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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ロータ及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20241106BHJP
【FI】
H02K1/276
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021094749
(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公開番号】P2022186493
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂井 眞人
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/128006(WO,A1)
【文献】特開2015-116105(JP,A)
【文献】特開2020-156295(JP,A)
【文献】特開2006-33982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向内側に凸の折返し形状をなす複数個の磁石収容孔(24)を有するロータコア(22)と、前記磁石収容孔に埋め込まれている永久磁石(23)と、を備えるロータ(20)であって、
前記ロータコアは、複数のコアシート(30)が軸方向に積層されてなり、
前記複数のコアシートの各々は、磁石用貫通孔(31,32)を有し、
前記複数のコアシートの前記磁石用貫通孔が軸方向に重なることで前記磁石収容孔が構成され、
前記磁石収容孔の内面には、軸方向に重なる前記磁石用貫通孔の周縁部の位置の違いによって形成される凹凸部(43,44,45)と、前記凹凸部が形成されていない部位である非凹凸部(46)と、が設けられ、
前記永久磁石は、前記凹凸部の凹部(43a,44a,45a)に入り込む係合部(51,52,53)を有している、
ロータ。
【請求項2】
前記ロータコアは、前記永久磁石よりも径方向外側の部位である外側コア部(25)を有し、
前記磁石収容孔の内面は、前記外側コア部を形成する内側側面(41)と、前記内側側面に対向する外側側面(42)と、を含み、
前記凹凸部は、前記内側側面及び前記外側側面の各々に設けられ、
前記非凹凸部は、前記内側側面及び前記外側側面の各々に設けられている、
請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記内側側面に設けられた前記凹部の深さ(D1)は、前記外側側面に設けられた前記凹部の深さ(D2)以下に設定されている、
請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記外側側面に設けられた前記凹部の深さ(D2)は、前記内側側面に設けられた前記凹部の深さ(D1)以下に設定されている、
請求項2に記載のロータ。
【請求項5】
前記内側側面に設けられた前記凹凸部における凹凸の数は、前記外側側面に設けられた前記凹凸部における凹凸の数よりも少ない、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項6】
前記凹凸部は、前記ロータコアの外径の半分よりも径方向内側に設けられている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項7】
前記凹凸部は、前記磁石収容孔の径方向外側端部(24c)に設けられている、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項8】
前記複数のコアシートは、互いに同一構成であり、
前記磁石用貫通孔は、形状が互いに異なり、1つの前記コアシートに混在して設けられた第1磁石用貫通孔(31)及び第2磁石用貫通孔(32)を含み、
1つの前記磁石収容孔の構成において前記第1磁石用貫通孔と前記第2磁石用貫通孔とが混在している、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項9】
前記コアシートは、前記第1磁石用貫通孔と前記第2磁石用貫通孔とが周方向に交互に配置されて構成されている、
請求項8に記載のロータ。
【請求項10】
前記ロータコアは、前記コアシートが所定枚数毎に第1位置と該第1位置から前記磁石収容孔を1個分回転させた第2位置とのいずれかに配置されて構成された、
請求項9に記載のロータ。
【請求項11】
前記凹凸部は、前記磁石収容孔の折返し形状の屈曲部(24b)に設けられている、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項12】
前記ロータコアは、前記磁石収容孔に対応した折返し形状の途中位置において孔幅方向に対向する周縁部間を連結する連結部(61)を有している、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項13】
前記連結部は、前記磁石収容孔の折返し形状の屈曲部(24b)に設けられている、
請求項12に記載のロータ。
【請求項14】
径方向内側に凸の折返し形状をなす複数個の磁石収容孔(24)を有するロータコア(22)と、前記磁石収容孔に埋め込まれている永久磁石(23)と、を備えるロータ(20)と、
前記ロータに対して回転磁界を付与するステータ(10)と、
を備えた回転電機(M)であって、
前記ロータコアは、複数のコアシート(30)が軸方向に積層されてなり、
前記複数のコアシートの各々は、磁石用貫通孔(31,32)を有し、
前記複数のコアシートの前記磁石用貫通孔が軸方向に重なることで前記磁石収容孔が構成され、
前記磁石収容孔の内面には、軸方向に重なる前記磁石用貫通孔の周縁部の位置の違いによって形成される凹凸部(43,44,45)と、前記凹凸部が形成されていない部位である非凹凸部(46)と、が設けられ、
前記永久磁石は、前記凹凸部の凹部(43a,44a,45a)に入り込む係合部(51,52,53)を有している、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込磁石型のロータ及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機において、永久磁石がロータコアの内部に埋め込まれる態様をなす埋込磁石型のロータが周知である。埋込磁石型のロータは、永久磁石によるマグネットトルクに加えて、永久磁石より径方向外側に位置する外側コア部にてリラクタンストルクを得る構成となっている。
【0003】
このような埋込磁石型のロータにおいて、例えば特許文献1に記載されたロータでは、軸方向視で永久磁石がV字及びU字等、径方向内側に凸の折返し形状とされている。このような構成の場合、外側コア部に接する永久磁石の磁石表面と外側コア部自身とを大きくすることが可能である。つまり、回転電機の高トルク化が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-70032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような、径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石を用いたロータでは、永久磁石の径方向外側に位置する外側コア部の体積が大きくなる。また、高トルク化を図るべく、永久磁石の径方向外側端部をロータコアの外周面の近くにまで延ばした場合、永久磁石の径方向外側端部とロータコアの外周面との間におけるロータコアの部位であるブリッジ部の肉厚が薄くなり、当該ブリッジ部の強度が低くなる。このため、例えば外的要因によってロータに軸方向の加振力が加わったとき、ブリッジ部を支点として外側コア部が軸方向に振動するおそれがある。そして、外側コア部の振動が大きくなると、ロータコアが変形してしまうおそれがある。本発明の目的は、軸方向の振動に対するロータコアの強度を向上させることを可能にしたロータ及び回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するロータは、径方向内側に凸の折返し形状をなす複数個の磁石収容孔(24)を有するロータコア(22)と、前記磁石収容孔に埋め込まれている永久磁石(23)と、を備えるロータ(20)であって、前記ロータコアは、複数のコアシート(30)が軸方向に積層されてなり、前記複数のコアシートの各々は、磁石用貫通孔(31,32)を有し、前記複数のコアシートの前記磁石用貫通孔が軸方向に重なることで前記磁石収容孔が構成され、前記磁石収容孔の内面には、軸方向に重なる前記磁石用貫通孔の周縁部の位置の違いによって形成される凹凸部(43,44,45)と、前記凹凸部が形成されていない部位である非凹凸部(46)と、が設けられ、前記永久磁石は、前記凹凸部の凹部(43a,44a,45a)に入り込む係合部(51,52,53)を有している。
【0007】
上記課題を解決する回転電機は、径方向内側に凸の折返し形状をなす複数個の磁石収容孔(24)を有するロータコア(22)と、前記磁石収容孔に埋め込まれている永久磁石(23)と、を備えるロータ(20)と、前記ロータに対して回転磁界を付与するステータ(10)と、を備えた回転電機(M)であって、前記ロータコアは、複数のコアシート(30)が軸方向に積層されてなり、前記複数のコアシートの各々は、磁石用貫通孔(31,32)を有し、前記複数のコアシートの前記磁石用貫通孔が軸方向に重なることで前記磁石収容孔が構成され、前記磁石収容孔の内面には、軸方向に重なる前記磁石用貫通孔の周縁部の位置の違いによって形成される凹凸部(43,44,45)と、前記凹凸部が形成されていない部位である非凹凸部(46)と、が設けられ、前記永久磁石は、前記凹凸部の凹部(43a,44a,45a)に入り込む係合部(51,52,53)を有している。
【0008】
上記のロータ及び回転電機によれば、磁石収容孔の凹凸部が永久磁石の係合部に対して軸方向に係合することにより、ロータコアにおける永久磁石より径方向外側の部位である外側コア部の軸方向の振動を抑制可能となる。その結果、ロータコアの変形を抑えることが可能となる。したがって、軸方向の振動に対するロータコアの強度を向上させることが可能となる。また、磁石収容孔の内面には非凹凸部が設けられている。これにより、磁石収容孔の内面全体に凹凸部がある構成に比べ、磁石収容孔と永久磁石との境界が凹凸であることにより発生する軸方向の漏れ磁束を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における埋込磁石型のロータを有する回転電機の構成図。
図2】同形態におけるロータの平面図。
図3図2におけるIII-III線断面図。
図4図2におけるIV-IV線断面図。
図5】(a)(b)は同形態におけるロータに用いるコアシートの平面図。
図6】変更例におけるロータの断面図。
図7】変更例におけるロータの断面図。
図8】変更例におけるロータの断面図。
図9】変更例におけるロータの断面図。
図10】変更例におけるロータの平面図。
図11図10におけるXI-XI線断面図。
図12】変更例におけるロータの平面図。
図13図12におけるXIII-XIII線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ロータ及び回転電機の一実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態の回転電機Mは、埋込磁石型のブラシレスモータにて構成されている。回転電機Mは、略円環状のステータ10と、ステータ10の径方向内側空間にて回転可能に配置される略円柱状のロータ20とを備えている。ステータ10は、ロータ20に対して回転磁界を付与する。
【0011】
ステータ10は、略円環状のステータコア11を備えている。ステータコア11は、磁性金属材料にて構成、例えば複数枚の電磁鋼板を積層して構成されている。ステータコア11は、径方向内側に向かって延び周方向等間隔に配置される本実施形態では12個のティース12を有している。各ティース12は、互いに同一形状をなしている。ティース12は、先端部である径方向内側端部が略T型をなし、先端面12aがロータ20の外周面に倣った円弧状をなしている。12個のティース12には、巻線13がそれぞれ集中巻きにて巻装されている。すなわち、ステータ10の磁極数は「12」である。巻線13は3相結線がなされ、図1ようにそれぞれU相、V相、W相として機能する。そして、巻線13に対して電源供給がなされると、ロータ20を回転駆動するための回転磁界がステータ10にて生じるようになっている。このようなステータ10は、ステータコア11の外周面がハウジング14の内周面に対して固定されている。
【0012】
(ロータコア22)
ロータ20は、回転軸21と、回転軸21が中心部に嵌挿される略円柱状のロータコア22と、ロータコア22の内部に埋め込まれる態様をなす本実施形態では8個の永久磁石23とを備えている。すなわち、ロータ20の磁極数は「8」である。ロータ20は、回転軸21がハウジング14に設けられる図示略の軸受に支持されることで、ステータ10に対して回転可能に配置されている。
【0013】
図2に示すように、ロータコア22は、永久磁石23を収容するための磁石収容孔24を有している。磁石収容孔24は、ロータコア22の周方向等間隔に本実施形態では8個設けられている。各磁石収容孔24は、例えば、軸方向に沿ってロータコア22を貫通している。各磁石収容孔24は、軸方向から見て、径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状をなしている。すなわち、各磁石収容孔24は、例えば、軸方向から見て直線状をなす一対の直線部24aと、一対の直線部24aの径方向内側端部同士を繋ぐ屈曲部24bと、を有している。
【0014】
各磁石収容孔24において、各直線部24aの径方向外側端部24cは、ロータコア22の外周面22aの近くに位置している。屈曲部24bは、回転軸21が嵌挿されるロータコア22の中心部の軸嵌挿孔22bの近くに位置している。屈曲部24bは、ロータコア22の外径の半分の径を有する基準円C1の範囲内に位置している。基準円C1は、ロータ20の軸線Lを中心とする円である。直線部24aの径方向外側端部24cは、基準円C1の範囲外に位置している。磁石収容孔24は、ロータコア22の軸方向全体にわたって設けられている。
【0015】
(永久磁石23)
永久磁石23は、本実施形態では磁石粉体を樹脂と混合した磁石材料を成型固化してなるボンド磁石を用いている。すなわち、永久磁石23は、ロータコア22の磁石収容孔24を成形型とし、固化前の磁石材料が射出成形により磁石収容孔24内に隙間なく充填され、充填後に磁石収容孔24内で固化されて構成されている。したがって、磁石収容孔24の孔形状は、永久磁石23の外形形状となる。本実施形態の永久磁石23に用いられる磁石粉体としては、例えばサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁石が用いられるが、他の希土類磁石等を用いてもよい。
【0016】
図2に示すように、永久磁石23は、磁石収容孔24に対して直接形成されることから、磁石収容孔24と対応した形状、すなわち、軸方向視で径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状をなしている。永久磁石23は、一対の直線部23aと、一対の直線部23aの径方向内側端部同士を繋ぐ屈曲部23bと、を有している。永久磁石23の直線部23aは、磁石収容孔24の直線部24a内に位置している。永久磁石23の屈曲部23bは、磁石収容孔24の屈曲部24b内に位置している。直線部23aの径方向外側端部は、ロータコア22の外周面22aの近くに位置している。なお、永久磁石23は、例えば、ロータ20の軸線Lを通る自身の周方向中心線Lsに対して線対称形状をなす。
【0017】
図1に示すように、永久磁石23のV字の折返し形状の内側であり永久磁石23よりも径方向外側に位置するロータコア22の部位は、ステータ10と対向してリラクタンストルクを得るための外側コア部25として機能する。外側コア部25は、軸方向視でロータ20の中心部方向に1つの頂点を向けた略三角形状をなしている。ロータ20は、永久磁石23及び外側コア部25を含んでなる磁極部26を複数有している。磁極部26の数は永久磁石23の数と同数であり、本実施形態では8個である。つまり、ロータ20の極数は8極である。複数の磁極部26は、互いに同一形状をなしている。本実施形態において、各磁極部26の磁極開角度θmは、機械角で45°である。また、複数の磁極部26は、周方向において等間隔に配置されている。また、ロータ20は、隣接する磁極部26同士の境界である磁極境界線Ldを8つ有している。なお、各磁極境界線Ldは、ロータ20の軸線Lを通る線である。各磁極部26は、図1に一例を示すように、それぞれN極、S極として機能する。このような磁極部26にてマグネットトルク及びリラクタンストルクの両者が得られるロータ20として構成されている。
【0018】
ロータコア22の磁石収容孔24内に略埋込態様にて設けられる永久磁石23は、磁石素材が固化した後に、図示略の着磁装置を用いて本来の磁石として機能させるべくロータコア22の外部から着磁される。この場合、個々の永久磁石23は、自身の厚さ方向に磁化される。永久磁石23は、ロータコア22の周方向に本実施形態では8個設けられており、周方向に交互に異極となるように着磁される。
【0019】
図2に示すように、磁石収容孔24の内面は、永久磁石23に接している。磁石収容孔24の内面は、内側側面41と外側側面42とを含む。内側側面41は、外側コア部25を構成する側面であって、永久磁石23のV字の折返し形状の内側に接する面である。外側側面42は、内側側面41に対して孔幅方向に対向する側面である。なお、磁石収容孔24の孔幅方向とは、軸方向視において磁石収容孔24の延在方向に直交する方向である。磁石収容孔24の延在方向とは、磁石収容孔24を軸方向から見たときの略V字の折返し形状に沿った方向である。内側側面41及び外側側面42の各々は、軸方向視で磁石収容孔24の折返し形状に沿った面である。
【0020】
内側側面41は、第1凹凸部43を有している。外側側面42は、第2凹凸部44を有している。第1凹凸部43は、屈曲部24bにおける内側側面41に設けられている。第2凹凸部44は、屈曲部24bにおける外側側面42に設けられている。また、磁石収容孔24の内面において、直線部24aの径方向外側端部24cに対応する部分には、第3凹凸部45が設けられている。そして、磁石収容孔24の内面は、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が形成されていない部位である非凹凸部46を有している。本実施形態では、磁石収容孔24の延在方向において部分的に第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が形成されるとともに、磁石収容孔24の延在方向のその他の箇所に非凹凸部46が形成されている。
【0021】
ロータコア22は、各直線部24aの径方向外側端部24cより外側に位置するブリッジ部22cを有している。ブリッジ部22cは、各ブリッジ部22cは、外側コア部25と、ロータコア22における外側コア部25以外の部位とを連結している。本実施形態では、ロータコア22を単体で見たとき、外側コア部25は、2つのブリッジ部22cにて支持されている。
【0022】
(コアシート30の構成)
ロータコア22は、電磁鋼板よりなるコアシート30を軸線L方向に複数枚積層して構成されている。個々のコアシート30については、図5(a)に示すような同一構成のものが用いられている。これにより、各コアシート30を同一部品としての管理が可能である。なお、図5(b)に示すコアシート30は、図5(a)に示すコアシート30とは一見異なる形状に見えるが、実際は図5(a)にて示した第1位置に対して磁石収容孔24を1個分、換言すれば1磁極分である45°回転させた第2位置に配置したものである。
【0023】
各コアシート30には、形状が互いに異なる2種類の磁石用貫通孔が混在して形成されている。以下には、当該2種類の磁石用貫通孔の一方を第1磁石用貫通孔31とし、他方を第2磁石用貫通孔32として説明する。第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とは、個々のコアシート30において周方向の45°毎に交互に配置されている。
【0024】
第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32はそれぞれ、径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状をなしている。すなわち、第1磁石用貫通孔31は、一対の直線部31aの径方向内側端部同士を屈曲部31bにて繋いだ形状をなしている。また、第2磁石用貫通孔32は、一対の直線部32aの径方向内側端部同士を屈曲部32bにて繋いだ形状をなしている。
【0025】
ロータコア22を構成すべくコアシート30を積層する過程で、本実施形態ではコアシート30を1枚単位で、図5(a)に示す第1位置に配置したものと、45°回転させた図5(b)に示す第2位置に配置したものとが交互となるように積層される。これにより、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが軸方向において交互に重なる。そして、軸方向に重なる第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とで各磁石収容孔24が構成される。
【0026】
磁石収容孔24の内面において、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45の各々は、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32の周縁部の位置の違いによって形成される。
【0027】
(第1凹凸部43及び第2凹凸部44)
図3に示すように、第1凹凸部43及び第2凹凸部44は、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bと第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bとの径方向の位置の違いにより形成されている。本実施形態では、各屈曲部31bの径方向幅は同等である。そして、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bは、第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bよりも径方向外側に位置する。
【0028】
第1凹凸部43は、軸方向において複数の凹部43aを有している。永久磁石23は、第1凹凸部43の各凹部43aに入り込む係合部51を有している。各係合部51は、各凹部43aに対して軸方向に引っ掛かるようになっている。
【0029】
第2凹凸部44は、軸方向において複数の凹部44aを有している。永久磁石23は、第2凹凸部44の各凹部44aに入り込む係合部52を有している。各係合部52は、各凹部44aに対して軸方向に引っ掛かるようになっている。なお、本実施形態では、第1凹凸部43の凹部43aの深さD1は、外側側面42に設けられた第2凹凸部44の凹部44aの深さD2と同等の深さに設定されている。また、凹部43aの深さD1及び凹部44aの深さD2の各々は、例えば、直線部24aに近づくにつれて徐々に浅くなっている。
【0030】
(第3凹凸部45)
第3凹凸部45は、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32の各々の直線部31a,32aの径方向外側端部における形状の違いによって形成されている。図5(a)に示すように、直線部32aの径方向外側端部には、直線部31aに対して孔幅方向の内側に迫り出す迫出部32cが形成されている。迫出部32cは、直線部32aの径方向外側端部において、V字の折返し形状の内側角部に形成されている。また、迫出部32cは、当該内側角部をテーパ状とすることにより形成されている。
【0031】
図4に示すように、第3凹凸部45は、迫出部32cを有する直線部32aと迫出部を有しない直線部31aとが軸方向に重なることにより形成されている。第3凹凸部45は、軸方向において複数の凹部45aを有している。凹部45aは、迫出部を有しない直線部31aにて構成される。永久磁石23は、第3凹凸部45の各凹部45aに入り込む係合部53を有している。各係合部53は、各凹部45aに対して軸方向に引っ掛かるようになっている。
【0032】
図2に示すように、非凹凸部46は、磁石収容孔24の内面において、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が形成されていない部位である。すなわち、磁石収容孔24を軸方向から見たとき、非凹凸部46では、軸方向に重なる第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32の各々の周縁部の位置が一致している。
【0033】
本実施形態の回転電機Mのロータ20の作用を説明する。
磁石収容孔24に充填されるボンド磁石からなる永久磁石23は、磁石収容孔24の第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45に対していわゆるアンカー効果のように係合する。すなわち、外側コア部25は、第1凹凸部43及び第3凹凸部45によって、永久磁石23のV字形状の内側面に対して軸方向に係合する。また、永久磁石23のV字形状の外側面は、第2凹凸部44によって、ロータコア22における外側コア部25以外の部位に対して軸方向に係合する。これにより、例えば外的要因によってロータ20に軸方向の加振力が加わっても、外側コア部25がブリッジ部22cを支点として軸方向に振動することを抑制できる。
【0034】
さらに、磁石収容孔24の内面には非凹凸部46が設けられている。非凹凸部46では、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45のような凹凸が形成されない。これにより、磁石収容孔24の内面全体に凹凸部がある構成に比べ、磁石収容孔24と永久磁石23との境界が凹凸であることにより発生する軸方向の漏れ磁束を抑制できる。
【0035】
本実施形態の効果について説明する。
(1)磁石収容孔24の内面には、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32の周縁部の位置の違いによって形成される第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が設けられる。そして、永久磁石23は、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45の各々の凹部43a,44a,45aに入り込む係合部51,52,53を有している。この構成によれば、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45がそれぞれ係合部51,52,53に対して軸方向に係合する。これにより、外側コア部25の軸方向の振動を抑制可能となる。その結果、ロータコア22におけるブリッジ部22c及び外側コア部25の変形を抑えることが可能となる。したがって、軸方向の振動に対するロータコア22の強度を向上させることが可能となる。
【0036】
また、磁石収容孔24の内面には、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が形成されていない部位である非凹凸部46が設けられる。これにより、磁石収容孔24の内面全体に凹凸部がある構成に比べ、磁石収容孔24と永久磁石23との境界が凹凸であることにより発生する軸方向の漏れ磁束を抑制できる。
【0037】
(2)磁石収容孔24の内面は、外側コア部25を形成する内側側面41と、内側側面41に対向する外側側面42と、を含む。内側側面41には第1凹凸部43及び第3凹凸部45が設けられる。外側側面42には第2凹凸部44が設けられる。そして、内側側面41及び外側側面42の各々に非凹凸部46が設けられる。この構成によれば、磁石収容孔24の内側側面41及び外側側面42のそれぞれが凹凸を有するため、当該凹凸によって外側コア部25の振動をより効果的に抑制可能となる。また、磁石収容孔24の内側側面41及び外側側面42のそれぞれに非凹凸部46が設けられる。このため、非凹凸部46を設けることによる漏れ磁束の抑制効果をより好適に得ることが可能となる。
【0038】
(3)第1凹凸部43及び第2凹凸部44は、ロータコア22の外径の半分の径を有する基準円C1の範囲内に設けられている。基準円C1が示す範囲は、ロータコア22の径方向内側寄りの範囲、すなわち出力に寄与しにくい範囲である。このため、第1凹凸部43を基準円C1の範囲内に設けることで、第1凹凸部43を設けることによる出力低下を小さく抑えることが可能となる。
【0039】
(4)第1凹凸部43及び第2凹凸部44は、磁石収容孔24の折返し形状の屈曲部24bに設けられている。この構成によれば、外側コア部25においてブリッジ部22cから離れた位置にある径方向内側端部を、第1凹凸部43及び第2凹凸部44によって永久磁石23に軸方向に係合させることが可能となる。したがって、ブリッジ部22cを支点とする外側コア部25の軸方向の振動を第1凹凸部43及び第2凹凸部44によって効果的に抑制可能となる。
【0040】
(5)第3凹凸部45は、磁石収容孔24の径方向外側端部24cに設けられている。この構成によれば、外側コア部25の径方向外側端部付近において振動を抑制可能となる。
【0041】
(6)第3凹凸部45の凸部は、磁石収容孔24の孔幅方向の内側に迫り出す迫出部32cによって構成されている。迫出部32cは、第2磁石用貫通孔32に形成されている。これにより、第2磁石用貫通孔32に対応するブリッジ部22cの周方向長さを短く構成できる。その結果、コアシート30の成形性向上に寄与できる。
【0042】
(7)迫出部32cは、直線部32aの径方向外側端部において、V字の折返し形状の内側角部に形成されている。これにより、永久磁石23の磁束低下を極力抑えつつも、迫出部32cによって第3凹凸部45を構成することが可能である。また、迫出部32cを設けることで永久磁石23の体積を小さくしつつも、磁束低下は極力抑えられることで、永久磁石23の単位体積当たりの出力トルクを向上させることが可能である。
【0043】
(8)複数のコアシート30は、互いに同一構成である。各コアシート30には、形状が互いに異なる第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32が混在して設けられている。そして、1つの磁石収容孔24の構成において第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが混在している。この構成によれば、各コアシート30を同一構成とすることで部品管理を容易にしつつも、軸方向に重なる第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とによって磁石収容孔24に第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45を形成できる。
【0044】
(9)コアシート30は、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが周方向に交互に配置されて構成されている。そして、ロータコア22として積層する際、1つの磁石収容孔24の構成において第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが混在するように1枚毎で第1位置と45°回転させた第2位置との交互としてコアシート30の積層がなされる。このため、コアシート30を1枚数毎に第1位置と該第1位置から磁石収容孔24を1個分回転させた第2位置とのいずれかに配置するといった単純な積層態様にて実現することができる。また、互いに形状が異なる第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とを1つのコアシート30に形成することにより生じうる磁気的アンバランスを極力抑えることが可能となる。
【0045】
(10)第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32の屈曲部31b,32bの径方向の孔幅が同等とされる。なお、屈曲部31b,32bの孔幅は、永久磁石23の厚さに対応する幅である。そして、屈曲部31b,32bの径方向の位置の違いによって第1凹凸部43及び第2凹凸部44が形成されている。この構成によれば、各磁石収容孔24内に形成される永久磁石23の磁気特性が互いに異ならないようにしつつも、磁石収容孔24の内面に第1凹凸部43及び第2凹凸部44を形成することが可能となる。
【0046】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の迫出部32cは、直線部32aの径方向外側端部において、V字の折返し形状の内側角部をテーパ状とすることにより形成されているが、これに限らず、迫り出す形状を矩形状や湾曲状等、適宜変更してもよい。
【0047】
・上記実施形態の迫出部32cは、直線部32aの径方向外側端部におけるV字の折返し形状の内側角部に設けられているが、これに限らず、直線部32aの径方向外側端部におけるV字の折返し形状の外側角部に迫出部32cを設けてもよい。また、迫出部32cを、第2磁石用貫通孔32ではなく、第1磁石用貫通孔31に形成してもよい。
【0048】
・コアシート30を1枚毎で第1位置と45°回転させた第2位置との交互となるように配置したが、複数枚単位で第1及び第2位置の交互に配置してもよい。この場合、同じ枚数単位で交互としてもよく、異なる枚数毎で交互としてもよい。図6には、一例として、コアシート30を2枚毎で第1位置と45°回転させた第2位置との交互となるように積層した構成を示している。このような構成によっても、上記実施形態と略同様の効果を得ることが可能である。
【0049】
・上記実施形態では、コアシート30の周方向に第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とを交互に配置、すなわち第1及び第2磁石用貫通孔31,32のそれぞれを1個おきに配置しているが、これに特に限定されるものではない。例えば、第1及び第2磁石用貫通孔31,32のいずれかを2個おき以上に配置して構成してもよい。
【0050】
・例えば図7に示すように、第1凹凸部43における凹凸の数を第2凹凸部44における凹凸の数よりも少なく構成してもよい。この構成によれば、磁石収容孔24の延在方向における内側側面41の長さ、ひいては内側側面41の表面積を大きく確保しつつも、内側側面41に第1凹凸部43を形成することが可能となる。なお、内側側面41の表面積を大きく確保することで、出力の向上に寄与できる。また、第1凹凸部43と第2凹凸部44とでは、内側側面41に設けられる第1凹凸部43での漏れ磁束の方が出力に影響しやすい。このため、第1凹凸部43における凹凸の数を第2凹凸部44における凹凸の数よりも少なく構成することで、第1凹凸部43での漏れ磁束による出力低下を抑制するのに適した構成となる。
【0051】
・上記実施形態では、第1凹凸部43の凹部43aの深さD1は、第2凹凸部44の凹部44aの深さD2と同等の深さに設定されているが、これに特に限定されるものではない。
【0052】
例えば、図8に示すように、第1凹凸部43の凹部43aの深さD1を、第2凹凸部44の凹部44aの深さD2以下に設定してもよい。この構成によれば、磁石収容孔24の延在方向における内側側面41の長さ、ひいては内側側面41の表面積を大きく確保しつつも、外側側面42の第2凹凸部44によって永久磁石23との軸方向の係合力を好適に得ることが可能となる。また、第1凹凸部43と第2凹凸部44とでは、内側側面41に設けられる第1凹凸部43での漏れ磁束の方が出力に影響しやすい。このため、第1凹凸部43の凹部43aの深さD1を、第2凹凸部44の凹部44aの深さD2以下に設定することで、第1凹凸部43での漏れ磁束による出力低下を抑制するのに適した構成となる。
【0053】
また例えば、図9に示すように、第2凹凸部44の凹部44aの深さD2を、第1凹凸部43の凹部43aの深さD1以下に設定してもよい。外側側面42に設けられる第2凹凸部44は、内側側面41に設けられる第1凹凸部43に比べ、軸方向視での磁石収容孔24の延在方向における長さを長く確保できる。このため、出力低下を抑えるべく凹部44aの深さD2を小さく設定しても、第2凹凸部44と係合部52との係合代を確保しやすい。すなわち、第2凹凸部44の凹部44aの深さD2を、第1凹凸部43の凹部43aの深さD1以下に設定することで、出力低下を抑えつつも、磁石収容孔24の内面と永久磁石23との軸方向の好適な係合力を得ることが可能となる。
【0054】
・上記実施形態では、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32の屈曲部31b,32bの径方向幅を同等としている。そして、屈曲部31b,32bの径方向の位置の違いによって第1凹凸部43及び第2凹凸部44を形成しているが、これに特に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0055】
例えば、図10及び図11に示すように、屈曲部31b,32bの孔幅の違いによって第1凹凸部43及び第2凹凸部44を形成してもよい。同図に示す構成では、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bの孔幅が、第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bの孔幅よりも狭い。なお、各屈曲部31b,32bの径方向の中心位置は同位置に設定されている。このような構成によっても、上記実施形態と略同様の効果を得ることが可能である。なお、屈曲部31b,32bの位置を異ならせる構成と、屈曲部31b,32bの孔幅を異ならせる構成とを組み合わせることも可能である。
【0056】
・上記実施形態や上記変更例のロータコア22において、磁石収容孔24に対応した折返し形状の途中位置において孔幅方向に対向する周縁部間を連結する連結部を設けてもよい。当該連結部を設けたロータの一例を、図12及び図13に示している。なお、図12及び図13では、一例として、図10及び図11に示す構成に連結部を追加した構成を示している。
【0057】
図12に示すように、ロータコア22には、磁石収容孔24に対応した折返し形状の途中位置において孔幅方向に対向する周縁部間を連結する連結部61が設けられている。連結部61は、例えば、磁石収容孔24の屈曲部24bに設けられている。
【0058】
本例では、連結部61は、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32のうち、第1磁石用貫通孔31のみに形成されている。連結部61は、各第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bに形成されている。連結部61は、屈曲部31bの孔幅方向に延びて同方向に対向する周縁部間を互いに連結する。各第1磁石用貫通孔31の連結部61において、連結部61が延びる方向に対して直交する方向の幅は、例えば、互いに同等の幅に設定されている。また、各コアシート30がロータコア22として積層された状態において、1つの磁石収容孔24における各連結部61は、軸方向に沿った一直線上に配置される。
【0059】
本例では、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bの孔幅は、第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bの孔幅よりも小さい。したがって、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bに連結部61を設けることで、第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bに連結部を設けた場合と比較して、連結部61の孔幅方向の長さを短く構成できる。
【0060】
また、本例では、第2磁石用貫通孔32には連結部が形成されない。このため、磁石収容孔24の屈曲部24bにおいて、コアシート30の一枚おきに連結部が無い箇所が存在する。そして、その連結部が無い箇所には、永久磁石23を構成する磁性材料が入り込んでいる。連結部61は、第1凹凸部43と第2凹凸部44との間に設けられている。換言すれば、連結部61は、第1凹凸部43と第2凹凸部44とを連結している。
【0061】
図12及び図13に示すような構成によれば、磁石収容孔24の構成上必然的に備えられる2箇所のブリッジ部22cに加え、屈曲部24bに位置する連結部61も新たに追加された3箇所で外側コア部25が支持される。これにより、外側コア部25の遠心力強度の向上が図られている。また、2つのブリッジ部22c及び連結部61からなる3箇所の支持点が、外側コア部25の周囲においてバランスよく配置される。これにより、外側コア部25の安定支持に貢献している。
【0062】
また、磁石収容孔24の内面に形成された第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45によって、外側コア部25の軸方向の振動が抑制されている。したがって、ロータ20に軸方向の加振力が掛かって外側コア部25が軸方向に振動することにより連結部61が変形することを、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45にて抑制することが可能である。すなわち、本例のような構成では、外側コア部25の遠心力強度と軸方向強度の両方の向上に寄与できる。
【0063】
また、本例では、コアシート30が1枚数毎に第1又は第2位置に配置されている。これにより、第1磁石用貫通孔31の連結部61がコアシート30の1枚おきとなり重ならないため、連結部61での磁束漏れを極力低減することができる。
【0064】
なお、上記のような連結部61を、上記実施形態における第1磁石用貫通孔31に形成してもよい。
また、図12及び図13に示す一例では、第1磁石用貫通孔31に連結部61を形成したが、第2磁石用貫通孔32に連結部61を形成してもよい。また、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32の両方に連結部61を形成してもよい。この場合、磁石収容孔24の軸方向全体にわたって連続して連結部61が構成される。つまり、軸方向視でV字状をなす永久磁石23が連結部61にて分割される構成となる。この場合、永久磁石23は、連結部61にて分割された一方の部位と他方の部位とによって全体としてV字形状、すなわち、径方向内側に凸の折返し形状をなす。
【0065】
また、図12及び図13に示す一例では、第1磁石用貫通孔31の連結部61を1個としたが、2個以上設けてもよい。この場合、外側コア部25の支持箇所は、磁石収容孔24の構成上必然的に備えられる2箇所のブリッジ部22cに加わり、合計4箇所以上となる。
【0066】
また、上記の一例では、連結部61を磁石収容孔24における屈曲部24bに設けたが、屈曲部24b以外の例えば直線部24a等に連結部61を設けてもよい。
また、上記の一例では、連結部61が延びる方向を、磁石収容孔24の屈曲部24bの孔幅方向であって、ロータ20の径方向としたが、これ以外に例えば、孔幅方向に対して斜めの方向や径方向以外に延びる方向とする等、適宜変更してもよい。
【0067】
・上記実施形態では、1枚のコアシート30において、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とを同数としたが、これに特に限定されるものではない。すなわち、1枚のコアシート30において、第1磁石用貫通孔31の数を、第2磁石用貫通孔32の数よりも多くまたは少なくしてもよい。なお、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32の数によらず、各第1磁石用貫通孔31及び各第2磁石用貫通孔32の形状を、軸線Lを中心とする点対称となるように構成することで、周方向における磁気アンバランスを抑制することが可能となる。
【0068】
例えば、上記実施形態において、第1磁石用貫通孔31を2つ、第2磁石用貫通孔32を4つに変更した場合、2つの第1磁石用貫通孔31を180°対向位置に配置することで、周方向における磁気アンバランスを抑制することが可能となる。なお、図10図13に示す例では、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bの孔幅が第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bの孔幅よりも狭い。つまり、永久磁石23の屈曲部23bの厚さは、第2磁石用貫通孔32に比べて第1磁石用貫通孔31で薄くなる。このため、第1磁石用貫通孔31の数を第2磁石用貫通孔32の数よりも少なく構成することで、出力トルクの低下を小さく抑えることが可能となる。また、上記実施形態の例では、コアシート30を積層する過程で、各コアシート30を1磁極分である45°毎回転させるが、この積層の際の回転角度は、1磁極分である45°に限定されず、磁極2つ分、または3つ分等、45°以外の角度であってもよい。
【0069】
・磁石収容孔24の内面における凹凸部の形成位置は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、軸方向視における直線部24aの中間部において、磁石収容孔24の内面に凹凸部を形成してもよい。また、上記実施形態の磁石収容孔24において、例えば、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45のいずれか1つを省略してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、磁石収容孔24の延在方向において部分的に第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が形成されるとともに、磁石収容孔24の延在方向のその他の箇所に非凹凸部46が形成されているが、これに特に限定されるものではない。例えば、磁石収容孔24の内面に対し、軸方向の一部に凹凸部を形成するとともに、軸方向における当該凹凸部以外の箇所に非凹凸部を形成してもよい。
【0071】
・上記実施形態のコアシート30には、形状が互いに異なる2種類の磁石用貫通孔、すなわち第1及び第2磁石用貫通孔31,32が混在して形成されたが、これに特に限定されるものではない。例えば、ロータコア22を構成するコアシートとして、磁石用貫通孔の形状が互いに異なる第1のコアシートと第2のコアシートを用意する。第1のコアシートには、磁石用貫通孔として第1磁石用貫通孔31のみが周方向に複数形成される。第2のコアシートには、磁石用貫通孔として第2磁石用貫通孔32のみが周方向に複数形成される。そして、第1のコアシートと第2のコアシートとを、1枚または複数枚ずつ交互に積層することで、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが軸方向に混在する磁石収容孔24を構成してもよい。
【0072】
・ロータ20の磁極数、すなわち永久磁石23及び磁石収容孔24の個数を適宜変更してもよい。また、ステータ10の磁極数を適宜変更してもよい。
・上記以外、回転電機Mの構成を適宜変更してもよい。
【0073】
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
M 回転電機、10 ステータ、20 ロータ、22 ロータコア、23 永久磁石、23b 屈曲部、24 磁石収容孔、24b 屈曲部、24c 径方向外側端部、25 外側コア部、30 コアシート、31 第1磁石用貫通孔(磁石用貫通孔)、31b 屈曲部、32 第2磁石用貫通孔(磁石用貫通孔)、32b 屈曲部、41 内側側面、42 外側側面、43 第1凹凸部(凹凸部)、43a 凹部、44 第2凹凸部(凹凸部)、44a 凹部、45 第3凹凸部(凹凸部)、45a 凹部、46 非凹凸部、51~53 係合部、61 連結部、D1,D2 深さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13