高いため、精度良く対象物1003の複素誘電率絶対値ないし誘電率ないし誘電損失を測定できる。一方で、図11で示すように、対象物1003が物体検知装置1000の方向を向いていない場合は、物体検知装置において受信される対象物1003から反射される電波の強度は低下するため、対象物1003の複素誘電率絶対値ないし誘電率ないし誘電損失の測定精度は劣化する。そこで、対象物1003が物体検知装置1000の方向を向いていると判定される場合は物質同定部1307において複素誘電率絶対値ないし誘電率ないし誘電損失の内少なくとも一つを用いて対象物1003の構成物質を同定し、対象物1003が物体検知装置1000の方向を向いていると判定されない場合は物質同定部1307で対象物1003の構成物質の同定をスキップするという処理を行ってもよい。
【0073】
対象物1003が物体検知装置1000の方向を向いているか否かは、3次元反射振幅計算部1301で得た対象物1003の反射振幅p(x,y,z)から推定される対象物1003の位置と、2次元反射振幅計算部1302と対象物厚さ計算部1304で推定される角度θ0の値を用いて判定できる。
【0074】
[プログラム]
ここで、本発明の各実施の形態におけるプログラムを実行することによって、物体検知装置を実現するコンピュータ(演算装置)について図12を用いて説明する。図12は本発明の実施の形態における物体検知装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0075】
図12に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0076】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0077】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。
【0078】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0079】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0080】
なお、本実施の形態における物体検知装置は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、物体検知装置は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0081】
[効果]
以下において、本発明の実施の形態の効果を要約する。
本発明の実施の形態では、
本発明による物体検知装置および物体検知方法によれば、複数の送信アンテナ1202及び受信アンテナ1203で構成されたアンテナアレイを用いる事で、物体検知装置1000を構成するレーダ装置のノイズの影響を低減しつつ対象物1003の物質固有の特性である複素誘電率絶対値と誘電率と誘電損失を測定できる。さらに物体検知装置1000はレーダ以外のセンサを用いずに構成されているため、レーダ以外のセンサに起因するコスト及び誤差を伴わずに、対象物1003の複素誘電率絶対値と誘電率と誘電損失を測定できる。さらに物体検知装置1000は、測定で得られた対象物1003の複素誘電率絶対値ないし誘電率ないし誘電損失の値から、対象物1003を構成する物質を同定する事ができる。
【0082】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、前述の各特許文献等に開示されている内容は、本発明に引用をもって繰り込むことも可能とする。本発明の全開示(特許請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施の形態の変更・調整が可能である。また、本発明の特許請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせあるいは選択も可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって、当業者であればなし得ることが可能な各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス
1000 物体検知装置
1001 送受信装置
1002 電波(送信信号)
1003 対象物(検知対象となる物体)
1004 電波(受信信号)
1005 対象物配置面
1101 送信部
1102 受信部
1201 発振器
1202 送信アンテナ
1203 受信アンテナ
1204 ミキサ
1205 インターフェイス回路
1207 可変振幅位相器
1208 端子
1211 演算装置
1301 3次元反射振幅計算部
1302 2次元反射振幅計算部
1303 複素誘電率絶対値計算部
1304 対象物厚さ計算部
1305 誘電率計算部
1306 誘電損失計算部
1307 物質同定部
1308 対象物深さ位置計算部
1309 対象物向き計算部
1400 開口面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12