(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】流体制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/22 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
F16K17/22
(21)【出願番号】P 2021064093
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】矢島 久志
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0261859(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0163657(US,A1)
【文献】特開2007-148465(JP,A)
【文献】特開2001-99344(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102966776(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ポートと出力ポートを備えるボデイと、前記ボデイに設けられた弁座に当接可能な弁体とを含む流体制御弁であって、
第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムが前記弁体と前記ボデイとの間に配設され、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムとの間にダイヤフラム室が形成され、前記第1ダイヤフラムは弁室と前記ダイヤフラム室とを区画し、前記第2ダイヤフラムは前記ダイヤフラム室と背圧室とを区画し、前記ダイヤフラム室は前記出力ポートに連通し、前記弁室および前記背圧室は前記入力ポートに連通し、前記第1ダイヤフラムの有効受圧面積と前記第2ダイヤフラムの有効受圧面積との差が前記弁座における通路面積に等しい流体制御弁。
【請求項2】
請求項1記載の流体制御弁において、
前記第1ダイヤフラムの内周部と前記第2ダイヤフラムの内周部との間にスペーサが設けられ、前記ダイヤフラム室は、前記スペーサおよび前記弁体に設けられた二次圧導入通路を介して出力ポートに連通する流体制御弁。
【請求項3】
請求項1記載の流体制御弁において、
前記第1ダイヤフラムの外周部と前記第2ダイヤフラムの外周部との間にスペーサが設けられ、前記スペーサの内周部に段差部が設けられることで、前記第1ダイヤフラムの有効受圧面積が前記第2ダイヤフラムの有効受圧面積よりも大きくなっている流体制御弁。
【請求項4】
請求項1記載の流体制御弁において、
出力ポートに連通する調圧ダイヤフラム室を区画する調圧ダイヤフラムが設けられ、調圧ダイヤフラムの内周部が、前記弁体を構成するステムに当接するベースホルダと調圧スプリングの一端を支持する保持プレートとの間で挟持され、減圧弁として機能する流体制御弁。
【請求項5】
請求項1記載の流体制御弁において、
電磁コイルへの通電を制御することにより前記弁体の開度を制御するリニアモータが配設され、リニアモータの可動子を構成するシャフトが前記弁体に当接する流体制御弁。
【請求項6】
請求項5記載の流体制御弁において、
前記入力ポートから前記出力ポートに向かう流体の流量を検出する流量センサが設けられ、前記流量センサによって検出される実流量値が目標流量値となるようにフィードバック制御を行う流体制御弁。
【請求項7】
入力ポートと出力ポートを備えるボデイと、前記ボデイに設けられた弁座に当接可能な弁体とを含む流体制御弁であって、
第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムが前記弁体と前記ボデイとの間に配設され、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムとの間にダイヤフラム室が形成され、前記第1ダイヤフラムは弁室と前記ダイヤフラム室とを区画し、前記第2ダイヤフラムは前記ダイヤフラム室と背圧室とを区画し、前記ダイヤフラム室は前記入力ポートに連通し、前記弁室および前記背圧室は前記出力ポートに連通し、前記第1ダイヤフラムの有効受圧面積と前記第2ダイヤフラムの有効受圧面積との差が前記弁座における通路面積に等しい流体制御弁。
【請求項8】
入力ポートと出力ポートを備えるボデイと、前記ボデイに設けられた弁座に当接可能な弁体とを含む流体制御弁であって、
第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムが前記弁体と前記ボデイとの間に配設され、前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムとの間にダイヤフラム室が形成され、前記第1ダイヤフラムは弁室と前記ダイヤフラム室とを区画し、前記第2ダイヤフラムは前記ダイヤフラム室と背圧室とを区画し、前記ダイヤフラム室は前記出力ポートに連通し、前記弁室および前記背圧室は前記入力ポートに連通し、前記弁体の一端部が前記背圧室から前記ボデイの外側に形成され前記出力ポートに連通する室に延びており、前記第1ダイヤフラムの有効受圧面積と前記第2ダイヤフラムの有効受圧面積との差が前記弁座における通路面積と前記弁体の一端部の断面積との差に等しい流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力または流量を制御することが可能な流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二次圧を調整可能なダイヤフラムを用いた調圧弁が知られている。例えば、特許文献1には、二次圧と調圧スプリングのバネ力との均衡点を求めて作動する調圧ダイヤフラムに連結されて往復動し、弁体部を弁座部に対して接近離反させる調圧シャフトを有する減圧弁が記載されている。この調圧シャフトには二次圧が背圧として作用するように構成され、調圧シャフトとホルダとの間にはリップパッキンが設けられている。
【0003】
また、特許文献2には、弁座を開閉する弁部を有するロッド部と、第一チャンバ内に配される第一ダイヤフラム部と、第二チャンバ内に配される第二ダイヤフラム部とを備える背圧制御弁が記載されている。この背圧制御弁では、第二ダイヤフラム部の有効受圧面積が弁座の有効面積と等しくなっており、二次側の負荷変動に伴ってロッド部が移動しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-148465号公報
【文献】特開2001-99344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の減圧弁は、一次圧の変動については配慮がなされていないほか、調圧シャフトとリップパッキンとの摺動による抵抗があり、発塵等の問題が発生する。また、特許文献2の背圧制御弁も、一次圧の変動については配慮がなされていない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、一次圧および二次圧の一方または両方に変動があっても安定した制御ないし動作が維持される流体制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体制御弁は、入力ポートと出力ポートを備えるボデイと、ボデイに設けられた弁座に当接可能な弁体とを含み、第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムが弁体とボデイとの間に配設され、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムとの間にダイヤフラム室が形成され、第1ダイヤフラムは弁室とダイヤフラム室とを区画し、第2ダイヤフラムはダイヤフラム室と背圧室とを区画する。そして、ダイヤフラム室は出力ポートに連通し、弁室および背圧室は入力ポートに連通し、第1ダイヤフラムの有効受圧面積と第2ダイヤフラムの有効受圧面積との差が弁座における通路面積に等しい。ダイヤフラム室を出力ポートに連通し、弁室および背圧室を入力ポートに連通する代わりに、ダイヤフラム室を入力ポートに連通し、弁室および背圧室を出力ポートに連通してもよい。
【0008】
また、本発明に係る流体制御弁は、入力ポートと出力ポートを備えるボデイと、ボデイに設けられた弁座に当接可能な弁体とを含み、第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムが弁体とボデイとの間に配設され、第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムとの間にダイヤフラム室が形成され、第1ダイヤフラムは弁室とダイヤフラム室とを区画し、第2ダイヤフラムはダイヤフラム室と背圧室とを区画する。そして、ダイヤフラム室は出力ポートに連通し、弁室および背圧室は入力ポートに連通し、弁体の一端部が背圧室からボデイの外側に形成され出力ポートに連通する室に延びており、第1ダイヤフラムの有効受圧面積と第2ダイヤフラムの有効受圧面積との差が弁座における通路面積と弁体の一端部の断面積との差に等しい。
【0009】
上記各流体制御弁によれば、一次圧および二次圧の一方または両方に変動があっても、動作を不安定にする力が弁体に加わることがなく、安定した制御ないし動作が維持される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る流体制御弁は、第1ダイヤフラムの有効受圧面積、第2ダイヤフラムの有効受圧面積および弁座における通路面積の間に所定の関係をもたせるようにしたので、一次圧および二次圧の一方または両方に変動があっても、安定した制御ないし動作が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る流体制御弁の断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る流体制御弁の概略断面図である。
【
図6】
図5の流体制御弁のバルブモジュールの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る流体制御弁について、複数の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明において、上下の方向に関する言葉を用いたときは、便宜上、図面上での方向をいうものであって、各部材の実際の配置等を限定するものではない。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る流体制御弁10について、
図1および
図2を参照しながら説明する。流体制御弁10は、減圧弁(調圧弁)として機能するもので、ボデイ12と、ボンネット52と、それらの内部に組み込まれるバランス機構部および調圧機構部とを有する。バランス機構部は、弁体26、第1ダイヤフラム36、第2ダイヤフラム38等により構成され、調圧機構部は、調圧シャフト54、調圧スプリング58、調圧ダイヤフラム60等により構成される。ボデイ12は、ボデイ本体14とカバー体24とからなり、弁体26は、主弁体28と付加弁体30とステム34とからなる。
【0014】
ボデイ本体14は、同一軸線上で対向して配置される入力ポート16および出力ポート18を備えている。ボデイ本体14の下部にはカバー体24が取り付けられ、ボデイ本体14の内部には、カバー体24によって閉塞される弁体収容室20が設けられている。弁体収容室20の上部は、入力通路14aを介して入力ポート16に連通するとともに、出力通路14bを介して出力ポート18に連通している。弁体収容室20が出力通路14bに臨む部位において、ボデイ本体14に弁座22が設けられている。
【0015】
カバー体24は、上方に突出する筒状の嵌合部24aを有し、該嵌合部24aがボデイ本体14の下部に設けられた嵌合孔14cに嵌合する。カバー体24の嵌合部24aの上端は、ボデイ本体14の嵌合孔14cに連なる段部14dと所定の隙間を隔てて対向する。この隙間に、後述する第1ダイヤフラム36の外周部36bと第2スペーサ42と第2ダイヤフラム38の外周部38bとが配置される。カバー体24の底部には、弁体収容室20に向かって突出する筒状のガイド部24dがカバー体24と一体に形成されている。
【0016】
主弁体28は、弁体収容室20内に配置され、その上端面に弁座22と当接するシール部材32を備える。主弁体28は、シール部材32が装着される上方の大径部28aと、段部28bを経て大径部28aに連なる下方の小径部28cとを有する。主弁体28には、ステム34および付加弁体30が連結されている。具体的には、主弁体28の大径部28aに設けられたステム孔28gにステム34の下部が挿入され、圧入等の手段により両者が連結される。また、付加弁体30の内側に主弁体28の小径部28cが挿入され、螺合等の手段により両者が連結される。
【0017】
ステム34は、ボデイ本体14に設けられた弁体挿通孔14eに挿通される。付加弁体30は、上方の大径部30aと、段部30bを経て大径部30aに連なる小径部30cとを有する。付加弁体30は、その小径部30cにおいて、カバー体24のガイド部24dの内側に挿通支持される。したがって、主弁体28、付加弁体30およびステム34は、一体となって、それらの軸線方向(上下方向)に変位可能となるように支持されている。付加弁体30の上端は、主弁体28の段部28bと所定の隙間を隔てて対向する。この隙間に、後述する第1ダイヤフラム36の内周部36aと第1スペーサ40と第2ダイヤフラム38の内周部38aとが配置される。なお、カバー体24のガイド部24dの内側には、後述する背圧室48の流体が回り込んでいる。
【0018】
付加弁体30の段部30bとカバー体24の底面との間に、カバー体24のガイド部24dの外周を取り巻くようにして、バルブスプリング50が配設される。バルブスプリング50は、コイルスプリングからなり、付加弁体30を上方に付勢する。付加弁体30と一体の主弁体28は、バルブスプリング50の付勢力を受けて、弁座22に当接する方向に付勢されている。
【0019】
弁体収容室20内において、弁体26とボデイ12との間に、弾性材料から薄膜状に形成される環状の第1ダイヤフラム36および第2ダイヤフラム38が配設されている。第1ダイヤフラム36の内周部36aと第2ダイヤフラム38の内周部38aとの間には、リング状の第1スペーサ40が設けられ、第1ダイヤフラム36の外周部36bと第2ダイヤフラム38の外周部38bとの間には、リング状の第2スペーサ42が設けられている。
【0020】
第1ダイヤフラム36、第1スペーサ40および第2ダイヤフラム38は、主弁体28の小径部28cに挿通される。第1ダイヤフラム36の内周部36aは、主弁体28の段部28bと第1スペーサ40の上面との間で挟持され、第2ダイヤフラム38の内周部38aは、付加弁体30の上端と第1スペーサ40の下面との間で挟持される。また、第1ダイヤフラム36の外周部36bは、ボデイ本体14の段部14dと第2スペーサ42の上面との間で挟持され、第2ダイヤフラム38の外周部38bは、カバー体24の嵌合部24aの上端と第2スペーサ42の下面との間で挟持される。
【0021】
弁体26が上下方向に変位すると、第1ダイヤフラム36の内周部36aが弁体26とともに変位し、第1ダイヤフラム36の内周部36aと外周部36bとの間の薄膜部36cが変形する。同様に、弁体26が上下方向に変位すると、第2ダイヤフラム38の内周部38aが弁体26とともに変位し、第2ダイヤフラム38の内周部38aと外周部38bとの間の薄膜部38cが変形する。
【0022】
第2スペーサ42の内周には段差部42aが設けられており、第2スペーサ42の内径は、第2ダイヤフラム38に接する下面側よりも、第1ダイヤフラム36に接する上面側の方が大きくなっている。したがって、第1ダイヤフラム36の変形領域である薄膜部36cは、第2ダイヤフラム38の変形領域である薄膜部38cよりも面積が大きく、第1ダイヤフラム36の有効受圧面積は、第2ダイヤフラム38の有効受圧面積よりも大きい。この有効受圧面積差の技術的意義については後述する。
【0023】
弁体収容室20は、第1ダイヤフラム36および第2ダイヤフラム38により、第1ダイヤフラム36の上側の弁室44、第1ダイヤフラム36と第2ダイヤフラム38との間のダイヤフラム室46、および、第2ダイヤフラム38の下側の背圧室48とに区画される。弁室44は、入力通路14aを介して入力ポート16に連通する。なお、本発明でいう「弁室」は、弁座22に近接する室であって、入力ポート16から出力ポート18まで流体が流通する通路の一部を構成する室である。
【0024】
第1スペーサ40には、径方向に貫通する複数の径孔40aが設けられている。この複数の径孔40aの一端は、ダイヤフラム室46に開口している。主弁体28には、小径部28cにおいて外周面を周回する環状溝28dと、一端が環状溝28dに繋がる複数の径孔28eと、複数の径孔28eの他端と繋がりステム孔28gに至るまで主弁体28の軸心方向に延びる軸孔28fとが設けられている。ステム34には、径方向に貫通し両端が出力通路14bに開口する径孔34a、および、該径孔34aに連通しステム34の下端まで延びる軸孔34bが設けられている。
【0025】
第1スペーサ40の径孔40aの他端は、主弁体28の環状溝28dと繋がっており、主弁体28の軸孔28fの上端は、ステム34の軸孔34bの下端と向き合っている。これら第1スペーサ40の径孔40a、主弁体28の環状溝28d、主弁体28の径孔28e、主弁体28の軸孔28f、ステム34の軸孔34bおよびステム34の径孔34aは、出力ポート18の流体の圧力をダイヤフラム室46に導入する二次圧導入通路を形成している。すなわち、ダイヤフラム室46は、二次圧導入通路および出力通路14bを介して出力ポート18に連通する。
【0026】
カバー体24の嵌合部24aには、嵌合部24aの外周面を周回する環状溝24bと、一端が環状溝24bに繋がり他端が背圧室48に開口する複数の横孔24cとが設けられている。また、ボデイ本体14には、一端がカバー体24の環状溝24bと繋がり他端が入力ポート16と繋がる連絡通路14fが設けられている。これらカバー体24の横孔24c、カバー体24の環状溝24bおよびボデイ本体14の連絡通路14fは、入力ポート16の流体の圧力を背圧室48に導入する一次圧導入通路を形成している。すなわち、背圧室48は、一次圧導入通路を介して入力ポート16に連通する。なお、一次圧導入通路は、ボデイ本体14とカバー体24の間に設けられたシール材51により、外部から気密に保持されている。
【0027】
筒状のボンネット52は、ボデイ本体14の上端部に取り付けられ、ボデイ本体14から上方に延びている。ボデイ本体14とボンネット52との間に、弾性材料から全体が薄膜に形成される環状の調圧ダイヤフラム60が配置される。調圧ダイヤフラム60の外周部60bは、ボデイ本体14の上面とボンネット52の下面との間で挟持される。調圧ダイヤフラム60の中央にベースホルダ64が挿通され、ベースホルダ64に円盤状の保持プレート66が取り付けられる。調圧ダイヤフラム60の内周部60aは、ベースホルダ64と保持プレート66との間で挟持される。
【0028】
ベースホルダ64の下部中央には凹部64aが形成されており、ボデイ本体14から突出するステム34の上端部が該凹部64aに挿入される。ステム34の上端は、凹部64aに装着されたシール材65を介してベースホルダ64に当接する。ベースホルダ64が上下方向に変位すると、調圧ダイヤフラム60における内周部60aと外周部60bとの間の領域が変形する。
【0029】
調圧ダイヤフラム60の下側には、調圧ダイヤフラム室62が設けられている。調圧ダイヤフラム室62は、ボデイ本体14に形成されたバイパス通路14gを介して出力通路14bと連通している。すなわち、調圧ダイヤフラム室62は、バイパス通路14gおよび出力通路14bを介して出力ポート18に連通する。調圧ダイヤフラム室62は、ベースホルダ64に装着された前述のシール材65により、調圧ダイヤフラム60の上方に拡がるボンネット52の内部から気密に保持される。
【0030】
ボンネット52の内部には、調圧シャフト54、調圧スプリング58および調圧スプリングシート56が配置されている。調圧シャフト54は、その軸方向中央寄りにフランジ部54aを有し、フランジ部54aの下方にねじ部54bを有する。調圧シャフト54の上端部は、ボンネット52から上方に突出し、ボンネット52の上部を覆うように設けられたハンドル68に連結されている。具体的には、有底筒状のハンドル68の底部に筒状突出部68aが形成されており、調圧シャフト54の上端部がこの筒状突出部68aに圧入等の手段により固定される。
【0031】
調圧スプリングシート56は、調圧シャフト54のフランジ部54aの下方に配置される。調圧スプリングシート56は、調圧シャフト54のフランジ部54aに当接可能な環状のプレート部56aと、プレート部56aの内周縁から軸方向に延びる筒部56bとからなる。調圧スプリングシート56の筒部56bは、調圧シャフト54のねじ部54bに螺合される。調圧スプリングシート56のプレート部56aは、その外周がスプライン等の回り止め手段によりボンネット52に連結される。したがって、調圧スプリングシート56は、その軸線回りの回転が規制されつつ、軸線方向(上下方向)に変位可能となるようにボンネット52に支持されている。
【0032】
調圧スプリング58は、コイルスプリングからなり、調圧スプリングシート56と保持プレート66との間に配置される。調圧スプリング58のばね定数は、バルブスプリング50のばね定数より大きい。作業者がハンドル68を回転させることにより、調圧シャフト54が回転すると、調圧スプリングシート56が上下方向に変位し、保持プレート66およびベースホルダ64も同方向に変位する。
【0033】
ここで、弁体26に作用する流体の圧力に基づく上下方向の力について考察する。入力ポート16における圧力すなわち一次圧をP1とし、出力ポート18における圧力すなわち二次圧をP2とする。また、第1ダイヤフラム36の有効受圧面積をSa、第2ダイヤフラム38の有効受圧面積をSb、弁座22における円形の通路面積(弁座22のシート面積)をSc、第1ダイヤフラム36の内周部36aおよび第2ダイヤフラム38の内周部38aを支持する主弁体28の小径部28cの断面積をS1とする。
【0034】
弁室44は、入力通路14aを介して入力ポート16に連通しているので、弁室44の流体の圧力は一次圧P1に等しい。ダイヤフラム室46は、二次圧導入通路および出力通路14bを介して出力ポート18に連通しているので、ダイヤフラム室46の流体の圧力は二次圧P2に等しい。背圧室48は、一次圧導入通路を介して入力ポート16に連通しているので、背圧室48の流体の圧力は一次圧P1に等しい。
【0035】
第1ダイヤフラム36は、弁室44の流体の圧力およびダイヤフラム室46の流体の圧力を受けるので、第1ダイヤフラム36に連結された弁体26は、弁室44の圧力に由来する下方への力P1×(Sa-Sc)を受けるとともに、ダイヤフラム室46の流体の圧力に由来する上方への力P2×(Sa-S1)を受ける。
【0036】
第2ダイヤフラム38は、ダイヤフラム室46の流体の圧力および背圧室48の流体の圧力を受けるので、第2ダイヤフラム38に連結された弁体26は、ダイヤフラム室46の圧力に由来する下方への力P2×(Sb-S1)を受けるとともに、背圧室48の圧力に由来する上方への力P1×Sbを受ける。また、弁体26は、出力通路14bに面する主弁体28の上面側から下方への力P2×Scを受ける。
【0037】
流体の圧力に由来して弁体26に作用する力は、以上のとおりである。上向きの力の符号を正、下向きの力の符号を負とし、それらをすべて加算して整理すると、(P1-P2)×(-Sa+Sb+Sc)となる。
【0038】
上記流体の圧力に由来して弁体26に作用する力の総和(以下「弁体作用力の総和」という)を実質的にゼロにするため、Sa-Sb=Scとする。すなわち、第1ダイヤフラム36の有効受圧面積Saと第2ダイヤフラム38の有効受圧面積Sbとの差が弁座22における通路面積Scに等しくなるように、第1ダイヤフラム36の有効受圧面積Saおよび第2ダイヤフラム38の有効受圧面積Sbを設定する。このように設定することで、一次圧P1および二次圧P2の大きさに関係なく、弁体作用力の総和を実質的にゼロとすることができる。したがって、一次圧P1および二次圧P2の一方または両方に変動があっても、動作を不安定にする力が弁体26に加わることがない。
【0039】
次に、ハンドル68による二次圧の設定および調圧機構部による調圧作用について説明する。調圧ダイヤフラム室62は、バイパス通路14gおよび出力通路14bを介して出力ポート18に連通しているので、調圧ダイヤフラム室62の流体の圧力は二次圧P2に等しい。調圧ダイヤフラム60は、調圧ダイヤフラム室62の圧力を受け、調圧ダイヤフラム60の内周部60aを支持するベースホルダ64に対して上向きの力を加える。
【0040】
一方、調圧スプリング58は、ベースホルダ64に対して下向きの力を加えているが、ベースホルダ64はステム34に当接しており、バルブスプリング50が弁体26を介してベースホルダ64に上向きの力を加えている。これら調圧スプリング58による下向きの力とバルブスプリング50による上向きの力は、ベースホルダ64の位置によって決まり、調圧スプリング58の付勢力からバルブスプリング50の付勢力を差し引いたものは、ハンドル68を回転することで調整することができる。ベースホルダ64を下方に位置させるほど、二次圧を大きな値に設定することができる。
【0041】
出力ポート18に接続された流体圧機器(図示せず)が休止状態または停止状態にあり、入力ポート16に圧力流体が供給されていないとき、主弁体28は弁座22から大きく離間している。この状態から流体圧機器の稼働が始まり、入力ポート16に流体供給源(図示せず)から流体が供給されると、該流体は、弁座22と主弁体28の間を通って出力ポート18に向かって流れる。これにより、二次圧が徐々に上昇し、調圧ダイヤフラム室62の圧力も徐々に上昇する。
【0042】
調圧ダイヤフラム室62の圧力が上昇するにつれて、ベースホルダ64が上方に変位し、入力ポート16から出力ポート18に向かって流れる流体の流量が減少する。そして、二次圧がハンドル68によって設定された圧力に到達すると、主弁体28が弁座22に当接して出力ポート18に向かう流体の流れが止まるとともに、ベースホルダ64の変位も止まる。その後も、二次圧がハンドル68によって設定された圧力を維持するように、調圧機構部による調圧作用が行われる。
【0043】
前述したように、一次圧P1および二次圧P2の一方または両方に変動があっても、弁体作用力の総和は実質的にゼロのままであって、作業者がハンドル68によって設定した所望の二次圧を維持するために必要な力のバランスが崩れることがない。したがって、安定した調圧作用が行われ、出力ポート18の圧力が所望の二次圧に維持される。
【0044】
本実施形態によれば、第1ダイヤフラム36の有効受圧面積Saと第2ダイヤフラム38の有効受圧面積Sbとの差が弁座22における通路面積Scに等しいので、一次圧または二次圧に変動があっても、安定した調圧作用が行われ、所望の二次圧が得られる。また、シール材が必要な摺動部を設けることなく、弁体26を軸線方向に変位可能に支持しているので、摺動抵抗によって動作が不安定になることがないほか、摺動による発塵もない。
【0045】
本実施形態では、ダイヤフラム室46を出力ポート18に連通し、弁室44および背圧室48を入力ポート16に連通したが、ダイヤフラム室46を入力ポート16に連通し、弁室44および背圧室48を出力ポート18に連通してもよい。その場合の弁体26に作用する力の総和は、前述の式(P1-P2)×(-Sa+Sb+Sc)においてP1とP2を入れ替えたものとなり、その値をゼロにするための条件(Sa-Sb=Sc)に変わりはないからである。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る流体制御弁80について、
図3および
図4を参照しながら説明する。流体制御弁80は、減圧弁(調圧弁)として機能するもので、ボデイ82と、ボンネット52と、それらの内部に組み込まれるバランス機構部および調圧機構部とを有する。バランス機構部は、弁体100、第1ダイヤフラム106、第2ダイヤフラム108等により構成される。ボデイ82は、ボデイ本体84と第1カバー体96と第2カバー体98とからなり、弁体100は、主弁体102と付加弁体104とからなる。なお、第1実施形態の流体制御弁10と同一または同等の構成には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
ボデイ本体84は、同一軸線上で対向して配置される入力ポート86および出力ポート88を備えている。ボデイ本体84の下部には第1カバー体96が取り付けられ、ボデイ本体84の上部には第2カバー体98が取り付けられている。ボデイ本体84の内部には、弁体100が収容される弁体収容室90が設けられ、弁体収容室90は、入力通路84aを介して入力ポート86に連通するとともに、出力通路84bを介して出力ポート88に連通している。
【0048】
ボデイ本体84には、主弁体102が挿通される開口部92aを備えた水平壁部92が設けられている。水平壁部92は、弁体収容室90内に突出し、水平壁部92の下側に出力通路84bに繋がる出力室94が形成されている。水平壁部92の開口部92a近傍の下面には、弁座92bが設けられている。第1カバー体96は、出力室94に向かって突出する筒状のガイド部96aを有し、ボデイ本体84の下部に嵌合される。出力室94の流体は、第1カバー体96のガイド部96aに設けられた貫通孔96bを介して、ガイド部96aの内側に回り込んでいる。
【0049】
第2カバー体98は、下方に突出する筒状の嵌合部98aを有し、該嵌合部98aがボデイ本体84の上部に設けられた嵌合孔84cに嵌合する。第2カバー体98の嵌合部98aの下端は、ボデイ本体84の嵌合孔84cに連なる段部84dと所定の隙間を隔てて対向する。この隙間に、後述する第1ダイヤフラム106の外周部106bと第2スペーサ112と第2ダイヤフラム108の外周部108bとが配置される。
【0050】
主弁体102は、ボデイ本体84の水平壁部92の下方に位置する第1フランジ部102a、および、水平壁部92の上方に位置する第2フランジ部102bを有する。第1フランジ部102aの上面には、弁座92bに当接するシール部材103が装着されている。主弁体102の第1フランジ部102aよりも下方の部分は、第1カバー体96のガイド部96aの内側に挿通支持される。第1フランジ部102aの下面と第1カバー体96の底面との間に、第1カバー体96のガイド部96aの外側を取り巻くようにして、バルブスプリング120が配設される。バルブスプリング120は、コイルスプリングからなり、主弁体102を上方に付勢する。
【0051】
主弁体102には付加弁体104が連結されている。具体的には、付加弁体104は、連結孔104bが設けられた大径部104aと、大径部104aから上方に延びる小径部104cとからなり、主弁体102の上部が付加弁体104の連結孔104bに挿入され、螺合等の手段により両者が連結される。付加弁体104の小径部104cは、第2カバー体98に設けられた弁体挿通孔84eに挿通され、第2カバー体98の上方に配設される調圧ダイヤフラム室62内に延びている。
【0052】
主弁体102の第2フランジ部102bの上面は、付加弁体104の大径部104aの下端と所定の隙間を隔てて対向する。この隙間に、後述する第1ダイヤフラム106の内周部106aと第1スペーサ110と第2ダイヤフラム108の内周部108aとが配置される。主弁体102および付加弁体104は、一体となって、その軸線方向(上下方向)に変位可能となるように支持されている。
【0053】
弁体収容室90内において、弁体100とボデイ82との間に、弾性材料から薄膜状に形成される環状の第1ダイヤフラム106および第2ダイヤフラム108が配設されている。第1ダイヤフラム106の内周部106aと第2ダイヤフラム108の内周部108aとの間には、リング状の第1スペーサ110が設けられ、第1ダイヤフラム106の外周部106bと第2ダイヤフラム108の外周部108bとの間には、リング状の第2スペーサ112が設けられている。
【0054】
第1ダイヤフラム106、第1スペーサ110および第2ダイヤフラム108は、主弁体102の第2フランジ部102bよりも上方の部分に挿通される。第1ダイヤフラム106の内周部106aは、主弁体102の第2フランジ部102bと第1スペーサ110の下面との間で挟持され、第2ダイヤフラム108の内周部108aは、第1スペーサ110の上面と付加弁体104の下端との間で挟持される。また、第1ダイヤフラム106の外周部106bは、ボデイ本体84の段部84dと第2スペーサ112の下面との間で挟持され、第2ダイヤフラム108の外周部108bは、第2スペーサ112の上面と第2カバー体98の嵌合部98aの下端との間で挟持される。
【0055】
弁体100が上下方向に変位すると、第1ダイヤフラム106の内周部106aが弁体100とともに変位し、第1ダイヤフラム106の内周部106aと外周部106bとの間の薄膜部106cが変形する。同様に、弁体100が上下方向に変位すると、第2ダイヤフラム108の内周部108aが弁体100とともに変位し、第2ダイヤフラム108の内周部108aと外周部108bとの間の薄膜部108cが変形する。
【0056】
第2スペーサ112の内周には段差部112aが設けられており、第2スペーサ112の内径は、第2ダイヤフラム108に接する上面側よりも、第1ダイヤフラム106に接する下面側の方が大きくなっている。したがって、第1ダイヤフラム106の変形領域である薄膜部106cは、第2ダイヤフラム108の変形領域である薄膜部108cよりも面積が大きく、第1ダイヤフラム106の有効受圧面積は、第2ダイヤフラム108の有効受圧面積よりも大きい。この有効受圧面積差の技術的意義については後述する。
【0057】
弁体収容室90は、ボデイ本体84の水平壁部92の上側において、第1ダイヤフラム106および第2ダイヤフラム108により、第1ダイヤフラム106の下側の弁室114、第1ダイヤフラム106と第2ダイヤフラム108との間のダイヤフラム室116、および、第2ダイヤフラム108の上側の背圧室118とに区画される。弁室114は、入力通路84aを介して入力ポート86に連通する。
【0058】
第1スペーサ110には、径方向に貫通する複数の径孔110aが設けられている。この複数の径孔110aの一端は、ダイヤフラム室116に開口している。主弁体102には、第2フランジ部102bよりも上方の部位において、外周面を周回する環状溝102cと、一端が環状溝102cに繋がる複数の径孔102dと、複数の径孔102dの他端と繋がり主弁体102の下端まで主弁体102の軸心方向に延びる軸孔102eとが設けられている。第1スペーサ110の径孔110aの他端は、主弁体102の環状溝102cと繋がっている。
【0059】
第1スペーサ110の径孔110a、主弁体102の環状溝102c、主弁体102の径孔102d、主弁体102の軸孔102eは、出力ポート88の流体の圧力をダイヤフラム室116に導入する二次圧導入通路を形成している。すなわち、ダイヤフラム室116は、二次圧導入通路、出力室94および出力通路84bを介して出力ポート88に連通する。
【0060】
第2カバー体98の嵌合部98aには、嵌合部98aの外周面を周回する環状溝98bと、一端が環状溝98bに繋がり他端が背圧室118に開口する複数の横孔98cとが設けられている。また、ボデイ本体84には、一端が第2カバー体98の環状溝98bと繋がり他端が入力ポート86と繋がる連絡通路84fが設けられている。これら第2カバー体98の横孔98c、第2カバー体98の環状溝98bおよびボデイ本体84の連絡通路84fは、入力ポート86の流体の圧力を背圧室118に導入する一次圧導入通路を形成している。すなわち、背圧室118は、一次圧導入通路を介して入力ポート86に連通する。
【0061】
ここで、弁体100に作用する流体の圧力に基づく上下方向の力について考察する。入力ポート86における圧力すなわち一次圧をP1とし、出力ポート88における圧力すなわち二次圧をP2とする。また、第1ダイヤフラム106の有効受圧面積をSa、第2ダイヤフラム108の有効受圧面積をSb、弁座92bにおける円形の通路面積(弁座92bのシート面積)をSc、第1ダイヤフラム106の内周部106aおよび第2ダイヤフラム108の内周部108aを支持する主弁体102の断面積をS1とする。さらに、第2カバー体98の弁体挿通孔84eの断面積、換言すれば、付加弁体104の小径部104c(弁体100の一端部)の断面積をS2とする。
【0062】
弁室114は、入力通路84aを介して入力ポート86に連通しているので、弁室114の流体の圧力は一次圧P1に等しい。ダイヤフラム室116は、二次圧導入通路、出力室94および出力通路84bを介して出力ポート88に連通しているので、ダイヤフラム室116の流体の圧力は二次圧P2に等しい。背圧室118は、一次圧導入通路を介して入力ポート86に連通しているので、背圧室118の流体の圧力は一次圧P1に等しい。調圧ダイヤフラム室62は、ボデイ本体84および第2カバー体98に設けられたバイパス通路83を介して出力ポート88に連通しているので、調圧ダイヤフラム室62の流体の圧力は二次圧P2に等しい。
【0063】
第1ダイヤフラム106は、弁室114の流体の圧力およびダイヤフラム室116の流体の圧力を受けるので、第1ダイヤフラム106に連結された弁体100は、弁室114の圧力に由来する上方への力P1×(Sa-Sc)を受けるとともに、ダイヤフラム室116の流体の圧力に由来する下方への力P2×(Sa-S1)を受ける。
【0064】
第2ダイヤフラム108は、ダイヤフラム室116の流体の圧力および背圧室118の流体の圧力を受けるので、第2ダイヤフラム108に連結された弁体100は、ダイヤフラム室116の圧力に由来する上方への力P2×(Sb-S1)を受けるとともに、背圧室118の圧力に由来する下方への力P1×(Sb-S2)を受ける。また、弁体100は、主弁体102の下端が出力室94に臨んでいるので、上方への力P2×Scを受けるほか、付加弁体104の上端が調圧ダイヤフラム室62に臨んでいるので、下方への力P2×S2を受ける。
【0065】
流体の圧力に由来して弁体100に作用する力は、以上のとおりである。上向きの力の符号を正、下向きの力の符号を負とし、それらをすべて加算して整理すると、(P1-P2)×(Sa-Sb-Sc+S2)となる。
【0066】
上記流体の圧力に由来して弁体100に作用する力の総和(以下「弁体作用力の総和」という)を実質的にゼロにするため、Sa-Sb=Sc-S2とする。すなわち、第1ダイヤフラム106の有効受圧面積Saと第2ダイヤフラム108の有効受圧面積Sbとの差が弁座92bにおける通路面積Scと調圧ダイヤフラム室62内に突出する付加弁体104の断面積S2との差に等しくなるように、第1ダイヤフラム106の有効受圧面積Saおよび第2ダイヤフラム108の有効受圧面積Sbを設定する。このように設定することで、一次圧P1および二次圧P2の大きさに関係なく、弁体作用力の総和を実質的にゼロとすることができる。したがって、一次圧P1および二次圧P2の一方または両方に変動があっても、動作を不安定にする力が弁体100に加わることがない。
【0067】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る流体制御弁130について、
図5および
図6を参照しながら説明する。流体制御弁130は、流量制御弁として機能するもので、バルブモジュール132と、アクチュエータモジュール134と、センサモジュール150と、制御モジュール158と、入口モジュール162と、出口モジュール164とからなる。なお、第1実施形態の流体制御弁10と同一または同等の構成には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0068】
バルブモジュール132は、ボデイ12の内部に組み込まれる弁体26、第1ダイヤフラム36、第2ダイヤフラム38等により構成されるバランス機構部を有する。ボデイ12は、ボデイ本体14とカバー体24とからなり、弁体26は、主弁体28と付加弁体30とステム34とからなる。
【0069】
ボデイ本体14は、同一軸線上で対向して配置される入力ポート16および出力ポート18を備えている。ボデイ本体14の下部にはカバー体24が取り付けられ、ボデイ本体14の内部には、カバー体24によって閉塞される弁体収容室20が設けられている。弁体収容室20の上部は、入力通路14aを介して入力ポート16に連通するとともに、出力通路14bを介して出力ポート18に連通している。
【0070】
ステム34の上端は、出力通路14b内に位置する。ボデイ本体14には、出力通路14bとボデイ本体14の上側の空間とを連通する孔部14hがステム34と同軸状に設けられている。後述するリニアモータのシャフト144は、この孔部14hに挿通され、ステム34の上端に当接する。
【0071】
弁体収容室20は、第1ダイヤフラム36および第2ダイヤフラム38により、第1ダイヤフラム36の上側の弁室44、第1ダイヤフラム36と第2ダイヤフラム38との間のダイヤフラム室46、および、第2ダイヤフラム38の下側の背圧室48とに区画される。弁室44は、入力通路14aを介して入力ポート16に連通する。
【0072】
第1スペーサ40の径孔40a、主弁体28の環状溝28d、主弁体28の径孔28e、主弁体28の軸孔28f、ステム34の軸孔34bおよびステム34の径孔34aは、出力ポート18の流体の圧力をダイヤフラム室46に導入する二次圧導入通路を形成している。ダイヤフラム室46は、二次圧導入通路および出力通路14bを介して出力ポート18に連通する。
【0073】
カバー体24の横孔24c、カバー体24の環状溝24bおよびボデイ本体14の連絡通路14fは、入力ポート16の流体の圧力を背圧室48に導入する一次圧導入通路を形成している。背圧室48は、一次圧導入通路を介して入力ポート16に連通する。
【0074】
弁体26に作用する流体の圧力に基づく上下方向の力は、第1実施形態の流体制御弁10の場合と同様であり、簡潔に述べると次のとおりである。入力ポート16における圧力すなわち一次圧をP1とし、出力ポート18における圧力すなわち二次圧をP2とする。また、第1ダイヤフラム36の有効受圧面積をSa、第2ダイヤフラム38の有効受圧面積をSb、弁座22における円形の通路面積(弁座22のシート面積)をScとする。流体の圧力に由来して弁体26に作用する力をすべて加算した弁体作用力の総和は、(P1-P2)×(-Sa+Sb+Sc)となる。
【0075】
上記弁体作用力の総和を実質的にゼロにするため、Sa-Sb=Scとする。すなわち、第1ダイヤフラム36の有効受圧面積Saと第2ダイヤフラム38の有効受圧面積Sbとの差が弁座22における通路面積Scに等しくなるように、第1ダイヤフラム36の有効受圧面積Saおよび第2ダイヤフラム38の有効受圧面積Sbを設定する。このように設定することで、一次圧P1および二次圧P2の大きさに関係なく、弁体作用力の総和を実質的にゼロとすることができる。したがって、一次圧P1および二次圧P2の一方または両方に変動があっても、動作を不安定にする力が弁体26に加わることがない。
【0076】
アクチュエータモジュール134は、バルブモジュール132の上側に配設され、リニアモータを構成する。リニアモータの固定子は、バルブモジュール132のボデイ12に取り付けられるアウタヨーク136と、アウタヨーク136の内側に固定される電磁コイル138とを含む。
【0077】
リニアモータの可動子は、センタヨーク140と一対の永久磁石142a、142bがシャフト144に固定されてなるもので、軸方向(上下方向)に着磁された一対の永久磁石142a、142bは、センタヨーク140を間に挟んで同極が対向するように配置されている。電磁コイル138に駆動電流が流れると、駆動電流の向きに応じて永久磁石142a、142bおよびセンタヨーク140に上方向または下方向の推力が発生する。この推力の大きさは、駆動電流の大きさに比例する。
【0078】
可動子の上方には、ホール素子、磁気抵抗素子等からなる位置センサ146が配設されている。可動子の位置は、位置センサ146によって検出され、該検出信号は制御モジュール158に送られる。可動子の下方には、ホールドヨーク148が配設されており、電磁コイル138の非通電時においても、下方の永久磁石142aとホールドヨーク148との間には吸引力が作用する。これにより、シャフト144の下端がステム34に当接した状態が維持される。
【0079】
センサモジュール150は、バルブモジュール132の入力ポート16に取り付けられる。センサモジュール150には、バルブモジュール132の入力ポート16に繋がる主流路152と、主流路152から分岐する副流路154と、副流路154に臨む流量センサ156とが設けられている。流量センサ156は、主流路152を流れる流体の流量を検出し、該検出信号は制御モジュール158に送られる。
【0080】
入口モジュール162は、センサモジュール150の主流路152の上流側に取り付けられ、出口モジュール164は、バルブモジュール132の出力ポート18側に取り付けられる。図示しない圧力供給源から入口モジュール162に供給された流体は、センサモジュール150の主流路152を通って、バルブモジュール132の入力ポート16に供給され、バルブモジュール132の出力ポート18から出力される流体は、出口モジュール164を通って、図示しない流体機器に向けて出力される。入力ポート16から出力ポート18に向かう流体の流量は、前記流量センサ156によって検出されることになる。
【0081】
制御モジュール158は、制御基板160を含み、流量センサ156の検出信号および位置センサ146の検出信号に基づいて、電磁コイル138に対する通電量をフィードバック制御する。具体的には、まず、流量センサ156の検出信号に基づく実流量値を目標流量値と比較して、目標弁開度(弁体の目標位置)を算出する。次に、位置センサ146に基づく実弁開度を該目標弁開度と比較して、電磁コイル138に対する通電量を算出し、電磁コイル138に所定の駆動電流を流すための駆動信号を出力する。
【0082】
前述のとおり、一次圧P1および二次圧P2の一方または両方に変動があっても、動作を不安定にする力が弁体26に加わることがないので、リニアモータの電磁コイル138に対する通電制御は、いわば外乱による影響のない安定したものとなる。したがって、電磁コイル138での発熱を可及的に抑制することができる。
【0083】
本実施形態によれば、第1ダイヤフラム36の有効受圧面積Saと第2ダイヤフラム38の有効受圧面積Sbとの差が弁座22における通路面積Scに等しいので、一次圧または二次圧に変動があっても、動作を不安定にする力が弁体26に加わることがないので、リニアモータの電磁コイル138での発熱を可及的に抑制することができる。
【0084】
本発明に係る流体制御弁は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0085】
10、80、130…流体制御弁 12、82…ボデイ
16、86…入力ポート 18、88…出力ポート
22、92b…弁座 26、100…弁体
34…ステム 36、106…第1ダイヤフラム
38、108…第2ダイヤフラム
40、110…第1スペーサ(スペーサ)
42、112…第2スペーサ(スペーサ)
42a、112a…段差部 44、114…弁室
46、116…ダイヤフラム室 48、118…背圧室
58…調圧スプリング 60…調圧ダイヤフラム
62…調圧ダイヤフラム室 64…ベースホルダ
66…保持プレート