(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/32 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
H01T13/32
(21)【出願番号】P 2021057479
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】高田 健一朗
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-005629(JP,U)
【文献】特開昭56-153677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中心軸を中心に筒状に形成される絶縁体(12)と、
前記絶縁体に挿入される中心電極(13)と、
前記絶縁体の外周に設けられる筒状のハウジング(11)と、
前記ハウジングの先端面に接合される接地電極(14)と、を備え、
前記接地電極は、
前記ハウジングの先端面に接合されるとともに、前記ハウジングの先端面から前記中心軸に沿う方向に延びるように形成される根元部(51)と、
前記根元部の先端(511)から前記中心電極に対向する位置まで延びるように形成される対向部(53)と、を有し、
前記ハウジングの先端面に接合される前記根元部の端部を基端とし、前記中心軸の周方向に位置する前記根元部の外壁部を側壁部(514,515)とし、前記中心軸の径方向における前記根元部の幅を板厚とするとき、
前記根元部の側壁部は、前記中心軸の周方向から見たときに、前記中心軸の径方向において外側に位置する前記根元部の背面(512)側の部分が前記ハウジングの先端面から直立して延び、且つ前記根元部の基端(510)から先端に向かうほど板厚が薄くなるように台形状に形成され、
前記中心軸の径方向において内側に位置する前記根元部の内面(513)は、前記中心軸の周方向の両端にそれぞれ位置する前記根元部の両側壁部の板厚よりも前記根元部の中央部(516)の板厚の方が薄くなるように凹状に形成されている
スパークプラグ。
【請求項2】
前記中心軸の径方向において内側に位置する前記根元部の内面の幅は、前記根元部の背面の幅よりも長くなっている
請求項
1に記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載のスパークプラグがある。このスパークプラグは、筒状の絶縁碍子の内部に挿入される中心電極と、絶縁碍子の外周に設けられるハウジングと、ハウジングに固定される接地電極とを備えている。接地電極は、その基端部がハウジングに固定されるとともに、屈曲部にて中心電極側に曲げられて、その先端部が中心電極との間で隙間を形成するように配置されている。接地電極の屈曲部では、接地電極の中心軸に直交する断面において接地電極の断面重心よりも中心電極側に位置する部位の強度が、中心電極とは反対側に位置する部位の強度よりも大きくなっている。これにより、車両のエンジン等の動作に伴う振動がスパークプラグに加わる環境下であっても、接地電極の先端が中心電極から離間する方向に起き上がる現象、換言すれば中心電極と接地電極との間に形成される火花ギャップが拡大する現象が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スパークプラグの製造の際には、接地電極の基端部をハウジングの端面に接合させる接合工程、接合工程の後に接地電極の先端部が中心電極に対向するように接地電極を内側に曲げる曲げ工程、及び曲げ工程の後に接地電極の先端を外側から叩いて火花ギャップの大きさを調整するギャップ調整工程が行われる。これらの工程を経て接地電極が成形されるため、接地電極の基端部の内面部分には圧縮方向の力が加わる。これが、接地電極の基端部の内面部分に内部応力を残留させる要因となっている。
【0005】
一方、近年の熱効率の向上を図ったエンジンでは、その燃焼温度が従来よりも高温となっている。このようなエンジンでは高温の燃焼熱を接地電極の基端部が継続して受けることにより、接地電極の基端部に時間の経過に伴って残留応力に応じた変形が生じる、いわゆるクリープ現象が発生する可能性がある。接地電極の基端部に発生するクリープ現象は、接地電極の先端部が中心電極に近づく現象、換言すれば火花ギャップが縮小する現象を生じさせる要因となる。仮に火花ギャップが縮小すると、中心電極と接地電極との間に形成される火花放電により混合気が着火した際に、生成される火炎が接地電極等に接触し易くなるため、火炎の熱が接地電極等に奪われることにより着火性が悪化する懸念がある。
【0006】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリープ現象に起因する接地電極の変形を抑制することが可能なスパークプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するスパークプラグ(10)は、所定の中心軸を中心に筒状に形成される絶縁体(12)と、絶縁体に挿入される中心電極(13)と、絶縁体の外周に設けられる筒状のハウジング(11)と、ハウジングの先端面に接合される接地電極(14)と、を備える。接地電極は、ハウジングの先端面に接合されるとともに、ハウジングの先端面から中心軸に沿う方向に延びるように形成される根元部(51)と、根元部の先端(511)から中心電極に対向する位置まで延びるように形成される対向部(53)と、を有する。ハウジングの先端面に接合される根元部の端部を基端とし、中心軸の周方向に位置する根元部の外壁部を側壁部とし、中心軸の径方向における根元部の幅を板厚とするとき、根元部の側壁部は、中心軸の周方向から見たときに、中心軸の径方向において外側に位置する根元部の背面(512)側の部分がハウジングの先端面から直立して延び、且つ根元部の基端(510)から先端に向かうほど板厚が薄くなるように台形状に形成されている。
【0008】
この構成によれば、曲げ工程及びギャップ調整工程を通じて接地電極を内面側に屈曲させる際に、根元部の内面部分が突っ張り棒のように機能して、当該根元部の内面部分が圧縮方向に変形し難くなる。これにより、応力が発生するような変形が根元部の内面部分に生じ難くなるため、クリープ現象に起因する接地電極の変形を抑制することができる。
【0009】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0010】
本開示のスパークプラグによれば、クリープ現象に起因する接地電極の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態のスパークプラグの破断断面構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の接地電極の斜視構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の接地電極の電極母材における根元部の右側面構造を示す側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の接地電極の電極母材における根元部の左側面構造を示す側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の接地電極の電極母材における根元部の断面構造を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の接地電極の電極母材における対向部の断面構造を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の接地電極の電極母材の一次成形品の斜視構造を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態の接地電極の電極母材の二次成形品の斜視構造を示す斜視図である。
【
図9】
図9(A),(B)は、実施形態のスパークプラグの製造工程の一部を示す図である。
【
図10】
図10(A),(B)は、実施形態のスパークプラグの製造工程の一部を示す図である。
【
図11】
図11は、参考例のハウジング及び接地電極の接合部分の断面構造を示す断面図である。
【
図12】
図12は、参考例のスパークプラグの接地電極周辺の拡大構造を示す拡大図である。
【
図13】
図13は、他の実施形態の接地電極の電極母材における根元部の断面構造を示す断面図である。
【
図14】
図14は、他の実施形態の接地電極の電極母材における根元部の断面構造を示す断面図である。
【
図15】
図15は、他の実施形態の接地電極の電極母材における根元部の断面構造を示す断面図である。
【
図16】
図16は、他の実施形態の接地電極の斜視構造を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、他の実施形態の接地電極の電極母材の根元部の断面構造を示す断面図である。
【
図18】
図18は、他の実施形態の接地電極の電極母材の根元部の断面構造を示す断面図である。
【
図19】
図19は、他の実施形態の接地電極の電極母材の根元部の断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、スパークプラグの一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
はじめに、
図1に示される本実施形態のスパークプラグ10の概略構成について説明する。このスパークプラグ10は例えばエンジンヘッドに設けられる。スパークプラグ10は、電圧の印加に基づき火花放電を形成することによりエンジンの気筒内の混合気を着火する。スパークプラグ10は、ハウジング11と、絶縁碍子12と、中心電極13と、接地電極14とを備えている。
【0013】
ハウジング11はスパークプラグ10の中心軸m10を中心に円筒状に形成されている。ハウジング11は例えば炭素鋼等の金属材料により形成されている。ハウジング11の内部には絶縁碍子12の下端部が同軸上に挿入されている。なお、以下では、中心軸m10に沿った方向を「プラグ軸方向Da」と称する。
【0014】
絶縁碍子12は中心軸m10を中心に円筒状に形成されている。絶縁碍子12はアルミナ等の絶縁材料により形成されている。本実施形態では、絶縁碍子12が絶縁体に相当する。絶縁碍子12の外周にはハウジング11が一体的に組み付けられている。絶縁碍子12の内部には軸孔120が形成されている。軸孔120は中心軸m10に沿って絶縁碍子12の先端部から基端部まで貫通するように形成されている。軸孔120には、その先端部の側から中心電極13、第1シール体15、抵抗体16、第2シール体17、及び端子金具18が順に挿入されている。
【0015】
中心電極13は電極母材30と電極チップ40とを有している。電極母材30は中心軸m10を中心に円柱状に形成されている。電極母材30は、耐熱性に優れるニッケル(Ni)合金等により形成されている。電極チップ40は電極母材30の先端部に接合されている。電極チップ40は中心軸m10を中心に円柱状に形成されている。電極チップ40はイリジウム合金等により形成されている。中心電極13の基端部と端子金具18の先端部との間には第1シール体15、抵抗体16、及び第2シール体17が挟み込まれている。
【0016】
端子金具18は中心軸m10を中心に略円柱状に形成されている。端子金具18は鋼材等により形成されている。端子金具18の基端部には端子部180が形成されている。端子金具18の端子部180は絶縁碍子12の基端部から外部に露出している。
接地電極14は電極母材50と電極チップ60とを有している。電極母材50はニッケル合金等により形成されている。電極母材50は、ハウジング11の先端面に固定されるとともに、その先端面から中心電極13の電極チップ40に対向する位置まで延びるように形成されている。電極チップ60は電極母材50の先端部に接合されている。電極チップ60は、イリジウム合金や白金合金等の貴金属合金により形成されている。電極チップ60は、所定の隙間19を有して中心電極13の電極チップ40に対向するように配置されている。以下では、中心電極13の電極チップ40と接地電極14の電極チップ60との間に形成される隙間19を「火花ギャップ19」と称する。
【0017】
このスパークプラグ10では、高電圧を印加することが可能な外部回路が端子金具18の端子部180に接続される。外部回路により端子金具18の端子部180に高電圧が印加されると、中心電極13の電極チップ40と接地電極14の電極チップ60との間に火花放電が形成される。この火花放電によりエンジンの気筒内の混合気が着火して火炎が形成されることにより混合気が燃焼する。
【0018】
次に、ハウジング11と接地電極14との接合部分の構造について詳しく説明する。
図2に示されるように、接地電極14の電極母材50は、根元部51と、屈曲部52と、対向部53とを有している。なお、
図2を含め、以下の図では必要に応じて電極チップ60の図示を省略する。
【0019】
根元部51は、ハウジング11の先端面110に接合されている部分である。根元部51は、ハウジング11の先端面110からプラグ軸方向Daに延びるように形成されている。屈曲部52は、根元部51の先端511から中心電極13に向かって屈曲するように形成される部分である。なお、
図2には根元部51の先端511の外縁が二点鎖線で示されている。対向部53は、屈曲部52から中心電極13に対向する位置まで延びるように形成される部分である。本実施形態のスパークプラグ10では、ハウジング11の硬度よりも接地電極14の電極母材50の硬度の方が低くなっている。
【0020】
なお、以下では、プラグ軸方向Daに直交する方向、換言すれば
図1に示される中心軸m10の径方向を「プラグ径方向Dr」と称し、中心軸m10の周方向を「プラグ周方向Dc」と称する。また、ハウジング11の先端面110に接合される根元部51の端部510を「基端510」と称する。さらに、プラグ周方向Dcに位置する根元部51の一方の外壁部を「右側壁部514」と称し、プラグ周方向Dcに位置する根元部51の他方の外壁部を「左側壁部515」と称する。
【0021】
図3に示されるように、根元部51の右側壁部514は、プラグ周方向Dcから見たときに、根元部51の背面512側の部分がハウジング11の先端面110から直立して延びるように形成されている。また、プラグ径方向Drにおける根元部51の幅を板厚とするとき、根元部51の基端510の板厚は「W1」に設定されており、根元部51の先端511の板厚は、「W1」よりも短い「W3」に設定されている。すなわち、根元部51の右側壁部514は、その基端510から先端511に向かうほど板厚が薄くなるように形成されている。これにより、根元部51の右側壁部514はプラグ周方向Dcから見たときに台形状に形成されている。
【0022】
図4に示されるように、根元部51の左側壁部515も同様にプラグ周方向Dcから見たときに台形状に形成されている。
プラグ軸方向Daに直交する根元部51の断面は
図5に示されるような形状を有している。すなわち、プラグ軸方向Daに直交する根元部51の断面では、右側壁部514及び左側壁部515のそれぞれの板厚が「W1」に設定されており、プラグ周方向Dcにおいて右側壁部514及び左側壁部515の中間に位置する中央部516の板厚が、「W1」より小さい「W2」に設定されている。これによりプラグ径方向Drにおいて内側に位置する根元部51の内面513は、根元部51の両側壁部514,515の板厚W1よりも中央部516の板厚W2の方が薄くなるように凹状に形成されている。根元部51の背面512は、プラグ径方向Drの外側に膨らむように湾曲している。また、プラグ軸方向Daに直交する根元部51の断面では、内面513の幅L1が背面512の幅L2よりも長くなっている。以上のような構造により、プラグ軸方向Daに直交する根元部51の断面は、扇状に広がり、且つ内面513が「く」の字状に屈曲した形状を有している。なお、
図5では、根元部51の先端511に連続する屈曲部52の部位の外縁が二点鎖線で示されている。
【0023】
図6に示されるように、接地電極14の電極母材50が延びる方向に直交する対向部53の断面は、四隅にR形状を有するように矩形状に形成されている。なお、図示は省略するが、接地電極14の電極母材50が延びる方向に直交する屈曲部52の断面も同様に、四隅にR形状を有するように矩形状に形成されている。
【0024】
次に、本実施形態のスパークプラグ10の製造方法、特に接地電極14の製造方法について説明する。
接地電極14を製造する際には、まず、接地電極14の電極母材50の素材に対して押出成形を行うことにより、
図7に示されるような電極母材50の一次成形品70aを製造する。一次成形品70aは、所定の軸線m20を中心に延びるように形成されている。所定の軸線m20に直交する一次成形品70aの断面は、四隅にR形状に有する矩形状に形成されている。
【0025】
一次成形品70aの製造に続いて、その根元部71に対して型押し成形を行うことにより、一次成形品70aの根元部71の内面713に凹部を形成する。これにより、
図8に示されるような電極母材50の二次成形品70bが製造される。二次成形品70bの根元部71は、
図3及び
図4に示される電極母材50の根元部51と類似の形状を有している。
図8に示されるような二次成形品70bを製造した後、その根元部51とは反対側の端部に電極チップ60を接合することにより接地電極14の製造が完了する。
【0026】
以上のようにして接地電極14の製造を完了した後、当該接地電極14をハウジング11に接合する工程、及び中心電極13に対向するように接地電極14を変形させる工程が行われる。
具体的には、まず、
図9(A)に示されるように接地電極14の電極母材50の根元部51を抵抗溶接やレーザ溶接等によりハウジング11の先端面110に接合させる。このような接合工程を行った後に、接地電極14の電極母材50の内面を円柱状の支持台80により押さえつつ、曲げローラ81により電極母材50の先端部の外面を押圧する曲げ工程が行われる。この曲げ工程により、
図9(B)に示されるように、電極母材50の先端部が中心電極13に向かって曲げられる。これにより、
図10(A)に示されるように、電極母材50に屈曲部52及び対向部53が更に成形される。
【0027】
曲げ工程に続いてギャップ調整工程が行われる。ギャップ調整工程では、
図10(B)に示されるように、電極母材50の対向部53の外面を調整治具83により叩くことで、接地電極14の電極チップ60と中心電極13の電極チップ40との間に形成される火花ギャップ19の大きさが調整される。
【0028】
次に、本実施形態のスパークプラグ10の作用及び効果について説明する。
接地電極14の電極母材50に関しては、例えばその根元部51を単に直方体状に形成するという方法が考えられる。しかしながら、このような形状を電極母材50が有する場合、特に電極母材50の根元部51の内面513側の部分で内部応力が残留し易い。
【0029】
具体的には、
図9(B)、
図10(A),(B)に示される製造工程を経て接地電極14を成形する場合、曲げローラ81及び調整治具83により接地電極14の対向部53に外力が付与されることにより、接地電極14の電極母材50の根元部51に力が加わる。詳しくは、
図11に示されるように、電極母材50の根元部51の背面512側の部分には伸長方向の力F1、換言すればハウジング11の先端面110から引き剥がされる方向の力が加わる。この伸長方向の力F1により電極母材50の根元部51の背面512側の部分が伸びるように変形すると、電極母材50の根元部51の内面513側の部分には圧縮方向の力F2、換言すればハウジング11の先端面110に向かう方向の力が発生する。この圧縮方向の力F2により電極母材50の根元部51の内面513側の部分には応力が残留する。この残留応力に起因して電極母材50にクリープ現象が発生すると、
図12に示されるように、接地電極14が中心電極13に近づく方向に傾くように変形することにより火花ギャップ19が狭くなるおそれがある。
【0030】
この点、本実施形態のスパークプラグ10では、
図3及び
図4に示されるように根元部51の両側壁部514,515が、プラグ周方向Dcからみたときに台形状に形成されている。この構成によれば、曲げ工程及びギャップ調整工程を通じて接地電極14の先端部を内面513側に屈曲させる際に、根元部51の内面513の部分が突っ張り棒のように機能して、当該根元部51の内面513の部分が圧縮方向に変形し難くなる。これにより、応力が発生するような変形が根元部51の内面513の部分に生じ難くなるため、クリープ現象に起因する接地電極14の変形を抑制することができる。
【0031】
また、
図8に示されるように、電極母材50の二次成形品70bの製造の際に、二次成形品70bの根元部71の内面713が凹状に型押し成形されるため、加工硬化により根元部71の内面713の硬度が高くなる。すなわち、
図5に示される接地電極14の根元部51の内面713の硬度を高くすることができる。この構成によれば、曲げ工程及びギャップ調整工程を通じて接地電極14の先端部を内面513側に屈曲させる際に、応力が発生するような変形が根元部51の内面513の部分に更に生じ難くなる。よって、クリープ現象に起因する接地電極14の変形をより的確に抑制することができる。
【0032】
一方、本実施形態のスパークプラグ10では、
図5に示されるように、根元部51の内面513が凹状に形成されている。この構成によれば、内面513側への変形に対する根元部51の断面係数を増加させることができる、すなわち根元部51の剛性を高めることができる。よって、残留応力が発生するような変形が根元部51の内面513の部分に更に生じ難くなるため、クリープ現象に起因する接地電極14の変形をより的確に抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態のスパークプラグ10では、根元部51の内面513の幅L1が根元部51の背面512の幅L2よりも長くなっている。この構成によれば、根元部51の内面513の幅L1と根元部51の背面512の幅L2とが同一である場合と比較すると、内面513の幅L1が長い分だけ、曲げ工程及びギャップ調整工程において接地電極14を内面513側に屈曲させる際に根元部51の内面513において力が加わる部分の長さを長くすることができる。結果的に、根元部51の内面513に作用する面圧を小さくすることが可能であるため、根元部51の内面513の残留応力を低減することができる。
【0034】
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・接地電極14の根元部51の形状は適宜変更可能である。例えば、根元部51の内面513は、「へ」の字状に凹んだ形状に限らず、
図13に示されるような「コ」の字状に凹んだ形状を有していてもよい。また、
図14に示されるように、根元部51の内面513は、W字状に凹んだ形状であってもよい。あるいは、
図15に示されるように、根元部51の内面513は、W字状に凹み、且つ両側壁部514,515のそれぞれに凹部を有する形状であってもよい。
【0035】
・
図16及び
図17に示されるように、接地電極14の根元部51は、その内面513に「へ」の字状の凹部を有していない形状であってもよい。その際、
図18に示されるように、根元部51の内面513の幅L1と背面512の幅L2とが同一の長さに設定されていてもよい。
【0036】
・
図19に示されるように、接地電極14の根元部51の内面513に「へ」の字状の凹部を有し、且つ内面513の幅L1と背面512の幅L2とが同一の長さに設定されていてもよい。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0037】
10:スパークプラグ
11:ハウジング
12:絶縁碍子(絶縁体)
13:中心電極
14:接地電極
51:根元部
53:対向部
510:基端
511:先端
512:背面
513:内面
514:右側壁部
515:左側壁部
516:中央部