IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241106BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241106BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241106BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L29/78 652S
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 652P
H01L29/06 301M
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021082800
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175969
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 敦也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 有一
(72)【発明者】
【氏名】荒川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】羽山 優介
(72)【発明者】
【氏名】浦上 泰
(72)【発明者】
【氏名】宮原 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】森野 友生
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046908(JP,A)
【文献】特開2018-117017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/06
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子が形成され、素子動作させられるアクティブ領域(1a)と、該アクティブ領域を囲み素子動作させられない非アクティブ領域(1b)とを有する半導体装置であって、
第1導電型または第2導電型の半導体領域(11)と、
前記半導体領域の上に形成され、前記半導体領域よりも低不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(12)と、
前記第1不純物領域の上に形成された第2導電型のベース領域(18)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第2不純物領域(19)と、
一方向を長手方向として前記第2不純物領域の表面から前記ベース領域よりも深くまで形成されたトレンチ(21)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(22)と、前記トレンチ内において、前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(23)と、を有する複数の前記トレンチゲート構造と、
前記第2不純物領域に電気的に接続されると共に前記ベース領域に電気的に接続される第1電極(24)と、
前記半導体領域の裏面側に形成され、前記半導体領域と電気的に接続される第2電極(26)と、を有する前記半導体スイッチング素子を備え、
さらに、前記第1不純物領域と前記ベース領域との間に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1電流分散層(13)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において一方向を長手方向として延設され、複数のラインが並べられた第1ストライプ部(141)と、前記非アクティブ領域に形成され、前記第1ストライプ部の周囲を囲みつつ前記第1ストライプ部を構成する各ラインに繋がる枠状部(142)とを有し、第2導電型の第1ディープ層(14)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において、前記第1ディープ層および前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記ベース領域と繋がると共に前記第1ディープ層と繋がり、前記トレンチの長手方向と同方向に延設された複数のラインが並べられた第2ストライプ部(171)を有し、第2導電型の第2ディープ層(17)と、
前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記第2ストライプ部を構成する前記複数のラインの間に配置された第1導電型の第2電流分散層(15)と、を備え、
前記第1ストライプ部を構成する各ラインは、前記枠状部に繋がる先端部(141a)と、該先端部よりも内側に位置する内側部(141b)とを含み、前記先端部の幅が前記内側部の幅以上とされ
前記トレンチの長手方向と前記第1ディープ層の前記第1ストライプ部を構成する各ラインの長手方向とは交差しており、
前記第1ストライプ部を構成する各ラインは欠損部(14a)が設けられて分断されることで破線状とされており、前記トレンチゲート構造が前記各ラインに設けられた前記欠損部を通る構造とされている、半導体装置。
【請求項2】
複数のトレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子が形成され、素子動作させられるアクティブ領域(1a)と、該アクティブ領域を囲み素子動作させられない非アクティブ領域(1b)とを有する半導体装置であって、
第1導電型または第2導電型の半導体領域(11)と、
前記半導体領域の上に形成され、前記半導体領域よりも低不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(12)と、
前記第1不純物領域の上に形成された第2導電型のベース領域(18)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第2不純物領域(19)と、
一方向を長手方向として前記第2不純物領域の表面から前記ベース領域よりも深くまで形成されたトレンチ(21)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(22)と、前記トレンチ内において、前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(23)と、を有する複数の前記トレンチゲート構造と、
前記第2不純物領域に電気的に接続されると共に前記ベース領域に電気的に接続される第1電極(24)と、
前記半導体領域の裏面側に形成され、前記半導体領域と電気的に接続される第2電極(26)と、を有する前記半導体スイッチング素子を備え、
さらに、前記第1不純物領域と前記ベース領域との間に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1電流分散層(13)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において一方向を長手方向として延設され、複数のラインが並べられた第1ストライプ部(141)と、前記非アクティブ領域に形成され、前記第1ストライプ部の周囲を囲みつつ前記第1ストライプ部を構成する各ラインに繋がる枠状部(142)とを有し、第2導電型の第1ディープ層(14)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において、前記第1ディープ層および前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記ベース領域と繋がると共に前記第1ディープ層と繋がり、前記トレンチの長手方向と同方向に延設された複数のラインが並べられた第2ストライプ部(171)を有し、第2導電型の第2ディープ層(17)と、
前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記第2ストライプ部を構成する前記複数のラインの間に配置された第1導電型の第2電流分散層(15)と、を備え、
前記第1ストライプ部を構成する各ラインは、前記枠状部に繋がる先端部(141a)と、該先端部よりも内側に位置する内側部(141b)とを含み、前記先端部の幅が前記内側部の幅以上とされ
前記第1ディープ層および前記第1電流分散層の下方に配置され、前記トレンチの長手方向と同方向を長手方向として延設された複数のラインが並べられた第3ストライプ部を有し、第2導電型の第3ディープ層(30)を備えている、半導体装置。
【請求項3】
前記先端部の幅が先端に向かうほど徐々に大きくされており、前記第1電流分散層の先端が台形状、三角形状もしくは楕円形状のいずれか1つとされている、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
複数のトレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子が形成され、素子動作させられるアクティブ領域(1a)と、該アクティブ領域を囲み素子動作させられない非アクティブ領域(1b)とを有する半導体装置であって、
第1導電型または第2導電型の半導体領域(11)と、
前記半導体領域の上に形成され、前記半導体領域よりも低不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(12)と、
前記第1不純物領域の上に形成された第2導電型のベース領域(18)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第2不純物領域(19)と、
一方向を長手方向として前記第2不純物領域の表面から前記ベース領域よりも深くまで形成されたトレンチ(21)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(22)と、前記トレンチ内において、前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(23)と、を有する複数の前記トレンチゲート構造と、
前記第2不純物領域に電気的に接続されると共に前記ベース領域に電気的に接続される第1電極(24)と、
前記半導体領域の裏面側に形成され、前記半導体領域と電気的に接続される第2電極(26)と、を有する前記半導体スイッチング素子を備え、
さらに、前記第1不純物領域と前記ベース領域との間に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1電流分散層(13)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において一方向を長手方向として延設され、複数のラインが並べられた第1ストライプ部(141)と、前記非アクティブ領域に形成され、前記第1ストライプ部の周囲を囲みつつ前記第1ストライプ部を構成する各ラインに繋がる枠状部(142)とを有し、第2導電型の第1ディープ層(14)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において、前記第1ディープ層および前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記ベース領域と繋がると共に前記第1ディープ層と繋がり、前記トレンチの長手方向と同方向に延設された複数のラインが並べられた第2ストライプ部(171)を有し、第2導電型の第2ディープ層(17)と、
前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記第2ストライプ部を構成する前記複数のラインの間に配置された第1導電型の第2電流分散層(15)と、を備え、
前記第2ストライプ部を構成する各ラインは、先端部(171a)と、該先端部よりも内側に位置する内側部(171b)とを含み、前記先端部の幅が前記内側部の幅より広くされており、
前記トレンチの長手方向と前記第1ディープ層の前記第1ストライプ部を構成する各ラインの長手方向とは交差しており、
前記第1ストライプ部を構成する各ラインは欠損部(14a)が設けられて分断されることで破線状とされており、前記トレンチゲート構造が前記各ラインに設けられた前記欠損部を通る構造とされている、半導体装置。
【請求項5】
複数のトレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子が形成され、素子動作させられるアクティブ領域(1a)と、該アクティブ領域を囲み素子動作させられない非アクティブ領域(1b)とを有する半導体装置であって、
第1導電型または第2導電型の半導体領域(11)と、
前記半導体領域の上に形成され、前記半導体領域よりも低不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(12)と、
前記第1不純物領域の上に形成された第2導電型のベース領域(18)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第2不純物領域(19)と、
一方向を長手方向として前記第2不純物領域の表面から前記ベース領域よりも深くまで形成されたトレンチ(21)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(22)と、前記トレンチ内において、前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(23)と、を有する複数の前記トレンチゲート構造と、
前記第2不純物領域に電気的に接続されると共に前記ベース領域に電気的に接続される第1電極(24)と、
前記半導体領域の裏面側に形成され、前記半導体領域と電気的に接続される第2電極(26)と、を有する前記半導体スイッチング素子を備え、
さらに、前記第1不純物領域と前記ベース領域との間に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1電流分散層(13)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において一方向を長手方向として延設され、複数のラインが並べられた第1ストライプ部(141)と、前記非アクティブ領域に形成され、前記第1ストライプ部の周囲を囲みつつ前記第1ストライプ部を構成する各ラインに繋がる枠状部(142)とを有し、第2導電型の第1ディープ層(14)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において、前記第1ディープ層および前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記ベース領域と繋がると共に前記第1ディープ層と繋がり、前記トレンチの長手方向と同方向に延設された複数のラインが並べられた第2ストライプ部(171)を有し、第2導電型の第2ディープ層(17)と、
前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記第2ストライプ部を構成する前記複数のラインの間に配置された第1導電型の第2電流分散層(15)と、を備え、
前記第2ストライプ部を構成する各ラインは、先端部(171a)と、該先端部よりも内側に位置する内側部(171b)とを含み、前記先端部の幅が前記内側部の幅より広くされており、
前記第1ディープ層および前記第1電流分散層の下方に配置され、前記トレンチの長手方向と同方向を長手方向として延設された複数のラインが並べられた第3ストライプ部を有し、第2導電型の第3ディープ層(30)を備えている、半導体装置。
【請求項6】
前記先端部の幅が先端に向かうほど徐々に大きくされており、前記第2電流分散層の先端が長方形状、三角形状もしくは楕円形状のいずれか1つとされている、請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
複数のトレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子が形成され、素子動作させられるアクティブ領域(1a)と、該アクティブ領域を囲み素子動作させられない非アクティブ領域(1b)とを有する半導体装置であって、
第1導電型または第2導電型の半導体領域(11)と、
前記半導体領域の上に形成され、前記半導体領域よりも低不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(12)と、
前記第1不純物領域の上に形成された第2導電型のベース領域(18)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第2不純物領域(19)と、
一方向を長手方向として前記第2不純物領域の表面から前記ベース領域よりも深くまで形成されたトレンチ(21)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(22)と、前記トレンチ内において、前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(23)と、を有する複数の前記トレンチゲート構造と、
前記第2不純物領域に電気的に接続されると共に前記ベース領域に電気的に接続される第1電極(24)と、
前記半導体領域の裏面側に形成され、前記半導体領域と電気的に接続される第2電極(26)と、を有する前記半導体スイッチング素子を備え、
前記第1不純物領域と前記ベース領域との間に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1電流分散層(13)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において一方向を長手方向として延設され、複数のラインが並べられた第1ストライプ部(141)と、前記非アクティブ領域に形成され、前記第1ストライプ部の周囲を囲みつつ前記第1ストライプ部を構成する各ラインに繋がる枠状部(142)とを有し、第2導電型の第1ディープ層(14)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において、前記第1ディープ層および前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記ベース領域と繋がると共に前記第1ディープ層と繋がり、前記トレンチの長手方向と同方向に延設された複数のラインが並べられた第2ストライプ部(171)を有し、第2導電型の第2ディープ層(17)と、
前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記第2ストライプ部を構成する前記複数のラインの間に配置された第1導電型の第2電流分散層(15)と、を有し、
前記トレンチの長手方向と前記第1ディープ層の前記第1ストライプ部を構成する各ラインの長手方向とは交差しており、
前記第1ストライプ部を構成する各ラインは欠損部(14a)が設けられて分断されることで破線状とされており、前記トレンチゲート構造が前記各ラインに設けられた前記欠損部を通る構造とされている、半導体装置。
【請求項8】
前記各ラインの前記欠損部の寸法が2.6μm以下とされ、
前記各ラインの前記欠損部の中央を中心とした円形の直径φを2.6μmとして、該円形と接するように、もしくは該円形の内側に、前記欠損部を挟んで隣り合う1つおきに配置されたラインが両方とも存在するレイアウトとされている、請求項1、4および7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
破線状とされた前記各ラインの分断された各部は短冊状とされており、前記各ラインの隣り合うライン同士で前記欠損部が前記各ラインの長手方向においてずれていて千鳥配置されている、請求項1、4、7および8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
破線状とされた前記各ラインの分断された各部は円形状のドットとされ、前記各ラインの隣り合うライン同士で前記欠損部が前記各ラインの長手方向においてずれていて千鳥配置されている、請求項1、4、7および8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
破線状とされた前記各ラインの分断された各部は多角形状のドットとされ、前記各ラインの隣り合うライン同士で前記欠損部が前記各ラインの長手方向においてずれていて千鳥配置されている、請求項1、4、7および8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1ディープ層および前記第1電流分散層の下方に配置され、前記トレンチの長手方向と同方向を長手方向として延設された複数のラインが並べられた第3ストライプ部を有し、第2導電型の第3ディープ層(30)を備えている、請求項1、4、7ないし11のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項13】
複数のトレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子が形成され、素子動作させられるアクティブ領域(1a)と、該アクティブ領域を囲み素子動作させられない非アクティブ領域(1b)とを有する半導体装置であって、
第1導電型または第2導電型の半導体領域(11)と、
前記半導体領域の上に形成され、前記半導体領域よりも低不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(12)と、
前記第1不純物領域の上に形成された第2導電型のベース領域(18)と、
前記ベース領域の上に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第2不純物領域(19)と、
一方向を長手方向として前記第2不純物領域の表面から前記ベース領域よりも深くまで形成されたトレンチ(21)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(22)と、前記トレンチ内において、前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(23)と、を有する複数の前記トレンチゲート構造と、
前記第2不純物領域に電気的に接続されると共に前記ベース領域に電気的に接続される第1電極(24)と、
前記半導体領域の裏面側に形成され、前記半導体領域と電気的に接続される第2電極(26)と、を有する前記半導体スイッチング素子を備え、
さらに、前記第1不純物領域と前記ベース領域との間に形成され、前記第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1電流分散層(13)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において一方向を長手方向として延設され、複数のラインが並べられた第1ストライプ部(141)と、前記非アクティブ領域に形成され、前記第1ストライプ部の周囲を囲みつつ前記第1ストライプ部を構成する各ラインに繋がる枠状部(142)とを有し、第2導電型の第1ディープ層(14)と、
前記アクティブ領域および前記非アクティブ領域のうちの前記アクティブ領域側において、前記第1ディープ層および前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記ベース領域と繋がると共に前記第1ディープ層と繋がり、前記トレンチの長手方向と同方向に延設された複数のラインが並べられた第2ストライプ部(171)を有し、第2導電型の第2ディープ層(17)と、
前記第1電流分散層と前記ベース領域との間に形成され、前記第2ストライプ部を構成する前記複数のラインの間に配置された第1導電型の第2電流分散層(15)と、
前記第1ディープ層および前記第1電流分散層の下方に配置され、前記トレンチの長手方向と同方向を長手方向として延設された複数のラインが並べられた第3ストライプ部を有し、第2導電型の第3ディープ層(30)と、を備えている、半導体装置。
【請求項14】
前記第3ストライプ部を構成する各ラインは、前記第2電流分散層と対応する位置に配置されている、請求項12または13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第3ストライプ部を構成する各ラインの形成間隔が前記第2ストライプ部を構成する各ラインの形成間隔よりも狭くされている、請求項12または13に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第3ストライプ部を構成する各ラインの間に配置され、前記第1不純物領域よりも高濃度の第2導電型の第3電流分散層(31)を有している、請求項12ないし15のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第2ストライプ部を構成する各ラインは、前記トレンチの直下に延設されている、請求項12ないし16のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項18】
前記第2ストライプ部を構成する各ラインは、前記トレンチの直下において前記トレンチと接して配置されている、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記第2ストライプ部を構成する各ラインは、前記トレンチの直下において前記トレンチから離れて配置されている、請求項17に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素(以下、SiCという)半導体装置などにおいて、大電流が流せるようにチャネル密度を高くしたトレンチゲート構造が採用されている。トレンチゲート構造のSiC半導体装置では、トレンチ底部に電界ストレスが加わることでゲート絶縁膜の絶縁破壊が生じる可能性がある。このため、特許文献1に、トレンチ底部に高電界が加わることを抑制してゲート絶縁膜が絶縁破壊されることを抑制したSiC半導体装置が提案されている。
【0003】
このSiC半導体装置は、トレンチゲート構造よりも下方に、n型の第1電流分散層とp型の第1ディープ層とを交互にストライプ状に並べた構造とされている。第1ディープ層は、トレンチゲート構造の両側に配置された第2ディープ層を介してp型のベース領域に連結され、ソース電位に固定される。
【0004】
このような構造とすることで、第1ディープ層によって等電位線がトレンチゲート構造側にせり上がることが抑制され、トレンチゲート構造の底部に高電界が加わることが抑制されるため、ゲート絶縁膜の絶縁破壊を防止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-46908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トレンチゲート構造が形成されたセル領域のうち、素子動作が行われる領域をアクティブ領域とすると、セル領域のうちの残りの領域は、アクティブ領域を囲むように設けられた素子動作が行われない非アクティブ領域となる。上記した特許文献1の構造において、この非アクティブ領域を広範囲に第1ディープ層とすることで、第1ディープ層による電界緩和効果に基づいて等電位線のせり上がりを抑制する構造とすることについて検討を行った。
【0007】
その結果、第1ディープ層のうちストライプ状に形成されるセル領域内の部分(以下、ストライプ部という)とその周囲を囲む外縁領域に位置する部分(以下、枠状部という)とが繋がる部分において第1ディープ層を形成しない部分が幅広になることが確認された。このような幅広となった第1ディープ層を形成しない部分が存在すると、その部分において電界緩和効果が低下し、等電位線のせり上がりが抑制できなくなるため、ゲート寿命の低下が懸念される。
【0008】
また、枠状部とストライプ部との間、より詳しくは枠状部のうちストライプ部と平行な部分とそれに対向して配置されるストライプ部のうち最も外側のラインとの間隔がストライプ部を構成する各ライン同士の間隔よりも広がることが確認された。この間隔が広くなった枠状部とストライプ部との間においても、電界緩和効果が低下し、等電位線のせり上がりが抑制できなくなるため、ゲート寿命の低下が懸念される。
【0009】
また、第1ディープ層と第2ディープ層をそれぞれストライプ状に形成しつつ、第1ディープ層と第2ディープ層を交差する構造とする場合、第1ディープ層のうちトレンチゲート構造に交差する部分が電流経路の阻害要因となる。このため、オン抵抗を増大させるという課題がある。
【0010】
さらに、n型のドリフト層とp型のベース領域を有するSiC半導体装置において、形成されたPNダイオードの通電時に発生する正孔の影響で順方向電圧Vfが変動することが確認されている。
【0011】
なお、ここでは、SiCを半導体材料として用いたSiC半導体装置を例に挙げているが、SiC以外の半導体材料を用いた半導体装置についても、上記と同様のことが言える。
【0012】
本発明は上記点に鑑み、等電位線のせり上がりによるゲート寿命の低下を抑制できる半導体装置を提供することを第1の目的とする。また、オン抵抗の増大を抑制できる半導体装置を提供することを第2の目的とする。さらに、順方向電圧Vfの変動を抑制することができる半導体装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の第1の観点においては、複数のトレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子が形成され、素子動作させられるアクティブ領域(1a)と、該アクティブ領域を囲み素子動作させられない非アクティブ領域(1b)とを有する半導体装置であって、第1導電型または第2導電型の半導体領域(11)と、半導体領域の上に形成され、半導体領域よりも低不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(12)と、第1不純物領域の上に形成された第2導電型のベース領域(18)と、ベース領域の上に形成され、第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第2不純物領域(19)と、第2不純物領域の表面からベース領域よりも深くまで形成され、一方向を長手方向として形成されたトレンチ(21)の内壁面に形成されたゲート絶縁膜(22)と、トレンチ内において、ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極(23)と、を有する複数のトレンチゲート構造と、第2不純物領域に電気的に接続されると共にベース領域に電気的に接続される第1電極(24)と、半導体領域の裏面側に形成され、半導体領域と電気的に接続される第2電極(26)と、を有する半導体スイッチング素子を備えている。
【0014】
また、第1不純物領域とベース領域との間に形成され、第1不純物領域よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1電流分散層(13)と、アクティブ領域および非アクティブ領域のうちのアクティブ領域側において一方向を長手方向として延設され、複数のラインが並べられた第1ストライプ部(141)と、非アクティブ領域に形成され、第1ストライプ部の周囲を囲みつつ第1ストライプ部を構成する各ラインに繋がる枠状部(142)とを有し、第2導電型の第1ディープ層(14)が備えられている。
【0015】
さらに、アクティブ領域および非アクティブ領域のうちのアクティブ領域側において、第1ディープ層および第1電流分散層とベース領域との間に形成され、ベース領域と繋がると共に第1ディープ層と繋がり、トレンチの長手方向と同方向に延設された複数のラインが並べられた第2ストライプ部(171)を有し、第2導電型の第2ディープ層(17)と、第1電流分散層とベース領域との間に形成され、第2ストライプ部を構成する複数のラインの間に配置された第1導電型の第2電流分散層(15)と、が備えられている。このような構成において、第1ストライプ部を構成する各ラインは、枠状部に繋がる先端部(141a)と、該先端部よりも内側に位置する内側部(141b)とを含み、先端部の幅が内側部の幅以上とされている。
【0016】
このように、第1ディープ層における第1ストライプ部の各ラインの先端部の幅が内側部の幅以上になるようにしている。つまり、仮に第1ディープ層の形成に用いるマスク(3)のうち第1ディープ層の先端部と対応する部分が狭まったとしても、先端部の幅を内側部の幅以上にできるようにしている。したがって、第1電流分散層の先端部が広くならないようにでき、第1ディープ層による電界緩和効果によってその部分での電界のせり上がりを抑制できるため、ゲート絶縁膜の耐圧低下および寿命低下を抑制することが可能となる。
【0017】
本開示の第2の観点における半導体装置では、第2ストライプ部を構成する各ラインは、先端部(171a)と、該先端部よりも内側に位置する内側部(171b)とを含み、先端部の幅が内側部の幅より広くされている。
【0018】
このように、第2ディープ層の先端部の幅を内側部の幅より広くしている。このため、第1ディープ層の枠状部とストライプ部との間が各ライン同士の間隔よりも拡がることで第1ディープ層による電界緩和効果が低下しても、第2ディープ層の電界緩和効果によって等電位線を押し戻せ、高電界が入り込み難くなるようにできる。これにより、第1ディープ層の枠状部とストライプ部との間が各ライン同士の間隔よりも拡がったとしても、この部分において電界のせり上がりが発生することを抑制できる。よって、ゲート絶縁膜の耐圧低下および寿命低下を抑制することが可能となる。
【0019】
本開示の第3の観点における半導体装置は、トレンチの長手方向と第1ディープ層の第1ストライプ部を構成する各ラインの長手方向とは交差しており、第1ストライプ部を構成する各ラインは欠損部(14a)が設けられて分断されることで破線状とされており、トレンチゲート構造が各ラインに設けられた欠損部を通る構造とされている。
【0020】
このように、第1ストライプ部をトレンチゲート構造に交差させつつも、部分的に各ラインに欠損部を設けて分断し、その欠損部をトレンチゲート構造が通るようにしている。このようにすることで、欠損部を設けていない場合と比較して、第1ディープ層とトレンチゲート構造との交差部分を減らすことができ、オン抵抗の増大を抑制することが可能となる。
【0021】
本開示の第4の観点における半導体装置は、第1ディープ層および第1電流分散層の下方に、トレンチの長手方向と同方向を長手方向として延設された複数のラインが並べられた第3ストライプ部を有する第2導電型の第3ディープ層(30)を備えている。
【0022】
このように、ディープ層を第1ディープ層、第2ディープ層に加えて第3ディープ層を備えた3層構造としている。このような構造とすることで、キャリアの移動経路が長くなり、より多くのキャリアが再結合して消滅するようにできる。これにより、オン抵抗の増大および順方向電圧Vfの変動を抑制することが可能になる。
【0023】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態にかかるSiC半導体装置の斜視断面図である。
図2図3中のII-II断面に相当するセル領域の外縁部およびセル領域を囲む外周領域の断面図である。
図3図2を上方から見たときのレイアウト図である。
図4図3中において破線で囲んだ領域IVにおいて、第1ディープ層のストライプ部と枠状部との境界位置を拡大して示した上面レイアウト図である。
図5A図1に示すSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5B図5Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5C図5Bに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5D図5Cに示すSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5E図5Dに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5F図5Eに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5G図5Fに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6A】第1ディープ層を形成する際のマスクパターンの設計例を示した図である。
図6B図6Aに示したマスクパターンの設計例に基づいてマスクをパターニングした場合のマスクの設計値を示した図である。
図6C図6Aのマスクパターンの設計例に基づいて実際にマスクをパターニングした場合のマスクの画像を示した図である。
図7】電界のせり上がりの様子を示した断面図である。
図8A】第1ディープ層におけるストライプ部の各ラインの間隔と耐圧との関係を示した図である。
図8B】第1ディープ層におけるストライプ部の各ラインの間隔とゲート電界強度との関係を示した図である。
図9A】第1実施形態の変形例で説明する第1ディープ層のストライプ部の上面レイアウトを示した図である。
図9B】第1実施形態の変形例で説明する第1ディープ層のストライプ部の上面レイアウトを示した図である。
図10】第2実施形態にかかるSiC半導体装置の第2ディープ層の上面レイアウトを示した図であって、図3中において破線で示した領域Xに相当する図である。
図11A】第2実施形態の変形例で説明する第2ディープ層のストライプ部の上面レイアウトを示した図である。
図11B】第2実施形態の変形例で説明する第2ディープ層のストライプ部の上面レイアウトを示した図である。
図12】第3実施形態にかかるSiC半導体装置の第1ディープ層、第2ディープ層およびトレンチゲート構造の上面レイアウトを示した図である。
図13】ゲート電流Igとゲート破壊が生じたときのドレイン電圧Vdとの関係を示した図である。
図14A】第3実施形態の変形例で説明する第1ディープ層の各ラインの分断箇所での先端形状を示した上面レイアウト図である。
図14B】第3実施形態の変形例で説明する第1ディープ層の各ラインの分断箇所での先端形状を示した上面レイアウト図である。
図15A】第3実施形態の変形例で説明する第1ディープ層のストライプ部の各ドットを円形状とする場合の上面レイアウト図である。
図15B】第3実施形態の変形例で説明する第1ディープ層のストライプ部の各ドットを六角形状とする場合の上面レイアウト図である
図16】第4実施形態にかかるSiC半導体装置の斜視断面図である。
図17図16のXVII-XVII断面での正孔の移動経路を示した図である。
図18】第4実施形態の変形例で説明するSiC半導体装置の斜視断面図である。
図19図18のXIX-XIX断面での正孔の移動経路を示した図である。
図20】第4実施形態の変形例で説明するSiC半導体装置の斜視断面図である。
図21図20のXXI-XXI断面での正孔の移動経路を示した図である。
図22】第4実施形態の変形例で説明するSiC半導体装置の斜視断面図である。
図23図22のXXIII-XXIII断面での正孔の移動経路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態について図1図4を参照しつつ説明する。本実施形態のSiC半導体装置は、図1図4に示されるように、半導体スイッチング素子として反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが形成されたセル領域1と、セル領域1を囲むように外周耐圧構造が形成された外周領域2とを有する構成とされている。なお、図1は、MOSFETのセル領域1における1セル分の斜視断面図である。
【0027】
図1図2に示されるように、SiC半導体装置は、SiCからなるn型の基板11を用いて形成されている。基板11には、例えば、(0001)Si面に対して0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が例えば1.0×1019/cmとされ、厚さが300μm程度とされたものが用いられる。
【0028】
なお、図1図3では、基板11の面方向をxy平面とし、xy平面における<11-20>方向をy軸方向、y軸方向と直交する方向をx軸方向としている。また、基板11の面方向に対する法線方向をz軸方向としている。
【0029】
基板11の表面上には、窒素やリン等のn型不純物濃度が例えば5.0~10.0×1015/cmとされ、厚さが10~15μm程度とされたSiCからなるn型層12が形成されている。このn型層12は、不純物濃度が深さ方向において一定であってもよいが、濃度分布に傾斜を付け、n型層12のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにすると好ましい。例えば、n型層12は、基板11の表面から3~5μm程度の部分の不純物濃度が2.0×1015/cm程度他の部分よりも高くなるようにするのがよい。このような構成にすると、n型層12の内部抵抗を低減でき、オン抵抗を低減することができる。なお、本実施形態では、n型層12が第1不純物領域に相当している。
【0030】
セル領域1では、n型層12の表層部に、n型層12よりも高不純物濃度とされ、窒素やリン等のn型不純物が導入されたn型の第1電流分散層13と、Al等のp型不純物が導入されたp型の第1ディープ層14が形成されている。
【0031】
第1電流分散層13は、窒素やリン等のn型不純物が含まれたn型層によって構成され、深さが0.3~1.5μmとされている。第1電流分散層13は、本実施形態では、セル領域1のみに形成されている。つまり、本実施形態では、n型層12の表層部に第1電流分散層13が形成されている領域がセル領域1とされ、n型層12の表層部に第1電流分散層13が形成されていない領域が外周領域2とされている。また、第1ディープ層14は、第1電流分散層13より浅くされているがほぼ同じ0.3~1.4μmの深さとされている。つまり、第1ディープ層14は、底部が第1電流分散層13内に位置するように形成されており、n型層12との間に第1電流分散層13が位置する深さで形成されている。
【0032】
第1電流分散層13および第1ディープ層14は、MOSFETが素子動作させられるアクティブ領域1aでは複数本のラインが交互に並べられたストライプ状となるように、それぞれx軸方向に沿って延設され、y軸方向に沿って等間隔に配列されている。第1ディープ層14のうちストライプ状とされた部分は第1ストライプ部に相当する部分であり、以下、この部分をストライプ部141という。
【0033】
第1電流分散層13のうちストライプ状とされた部分の各ラインの幅は、例えば0.25μmとされ、n型不純物濃度は、例えば5.0×1016~2.0×1018/cmとされている。ストライプ部141を構成する各ラインの幅は、例えば0.9μmとされ、p型不純物濃度は、例えば3.0×1017~1.0×1018/cmとされている。本実施形態の場合、第1ディープ層14は、深さ方向においてp型不純物濃度が一定とされている。また、第1ディープ層14は、n型層12と反対側の表面が第1電流分散層13の表面と同一平面とされている。
【0034】
また、図3に示すように、第1ディープ層14は、アクティブ領域1aと外周領域2との間に位置し、アクティブ領域1aを囲むように配置されたMOSFETの素子動作が行われない非アクティブ領域1bにも形成されている。非アクティブ領域1bのうちのアクティブ領域1aの近傍では、第1ディープ層14は、アクティブ領域1aと同様のストライプ部141が形成された構造とされ、それより外側では外周領域2との境界位置まで全面形成されることで、枠状部142が構成されている。枠状部142は、ストライプ部141を囲みつつストライプ部141を構成する各ラインと接続されている。
【0035】
本実施形態では、第1ディープ層14は、後述するようにイオン注入によって形成される。そして、イオン注入時におけるフォトリソグラフィーの加工限界を考慮して、ストライプ部141を構成する各ラインの幅、つまりy軸方向の長さが0.3μm以上、例えば上記した0.9μmとされている。このストライプ部141を構成する各ラインの幅(以下、単に第1ディープ層14の幅という)は、詳細については後述するが、図4に示すように、両先端部141aの幅がその内側にある内側部141bの幅以上になっている。そして、内側部141bの幅が例えば0.9μmとされており、先端部141aはそれ以上の幅とされている。このため、ストライプ部141を構成する各ラインの間隔、つまり第1電流分散層13のy軸方向に沿った幅(以下では、単に第1電流分散層13の幅という)は、第1電流分散層13の両端部においてその内側の部分の幅以下になっている。なお、図4では、後述するトレンチゲート構造を破線で示してある。ここでは、先端部141aとトレンチゲート構造とが重なるレイアウトとしているが、必ずしも重なっていなくても良い。
【0036】
第1電流分散層13および第1ディープ層14上には、第2電流分散層15が形成されている。第2電流分散層15は、窒素やリン等のn型不純物濃度が例えば1.0×1016~5.0×1017とされ、厚さが0.5~2μmとされている。本実施形態では、この第2電流分散層15に加えてn型層12および第1電流分散層13がドリフト層16を構成する部分となっている。
【0037】
また、第2電流分散層15には、当該第2電流分散層15を貫通するように、複数の第2ディープ層17が形成されている。第2ディープ層17は、Al等のp型不純物濃度が例えば2.0×1017~2.0×1018とされ、厚さが第2電流分散層15と等しくされている。本実施形態では、第2ディープ層17は、MOSFETが素子動作させられるアクティブ領域1aでは複数本のラインが並べられたストライプ状となるように、それぞれy軸方向に沿って延設され、x軸方向に沿って等間隔に配列されている。第2ディープ層17のうちストライプ状とされた部分は第2ストライプ部に相当する部分であり、以下、この部分をストライプ部171という。第2ディープ層17のストライプ部171の各ラインは、第1ディープ層14のストライプ部141と交差する方向に延設されており、ストライプ部171の各ラインは、例えば0.7~1.6μmの幅で構成されている。
【0038】
また、図3に示すように、第2ディープ層17は、アクティブ領域1aと外周領域2との間に位置する非アクティブ領域1bにも形成されている。非アクティブ領域1bのうちのアクティブ領域1aの近傍では、第2ディープ層17は、アクティブ領域1aと同様のストライプ部171が形成された構造とされ、それより外側では外周領域2との境界位置まで全面形成されることで枠状部172が構成されている。枠状部172は、ストライプ部171を囲みつつストライプ部171を構成する各ラインと接続されている。
【0039】
そして、各第2ディープ層17は、ストライプ部171ではストライプ部141と交差する部分が、また、枠状部172では枠状部142と重ねて形成された部分が、それぞれ第1ディープ層14と繋がっている。なお、ストライプ部171は、後述するトレンチ21を挟むように形成されている。つまり、ストライプ部171は、トレンチ21から離れて形成されている。また、第2電流分散層15は、第2ディープ層17のストライプ部171の各ラインの間に配置された状態になるため、第2電流分散層15についてもストライプ状となる。
【0040】
第2電流分散層15および第2ディープ層17上には、p型のベース領域18が形成されている。ベース領域18の上には、n型のソース領域19およびp型のコンタクト層20が形成されている。ソース領域19は、後述するトレンチゲート構造の両側に配置されており、コンタクト層20は、ソース領域19を挟んでトレンチゲート構造と反対側に備えられている。また、本実施形態では、ソース領域19が第2不純物領域に相当している。
【0041】
ベース領域18は、Al等のp型不純物濃度が例えば5.0×1016~2.0×1019/cm、厚さが0.5μm程度で構成されている。ソース領域19は、表層部における窒素やリン等のn型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1020/cm、厚さが0.3μm程度で構成されている。コンタクト層20は、例えば表層部におけるAl等のp型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cm、厚さが0.3μm程度で構成されている。
【0042】
また、ベース領域18およびソース領域19を貫通して第2電流分散層15に達すると共に、底面が第2電流分散層15内に位置するように、例えば幅が0.5~1.0μmとされたトレンチ21が形成されている。トレンチ21は、第1電流分散層13および第1ディープ層14に達しないように、つまり当該トレンチ21の底面よりも下方に第1電流分散層13および第1ディープ層14が位置するように形成されている。なお、トレンチ21がベース領域18およびソース領域19を貫通するように形成されているため、ベース領域18およびソース領域19は、トレンチ21の側面と接した状態となる。
【0043】
トレンチ21は、内壁面に形成されたゲート絶縁膜22と、ゲート絶縁膜22の表面に形成されたドープトPoly-Siによって構成されるゲート電極23によって埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。特に限定されるものではないが、ゲート絶縁膜22は、トレンチ21の内壁面を熱酸化することで形成され、厚さがトレンチ21の側面側および底部側で共に100nm程度とされている。
【0044】
また、トレンチ21は、図1中のy軸方向、すなわち<-1120>方向を長手方向として延設されている。このようにトレンチ21が<11-20>方向に延設されることにより、トレンチ21の側壁面である(1-100)面をチャネルとして用いることができるため、チャネル移動度依存性の影響を低減できる。さらに、トレンチ21は、図3に示すように、x軸方向に沿って複数並べて形成されることでストライプ状とされる。また、トレンチ21は先端部において半円状になっており、隣り合う2つのトレンチ21を1組として、各組のトレンチ21同士が先端で連結されている。上記のソース領域19およびコンタクト層20は、トレンチ21の延設方向に沿って延設されている。
【0045】
ソース領域19およびコンタクト層20の表面やゲート電極23の表面には、ソース電極24や図示しないゲート配線が形成されている。なお、本実施形態では、ソース電極24が第1電極に相当している。
【0046】
ソース電極24およびゲート配線は、複数の金属、例えばNi/Al等で構成されており、少なくともn型SiC、すなわちソース領域19やnドープの場合のゲート電極23と接触する部分はn型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、ソース電極24およびゲート配線は、少なくともp型SiC、すなわちコンタクト層20やpドープの場合のゲート電極23と接触する部分はp型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。
【0047】
なお、これらソース電極24およびゲート配線は、層間絶縁膜25上に形成されることで電気的に絶縁されている。そして、ソース電極24は、層間絶縁膜25に形成されたコンタクトホール25aを通じてソース領域19およびコンタクト層20と電気的に接続されている。これにより、第1ディープ層14は、コンタクト層20、ベース領域18、第2ディープ層17を介してソース電極24と同電位に維持される。また、ゲート配線は、図1図2とは別断面において、層間絶縁膜25に形成されたコンタクトホール25aを通じてゲート電極23と電気的に接続されている。
【0048】
基板11の裏面側には、基板11と電気的に接続されるドレイン電極26が形成されている。なお、本実施形態では、基板11がドレイン層として機能する。また、本実施形態では、ドレイン電極26が第2電極に相当している。
【0049】
以上説明したように、セル領域1には、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。そして、図3に示すように、セル領域1のうち、トレンチゲート構造、ソース領域19およびコンタクト層20が形成された部分がアクティブ領域1a、アクティブ領域1aと外周領域2との間を非アクティブ領域1bとして、アクティブ領域1aで素子動作する。
【0050】
外周領域2は、セル領域1におけるアクティブ領域1aおよび非アクティブ領域1bを囲むように設けられる。外周領域2では、図2および図3に示されるように、n型層12上に、セル領域1に形成された第2ディープ層17が延設されている。そして、n型層12の表層部には、第2ディープ層17と繋がると共に、セル領域1を囲む複数のp型のガードリング27が構成されている。本実施形態では、ガードリング27は、第1ディープ層14と同じ不純物濃度とされていると共に、同じ深さとされている。
【0051】
以上のようにして、本実施形態のSiC半導体装置が構成されている。続いて、第1ディープ層14の幅や第1電流分散層13の幅の詳細について説明する。
【0052】
上記したように、第1ディープ層14は、アクティブ領域1aでは、複数本のラインが並べられたストライプ部141となっている。また、第1ディープ層14は、非アクティブ領域1bでは、アクティブ領域1a近傍を除いて、外周領域2との境界位置まで全面形成された枠状部142となっている。そして、第1ディープ層14におけるストライプ部141の各ラインは、両先端部141aの幅が内側部141bの幅以上とされている。つまり、第1電流分散層13は、両端部の幅がそれより内側の部分の幅以下になっている。
【0053】
本実施形態では、内側部141bの幅については一定寸法、例えば0.9μmとし、先端部141aの幅が先端に向かうほど徐々に大きくなるようにしている。具体的には、先端部141aは、幅方向の両側において均等な増加割合で先端に向かうほど徐々に幅広とされ、最も先端位置において、先端部141aの幅が内側部141bよりも片側0.1~0.2μm程度広くされている。このため、先端部141aの幅方向両側は直線状になっている。そして、先端部141aの幅が先端に向かうほど徐々に大きくされていることから、逆に、第1電流分散層13は、先端部の幅が先端に向かうほど徐々に小さくなり、先端形状が台形状となっている。
【0054】
次に、上記のように構成されたSiC半導体装置の作動について説明する。
まず、上記SiC半導体装置は、ゲート電極23にゲート電圧が印加される前のオフ状態では、ベース領域18に反転層が形成されない。このため、ドレイン電極26に正の電圧、例えば1600Vが印加されたとしても、ソース領域19からベース領域18内に電子が流れず、ソース電極24とドレイン電極26との間には電流が流れない。
【0055】
また、ゲート電極23にゲート電圧が印加される前の状態では、ドレイン-ゲート間に電界がかかり、ゲート絶縁膜22の底部に電界集中が発生し得る。しかしながら、上記SiC半導体装置では、トレンチ21よりも深い位置に、第1ディープ層14および第1電流分散層13が備えられている。このため、第1ディープ層14および第1電流分散層13との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による高電界がゲート絶縁膜22に入り込み難くなる。特に、第1ディープ層14の先端部141aの幅が内側部141bの幅以上とされることで、第1電流分散層13の先端部の幅がそれより内側の部分の幅以下となるようにしてある。このため、第1電流分散層13の先端部が幅広となることによる等電位線のせり上がりを抑制でき、より高電界がゲート絶縁膜22に入り込み難くなる。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜22が破壊されることを抑制できる。
【0056】
そして、ゲート電極23に所定のゲート電圧、例えば20Vが印加されると、ベース領域18のうちのトレンチ21に接している表面にチャネルが形成される。このため、ソース電極24から注入された電子は、ソース領域19からベース領域18に形成されたチャネルを通った後、第2電流分散層15に流れる。そして、第2電流分散層15に流れた電子は、第1電流分散層13を通過してn型層12に流れ、その後にドレイン層としての基板11を通過してドレイン電極26へ流れる。これにより、ソース電極24とドレイン電極26との間に電流が流れ、SiC半導体装置がオン状態となる。なお、本実施形態では、チャネルを通過した電子が第2電流分散層15、第1電流分散層13、およびn型層12を通過して基板11へと流れるため、第2電流分散層15、第1電流分散層13、およびn型層12にてドリフト層16が構成される。
【0057】
次に、本実施形態のSiC半導体装置の製造方法について図5A図5Gを参照しつつ説明する。なお、図5A図5Gは、図1に相当する部分の製造工程途中を示した断面斜視図である。
【0058】
まず、図5Aに示すように、n型の基板11を用意する。そして、この基板11の表面に、SiCからなるn型層12をエピタキシャル成長させる。次に、n型層12の表面に図示しないマスクを形成し、第1電流分散層13の形成予定領域が開口するようにマスクをフォトリソグラフィー等でパターニングする。具体的には、セル領域1のみが開口するように、マスクをパターニングする。そして、マスク上から窒素またはリン等のn型不純物をイオン注入すると共に熱処理することにより、セル領域1のみに第1電流分散層13を形成する。その後、マスクを除去する。なお、マスクとしては、例えば、LTO(Low Temperature oxide)膜等が用いられる。また、本実施形態では、後述の工程でもマスクが用いられるが、各マスクには、例えば、LTO膜等が用いられる。
【0059】
本実施形態では、このように第1電流分散層13をイオン注入によって形成している。このため、第1電流分散層13をエピタキシャル膜で形成する場合と比較して、第1電流分散層13の不純物濃度の制御が容易になり、特性がばらつくことを抑制できる。
【0060】
次に、図5Bに示すように、マスク3を形成し、第1ディープ層14の形成予定領域が開口するようにマスク3をフォトリソグラフィー等でパターニングする。このとき、外周領域2については図示していないが、ガードリング27の形成予定領域についてもマスク3が開口するようにしている。そして、マスク3上からAl等のp型不純物をイオン注入すると共に熱処理することにより、第1ディープ層14およびガードリング27を形成する。なお、ここでは第1ディープ層14およびガードリング27を同じ工程で形成しているが、別々の工程で形成しても良い。
【0061】
ここで、本実施形態では、第1ディープ層14におけるストライプ部141の各ラインを先端部141aの幅が内側部141bの幅以上となるようにしている。すなわち、図4に示したレイアウトでマスク3を設計し、マスク3の開口部のうち先端部141aと対応する部分の幅を内側部141bと対応する部分の幅より広くして、先端部141aの幅が設計値よりも狭くなっても、内側部141bの幅以上となるようにする。
【0062】
仮に、図6Aに示すように、ストライプ部141の各ラインの幅を先端部141aも内側部141bと同じ幅となるようにマスク3を設計した場合、パターニング後のマスク3の設計値は図6Bに示すような形状になる。すなわち、図6Bに示すように、マスク3の開口部3aのうち先端部141aと対応する部分が狭くなり、第1電流分散層13の先端部に対応する位置においてマスク3が半円状に残ってしまう。図6Cは、実際のマスク3の出来映えを示したものであり、マスク3の開口部3aのうち先端部141aと対応する部分が狭くなっているのが分かる。なお、開口部3aの周囲を囲む白色部分は、マスク3がテーパ状に残っている部分を示している。また、図6A図6Bは断面図ではないが、理解を容易にするために、マスク3となる部分にハッチングを示してある。
【0063】
このように、マスク3の開口部3aのうち先端部141aと対応する部分が狭く残った状態になるため、マスク3を用いてp型不純物をイオン注入すると、先端部141aが内側部141bよりも幅が狭く形成される。したがって、第1電流分散層13の先端部が広くなった状態になり、図7に示すように、この部分において電界のせり上がりが抑制できなくなるため、ドレイン-ソース間リークが発生し、耐圧低下が生じると共にトレンチゲート構造の底部での電圧上昇が生じる。そして、部分的な耐圧低下領域が発生し、アバランシェ耐量やスイッチング耐量が得られず、ゲート絶縁膜22の寿命の低下を招くことになる。
【0064】
このような現象が発生するのは、先端部141a近傍においてマスク3をパターニングする際のレジストエッチング時の反応液密度が他の部分より薄くなり、レジストが残ってしまって先端部141aの形状に沿った開口ができなくなるためである。第1電流分散層13の先端部に対応する位置においてマスク3が半円状に残ってしまうことから、ストライプ部141の各ラインの先端部141aの幅が狭くなってしまう。実際に、先端部141aにおいて、ストライプ部141の各ラインの間隔がどの程度拡大していたかを確認したところ、設計値に対して40~50%拡がっていた。
【0065】
シミュレーションにより、ストライプ部141の各ラインの間隔と耐圧との関係およびゲート絶縁膜22に加わる電界強度について調べた。具体的には、各ラインの間隔が設計値通りである場合を100%として、各ラインの間隔が大きくなったときの耐圧やゲート絶縁膜22に加わる電界強度を算出した。図8Aおよび図8Bは、その結果を示している。これらの図に示されるように、各ラインの間隔が設計値に対して40%拡がっていた場合、つまり140%となった場合、耐圧は設計値の1200Vに対して400V程度低下し、ゲート絶縁膜22に加わる電界強度は330%程度増加することが分かった。このシミュレーション結果からも、ゲート絶縁膜22の寿命の低下が懸念される。
【0066】
これに対して、本実施形態では、マスク3の開口部のうち先端部141aと対応する部分の幅を内側部141bと対応する部分の幅より広くして、先端部141aの幅が設計値よりも狭くなっても、内側部141bの幅以上となるようにしている。したがって、第1電流分散層13の先端部が広くならないようにでき、その部分での電界のせり上がりを抑制できるため、ゲート絶縁膜22の耐圧低下および寿命低下を抑制することが可能となる。
【0067】
続いて、図5Cに示すように、n型層12や第1電流分散層13および第1ディープ層14上に、SiCからなる第2電流分散層15をエピタキシャル成長させる。これにより、n型層12、第1電流分散層13、第2電流分散層15を有するドリフト層16が構成される。
【0068】
次に、図示しないマスクを形成し、第2ディープ層17の形成予定領域が開口するようにマスクをフォトリソグラフィー等でパターニングする。そして、マスク上からAl等のp型不純物をイオン注入すると共に熱処理することにより、第2ディープ層17を形成する。この際、第2ディープ層17を第1ディープ層14の延設方向と交差する方向に延設する。このため、第2ディープ層17を形成する際に多少の位置ずれがあったとしても、第1ディープ層14と第2ディープ層17とが繋がらないという不具合が発生することを抑制できる。
【0069】
次に、図5Dに示すように、第2電流分散層15および第2ディープ層17上に、p型不純物層をエピタキシャル成長させることによってベース領域18を形成する。続いて、ベース領域18上に、n型不純物層をエピタキシャル成長させることによってソース領域19を形成する。
【0070】
そして、図5Eに示すように、図示しないマスクを形成し、コンタクト層20の形成予定領域が開口するようにマスクをフォトリソグラフィー等でパターニングする。さらに、マスク上からAl等のp型不純物をイオン注入すると共に熱処理することにより、コンタクト層20を形成する。
【0071】
次に、図5Fに示すように、図示しないマスクを形成した後、トレンチ21の形成予定領域が開口するようにマスクをパターニングする。そして、異方性エッチングを行ってトレンチ21を形成する。具体的には、ソース領域19およびベース領域18を貫通し、第2電流分散層15内に底部が位置するように、トレンチ21を形成する。つまり、トレンチ21の底面より下方に、第1電流分散層13および第1ディープ層14が位置するように、トレンチ21を形成する。なお、異方性エッチングを行った後、必要に応じて等方性エッチングや犠牲層酸化を行うようにしてもよい。
【0072】
次に、図5Gに示すように、トレンチ21内を含む場所にゲート絶縁膜22を形成する。例えば、熱酸化、具体的には、ウェット雰囲気を用いたパイロジェニック法によるゲート酸化によりゲート絶縁膜22を形成する。続いて、ゲート絶縁膜22の表面にn型不純物をドーピングしたポリシリコン層を例えば600℃の温度下で440nm程度成膜したのち、トレンチ21内にゲート絶縁膜22およびゲート電極23が残るようにエッチバック工程等を行う。これにより、トレンチゲート構造が構成される。
【0073】
その後の工程に関しては、従来と同様であるため図示しないが、層間絶縁膜25の成膜、コンタクトホール25aの形成、ソース電極24やゲート配線の形成、基板11の裏面側へのドレイン電極26の形成工程を行う。これにより、本実施形態のSiC半導体装置が製造される。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、第1ディープ層14におけるストライプ部141の各ラインについて、先端部141aの幅が内側部141bの幅以上となるようにしている。つまり、仮にマスク3のうち先端部141aと対応する部分が狭まったとしても、先端部141aの幅を内側部141bの幅以上にできるようにしている。したがって、第1電流分散層13の先端部が広くならないようにでき、その部分での電界のせり上がりを抑制できるため、ゲート絶縁膜22の耐圧低下および寿命低下を抑制することが可能となる。
【0075】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、先端部141aの幅が先端に向かうほど徐々に大きくなるようにしつつ、先端部141aの幅方向両側が直線状となるようにする場合を示した。換言すれば、第1電流分散層13の先端が台形状となるようにした。これに対して、図9Aに示すように、先端部141aの幅が先端に向かうほど徐々に大きくなるようにしつつ、先端部141aの幅方向両側が楕円弧状などの曲線となるように、例えば第1電流分散層13の先端が円形状を含む楕円形状となるようにしても良い。また、図9Bに示すように、先端部141aの幅方向両側が直線状となるようにし、第1電流分散層13の先端が三角形状となるようにしても良い。さらに、先端部141aの幅方向両側が同じ形状でなくても良いし、広がり方が異なっていても良い。
【0076】
また、本実施形態では、ストライプ部141における各ラインの長手方向をトレンチゲート構造の長手方向に対して直交する方向としているが、直交以外の交差する方向であっても良いし、平行な方向であっても良い。なお、ストライプ部141における各ラインの長手方向をトレンチゲート構造の長手方向に対して平行にする場合、各ラインと第2ディープ層17の形成間隔となるピッチを等しくすれば良い。
【0077】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して第2ディープ層17のうちのストライプ部171のレイアウトについて規定したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0078】
第1実施形態では、ストライプ部141の各ラインの先端部において幅が狭くなることで第1電流分散層13の先端部の幅が広くなることによるゲート寿命の低下について対策した。一方、上記したように、枠状部142とストライプ部141との間の間隔がストライプ部141を構成する各ライン同士の間隔よりも広がることが確認された。この間隔が広くなった枠状部142とストライプ部141との間においても等電位線のせり上がりが抑制できなくなるため、ゲート寿命の低下が懸念される。本実施形態では、このゲート寿命の低下について対策する。
【0079】
図10に示すように、本実施形態では、第2ディープ層17におけるストライプ部171の各ラインの先端部171aをそれより内側に位置する内側部171bよりも広くしている。つまり、第2電流分散層15の幅は、両端部においてそれより内側の部分より狭くされている。例えば、内側部171bは0.7~1.6μm程度とされ、先端部171aは内側部171bに対して幅方向両側それぞれ先端に向かうほど徐々に大きくなったのち一定幅となるようにしている。このため、第2電流分散層15は、先端部が一定幅となって、先端部の角部が90°となった長方形状となる。先端部171aの内側部171bに対する幅の増加割合については任意であるが10~30%程度、例えば幅方向両側それぞれで0.1μm程度大きくされるようにすると好ましい。なお、第2ディープ層17のうちの先端部171aとは、非アクティブ領域1b内に位置する部分であり、非アクティブ領域1b内において先端部171aの幅が内側部171bの幅より広くなっている。
【0080】
先端部171aを広くするときの開始点については任意であるが、第1ディープ層14における第1ストライプ部141のうち最も枠状部142側に位置するラインから開始すると好ましい。
【0081】
上記したように、枠状部142とストライプ部141との間隔がストライプ部141を構成する各ライン同士の間隔よりも広がり得る。この間隔が広くなった枠状部142とストライプ部141との間においても等電位線のせり上がりが抑制できなくなり、ゲート寿命が低下する可能性がある。
【0082】
これに対して、本実施形態では、第2ディープ層17についても先端部171aを内側部171bの幅以上としている。このため、枠状部142とストライプ部141との間において第2ディープ層17の間隔を狭くできる。したがって、枠状部142とストライプ部141との間が拡がることで第1ディープ層14による電界緩和効果が低下しても、第2ディープ層17の電界緩和効果によって等電位線を押し戻せ、高電界が入り込み難くなるようにできる。よって、ゲート絶縁膜22の耐圧低下および寿命低下を抑制することが可能となる。
【0083】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態では、先端部171aの幅を先端に向かうほど徐々に大きくなったのち一定幅となるようにした。換言すれば、第2電流分散層15の先端が長方形状、つまり先端の角部が90度となるようにした。これに対して、図11Aに示すように、先端部171aの幅方向両側が直線状となるようにし、第電流分散層15の先端が三角形状となるようにしても良い。また、図11Bに示すように、先端部171aの幅が先端に向かうほど徐々に大きくなるようにしつつ、先端部171aの幅方向両側が円弧状などの曲線となるように、例えば第電流分散層15の先端が円形状を含む楕円形状となるようにしても良い。さらに、先端部171aの幅方向両側が同じ形状でなくても良いし、広がり方が異なっていても良い。
【0084】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対して第1ディープ層14のうちのストライプ部141のレイアウトを変更したものであり、その他については第1、第2実施形態と同様であるため、第1、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0085】
第1ディープ層14のストライプ部141と第2ディープ層17のストライプ部171を交差する構造とする場合、第1ストライプ部141のうちトレンチゲート構造に交差する部分が電流経路の阻害要因となる。このため、オン抵抗を増大させることになる。本実施形態では、このオン抵抗の増大について対策する。
【0086】
図12に示すように、本実施形態では、ストライプ部141をトレンチゲート構造に交差させつつも、部分的に長方形の短冊状とした各ラインに欠損部14aを設けて分断し、各ラインを破線状としている。そして、欠損部14aをトレンチゲート構造が通るようにすることで、その部分に電流が流れる通路を確保する。
【0087】
ストライプ部141における各ラインに設ける欠損部14aの場所については任意であるが、図12に示すように、千鳥状の配置となるようにすると好ましい。つまり、隣り合うラインでは、欠損部14aがラインの長手方向においてトレンチゲート構造の間隔分ずらして形成されるようにし、各ラインの1つおきに、欠損部14aが同じトレンチゲート構造と対応する部分に形成されるようにする。このようにすれば、各トレンチゲート構造の下方位置にストライプ部141のラインを1つおきに配置しつつ、欠損部14aの配置の面内分布を均一にすることができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態では、ストライプ部141をトレンチゲート構造に交差させつつも、部分的に各ラインに欠損部14aを設けて分断し、その欠損部14aをトレンチゲート構造が通るようにしている。このようにすることで、第1ディープ層14とトレンチゲート構造との交差部分を第1、第2実施形態に対して減らすことができ、オン抵抗の増大を抑制することが可能となる。
【0089】
ここで、ストライプ部141におけるラインの欠損部14aのサイズ、つまり長手方向において分断されたライン間の間隔については、2.6μm以下となるようにすると好ましい。この欠損部14aのサイズを変化させて破壊電圧について調べた。具体的には、ゲート電流Igの変化に基づいてゲート破壊が生じたときのドレイン電圧Vdを確認した。図13は、その結果を示した図であり、ライン間の間隔を2.6μm、4.8μm、9.6μmとした場合の結果を抽出して示してある。
【0090】
図13に示されるように、ライン間の間隔が大きくなるほど破壊耐圧が小さくなる。そして、SiC半導体装置として好ましい破壊耐圧が950Vであるとすると、少なくともライン間の間隔が2.6μm以下であれば、それを満たすことができる。勿論、ライン間の間隔については、要求される破壊耐圧に応じてライン間の間隔の下限値を設定すれば良く、要求される破壊耐圧が950V以下であればライン間の間隔が4.8μmの場合も可能になり得る。
【0091】
なお、ここでは長手方向において分断されたライン間の間隔について説明したが、この間隔は、欠損部14aにおいて隣り合うことになる1つおきに配置されたラインのy方向の間隔についても同様のことが言える。つまり、図12中に破線で示した欠損部14aの中央を中心とした円形の直径φをφ2.6μmとして、この円形と接するように、もしくはその内側に、欠損部14aを挟んで隣り合うことになる1つおきに配置されたラインが両方とも存在するレイアウトであれば良い。
【0092】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態では、ストライプ部141を構成する各ラインの分割箇所の角部の角度が90°となるようにし、分断された各部が長方形の短冊状となるようにしている。これに対して、各ラインの分断された各部を先端に向かうほど幅が徐々に小さくなる形状、例えば、図14Aに示すような半円状を含む楕円形状や、図14Bに示すような三角形状としても良い。さらに、各ラインの分断された各部の先端の幅方向両側が同じ形状でなくても良い。
【0093】
また、第3実施形態のように、各ラインの分断された各部を短冊状とするのではなく、ドット状とすることもできる。具体的には、各ドットが円形を含む楕円形状とされても良い。例えば、図15Aに示すように各ドットを円形状とすれば、ストライプ部141を構成する各ラインがポルカドット状に配置されるようにできる。また、各ドットが多角形状とされても良い。例えば、図15Bに示すように各ドットを六角形状とすれば、ストライプ部141を構成する各ラインがハニカム状に配置されるようにできる。このように、ストライプ部141を構成する各ラインの分断された各部をドット状としても、耐圧を確保しつつオン抵抗の増大を低減することが可能となる。
【0094】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1~第3実施形態に対してディープ層の構成を変更したものであり、その他については第1~第3実施形態と同様であるため、第1~第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0095】
上記第1~第3実施形態では、ディープ層を第1ディープ層14と第2ディープ層17を重ねた2層構造としている。しかしながら、寄生的に形成されるPNダイオードの通電時に発生する正孔の影響で、順方向電圧Vfが変動することが確認された。また、第1ディープ層14と第2ディープ層17の2層構造のディープ層とする場合、SiC中に存在している基底面転位(以下、BPDという)が積層欠陥に拡張してしまい、電流経路の阻害要因となって、オン抵抗を増大させることが確認された。本実施形態では、これら順方向電圧Vfの変動およびオン抵抗の増大について対策する。
【0096】
図16に示すように、本実施形態では、第3ディープ層30を備えている。すなわち、ディープ層を第1ディープ層14、第2ディープ層17に加えて第3ディープ層30を備えた3層構造としている。
【0097】
本実施形態の場合、第3ディープ層30を第1電流分散層13および第1ディープ層14の下方に配置している。具体的には、第1ディープ層14の下方位置において、第2電流分散層15と対応する位置、つまりトレンチゲート構造の直下に第3ディープ層30を配置している。第3ディープ層30については、n型層12内に形成しても良いが、ここでは第3ディープ層30と隣接してn型層12よりもn型不純物濃度を高くした第3電流分散層31を備えるようにしている。第3ディープ層30と第3電流分散層31は共に複数のラインがストライプ状に配置されたストライプ部を有し、それぞれのストライプ部を構成する各ラインが交互に配置された構造とされている。
【0098】
なお、第3ディープ層30は、少なくともアクティブ領域1aではトレンチ21の長手方向と同方向を長手方向として複数のラインが並べられたストライプ部とされている。この第3ディープ層30におけるストライプ部が第3ストライプ部に相当する。また、第3ディープ層30は、図示しないが、非アクティブ領域1bでは、アクティブ領域1a側だけストライプ部とされ、その外側の領域では外周領域2に至るまで全面形成され、ストライプ部を囲む枠状部を構成しているが、ストライプ部だけでも良い。
【0099】
本実施形態のSiC半導体装置はMOSFETを備えている。MOSFETは、構造上、PNダイオードが寄生的に形成される。具体的には、ベース領域18などのp型層と第2電流分散層15などドリフト層を構成するn型層とのPN接合によって、寄生PNダイオードが構成される。したがって、MOSFETがインバータ等に適用された場合、その寄生PNダイオードを還流ダイオードとして用いることで還流ダイオードを別途備えなくても良くなるため、部品点数削減が期待される(以下、この寄生PNダイオードを寄生FWDという)。
【0100】
ここで、寄生FWDがダイオード動作させられた場合、ベース領域18側からドリフト層中に拡散した少数キャリアとなる正孔とドリフト層中の電子が再結合する。この寄生FWDの通電時に発生する正孔の影響で、順方向電圧Vfが変動し、素子動作に影響を及ぼす。また、正孔と電子とが再結合する際のエネルギーによって、エピタキシャル膜で構成されたドリフト層中のBPDが拡大して積層欠陥になる。BPDは線状欠陥であるため、半導体装置のセル領域内における占有面積が狭く、素子動作に及ぼす影響が殆ど無いが、積層欠陥になるとセル領域内における占有面積が広くなり、素子動作に及ぼす影響が大きくなる。特に、寄生FWDに対して大電流が流れると、正孔がドリフト層の下方に位置する基板11などに到達してしまう。基板11ではドリフト層よりも大幅にBPD欠陥密度が大きくなっていることから、尚更に積層欠陥の占有面積が広くなり、オン抵抗を増大させる。
【0101】
これに対して、本実施形態のSiC半導体装置では、ディープ層を第1ディープ層14、第2ディープ層17に加えて第3ディープ層30を備えた3層構造としている。ディープ層を3層構造とすると、ベース領域18で発生した正孔は、図17に矢印で示したように、第2電流分散層15から第1電流分散層13を通過して第3電流分散層31の移動経路を通ることになる。このため、3層構造とした場合には、ディープ層を2層構造とする場合と比較して、図中破線で示した分、正孔の移動経路が長くなり、より多くの正孔が再結合して消滅するようにできる。したがって、正孔が基板11に辿り着く前に消滅するようになり、正孔の影響による順方向電圧Vfが変動を抑制することが可能となる。また、BPDが積層欠陥に拡張することを抑制することが可能となる。特に、第3ディープ層30に隣接してn型層12よりもn型不純物濃度を高くした第3電流分散層31を備えるようにしているため、より正孔が再結合して消滅し易くなるようにでき、更に積層欠陥が形成されることが抑制される。
【0102】
以上説明したように、本実施形態のSiC半導体装置では、ディープ層を第1ディープ層14、第2ディープ層17に加えて第3ディープ層30を備えた3層構造としている。これにより、順方向電圧Vfの変動による素子動作の影響を抑制することが可能となると共に、BPDが積層欠陥に拡張することを抑制でき、オン抵抗の増大を抑制することが可能になる。
【0103】
(第4実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、ディープ層を3層構造とする一例を示したが、他の3層構造とすることもできる。例えば、図18に示す構造とすることができる。図18に示す構造は、図16に示した構造と比較して、第3ディープ層30や第3電流分散層31のうちのストライプ部を構成する各ラインの形成間隔となるピッチを狭くしている。具体的には、第2ディープ層17のストライプ部171やストライプ状とされている第2電流分散層15の各ラインのピッチよりも、第3ディープ層30や第3電流分散層31のうちのストライプ部を構成する各ラインのピッチを狭くしている。
【0104】
このような構造とする場合にも、ベース領域18で発生した正孔は、図19に示すように、第2電流分散層15から第1電流分散層13を通過して第3電流分散層31の移動経路を通ることになる。このため、正孔の移動経路が長くなり、より多くの正孔が再結合して消滅するようにできて、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、図20に示す構造とすることもできる。図20に示す構造は、図16の構造に対して、第2ディープ層17をトレンチゲート構造から離れた位置ではなく、トレンチゲート構造の直下に配置したものである。トレンチ21の底部に接するように第2ディープ層17を配置し、第2電流分散層15がトレンチゲート構造の両側に配置されるようにしている。そして、トレンチゲート構造の側面のうちのベース領域18よりも下方位置において、トレンチ21の側面に第2電流分散層15が接する構造、つまりベース領域18と第2ディープ層17との間に第2電流分散層15が介在する構造としている。
【0106】
また、第2ディープ層17をトレンチゲート構造の直下に配置する場合、第2ディープ層17をベース領域18と接続する構造が必要になる。このため、コンタクト層20をトレンチゲート構造と交差し、かつ、第2ディープ層17に達する深さで形成するようにしている。例えば、ソース領域19およびベース領域18を貫通して第2ディープ層17に達する深さのトレンチを形成し、このトレンチ内を埋め込むようにp型層を成膜し、それをエッチバックすることや図示しないマスクを用いた高加速イオン注入を用いて、図20に示す構造のコンタクト層20を形成している。
【0107】
このような構造とする場合にも、ベース領域18で発生した正孔は、図21に示すように、第2電流分散層15から第2ディープ層17を迂回して第1電流分散層13を通過し、さらに第3電流分散層31に移動する移動経路を通ることになる。このため、正孔の移動経路が長くなり、より多くの正孔が再結合して消滅するようにできて、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0108】
また、第2ディープ層17をトレンチゲート構造の直下に配置する構造とする場合、図22に示すように、トレンチ21の底部から第2ディープ層17が離れた構造とされても良い。このような構造とされる場合においても、ベース領域18で発生した正孔は、図23に示すように、第2電流分散層15から第2ディープ層17を迂回して第1電流分散層13を通過し、さらに第3電流分散層31に移動する移動経路を通ることになる。このため、正孔の移動経路が長くなり、より多くの正孔が再結合して消滅するようにできて、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
なお、図20図22に示す構造では、図18に示すように、第3ディープ層30や第3電流分散層31のうちのストライプ部を構成する各ラインのピッチを狭くしている。これに対して、第4実施形態のように、第2ディープ層17のストライプ部171やストライプ状とされた第2電流分散層15の各ラインのピッチと、第3ディープ層30や第3電流分散層31のうちのストライプ部を構成する各ラインのピッチを同じにしても良い。
【0110】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0111】
例えば、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのMOSFETを例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのMOSFETに対しても本発明を適用することができる。また、上記各実施形態では、半導体スイッチング素子として、トレンチゲート構造のMOSFETを例に挙げて説明したが、同様のトレンチゲート構造のIGBTに対しても本発明を適用することができる。IGBTは、上記各実施形態に対して基板11の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造や製造方法に関しては上記各実施形態と同様である。
【0112】
また、上記各実施形態において、第1ディープ層14のストライプ部141は、例えば、y軸方向に沿って延設されていてもよい。つまり、第1ディープ層14は、第2ディープ層17と同じ方向に延設されていてもよい。また、上記各実施形態において、第2電流分散層15は、例えば、n型層12と同じ不純物濃度とされていてもよい。また、第1電流分散層13は、セル領域1だけでなく外周領域2にも形成されていてもよい。
【0113】
また、上記各実施形態において、非アクティブ領域1bにおいて、第2ディープ層17に枠状部172を備えるようにしたが、第1ディープ層14が枠状部142を備えていれば、第2ディープ層17についてはストライプ部171のみであっても良い。
【0114】
さらに、上記各実施形態では、SiCを半導体材料として用いたSiC半導体装置を例に挙げて説明しているが、他の半導体材料、例えばSiなどを用いた半導体装置についても、上記各実施形態と同様の構成を適用することで同様の効果が得られる。
【0115】
また、上記各実施形態では、基板11が半導体領域を構成する場合について説明したが、半導体領域は必ずしも基板11で構成されていなくても良い。例えば、半導体材料としてシリコンを用いる場合、第1不純物領域に相当する部分をシリコン基板によって構成し、シリコン基板の裏面側にシリコン基板よりも高不純物濃度とされた高濃度領域をイオン注入等で構成することもできる。その場合には、シリコン基板の裏面側に形成された高濃度領域が半導体領域を構成することになる。
【0116】
なお、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(-)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書においては、所望の数字の前にバーを付すものとする。
【符号の説明】
【0117】
11 基板(半導体領域)
12 n型層(第1不純物領域)
13 第1電流分散層
14 第1ディープ層
15 第2電流分散層
17 第2ディープ層
18 ベース領域
19 ソース領域(第2不純物領域)
23 ゲート電極
24 ソース電極(第1電極)
26 ドレイン電極(第2電極)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23