(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】インフラ用電波レーダ、インフラ用電波レーダのデータ補正方法、補正用データ生成装置、補正用データ生成方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/91 20060101AFI20241106BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20241106BHJP
G08G 1/015 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01S13/91
G01S13/58 200
G08G1/015 A
(21)【出願番号】P 2021051562
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 篤司
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-020148(JP,A)
【文献】特開2001-004742(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140747(WO,A1)
【文献】特開2019-159648(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0077471(KR,A)
【文献】特開2008-298543(JP,A)
【文献】特開2004-233275(JP,A)
【文献】特開2013-130959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G08G 1/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象エリアに照射した電波の車両による反射波を受信するように構成された受信アンテナと、
前記受信アンテナによって受信された前記反射波に基づいて前記車両の第1位置を特定するように構成された特定部と、
車両の第1位置と補正量との対応関係を示す補正用データにしたがって、前記特定部によって特定された前記第1位置に対応する補正量を取得し、取得された前記補正量によって前記第1位置を補正した第2位置を決定するように構成された補正部と、
を備える、
インフラ用電波レーダ。
【請求項2】
前記第1位置は、車線長方向成分及び車線幅方向成分を含み、
前記補正用データは、前記車線長方向成分の補正に用いられる第1補正用データ及び前記車線幅方向成分の補正に用いられる第2補正用データを含み、
前記補正部は、前記第1補正用データにしたがって、前記第2位置の車線長方向成分を決定し、前記第2補正用データにしたがって、前記第2位置の車線幅方向成分を決定する、
請求項1に記載のインフラ用電波レーダ。
【請求項3】
前記第1補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記車線長方向成分の補正量との対応関係を示し、
前記第2補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記車線幅方向成分の補正量との対応関係を示す、
請求項2に記載のインフラ用電波レーダ。
【請求項4】
前記第1位置は、高さ方向成分をさらに含み、
前記補正用データは、前記高さ方向成分の補正に用いられる第3補正用データをさらに含み、
前記補正部は、前記第3補正用データにしたがって、前記第2位置の高さ方向成分を決定する、
請求項2又は請求項3に記載のインフラ用電波レーダ。
【請求項5】
前記第3補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記高さ方向成分の補正量との対応関係を示す、
請求項4に記載のインフラ用電波レーダ。
【請求項6】
前記補正用データは、車両サイズが所定の第1区分で規定される第1車種に用いられる第1車種補正用データと、車両サイズが前記第1区分とは異なる第2区分で規定される第2車種に用いられる第2車種補正用データとを含み、
前記インフラ用電波レーダは、前記受信アンテナによって受信された前記反射波に基づいて前記車両が前記第1車種及び前記第2車種のいずれに属するかを識別する車種識別部をさらに備え、
前記補正部は、前記車両が前記第1車種に属すると識別された場合、前記第1車種補正用データにしたがって、前記第1位置に対応する補正量を取得し、前記車両が前記第2車種に属すると識別された場合、前記第2車種補正用データにしたがって、前記第1位置に対応する補正量を取得する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインフラ用電波レーダ。
【請求項7】
前記特定部は、同一車両からの反射波から検出される複数の反射点の代表値を取得し、前記代表値を前記第1位置に設定する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインフラ用電波レーダ。
【請求項8】
前記代表値は、前記複数の反射点の重心である、
請求項7に記載のインフラ用電波レーダ。
【請求項9】
インフラ用電波レーダが対象エリアに照射した電波の車両による反射波に基づいて前記車両の第1位置を特定するステップと、
車両の第1位置と補正量との対応関係を示す補正用データにしたがって、前記第1位置に対応する補正量を取得し、取得された前記補正量によって前記第1位置を補正した第2位置を決定するステップと、
を含む、
インフラ用電波レーダのデータ補正方法。
【請求項10】
インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置である所定の座標空間における第1位置を特定するように構成された第1特定部と、
前記車両の基準部分の位置である前記座標空間における基準位置を特定するように構成された第2特定部と、
前記第1位置と前記基準位置との差分である補正量、及び前記第1位置が互いに対応付けられた補正用データを生成するように構成された生成部と、
を備える、
補正用データ生成装置。
【請求項11】
前記第1位置は、車線長方向成分及び車線幅方向成分を含み、
前記補正用データは、前記第1位置の前記車線長方向成分の補正量及び前記第1位置が互いに対応付けられた第1補正用データと、前記第1位置の前記車線幅方向成分の補正量及び前記第1位置が互いに対応付けられた第2補正用データとを含む、
請求項10に記載の補正用データ生成装置。
【請求項12】
前記第1補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記車線長方向成分の補正量との対応関係を示し、
前記第2補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記車線幅方向成分の補正量との対応関係を示す、
請求項11に記載の補正用データ生成装置。
【請求項13】
前記第1位置は、高さ方向成分をさらに含み、
前記補正用データは、前記第1位置の前記高さ方向成分の補正量及び前記第1位置が互いに対応付けられた第3補正用データを含む、
請求項11又は請求項12に記載の補正用データ生成装置。
【請求項14】
前記第3補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記高さ方向成分の補正量との対応関係を示す、
請求項13に記載の補正用データ生成装置。
【請求項15】
前記第1特定部は、車両サイズが所定の第1区分で規定される第1車種に属する第1車両の前記第1位置を特定し、
前記第2特定部は、前記第1車両の前記基準位置を特定し、
前記生成部は、前記第1車種用の補正用データである第1車種補正用データを生成し、
前記第1車種補正用データは、前記第1車両の前記第1位置と前記第1車両の前記基準位置との差分である補正量、及び、前記第1車両の前記第1位置が互いに対応付けられたデータであり、
前記第1特定部は、車両サイズが前記第1区分とは異なる第2区分で規定される第2車種に属する第2車両の前記第1位置を特定し、
前記第2特定部は、前記第2車両の前記基準位置を特定し、
前記生成部は、前記第2車種用の補正用データである第2車種補正用データを生成し、
前記第2車種補正用データは、前記第2車両の前記第1位置と前記第2車両の前記基準位置との差分である補正量、及び、前記第2車両の前記第1位置が互いに対応付けられたデータである、
請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の補正用データ生成装置。
【請求項16】
前記第1位置は、前記インフラ用電波レーダによって同一車両からの反射波から検出される複数の反射点の代表値である、
請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の補正用データ生成装置。
【請求項17】
前記代表値は、前記複数の反射点の重心である、
請求項16に記載の補正用データ生成装置。
【請求項18】
前記第1特定部は、前記インフラ用電波レーダのシミュレータによって算出される前記第1位置を特定する、
請求項10から請求項17のいずれか1項に記載の補正用データ生成装置。
【請求項19】
インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置である所定の座標空間における第1位置を特定するステップと、
前記車両の基準部分の位置である前記座標空間における基準位置を特定するステップと、
前記第1位置と前記基準位置との差分である補正量、及び前記第1位置が互いに対応付けられた補正用データを生成するステップと、
を含む、
補正用データ生成方法。
【請求項20】
インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置を補正するための補正用データをコンピュータに生成されるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置である所定の座標空間における第1位置を特定するステップと、
前記車両の基準部分の位置である前記座標空間における基準位置を特定するステップと、
前記第1位置と前記基準位置との差分である補正量、及び前記第1位置が互いに対応付けられた補正用データを生成するステップと、
を実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インフラ用電波レーダ、インフラ用電波レーダのデータ補正方法、補正用データ生成装置、補正用データ生成方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車線上に設置された複数の電波レーダによって車両からの反射信号の強度やスペクトルを検出し、電波レーダによって検出される車両からの反射信号の強度やスペクトルを用いて車線方向の該当する車両の位置と速度を求め、各車線に設置された電波レーダのうち少なくとも2基以の電波レーダで同一走行車両からの反射信号を検知すると同一車両からのものと判断し、同一走行車両からの反射信号の振幅について各々の電波レーダごとにあらかじめ定めた一定時間内ごとに最大値を求め、その最大値を比較することによって当該車両が存在する車線や道路幅方向の位置を推定する道路状況把握装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路等での交通監視に利用される電波レーダ(以下、「インフラ用電波レーダ」ともいう)では、常に車体における特定の部分(例えば、車体中央)の位置を検出することが望ましい。電波レーダが走行中の車両の位置を検出する場合、車両と電波レーダとの位置関係は時間に応じて変化する。例えば、道路の上方に設置された電波レーダでは、車両が電波レーダに近接している場合は車体の主にルーフ部分によって電波が反射され、車両が電波レーダから離れている場合は車体の主にフロント部分(又はテール部分)によって電波が反射される。このように、車両と電波レーダとの位置関係が変化すると、車体における電波の反射面が変化するため、車体における同一の部分の位置を検出することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るインフラ用電波レーダは、対象エリアに照射した電波の車両による反射波を受信するように構成された受信アンテナと、前記受信アンテナによって受信された前記反射波に基づいて前記車両の第1位置を特定するように構成された特定部と、車両の第1位置と補正量との対応関係を示す補正用データにしたがって、前記特定部によって特定された前記第1位置に対応する補正量を取得し、取得された前記補正量によって前記第1位置を補正した第2位置を決定するように構成された補正部と、を備える。
【0006】
本開示の一態様に係るインフラ用電波レーダのデータ補正方法は、インフラ用電波レーダが対象エリアに照射した電波の車両による反射波に基づいて前記車両の第1位置を特定するステップと、車両の第1位置と補正量との対応関係を示す補正用データにしたがって、前記第1位置に対応する補正量を取得し、取得された前記補正量によって前記第1位置を補正した第2位置を決定するステップと、を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る補正用データ生成装置は、インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置である所定の座標空間における第1位置を特定するように構成された第1特定部と、前記車両の基準部分の位置である前記座標空間における基準位置を特定するように構成された第2特定部と、前記第1位置と前記基準位置との差分である補正量、及び前記第1位置が互いに対応付けられた補正用データを生成するように構成された生成部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る補正用データ生成方法は、インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置である所定の座標空間における第1位置を特定するステップと、前記車両の基準部分の位置である前記座標空間における基準位置を特定するステップと、前記第1位置と前記基準位置との差分である補正量、及び前記第1位置が互いに対応付けられた補正用データを生成するステップと、を含む。
【0009】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置を補正するための補正用データをコンピュータに生成されるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置である所定の座標空間における第1位置を特定するステップと、前記車両の基準部分の位置である前記座標空間における基準位置を特定するステップと、前記第1位置と前記基準位置との差分である補正量、及び前記第1位置が互いに対応付けられた補正用データを生成するステップと、を実行させる。
【0010】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備えるインフラ用電波レーダ、又は、特徴的な処理をステップとするインフラ用電波レーダのデータ補正方法として実現することができるだけでなく、コンピュータに上記の方法を実行させるコンピュータプログラムとして実現したり、インフラ用電波レーダを含む車両位置検出システムとして実現したりすることができる。本開示は、上記のような特徴的な構成を備える補正用データ生成装置、特徴的な処理をステップとする補正用データ生成方法、又は、特徴的なステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムとして実現することができるだけでなく、補正用データ生成装置を含む補正用データ生成システムとして実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、インフラ用電波レーダと車両との位置関係によらず、インフラ用電波レーダによる車両の位置の検出精度を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るレーダの使用例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るレーダの外観構成の一例を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るレーダの内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係るレーダの機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図5A】レーダに近接した位置にある車両における反射点の分布の一例を示す図である。
【
図5B】レーダから離隔した位置にある車両における反射点の分布の一例を示す図である。
【
図6A】車両及びレーダの相対距離と反射波の信号強度との関係の一例を示すグラフである。
【
図6B】車両及びレーダの相対角度と反射波の信号強度との関係の一例を示すグラフである。
【
図7】第1実施形態に係る補正用データの構成の一例を示す図である。
【
図8A】Y補正用データの一例を示すグラフである。
【
図8B】X補正用データの一例を示すグラフである。
【
図9】第1実施形態に係る補正部による第1位置の補正の具体例を説明するための図である。
【
図10】第1実施形態に係るレーダの動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第1実施形態に係る補正用データ生成装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】第1実施形態に係る補正用データ生成装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図13】第1位置と基準位置とを説明するための図である。
【
図14】第1実施形態に係る補正用データ生成装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図15】第2実施形態に係る補正用データの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
【0014】
(1) 本実施形態に係るインフラ用電波レーダは、対象エリアに照射した電波の車両による反射波を受信するように構成された受信アンテナと、前記受信アンテナによって受信された前記反射波に基づいて前記車両の第1位置を特定するように構成された特定部と、車両の第1位置と補正量との対応関係を示す補正用データにしたがって、前記特定部によって特定された前記第1位置に対応する補正量を取得し、取得された前記補正量によって前記第1位置を補正した第2位置を決定するように構成された補正部と、を備える。これにより、第1位置に応じた補正量により第1位置を補正することができるため、インフラ用電波レーダと車両との位置関係によらず、インフラ用電波レーダによる車両の位置の検出精度を安定させることができる。
【0015】
(2) 前記第1位置は、車線長方向成分及び車線幅方向成分を含み、前記補正用データは、前記車線長方向成分の補正に用いられる第1補正用データ及び前記車線幅方向成分の補正に用いられる第2補正用データを含み、前記補正部は、前記第1補正用データにしたがって、前記第2位置の車線長方向成分を決定し、前記第2補正用データにしたがって、前記第2位置の車線幅方向成分を決定してもよい。これにより、車線長方向及び車線幅方向を含む空間において、インフラ用電波レーダによる車両の位置の検出精度を安定させることができる。
【0016】
(3) 前記第1補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記車線長方向成分の補正量との対応関係を示し、前記第2補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記車線幅方向成分の補正量との対応関係を示してもよい。インフラ用電波レーダと車両との車線長方向における相対位置が変化すると、車体における電波の反射面が変化する。上記の構成により、インフラ用電波レーダと車両との車線長方向における相対位置に応じて、第1位置の車線長方向成分及び車線幅方向成分のそれぞれを補正することができ、インフラ用電波レーダによる車両の位置の検出精度を安定させることができる。
【0017】
(4) 前記第1位置は、高さ方向成分をさらに含み、前記補正用データは、前記高さ方向成分の補正に用いられる第3補正用データをさらに含み、前記補正部は、前記第3補正用データにしたがって、前記第2位置の高さ方向成分を決定してもよい。これにより、車線長方向、車線幅方向、及び高さ方向を含む空間において、インフラ用電波レーダによる車両の位置の検出精度を安定させることができる。
【0018】
(5) 前記第3補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記高さ方向成分の補正量との対応関係を示してもよい。インフラ用電波レーダと車両との車線長方向における相対位置が変化すると、車体における電波の反射面が変化する。上記の構成により、インフラ用電波レーダと車両との車線長方向における相対位置に応じて、第1位置の高さ方向成分を補正することができ、インフラ用電波レーダによる車両の位置の検出精度を安定させることができる。
【0019】
(6) 前記補正用データは、車両サイズが所定の第1区分で規定される第1車種に用いられる第1車種補正用データと、車両サイズが前記第1区分とは異なる第2区分で規定される第2車種に用いられる第2車種補正用データとを含み、前記インフラ用電波レーダは、前記受信アンテナによって受信された前記反射波に基づいて前記車両が前記第1車種及び前記第2車種のいずれに属するかを識別する車種識別部をさらに備え、前記補正部は、前記車両が前記第1車種に属すると識別された場合、前記第1車種補正用データにしたがって、前記第1位置に対応する補正量を取得し、前記車両が前記第2車種に属すると識別された場合、前記第2車種補正用データにしたがって、前記第1位置に対応する補正量を取得してもよい。車両サイズに応じて、インフラ用電波レーダによる検出位置の誤差は変化する。上記の構成により、インフラ用電波レーダによる検出位置を車両サイズに応じた補正量で補正することができる。
【0020】
(7) 前記特定部は、同一車両からの反射波から検出される複数の反射点の代表値を取得し、前記代表値を前記第1位置に設定してもよい。これにより、インフラ用電波レーダによって検出される第1位置を安定させることができる。このような第1位置を補正することにより、インフラ用電波レーダによる検出精度を安定させることができる。
【0021】
(8) 前記代表値は、前記複数の反射点の重心であってもよい。これにより、インフラ用電波レーダと車両との車線長方向の位置関係の変化に応じて第1位置が突発的に変化することを抑制することができる。したがって、インフラ用電波レーダによる検出精度を安定させることができる。
【0022】
(9) 本実施形態に係るインフラ用電波レーダのデータ補正方法は、インフラ用電波レーダが対象エリアに照射した電波の車両による反射波に基づいて前記車両の第1位置を特定するステップと、車両の第1位置と補正量との対応関係を示す補正用データにしたがって、前記第1位置に対応する補正量を取得し、取得された前記補正量によって前記第1位置を補正した第2位置を決定するステップと、を含む。これにより、第1位置に応じた補正量により第1位置を補正することができるため、インフラ用電波レーダと車両との位置関係によらず、インフラ用電波レーダによる車両の位置の検出精度を安定させることができる。
【0023】
(10) 本実施形態に係る補正用データ生成装置は、インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置である所定の座標空間における第1位置を特定するように構成された第1特定部と、前記車両の基準部分の位置である前記座標空間における基準位置を特定するように構成された第2特定部と、前記第1位置と前記基準位置との差分である補正量、及び前記第1位置が互いに対応付けられた補正用データを生成するように構成された生成部と、を備える。これにより、インフラ用電波レーダと車両との相対的な位置に応じてインフラ用電波レーダによる検出位置を補正するための補正用データを生成することができる。
【0024】
(11) 前記第1位置は、車線長方向成分及び車線幅方向成分を含み、前記補正用データは、前記第1位置の前記車線長方向成分の補正量及び前記第1位置が互いに対応付けられた第1補正用データと、前記第1位置の前記車線幅方向成分の補正量及び前記第1位置が互いに対応付けられた第2補正用データとを含んでもよい。これにより、車線長方向及び車線幅方向を含む空間においてインフラ用電波レーダによる車両の検出位置を補正するための補正用データを生成することができる。
【0025】
(12) 前記第1補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記車線長方向成分の補正量との対応関係を示し、前記第2補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記車線幅方向成分の補正量との対応関係を示してもよい。これにより、インフラ用電波レーダと車両との車線長方向における相対位置に応じて、第1位置の車線長方向成分及び車線幅方向成分のそれぞれを補正するための補正用データを生成することができる。
【0026】
(13) 前記第1位置は、高さ方向成分をさらに含み、前記補正用データは、前記第1位置の前記高さ方向成分の補正量及び前記第1位置が互いに対応付けられた第3補正用データを含んでもよい。これにより、車線長方向、車線幅方向、及び高さ方向を含む空間においてインフラ用電波レーダによる車両の検出位置を補正するための補正用データを生成することができる。
【0027】
(14) 前記第3補正用データは、前記第1位置の車線長方向成分と、前記高さ方向成分の補正量との対応関係を示してもよい。これにより、インフラ用電波レーダと車両との車線長方向における相対位置に応じて第1位置の高さ方向成分を補正するための補正用データを生成することができる。
【0028】
(15) 前記第1特定部は、車両サイズが所定の第1区分で規定される第1車種に属する第1車両の前記第1位置を特定し、前記第2特定部は、前記第1車両の前記基準位置を特定し、前記生成部は、前記第1車種用の補正用データである第1車種補正用データを生成し、前記第1車種補正用データは、前記第1車両の前記第1位置と前記第1車両の前記基準位置との差分である補正量、及び、前記第1車両の前記第1位置が互いに対応付けられたデータであり、前記第1特定部は、車両サイズが前記第1区分とは異なる第2区分で規定される第2車種に属する第2車両の前記第1位置を特定し、前記第2特定部は、前記第2車両の前記基準位置を特定し、前記生成部は、前記第2車種用の補正用データである第2車種補正用データを生成し、前記第2車種補正用データは、前記第2車両の前記第1位置と前記第2車両の前記基準位置との差分である補正量、及び、前記第2車両の前記第1位置が互いに対応付けられたデータであってもよい。これにより、車両サイズに応じてインフラ用電波レーダによる検出位置を補正するための第1車種補正用データ及び第2車種補正用データを生成することができる。
【0029】
(16) 前記第1位置は、前記インフラ用電波レーダによって同一車両からの反射波から検出される複数の反射点の代表値であってもよい。これにより、第1位置を安定させることができ、このような第1位置を用いて、インフラ用電波レーダの検出位置を正確に補正するための補正用データを生成することができる。
【0030】
(17) 前記代表値は、前記複数の反射点の重心であってもよい。これにより、インフラ用電波レーダと車両との車線長方向の位置関係の変化に応じて第1位置が突発的に変化することを抑制することができる。このような第1位置を用いて、インフラ用電波レーダの検出位置を正確に補正するための補正用データを生成することができる。
【0031】
(18) 前記第1特定部は、前記インフラ用電波レーダのシミュレータによって算出される前記第1位置を特定してもよい。これにより、実際にインフラ用電波レーダを稼働させることなく、補正用データを生成することができる。
【0032】
(19) 本実施形態に係る補正用データ生成方法は、インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置である所定の座標空間における第1位置を特定するステップと、前記車両の基準部分の位置である前記座標空間における基準位置を特定するステップと、前記第1位置と前記基準位置との差分である補正量、及び前記第1位置が互いに対応付けられた補正用データを生成するステップと、を含む。これにより、インフラ用電波レーダと車両との相対的な位置に応じてインフラ用電波レーダによる検出位置を補正するための補正用データを生成することができる。
【0033】
(20) 本実施形態に係るコンピュータプログラムは、インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置を補正するための補正用データをコンピュータに生成されるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、インフラ用電波レーダによって検出される車両の位置である所定の座標空間における第1位置を特定するステップと、前記車両の基準部分の位置である前記座標空間における基準位置を特定するステップと、前記第1位置と前記基準位置との差分である補正量、及び前記第1位置が互いに対応付けられた補正用データを生成するステップと、を実行させる。これにより、インフラ用電波レーダと車両との相対的な位置に応じてインフラ用電波レーダによる検出位置を補正するための補正用データを生成することができる。
【0034】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0035】
[1.第1実施形態]
[1-1.レーダ]
図1は、第1実施形態に係るレーダの使用例を示す図である。本実施形態に係るレーダ100は、交通監視用の電波レーダ(インフラ用電波レーダ)である。レーダ100は、交差点又は道路に設けられたアーム200(
図2参照)等に取り付けられる。レーダ100は、ミリ波レーダであり、電波センサである。レーダ100は、道路上の対象エリア300に電波(ミリ波)を照射し、その反射波を受信することで対象エリア300内の物体(例えば車両V)を検出する。さらに具体的には、レーダ100は道路を走行する車両Vまでの距離、車両Vの速度、及びレーダの電波照射軸に対する車両Vが存在する位置の水平角度を検出することができる。
【0036】
レーダ100は、電波照射軸の方向(
図1において破線で示す方法。以下、「基準方向」という。)が対象エリア300を向くように設置される。基準方向が正しく対象エリア300を向いていなければ、レーダ100によって対象エリア300内の物体を正確に検出することができない。このため、基準方向が対象エリア300を向くようにレーダ100の角度が調整される。
【0037】
以下の説明では、対象エリア300における車線長方向をY、車線幅方向をX、高さ方向をZとする。原点は、レーダ100の鉛直方向下方の路面上の点である。X,Y,Zで規定される座標系は、レーダ100によって使用される。
【0038】
図2は、第1実施形態に係るレーダ100の外観構成の一例を示す斜視図である。
図2に示すように、レーダ100は、ミリ波を送受信する送受信面101を有している。基準方向は、送受信面101の法線方向である。レーダ100は、少なくとも1つの送信アンテナ及び複数(例えば2つ)の受信アンテナとを内蔵する。レーダ100は、送信アンテナから送受信面101を通じてミリ波である変調波を送信する。変調波は物体に当たり反射し、受信アンテナが反射波を受信する。レーダ100は、図示しない信号処理回路によって送信波信号及び受信波信号に対して信号処理を施し、物体までの距離及び物体の存在する角度(以下、「物体の位置」という)並びに物体の速度を検出する。
【0039】
レーダ100は、設置角度を調整可能に構成されている。レーダ100は、レーダ本体102と、俯角調整部103と、水平角調整部104と、ロール角調整部105とを含む。レーダ本体102は箱状に形成されており、俯角調整部103がレーダ本体102の側面に取り付けられている。レーダ本体102は、俯角調整部103によって水平軸を中心に回転可能であり、これによってレーダ本体102の俯角が調整される。俯角調整部103を介してロール角調整部105に接続されたレーダ本体102は、ロール角調整部105によって、送受信面101に向かって左右方向に回転可能であり、これによってレーダ本体102のロール角が調整される。水平角調整部104は、設置対象であるポールに固定される。俯角調整部103及びロール角調整部105を介して水平角調整部104に接続されたレーダ本体102は、水平角調整部104によって鉛直軸を中心に回転可能であり、これによってレーダ本体102の水平角が調整される。
【0040】
レーダ100は、車線毎に車両Vを検出する。レーダ100は、設定された座標空間において、検出した車両Vの座標を特定する。
【0041】
[1-2.レーダの構成]
図3は、第1実施形態に係るレーダの内部構成の一例を示すブロック図である。レーダ100は、プロセッサ111と、不揮発性メモリ112と、揮発性メモリ113と、送信回路114と、受信回路115と、通信インタフェース(通信I/F)116とを含む。
【0042】
揮発性メモリ113は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリである。不揮発性メモリ112は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等である。不揮発性メモリ112には、コンピュータプログラムであるデータ補正プログラム117及びデータ補正プログラム117の実行に使用される補正用データ400が格納される。レーダ100は、コンピュータを備えて構成され、レーダ100の各機能は、前記コンピュータの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムであるデータ補正プログラム117がプロセッサ111によって実行されることで発揮される。データ補正プログラム117は、フラッシュメモリ、ROM、CD-ROMなどの記録媒体に記憶させることができる。プロセッサ111は、データ補正プログラム117を実行し、後述するように車両Vの検出位置(第1位置)を補正する。
【0043】
プロセッサ111は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。ただし、プロセッサ111は、CPUに限られない。プロセッサ111は、GPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。プロセッサ111は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよいし、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスであってもよい。この場合、ASIC又はプログラマブルロジックデバイスは、データ補正プログラム117と同様の処理を実行可能に構成される。
【0044】
送信回路114は、送信アンテナ114aを含む。送信回路114は、変調波を生成し、生成された変調波を送信アンテナ114aから送信する。送信された変調波は、物体(例えば、車両V)に当たって反射される。
【0045】
受信回路115は、受信アンテナ115a,115bを含む。受信アンテナ115a,115bは、車両Vからの反射波を受信する。受信回路115は、受信された反射波に対して信号処理を施す。信号処理によって生成された反射波データは、プロセッサ111に与えられる。プロセッサ111は、反射波データを解析し、車両Vの位置及び速度を検出する。
【0046】
通信I/F116は有線又は無線によって外部の装置と通信することができる。通信I/F116は、レーダ100によって検出された車両Vの情報を外部の装置へ送信することができる。例えば、通信I/F116は、DSRC(Dedicated Short Range Communications)用の無線通信インタフェースである。通信I/F116は、対象エリア300を走行する車両Vに対して、路車間通信によって検出された車両Vの位置情報及び速度情報を送信する。
【0047】
補正用データ400は、後述する補正用データ生成装置700(
図11参照)によって生成される。補正用データ生成装置700は、例えば補正用データ400を送信し、通信I/F116が補正用データ400を受信し、不揮発性メモリ112に書き込む。補正用データ生成装置700が可搬型の記録媒体710に補正用データ400を書き込み、レーダ100に設けられた図示しない読出装置に記録媒体710が取り付けられ、補正用データが記録媒体710から不揮発性メモリ112に転送されてもよい。
【0048】
[1-3.レーダの機能]
図4は、第1実施形態に係るレーダ100の機能の一例を示す機能ブロック図である。プロセッサ111がデータ補正プログラム117を実行することにより、レーダ100は、入力部121と、グルーピング部122と、特定部123と、車種識別部124と、選択部125と、補正部126と、出力部127との機能を発揮する。
【0049】
入力部121は、受信回路115によって生成された反射波データを受け付ける。
【0050】
図5A及び
図5Bは、車両の位置による反射点の変化を説明するための図である。
図5Aは、レーダ100に近接した位置にある車両Vにおける反射点の分布の一例を示し、
図5Bは、レーダ100から離隔した位置にある車両Vにおける反射点の分布の一例を示している。
【0051】
図5Aに示すように、レーダ100に近接した位置に車両Vが存在する場合、レーダ100から照射される電波は、主に車両Vの上面、即ち、ルーフ、ボンネット、トランクリッド上面等において反射される。したがって、反射点500は、車両Vの上面のうち、レーダ100に近接する側の部分(車両Vのフロント部がレーダ100に対向している場合、ボンネット及びルーフ。車両Vのリア部がレーダ100に対向している場合、トランクリッド上面及びルーフ。)に発生する。
【0052】
図5Bに示すように、レーダ100から離隔した位置に車両Vが存在する場合、レーダ100から照射される電波は、主に車両Vの端面、即ち、フロント部又はリア部において反射される。したがって、反射点500は、レーダ100に近接する側の車体の端面(車両Vのフロント部がレーダ100に対向している場合、フロント部。車両Vのリア部がレーダ100に対向している場合、リア部。)に発生する。
【0053】
再び
図4を参照する。グルーピング部122は、反射波に含まれるピーク点である反射点を抽出する。
図6A及び
図6Bは、反射点の抽出を説明するためのグラフである。
図6Aは、車両V及びレーダ100の相対距離と反射波の信号強度との関係の一例を示しており、
図6Bは、車両V及びレーダ100の相対角度と反射波の信号強度との関係の一例を示すグラフである。グルーピング部122は、距離についての反射波の波形510から、ピーク点511を抽出し、角度についての反射波の波形520から、ピーク点521を抽出する。グルーピング部122は、ピーク点511とピーク点521とを対応付けることによって、反射点500を決定する。グルーピング部122は、極座標表示からXY座標表示に反射点500の座標値を変換する。
【0054】
レーダ100から照射される電波は、複数の車両Vによって同時に反射される場合がある。グルーピング部122は、同一の車両Vにおける反射点500をグループ化する。
【0055】
特定部123は、受信アンテナ115a,115bによって受信された反射波に基づいて車両Vの第1位置を特定する。第1位置は、XY座標系における座標値として表される。具体的には、特定部123は、同一のグループに属する反射点500の代表値を決定し、決定された代表値を第1位置に設定する。例えば、代表値は重心である。ただし、第1位置は複数の反射点500の重心以外の代表値であってもよい。例えば、代表値は反射点500の平均値であってもよいし、反射点500の中央値であってもよい。
【0056】
本実施形態では、車両Vが、小型車、中型車、及び大型車の3つの車種に分類される。小型車は、例えば、次の条件(1-1)及び(1-2)の両方を満たす車両Vである。
(1-1)車長がL1(例えば3.4m)以下である。
(1-2)車幅がW1(例えば1.48m)以下である。
【0057】
中型車は、例えば、条件(1-1)及び(1-2)のいずれかを満たしていない車両であって、条件(2-1)及び(2-2)を満たす車両である。
(2-1)車長がL2(例えば5m)以下である。
(2-2)車幅がW3(例えば2m)以下である。
【0058】
大型車は、例えば、条件(1-1)及び(1-2)のいずれかを満たしていない車両であって、且つ、条件(2-1)及び(2-2)のいずれかを満たしていない車両である。つまり、大型車は、車長がL2より大きい、又は、車幅がW2より大きい車両である。
【0059】
車種識別部124は、受信アンテナ115a,115bによって受信された反射波に基づいて車両Vが属する車種を識別する。具体的には、車種識別部124は、同一のグループに属する反射点500のうちのY方向に最も離れた2点間のY方向距離及び、X方向に最も離れた2点間のX方向距離によって、当該グループに対応する車両Vが、小型車、中型車、及び大型車のいずれに属するかを識別する。
【0060】
補正用データ400は、小型車用補正用データ410と、中型車用補正用データ420と、大型車用補正用データ430とを含む。小型車用補正用データ410は小型車の位置の補正に用いられ、中型車用補正用データ420は中型車の位置の補正に用いられ、大型車用補正用データ430は大型車の位置の補正に用いられる。第1車種が小型車であると想定した場合、第2車種は中型車又は大型車である。この場合、小型車用補正用データ410が第1車種用補正用データに相当し、中型車用補正用データ420又は大型車用補正用データ430が第2車種用補正用データに相当する。第1車種が中型車であると想定した場合、第2車種は小型車又は大型車である。この場合、中型車用補正用データ420が第1車種用補正用データに相当し、小型車用補正用データ410又は大型車用補正用データ430が第2車種用補正用データに相当する。第1車種が大型車であると想定した場合、第2車種は小型車又は中型車である。この場合、大型車用補正用データ430が第1車種用補正用データに相当し、小型車用補正用データ410又は中型車用補正用データ420が第2車種用補正用データに相当する。
【0061】
選択部125は、小型車用補正用データ410、中型車用補正用データ420、及び大型車用補正用データ430から、車種識別部124によって識別された車両Vの車種に対応するデータを選択する。つまり、車種識別部124によって車両Vの車種が小型車であると識別された場合、選択部125は小型車用補正用データ410を選択する。車種識別部124によって車両Vの車種が中型車であると識別された場合、選択部125は中型車用補正用データ420を選択する。車種識別部124によって車両Vの車種が大型車であると識別された場合、選択部125は大型車用補正用データ430を選択する。
【0062】
図7は、第1実施形態に係る補正用データの構成の一例を示す図である。小型車用補正用データ410は、Y補正用データ411及びX補正用データ412を含む。中型車用補正用データ420は、Y補正用データ421及びX補正用データ422を含む。大型車用補正用データ430は、Y補正用データ431及びX補正用データ432を含む。Y補正用データ411,421,431は第1位置のY成分の補正に用いられ、X補正用データ412,422,432は第1位置のX成分の補正に用いられる。
【0063】
図8Aは、Y補正用データの一例を示すグラフであり、
図8Bは、X補正用データの一例を示すグラフである。
図8A及び
図8Bは、小型車用補正用データ410のX補正用データ411及びY補正用データ412を示しているが、中型車用補正用データ420のX補正用データ421及びY補正用データ422、並びに、大型車用補正用データ430のX補正用データ431及びY補正用データ432も同様である。補正用データ400は、車両Vの第1位置と補正量との対応関係を示す。Y補正用データ411は、第1位置のY成分と、Y方向の補正量AYとの対応関係を示す。X補正用データ412は、第1位置のY成分と、X方向の補正量AXとの対応関係を示す。
【0064】
Y方向の補正量AYは、車両Vの第1位置のY成分に応じて変化する。Y補正用データ411によって、車両Vの第1位置のY成分に対応する補正量AYが特定される。Y補正用データ411は、例えば、第1位置のY成分及び補正量AYのそれぞれを変数とする関数である。Y補正用データ411は、第1位置のY値と補正量AYとが対応付けられたルックアップテーブルであってもよい。X方向の補正量AXは、車両Vの第1位置のY成分に応じて変化する。X補正用データ412によって、車両Vの第1位置のY成分に対応する補正量AXが特定される。X補正用データ412は、例えば、第1位置のY成分及び補正量AXのそれぞれを変数とする関数である。X補正用データ412は、第1位置のY値と補正量AXとが対応付けられたルックアップテーブルであってもよい。
【0065】
再び
図4を参照する。補正部126は、補正用データ400にしたがって、特定部123によって特定された第1位置に対応する補正量AY,AXを取得し、取得された補正量AY,AXによって第1位置を補正した第2位置を決定する。具体的には、補正部126は、選択部125によって選択された補正用データが有するY補正用データにしたがって、第1位置のY成分に対応する補正量AYを取得する。補正部126は、選択部125によって選択された補正用データが有するX補正用データにしたがって、第1位置のY成分に対応する補正量AXを取得する。補正部126は、取得された補正量AYによって第1位置のY成分を補正し、第2位置のY成分を決定する。補正部126は、取得された補正量AXによって第1位置のX成分を補正し、第2位置のX成分を決定する。
【0066】
図9は、第1実施形態に係る補正部による第1位置の補正の具体例を説明するための図である。上述したように、第1位置530は、複数の反射点500の代表値である。補正部126は、第1位置530のY成分にY方向の補正量AYを加算し、第2位置600のY成分を決定する。補正部126は、第1位置530のX成分にX方向の補正量AXを加算し、第2位置600のX成分を決定する。第2位置600は、例えば、車両Vの基準点のXY座標値である。基準点は、例えば車体の重心であってもよいし、車体における他の特定の点であってもよい。
【0067】
再び
図4を参照する。出力部127は、補正部126によって決定された第2位置600を示す位置情報(以下、「検出位置データ」ともいう)を出力する。例えば、出力部127は、検出位置データを外部の装置へ送信する。具体的な一例では、出力部127は、対象エリア300を走行する車両Vに対して、路車間通信によって検出位置データを無線送信する。車両Vに搭載された通信機によって検出位置データが受信される。検出位置データは、車両Vにおける自動運転に利用される。例えば、車両Vでは、レーダ100から通知された周囲の車両の検出位置にしたがって、自動で車線変更が行われる。
【0068】
[1-4.レーダの動作]
図10は、第1実施形態に係るレーダ100の動作手順の一例を示すフローチャートである。プロセッサ111がデータ補正プログラム117を起動すると、レーダ100は、以下に説明するような処理を実行する。
【0069】
送信回路114が変調波を生成し、生成された変調波を送信アンテナ114aから送信する。送信された変調波が車両Vに当たり、車両Vからの反射波を、受信アンテナ115a,115bが受信する。受信回路115は、反射波信号を処理し、反射波データを生成する。プロセッサ111は、反射波データを読み出す(ステップS101)。
【0070】
プロセッサ111は、反射波データを解析し、反射点500を検出する(ステップS102)。プロセッサ111は、同一の車両Vにおける反射点500をグループ化する(ステップS103)。
【0071】
プロセッサ111は、グループ化された反射点500によって車両Vのサイズを推定し、車両Vの車種(小型車、中型車、又は大型車)を識別する(ステップS104)。プロセッサ111は、不揮発性メモリ112に記憶された小型車用補正用データ410、中型車用補正用データ420、及び大型車用補正用データ430の中から、識別された車種に対応するデータを選択する(ステップS105)。
【0072】
プロセッサ111は、グループ化された反射点500の代表値530を決定し、代表値530を車両Vの第1位置に設定する(ステップS106)。プロセッサ111は、ステップS105において選択された補正用データにしたがって、検出された第1位置を補正し、第2位置を決定する(ステップS107)。プロセッサ111は、第2位置を示す位置情報を外部の装置へ送信する(ステップS108)。レーダ100は、以上の動作を繰り返す。
【0073】
[1-5.補正用データ生成装置の構成]
次に、上述した補正用データ400を生成する補正用データ生成装置について説明する。
図11は、第1実施形態に係る補正用データ生成装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0074】
補正用データ生成装置700は、例えばコンピュータ、タブレット等の情報端末によって構成される。補正用データ生成装置700は、プロセッサ701と、不揮発性メモリ702と、揮発性メモリ703と、入力装置704と、表示装置705と、書込装置706と、通信I/F707とを含む。
【0075】
揮発性メモリ703は、例えばSRAM、DRAM等の半導体メモリである。不揮発性メモリ702は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、ROM等である。不揮発性メモリ702には、コンピュータプログラムである補正用データ生成プログラム708及び補正用データ生成プログラム708の実行に使用されるデータが格納される。補正用データ生成装置700は、コンピュータを備えて構成され、補正用データ生成装置700の各機能は、前記コンピュータの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムである補正用データ生成プログラム708がプロセッサ701によって実行されることで発揮される。補正用データ生成プログラム708は、フラッシュメモリ、ROM、CD-ROMなどの記録媒体に記憶させることができる。プロセッサ701は、補正用データ生成プログラム708を実行し、後述するように補正用データ400を生成する。
【0076】
プロセッサ701は、例えばCPUである。ただし、プロセッサ701は、CPUに限られない。プロセッサ701は、GPUであってもよい。プロセッサ701は、例えば、ASICであってもよいし、ゲートアレイ、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスであってもよい。この場合、ASIC又はプログラマブルロジックデバイスは、補正用データ生成プログラム708と同様の処理を実行可能に構成される。
【0077】
入力装置704は、キーボード、及びマウス等のポインティングデバイスであってもよい。入力装置704は、補正用データ生成装置700への情報の入力に用いられる。表示装置705は、例えば液晶パネル又はOEL(有機エレクトロルミネッセンス)パネルを含む。表示装置705は、文字又は図形の情報を表示することができる。
【0078】
可搬型の記録媒体710は書込装置706に装填可能である。書込装置706は、装填された記録媒体710に対してデータを書き込むことができる。書込装置706は、プロセッサ701の指令に応じて、生成された補正用データ400を記録媒体710に書き込むことができる。
【0079】
通信I/F707は有線又は無線によって外部の装置と通信することができる。通信I/F407は、例えばレーダ100と通信することができる。通信I/F407は、プロセッサ701の指令に応じて、生成された補正用データ400をレーダ100へ送信することができる。
【0080】
[1-6.補正用データ生成装置の機能]
図12は、第1実施形態に係る補正用データ生成装置700の機能の一例を示す機能ブロック図である。プロセッサ701が補正用データ生成プログラム708を実行することにより、補正用データ生成装置700は、第1特定部711と、第2特定部712と、車種指定部713と、生成部714と、出力部715との機能を発揮する。
【0081】
第1特定部711は、レーダ100によって検出される車両Vの位置であるXY座標空間における第1位置530を特定する。例えば、補正用データ生成装置700は、レーダ100又は他の外部装置から補正前の車両Vの検出位置、即ち第1位置を示すデータ(以下、「第1位置データ」という)を受信したり、記録媒体710に記憶された第1位置データを読み出したりし、取得された第1位置データから第1位置を特定することができる。例えば、レーダ100は対象エリア300において車両Vの第1位置を所定の周期毎に断続的に検出する。第1位置データは、車両VのXY座標における第1位置の推移を示す時系列データである。
【0082】
第2特定部712は、車両Vの基準部分の位置であるXY座標空間における基準位置を特定する。例えば、補正用データ生成装置700は、車両Vの車載装置又は他の外部装置から車両Vの基準位置を示すデータ(以下、「基準位置データ」という)を受信したり、記録媒体710に記憶された基準位置データを読み出したりし、取得された基準位置データから基準位置を特定することができる。例えば、上記のようにレーダ100によって第1位置が断続的に検出されている間に、レーダ100とは異なる検出手段によって車両Vの基準部分の位置(基準位置)が所定の周期毎に断続的に検出される。基準位置データは、車両VのXY座標における基準位置の推移を示す時系列データである。
【0083】
レーダ100とは異なる検出手段は、例えばRTK(Real Time Kinematic)測定である。RTK測定では、車両Vに搭載されたGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機によって車両Vの位置を測定し、測定位置を、基準局におけるGNSS受信機によって測定された位置に基づいて補正することによって、車両V(に搭載されたGNSS受信機)の位置を正確に検出することができる。車両Vの基準部分は、車体におけるGNSS受信機の取付部分である。
【0084】
車種指定部713は、生成される補正用データの対象の車種(小型車、中型車、又は大型車)を指定する。例えば、補正用データ生成装置700は、表示装置705に対象車種の入力を要求する画面を表示し、ユーザが入力装置704によって入力した車種情報を受け付ける。他の例では、レーダ100が、グループ化された反射点500に基づいて、検出された車両Vのサイズ(車長、車幅)を推定し、推定されたサイズから車種を識別する。レーダ100は、車種情報を送信し、又は、記録媒体710に車種情報を書き込む。補正用データ生成装置700は、車種情報を受信し、又は、記録媒体710から車種情報を読み出し、取得された車種情報から車種を特定する。車種指定部713は、車種情報によって示される車種を生成部714に指定する。
【0085】
生成部714は、第1位置と基準位置との差分である補正量、及び第1位置が互いに対応付けられた補正用データ400を生成する。
図13は、第1位置と基準位置とを説明するための図である。基準位置800は、GNSS受信機の取付部分である基準部分の位置である。GNSS受信機は、車体における重心など、車両Vの特定部分に設置される。第1位置530は、車体における反射点500の分布によって定まり、基準位置800とは異なる位置であることが多い。
【0086】
生成部714は、第1位置530のY成分と基準位置800のY成分との差分であるY方向の補正量AYを算出し、第1位置530のX成分と基準位置800のX成分との差分であるX方向の補正量AXを算出する。差分を算出される対象の第1位置530及び基準位置800は、同一時刻における第1位置530及び基準位置800である。つまり、第1特定部711及び第2特定部712は、第1位置データ及び基準位置データのそれぞれから、同一時刻における第1位置530及び基準位置800をそれぞれ特定する。ただし、レーダ100による第1位置530の検出と、RTK測定による基準位置800の検出とが互いに異なる時刻に行われている場合には、第1特定部711は、車両Vが車線の特定箇所310に存在するときに検出された第1位置530を特定し、第2特定部712は、車両Vが特定箇所310に存在するときに検出された基準位置800を特定する。つまり、車両Vが同じ特定箇所310に存在するときにおける第1位置530及び基準位置800が特定されればよい。
【0087】
生成部714は、算出された補正量AYと、第1位置530のY成分とを対応付ける。複数の時刻における第1位置530及び基準位置800によって、又は、車線の複数の箇所における第1位置530及び基準位置800によって、生成部714が補正量AY及び第1位置530のY成分の対応付けを行うことにより、Y補正用データが生成される。生成部714は、算出された補正量AXと、第1位置530のY成分とを対応付ける。複数の時刻における第1位置530及び基準位置800によって、又は、車線の複数の箇所における第1位置530及び基準位置800によって、生成部714が補正量AX及び第1位置530のY成分の対応付けを行うことにより、X補正用データが生成される。
【0088】
再び
図12を参照する。生成部714は、車種指定部713によって指定された車種のための補正用データを生成する。車種指定部713から小型車を指定された場合、生成部714は、補正量AYと第1位置530のY成分とを対応付けたデータを、小型車用補正用データ410のY補正用データ411とし、補正量AXと第1位置530のY成分とを対応付けたデータを、小型車用補正用データ410のX補正用データ412とする。車種指定部713から中型車を指定された場合、生成部714は、補正量AYと第1位置530のY成分とを対応付けたデータを、中型車用補正用データ420のY補正用データ421とし、補正量AXと第1位置530のY成分とを対応付けたデータを、中型車用補正用データ420のX補正用データ422とする。車種指定部713から大型車を指定された場合、生成部714は、補正量AYと第1位置530のY成分とを対応付けたデータを、大型車用補正用データ430のY補正用データ431とし、補正量AXと第1位置530のY成分とを対応付けたデータを、大型車用補正用データ430のX補正用データ432とする。
【0089】
出力部715は、生成された補正用データ400を出力する。例えば、出力部715は、レーダ100又は他の外部装置に補正用データ400を送信する。他の例では、出力部715は、書込装置706に装填された記録媒体710に補正用データ400を書き込む。
【0090】
[1-7.補正用データ生成装置の動作]
図14は、第1実施形態に係る補正用データ生成装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。プロセッサ701が補正用データ生成プログラム708を起動すると、補正用データ生成装置700は、以下に説明するような処理を実行する。
【0091】
プロセッサ701は、例えばレーダ100又は他の外部装置から第1位置データを受信することにより、又は、記録媒体710から第1位置データを読み出すことにより、第1位置データを取得する(ステップS201)。
【0092】
プロセッサ701は、例えばレーダ100又は他の外部装置から基準位置データを受信することにより、又は、記録媒体710から基準位置データを読み出すことにより、基準位置データを取得する(ステップS202)。
【0093】
プロセッサ701は、例えばユーザから車種の指定を受け付けることにより、又は、レーダ100若しくは他の外部装置から車種情報を受信することにより、又は、記録媒体710から車種情報を読み出すことにより、補正用データの対象車種を特定する(ステップS203)。
【0094】
プロセッサ701は、同一時刻の第1位置530のY成分と基準位置800のY成分との差分である補正量AYを算出し、補正量AYと第1位置530のY成分とを対応付けて、指定された車種のY補正用データを生成する。プロセッサ701は、同一時刻の第1位置530のX成分と基準位置800のX成分との差分である補正量AXを算出し、補正量AXと第1位置530のY成分とを対応付けて、指定された車種のX補正用データを生成する(ステップS204)。
【0095】
プロセッサ701は、生成された補正用データをレーダ100又は他の外部装置へ送信することにより、又は、補正用データを記録媒体710に書き込むことにより、補正用データを出力する(ステップS205)。以上で、補正用データ生成装置700の動作が終了する。
【0096】
[2.第2実施形態]
[2-1.レーダ]
本実施形態では、レーダ100の受信回路115が3以上の受信アンテナを含み、XYZ座標空間における車両Vの位置(第1位置)を検出する。レーダ100と車両Vとの相対位置が変化すると、車体における反射点500の分布が変化し、第1位置のY成分、X成分だけでなく、Z成分にもずれが生じる。
【0097】
レーダ100は、第1位置のY成分、X成分だけでなく、Z成分も補正する。
図15は、第2実施形態に係る補正用データの構成の一例を示す図である。小型車用補正用データ410は、Y補正用データ411、X補正用データ412及びZ補正用データ413を含む。中型車用補正用データ420は、Y補正用データ421、X補正用データ422及びZ補正用データ423を含む。大型車用補正用データ430は、Y補正用データ431、X補正用データ432及びZ補正用データ433を含む。Z補正用データ413,423,433は第1位置のZ成分の補正に用いられる。具体的には、Z補正用データ413,423,433は、第1位置のY成分と、Z方向の補正量AZとの対応関係を示す。
【0098】
図4を参照する。補正部126は、補正用データ400にしたがって、特定部123によって特定された第1位置に対応する補正量AY,AX,AZを取得し、取得された補正量AY,AX,AZによって第1位置を補正した第2位置を決定する。具体的には、補正部126は、選択部125によって選択された補正用データが有するY補正用データにしたがって、第1位置のY成分に対応する補正量AYを取得する。補正部126は、選択部125によって選択された補正用データが有するX補正用データにしたがって、第1位置のY成分に対応する補正量AXを取得する。補正部126は、選択部125によって選択された補正用データが有するZ補正用データにしたがって、第1位置のY成分に対応する補正量AZを取得する。補正部126は、取得された補正量AYによって第1位置のY成分を補正し、第2位置のY成分を決定する。補正部126は、取得された補正量AXによって第1位置のX成分を補正し、第2位置のX成分を決定する。補正部126は、取得された補正量AZによって第1位置のZ成分を補正し、第2位置のZ成分を決定する。
【0099】
対象エリア300の道路が車線長に傾斜している場合、車両Vの車線上の位置に応じて路面の高さが変化し、レーダ100と車両VとのY方向の距離が変化する。このようなレーダ100と車両VとのY方向の距離の変化に伴い、車体における反射点500の分布が変化する。第1位置のZ成分を補正することにより、路面勾配による第1位置のZ成分のずれを修正することができる。当然ながら、傾斜のない水平な路面でも、第1位置のZ成分を補正することにより、車両VのY方向の位置の変化による車体における反射点500の分布の変化に起因する第1位置のZ成分のずれを修正することができる。
【0100】
[2-2.補正用データ生成装置]
本実施形態では、補正用データ生成装置700は、第1位置のZ成分を補正するための補正用データ400を生成する。
【0101】
図12を参照する。例えば、補正用データ生成装置700は、レーダ100又は他の外部装置から第1位置データを受信したり、記録媒体710に記憶された第1位置データを読み出したりし、第1特定部711は、取得された第1位置データからXYZ座標空間における第1位置を特定する。第1位置データは、車両VのXYZ座標における第1位置の推移を示す時系列データである。
【0102】
例えば、補正用データ生成装置700は、車両Vの車載装置又は他の外部装置から基準位置データを受信したり、記録媒体710に記憶された基準位置データを読み出したりし、第2特定部712は、取得された基準位置データからXYA座標空間における基準位置を特定することができる。基準位置データは、車両VのXYZ座標における基準位置の推移を示す時系列データである。
【0103】
第1特定部711は、車両Vが車線の特定箇所310に存在するときに検出された第1位置530を特定し、第2特定部712は、車両Vが特定箇所310に存在するときに検出された基準位置800を特定する(
図13参照)。つまり、車両Vが同じ特定箇所310に存在するときにおける第1位置530及び基準位置800が特定される。
【0104】
生成部714は、補正量AY,AXに加えて、第1位置530のZ成分と基準位置800のZ成分との差分であるZ方向の補正量AZを算出する。生成部714は、算出された補正量AZと、第1位置530のY成分とを対応付ける。複数の時刻における第1位置530及び基準位置800によって、又は、車線の複数の箇所における第1位置530及び基準位置800によって、生成部714が補正量AZ及び第1位置530のY成分の対応付けを行うことにより、Z補正用データが生成される。
【0105】
車種指定部713から小型車を指定された場合、生成部714は、補正量AZと第1位置530のY成分とを対応付けたデータを、小型車用補正用データ410のZ補正用データ413とする。車種指定部713から中型車を指定された場合、生成部714は、補正量AZと第1位置530のY成分とを対応付けたデータを、中型車用補正用データ420のZ補正用データ423とする。車種指定部713から大型車を指定された場合、生成部714は、補正量AZと第1位置530のY成分とを対応付けたデータを、大型車用補正用データ430のZ補正用データ433とする。
【0106】
[3.その他の実施形態]
上述した実施形態では、車種識別部124は、同一のグループに属する反射点500のうちのY方向に最も離れた2点間のY方向距離(以下、「Y距離」という)及び、X方向に最も離れた2点間のX方向距離(以下、「X距離」という)によって、当該グループに対応する車両Vの車種(小型車、中型車、大型車)を識別したが、これに限定されない。車両Vの車種の識別に、グループ化された反射点500のうちのZ方向に最も離れた2点間のZ方向距離(以下、「Z距離」という)が利用されてもよい。車種識別部124は、例えば、グループ化された反射点群のY距離及びX距離に加え、Z距離を用いて車両Vの車種を識別してもよいし、グループ化された反射点群のY距離及びX距離を用いず、Z距離のみを用いて車両Vの車種を識別してもよい。さらに、車種識別部124は、グループ化された反射点群のY距離及びX距離のいずれた1つと、Z距離とを用いて車両Vの車種を識別してもよい。
【0107】
上述した実施形態では、補正用データ生成装置700が、実際にレーダ100によって検出された第1位置を示す第1位置データを取得し、取得された第1位置データを用いて補正用データ400を生成したが、これに限定されない。補正用データ400の生成に、シミュレータによるレーダ100の位置検出のシミュレーション結果が利用されてもよい。例えば、レイトレーシング法によってレーダ100による車両Vの位置検出をシミュレートし、シミュレートされた第1位置の検出結果を示すシミュレーションデータが補正用データ生成装置700に与えられる。第1特定部711は、シミュレーションデータから第1位置を特定する。生成部714は、シミュレーションによって得られた第1位置と基準位置との差分である補正量と、シミュレーションによって得られた第1位置とが互いに対応付けられた補正用データ400を生成する。
【0108】
[4.効果]
実施形態に係るレーダ100は、受信アンテナ115a,115bと、特定部123と、補正部126とを含む。受信アンテナ115a,115bは、対象エリア300に照射した電波の車両Vによる反射波を受信する。特定部123は、受信アンテナ115a,115bによって受信された反射波に基づいて車両Vの第1位置530を特定する。補正部126は、車両Vの第1位置530と補正量との対応関係を示す補正用データ400にしたがって、特定部123によって特定された第1位置530に対応する補正量を取得し、取得された補正量によって第1位置530を補正した第2位置を決定する。これにより、第1位置530に応じた補正量により第1位置530を補正することができるため、レーダ100と車両Vとの位置関係によらず、レーダ100による車両Vの位置の検出精度を安定させることができる。
【0109】
第1位置530は、Y成分及びX成分を含んでもよい。補正用データ400は、Y成分の補正に用いられるY補正用データ(第1補正用データ)411,421,431及びX成分の補正に用いられるX補正用データ(第2補正用データ)412,422,432を含んでもよい。補正部126は、Y補正用データ411,421,431にしたがって、第2位置のY成分を決定し、X補正用データ412,422,432にしたがって、第2位置のX成分を決定してもよい。これにより、Y方向及びX方向を含む空間において、レーダ100による車両Vの位置の検出精度を安定させることができる。
【0110】
Y補正用データ411,421,431は、第1位置530のY成分と、Y成分の補正量AYとの対応関係を示してもよい。X補正用データ412,422,432は、第1位置530のY成分と、X成分の補正量AXとの対応関係を示してもよい。レーダ100と車両VとのY方向における相対位置が変化すると、車体における電波の反射面が変化する。上記の構成により、レーダ100と車両VとのY方向における相対位置に応じて、第1位置530のY成分及びX成分のそれぞれを補正することができ、レーダ100による車両Vの位置の検出精度を安定させることができる。
【0111】
第1位置530は、Z成分をさらに含んでもよい。補正用データ400は、Z成分の補正に用いられるZ補正用データ(第3補正用データ)413,423,433をさらに含んでもよい。補正部126は、Z補正用データ413,423,433にしたがって、第2位置のZ成分を決定してもよい。これにより、Y方向、X方向、及びZ方向を含む空間において、レーダ100による車両Vの位置の検出精度を安定させることができる。
【0112】
Z補正用データ413,423,433は、第1位置530のY成分と、Z成分の補正量AZとの対応関係を示してもよい。レーダ100と車両VとのY方向における相対位置が変化すると、車体における電波の反射面が変化する。上記の構成により、レーダ100と車両VとのY方向における相対位置に応じて、第1位置530のZ成分を補正することができ、レーダ100による車両Vの位置の検出精度を安定させることができる。
【0113】
補正用データ400は、車両サイズが所定の第1区分で規定される第1車種に用いられる第1車種補正用データと、車両サイズが前記第1区分とは異なる第2区分で規定される第2車種に用いられる第2車種補正用データとを含んでもよい。一例として、第1車種が小型車であり、第2車種が中型車である場合を想定すると、第1車種用補正用データは小型車用補正用データ410であり、第2車種用補正用データは中型車用補正用データ420である。レーダ100は、車種識別部124をさらに含んでもよい。車種識別部124は、受信アンテナ115a,115bによって受信された反射波に基づいて車両Vが小型車及び中型車のいずれに属するかを識別する。補正部126は、車両Vが小型車に属すると識別された場合、小型車用補正用データ410にしたがって、第1位置530に対応する補正量を取得してもよい。補正部126は、車両Vが中型車に属すると識別された場合、中型車用補正用データ420にしたがって、第1位置530に対応する補正量を取得してもよい。車両サイズに応じて、レーダ100による検出位置の誤差は変化する。上記の構成により、レーダ100による検出位置を車両サイズに応じた補正量で補正することができる。
【0114】
特定部123は、同一車両からの反射波から検出される複数の反射点500の代表値を取得し、代表値を第1位置530に設定してもよい。これにより、レーダ100によって検出される第1位置530を安定させることができる。このような第1位置530を補正することにより、レーダ100による検出精度を安定させることができる。
【0115】
代表値は、複数の反射点500の重心であってもよい。これにより、レーダ100と車両VとのY方向の位置関係の変化に応じて第1位置530が突発的に変化することを抑制することができる。したがって、レーダ100による検出精度を安定させることができる。
【0116】
補正用データ生成装置700は、第1特定部711と、第2特定部712と、生成部714とを含む。第1特定部711は、レーダ100によって検出される車両Vの位置である所定の座標空間における第1位置530を特定する。第2特定部712は、車両Vの基準部分の位置である上記の座標空間における基準位置800を特定する。生成部714は、第1位置530と基準位置800との差分である補正量、及び第1位置530が互いに対応付けられた補正用データ400を生成する。これにより、レーダ100と車両Vとの相対的な位置に応じてレーダ100による検出位置を補正するための補正用データ400を生成することができる。
【0117】
第1位置530は、Y成分及びX成分を含んでもよい。補正用データ400は、Y補正用データ(第1補正用データ)411,421,431と、X補正用データ(第2補正用データ)412,422,432とを含んでもよい。Y補正用データ411,421,431は、第1位置530のY成分の補正量AY及び第1位置530が互いに対応付けられたデータである。X補正用データ412,422,432は、第1位置530のX成分の補正量AX及び第1位置530が互いに対応付けられたデータである。これにより、Y方向及びX方向を含む空間においてレーダ100による車両Vの検出位置を補正するための補正用データ400を生成することができる。
【0118】
Y補正用データ411,421,431は、第1位置530のY成分と、Y成分の補正量AYとの対応関係を示してもよい。X補正用データ412,422,432は、第1位置530のY成分と、X成分の補正量AXとの対応関係を示してもよい。これにより、レーダ100と車両V とのY方向における相対位置に応じて、第1位置530のY成分及びX成分のそれぞれを補正するための補正用データ400を生成することができる。
【0119】
第1位置530は、Z成分をさらに含んでもよい。補正用データ400は、第1位置530のZ成分の補正量AZ及び第1位置530が互いに対応付けられたZ補正用データ(第3補正用データ)413,423,433をさらに含んでもよい。これにより、Y方向、X方向、及びZ方向を含む空間においてレーダ100による車両Vの検出位置を補正するための補正用データ400を生成することができる。
【0120】
Z補正用データ413,423,433は、第1位置530のY成分と、Z成分の補正量AZとの対応関係を示してもよい。これにより、レーダ100と車両VとのY方向における相対位置に応じて第1位置530のZ成分を補正するための補正用データ400を生成することができる。
【0121】
第1特定部711は、車両サイズが所定の第1区分で規定される第1車種に属する第1車両の第1位置530を特定してもよい。第2特定部712は、第1車両の基準位置800を特定してもよい。生成部714は、第1車種用の補正用データである第1車種補正用データを生成してもよい。第1車種補正用データは、第1車両の第1位置530と第1車両の基準位置800との差分である補正量、及び、第1車両の第1位置530が互いに対応付けられたデータである。一例として、第1車種が小型車である場合を想定すると、第1特定部711は、小型車である車両Vの第1位置530を特定し、第2特定部712は、小型車である車両Vの基準位置800を特定し、生成部714は、小型車用補正用データ410を生成する。小型車用補正用データ410は、小型車である車両Vの第1位置530と小型車である車両Vの基準位置800との差分である補正量、及び、小型車である車両Vの第1位置530が互いに対応付けられたデータである。第1特定部711は、車両サイズが第1区分とは異なる第2区分で規定される第2車種に属する第2車両の第1位置530を特定してもよい。第2特定部712は、第2車両の基準位置800を特定してもよい。生成部714は、第2車種用の補正用データである第2車種補正用データを生成してもよい。第2車種補正用データは、第2車両の第1位置530と第2車両の基準位置800との差分である補正量、及び、第2車両の第1位置530が互いに対応付けられたデータである。一例として、第2車種が中型車である場合を想定すると、第1特定部711は、中型車である車両Vの第1位置530を特定し、第2特定部712は、中型車である車両Vの基準位置800を特定し、生成部714は、中型車用補正用データ420を生成する。中型車用補正用データ420は、中型車である車両Vの第1位置530と中型車である車両Vの基準位置800との差分である補正量、及び、中型車である車両Vの第1位置530が互いに対応付けられたデータである。
【0122】
第1位置530は、レーダ100によって同一車両からの反射波から検出される複数の反射点500の代表値であってもよい。これにより、第1位置530を安定させることができ、このような第1位置530を用いて、レーダ100の検出位置を正確に補正するための補正用データを生成することができる。
【0123】
代表値は、複数の反射点500の重心であってもよい。これにより、レーダ100と車両VとのY方向の位置関係の変化に応じて第1位置530が突発的に変化することを抑制することができる。このような第1位置530を用いて、レーダ100の検出位置を正確に補正するための補正用データ400を生成することができる。
【0124】
第1特定部711は、レーダ100のシミュレータによって算出される第1位置530を特定してもよい。これにより、実際にレーダ100を稼働させることなく、補正用データ400を生成することができる。
【0125】
[5.補記]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0126】
100 レーダ(インフラ用電波レーダ)
101 送受信面
102 レーダ本体
103 俯角調整部
104 水平角調整部
105 ロール角調整部
111 プロセッサ
112 不揮発性メモリ
113 揮発性メモリ
114 送信回路
114a 送信アンテナ
115 受信回路
115a,115b 受信アンテナ
116 通信インタフェース(通信I/F)
117 データ補正プログラム
121 入力部
122 グルーピング部
123 特定部
124 車種識別部
125 選択部
126 補正部
127 出力部
200 アーム
300 対象エリア
310 特定箇所
400 補正用データ
410 小型車用補正用データ(第1車種用補正用データ、第2車種用補正用データ)
411 Y補正用データ(第1補正用データ)
412 X補正用データ(第2補正用データ)
413 Z補正用データ(第3補正用データ)
420 中型車用補正用データ(第1車種用補正用データ、第2車種用補正用データ)
421 Y補正用データ(第1補正用データ)
422 X補正用データ(第2補正用データ)
423 Z補正用データ(第3補正用データ)
430 大型車用補正用データ(第1車種用補正用データ、第2車種用補正用データ)
431 Y補正用データ(第1補正用データ)
432 X補正用データ(第2補正用データ)
433 Z補正用データ(第3補正用データ)
500 反射点
510,520 波形
511,521 ピーク点
530 第1位置
600 第2位置
700 補正用データ生成装置
701 プロセッサ
702 不揮発性メモリ
703 揮発性メモリ
704 入力装置
705 表示装置
706 書込装置
707 通信インタフェース(通信I/F)
708 補正用データ生成プログラム
710 記録媒体
711 第1特定部
712 第2特定部
713 車種指定部
714 生成部
715 出力部
800 基準位置
V 車両