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  • 特許-コンデンサ用途に好適なフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】コンデンサ用途に好適なフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241106BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20241106BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20241106BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08J5/18 CET
C08L25/04
C08L71/12
B32B15/082 Z
H01G4/32 511L
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021071060
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165638
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末井 匠
(72)【発明者】
【氏名】池田 一雄
(72)【発明者】
【氏名】石渡 忠和
(72)【発明者】
【氏名】松葉 豪
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/070863(WO,A1)
【文献】特開2014-088530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08J、B32B、H01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムであって、
前記フィルムは、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び非晶性ポリスチレン系樹脂を含有する層を有し、
前記樹脂以外の他の樹脂の含有率が0質量%以上5質量%以下であり、且つ
前記フィルムの広角X線散乱プロフィール(プロフィール1)の4.9nm-1付近にピークを有する、
フィルム。
【請求項2】
前記フィルムのTD方向の広角X線散乱プロフィール(プロフィール2)の4.9nm-1付近にピークを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記プロフィール1の8.5nm-1付近にピークを有する、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記プロフィール1の9.9nm-1付近にピークを有する、請求項1~3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィルム中の前記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の含有率が62質量%以上93質量%以下である、請求項1~4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルム中の前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有率が6質量%以上27質量%以下である、請求項1~5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルム中の前記非晶性ポリスチレン系樹脂の含有率が1質量%以上11質量%以下である、請求項1~6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
前記非晶性ポリスチレン系樹脂がアタクチックポリスチレン系樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
前記非晶性ポリスチレン系樹脂がアタクチックポリスチレン系樹脂である、請求項1~8のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
二軸延伸フィルムである、請求項1~9のいずれかに記載のフィルム。
【請求項11】
単層フィルムである、請求項1~10のいずれかに記載のフィルム。
【請求項12】
厚みが20μm以下である、請求項1~11のいずれかに記載のフィルム。
【請求項13】
コンデンサ用である、請求項1~12のいずれかに記載のフィルム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載のフィルムと、前記フィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する、金属層一体型フィルム。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載のフィルム又は請求項14に記載の金属層一体型フィルムを含む、コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム等に関する。特にコンデンサ用途に好適なフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器、電気機器等において、例えば高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、コンバータ及びインバータ等のフィルタ用コンデンサ及び平滑用コンデンサ等として、樹脂フィルムを利用したコンデンサが使用されている。樹脂フィルムコンデンサは、近年需要が高まっている電気自動車及びハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバータやコンバータにも利用されている。
【0003】
コンデンサ、特に自動車用コンデンサは、高温環境で使用される場面が増えている。例えば、自動車の駆動モーターを制御する機器(インバータ、コンバータ等)においては、最近、耐熱性の高い半導体(シリコンカーバイド半導体等)の利用が増加しており、これに伴い、これらの機器に利用されるコンデンサにもより高い耐熱性が求められている。このため、耐熱性が高い樹脂フィルムの1つとして、シンジオタクチックポリスチレンを含む樹脂フィルムが利用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/080356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は研究を進める中で、耐熱性の中でも、特に、高温下での絶縁破壊強さに着目した。また、コンデンサ用フィルムとしての信頼性の観点から、一定以上の絶縁性が必要である。しかしながら、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂を含むフィルムは、高温下での絶縁破壊強さ及び絶縁性に劣るものであった。
【0006】
本発明は、高温下での絶縁破壊強さ及び絶縁性がより高いフィルム、を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は研究を進める中で、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂と共に配合する樹脂の種類と、フィルムの広角X線散乱プロフィールを調整することにより、高温下での絶縁破壊強さ及び絶縁性を一定のレベル以上にできることを見出した。本発明者は引続き鋭意研究を行った結果、フィルムであって、前記フィルムは、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び非晶性ポリスチレン系樹脂を含有する層を有し、且つ前記フィルムの広角X線散乱プロフィール(プロフィール1)の4.9nm-1付近にピークを有する、フィルム、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者は、この知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. フィルムであって、
前記フィルムは、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び非晶性ポリスチレン系樹脂を含有する層を有し、且つ
前記フィルムの広角X線散乱プロフィール(プロフィール1)の4.9nm-1付近にピークを有する、
フィルム。
【0009】
項2. 前記フィルムのTD方向の広角X線散乱プロフィール(プロフィール2)の4.9nm-1付近にピークを有する、項1に記載のフィルム。
【0010】
項3. 前記プロフィール1の8.5nm-1付近にピークを有する、項1又は2に記載のフィルム。
【0011】
項4. 前記プロフィール1の9.9nm-1付近にピークを有する、項1~3のいずれかに記載のフィルム。
【0012】
項5. 前記フィルム中の前記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の含有率が62質量%以上93質量%以下である、項1~4のいずれかに記載のフィルム。
【0013】
項6. 前記フィルム中の前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有率が6質量%以上27質量%以下である、項1~5のいずれかに記載のフィルム。
【0014】
項7. 前記フィルム中の前記非晶性ポリスチレン系樹脂の含有率が1質量%以上11質量%以下である、項1~6のいずれかに記載のフィルム。
【0015】
項8. 前記非晶性ポリスチレン系樹脂がアタクチックポリスチレン系樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~7のいずれかに記載のフィルム。
【0016】
項9. 前記非晶性ポリスチレン系樹脂がアタクチックポリスチレン系樹脂である、項1~8のいずれかに記載のフィルム。
【0017】
項10. 二軸延伸フィルムである、項1~9のいずれかに記載のフィルム。
【0018】
項11. 単層フィルムである、項1~10のいずれかに記載のフィルム。
【0019】
項12. 厚みが20μm以下である、項1~11のいずれかに記載のフィルム。
【0020】
項13. コンデンサ用である、項1~12のいずれかに記載のフィルム。
【0021】
項14. 項1~13のいずれかに記載のフィルムと、前記フィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する、金属層一体型フィルム。
【0022】
項15. 項1~13のいずれかに記載のフィルム又は項14に記載の金属層一体型フィルムを含む、コンデンサ。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】WAXS測定の説明図である。
図2】実施例及び比較例の二軸延伸フィルムについて、広角X線散乱プロフィール(プロフィール1)を示す。
図3】実施例及び比較例の二軸延伸フィルムについて、TD方向の広角X線散乱プロフィール(プロフィール2)を示す。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高温下での絶縁破壊強さ及び絶縁性がより高いフィルム、を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0026】
本発明のフィルム中の各成分の含有率は、使用される各原料中の成分の含有率が既知の場合は、該含有率及び原料の配合割合から算出される。成分の含有率が不明な原料を使用する場合は、実施例の「(1-1)二軸延伸フィルム中の各成分の含有率の測定及び算出」に記載の方法により原料中の各成分の含有率を測定し、該含有率及び原料の配合割合から、本発明のフィルム中の各成分の含有率が算出される。原料の含有割合が不明の場合は、実施例の「(1-1)二軸延伸フィルム中の各成分の含有率の測定及び算出」に記載の方法により、本発明のフィルム中の各成分の含有率が算出される。
【0027】
1.フィルム
本発明は、その一態様において、フィルムであって、前記フィルムは、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び非晶性ポリスチレン系樹脂を含有する層を有し、且つ前記フィルムの広角X線散乱プロフィール(プロフィール1)の4.9nm-1付近にピークを有する、フィルム(本明細書において、「本発明のフィルム」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0028】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂である限り特に制限されない。シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造であること、すなわち炭素-炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有することを意味する。通常、タクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C-NMR法)により定量され、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッド等によって示すことができる。
【0029】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は、例えば、ラセミダイアッドで、例えば75%以上、好ましくは85%以上のシンジオタクティシティーを有する。また、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は、例えば、ラセミペンタッドで、例えば30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有する。
【0030】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂として、具体的には、例えばポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体及びこれらの混合物、あるいはこれらを主成分とする共重合体等が挙げられる。
【0031】
ポリ(アルキルスチレン)としては、例えばポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)等が挙げられる。ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、例えばポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、例えばポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。ポリ(アルコキシスチレン)としては、例えばポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも特に好ましいシンジオタクチックポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(m-メチルスチレン)、ポリ(p-ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリ(m-クロロスチレン)、ポリ(p-フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びスチレンとp-メチルスチレンとの共重合体のようなスチレン-アルキルスチレン共重合体等が挙げられる。
【0033】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の分子量については、特に制限されない。例えば質量平均分子量(重量平均分子量)は、例えば1万以上300万以下、好ましくは5万以上100万以下、より好ましくは10万以上50万以下である。なお、質量平均分子量は、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒とし、135℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定される値である。
【0034】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の融点は、特に制限されない。該融点は、例えば200℃以上320℃以下、好ましくは220以上280℃以下である。なお、融点は、JIS K7121:2012に従って測定される融解ピーク温度である。
【0035】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は市販品として入手することもできるし、公知の方法によって製造することもできる。シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は例えば、出光興産(株)社製「ザレック」(142ZE、300ZC、130ZC、90ZC)等として入手できる。
【0036】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は、1種単独で使用することができ、又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0037】
本発明のフィルム中のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の含有率は、特に制限されない。シンジオタクチックポリスチレン系樹脂は、本発明のフィルム中の含有率が最も高い成分であることが好ましい。本発明のフィルム中のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の含有率は、高温下での絶縁破壊強さ、絶縁性等の観点から、好ましくは62質量%以上93質量%以下、より好ましくは63質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは63質量%以上87質量%以下、よりさらに好ましくは65.5質量%以上83質量%以下、とりわけ好ましくは65.5質量%以上79質量%以下、とりわけより好ましくは67質量%以上73質量%以下である。
【0038】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、特に制限されず、代表的には下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリマーである。ポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種の構造単位の繰返しからなるものであってもよいし、2種以上の構造単位の繰返しを含むものであってもよい。:
【0039】
【化1】
[式中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルキルアラルキル基、又は置換されていてもよいアルコキシ基を示す。]
ハロゲン原子としては、特に制限は無く、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0040】
アルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状、より好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含される。該アルキル基(直鎖状又は分枝鎖状の場合)の炭素数は、特に制限されず、例えば1~8である。該炭素数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、よりさらに好ましくは1である。該アルキル基(環状の場合)の炭素数は、特に制限されず、例えば3~7、好ましくは4~6である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
【0041】
アルケニル基には、直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含される。該アルケニル基の炭素数は、特に制限されず、例えば2~8である。該炭素数は、好ましくは2~4である。該アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
【0042】
アルキニル基には、直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含される。該アルケニル基の炭素数は、特に制限されず、例えば2~8である。該炭素数は、好ましくは2~4である。該アルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロピニル基(例えば1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基))、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0043】
アリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでもあり得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0044】
アラルキル基は、特に制限されないが、例えば上記アルキル基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が上記アリール基に置換されてなるアラルキル基等が挙げられる。該アラルキル基としては、具体的には、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0045】
アルキルアリール基は、特に制限されないが、例えば上記アリール基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、上記アルキル基に置換されてなるアルキルアリール基等が挙げられる。該アルキルアリール基としては、具体的には、例えばトリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0046】
アルキルアラルキル基は、特に制限されないが、例えば上記アラルキル基の芳香環上の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、上記アルキル基に置換されてなるアルキルアラルキル基等が挙げられる。
【0047】
アルコキシ基としては、特に制限はなく、直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~8、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、よりさらに好ましく1のアルコキシ基が挙げられる。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。
【0048】
上記したアルキル基、アルケニル基、アルキニル記、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール記、アルキルアラルキル基、アルコキシ基等の置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基等が挙げられる。置換基の数は、特に制限されず、例えば0~3、好ましくは0~1、より好ましくは0である。
【0049】
本発明の好ましい一態様において、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又は置換されていてもよいアルキル基(好ましくは無置換アルキル基)である。また、R及びRは水素原子であることが好ましく、R及びRは水素原子以外の基であることが好ましい。
【0050】
ポリフェニレンエーテル系樹脂として、具体的には、例えばポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2、3、6-トリメチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエ-テル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエ-テル)等のホモポリマー、及び、これらの共重合体を挙げることができる。また、これらを無水マレイン酸,フマル酸等の変性剤で変性したものも好適に用いられる。さらに、スチレン等のビニル芳香族化合物を上記ポリフェニレンエ-テルにグラフト共重合またはブロック共重合した共重合体も用いられる。これらのなかで、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエ-テル)が特に好ましい。
【0051】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の数平均分子量は、特に制限はないが、押出成形性や連続延伸性の観点から、1~10万が好ましく、1.5万~5万がより好ましい。該数平均分子量は、GPS法で測定された分子量の値をポリスチレンの値に換算して求める。
【0052】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は市販品として入手することもできるし、公知の方法によって製造することもできる。ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製の商品名ユピエース(登録商標)シリーズ(例えば、ユピエース(登録商標)PX100L、PX100F)や、旭化成(株)社製の商品名ザイロン(登録商標)シリーズ(例えば、ザイロン(登録商標)S201A)等を好適に使用できる。
【0053】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種単独で使用することができ、又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0054】
本発明のフィルム中のポリフェニレンエーテル系樹脂の含有率は、特に制限されない。該含有率は、広角X線散乱プロフィールにおける4.9nm-1付近、8.5nm-1付近、9.9nm-1付近ピーク高さを向上し、高温下での絶縁破壊強さ、絶縁性(体積抵抗率)を向上させる観点から、好ましくは6質量%以上27質量%以下、より好ましくは6質量%以上26質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上26質量%以下、よりさらに好ましくは15質量%以上26質量%以下であり、とりわけ好ましくは15質量%以上24質量%以下であり、とりわけより好ましくは17質量%以上24質量%以下である。
【0055】
非晶性ポリスチレン系樹脂は、スチレンモノマー単位を含み且つ非晶性のものであれば特に制限されず、公知のものを用いることができる。非晶性ポリスチレン系樹脂としては、例えばアタクチックポリスチレン系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0056】
アタクチックポリスチレン系樹脂としては、アタクチック構造のポリスチレンを主鎖とする非晶性樹脂である限り、特に制限されない。アタクチックポリスチレン系樹脂としては、主鎖を構成する構成単位の90%以上、より好ましくは95%以上が、スチレンおよび/又は芳香環に置換基を有するスチレンであることが好ましい。
【0057】
アタクチック構造とは、炭素-炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が、ランダムな立体構造を有することを意味する。通常、タクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C-NMR法)により定量され、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッド等によって示すことができる。アタクチックポリスチレン系樹脂は、例えば、ラセミダイアッドで、例えば75%未満、好ましくは65%以下のシンジオタクティシティーを有する。また、アタクチックポリスチレン系樹脂は、例えば、ラセミペンタッドで、例えば30%未満、好ましくは25%以下のシンジオタクティシティーを有する。
【0058】
アタクチックポリスチレン系樹脂として、具体的には、例えばポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、及びこれらの混合物、あるいはこれらを主成分とする共重合体等が挙げられる。
【0059】
ポリ(アルキルスチレン)としては、例えばポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)等が挙げられる。ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、例えばポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、例えばポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。ポリ(アルコキシスチレン)としては、例えばポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
【0060】
これらの中でも特に好ましいアタクチックポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(m-メチルスチレン)、ポリ(p-ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリ(m-クロロスチレン)、ポリ(p-フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びスチレンとp-メチルスチレンとの共重合体のようなスチレン-アルキルスチレン共重合体等が挙げられる。
【0061】
アタクチックポリスチレン系樹脂のメルトマスフローレートは、特に制限されず、例えば0.5~20g/10分である。該メルトマスフローレートは、好ましくは2~15g/10分、より好ましくは4~12g/10分、さらに好ましくは6~9g/10分である。なお、該メルトマスフローレートは、ISO1133(条件:200℃、荷重5kg f、試験片はペレット)に従って測定される。
【0062】
アタクチックポリスチレン系樹脂は市販品として入手することもできるし、公知の方法によって製造することもできる。アタクチックポリスチレン系樹脂の市販品としては、一般に汎用ポリスチレン(GPPS)と呼ばれる樹脂が好適に使用でき、例えば、PSジャパン(株)社製「PSJ-ポリスチレン GPPS」(HF77、679、SGP10等)等として入手できる。
【0063】
アタクチックポリスチレン系樹脂は、1種単独で使用することができ、又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0064】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、通常、ハードセグメントとなるスチレンモノマー重合体ブロック(Hb)と、ソフトセグメントとなる共役ジエン化合物重合体ブロック又はその水添ブロック(Sb)とを有する。このスチレン系熱可塑性エラストマーの構造としては、Hb-Sbで表されるジブロック構造、Hb-Sb-Hb若しくはSb-Hb-Sbで表されるトリブロック構造、Hb-Sb-Hb-Sbで表されるテトラブロック構造、又はHbとSbとが計5個以上直鎖状に結合しているポリブロック構造であってもよい。
【0065】
スチレンモノマー重合体ブロック(Hb)に使用されるスチレン系モノマーとしては、特に限定されるものではなく、スチレン及びその誘導体等を挙げることができる。具体的には、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、t-ブトキシスチレン等のスチレン類、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類などのビニル基含有芳香族化合物;インデン、アセナフチレン等のビニレン基含有芳香族化合物などを挙げることができる。これらの中でも、スチレンが好ましい。スチレン系モノマーは1種のみでもよく、2種以上であってもよい。
【0066】
また、共役ジエン化合物重合体ブロック(Sb)に使用される共役ジエン化合物も、特に限定されるものではない。このような共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等を挙げることができる。これらの中でも、ブタジエンが好ましい。共役ジエン化合物は1種のみでも良く、2種以上であってもよい。さらに、他の共単量体、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレンを共重合することもできる。また、共役ジエン化合物重合体ブロック(Sb)は、部分的又は完全に水素添加されている水素添加体であってもよい。
【0067】
スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体(SB)、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SB/IS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体(SBS)並びにその水素添加体が挙げられる。水素添加体としては、例えばスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBBS)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは水素添加体が挙げられ、中でもSEBSが特に好ましい。
【0068】
スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレンモノマー重合体ブロック単位(Hb)の含有率は、特に制限されないが、例えば5質量%以上80質量%以下であり、好ましくは25質量%以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは35質量%以上60質量%以下である。
【0069】
スチレン系熱可塑性エラストマー中の共役ジエン化合物重合体ブロック及び/又はその水添ブロック(Sb)(好ましくは、エチレン-ブチレン)の含有率は、特に制限されないが、例えば20質量%以上95質量%以下であり、好ましくは20質量%以上75質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上65質量%以下である。
【0070】
スチレン系熱可塑性エラストマーのメルトマスフローレートは、特に制限されず、例えば0.5~15g/10分である。該メルトマスフローレートは、好ましくは1~10g/10分、より好ましくは1.5~5g/10分、さらに好ましくは2~4g/10分である。なお、該メルトマスフローレートは、JIS K 7210:1999(条件:230℃、荷重2.16kg)に従って測定される。
【0071】
スチレン系熱可塑性エラストマーは市販品として入手することもできるし、公知の方法によって製造することもできる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば旭化成(株)社製の商品名タフテック(登録商標)シリーズ(例えばH1517等)、(株)クラレ社製のセプトン(登録商標)シリーズ(例えば8000シリーズ)等を好適に使用できる。
【0072】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、1種単独で使用することができ、又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0073】
非晶性ポリスチレン系樹脂は、1種単独で使用することができ、又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0074】
非晶性ポリスチレン系樹脂の含有量は、特に制限されるものではないが、該樹脂は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂よりも(好ましくは、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂それぞれよりも)、本発明のフィルム中の含有率が低いことが好ましい。
【0075】
本発明のフィルム中の非晶性ポリスチレン系樹脂の含有率は、特に制限されない。該含有率は、広角X線散乱プロフィールにおける4.9nm-1付近、8.5nm-1付近、9.9nm-1付近ピーク高さを向上し、高温下での絶縁破壊強さ、絶縁性(体積抵抗率)を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上11質量%以下、より好ましくは2質量%以上11質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上11質量%以下、よりさらに好ましくは4質量%以上11質量%以下、とりわけ好ましくは5質量%以上11質量%以下、とりわけより好ましくは6質量%以上10.5質量%以下、とりわけさらに好ましくは6.5質量%以上10.0質量%以下、とりわけよりさらに好ましくは7質量%以上9.5質量%以下である。
【0076】
本発明のフィルムの広角X線散乱プロフィール(プロフィール1)においては、4.9nm-1付近にピークを有する。プロフィール1においては、高温下での絶縁破壊強さ、絶縁性等の観点から、8.5nm-1付近及び/又は9.9nm-1付近にピークを有することが好ましく、8.5nm-1付近及び9.9nm-1付近にピークを有することが好ましい。
【0077】
高温下での絶縁破壊強さ、絶縁性等の観点から、本発明のフィルムのTD方向の広角X線散乱プロフィール(プロフィール2)においては、4.9nm-1付近にピークを有することが好ましい。また、同様の観点から、プロフィー2においては、8.5nm-1付近及び/又は9.9nm-1付近にピークを有することが好ましく、8.5nm-1付近及び9.9nm-1付近にピークを有することが好ましい。
【0078】
広角X線測定で示されるこれらピークは、Polymer,Vol.135(2018年)103~110ページ等を参考資料として、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂のα晶に由来すると推測される。
【0079】
プロフィール1及びプロフィール2における上記各ピークの有無は、以下のようにして判定される。
【0080】
WAXS測定
WAXS測定は、株式会社リガク製X線散乱測定装置NANO-Viewerを使用して行う(図1)。フィルムから2つの方向(任意の方向(方向1)と方向1に直交する方向(方向2))(二軸延伸フィルムの場合は、方向1がMD方向であり、方向2がTD方向)がわかるようにサンプルを切り出し、方向1を縦方向、方向2を横方向としてサンプルセル部分にセットし、下記条件で測定を実施する。なお、サンプルの厚みが8μm未満の場合は、サンプルの方向(方向1、方向2)を揃えた上で重ねて、合計で8~20μmの厚みとしてサンプルをセットする。
検出器: 二次元検出器 PILATUS-100K
試料-検出器間距離: 72.67mm
波長(λ): 0.154nm (CuKα線)
電流強度: 40kV、30mA
使用モード: NANO-Viewerの拡張モード
測定位置: セットしたサンプルの任意の3か所
露光時間: 任意の3か所につき各600秒
波数(q)領域: 2~20[nm-1]。
【0081】
上記WAXS測定で得られた二次元散乱像について、欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)製データ解析プログラムFIT2Dを用いて以下のデータ処理を行う。
【0082】
広角X線散乱プロフィール
WAXS測定で得られた二次元散乱像について、円環平均を計算しデータを一次元化して得られたWAXSプロフィールに対し、検出器の暗電流補正、空セル散乱補正として、サンプルをセットしない以外は同様に測定および計算した値に0.8を乗じたものを差し引き、一次元の広角X線散乱プロフィール(プロフィール1)を得る。なおプロフィールの横軸は波数q(nm-1)である。
【0083】
TD方向の広角X線散乱プロフィール
WAXS測定で得られた二次元散乱像について、X軸の正の方向を0°として150~210°の領域を切り出してセクター平均を計算しデータを一次元化する。得られたWAXSプロフィールに対し、検出器の暗電流補正、空セル散乱補正として、サンプルをセットしない以外は同様に測定および計算した値に0.8を乗じたものを差し引き、一次元のTD方向の広角X線散乱プロフィール(プロフィール2)を得る。
【0084】
ピーク高さ
プロフィール1及びプロフィール2それぞれにおける、4.9nm-1付近、8.5nm-1付近、及び9.9nm-1付近それぞれのピークの有無を、次のようにして判定する。
【0085】
下記(2)、(3)、(4)を測定値より抽出する。
(2) 4.9±0.3nm-1の範囲の測定値で最大の値
(3) 8.5±0.3nm-1の範囲の測定値で最大の値
(5) 9.9±0.3nm-1の範囲の測定値で最大の値
下記(1)、(4)を、下記値を挟む直近の2点の測定値の平均値として算出する。
(1) 4.5nm-1の値
(4) 9.3nm-1の値
下記計算式にてピーク高さを算出する。
4.9nm-1付近 :上記(2)-(1)
8.5nm-1付近 :上記(3)-(4)
9.9nm-1付近 :上記(5)-(4)。
【0086】
(評価基準)
プロフィール1について、
ピーク高さが6以上にてピークを有すると判定する。ピーク高さは8以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上が特に好ましく、17以上がさらに好ましい。
【0087】
プロフィール2について、
ピーク高さが10以上にてピークを有すると判定する。ピーク高さは13以上が好ましく、15以上がより好ましく、19以上が特に好ましい。22以上がさらに好ましい。
【0088】
ピーク高さを上述の値以上になるようにフィルムを製造することで、絶縁破壊強さや絶縁性(体積抵抗率)が向上し、好ましい。ピーク高さは、前述の樹脂混合比率や延伸温度等の調整により、フィルム中に生ずるシンジオタクチックポリスチレンの結晶の状態を変化させることで調節される。
【0089】
本発明のフィルムは、上記成分以外に、その他の樹脂、添加剤等を含有することができる。
【0090】
その他の樹脂としては、特に制限されない。本発明のフィルムがその他の樹脂を含有する場合、他の樹脂の含有率は、例えば10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下である。他の樹脂としては例えば、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0091】
添加剤としては、特に制限されず、例えば樹脂フィルム(特にコンデンサ用樹脂フィルム)に配合され得る成分、具体的には、例えば酸化防止剤、塩素吸収剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、着色剤、無機粒子等が挙げられる。本発明のフィルムが添加剤を含有する場合、本発明のフィルム中の前記添加剤の含有率は、例えば10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下である。 本発明のフィルムは、樹脂組成物であって、前記樹脂組成物は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び非晶性ポリスチレン系樹脂を含有する、樹脂組成物(本明細書において、「本発明の樹脂組成物」と示すこともある。)をフィルム状に成形する工程を含む方法によって、製造することができる。例えば本発明の樹脂組成物をフィルム状に押出し成形し(これにより得られた本発明のフィルムを、「本発明の未延伸フィルム」と示すこともある。)、本発明の未延伸フィルムを二軸延伸することにより(これにより得られた本発明のフィルムを、「本発明の二軸延伸フィルム」と示すこともある。)、本発明のフィルムを得ることができる。以下に、製造方法の詳細について説明する。広角X線散乱プロフィールの上記ピークは、製造条件の中でも、特に、樹脂組成、縦延伸温度、横延伸温度、横延伸後の熱固定温度等を調節することにより、得ることができる。
【0092】
本発明の樹脂組成物の組成は、上記本発明のフィルムと同様である。
【0093】
本発明の樹脂組成物の状態は特に制限されない。本発明の樹脂組成物の状態としては、例えば固体状(例えば樹脂塊(なお、大きさは特に制限されず、ペレットや粉末も包含する)の集合物)、液体状(例えば各成分の溶融混合物)等が挙げられる。
【0094】
本発明の樹脂組成物は、成分の一部又は全部を溶融状態でブレンドしてなるブレンド樹脂(ポリマーアロイも包含する)を含むことが好ましい。
【0095】
本発明の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含むブレンド樹脂として変性ポリフェニレンエーテルを含有することが好ましい。変性ポリフェニレンエーテルとは、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、他の樹脂とを、溶融混錬(ポリマーアロイ化)した樹脂である。変性ポリフェニレンエーテルは、溶融流動性や押出成形性に優れるため好ましい。
【0096】
ここで変性ポリフェニレンエーテルを構成する他の樹脂としては、例えばポリスチレン系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリスチレン系樹脂(好ましくは非晶質ポリスチレン系樹脂、より好ましくはアタクチックポリスチレン系樹脂および/又はスチレン系熱可塑性エラストマー)が好ましい。
【0097】
変性ポリフェニレンエーテルを構成する各樹脂の構成比は特に制限されず、樹脂の種類に応じて適宜調整することができる。変性ポリフェニレンエーテル中のポリフェニレンエーテル系樹脂の含有率は、例えば40質量%以上95質量%以下、好ましくは50質量%以上90質量%以下、より好ましくは60質量%以上85質量%以下、さらに好ましくは65質量%以上80質量%以下、よりさらに好ましくは65質量%以上75質量%以下であり、変性ポリフェニレンエーテル中の他の樹脂の含有率は、例えば5質量%以上60質量%以下、好ましくは10質量%以上50質量%以下、より好ましくは15質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上35質量%以下、よりさらに好ましくは25質量%以上35質量%以下である。
【0098】
変性ポリフェニレンエーテルは、市販品として入手することもできるし、公知の方法によって製造することもできる。市販品としては、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製の商品名ユピエース(登録商標)シリーズ(例えば、ユピエース(登録商標)AH91)、旭化成(株)社製の商品名ザイロン(登録商標)シリーズ(例えば、ザイロン(登録商標)1000H)、SHPPジャパン合同会社製の商品名ノリル(登録商標)シリーズ等が好適に使用できる。
【0099】
変性ポリフェニレンエーテルは、1種単独で使用することができ、又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0100】
変性ポリフェニレンエーテルの含有量は、最終的に本発明の樹脂組成物中の各成分の含有量が所定量になる限り、特に制限されない。本発明の樹脂組成物中の変性ポリフェニレンエーテルの含有率は、例えば5質量%以上38質量%以下、好ましくは8質量%以上35質量%以下、より好ましくは15質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上35質量%以下である。
【0101】
ブレンド樹脂は、各成分を溶融混錬することにより得ることができる。溶融混錬の方法としては、一軸スクリュータイプ、二軸スクリュータイプあるいは、それ以上の多軸スクリュータイプの溶融混錬機等が使用可能であるが、なかでも二軸スクリュータイプの溶融混錬機が、混錬性が良いため好適に用いられる。二軸スクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプも使用可能だが、樹脂劣化抑制の観点からは同方向回転が好ましい。スクリューの直径と長さの比(L/D)は、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、さらに好ましくは28以上である。L/Dに上限は無いが、樹脂劣化抑制の観点からは100以下、好ましくは80以下である。
【0102】
溶融混錬時の温度は、樹脂劣化の抑制と分散性の兼ね合いから、250℃~350℃が好ましく、280℃~330℃がより好ましい。溶融混錬の際、樹脂の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージすることが好ましい。
【0103】
本発明の樹脂組成物を押出し成形する方法としては、特に制限されず、公知の押出し成形方法を採用することができる。例えば、押出機へ供給した固体状の本発明の樹脂組成物を、加熱により溶融状態とし、フィルターでろ過した後、Tダイを用いてフィルム状に押出し、所定の表面温度に設定した冷却ロールに接触固化させて成形する方法が挙げられる。フィルム状に成形した後、巻芯の周囲に巻き取ることにより、本発明の未延伸フィルムを、巻取体とすることができる。
【0104】
本発明の樹脂組成物は、溶融前に、混合されていることが好ましい。混合する方法としては、特に制限はないが、複数種の樹脂塊(ペレット等)を、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法等が挙げられる。
【0105】
本発明の樹脂組成物は、溶融前に、乾燥させることが好ましい。乾燥条件は、特に制限されない。乾燥温度は、特に制限されないが、例えば70~150℃、好ましくは80~130℃である。乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜調整することができ、例えば2~50時間、好ましくは3~20時間である。乾燥後の水分含有率は、例えば1~200ppm、好ましくは5~100ppmである。
【0106】
本発明の樹脂組成物の溶融は、通常、押出機で行われる。押出機としては、例えば1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、3軸以上の多軸スクリュータイプが挙げられる。2軸以上の場合、スクリュー回転のタイプとしては、例えば同方向回転、異方向回転等が挙げられる。溶融温度は、好ましくは280~320℃、好ましくは285~315℃、より好ましくは290~310℃である。樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージすることが好ましい。
【0107】
溶融状態の本発明の樹脂組成物をろ過しても良い。
【0108】
Tダイによる押出し時の温度は、特に制限されないが、好ましくは280~320℃、好ましくは285~315℃、より好ましくは290~310℃である。
【0109】
Tダイから押出されたフィルム状物を冷却ロールに接触固化させる際の密着方法は、特に制限されず、例えばエアナイフ、静電ピンニング、弾性体ロールニップ、金属ロールニップ、弾性金属ロールニップ等が挙げられる。冷却ロール表面温度は、特に制限されないが、例えば40~100℃、好ましくは45~90℃である。
【0110】
本発明の未延伸フィルムの厚みは、特に制限されないが、例えば10~200μmである。
【0111】
本発明の未延伸フィルムを二軸延伸する方法としては、特に制限されず、公知の二軸延伸方法、例えばバッチ式延伸方法、ロール式延伸方法を採用することができる。本発明の一態様においてはバッチ式を採用することができ。例えば本発明の未延伸フィルムを所定温度(縦延伸温度)に加熱して流れ方向(MD)に縦延伸し、次いで所定の温度(横延伸温度)で幅方向(TD)に横延伸し、続いて所定の温度で熱固定し、幅方向に弛緩させて冷却する方法が挙げられる。
【0112】
縦延伸温度は、好ましくは130~175℃、より好ましくは135~170℃、さらに好ましくは142~168℃、よりさらに好ましくは147~165℃である。縦延伸倍率は、好ましくは2~4倍、より好ましくは2.3~3.5倍、さらに好ましくは2.6~3.5倍である。
【0113】
横延伸温度は、好ましくは130~175℃、より好ましくは135~170℃、さらに好ましくは142~168℃、よりさらに好ましくは147~165℃である。横延伸倍率は、好ましくは2.5~4.5倍、より好ましくは2.9~4.3倍、さらに好ましくは3.2~4.1倍、よりさらに好ましくは3.2~3.9倍である。
【0114】
横延伸温度(好ましくは横延伸温度及び縦延伸温度)は、指標となるT値に基づいて決定することが好ましい。T値は、式1:T=フィルム中のポリフェニレンエーテル系樹脂の含有率(質量%)×1.2+132 により算出する値である。横延伸温度(好ましくは横延伸温度及び縦延伸温度)は、好ましくはT-5℃~T+10℃の範囲内、より好ましくはT-4℃~T+8℃の範囲内、さらに好ましくはT-3℃~T+6℃の範囲内、よりさらに好ましくはT-2℃~T+4℃の範囲内、とりわけ好ましくはT-1.2℃~T+2℃の範囲内である。延伸温度をこの範囲にすることで、広角X線散乱プロフィールにおける4.9nm-1付近、8.5nm-1付近、9.9nm-1付近ピーク高さを向上し、高温下での絶縁破壊強さ、絶縁性(体積抵抗率)を向上させる観点から好ましい。
【0115】
熱固定温度は、好ましくは200~260℃、より好ましくは205~245℃である。熱固定時間は、5~50秒が好ましく、9.2~35秒がより好ましい。熱固定温度や時間をこの範囲にすることで、広角X線散乱プロフィールにおける4.9nm-1付近、8.5nm-1付近、9.9nm-1付近ピーク高さを向上し、高温下での絶縁破壊強さ、絶縁性(体積抵抗率)を向上させる観点から好ましい。
【0116】
幅方向への弛緩(緩和)率は、好ましくは2~6%である。
【0117】
本発明のフィルムの厚みは、特に制限されないが、例えば30μm以下、20μm以下である。該厚みは、コンデンサの体積を小さくし、かつ、静電容量を高める観点から、より薄い方が好ましい。この観点から、該厚みは、好ましくは10μm以下、より好ましくは9.5μm以下、さらに好ましくは8μm以下、よりさらに好ましくは6μm以下、とりわけ好ましくは5μm以下、とりわけさらに好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下、である。また、該厚みは、絶縁破壊強さやスリット加工適性をより高め、さらに連続製膜性を向上させる観点から、例えば1μm以上、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは1.8μm以上、さらに好ましくは2μm以上、よりさらに好ましくは2.3μm以上、特に好ましくは2.5μm以上である。本発明のフィルムの厚みの範囲は、上記上限及び下限を任意に組み合わせて設定することができる。
【0118】
本発明の未延伸フィルム、本発明の二軸延伸フィルム等の本発明のフィルム厚さは、外側マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製 高精度デジマチックマイクロメータ MDH-25MB)を用いて、JIS K 7130:1999 A法に準拠して測定する。
【0119】
本発明のフィルムの層構成は特に制限されない。本発明のフィルムは、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。本発明のフィルムは、好ましくは1層又は複数層の本発明の樹脂組成物のフィルム状成形層からなるフィルムであり、より好ましくは単層フィルム(1層の本発明の樹脂組成物のフィルム状成形層からなるフィルム)である。
【0120】
本発明のフィルムは、高温下における絶縁破壊強さが高い。絶縁破壊強さは、後述の実施例の方法に従って測定される。本発明のフィルムの150℃環境での絶縁破壊強さは、好ましくは350VDC/μm以上、より好ましくは370VDC/μm以上、さらに好ましくは380VDC/μm以上、よりさらに好ましくは390VDC/μm以上、とりわけ好ましくは400VDC/μm以上、とりわけより好ましくは410VDC/μm以上、とりわけさらに好ましくは415VDC/μm以上である。上限は、特に制限されず、例えば650VDC/μm、620VDC/μm、600VDC/μm、580VDC/μm、560VDC/μm、540VDC/μm、520VDC/μm、又は500VDC/μmである。
【0121】
本発明のフィルムは、絶縁性が高い。絶縁性は、後述の実施例の方法に従って体積抵抗率を測定することによって評価される。本発明のフィルムの当該体積抵抗率は、好ましくは1×1015Ω・cm以上、より好ましくは3×1015Ω・cm以上、さらに好ましくは1×1016Ω・cm以上、よりさらに好ましくは2×1016Ω・cm以上である。上限は、特に制限されず、1×1018Ω・cm、又は1×1017Ω・cmである。
【0122】
本発明のフィルムの用途は、特に制限されない。本発明のフィルムは、例えば、その耐熱性を生かして耐熱フィルムとして利用することができる。また、本発明のフィルム(特に本発明の二軸延伸フィルム)は、その特性を発揮できるコンデンサ用フィルムとして、好適に利用することができる。特に、発明のフィルム(特に本発明の二軸延伸フィルム)は、高温環境で使用され、小型、さらには、高容量(例えば、5μF以上、好ましくは10μF以上、さらに好ましくは20μF以上)のコンデンサに極めて好適に使用することができる。
【0123】
2.金属層一体型フィルム
本発明は、その一態様において、本発明のフィルムと、前記フィルムの片面又は両面に積層された金属層とを有する、金属層一体型フィルム(本明細書において、「本発明の金属層一体型フィルム」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0124】
本発明のフィルムは、コンデンサとして加工するために片面又は両面に金属層(例えば電極)を付けることができる。そのような金属層は、本発明が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されることは無いが、コンデンサには小型化及び軽量化が要求されるので、本発明のフィルムの片面もしくは両面に直接金属層を形成(積層)して金属層一体型フィルムとすることが好ましい。
【0125】
本発明のフィルムの表面に金属層を積層する方法として、例えば、金属蒸着、スパッタリング等の真空めっき、または金属含有ペーストの塗工・乾燥、金属箔や金属粉の圧着等の方法が挙げられる。なかでも、コンデンサの小型及び軽量化の一層の要求に答えるには、真空蒸着法及びスパッタリング法が好ましく、生産性及び経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを例示することができるが、本発明が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されることはなく、適宜最適なものを選択することができる。
【0126】
金属層に用いられる金属は、例えば、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、及びニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、及びそれらの合金などを使用することができるが、環境、経済性及びコンデンサ性能などを考慮すると、亜鉛及びアルミニウムが、好ましい。
【0127】
金属層の膜抵抗は、コンデンサの電気特性の点から、1~100Ω/□程度が好ましい。この範囲内でも高めであることがセルフヒーリング(自己修復)特性の点から望ましく、膜抵抗は5Ω/□以上であることがより好ましく、10Ω/□以上であることが更に好ましい。また、コンデンサとしての安全性の点から、膜抵抗は50Ω/□以下であることがより好ましく、30Ω/□以下であることが更に好ましい。
【0128】
真空蒸着法にて電極(金属蒸着膜)を形成する際、その膜抵抗は、例えば当業者に既知の四端子法によって蒸着中に測定することができる。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば蒸発源の出力を調整して蒸発量を調整することによって調節することができる。
【0129】
フィルムの片面に金属蒸着膜を形成する際、フィルムを巻回した際にコンデンサとなるよう、フィルムの片方の端部から一定幅は蒸着せずに絶縁マージンが形成される。さらに、金属層一体型フィルムとメタリコン電極との接合を強固にするため、絶縁マージンと逆の端部に、ヘビーエッジ構造を形成することが好ましく、ヘビーエッジの膜抵抗は通常1~8Ω/□程度であり、1~5Ω/□程度であることが好ましい。ヘビーエッジの金属膜の厚さは特に限定されないが、1~200nmが好ましい。
【0130】
形成する金属蒸着膜の蒸着パターン(マージンパターン)には特に制限はないが、コンデンサの保安性等の特性を向上させる点からは、フィッシュネットパターン、Tマージンパターン等のいわゆる特殊マージンを含むパターンとしてヒューズを形成することが好ましい。特殊マージンを含む蒸着パターンで金属蒸着膜を本発明のフィルムの少なくとも片面に形成すると、得られるコンデンサの保安性が向上し、コンデンサの破壊、ショートの抑制等の点からも効果的であり、好ましい。
【0131】
マージンを形成する方法としては、蒸着時にテープによりマスキングを施すテープ法、オイルの塗布によりマスキングを施すオイル法等、公知の方法を何ら制限なく使用することができる。
【0132】
本発明の金属層一体型フィルム上には、金属蒸着膜の物理的保護、吸湿防止、酸化防止等を目的に保護層を設けてもよい。保護層としては、好ましくはシリコーンオイルやフッ素オイル等が使用できる。
【0133】
本発明の金属層一体型フィルムは、後述の本発明のコンデンサに加工され得る。本発明の金属層一体型フィルムは、例えば酸素や他のガスに対するバリアフィルム等にも使用できる。
【0134】
3.コンデンサ
本発明は、その一態様において、本発明のフィルム又は本発明の金属層一体型フィルムを含む、コンデンサ(本明細書において、「本発明のコンデンサ」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0135】
このようなコンデンサにおいては、本発明のフィルムはコンデンサ用誘電体フィルムとして、例えば、(i)前述の金属層一体型フィルムを使用する方法、(ii)電極を設けない本発明のフィルムと、他の導電体(例えば、金属箔、片面もしくは両面を金属化した本発明のフィルム、片面もしくは両面を金属化した紙及び他のプラスチックフィルム等)を積層すること、等の方法でコンデンサを構成できる。
【0136】
コンデンサを作製する工程では、フィルムの巻き付け加工が行われる。例えば、本発明の金属層一体型フィルムにおける金属膜と本発明のフィルムとが交互に積層されるように、更には、絶縁マージン部が逆サイドとなるように、2枚1対の本発明の金属層一体型フィルムを重ね合わせて巻回する。この際、2枚1対の本発明の金属層一体型フィルムを1~2mmずらして積層することが好ましい。用いる巻回機は特に制限されず、例えば、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機3KAW-N2型等を利用することができる。
【0137】
フィルムの巻き付け加工は上記方法に限定されず、他の方法、例えば、両面蒸着した本発明のフィルム(その場合、ヘビーエッジは表面、裏面で反対側の端部に配置されるようにする)と、未蒸着の本発明のフィルム(両面蒸着した本発明のフィルムより2~3mm狭幅とする)を交互に積層して巻回しても良い。
【0138】
扁平型コンデンサを作製する場合、巻回後、通常、得られた巻回物に対してプレスが施される。プレスによってコンデンサの巻締まり・素子成形を促す。層間ギャップの制御・安定化を施す点から、与える圧力は、本発明のフィルムの厚み等によってその最適値は変わるが、2~20kg/cmである。
【0139】
続いて、巻回物の両端面に金属を溶射してメタリコン電極を設けることによって、コンデンサを作製する。
【0140】
コンデンサに対して、更に所定の熱処理が施される。すなわち、本発明では、コンデンサに対し、熱処理を施す工程(以下、「熱エージング」と称することがある)を含む。熱処理温度は、特に制限されないが、例えば80~210℃である。コンデンサに対して熱処理を施す方法としては、例えば、真空雰囲気下で、恒温槽を用いる方法や高周波誘導加熱を用いる方法等を含む公知の方法から適宜選択してもよい。熱処理を施す時間は、機械的及び熱的な安定を得る点で、30分以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましいが、熱シワや型付等の成形不良を防止する点で、20時間以下とすることがより好ましい。 熱処理を施すことによって熱エージングの効果が得られる。具体的には、本発明の金属層一体型フィルムに基づくコンデンサを構成するフィルム間の空隙が減少し、コロナ放電が抑制される。加えて本発明のフィルムの内部構造が変化する。熱処理後のフィルムに対して広角X線散乱プロフィールを測定すると、波数qが4.9nm-1付近、8.5nm-1付近、9.9nm-1付近のピーク高さが向上して結晶の成長が確認される。加えて5.6nm-1付近、10.0nm-1付近、11.1nm-1付近、12.7nm-1付近、にピークが観測される場合があり、これら、5.6nm-1付近、10.0nm-1付近、11.1nm-1付近、12.7nm-1付近のピークは、Polymer,Vol.135(2018年)103~110ページ等を参考資料として、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂のδ晶に由来すると推測される。δ晶は一般的には、例えばトルエンのような溶媒中から結晶化したような場合に観測されやすい結晶構造であるが、本発明のフィルム中では、ポリフェニレンエーテル系樹脂および非晶性ポリスチレン系樹脂が、δ晶を成長させているものと推測される。これら結晶の成長の結果、絶縁破壊電圧や絶縁性(体積抵抗率)が向上し、コンデンサの耐電圧性が向上するものと推測される。
【0141】
熱処理の温度が所定温度より低い、またはエージング時間が短い場合には、熱エージングによる上記効果が十分に得られない。一方、熱処理の温度が所定温度より高い、またはエージング時間が長い場合には、本発明のフィルムに熱分解や酸化劣化等が生じることがある。
【0142】
熱エージングを施したコンデンサのメタリコン電極には、通常、リード線が溶接される。また、耐候性を付与し、とりわけ湿度劣化を防止するため、コンデンサをケースに封入してエポキシ樹脂でポッティングすることが好ましい。
【0143】
本発明のフィルムを利用した、本発明のコンデンサは、高温環境で好適に使用され、小型、さらには、高容量(例えば、5μF以上、好ましくは10μF以上、さらに好ましくは20μF以上)のコンデンサとすることができる。従って、本発明のコンデンサは、電子機器、電気機器などに使用されている、高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、コンバータ及びインバータ等のフィルタ用コンデンサ及び平滑用コンデンサ等として利用することができる。また、本発明のコンデンサは、近年需要が高まっている電気自動車及びハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバータ用コンデンサ、コンバータ用コンデンサ等としても好適に利用することができる。
【実施例
【0144】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0145】
(1)測定方法
各種測定方法は、次のとおりである。
【0146】
(1-1)二軸延伸フィルム中の各成分の含有率の測定及び算出
実施例及び比較例の二軸延伸フィルム中の各成分の含有率は、使用される各原料中の成分の含有率が既知の場合は、該含有率及び原料の配合割合から算出した。成分の含有率が不明な変性ポリフェニレンエーテルを原料として使用する場合は、下記方法により原料中の各成分の含有率を測定し、該含有率及び原料の配合割合から算出した。原料の含有割合が不明の場合は、下記方法により二軸延伸フィルム中の各成分の含有率を測定した。
【0147】
原料または二軸延伸フィルムを1,1,2,2-テトラクロロエタン-dに溶解したものを測定試料とし、H-NMR測定及び13C-NMR測定を行った。H-NMR測定、および、13C-NMR測定の条件は下記に示す。
【0148】
13C-NMR測定では、測定されたシグナルより、含有成分を特定した。その後、H-NMR測定で測定されたシグナルより各含有成分のH原子1個あたりの積分強度比(モル比)を求め、各成分の式量により重量比に換算し、ポリフェニレンエーテル成分、スチレン成分、および、エチレン-ブチレン成分の含有率を求めた。
【0149】
ここで二軸延伸フィルム中のポリフェニレンエーテル系樹脂の含有率は、前記により求められたポリフェニレンエーテル成分の含有率に等しい。
【0150】
H-NMR測定]
測定装置:Bruker Biospin社製 AVANCE III-600 with Cryo Probe
測定周波数:600MHz
測定溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン-d
測定温度:300K
化学シフト標準:1,1,2,2-テトラクロロエタン-dH;6.00ppm)
13C-NMR測定]
測定装置:Bruker Biospin社製 AVANCE III-600 with Cryo Probe
測定周波数:150MHz
測定溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン-d
測定温度:300K
化学シフト標準:1,1,2,2-テトラクロロエタン-d13C;73.78ppm)。
【0151】
(1-2)広角X線散乱分析
実施例及び比較例の二軸延伸フィルムについて、広角X線散乱プロフィールの所定位置におけるピークの有無を以下のようにして判定した。
【0152】
(1-2-1)WAXS測定
WAXS測定は、株式会社リガク製X線散乱測定装置NANO-Viewerを使用して行った(図1)。フィルムから2つの方向(MD方向(方向1)とTD方向(方向2))がわかるようにサンプルを切り出し、方向1を縦方向、方向2を横方向としてサンプルセル部分にセットし、下記条件で測定を実施した。
検出器: 二次元検出器 PILATUS-100K
試料-検出器間距離: 72.67mm
波長(λ): 0.154nm (CuKα線)
電流強度: 40kV、30mA
使用モード: NANO-Viewerの拡張モード
測定位置: セットしたサンプルの任意の3か所
露光時間: 任意の3か所につき各600秒
波数(q)領域: 2~20[nm-1]。
【0153】
上記WAXS測定で得られた二次元散乱像について、欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)製データ解析プログラムFIT2Dを用いて以下のデータ処理を行った。
【0154】
(1-2-2)広角X線散乱プロフィール
WAXS測定で得られた二次元散乱像について、円環平均を計算しデータを一次元化して得られたWAXSプロフィールに対し、検出器の暗電流補正、空セル散乱補正として、サンプルをセットしない以外は同様に測定および計算した値に0.8を乗じたものを差し引き、一次元の広角X線散乱プロフィール(プロフィール1)を得た。なおプロフィールの横軸は波数q(nm-1)である。
【0155】
(1-2-3)TD方向の広角X線散乱プロフィール
WAXS測定で得られた二次元散乱像について、X軸の正の方向を0°として150~210°の領域を切り出してセクター平均を計算しデータを一次元化した。得られたWAXSプロフィールに対し、検出器の暗電流補正、空セル散乱補正として、サンプルをセットしない以外は同様に測定および計算した値に0.8を乗じたものを差し引き、一次元のTD方向の広角X線散乱プロフィール(プロフィール2)を得た。
【0156】
(1-2-4)ピーク有無の判定
プロフィール1及びプロフィール2それぞれにおける、4.9nm-1付近、8.5nm-1付近、及び9.9nm-1付近それぞれのピークの有無を、次のようにして判定した。
【0157】
下記(2)、(3)、(4)を測定値より抽出した。
(2) 4.9±0.3nm-1の範囲の測定値で最大の値
(3) 8.5±0.3nm-1の範囲の測定値で最大の値
(5) 9.9±0.3nm-1の範囲の測定値で最大の値
下記(1)、(4)を、下記値を挟む直近の2点の測定値の平均値として算出した。
(1) 4.5nm-1の値
(4) 9.3nm-1の値
下記計算式にてピーク高さを算出した。
4.9nm-1付近 :上記(2)-(1)
8.5nm-1付近 :上記(3)-(4)
9.9nm-1付近 :上記(5)-(4)。
【0158】
(評価基準)
プロフィール1について、
ピーク高さが6以上にてピークを有すると判定した。
【0159】
プロフィール2について、
ピーク高さが10以上にてピークを有すると判定した。
【0160】
(2)樹脂組成物及びフィルムの作製
(2-1)使用樹脂
・(A)シンジオタクチックポリスチレン系樹脂(sPS)
A1: 出光興産株式会社製 ザレック(登録商標)90ZC
・(BC)変性ポリフェニレンエーテル系樹脂
BC1:変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(SHPPジャパン合同会社製、ポリフェニレンエーテル系樹脂と非晶性ポリスチレンの混合樹脂)。
【0161】
(2-2)樹脂組成物及びフィルムの作製方法
以下の作製工程において、縦延伸温度および横延伸温度の指標となるT値を、式1:T=フィルム中のポリフェニレンエーテル系樹脂の含有率(質量%)×1.2+132 により算出した。
【0162】
[実施例1]
[未延伸シートの作製]
A1とBC1を、各成分が表1の含有率になるように混合して得られた樹脂組成物を、真空オーブンに投入し、120℃で5時間乾燥した。乾燥原料を二軸スクリュータイプのフィルム製膜機(株式会社東洋精機製作所製2D30W2)に、窒素ガスと共に投入した。シリンダー温度300℃で溶融した後、300℃のTダイより押出した。溶融樹脂を表面温度50℃シリコンゴムロールを用いて表面温度50℃の鏡面金属ロール(冷却ロール)に接触させて固化し、フィルム状に成形して未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムの中央部の厚みが約98μmとなるように、また延伸後の厚みが目標値となるように、押出量と引取速度を調節した。
【0163】
[延伸フィルムの作製]
バッチ式延伸機(ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機KARO IV)の、140℃(縦延伸温度)に設定したオーブン内に未延伸シートを導入し、125秒間予熱した。次いで同オーブン内で、延伸速度100%/秒で倍率2.8倍に、未延伸シートの流れ方向(MD)に縦延伸した。その後、同オーブン内で140℃(横延伸温度)で30秒間予熱し、次いで同オーブン内で、延伸速度100%/秒で倍率3.4倍に、未延伸シートの巾方向に横延伸した。次いで210℃に設定したオーブン内に延伸フィルムを導入して10秒間加熱(熱処理)した後、横延伸倍率を3.2倍まで緩和した。熱処理後のフィルムをオーブン外に排出し、室温にて10秒間冷却して二軸延伸フィルムを得た。フィルムの厚みは表1の厚みとなるよう、押出量と引取速度を微調整した。
【0164】
[実施例2]
各成分が表1の含有率になるようにA1とBC1を混合して得られた樹脂組成物を使用し、延伸条件を表1の条件とする以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸フィルムを得た。
【0165】
[実施例3]
各成分が表1の含有率になるようにA1とBC1を混合して得られた樹脂組成物を使用し、延伸条件を表1の条件とする以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸フィルムを得た。
【0166】
[比較例1]
樹脂組成物に代えてA1のみを使用し、延伸条件を表1の条件とする以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸フィルムを得た。
【0167】
[比較例2]
各成分が表1の含有率になるようにA1とBC1を混合して得られた樹脂組成物を使用し、延伸条件を表1の条件とする以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸フィルムを得た。
【0168】
(3)フィルム特性の測定及び評価
(3-1)高温下における絶縁破壊強さの測定
実施例及び比較例の二軸延伸フィルムの高温下における絶縁破壊強さを次のようにして評価した。JIS C2151:2006の17.2.2(平板電極法)に準じた測定装置を用意した。ただし下部電極として、JIS C2151:2006の17.2.2に記載の弾性体の替わりに導電ゴム(星和電機株式会社製E12S10)を電極として用い、アルミ箔の巻き付けは行わないものとした。測定環境は設定温度150℃の強制循環式オーブン内とし、電極およびフィルムは同オーブン内で30分調温した後に使用した。直流電源を用い、電圧上昇は0Vから開始して100V/秒の速度とし、電流値が5mAを超えた時を破壊時とした。絶縁破壊電圧測定回数は20回とし、絶縁破壊電圧値VDCを、フィルムの厚み(μm)で割り、その20回の計算結果中の上位2点および下位2点を除いた16点の平均値を、絶縁破壊強さ(VDC/μm)とした。
【0169】
(3-2)体積抵抗率の測定
実施例及び比較例の二軸延伸フィルムの体積抵抗率を次のようにして測定した。
【0170】
≪体積抵抗率≫
<体積抵抗率ρVの測定>
体積抵抗率の具体的な測定手順を以下に記すが、特に記載のない条件はJIS C 2139-3-1:2018を基に下記のように測定した。
【0171】
まず、40℃環境の恒温槽に、体積抵抗率測定用治具(以下、単に、治具ともいう)
を配置した。治具の構成は下記の通りである。また、治具には、直流電源、直流電流計を接続した。
【0172】
<体積抵抗率測定用治具>
主電極(直径50mm)
対電極(直径85mm)
主電極を囲う環状のガード電極(外径80mm、内径70mm)
各電極は、金メッキされた銅製で、試料と接する面には導電性ゴムを貼付した。使用した導電性ゴムは、信越シリコーン社製、EC-60BL(W300)で、導電性ゴムの光沢のある面を、金メッキされた銅と接するように貼付した。
【0173】
次に、実施例、比較例の樹脂フィルム(以下、試料ともいう)を恒温槽内の治具にセットした。具体的には、試料の一方の面に、主電極、及び、ガード電極を密着させ、他方の面に対電極を密着させ、荷重5kgfで試料と各電極を密着させた。その後、30分間静置した。
【0174】
次に、直流電源を用いて、電位傾度100V/μmとなるように試料に電圧を印加した。
【0175】
電圧の印加後、1分経過時点での電流値を読み取り、次式により体積抵抗率を算出した。なお、電圧の印加にはKeithley社製2290-10(直流電源)を用い、電流値の測定には、Keithley社製の2635B(直流電流計)を用いた。
【0176】
体積抵抗率=[(有効電極面積)×(印加電圧)]/[(試料の厚さ)×(電流値)]
ここで、有効電極面積は、下記式により求めた。
【0177】
(有効電極面積)=円周率×[[[(主電極の直径)+(ガード電極の内径)]/2]
/2]
これを3回繰り返し、有効数字1桁で求めた算術平均値を、体積抵抗率(Ω・cm)とした。
【0178】
(4)測定及び評価結果
実施例及び比較例の二軸延伸フィルム中の各成分の含有率の測定結果、当該フィルム作成時の延伸条件、当該フィルムの厚み、並びに当該フィルム特定の測定及び評価結果を表1に示す。また、上記で測定したプロフィール1について図2に示し、プロフィール2について図3に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
以上より、フィルムであって、前記フィルムは、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び非晶性ポリスチレン系樹脂を含有する層を有し、且つ前記フィルムの広角X線散乱プロフィール(プロフィール1)の4.9nm-1付近にピークを有する、フィルム(実施例1~3)であれば、高温下における絶縁破壊強さが高く、且つ絶縁性が良好なフィルムであることが分かった。
図1
図2
図3