(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/182 20200101AFI20241106BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20241106BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20241106BHJP
【FI】
B60W30/182
B60W40/08
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2021077989
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 弦
(72)【発明者】
【氏名】井上 三樹男
(72)【発明者】
【氏名】山本 玲子
(72)【発明者】
【氏名】田島 正夫
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0307647(US,A1)
【文献】特開2020-055347(JP,A)
【文献】特開2007-261327(JP,A)
【文献】特開2007-022263(JP,A)
【文献】特開2006-175144(JP,A)
【文献】特開2003-063290(JP,A)
【文献】特開2006-224808(JP,A)
【文献】特開2005-199993(JP,A)
【文献】特開2018-177188(JP,A)
【文献】特開2020-165692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B62D 6/00- 6/10
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたシートに着座した乗員の睡眠深度を推定する睡眠深度推定部と、
走行中の前記車両の挙動に起因して所定時間内に前記乗員に及ぶ外力を予測する外力予測部と、
前記睡眠深度推定部が推定した少なくとも一人の前記乗員の前記睡眠深度が所定の基準深度以下の場合又は覚醒している場合は、
走行中の前記車両の前記乗員に及ぶ前記外力の大きさが第1閾値以下となるように前記車両を制御し、全ての前記乗員の前記睡眠深度が前記基準深度より深い場合は、
走行中の前記車両の前記乗員に及ぶ前記外力の大きさが前記第1閾値より大きい第2閾値以下となるように前記車両を制御する制御部と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
少なくとも一人の前記乗員の前記睡眠深度が前記基準深度以下の場合又は覚醒している場合に、前記制御部が、前記外力が前記乗員に及ぶときに前記シートを前記外力の方向と同じ方向に移動させる請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記外力予測部が、
前記車両が走行する道路を撮像した画像データ及び前記道路に関する情報が含まれる地図情報の少なくとも一方から得られた前記道路の曲率半径、傾斜角及び前記道路の路面の凹凸の少なくとも一つに基づいて前記外力を予測する請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記外力予測部が、前記曲率半径に基づいて、前記乗員に及ぶ遠心力を前記外力として予測し、
前記制御部が、前記車両の幅方向に沿って前記シートを前記遠心力と同じ方向に移動させる請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記シートが、前記乗員の腰部が載るシートクッションと、前記シートクッションに回転可能に支持され且つ前記乗員の背部が接触するシートバックと、前記シートバックの前記シートクッションに対する角度を調整するリクライニング機構と、を備え、
前記外力予測部が、前記道路の前記傾斜角に起因して前記乗員に及ぶ前記外力を予測し、
前記制御部が前記リクライニング機構を制御して、前記傾斜角に起因する前記外力の方向と同じ方向へ前記シートバックを回転させる請求項3又は請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記シートが、前記乗員の腰部が載るシートクッションと、前記シートクッションに回転可能に支持され且つ前記乗員の背部が接触するシートバックと、前記シートバックの前記シートクッションに対する角度を調整するリクライニング機構と、を備え、
前記睡眠深度が前記基準深度より深い場合に、前記制御部が、前記リクライニング機構を制御して前記シートバックと前記シートクッションとがなす角度を、前記睡眠深度が前記基準深度以下の場合又は覚醒している場合より大きくする請求項1~5の何れか1項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の乗員の状態を検知し、乗員の状態に応じて車両の自動運転モードを変更する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、将来的に車両の乗員に及ぶと予測される外力を考慮せずに、自動運転モードを変更する。そのため上記特許文献1は、車両の挙動に起因して車両の乗員に将来的に大きな外力が及ぶことを抑制することに関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートに着座した乗員の睡眠深度を考慮しながら、車両の挙動に起因して大きな外力が乗員に及ぶことを抑制可能な車両制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両制御装置は、車両に設けられたシートに着座した乗員の睡眠深度を推定する睡眠深度推定部と、走行中の前記車両の挙動に起因して所定時間内に前記乗員に及ぶ外力を予測する外力予測部と、前記睡眠深度推定部が推定した少なくとも一人の前記乗員の前記睡眠深度が所定の基準深度以下の場合又は覚醒している場合は、走行中の前記車両の前記乗員に及ぶ前記外力の大きさが第1閾値以下となるように前記車両を制御し、全ての前記乗員の前記睡眠深度が前記基準深度より深い場合は、走行中の前記車両の前記乗員に及ぶ前記外力の大きさが前記第1閾値より大きい第2閾値以下となるように前記車両を制御する制御部と、を備える。
【0007】
請求項1に記載の車両制御装置では、車両に設けられたシートに着座した乗員の睡眠深度を睡眠深度推定部が推定する。さらに外力予測部が、走行中の車両の挙動に起因して所定時間内に乗員に及ぶ外力を予測する。さらに制御部が、睡眠深度推定部が推定した少なくとも一人の乗員の睡眠深度が所定の基準深度以下の場合又は覚醒している場合は、走行中の車両の乗員に及ぶ外力の大きさが第1閾値以下となるように車両を制御する。さらに制御部が、全ての乗員の睡眠深度が基準深度より深い場合は、走行中の車両の乗員に及ぶ外力の大きさが第1閾値より大きい第2閾値以下となるように車両を制御する。
【0008】
このように請求項1に記載の車両制御装置の制御部は、実際に乗員に及んだ外力の大きさに基づいて車両を制御するのではない。即ち、制御部は、所定時間内に乗員に及ぶと予測される外力を考慮しながら、乗員に及ぶ外力が所定の閾値以下となるように車両を制御する。そのため請求項1に記載の車両制御装置は、車両の挙動に起因して大きな外力が乗員に及ぶことを抑制可能である。
【0009】
さらに請求項1に記載の車両制御装置の制御部は、少なくとも一人の乗員の睡眠深度が基準深度以下の場合又は覚醒している場合は、乗員に及ぶ外力の大きさが第1閾値以下となるように車両を制御する。さらに制御部は、全ての乗員の睡眠深度が基準深度より深い場合は、乗員に及ぶ外力の大きさが第1閾値より大きい第2閾値以下となるように車両を制御する。即ち、制御部は、シートに着座した乗員の睡眠深度を考慮しながら車両を制御する。そのため、全ての乗員の睡眠深度が基準深度より深い場合に許容される車速は、睡眠深度が基準深度以下の場合に許容される車速より高い。従って、全ての乗員の睡眠深度が基準深度より深い場合は、睡眠深度が基準深度以下の場合と比べて、車両を高い車速で走行させることが可能になる。
【0010】
従って、請求項1に記載の車両制御装置は、シートに着座した乗員の睡眠深度を考慮しながら、車両の挙動に起因して大きな外力が乗員に及ぶことを抑制可能である。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る車両制御装置は、請求項1記載の発明において、少なくとも一人の前記乗員の前記睡眠深度が前記基準深度以下の場合又は覚醒している場合に、前記制御部が、前記外力が前記乗員に及ぶときに前記シートを前記外力の方向と同じ方向に移動させる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、少なくとも一人の乗員の睡眠深度が基準深度以下の場合又は覚醒している場合に、制御部がシートを外力の方向と同じ方向に移動させることにより、乗員に大きな外力が及ぶことを抑制する。さらに制御部は、睡眠深度が基準深度以下の場合又は覚醒している場合にのみ、このような制御を実行する。従って、睡眠深度が基準深度より深い場合もこのような制御を実行する場合と比べて、車両の制御に必要なエネルギーの消費量が抑えられる。
【0013】
請求項3に記載の発明に係る車両制御装置は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記外力予測部が、前記車両が走行する道路を撮像した画像データ及び前記道路に関する情報が含まれる地図情報の少なくとも一方から得られた前記道路の曲率半径、傾斜角及び前記道路の路面の凹凸の少なくとも一つに基づいて前記外力を予測する。
【0014】
請求項3に記載の発明では、外力予測部が、車両が走行する道路を撮像した画像データ及び道路に関する情報が含まれる地図情報の少なくとも一方から得られた道路の曲率半径及び傾斜角の少なくとも一つに基づいて、所定時間内に乗員に及ぶ外力を予測する。そのため外力予測部は、例えば、道路の曲率半径に基づいて、所定時間内に乗員に及ぶ遠心力(外力)を予測可能である。また、外力予測部は、道路の傾斜角に基づいて、所定時間内に乗員に及ぶ道路の延長方向(車両前後方向)の外力を予測可能である。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る車両制御装置は、請求項3記載の発明において、前記外力予測部が、前記曲率半径に基づいて、前記乗員に及ぶ遠心力を前記外力として予測し、前記制御部が、前記車両の幅方向に沿って前記シートを前記遠心力と同じ方向に移動させる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、所定時間内に乗員に、道路の曲率半径に起因する遠心力が車両に外力として及ぶと予測したときに、制御部が車両の幅方向に沿ってシートを遠心力と同じ方向へ移動させる。このときシートに遠心力の方向と反対方向の慣性力が発生し、遠心力の一部がこの慣性力と相殺される。従って、車両が湾曲した道路を走行するときに、乗員に大きな遠心力(車両の幅方向の外力)が及ぶことが抑制される。
【0017】
請求項5に記載の発明に係る車両制御装置は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記シートが、前記乗員の腰部が載るシートクッションと、前記シートクッションに回転可能に支持され且つ前記乗員の背部が接触するシートバックと、前記シートバックの前記シートクッションに対する角度を調整するリクライニング機構と、を備え、前記外力予測部が、前記道路の傾斜角に起因して前記乗員に及ぶ前記外力を予測し、前記制御部が前記リクライニング機構を制御して、前記傾斜角に起因する前記外力の方向と同じ方向へ前記シートバックを回転させる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、所定時間内に乗員に、道路の傾斜角に起因する外力が車両に及ぶと予測したときに、制御部が、道路の傾斜角に起因する外力の方向と同じ方向へシートバックを回転させる。このときシートに当該外力の方向と反対方向の慣性力が発生し、当該外力の一部がこの慣性力と相殺される。従って、車両が傾斜した道路を走行するときに、乗員に傾斜角に起因する大きな外力が及ぶことが抑制される。
【0019】
請求項6に記載の発明に係る車両制御装置は、請求項1~5の何れか1項記載の発明において、前記シートが、前記乗員の腰部が載るシートクッションと、前記シートクッションに回転可能に支持され且つ前記乗員の背部が接触するシートバックと、前記シートバックの前記シートクッションに対する角度を調整するリクライニング機構と、を備え、前記睡眠深度が前記基準深度より深い場合に、前記制御部が、前記リクライニング機構を制御して前記シートバックと前記シートクッションとがなす角度を、前記睡眠深度が前記基準深度以下の場合又は覚醒している場合より大きくする。
【0020】
請求項6に記載の発明では、睡眠深度が基準深度より深い場合に、制御部が、リクライニング機構を制御してシートバックとシートクッションとがなす角度を、眠深度が基準深度以下の場合又は覚醒している場合より大きくする。従って、眠りが深い状態にある乗員が、深い眠りを維持し易くなる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る車両制御装置は、シートに着座した乗員の睡眠深度を考慮しながら、車両の挙動に起因して大きな外力が乗員に及ぶことを抑制可能である、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る車両制御装置を備える車両の天井部を省略して示す模式的な平面図である。
【
図2】
図1に示される車両の前席及び乗員の模式的な側面図である。
【
図3】シートのヘッドレストの模式的な断面図である。
【
図4】
図1に示される車両の後席及び乗員の模式的な側面図である。
【
図5】
図1に示される車両のECUの概略ブロック図である。
【
図6】
図5に示されるECUの機能ブロック図である。
【
図7】車両が凹凸を有する道路を走行する状態を示す側面図である。
【
図8】車両が湾曲部を有する道路を走行する状態を示す平面図である。
【
図9】車両が道路の水平部から傾斜部へ移動する状態を示す側面図である。
【
図10】シートのヘッドレストと乗員の頭部を示す模式的な側面図である。
【
図11】比較例のシートのヘッドレストと乗員の頭部を示す模式的な側面図である。
【
図12】リフタ機構によって昇降させられたシートの模式的な側面図である。
【
図13】リクライニング機構によってシートバックが回転させられたシートの模式的な側面図である。
【
図14】ECUが行う処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態に係る車両制御装置10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両左右方向(車両幅方向)の左側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示す。
【0024】
図1に示されるように、車両制御装置10が搭載された車両12の車体14のインストルメントパネル14Cにはステアリングホイール14Dが設けられている。さらに車室14Aには前席16が設けられている。
図2に示されるように、前席16には乗員P1が着座している。前席16は、シート19と、スライドレール装置20と、を有する。
【0025】
図2に示されるように、車室14Aのフロア14Bには、前席16のシート19を左右方向にスライド可能に支持するスライドレール装置20が設けられている。スライドレール装置20は、フロア14Bに固定された左右方向に延在する前後一対のロアレール21と、各ロアレール21に左右方向にスライド可能に支持された前後一対のアッパレール22と、を有する。スライドレール装置20は、電動モータからなる第1アクチュエータ24と、動力伝達機構(図示省略)と、を有する。第1アクチュエータ24が正転しながら駆動力を発生すると、この駆動力が動力伝達機構からアッパレール22に伝わり、アッパレール22がロアレール21に対して左方へスライドする。第1アクチュエータ24が逆転しながら駆動力を発生すると、この駆動力が動力伝達機構からアッパレール22に伝わり、アッパレール22がロアレール21に対して右方へスライドする。
【0026】
前後のアッパレール22にシート19が支持されている。シート19は、シートクッション19A、シートバック19B及びヘッドレスト19Cを有する。前後のアッパレール22の上端部にシートクッション19Aが固定されている。シートクッション19Aの後端部とシートバック19Bの下端部はリクライニング機構26を介して回転可能に接続されている。リクライニング機構26には第2アクチュエータ28が設けられている。第2アクチュエータ28が正転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリクライニング機構26が回転し、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して前方に相対回転する。第2アクチュエータ28が逆転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリクライニング機構26が回転し、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して後方に相対回転する。
【0027】
図2及び
図3に示されるように、ヘッドレスト19Cは、クッション部19C1と、上端部がクッション部19C1に固定された左右一対のステー19C2と、を有する。左右のステー19C2は、シートバック19Bの上端部に上下方向にスライド可能に支持されている。
【0028】
クッション部19C1は、その後部をなす基部19C3と、基部19C3の左右両端部から前方の延びる一対の側部19C4と、を有する。即ち、クッション部19C1の平面形状はU字形である。クッション部19C1の外形は可撓性を有する外皮材19C5によって構成されている。外皮材19C5の内部空間には、平面視U字形をなす袋体19C6と、複数のバネ19C7と、クッション材(図示省略)と、が設けられている。袋体19C6は可撓性材料によって構成されている。袋体19C6の内部には液体(図示省略)が充填されている。各バネ19C7の一端は袋体19C6に支持され、他端は外皮材19C5の内周面に支持されている。
【0029】
図1に示されるように乗員P1が前席16(シート19)に着座すると、乗員P1の腰部P1aがシートクッション19Aに支持され、背部P1bがシートバック19Bに支持され、頭部P1cがクッション部19C1に支持される。さらに
図3に示されるように、頭部P1cの後部及び両側部がクッション部19C1によって囲まれる。例えば、
図3に示されるように、頭部P1cの後部が基部19C3によって支持され、頭部P1cの両側部が一対の側部19C4によって支持される。
【0030】
図1及び
図4に示されるように、フロア14Bには前席16より後方側に位置する左右一対の後席30が設けられている。各後席30は、シート19と、リフタ機構32と、を有する。
【0031】
フロア14Bに設けられたリフタ機構32は、電動モータからなる第3アクチュエータ34を有する。
図4ではリフタ機構32が模式的に描かれている。リフタ機構32は、例えば特開2012-62020号公報に開示された構成である。リフタ機構32の上端部にシート19のシートクッション19Aが支持されている。第3アクチュエータ34が正転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリフタ機構32が上下方向に伸長する。第3アクチュエータ34が逆転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリフタ機構32が上下方向に短縮する。このリフタ機構32が上下方向に伸長及び短縮するとき、側面視におけるシートクッション19Aの水平方向(前後方向)に対する角度が変化する。
【0032】
後席30には乗員P2が着座している。乗員P2が後席30(シート19)に着座すると、乗員P2の腰部P2aがシートクッション19Aに支持され、背部P2bがシートバック19Bに支持され、頭部P2cがクッション部19C1に支持される。さらに頭部P2cの後部及び両側部がクッション部19C1によって囲まれる。例えば、
図3に示されるように、頭部P2cの後部が基部19C3によって支持され、頭部P2cの両側部が一対の側部19C4によって支持される。
【0033】
図示は省略してあるが、車両12は前席16及び各後席30にそれぞれ対応する3つのシートベルト装置を備える。前席16に着座した乗員P1及び各後席30に着座した乗員P2には、対応するシートベルト装置が装着される。
【0034】
図1に示されるように、車両12に設けられた4つの車輪38(
図1に2つの前輪のみ図示)の近傍には、各車輪38の車輪速を検出する車輪速センサ40(
図1に2つのみ図示)が設けられている。さらに車両12には、各車輪38に制動力を付与可能な4つのブレーキ装置42(
図1に2つのみ図示)が設けられている。さらに車両12の前部にはエンジン46が設けられている。
【0035】
図2に示されるように、車体14に設けられたフロントウィンドシールド14Eの後面にはカメラ50が設けられている。カメラ50は、フロントウィンドシールド14Eより前方に位置する被写体を撮像可能である。
【0036】
さらに
図2及び
図4に示されるように、前席16及び後席30のシート19のシートバック19Bの内部には心拍計52が設けられている。前席16の心拍計52は、前席16に着座した乗員P1の心拍数を計測する。後席30の心拍計52は、後席30に着座した乗員P2の心拍数を計測する。
【0037】
さらに
図1に示されるように、車両12にはGPS受信機54が設けられている。GPS受信機54は、人工衛星から送信されたGPS信号に基づき車両12が走行している地点の位置情報(緯度、経度等)を所定周期で取得する。
【0038】
さらにインストルメントパネル14Cには自動運転スイッチ56が設けられている。
【0039】
図1に示されるように、車両12にはECU60が設けられている。ECU60は、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28、第3アクチュエータ34、車輪速センサ40、ブレーキ装置42、エンジン46、カメラ50、心拍計52、GPS受信機54及び自動運転スイッチ56に電気的に接続されている。
図5に示されるようにECU60は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)60A、ROM(Read Only Memory)60B、RAM(Random Access Memory)60C、ストレージ60D、通信I/F(Inter Face)60E及び入出力I/F60Fを含んで構成されている。CPU60A、ROM60B、RAM60C、ストレージ60D、通信I/F60E及び入出力I/F60Fは、バス60Zを介して相互に通信可能に接続されている。ECU60は、タイマー(図示省略)から日時に関する情報を取得可能である。
【0040】
CPU60Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU60Aは、ROM60B又はストレージ60Dからプログラムを読み出し、RAM60Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU60Aは、ROM60B又はストレージ60Dに記録されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0041】
ROM60Bは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM60Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ60Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。通信I/F60Eは、ECU60が他の機器と通信するためのインタフェースである。入出力I/F60Fは、様々な装置と通信するためのインタフェースである。
【0042】
車両12はナビゲーションシステムを搭載している。ECU60のストレージ60Dには、ナビゲーションシステムの一部である地図データが記録されている。なお、GPS受信機54もナビゲーションシステムの一部である。なお、車両12がインターネットを介した無線通信を利用してWebサーバから受信した地図データを、ナビゲーションシステムの一部として利用してもよい。
【0043】
図6に示されるようにECU60は、機能構成として、睡眠深度推定部601、外力予測部602及び自動運転制御部(制御部)603を有する。睡眠深度推定部601、外力予測部602及び自動運転制御部603は、CPU60AがROM60B又はストレージ60Dに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0044】
睡眠深度推定部601は、各心拍計52が取得した乗員P1、P2の心拍数に関するデータをECU60が取得したときに、当該データに基づいて乗員P1、P2の睡眠深度を推定(検出)する。本実施形態の睡眠深度推定部601は、睡眠深度を5段階で推定する。即ち、睡眠深度推定部601が推定する睡眠深度にはレベル1~5の睡眠深度が含まれる。レベル1の睡眠深度は、レム睡眠に対応する深度である。レベル2~5の睡眠深度は、ノンレム睡眠に対応する深度である。レベル2、3はそれぞれ、ステージ1、2のノンレム睡眠に相当する。レベル4、5はそれぞれ、ステージ3、4のノンレム睡眠(徐波睡眠)に相当する。
【0045】
外力予測部602は、ナビゲーションシステム、車輪速センサ40及びカメラ50からECU60が取得した情報に基づいて、現在時刻から所定時間内に乗員P1、P2に及ぶ外力の大きさ及び方向を演算(予測)する。この所定時間は、例えば10秒である。但し、この所定時間は10秒とは異なる長さの時間であってもよい。
【0046】
例えば、
図7に示されるように、車両12が進行方向Aに沿って走行中の道路70の路面71に存在する凹凸72が、カメラ50からECU60へ送信された画像データに含まれている場合を想定する。この場合、外力予測部602は、車輪速センサ40から送信された車輪速に関する情報に基づいて演算した現在時刻の車速、画像データに基づいて演算した車両12から凹凸72までの距離及び凹凸72の大きさ(高さ)を含む情報に基づいて、現在時刻の車速を維持した車両12の車輪38が現在時刻から上記所定時間内に凹凸72を乗り越えるときに、路面71から車両12に及ぶ上下方向の外力F1を予測する。即ち、車両12に上下方向の振動を発生させる外力F1の大きさ及び方向を予測する。
【0047】
また、
図8に示されるように、車両12が進行方向Bに沿って直進走行中の道路75の一部である湾曲部(カーブ部)76が、カメラ50からECU60へ送信された画像データに含まれている場合を想定する。この場合、外力予測部602は、現在時刻の車速及び湾曲部76の曲率半径を含む情報に基づいて、現在時刻の車速を維持した車両12が現在時刻から上記所定時間内に湾曲部76を走行するときに、車両12(乗員P1、P2)に及ぶ遠心力(外力)F2の大きさ及び方向を予測する。湾曲部76の曲率半径は、外力予測部602が画像データに基づいて演算可能である。なお、外力予測部602は、ナビゲーションシステムの地図情報からECU60が取得した情報に基づいて、道路75に湾曲部76が存在すること及び湾曲部76の曲率半径を認識可能である。即ち、外力予測部602は、カメラ50及びナビゲーションシステムの一方からの情報に基づいて、道路75に湾曲部76が存在すること及び湾曲部76の曲率半径を認識可能である。
【0048】
また、
図9に示されるように、車両12が進行方向Cに沿って道路80の水平部81を走行しているときにカメラ50によって撮像され且つECU60へ送信された画像データに、道路80の一部である傾斜部(坂道)82が含まれている場合を想定する。この場合、外力予測部602は、現在時刻の車速、傾斜部82の傾斜角(勾配)θ1、傾斜部82の傾斜方向を含む情報に基づいて、現在時刻の車速を維持した車両12が、現在時刻から上記所定時間内に水平部81から傾斜部82へ移動するときに車両12(乗員P1、P2)に及ぶ外力F3の大きさ及び方向を予測する。
図9の矢印で示されるように、外力F3は道路80の延長方向(車両前後方向)に沿う回転方向の力である。傾斜部82の傾斜角θ1及び傾斜方向は、外力予測部602が画像データから推定(演算)可能である。なお、外力予測部602は、ナビゲーションシステムの地図情報からECU60が取得した情報に基づいて、車両12が走行中の道路80に傾斜部82が存在すること並びに傾斜部82の傾斜角θ1及び傾斜方向を認識可能である。即ち、外力予測部602は、カメラ50及びナビゲーションシステムの一方からの情報に基づいて、道路80に傾斜部82が存在すること並びに傾斜部82の傾斜角θ1及び傾斜方向を認識可能である。
【0049】
自動運転制御部603は、OFF位置に位置する自動運転スイッチ56がON位置に移動したときに機能する。自動運転制御部603は、ブレーキ装置42、エンジン46及びステアリング装置(図示省略)を含む車両12の各装置を操作することにより、車両12の自動運転制御(運転支援制御)を実行する。本明細書における「自動運転」とは、SAE(Society of Automotive Engineers)(アメリカ自動車技術会)が定めるレベル1~5の自動運転レベルの運転を含む。
【0050】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0051】
車両制御装置10のECU60は、
図14のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0052】
まずステップS10においてECU60の自動運転制御部603は、レベル5の自動運転制御が実行されているか否かを判定する。即ち、車両12が所謂完全自動運転を実行中か否かを自動運転制御部603が判定する。
【0053】
ステップS10でYesと判定したECU60はステップS11へ進む。ステップS11において、ECU60の外力予測部602は現在時刻から所定時間内に車両12に上述した外力が及ぶと予測されるか否かを判定する。即ち、外力予測部602は、例えば上述した外力F1、外力F2及び外力F3の少なくとも一つが現在時刻から所定時間内に車両12に及ぶか否かを判定する。
【0054】
ステップS11でYesと判定したECU60はステップS12へ進む。ステップS12において、ECU60の睡眠深度推定部601は、心拍計52から取得した乗員P1、P2の心拍数に関するデータに基づいて乗員P1、P2の睡眠深度を推定する。さらに睡眠深度推定部601は、乗員P1及び乗員P2の少なくとも一人の睡眠深度が基準深度以下の睡眠深度又は覚醒しているか否かを判定する。本実施形態の基準深度はレベル3の睡眠深度である。従って、乗員P1及び乗員P2の少なくとも一人の睡眠深度がレベル1~3であるか又は乗員P1及び乗員P2の少なくとも一人が覚醒状態にある場合に、睡眠深度推定部601はステップS12でYesと判定する。一方、全ての乗員の睡眠深度がレベル4又はレベル5にある場合に、睡眠深度推定部601はステップS12でNoと判定する。
【0055】
ステップS12でYesと判定したECU60はステップS13へ進む。例えば、乗員P1、P2の睡眠深度がレベル3以下の場合にECU60はステップS13へ進む。
【0056】
例えば車両12が
図7の凹凸72を通過するときに、ステップS13へ進んだECU60の自動運転制御部603は、車両12に及ぶ外力F1の大きさが所定の第1閾値以下となるように、ブレーキ装置42を制御する。即ち、自動運転制御部603はブレーキ装置42から各車輪38へ制動力を及ぼして、車両12の車速を低下させる。ここで第1閾値は、「0」以上且つ「1」より小さい第1係数を、車両12が現在時刻の車速のまま凹凸72を通過したときの外力F1の大きさに乗じた値である。第1係数はROM60B又はストレージ60Dに記録されている。
【0057】
車両12が凹凸72を通過するときに凹凸72から車両12(乗員P1、P2)に及ぶ上下方向の外力F1の大きさは、車両12が凹凸72を通過するときの車速が高くなるほど大きくなる。従って、車両12が所定の車速以下の速度で凹凸72を通過すると、車両12に及ぶ外力F1は第1閾値以下の大きさになる。従って、車両12が凹凸72を通過するときに、浅い睡眠状態にある乗員P1、P2が覚醒するおそれは小さい。また、睡眠状態にない乗員P1、P2の睡眠状態への移行が、車両12が凹凸72を通過することに起因して妨げられるおそれが小さくなる。
【0058】
さらにECU60がステップS13の処理を行うときに、
図10に示されるように、自動運転制御部603が第2アクチュエータ28(リクライニング機構26)を制御して、前席16及び後席30のシート19のシートバック19Bの延長方向Dと上下方向とのなす角度θ2を小さくしてもよい。
図10に示されるように、車両12に及ぶ外力F1は、シート19の基部19C3から乗員P1、P2の頭部P1c、P2cへ力F1pとして伝わる。この力F1pは、外力F1にsinθ2を乗じた値である。従って、角度θ2の値が小さくなるほど、力F1pの値が小さくなる。乗員P1、P2の頭部P1c、P2cに及ぶ外力は、乗員P1、P2の頭部P1c、P2c以外の部位に及ぶ外力よりも、乗員P1、P2の睡眠状態へより大きな影響を及ぼす。従って、前席16及び後席30のシート19のシートバック19Bの延長方向Dと上下方向とのなす角度θ2を小さくすることにより、車両12が凹凸72を通過するときに、浅い睡眠状態にある乗員P1、P2が覚醒するおそれを小さくし、且つ、睡眠状態にない乗員P1、P2の睡眠状態への移行が妨げられるおそれを小さくできる。
【0059】
図11は
図10の比較例である。この比較例では、ECU60がステップS13の処理を行うときに、
図11に示されるように、自動運転制御部603が第2アクチュエータ28(リクライニング機構26)を制御して角度θ2を大きくする。この場合の角度θ2は約90°である。この場合は、
図11に示されるように、車両12に及んだ外力F1は、ほぼそのままの大きさの力として乗員P1、P2の頭部P1c、P2cへ伝わる。従って、この場合は車両12が凹凸72を通過するときに、浅い睡眠状態にある乗員P1、P2が覚醒するおそれが
図10の場合と比べて大きく、且つ、睡眠状態にない乗員P1、P2の睡眠状態への移行が妨げられるおそれが
図10の場合と比べて大きい。
【0060】
また、例えば車両12が
図8の道路75を走行するときに、ステップS13へ進んだECU60の自動運転制御部603は、湾曲部76を走行するときに乗員P1、P2に及ぶ外力(遠心力)F2の大きさが第1閾値以下となるようにブレーキ装置42を制御する。即ち、自動運転制御部603はブレーキ装置42から各車輪38へ制動力を及ぼして、車両12の車速を低下させる。この場合の第1閾値は、上記第1係数を、車両12が現在時刻の車速のまま湾曲部76を通過したときの外力F2の大きさに乗じた値である。車両12が湾曲部76を走行するときの外力F2の大きさは、車速の二乗に比例する。従って、車両12が湾曲部76を走行するときの車速を低くすることにより、車両12が湾曲部76を走行するときに乗員P1、P2に及ぶ外力F2の大きさは第1閾値以下となる。従って、車両12が湾曲部76を通過するときに、浅い睡眠状態にある乗員P1、P2が覚醒するおそれは小さい。また、睡眠状態にない乗員P1、P2の睡眠状態への移行が、車両12が湾曲部76を通過することに起因して妨げられるおそれが小さくなる。
【0061】
さらにステップS13において、自動運転制御部603が第1アクチュエータ24を制御する。より詳細には、車両12が湾曲部76を走行するときに、自動運転制御部603によって制御された第1アクチュエータ24が、前席16のアッパレール22及びシート19をロアレール21に対して右側(車両12の幅方向)へスライドさせる。このシート19の右側へのスライドによってシート19に生じる左向きの慣性力IF(
図8参照)は、外力F2の方向と反対方向の力であるため、この慣性力IFは外力F2の一部と相殺される。そのため、シート19を右側へ移動させれば、乗員P1に掛かる外力F2はより小さくなる。
【0062】
また、例えば車両12が
図9に示された道路80を走行するときに、ステップS13へ進んだECU60の自動運転制御部603は、乗員P1、P2に及ぶ外力F3の大きさが第1閾値以下となるようにブレーキ装置42を制御する。即ち、自動運転制御部603はブレーキ装置42から各車輪38へ制動力を及ぼして、車両12の車速を低下させる。この場合の第1閾値は、上記第1係数を、車両12が現在時刻の車速のまま水平部81から傾斜部82へ移動したときの外力F3の大きさに乗じた値である。車両12が水平部81から傾斜部82へ移動するときの外力F3の大きさは、車速が高くなるほど大きくなる。従って、車両12が水平部81から傾斜部82へ移動するときの車速を低くすることにより、車両12が水平部81から傾斜部82へ移動するときに乗員P1、P2に及ぶ外力F3の大きさは第1閾値以下となる。従って、車両12が水平部81から傾斜部82へ移動するときに、浅い睡眠状態にある乗員P1、P2が覚醒するおそれは小さい。また、睡眠状態にない乗員P1、P2の睡眠状態への移行が、車両12が水平部81から傾斜部82へ移動することに起因して妨げられるおそれが小さくなる。
【0063】
さらにステップS13において、自動運転制御部603が第3アクチュエータ34を制御してもよい。より詳細には、車両12が水平部81から傾斜部82へ移動するときに、自動運転制御部603によって制御された第3アクチュエータ34が、後席30のリフタ機構32を駆動することにより、
図12に示されるようにシート19全体を外力F3と同じ方向に沿って傾斜角θ1だけ後方へ回転させてもよい。
図12に実線で示されたシート19は、第3アクチュエータ34を動作させないまま傾斜部82へ移動した車両12のシート19を示す。一方、
図12に仮想線で示されたシート19は、第3アクチュエータ34を動作させながら傾斜部82へ移動した車両12のシート19を示す。このように第3アクチュエータ34によってシート19全体を外力F3と同じ方向に回転させたときにシート19に発生する慣性力DFは、外力F3の方向と反対方向である。そのため、シート19全体を外力F3と同じ方向に回転させたときにシート19に発生する慣性力DFは、外力F3の一部と相殺される。そのため、シート19全体を外力F3と同じ方向に回転させれば、乗員P2に掛かる外力F3はより小さくなる。
【0064】
なお、自動運転制御部603が第3アクチュエータ34の代わりに第2アクチュエータ28を制御してもよい。より詳細には、車両12が水平部81から傾斜部82へ移動するときに、自動運転制御部603によって制御された第2アクチュエータ28が後席30のリクライニング機構26を駆動することにより、
図13に示されるようにシートバック19Bを外力F3と同じ方向に沿って傾斜角θ1だけ後方へ回転させてもよい。
図13に実線で示されたシートバック19Bは、リクライニング機構26を動作させないまま傾斜部82へ移動した車両12のシートバック19Bを示す。一方、
図13に仮想線で示されたシートバック19Bは、リクライニング機構26を動作させながら傾斜部82へ移動した車両12のシートバック19Bを示す。このようにリクライニング機構26によってシートバック19Bを外力F3と同じ方向に回転させたときにシートバック19B(乗員P2)に発生する慣性力DFは、外力F3の一部と相殺される。そのため、シートバック19Bを外力F3と同じ方向に回転させれば、乗員P2に掛かる外力F3はより小さくなる。
【0065】
なお、
図9に仮想線で示されるように、道路80が、傾斜部82とは傾斜方向が逆の傾斜部83を有する場合は、ステップS13において、自動運転制御部603がリフタ機構32及びリクライニング機構26を、上記とは逆方向に移動させる。
【0066】
ステップS13の処理を終えたECU60の自動運転制御部603はステップS14に進み、外力F1、F2、F3が消失したか否かを判定する。即ち、自動運転制御部603は、ナビゲーションシステムから得られた位置情報又はカメラ50から受信した画像データに基づいて、車両12が凹凸72若しくは湾曲部76を通過したか否か、又は、傾斜部82へ移動した車両12が傾斜部82を所定距離だけ走行したか否かを判定する。
【0067】
ステップS14でYesと判定したECU60はステップS17へ進み、自動運転制御部603がステップS13で実行した制御を終了する。即ち、自動運転制御部603はエンジン46(スロットルバルブの開度及び燃料の噴射量の少なくとも一方)を制御して、車両12の車速をステップS13の処理が実行される前の車速と同じ大きさに戻す。また、自動運転制御部603がアッパレール22及びシート19(シートバック19B)をステップS13の処理が実行される前の位置に戻す。
【0068】
一方、ステップS14でNoと判定した場合、ECU60はステップS13に戻る。即ち、自動運転制御部603がステップS13の制御を続行する。
【0069】
一方、ステップS12でNoと判定したECU60はステップS15へ進む。即ち、全ての乗員P1、P2の睡眠深度がレベル4又はレベル5の場合に、ECU60はステップS15へ進む。
【0070】
ステップS15においてECU60が行う処理は、ステップS13においてECU60が行う処理と類似する。但し、ステップS15に進んだECU60の自動運転制御部603は、車両12が
図7の凹凸72を通過するときに車両12に及ぶ外力F1の大きさ、車両12が
図8の湾曲部76を走行するときの外力F2の大きさ、及び車両12が
図9の水平部81から傾斜部82へ移動するときの外力F3の大きさが、所定の第2閾値以下となるようにブレーキ装置42を制御する。即ち、自動運転制御部603はブレーキ装置42から各車輪38へ制動力を及ぼして、車両12の車速を低下させる。ここで外力F1の第2閾値は、「0」より大きく且つ「1」より小さい第2係数を、車両12が現在時刻の車速のまま凹凸72を通過するときの外力F1の大きさに乗じた値であり、且つ、外力F1の第1閾値より大きい。同様に、外力F2の第2閾値は、上記第2係数を、車両12が現在時刻の車速のまま湾曲部76を走行するときの外力F2の大きさに乗じた値であり、且つ、外力F2の第1閾値より大きい。同様に、外力F3の第2閾値は、上記第2係数を、車両12が現在時刻の車速のまま水平部81から傾斜部82へ移動するときの外力F3の大きさに乗じた値であり、且つ、外力F3の第1閾値より大きい。即ち、第2係数は第1係数より大きい。第2係数はROM60B又はストレージ60Dに記録されている。第2係数が第1係数より大きいため、ステップS15における車両12の減速度は、ステップS13における車両12の減速度より小さい。
【0071】
ステップS15の処理を終えたECU60の自動運転制御部603はステップS16に進み、外力F1、F2、F3が消失したか否かを判定する。
【0072】
ステップS16でYesと判定したECU60はステップS17へ進み、自動運転制御部603がステップS15で実行した制御を終了する。
【0073】
一方、ステップS16でNoと判定した場合、ECU60はステップS15に戻る。即ち、自動運転制御部603がステップS15の制御を続行する。
【0074】
ECU60は、ステップS17の処理を終えたとき、又は、ステップS10、S11でNoと判定したとき、
図14のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0075】
以上説明した本実施形態の車両制御装置10では、ECU60の自動運転制御部603が、所定時間内に乗員P1、P2に及ぶと予測される外力F1、F2、F3を考慮しながら、外力F1、F2、F3が所定の閾値以下となるように車両12を制御する。即ち、車両制御装置10は実際に発生した外力F1、F2、F3の大きさに基づいて車両12を制御するのではない。そのため車両制御装置10は、車両12の挙動に起因して大きな外力F1、F2、F3が乗員P1、P2に及ぶことを抑制可能である。
【0076】
さらに自動運転制御部603は、少なくとも一人の乗員P1、P2の睡眠深度が基準深度以下の場合又は覚醒状態にある場合は、乗員P1、P2に及ぶ外力F1、F2、F3の大きさが第1閾値以下となるように車両12を制御する。一方、全ての乗員P1、P2の睡眠深度が基準深度より深い場合は、自動運転制御部603は、乗員P1、P2に及ぶ外力F1、F2、F3の大きさが第1閾値より大きい第2閾値以下となるように車両12を制御する。即ち、車両制御装置10のECU60は乗員P1、P2の睡眠深度を考慮しながら車両12を制御する。さらに乗員P1、P2の睡眠深度が基準深度より深い場合に採用される閾値である第2閾値は、乗員P1、P2の睡眠深度が基準深度以下の場合又は覚醒状態にある場合に採用される閾値である第1閾値より大きい。即ち、乗員P1、P2の睡眠深度が深い場合に許容される車速は、睡眠深度が浅い場合に許容される車速より高い。従って、乗員P1、P2の睡眠深度が深い場合は、睡眠深度が浅い場合と比べて、車両12を高い車速で走行させることが可能である。
【0077】
従って、本実施形態の車両制御装置10は、シート19に着座した乗員P1、P2の睡眠深度を考慮しながら、車両12の挙動に起因して大きな外力F1、F2、F3が乗員P1、P2に及ぶことを抑制可能である。
【0078】
さらに各シート19のヘッドレスト19Cは、基部19C3及び一対の側部19C4を有する。
図3に示されるように、頭部P1c、P2cの後面は基部19C3によって支持され、頭部P1c、P2cの両側面は一対の側部19C4によって支持される。そのため、ヘッドレスト19Cが側部19C4を具備しない場合と比べて、外力F1、F2、F3に起因する力がより分散されながらヘッドレスト19Cから頭部P1c、P2cへ伝わる。そのため、ヘッドレスト19Cが側部19C4を具備しない場合と比べて、外力F1、F2、F3に起因する力が頭部P1c、P2cに及んだときに、この力が乗員P1、P2の睡眠状態に及ぼす影響を小さくできる。
【0079】
さらにヘッドレスト19Cは、液体が充填された袋体19C6及び複数のバネ19C7を有する。この袋体19C6はダンパとして機能する。さらに外力F1、F2、F3に起因する力がヘッドレスト19Cから頭部P1c、P2cに及ぶときに、バネ19C7が弾性変形する。そのため、ヘッドレスト19Cが袋体19C6及び複数のバネ19C7を具備しない場合と比べて、外力F1、F2、F3に起因する力が頭部P1c、P2cに及んだときに、外力F1、F2、F3が乗員P1、P2の睡眠状態に及ぼす影響を小さくできる。
【0080】
さらに車両制御装置10は、乗員P1の睡眠深度が基準深度以下の場合又は乗員P1が覚醒状態にある場合に、ECU60の自動運転制御部603が、スライドレール装置20及び第1アクチュエータ24を利用して前席16を外力F2と同じ方向に移動させることにより、乗員P1に大きな外力F2が及ぶことを抑制する。
【0081】
さらに車両制御装置10は、現在時刻から所定時間内に、乗員P2に道路81の傾斜角θ1に起因する外力F3が車両12に及ぶと予測したときに、傾斜角θ1に起因する外力F3の方向と同じ方向へシート19(又はシートバック19B)を回転させる。従って、車両12が道路80の水平部81から傾斜部82へ移動するときに、乗員P2に傾斜角θ1に起因する大きな外力が及ぶことが抑制される。
【0082】
さらに自動運転制御部603は、乗員P1、P2の睡眠深度が基準深度以下の場合又は覚醒状態にある場合にのみ、外力F2、F3と同じ方向にシート19を移動させるこれらの制御を実行する。従って、睡眠深度が基準深度より深い場合もこれらの制御を実行する場合と比べて、車両12の制御に必要なエネルギーの消費量が抑えられる。
【0083】
以上、実施形態に係る車両制御装置10について説明したが、車両制御装置10は本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0084】
例えば、睡眠深度が基準深度より深い場合に、自動運転制御部603がリクライニング機構26(第1アクチュエータ24)を制御してシートバック19Bを後方へ回転させることにより、睡眠深度が基準深度以下の場合と比べて、シートクッション19Aとシートバック19Bとがなす角度を大きくしてもよい。このようにすれば、眠りが深い状態にある乗員P1、P2が深い眠りを維持し易くなる。
【0085】
また、車両12が通信可能な外部サーバに、車両12と同一仕様の車両(図示省略)が様々な道路を走行したときに当該車両に掛かった様々な外力の種類及び大きさを、その外力が発生した場所を表す位置情報及び外力が発生したときの車速と一緒に保存してもよい。この場合、車両12がこの外部サーバにアクセスすることにより、ECU60の外力予測部602は、現在時刻から所定時間内に車両12に外力が及ぶか否かを判定できる。さらに外力予測部602は、現在時刻から所定時間内に車両12に及ぶと予測される外力の大きさを所定値(例えば、第1閾値、第2閾値)以下とするための車速の最高値を、上記実施形態より正確に認識できる。従って、この変形例の車両12は、上記実施形態よりも車速を高くしつつ外力の大きさを所定値以下にすることが可能である。
【0086】
前席16からスライドレール装置20を省略してもよい。さらに前席16にリフタ機構32を設けてもよい。
【0087】
後席30からリフタ機構32を省略してもよい。さらに後席30にスライドレール装置20を設けてもよい。
【0088】
シート19から心拍計52を省略し、乗員P1、P2の心拍数を計測可能且つ取得した心拍数に関するデータをECU60へ無線により送信可能なウェアラブル機器を乗員P1、P2が装着してもよい。
【0089】
また、シート19から心拍計52を省略し、車両12に乗員P1、P2の顔を撮像可能な車内カメラを設けてもよい。この車内カメラが撮像した画像データはECU60へ送られ且つ睡眠深度推定部601によって解析される。睡眠深度推定部601は、画像データに含まれる乗員P1、P2の目等の状態に基づいて、睡眠深度を判定する。例えば睡眠深度推定部601は、乗員P1、P2の目の周辺の画像から、乗員P1、P2の瞼が開いている度合及び瞼の開閉の周期を計測する。さらに自動運転制御部603は、計測された乗員P1、P2の瞼が開いている度合と瞼の開閉の周期とに基づいて、乗員P1、P2の睡眠深度を推定する。
【0090】
ステップS15において、ステップS13と同様に、ECU60が第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ28及び第3アクチュエータ34の少なくとも一つを制御してもよい。
【0091】
自動運転レベルが1~4のとき又は自動運転スイッチ56がOFF位置に位置するときに、ECU60が(ステップS10を除く)
図14のフローチャートの処理を実行してもよい。
【0092】
自動運転制御を実行不能な車両に本発明を適用してもよい。
【0093】
外力予測部602が現在時刻から所定時間内に所定値以上の大きさの外力F1、F2、F3が及ばないと予測し、且つ、睡眠深度推定部601が全ての乗員P1、P2の睡眠深度が基準深度より深いと判定したときに、
図11に示されるように、自動運転制御部603が第2アクチュエータ28(リクライニング機構26)を制御して角度θ2を約90°にしてもよい。即ち、睡眠深度が基準深度以下の場合よりも、角度θ2を大きくしてもよい。このようにすれば、眠りが深い状態にある乗員が、深い眠りを維持し易くなる。
【0094】
さらに、乗員の睡眠深度の深さ及び外力F1、F2、F3の大きさの少なくとも一方に基づいて、袋体19C6内の液体の量を調整する装置をシート19が備えてもよい。この装置は、睡眠深度の深さ及び外力F1、F2、F3の大きさに応じて、袋体19C6が適切なダンパ効果を発揮するように液体の量を調整する。本発明をこの変形例の態様で実施した場合は、外力F1、F2、F3が乗員P1、P2の睡眠状態に及ぼす影響がより小さくなる。
【符号の説明】
【0095】
10 車両制御装置
12 車両
19 シート
19A シートクッション
19B シートバック
26 リクライニング機構
601 睡眠深度推定部
602 外力予測部
603 自動運転制御部(制御部)
F1 外力
F2 外力(遠心力)
F3 外力(回転方向の力)
P1 乗員
P2 乗員