(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】樹脂成形体付基材および樹脂成形体付基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20241106BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20241106BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20241106BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20241106BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C70/06
B29C70/42
B29K101:12
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2021074155
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 亮
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-146350(JP,A)
【文献】特開昭62-041009(JP,A)
【文献】特開2021-011029(JP,A)
【文献】特開2020-138529(JP,A)
【文献】特開昭50-134059(JP,A)
【文献】特開2003-053771(JP,A)
【文献】特開平09-193253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 39/00-39/44
B29C 41/00-41/52
B29C 43/00-43/58
B29C 45/00-45/84
B29C 49/48-49/56
B29C 49/70
B29C 51/30-51/40
B29C 51/44
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維および第1の熱可塑性樹脂を含み、第1面および前記第1面と反対側の第2面を有する板状の基材と、
前記基材の前記第2面に備えられ、第1方向に沿って延びる樹脂成形体と、
を備え、
前記基材の前記第1面には、前記第1方向に沿って延びる溝が備えられ、前記溝には第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる反り抑制部が備えられて
おり、
前記溝は、前記第1方向に交わる第2方向において前記樹脂成形体を挟むように設けられた第1溝と第2溝とを含み、
前記反り抑制部は、前記第1溝と前記第2溝とに前記第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる第1反り抑制部と第2反り抑制部とを含む、樹脂成形体付基材。
【請求項2】
繊維および第1の熱可塑性樹脂を含み、第1面および前記第1面と反対側の第2面を有する板状の基材と、
前記基材の前記第2面に備えられ、第1方向に沿って延びる樹脂成形体と、
を備え、
前記基材の前記第1面には、前記第1方向に沿って延びる溝が備えられ、前記溝には第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる反り抑制部が備えられて
おり、
前記第1面が突出するように折り曲げられた折曲部を有し、
前記折曲部は前記溝と連続しており、
前記折曲部の前記第1面に連続する角部には前記第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる補填部が備えられている、樹脂成形体付基材。
【請求項3】
前記反り抑制部は、前記樹脂成形体と重なる位置に設けられている、請求項1または請求項2に記載の樹脂成形体付基材。
【請求項4】
前記第1方向に交わる第2方向における前記反り抑制部の断面積S1は、前記第2方向における前記樹脂成形体の断面積S2に関して、次の関係:0.5×S2≦S1≦1.5×S2;を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂成形体付基材。
【請求項5】
前記第1方向に交わる第2方向に沿う前記反り抑制部の寸法W1は、前記第2方向に沿う前記樹脂成形体の寸法W2に関して、次の関係:0.8×W2≦W1≦1.2×W2;を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂成形体付基材。
【請求項6】
前記反り抑制部の前記基材の厚み方向に沿う寸法は、前記基材の厚みの50%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂成形体付基材。
【請求項7】
前記基材を貫通する貫通孔を備えるとともに、前記貫通孔の内部には前記第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる連続部が設けられており、
前記樹脂成形体と前記反り抑制部とは前記連続部を介して連続している、
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂成形体付基材。
【請求項8】
繊維と第1の熱可塑性樹脂とを含み、第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する板状の基材であって、前記第2面に設けられる予定の第1方向に延びる樹脂成形体に沿うように、前記第1面において前記第1方向に沿って延びる溝
であって、前記第1方向に交わる第2方向において前記樹脂成形体を挟むように設けられた第1溝と第2溝とを備える基材を用意する準備工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂が溶融しない温度で、前記基材の前記第2面に前記樹脂成形体を形成するための第2の熱可塑性樹脂を供給するとともに、前記第1面の前記
第1溝
と前記第2溝に第3の熱可塑性樹脂を供給することで、前記第2面に前記樹脂成形体を備え前記第1面の前記
第1溝
と前記第2溝内に前記第3の熱可塑性樹脂が充填されてなる
第1反り抑制部
と第2反り抑制部を備える樹脂成形体付基材を得る、樹脂供給工程と、
を含む、樹脂成形体付基材の製造方法。
【請求項9】
前記準備工程は、
前記繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含み、前記第1面と前記第2面とを有するものの前記溝を備えていない板状の溝無しプレボードを用意するプレボード準備工程と、
前記溝無しプレボードの前記第2面に前記
第1溝
と前記第2溝を設ける溝形成工程と、
を含む、請求項8に記載の樹脂成形体付基材の製造方法。
【請求項10】
前記第2の熱可塑性樹脂と前記第3の熱可塑性樹脂とは同一であり、
前記準備工程は、
前記繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含み、前記第1面と前記第2面とを有するものの前記溝を備えていない板状の溝無しプレボードを用意するプレボード準備工程と、
前記プレボードを貫通する貫通孔を設けるとともに、前記貫通孔と前記溝とを連通させる切り込みを入れる連通工程と、
を含み、
前記樹脂供給工程において、前記プレボードの前記第2面に前記樹脂成形体を形成するための前記第2の熱可塑性樹脂を供給し、前記貫通孔を介して前記第2の熱可塑性樹脂を前記第1面に送り前記溝に供給する、請求項8または9に記載の樹脂成形体付基材の製造方法。
【請求項11】
前記準備工程は、
前記繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含み、前記第1面と前記第2面とを有するものの前記溝を備えていない板状の溝無しプレボードを用意するプレボード準備工程と、
前記プレボードの前記第1面における所定箇所に切り込みを入れるカット工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂が溶融しない温度で、前記プレボードを前記切り込みに沿いかつ前記第1面が突出するかたちで折り曲げるように成形型の成形面によりプレスして、前記切り込みが開かれてなる
切欠き部を形成する、プレス成形工程と、
を含み、
前記樹脂供給工程において、前記切欠き部に前記第2の熱可塑性樹脂を充填する、請求項8~10のいずれか1項に記載の樹脂成形体付基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、樹脂成形体付基材および樹脂成形体付基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の内装用基材として、植物系繊維と樹脂とを含む基材が利用されている。例えば特許文献1には、植物系繊維と樹脂繊維とを配合して加熱成形することで予め平板状のプレボードを用意しておき、必要なタイミングで、このプレボードを再加熱してコールドプレス成形することで、所望の形状を付与することが開示されている。また、コールドプレス成形した基材に対して引き続き射出成形を施すことで、基材に対して樹脂成型物を一体的に設けることについても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基材の製造手法では、プレボードの作製時と基材の成形時の2度にわたって加熱処理を行うため、加工費が増大したりサイクルタイムが長くなったりし、製造コストが嵩むという課題がある。またコールドプレス成形に際しては、プレス成型機に加えて、プレボードを再加熱する手段を備えている必要があり、製造設備の点においても制約が発生していた。
【0005】
このような問題を解決するために、コールドプレス成形を非加熱で行うことが考えられる。ここで、プレボードを再加熱してコールドプレス成形する場合は、プレボード中の樹脂が軟化状態にあるため、一体的に射出成形した樹脂成型物の凝固に伴う収縮をプレボードが吸収して緩和することができる。しかしながら、プレボードの再加熱を行わずにコールドプレス成形する場合は、射出成形された樹脂成型物が基材の表面において収縮すると、基材の表面に沿って圧縮応力を発生し、基材に反りが生じるという新たな課題が発生する。
【0006】
ここに開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、加熱処理の回数を減らしつつ、反りを抑制して樹脂成形体付基材を製造することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される技術に係る樹脂成形体付基材は、繊維および第1の熱可塑性樹脂を含み、第1面および前記第1面と反対側の第2面を有する板状の基材と、前記基材の前記第2面に備えられ、第1方向に沿って延びる樹脂成形体と、を備え、前記基材の前記第1面には、前記第1方向に沿って延びる溝が備えられ、前記溝には第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる反り抑制部が備えられている。
【0008】
樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂は、一般に、溶融状態から固化状態に変態するときに熱収縮を伴い、その熱収縮率は繊維を熱可塑性樹脂バインダで固めた基材よりも大きい。したがって、基材に樹脂成形体を一体的に形成するとき、基材も加熱して樹脂成形体を一体形成すると、その熱収縮率の差に起因する基材の反りを緩和することができる。その一方で、基材を加熱せずに樹脂成形体を一体形成すると、熱収縮率の差に起因する基材の反りが顕著に表れてしまう。そこで上記構成によれば、基材の一方の面には樹脂成形体が設けられるとともに、他方の面には樹脂成形体に沿うように反り抑制部が設けられている。これにより、基材の表裏の板面において、樹脂成形体の熱収縮に起因する圧縮応力と、反り抑制部に起因する圧縮応力とがバランスし、基材の反りが抑制される。
【0009】
本技術の好適な一態様において、前記反り抑制部は、前記樹脂成形体と重なる位置に設けられている。上記構成によると、樹脂成形体に起因して基材の第1面に作用する圧縮応力を、反り抑制部に起因して基材の第2面に作用する圧縮応力によって、効果的に相殺することができる。
【0010】
本技術の好適な一態様において、前記溝は、前記第1方向に交わる第2方向において前記樹脂成形体を挟むように設けられた第1溝と第2溝とを含み、前記反り抑制部は、前記第1溝と前記第2溝とに前記第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる第1反り抑制部と第2反り抑制部とを含む。上記構成によると、熱可塑性樹脂の熱収縮に起因する圧縮応力が、基材に局所的に作用することを抑制することができる。
【0011】
本技術の好適な一態様において、前記第1方向に交わる第2方向における前記反り抑制部の断面積S1は、前記第2方向における前記樹脂成形体の断面積S2に関して、次の関係:0.5×S2≦S1≦1.5×S2;を満たす。上記構成によると、樹脂成形体に起因して基材の第2面に作用する圧縮応力と、反り抑制部に起因して基材の第1面に作用する圧縮応力とを、効果的にバランスさせることができる。
【0012】
本技術の好適な一態様において、前記第1方向に交わる第2方向に沿う前記反り抑制部の寸法W1は、前記第2方向に沿う前記樹脂成形体の寸法W2に関して、次の関係:0.8×W2≦W1≦1.2×W2;を満たす。上記構成によると、樹脂成形体の基材の板面からの高さが高い場合に、樹脂成形体に起因して基材の第2面に作用する圧縮応力と、反り抑制部に起因して基材の第1面に作用する圧縮応力とを、効果的にバランスさせることができる。
【0013】
本技術の好適な一態様において、前記反り抑制部の前記基材の厚み方向に沿う寸法は、前記基材の厚みの50%以下である。上記構成によると、反り抑制部を設けることによる基材の強度低下を回避しつつ、その反りを抑制することができる。
【0014】
本技術の好適な一態様において、前記基材を貫通する貫通孔を備えるとともに、前記貫通孔の内部には前記第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる連続部が設けられており、前記樹脂成形体と前記反り抑制部とは前記連続部を介して連続している。上記構成によると、この基材を簡便に製造することが可能とされ、例えば、低コストな基材として提供され得る。
【0015】
本技術の好適な一態様において、前記第1面が突出するように折り曲げられた折曲部を有し、前記折曲部は前記溝と連続しており、前記折曲部の前記第1面に連続する角部には前記第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる補填部が備えられている。基材を加熱せずに折り曲げる場合、柔軟性のない基材を折り曲げることになるため、折曲部の外表面においては基材が裂けるなどして表面の滑らかさが失われたり基材が肉薄になって強度低下することが考えられる。上記構成によると、折曲部には、反り抑制部に連続して樹脂部が設けられているため、樹脂部によって基材の表面を滑らかにしたり板厚を均したりすることができる。これにより、多様な形態の基材を提供することができる。
【0016】
他の側面において、ここに開示される技術に係る樹脂成形体付基材の製造方法は、繊維と第1の熱可塑性樹脂とを含み、第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する板状の基材であって、前記第2面に設けられる予定の第1方向に延びる樹脂成形体に沿うように、前記第1面において前記第1方向に沿って延びる溝を備える基材を用意する準備工程と、前記第1の熱可塑性樹脂が溶融しない温度で、前記基材の前記第2面に前記樹脂成形体を形成するための第2の熱可塑性樹脂を供給するとともに、前記第1面の前記溝に第3の熱可塑性樹脂を供給することで、前記第2面に前記樹脂成形体を備え前記第1面の前記溝内に前記第3の熱可塑性樹脂が充填されてなる反り抑制部を備える樹脂成形体付基材を得る、樹脂供給工程と、を含む。
【0017】
上記構成によると、基材の一方の面に樹脂成形体を形成することにあわせて、プ基材の他方の面に樹脂成形体に沿うように反り抑制部を設けることで、基材を加熱することなく樹脂成形体付基材を製造することができる。これにより、基材の表裏の板面において、熱可塑性樹脂の熱収縮に起因する圧縮応力と、反り抑制部に起因する圧縮応力とをバランスさせることができ、工程数を大きく増やすことなく非加熱で、反りの抑制された樹脂成形体付基材を製造することができる。
【0018】
本技術の好適な一態様において、前記準備工程は、前記繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含み、前記第1面と前記第2面とを有するものの前記溝を備えていない板状の溝無しプレボードを用意するプレボード準備工程と、前記溝無しプレボードの前記第2面に前記溝を設ける溝形成工程と、を含む。本技術における基材は、予め溝の形成されているものを入手してもよいし、溝の形成されていないプレボードを用意して溝を形成して用いてもよい。ここで、予め溝の形成されている基材は、用途が制限されたり、短期間での設計変更に対応しづらいというデメリットがある。上記構成によると、例えば、用途が制限されていないプレボードを用いてここに開示される基材を製造することができる。
【0019】
本技術の好適な一態様において、前記第2の熱可塑性樹脂と前記第3の熱可塑性樹脂とは同一であり、前記準備工程は、前記繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含み、前記第1面と前記第2面とを有するものの前記溝を備えていない板状の溝無しプレボードを用意するプレボード準備工程と、前記プレボードを貫通する貫通孔を設けるとともに、前記貫通孔と前記溝とを連通させる切り込みを入れる連通工程と、を含み、前記樹脂供給工程において、前記プレボードの前記第2面に前記樹脂成形体を形成するための前記第2の熱可塑性樹脂を供給し、前記貫通孔を介して前記第2の熱可塑性樹脂を前記第1面に送り前記溝に供給する。上記構成によると、プレボードには貫通孔が設けられていることから、一方の面に第2の熱可塑性樹脂を供給することで、貫通孔を通じて、他方の面にも第2の熱可塑性樹脂を送ることができる。これにより、基材の製造装置を簡素化して基材を作製することができる。
【0020】
本技術の好適な一態様において、前記準備工程は、前記繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含み、前記第1面と前記第2面とを有するものの前記溝を備えていない板状の溝無しプレボードを用意するプレボード準備工程と、前記プレボードの前記第1面における所定箇所に切り込みを入れるカット工程と、前記第1の熱可塑性樹脂が溶融しない温度で、前記プレボードを前記切り込みに沿いかつ前記第1面が突出するかたちで折り曲げるように成形型の成形面によりプレスして、前記切り込みが開かれてなる前記切欠き部を形成する、プレス成形工程と、を含み、前記樹脂供給工程において、前記切欠き部に前記第2の熱可塑性樹脂を充填する。上記構成によると、基材のプレス成形を併せて行い、非加熱でのプレス成形により生じる基材の形状不良を、樹脂供給工程において熱可塑性樹脂を充填することによって補うようにしている。これにより、効率よく、非加熱で、多様な形態の基材を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本明細書に開示される技術によれば、加熱処理の回数を減らしつつ、反りを抑制して樹脂成形体付基材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係るシートバックボードを表側から視た斜視図
【
図2】
図1のシートバックボードを裏側から視た平面図
【
図3】溝無しプレボードをプレス型によってプレスしている状態を示す断面図
【
図5】成形型にプレボードをセットした状態における断面図(開状態)
【
図6】成形型にプレボードをセットした状態における要部断面図(開状態)
【
図7】成形型にプレボードをセットした状態における溝を含む断面図(開状態)
【
図8】成形型でプレボードをプレスした状態における要部断面図(閉状態)
【
図9】成形型にプレボードをセットし、スライド型が突出状態にある状態を示す他の要部断面図(閉状態)
【
図10】成形型にプレボードをセットした状態における溝を含む要部断面図(閉状態)
【
図11】成形型にプレボードをセットし、スライド型を退避状態に移動させた状態を示す他の要部断面図(閉状態)
【
図12】
図8の成形型内に樹脂を射出した後の状態を示す要部断面図(閉状態)
【
図13】
図9の成形型内に樹脂を射出した後の状態を示す他の要部断面図(閉状態)
【
図14】
図10の成形型内に樹脂を射出した後の状態における溝を含む要部断面図(閉状態)
【
図15】
図11に示す状態から成形装置を型開きしてシートバックボードが完成した状態を示す断面図(開状態)
【
図16】
図12に示す状態から成形装置を型開きしてシートバックボードが完成した状態を示す要部断面図(開状態)
【
図17】
図13に示す状態から成形装置を型開きしてシートバックボードが完成した状態における溝を含む断面図(開状態)
【
図18】他の実施形態に係るシートバックボードの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪実施形態1≫
本技術に係る一実施形態について、
図1から
図17を参照しつつ説明する。本実施形態の樹脂成形体付基材および樹脂成形体付基材の製造方法は、自動車等の乗物用シートを構成するシートバックボード1(樹脂成形体付基材の一例)とその製造に好ましく適用される。より詳しくは、乗物用シートは、乗員が着座するシートクッションと、背もたれ部分であるシートバックと、を備えており、シートバックボード1は、シートバックの背面を構成する、比較的硬くて平らな部分である。このシートバックボード1は、例えばシートバックを座面上に倒したとき、平坦で丈夫な荷台やフロア等となり、重量のある荷物等を気兼ねなく載せることができる。
【0024】
なお、各図面の一部にはX軸、Y軸、およびZ軸を示しており、X軸およびY軸はシートバックボード1の表面に沿う互いに交わる2方向を示し、Z軸はシートバックボード1の厚み方向に対応している。本実施形態においてX軸,Y軸,およびZ軸は互いに直交している。また、
図1における上側を表側とするとともに、同図下側を裏側とし、X軸に沿う方向が本技術における第1方向、Y軸に沿う方向が本技術における第2方向に相当するものとする。複数の同一部位については、一の部位に符号を付し、他の部位については符号を省略することがある。
【0025】
<シートバックボード>
シートバックボード1は、
図1および
図2に示すように、全体としては略矩形の浅皿状をなしている。シートバックボード1は、基材10と、基材10の所定部分に設けられた樹脂部20と、を備えている。樹脂部20は、樹脂成形体21と、反り抑制部24と、補填部27と、樹脂角部28と、を含む。以下、各部について説明する。
【0026】
基材10は、シートバックボード1の主体をなしており、繊維および第1の熱可塑性樹脂からなるバインダを含み、繊維がバインダとしての第1の熱可塑性樹脂によって結着され、板状に一体化されることで構成されている。基材10に含まれる繊維としては、ケナフ繊維が用いることができる。繊維の種類はこれに限定されず、例えば、木質繊維、熱可塑性樹脂繊維、ガラス繊維、炭素繊維等であってよい。これらはいずれか1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。バインダとしての第1の熱可塑性樹脂は、後述する第2の熱可塑性樹脂よりも軟化点または融点が高いものであるとよい。また、繊維が熱可塑性樹脂繊維である場合、この熱可塑性樹脂繊維は、これら第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂よりも軟化点または融点が高いものであってよい。このような第1の熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリエステル系樹脂であってよい。第1の熱可塑性樹脂は、一部または全部が、繊維状を呈していてもよい。繊維とバインダとしての第1の熱可塑性樹脂との割合は、繊維:バインダの質量比として、例えば20:80~90:10、50:50~80:20程度とすることができる。
【0027】
基材10は、大まかにはシートバックボード1とほぼ同様の外形を備えている。基材10は、表側に配される表面10A(第1面の一例)と、裏側に配される裏面10B(第2面の一例)とを有する。後で詳しく説明するが、基材10は、展開したときに
図4に示すような形状を有する平らなプレボード10Pにおいて、四方の周縁に設けられた側壁部13Pを裏側に向けて折り曲げることによって構成されている。基材10は、表側に配される意匠面(おもて面)を構成する平坦な主面部11と、主面部11に設けられた溝12と、主面部11の周縁から裏側に向けて延びる側壁部13と、主面部11と側壁部13とを連続する屈曲部14と、貫通孔16と、を含む。貫通孔16は、本実施形態において付加的に設けられる要素である。
【0028】
主面部11は、略矩形の平板状をなし、四隅の角が丸められている。側壁部13は、板片状をなしており、主面部11の丸められた角部(以下、「丸角部」という」を除く四方の端部において、裏面側に向けて延びるように設けられている。これに限定されるものではないが、本例の側壁部13は、主面部11に対して略垂直となるように配されている。屈曲部14は、主面部11と側壁部13との間に配されており、主面部11と側壁部13とを滑らかにつなぐ曲面部である。屈曲部14は、プレボード10Pの表面10Aに設けられた後述する切欠き部15Pが、折り曲げによって開かれた切欠き部15を含む。この切欠き部15は、主面部11および側壁部13と比較して、厚みが薄い。
【0029】
溝12は、主面部11の表面に設けられた凹溝である。本例の溝12は、断面コの字型を呈している。溝12は、反り抑制部24を形成して収容するための型となっている。溝12は、主面部11の裏面に設けられる樹脂成形体21の配列方向に概ね沿うように延びている。本例において溝12は、第1方向に沿って延びる樹脂成形体21を第2方向において挟むように、第1溝12Aと第2溝12Bとの2本が第1方向に沿って平行に離間して設けられている。また、本例において溝12は、第2方向に沿って延びる樹脂成形体21を第1方向において挟むように、第3溝12Cと第4溝12Dとの2本が第2方向に沿って平行に離間して設けられている。
【0030】
貫通孔16は、基材10を貫通し、表面10Aと裏面10Bとを連通する孔である。貫通孔16は、裏面10Bに設けられる樹脂成形体21と、表面10Aに設けられる反り抑制部24および補填部27とを連続するように、反り抑制部24および補填部27の少なくとも一方に重なる位置に設けられる。本例において貫通孔16は、樹脂成形体21と補填部27とが重なる点に設けられている。より具体的には、貫通孔16は、後述する2つの第1ランナー部23A,23B(樹脂成形体21)の両端部であって、4つの補填部27のそれぞれと重なり合う点(各補填部27の長手方向の中央部分)に設けられている。
【0031】
したがって、プレボード10Pは、主面部11と、側壁部13と、屈曲部14とを一つの平らな板状に展開したような形状をなしている。プレボード10Pは、表側に配される表面10AP(第1面の一例)と、裏側に配される裏面10BP(第2面の一例)とを有する。プレボード10Pは、主面部11に対応する主面部11Pと、側壁部13に対応する側壁部13Pと、主面部11Pと側壁部13Pとの間に設けられた屈曲部14に対応する屈曲部14Pと、を含む。屈曲部14Pには、切欠き部15に対応する切欠き部15Pが設けられている。切欠き部15Pは、屈曲部14Pの表面10Aにおいて、断面V字形のV溝として形成されている。4つの切欠き部15Pの長手方向に沿う中央部分には、貫通孔16に対応する貫通孔16Pが設けられている。また、プレボード10Pの主面部11Pには、溝12(第1溝12A~第4溝12D)に対応する溝12P(第1溝12AP~第4溝12DP)が設けられている。プレボード10Pは、主面部11Pよりも一回り大きな略矩形の平板状のプレボードの四隅を、主面部11Pの丸角部と、側壁部13Pとを形成しつつ、残部を取り去る(例えば、型抜き加工する)ことで形成されている。本例のプレボード10Pは、立体的な成形を施す前のスタンパブルシートであるため、各部の厚さ方向の寸法は、基材10に比して圧縮率の分だけ大きくなり、各部の密度は、基材10に比して圧縮率の分だけ小さくなり得る。
【0032】
樹脂部20は、基材10に対して一体的に形成されている。樹脂部20は、その一部が基材10に含侵されていてもよい。樹脂部20は、上述のように、基材10の裏面に備えられる樹脂成形体21と、基材10の表面に備えられる反り抑制部24とおよび補填部27と、4つの側壁部13の間と主面部11とを滑らかに繋ぐ樹脂角部28と、を含む。樹脂成形体21は、クリップ座22と、第1ランナー部23A,23Bと、第2ランナー部23Cと、リブ部23Dと、を含む。これらの樹脂成形体21は、例えば、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性樹脂)によって形成されている。
【0033】
クリップ座22は、基材10の主面部11の裏面10Bから突出する形で形成されている。本例では説明を簡略化するために、クリップ座22は、主面部11の中心に一つ設けられているが、クリップ座22は、2つ以上のものが設けられてもよい。クリップ座22は蓋のある略円筒形をなしており、蓋に設けられた孔部に裏側に向けて突出するようにクリップ(図示せず)を嵌められるようになっている。クリップ座22は、後述する成形型50(下型61)に設けられたクリップ座形成用のキャビティC2内に充填された溶融樹脂が冷却されて硬化することで形成される。
【0034】
リブ部23Dは、主面部11と側壁部13とに接続されている複数の板片状の部材である。リブ部23Dは、主面部11に対して側壁部13を結着させるとともに、主面部11に対する側壁部13の姿勢を支持する要素である。リブ部23Dは、主面部11に対して側壁部13が所定の強度で接合されるようにその接合性を補助する要素であり得る。リブ部23Dは、後述する成形型50(下型61)に設けられたリブ部形成用のキャビティC3内に充填された溶融樹脂が冷却されて硬化することで形成される。
【0035】
第1ランナー部23A,23Bおよび第2ランナー部23Cは、成形型50(下型61)に設けられた第1ランナー64および第2ランナー65に充填された溶融樹脂が冷却されて硬化することで形成されるものである。ここで、第1ランナー64および第2ランナー65とは、クリップ座22およびリブ部23Dを形成するためのキャビティC2,C3に溶融樹脂を送るための流路である。第1ランナー部23A,23Bは、主面部11に対して立設された立壁状をなし、クリップ座22から側壁部13まで第1方向と第2方向とに向けて四方に延びている。本例では、第1方向に沿って延びるものを第1ランナー部23Aで表し、第2方向に沿って延びるものを第1ランナー部23Bで表している。第2ランナーは、主面部11と4つの側壁部13の接合部分のそれぞれに沿うように配され、主面部11と側壁部13の両方に接続されるとともに、第1ランナー部23A,23Bと複数のリブ部23Dとも接続されている。第1ランナー部23A,23Bおよび第2ランナー部23Cはそれぞれの、第1方向または第2方向に沿って、主面部11を横切るように形成されている。
【0036】
反り抑制部24は、樹脂成形体21の製造に起因して主面部11の表面に作用する圧縮応力を緩和し、基材10の反りを抑制するための要素である。本例において反り抑制部24は、樹脂成形体21のうち、主面部11の面方向に沿う寸法の大きい第1ランナー部23A,23Bに起因する反りを抑制するために備えられている。反り抑制部24は、第1溝12A~第4溝12Dに充填された溶融樹脂が冷却されて硬化することで形成されている。反り抑制部24は、第1溝12A~第4溝12Dによって凹没された主面部11の表面が面一となるように形成されている。本例において反り抑制部24は、第1方向に沿って延びる第1ランナー部23Aを第2方向において挟むように、第1反り抑制部24Aと第2反り抑制部24Bとの2本が第1方向に沿って平行に離間して設けられている。また、本例において反り抑制部24は、第2方向に沿って延びる第1ランナー部23Bを第1方向において挟むように、第3反り抑制部24Cと第4反り抑制部24Dとの2本が第2方向に沿って平行に離間して設けられている。反り抑制部24は、第1ランナー部23A,23Bの延びる範囲にわたって設けられているとよい。
【0037】
なお、反り抑制部24の形状については、例えば、第1反り抑制部24Aおよび第2反り抑制部24Bの第2方向に沿う断面積S1(合計値)が、第1ランナー部23Aの第2方向に沿う断面積S2と、次の関係:0.5×S2≦S1≦1.5×S2;を満たすとよい。また、独立して、第3反り抑制部24Cおよび第4反り抑制部24Dの第1方向に沿う断面積S1(合計値)が、第1ランナー部23Bの第1方向に沿う断面積S2と、次の関係:0.5×S2≦S1≦1.5×S2;を満たすとよい。これにより、第1ランナー部23A,23Bに起因する基材10の反りを、反り抑制部24A,24B,24C,24Dによる反り抑制力と好適にバランスさせることができる。これらの断面積S1,S2は、独立して、0.7×S2≦S1≦1.3×S2を満たすと好ましく、0.9×S2≦S1≦1.1×S2を満たすとより好ましい。
【0038】
また、反り抑制部24の形状については、例えば、前記第1方向に交わる第2方向に沿う前記反り抑制部の寸法W1は、前記第2方向に沿う前記樹脂成形体の寸法W2に関して、次の関係:0.8×W2≦W1≦1.2×W2;を満たすとよい。また、独立して、第3反り抑制部24Cおよび第4反り抑制部24Dの第1方向に沿う寸法W1(合計値)は、第1ランナー部23Bの第1方向に沿う寸法W2と、次の関係:0.8×W2≦W1≦1.2×W2;を満たすとよい。このような構成によっても、第1ランナー部23A,23Bに起因する基材10の反りを、反り抑制部24A,24B,24C,24Dによる反り抑制力と好適にバランスさせることができる。なお、第1ランナー部23A,23Bおよび反り抑制部24の寸法L1,L2については、基材と接している部分の寸法とするとよい。また、反り抑制部24の基材10の厚み方向に沿う寸法は、基材10の厚みの50%以下(ここでは約20%)となっている。
【0039】
補填部27は、切欠き部15の表面10Aの側に設けられている。補填部27は、屈曲部14において、主面部11および側壁部13よりも肉薄となっている切欠き部15を埋めて、主面部11の表面10Aと側壁部13の表面10Aとを滑らかに連続させるための要素である。また、補填部27は、基材10の剛性や主面部11と側壁部13の接合強度を高める要素でもある。本例の補填部27は断面形状が扇形となるように形成されている。補填部27は、後述する成形型50に設けられた成形空間C1のうち補填部に対応する部分(キャビティC4)に充填された溶融樹脂が冷却されて硬化することで形成される。また、本例において、基材10の反り抑制部24と補填部27とが接合する点(重なる点)には貫通孔16が設けられている。補填部27は、この貫通孔16に充填された溶融樹脂が冷却されて硬化した部分(連続部)を含む。
【0040】
樹脂角部28は、4つの側壁部13の間と主面部11とを滑らかに繋ぐ要素である。樹脂角部28は、隣り合う側壁部13の間を、主面部11に略垂直な曲面で連続させるとともに、主面部11の丸角部の周縁であって隣り合う屈曲部14の間については断面扇形をなして滑らかに連続するように形成されている。樹脂角部28は、後述する成形型50に設けられた成形空間C1のうち樹脂角部に対応する部分(キャビティC5)内可塑性に充填された溶融樹脂が冷却されて硬化することで形成される。
【0041】
以上の反り抑制部24、補填部27、樹脂角部28は、例えば、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂(第3の熱可塑性樹脂)によって形成されている。本実施形態において、樹脂成形体21を構成する熱可塑性樹脂(第2の熱樹脂)と、反り抑制部24、補填部27、および樹脂角部28を構成する熱可塑性樹脂(第3の熱可塑性樹脂)とは同じである。なお、第2の熱可塑性樹脂と第3の熱可塑性樹脂が異なる場合、これらは相溶性があるとよい。また、第2の熱可塑性樹脂と第3の熱可塑性樹脂は、第1の熱可塑性樹脂ついても相溶性があるとよい。
【0042】
このようなシートバックボード1の製造方法は特に制限されないが、以下に、好適なシートバックボード1の製造方法について説明する。このシートバックボード1の製造方法は、概して、以下の工程を含む。各工程について順に説明する。
S1.プレボードを用意する準備工程
S1-1.溝無しプレボード準備工程
S1-2.溝形成工程
S1-3.連通工程・カット工程
S2.樹脂供給工程
S2-1.冷間プレス工程(プレス成形工程の一例)
S2-2.樹脂注入工程
【0043】
<S1.プレボードを用意する準備工程>
工程S1-1では、溝無しプレボードを用意する。溝無しプレボードは、基材の原料となる繊維(ここでは植物性繊維)と熱可塑性樹脂繊維とを湿式法(抄造法)または乾式法(エアレイ法)で均質に混合してフリースを形成した後、厚み方向で上下するニードル(針)によって繰り返し突くことで繊維同士を絡ませ、次いで、加熱することで繊維同士を結合させた、いわゆるスタンパブルシートと呼ばれるプレス用成形基材である。本工程における加熱は、バインダとしての第1の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂繊維の融点または軟化点以上の温度にまで加熱する。
【0044】
なおこのとき、溝無しプレボードを、
図3に示すように、加熱プレス盤によってプレス成形してもよい。本技術に係る製造方法においては、後工程のプレス工程において、加熱を行わない冷間プレスを採用する。スタンパブルシートは、後工程の低い型締力による非加熱での冷間プレスによって目的の板厚、基材密度に圧縮することができない。したがって、プレボードを用意するこの準備工程の段階で、狙いの板厚、基材密度(すなわち、従来のプレボードよりも高い基材密度)となるように形成する。
【0045】
工程S1-2では、
図4に示すように、プレス用成形基材に、溝12Pを設ける。工程S1-3では、
図4に示すように、プレス用成形基材に、切欠き部15Pと、貫通孔16Pと、を設ける。これらの工程S1-2および工程S1-3は、工程S1-1のあとに行ってもよいし、工程S1-1に重なるように行ってもよい。また、工程S1-2および工程S1-3は、いずれを先に行ってもよいし、2つを並行して行ってもよい。例えば、切欠き部15Pは、上記の工程S1-1における加熱の前に、フリースに対してケガキ加工(カット工程の一例)等を施すことによって形成することができる。また、溝12Pおよび貫通孔16Pは、上記の工程S1-1における加熱によりフリースが一体化されたのち、軟化または溶融された第1の熱可塑性樹脂が硬化する前または硬化した後に、型抜き加工、切削加工、レーザ加工等を施すことによって形成することができる。これにより、プレボード10Pを用意する。
【0046】
<S2.樹脂供給工程>
工程S2-1では、用意したプレボード10Pに対して、第1の熱可塑性樹脂が溶融しない温度で、切欠き部15Pに沿いかつ表面10Aが突出するかたちで折り曲げるように成形型50の成形面により冷間プレスする。これにより、プレボード10Pに対してシートバックボード1の基材10の形状が付与される。このとき、切欠き部15Pが開かれて、屈曲部14が形成される。
【0047】
冷間プレスに際しては、例えば、
図5に示すように、冷間プレスと樹脂射出成形とを同時に行うことができる成形型50を備える基材製造装置40を用いるとよい。基材製造装置40は、周辺に被成形物であるプレボード10Pを加熱する加熱装置を備えていない環境に設置されたものであってよい。基材製造装置40は、
図5に示すように、射出装置41と、成形型50とを備えている。成形型50は、可動型である上型51と、固定型である下型61と、を含む。射出装置41は、例えば、スクリュータイプのものとされ、本実施形態では下型61に設けられている。
【0048】
上型51は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)によって、下型61に対して移動が可能な可動型とされる。上型51を下型61に対して接近離間させることで上型51および下型61の型閉じと、型開きとが可能な構成となっている。
【0049】
下型61は、上型51との対向面である型面61Aが上型51に向かって突き出す形状をなしている。また、上型51は、下型61との対向面である型面51Aが、下型61の形状に対応して凹む形状をなしている。上型51および下型61が型閉じられた閉状態では、上型51と下型61との間には、目的とするシートバックボード1の外形に対応した成形空間C1が形成される。つまり、閉状態において型面51Aと型面61Aとは、基材10の板厚に等しい距離だけ離間して対向配置される(
図8等参照)。これにより、上型51および下型61でプレボード10Pをプレスすると、プレボード10Pが成形空間C1の形状に対応する形に圧縮され、基材10が成形される構成となっている。なお、基材10の板厚、すなわち、閉状態における上型51および下型61の離間距離は、プレボード10Pの板厚よりも圧縮率に応じて小さいものとされる。
【0050】
また
図5~7に示すように、上型51は、上型51の主体となる上主型53と、この上主型53に対して昇降可能なスライド型52とを備える。スライド型52は、上主型53に対して、その型面52Aが、上主型53の型面53Aから下方に突出した突出状態と、上主型53の型面53Aと面一となる退避状態(
図11参照)との間で変位可能とされている。本例のスライド型52は、細長い板片が複数組み合わされることで構成されており、突出状態においてはプレボード10Pの溝12Pに対応する位置に設けられており、下型61に対してプレボード10Pの位置決めを行うことができる。スライド型52の幅(板片の厚み)は、溝12Pの幅と同等かあるいは僅かに小さい寸法とされている。プレボード10Pが下型61に載置され、スライド型52が溝12Pに挿入された状態において、スライド型52と溝12Pとの間には、大きい隙間が生じないように設定されている。一方で、突出状態においてスライド型52を溝12Pに挿入したのち、スライド型52を退避状態とすると、スライド型52とプレボード10Pとの間には、反り抑制部24を形成するためのキャビティC6(
図11等参照)が形成されるようになっている。
【0051】
また、閉状態の成形型50には、プレボード10Pとの間に、補填部27を形成するためのキャビティC4(
図8,10参照)と、樹脂角部28を形成するためのキャビティC5(
図5参照)と、が形成されるようになっている。成形空間C1には、キャビティC4,C5が予め含まれている。
【0052】
下型61の型面61Aには、上述したクリップ座22を成形するためのクリップ座成形用のキャビティC2が、型面61Aに開口するように凹設されている。下型61は、アンダーカット構造のクリップ座22を形成するための図示しないスライド機構を備えている。
【0053】
また、下型61の型面61Aには、リブ部23Dを成形するためのリブ部形成用のキャビティC3(
図5参照)が、型面61Aに開口するように凹設されている。さらに、下型61の型面61Aには、第1ランナー部23A,23Bおよび第2ランナー部23Cを成形するための第1ランナー64よび第2ランナー65が、型面61Aに開口する溝状に凹設されている。
【0054】
第2ランナー65は、下型61の上方に突き出した部分の端部(角部)に沿って、周回するように設けられている。つまり、第2ランナー65は、位置決めされたプレボード10Pの屈曲部14に対応する位置に延びている。第1ランナー64は、クリップ座成形凹部と第2ランナー65との間を連結するように、第2ランナー65の延び方向と交差する方向に延びている。射出装置41は、第1ランナー64のうち、第2ランナー65に近い位置に連通するように、樹脂を射出する射出口であるゲート42を備えている。
【0055】
このような基材製造装置40において、
図8~10に示すように、第1の熱可塑性樹脂が溶融しない温度(例えば常温(25℃))で、スライド型52を突出状態としてプレボード10Pの位置決めをしたのち、成形型50を型閉じする。スライド型52を溝12に合わせる位置決め工程を採用することにより、下型61に対するプレボード10Pの成形時の位置ずれをより確実に抑制することができる。これにより、プレボード10Pの主面部11Pをプレスしつつ、切欠き部15Pに沿って、かつ、表面10APが突出するかたちで側壁部13を裏側に向けて折り曲げることができる。このとき、プレボード10Pの切欠き部15Pは開かれて、切欠き部15が形成される。本例においては、これにより、溝付きの基材10が形成される。
【0056】
工程S2-2では、基材10の表面10Aと裏面10Bとに樹脂部20を形成するための第2の熱可塑性樹脂を供給する。より具体的には、
図11に示すように、成形型50を閉状態としたまま、かつ、スライド型52を退避状態として、
図12~14に示すように、射出装置41からゲート42を通じて第1ランナー64に溶融状態にある第2の熱可塑性樹脂(以下、溶融樹脂という)を射出する。これにより、まず裏面10Bに溶融樹脂を供給することができる。第1ランナー64に射出された溶融樹脂は、第1ランナー64に連続するクリップ座形成用のキャビティC2と、リブ部形成用のキャビティC3と、第2ランナー65とに供給される。すると、第2ランナー65に供給された溶融樹脂は、第2ランナー65に連続する貫通孔16を介して、補填部形成用のキャビティC4と、反り抑制部形成用のキャビティC6と、樹脂角部形成用のキャビティC5と、に供給される。これにより、表面10Aにも溶融樹脂を供給することができる。
【0057】
第1ランナー64,第2ランナー65,貫通孔16,キャビティC2~C6に供給した樹脂が冷却されて硬化することで、樹脂成形体21(すなわち、クリップ座22,第1ランナー部23A,23B,第2ランナー部23C,およびリブ部23D)と、反り抑制部24と、補填部27(貫通孔16に供給された溶融樹脂が硬化してなる連続部を含む。)と、樹脂角部28と、が基材10に一体的に形成される。その後、
図15~17に示すように、成形型50を型開きすることで、裏面10Bに樹脂成形体21を備え、表面10Aに反り抑制部24を備えるシートバックボード1が製造される。
【0058】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。上記実施形態において、シートバックボード1(樹脂成形体付基材)は、繊維および第1の熱可塑性樹脂を含み、表面10A(第1面)および表面10Aと反対側の裏面10B(第2面)を有する板状の基材10と、基材10の裏面10Bに備えられ、第1方向に沿って延びる第1ランナー部23A(樹脂成形体21)と、を備え、基材10の表面10Aには、第1方向に沿って延びる溝12A,12Bが備えられるとともに、溝12A,12Bには第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる反り抑制部24A,24Bが備えられている。また、基材10の裏面10Bに備えられ、第2方向に沿って延びる第1ランナー部23B(樹脂成形体21)を備え、基材10の表面10Aには、第2方向に沿って延びる溝12C,12Dが備えられるとともに、溝12C,12Dには第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる反り抑制部24C,24Dが備えられている。
【0059】
樹脂成形体21を構成する熱可塑性樹脂は、一般に、溶融状態から固化状態に変態するときに熱収縮を伴い、その熱収縮率は基材10よりも大きい。したがって、基材10に樹脂成形体21を一体的に形成するとき、基材10も加熱して樹脂成形体21を一体形成すると、その熱収縮率の差に起因する基材10の反りを緩和することができるものの、基材10を加熱せずに樹脂成形体21を一体形成すると、熱収縮率の差に起因する基材10の反りが顕著に表れてしまう。とりわけ、第1方向に沿って延びる第1ランナー部23Aについてはその冷却硬化過程において、裏面10Bに第1方向に沿う圧縮応力を生じ、第2方向に沿って延びる第1ランナー部23Bについてはその冷却硬化過程において、裏面10Bに第2方向に沿う圧縮応力を生じる。上記構成によれば、基材10の一方の面には第1ランナー部23A,23B(樹脂成形体21)が設けられるとともに、他方の面には第1ランナー部23A,23Bに沿うように、第1方向および第2方向のそれぞれに沿って延びる反り抑制部24A~24Dが設けられている。これにより、基材10の表裏の板面において、樹脂成形体21の熱収縮に起因する圧縮応力と、反り抑制部24に起因する圧縮応力とがバランスし、基材10の反りが抑制される。
【0060】
上記実施形態において、溝12は、第1方向に交わる第2方向において第1ランナー部23A(樹脂成形体21)を挟むように設けられた第1溝12Aと第2溝12Bとを含み、反り抑制部24は、第1溝12Aと第2溝12Bとに第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる第1反り抑制部24Aと第2反り抑制部24Bとを含む。また、溝12は、第2方向に交わる第1方向において第1ランナー部23B(樹脂成形体21)を挟むように設けられた第3溝12Cと第4溝12Dとを含み、反り抑制部24は、第3溝12Cと第4溝12Dとに第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる第3反り抑制部24Cと第4反り抑制部24Dとを含む。上記構成によると、熱可塑性樹脂の熱収縮に起因する圧縮応力が、基材に局所的に作用することを抑制することができる。
【0061】
上記実施形態において、第1方向に交わる第2方向における反り抑制部24A,24Bの断面積S1は、第2方向における第1ランナー部23A(樹脂成形体21)の断面積S2に関して、次の関係:0.5×S2≦S1≦1.5×S2;を満たす。また、第2方向に交わる第1方向における反り抑制部24C,24Dの断面積S1は、第1方向における第1ランナー部23B(樹脂成形体21)の断面積S2に関して、次の関係:0.5×S2≦S1≦1.5×S2;を満たす。上記構成によると、樹脂成形体に起因して基材の裏面10B(第2面)に作用する圧縮応力と、反り抑制部24に起因して基材の表面10A(第1面)に作用する圧縮応力とを、効果的にバランスさせることができる。
【0062】
上記実施形態において、第1方向に交わる第2方向に沿う反り抑制部24A,24Bの寸法W1は、第2方向に沿う第1ランナー部23A(樹脂成形体21)の寸法W2に関して、次の関係:0.8×W2≦W1≦1.2×W2;を満たす。また独立して、第2方向に交わる第1方向に沿う反り抑制部24C,24Dの寸法W1は、第1方向に沿う第1ランナー部23B(樹脂成形体21)の寸法W2に関して、次の関係:0.8×W2≦W1≦1.2×W2;を満たす。上記構成によると、第1ランナー部23A,23Bの基材10の板面からの高さが高い場合等に、第1ランナー部23A,23Bに起因して基材10の裏面10B(第2面)に作用する圧縮応力と、反り抑制部に起因して基材10の表面10A(第1面)に作用する圧縮応力とを、効果的にバランスさせることができる。
【0063】
上記実施形態において、反り抑制部24の基材10の厚み方向に沿う寸法(つまり高さ)は、基材10の厚みの約20%(50%以下の一例)である。上記構成によると、反り抑制部24を設けることによる基材10の強度低下を回避しつつ、その反りを抑制することができる。
【0064】
上記実施形態において、基材10を貫通する貫通孔16を備えるとともに、貫通孔16の内部には第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる連続部(補填部27の一部)が設けられており、樹脂成形体21と反り抑制部24とは連続部を介して連続している。上記構成によると、第2の熱可塑性樹脂を基材の裏面10Bに供給することで表面10Aの反り抑制部24等を形成することができ、この基材10を簡便に製造することが可能とされ、例えば、低コストな基材として提供され得る。また、反り抑制部24等を形成するためのゲート跡等が表面10Aに露出しないため、シートバックボード1の表面10Aの意匠性が高められる。
【0065】
上記実施形態において、表面10A(第1面)が突出するように折り曲げられた屈曲部14(折曲部)を有し、屈曲部14は溝12と連続しており、屈曲部14の前記第1面に連続する角部には前記第2の熱可塑性樹脂が充填されてなる補填部が備えられている。基材を加熱せずに折り曲げる場合、柔軟性のない基材を折り曲げることになるため、折曲部の外表面においては基材が裂けるなどして表面の滑らかさが失われたり基材が肉薄になって強度低下することが考えられる。上記構成によると、折曲部には、反り抑制部に連続して樹脂部が設けられているため、樹脂部によって基材の表面を滑らかにしたり板厚を均したりすることができる。これにより、多様な形態の基材を提供することができる。
【0066】
他の側面において、ここに開示される技術に係る樹脂成形体付基材の製造方法は、繊維と第1の熱可塑性樹脂とを含み、第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する板状の基材であって、前記第2面に設けられる予定の第1方向に延びる樹脂成形体に沿うように、前記第1面において前記第1方向に沿って延びる溝を備える基材を用意する準備工程と、前記第1の熱可塑性樹脂が溶融しない温度で、前記基材の前記第2面に前記樹脂成形体を形成するための第2の熱可塑性樹脂を供給するとともに、前記第1面の前記溝に第3の熱可塑性樹脂を供給することで、前記第2面に前記樹脂成形体を備え前記第1面の前記溝内に前記第3の熱可塑性樹脂が充填されてなる反り抑制部を備える樹脂成形体付基材を得る、樹脂供給工程と、を含む。
【0067】
上記構成によると、基材の一方の面に樹脂成形体を形成することにあわせて、プ基材の他方の面に樹脂成形体に沿うように反り抑制部を設けることで、基材を加熱することなく樹脂成形体付基材を製造することができる。これにより、基材の表裏の板面において、熱可塑性樹脂の熱収縮に起因する圧縮応力と、反り抑制部に起因する圧縮応力とをバランスさせることができ、工程数を大きく増やすことなく非加熱で、反りの抑制された樹脂成形体付基材を製造することができる。
【0068】
上記実施形態において、前記準備工程は、前記繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含み、前記第1面と前記第2面とを有するものの前記溝を備えていない板状の溝無しプレボードを用意するプレボード準備工程と、前記溝無しプレボードの前記第2面に前記溝を設ける溝形成工程と、を含む。本技術における基材は、予め溝の形成されているものを入手してもよいし、溝の形成されていないプレボードを用意して溝を形成して用いてもよい。ここで、予め溝の形成されている基材は、用途が制限されたり、短期間での設計変更に対応しづらいというデメリットがある。上記構成によると、例えば、用途が制限されていないプレボードを用いてここに開示される基材を製造することができる。
【0069】
上記実施形態において、前記第2の熱可塑性樹脂と前記第3の熱可塑性樹脂とは同一であり、前記準備工程は、前記繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含み、前記第1面と前記第2面とを有するものの前記溝を備えていない板状の溝無しプレボードを用意するプレボード準備工程と、前記プレボードを貫通する貫通孔を設けるとともに、前記貫通孔と前記溝とを連通させる切り込みを入れる連通工程と、を含み、前記樹脂供給工程において、前記プレボードの前記第2面に前記樹脂成形体を形成するための前記第2の熱可塑性樹脂を供給し、前記貫通孔を介して前記第2の熱可塑性樹脂を前記第1面に送り前記溝に供給する。上記構成によると、プレボードには貫通孔が設けられていることから、一方の面に第2の熱可塑性樹脂を供給することで、貫通孔を通じて、他方の面にも第2の熱可塑性樹脂を送ることができる。これにより、基材の製造装置を簡素化して基材を作製することができる。
【0070】
上記実施形態において、前記準備工程は、前記繊維と前記第1の熱可塑性樹脂とを含み、前記第1面と前記第2面とを有するものの前記溝を備えていない板状の溝無しプレボードを用意するプレボード準備工程と、前記プレボードの前記第1面における所定箇所に切り込みを入れるカット工程と、前記第1の熱可塑性樹脂が溶融しない温度で、前記プレボードを前記切り込みに沿いかつ前記第1面が突出するかたちで折り曲げるように成形型の成形面によりプレスして、前記切り込みが開かれてなる前記切欠き部を形成する、プレス成形工程と、を含み、前記樹脂供給工程において、前記切欠き部に前記第2の熱可塑性樹脂を充填する。上記構成によると、基材のプレス成形を併せて行い、非加熱でのプレス成形により生じる基材の形状不良を、樹脂供給工程において熱可塑性樹脂を充填することによって補うようにしている。これにより、効率よく、非加熱で、多様な形態の基材を製造することができる。
【0071】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0072】
(1)上記実施形態では、1つの第1ランナー部23A,23Bに対して、2つの反り抑制部24A~24B,24C~24Dを設ける形態を示したが、第1ランナー部23A,23Bに対して設ける反り抑制部24の数は限定されない。例えば
図18に示すように、1つのランナー部に対して、1つの反り抑制部が設けられていてもよい。また、1つのランナー部に対して、3つ以上の反り抑制部が設けられていてもよい。反り抑制部の設置面積および樹脂量を減らして軽量化を図るとの観点からは、1~3つ程度の反り抑制部をランナー部に対して平行に設けるとよい。
【0073】
(2)上記実施形態1では、第2ランナー部23Cは、裏面10Bにおいて主面部11と側壁部13の接合部分に沿うように配されていた。しかしながら第2ランナー部23Cの位置はこれに限定されず、側壁部13からやや離れた位置において側壁部13の裏面に沿うように配されて、第1ランナー部23A,23Bと複数のリブ部23Dとに接続されていてもよい。
【0074】
(3)上記実施形態1では、抄造法/エアレイ法、ニードルパンチ法、およびサーマルボンド法を組み合わせてプレボードを作製していた。しかしながらプレボードの製造方法はこれに限定されず、例えば、スパンボンド法、ケミカルボンド法、水流結合法、ラミネート法等の従来公知の各種の方法を組み合わせてもよい。
【0075】
(4)上記実施形態では、基材10に貫通孔16を設け、裏面10Bのみに溶融樹脂を供給して表裏の樹脂部20を形成する形態としたが、貫通孔16は必ず設ける必要はなく、表面10Aと裏面10Bとの両方に溶融樹脂を供給するようにしてもよい。
【0076】
(5)また、上記実施形態では、第2の熱可塑性樹脂と第3の熱可塑性樹脂が、同一の熱可塑性樹脂である形態を示したが、これらは異なる種類の熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。
【0077】
(6)上記実施形態では、樹脂成形体の一つとしてクリップ座22をシートバックボードの中央に一つ設けた形態を示したが、クリップ座は、シートバックボードの周縁に沿って複数個が設けられていてもよいし、クリップ座を設けない構成であってもよい。これに伴い、クリップ座やリブ等に溶融樹脂を送るための第1ランナー部,および第2ランナー部の形態や配置についても任意に変更することができる。
【0078】
(7)上記実施形態では、スライド型52の平面形状を溝12と同じとなるように設計していた。しかしながら、スライド型52の平面形状は、下型に対するプレボードの位置決めをできる程度のものとして、溝12の一部(例えば、4カ所)を押さえる構成のものであってよい。
【0079】
(8)上記実施形態では、プレボードに設ける切り込みを断面がV字形のV溝としていた。プレボードに設ける切り込みの形状はこれに限らず、U字形、コ字形等と適宜変更することができる。
【0080】
(9)上記実施形態では、反り抑制部の形態を、樹脂成形体の延設方向に交わる方向における断面積や、延設方向に沿う寸法、およびその両方を基準として決定する例について開示していた。しかしながら、反り抑制部の形態は、延設されている樹脂成形体と基材との接合部の面積を一つの基準として考慮してもよい。例えば、延設されている樹脂成形体と基材との接合部の面積S11は、反り抑制部と基材との接合部の面積S12に関して、0.5×S12≦S11≦1.5×S12の関係、より好ましくは、0.8×S12≦S11≦1.2×S12の関係を満たすとよい。
【符号の説明】
【0081】
1…シートバックボード、10…基材、10A…表面、10B…裏面、12,12A,12B,12C,12D…溝、13…側壁部、14…屈曲部、15…切欠き部、16…貫通孔、20…樹脂部、23A,23B…第1ランナー部(樹脂成形体)、24,24A,24B,24C,24D…反り抑制部、10P…プレボード、10AP…表面、10BP…裏面、12P…溝、14P…屈曲部、15P…切欠き部、16P…貫通孔