(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】OTAマスタ、システム、方法、プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
G06F 8/65 20180101AFI20241106BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G06F8/65
B60R16/02 660U
(21)【出願番号】P 2021095022
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智康
(72)【発明者】
【氏名】谷森 俊介
【審査官】北川 純次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/032195(WO,A1)
【文献】特開2015-205555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電子制御ユニットのソフトウェア更新を制御するOTAマスタであって、
1つの格納領域を有する第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージと、2つの格納領域を有する第2種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージとを、個別にセンタから受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記更新データを、更新対象となる複数の前記電子制御ユニットに対して並行して転送する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記更新対象となる複数の前記電子制御ユニットにおいて前記更新データに基づいた更新ソフトウェアのインストールが全て完了した後、前記第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートを全て完了させてから前記第
2種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートを完了させる、OTAマスタ。
【請求項2】
前記通信部は、前記電子制御ユニットが搭載した不揮発性メモリが前記第1種別か前記第2種別かを示す種別情報を前記センタから取得する、請求項1に記載のOTAマスタ。
【請求項3】
前記種別情報を記憶する記憶部をさらに備える、請求項2に記載のOTAマスタ。
【請求項4】
前記制御部は、前記種別情報に基づいて、前記通信部が受信した前記更新データを更新対象となる前記電子制御ユニットに転送する、請求項2又は3に記載のOTAマスタ。
【請求項5】
車両に搭載された電子制御ユニットのソフトウェア更新を制御するOTAマスタと、前記OTAマスタと通信可能なセンタと、を備えるシステムであって、
前記センタは、1つの格納領域を有する第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージと、2つの格納領域を有する第2種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージとを、個別に前記OTAマスタに送信する第1通信部を備え、
前記OTAマスタは、
前記センタが送信した前記配信パッケージを受信する第2通信部と、
前記電子制御ユニットが搭載した不揮発性メモリが前記第1種別か前記第2種別かを示す種別情報に基づいて、前記第2通信部が受信した前記更新データを、更新対象となる複数の前記電子制御ユニットに対して並行して転送する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記更新対象となる複数の前記電子制御ユニットにおいて前記更新データに基づいた更新ソフトウェアのインストールが全て完了した後、前記第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートを全て完了させてから前記第
2種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートを完了させる、システム。
【請求項6】
前記センタ及び前記OTAマスタの少なくとも一方が、前記種別情報を記憶する記憶部をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
プロセッサと、メモリとを備え、車両に搭載された電子制御ユニットのソフトウェア更新を制御するOTAマスタが実行する方法であって、
1つの格納領域を有する第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージと、2つの格納領域を有する第2種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージとを、個別にセンタから受信するステップと、
前記受信した前記更新データを、更新対象となる複数の前記電子制御ユニットに対して並行して転送するステップと、
前記更新対象となる複数の前記電子制御ユニットにおいて前記更新データに基づいた更新ソフトウェアのインストールが全て完了した後、前記第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートを完了するステップと、
前記第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートが全て完了した後、前記第
2種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートを完了するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
プロセッサと、メモリとを備え、車両に搭載された電子制御ユニットのソフトウェア更新を制御するOTAマスタのコンピューターが実行するプログラムであって、
1つの格納領域を有する第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージと、2つの格納領域を有する第2種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージとを、個別にセンタから受信するステップと、
前記受信した前記更新データを、更新対象となる複数の前記電子制御ユニットに対して並行して転送するステップと、
前記更新対象となる複数の前記電子制御ユニットにおいて前記更新データに基づいた更新ソフトウェアのインストールが全て完了した後、前記第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートを完了するステップと、
前記第1種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートが全て完了した後、前記第
2種別の不揮発性メモリを搭載した前記電子制御ユニットの前記更新ソフトウェアのアクティベートを完了するステップと、を前記コンピューターに実行させるための、プログラム。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のOTAマスタを搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御ユニットのソフトウェアの更新を制御するOTAマスタなどに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両の動作を制御するための複数の電子制御ユニットが搭載されている。電子制御ユニットは、プロセッサと、RAMのような一時的な記憶部と、フラッシュROMのような不揮発性の記憶部である不揮発性メモリとを備え、プロセッサが不揮発性メモリに記憶されるソフトウェアを実行することにより電子制御ユニットの制御機能を実現する。各電子制御ユニットが記憶するソフトウェアは書き換え可能であり、より新しいバージョンのソフトウェアに更新することにより、各電子制御ユニットの機能を改善したり、新たな車両制御機能を追加したりすることができる。
【0003】
電子制御ユニットのソフトウェアを更新する技術として、車載ネットワークに接続された車載通信機器とインターネットなどの通信ネットワークとを無線で接続し、車両のソフトウェアの更新処理を担う装置が、無線通信を介してサーバーからソフトウェアをダウンロードし、ダウンロードしたソフトウェアを電子制御ユニットにインストールすることにより、電子制御ユニットのソフトウェア更新や追加を行うOTA(Over The Air)技術が知られている。例えば、特許文献1を参照。
【0004】
電子制御ユニットに搭載される不揮発性メモリの種別として、ソフトウェアなどのデータを格納するための1つの格納領域を有するメモリ(シングルバンクメモリ)と、ソフトウェアなどのデータを格納するための2つの格納領域を有するメモリ(デュアルバンクメモリ)とがあり、電子制御ユニットの仕様などに応じて使い分けられる場合がある。デュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットは、2つの格納領域に新旧2つのバージョンのデータをそれぞれ格納することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両に対してソフトウェア更新を行うイベントであるキャンペーンにおいて、シングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットとデュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットとの両方が、ソフトウェアを更新する対象である電子制御ユニットとなる場合がある。このシングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットと、デュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットとでは、メモリの構造上、更新を失敗したときのリカバリー方法が異なる。
【0007】
このため、シングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットとデュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットとが更新対象となる電子制御ユニットとして混在するキャンペーンを車両に適用する場合には、更新対象となる電子制御ユニットのメモリ構造に応じてダウンロード及びインストールを実行しないと、ソフトウェア更新後の電子制御ユニットを正常に起動させるまでに時間が掛かるおそれがある。
【0008】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、シングルバンクメモリ及びデュアルバンクメモリに適応したソフトウェア更新を実行することができるOTAマスタなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載された電子制御ユニットのソフトウェア更新を制御するOTAマスタであって、1つの格納領域を有する第1種別の不揮発性メモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージと、2つの格納領域を有する第2種別の不揮発性メモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージとを、個別にセンタから受信する通信部と、通信部が受信した更新データを、更新対象となる複数の電子制御ユニットに対して並行して転送する制御部と、を備える、OTAマスタである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、シングルバンクメモリ及びデュアルバンクメモリに適応したソフトウェア更新(ダウンロード、インストール)を実行することができるOTAマスタなどを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るネットワークシステムの全体構成を示すブロック図
【
図6A】電子制御ユニットの概略構成の一例を示すブロック図
【
図6B】電子制御ユニットの概略構成の一例を示すブロック図
【
図8】センタ及びOTAマスタが行うダウンロード処理手順のフローチャート例
【
図9】OTAマスタ及びターゲット電子制御ユニットが行うインストール処理手順のフローチャート例
【
図10】OTAマスタ及びターゲット電子制御ユニットが行うアクティベート処理手順のフローチャート例
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のネットワークシステムでは、OTAマスタが、シングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データと、デュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データとを、別個の配信パッケージでセンタから受信し、シングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットの更新データのインストールと、デュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットの更新データのインストールとを、並行して行う。これにより、シングルバンクメモリ及びデュアルバンクメモリに適応したソフトウェア更新を実行することができる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るネットワークシステムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すネットワークシステムは、車両に搭載された複数の電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアを更新するためのシステムであり、車両の外にあるセンタ10と、車両内に構築される車載ネットワーク20と、を備える。
【0014】
(1)センタ
センタ10は、ネットワーク70を介して、車載ネットワーク20が備える後述するOTAマスタ30と通信可能である。センタ10は、OTAマスタ30との間で、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データの送信や、ソフトウェア更新処理の進捗状況を示す通知の受信などを行って、OTAマスタ30に接続された複数の電子制御ユニット40a~40dのソフトウェア更新を制御及び管理することができる。このセンタ10は、いわゆるサーバーとしての機能を有する。
【0015】
図2は、
図1におけるセンタ10の概略構成を示すブロック図である。
図2で例示するように、センタ10は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、記憶装置13と、通信装置14と、を備える。記憶装置13は、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などの読み書き可能な記憶媒体を備えた装置であり、ソフトウェアの更新管理を実行するためのプログラム、ソフトウェアの更新制御及び更新管理に用いる情報、及び各電子制御ユニットのソフトウェアの更新データなどを記憶する。センタ10において、CPU11は、記憶装置13から読み出したプログラムを、RAM12を作業領域として用いて実行することにより、ソフトウェア更新に関する所定の処理を実行する。通信装置14は、
図1に示したネットワーク70を介して、OTAマスタ30と通信を行うための装置である。
【0016】
図3は、
図2に示したセンタ10の機能ブロック図である。
図3で例示するセンタ10は、記憶部16と、通信部17と、制御部18と、を備える。記憶部16は、
図2に示した記憶装置13によって実現される。通信部17及び制御部18は、
図2に示したCPU11がRAM12を用いて記憶装置13に記憶されるプログラムを実行することによって実現される。
【0017】
記憶部16は、車両に搭載された1つ以上の電子制御ユニットのソフトウェア更新処理に関する情報を記憶する。ソフトウェア更新処理に関する情報として、記憶部16は、車両を識別する車両識別情報(車両ID)ごとに、電子制御ユニット40a~40dで利用可能なソフトウェアを示す情報を関連付けた更新管理情報と、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データとを、少なくとも記憶する。電子制御ユニット40a~40dで利用可能なソフトウェアを示す情報としては、例えば、複数の電子制御ユニット40a~40dの各ソフトウェアの最新のバージョン情報の組み合わせが定義される。また、ソフトウェア更新処理に関する情報として、記憶部16は、車両で実施されているソフトウェアの更新状態を示す更新ステータスを記憶することができる。さらに、記憶部16は、複数の電子制御ユニット40a~40dのそれぞれに搭載される不揮発性メモリの種別に関する情報(後述する)を記憶することができる。
【0018】
通信部17は、OTAマスタ30との間で、データ、情報、及び要求などの送信及び受信を行う送信部及び受信部として機能する。通信部17は、OTAマスタ30からソフトウェアの更新確認要求を受信する(受信部)。更新確認要求は、例えば、車両において電源又はイグニッションがオンされた(以下「電源ON」という)時に、OTAマスタ30からセンタ10へと送信される情報であって、後述する車両構成情報に基づいて電子制御ユニット40a~40dの更新データがあるか否かの確認をセンタ10に要求するための情報である。また、通信部17は、OTAマスタ30から受信した更新確認要求に応答して、更新データの有無を示す情報をOTAマスタ30に送信する(送信部)。また、通信部17は、OTAマスタ30からの配信パッケージの送信要求(ダウンロード要求)を受信する(受信部)。また、通信部17は、配信パッケージのダウンロード要求を受信すると、後述する制御部18で生成される電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データの配信パッケージを、OTAマスタ30に送信する(送信部)。
【0019】
制御部18は、通信部17がOTAマスタ30から更新確認要求を受信すると、記憶部16に記憶されている更新管理情報に基づいて、更新確認要求に含まれる車両IDで特定される車両に搭載された電子制御ユニット40a~40dについてソフトウェアの更新データがあるか否かを判定する。制御部18による更新データがあるか否かの判定結果は、通信部17によってOTAマスタ30に送信される。制御部18は、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データがあると判定した場合、OTAマスタ30から配信パッケージのダウンロード要求を受信すると、記憶部16に記憶されている該当の更新データの配信パッケージを生成する。
【0020】
この制御部18は、後述するシングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データだけの配信パッケージと、後述するデュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データだけの配信パッケージとを、個別に生成する。後述する種別情報が記憶部16に予め格納されていれば、制御部18は、種別の異なる更新データの配信パッケージを意図的に個別に生成することが可能である。このような種別に基づいて更新データの配信パッケージを分けて生成することによって、第1種別の不揮発性メモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージと、第2種別の不揮発性メモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データの配信パッケージとを、センタ10(の通信部17)からOTAマスタ30に向けて個別に送信することができる。
【0021】
(2)車載ネットワーク
車載ネットワーク20は、OTAマスタ30と、複数の電子制御ユニット40a~40dと、通信モジュール50と、を備える。OTAマスタ30と通信モジュール50とは、バス60aを介して接続されている。OTAマスタ30と電子制御ユニット40a及び40bとは、バス60bを介して接続されている。OTAマスタ30と電子制御ユニット40c及び40dとは、バス60cを介して接続されている。
【0022】
OTAマスタ30は、バス60a及び通信モジュール50を介してネットワーク70経由でセンタ10と無線による通信が可能である。このOTAマスタ30は、OTA状態を管理し、ソフトウェア更新処理の流れである更新シーケンスを制御して更新対象となる電子制御ユニット(以下「ターゲット電子制御ユニット」という)のソフトウェア更新を実施する機能を有する装置である。OTAマスタ30は、センタ10から取得した更新データなどに基づいて、電子制御ユニット40a~40dのうちターゲット電子制御ユニットのソフトウェア更新を制御する。OTAマスタ30は、セントラルゲートウェイ(CGW)と称される場合もある。
【0023】
図4は、
図1におけるOTAマスタ30の概略構成を示すブロック図である。
図4で例示するように、OTAマスタ30は、CPU31と、RAM32と、ROM(Read-Only Memory)33と、記憶装置34と、通信装置36と、を備える。CPU31、RAM32、ROM33、及び記憶装置34は、マイクロコンピューター35を構成する。OTAマスタ30において、CPU31は、ROM33から読み出したプログラムを、RAM32を作業領域として用いて実行することにより、ソフトウェア更新に関する所定の処理を実行する。通信装置36は、
図1に示したバス60a~60cを介して、通信モジュール50及び電子制御ユニット40a~40dのそれぞれと通信を行うための装置である。
【0024】
図5は、
図4に示したOTAマスタ30の機能ブロック図である。
図5で例示するOTAマスタ30は、記憶部37と、通信部38と、制御部39と、を備える。記憶部37は、
図4に示した記憶装置34によって実現される。通信部38及び制御部39は、
図4に示したCPU31がRAM32を用いてROM33に記憶されるプログラムを実行することによって実現される。
【0025】
記憶部37は、複数の電子制御ユニット40a~40dのソフトウェア更新を実行するためのプログラム(OTAマスタ30の制御用プログラム)や、ソフトウェア更新を実行する際に用いる各種データの他、センタ10からダウンロードしたソフトウェアの更新データなどを記憶する。また、記憶部37は、複数の電子制御ユニット40a~40dのそれぞれに搭載される不揮発性メモリの種別に関する情報(後述する)を記憶することができる。
【0026】
通信部38は、センタ10との間で、データ、情報、及び要求などの送信及び受信を行う送信部及び受信部として機能する。通信部38は、例えば、車両の電源ONを契機として、ソフトウェアの更新確認要求をセンタ10に送信する(送信部)。更新確認要求は、例えば、車両を識別するための車両IDと、車載ネットワーク20に接続される電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの現バージョンに関する情報とを含む。車両ID及び電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの現バージョンは、センタ10が車両IDごとに保持するソフトウェアの最新バージョンとの比較により、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データがあるか否かを判定するために用いられる。また、通信部38は、更新確認要求に対する応答としてセンタ10から更新データの有無を示す通知を受信する(受信部)。電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データがある場合、通信部38は、ソフトウェアの更新データの配信パッケージのダウンロード要求をセンタ10に送信し(送信部)、センタ10から送信される配信パッケージを受信(ダウンロード)する(受信部)。また、通信部38は、電子制御ユニット40a~40dが送信するソフトウェアの更新状態を、センタ10に送信する(送信部)。
【0027】
制御部39は、通信部38が受信した更新確認要求に対するセンタ10からの応答に基づいて、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データがあるか否かを判定する。また、制御部39は、通信部38がセンタ10から受信(ダウンロード)して記憶部37に格納した配信パッケージの真正性を検証する。また、制御部39は、センタ10から受信(ダウンロード)した更新データを用い、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェア更新処理(各種の検証、インストール、アクティベートなど)を制御する。具体的には、制御部39は、配信パッケージでダウンロードした1つ以上の更新データをターゲット電子制御ユニットに転送し、ターゲット電子制御ユニットに更新データに基づく更新ソフトウェアをインストールさせる。インストールの完了後、制御部39は、ターゲット電子制御ユニットに対して、インストールした更新ソフトウェアを有効化させるアクティベートを指示する。このソフトウェア更新処理の際、制御部39は、複数の電子制御ユニット40a~40dにおける各種の検証、インストール、アクティベートなどの手順を好適に制御する。
【0028】
複数の電子制御ユニット40a~40dは、車両の各部の動作を制御するための装置(ECU:Electronic Control Unit)である。
図1においては、車載ネットワーク20が4つの電子制御ユニット40a~40dを備えている例を示したが、電子制御ユニットの数は特に限定されない。例えば、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新処理時に更新データがあることの表示、車両のユーザーや管理者にソフトウェア更新に対する承諾を求めるための承諾要求画面の表示、及びソフトウェア更新の結果の表示など、各種の表示を行うための表示装置(HMI)が、OTAマスタ30に接続されていてもよい。表示装置としては、カーナビゲーションシステムなどを用いることが可能である。また、電子制御ユニットをOTAマスタ30に接続するバスの数も特に限定されない。例えば、上述の表示装置が、バス60a~60c以外のバスでOTAマスタ30に接続されてもよい。
【0029】
電子制御ユニット40a~40dの概略構成の一例を、
図6A及び
図6Bに示す。
【0030】
図6Aに示す電子制御ユニット40aは、CPU41と、RAM42と、不揮発性メモリ43aと、通信装置44と、を備える。CPU41は、不揮発性メモリ43aから読み出したプログラムを、RAM42を作業領域として用いて実行することにより、電子制御ユニット40aの機能を実現する。不揮発性メモリ43aは、ソフトウェアなどのデータを格納するための1つの格納領域45を有するメモリ(以下「シングルバンクメモリ」という)である。以下、この1つの格納領域45を有する構成の不揮発性メモリ43aのメモリ種別を「第1種別」という。格納領域45には、電子制御ユニット40aの機能を実現するためのソフトウェアの他に、バージョン情報やパラメータデータ、起動用のブートプログラム、ソフトウェア更新用のプログラムなどが格納される場合がある。通信装置44は、OTAマスタ30や車載ネットワーク20に接続される他の電子制御ユニット40b~40dとの通信を行うための装置である。
【0031】
図6Bに示す電子制御ユニット40bは、電子制御ユニット40aと同様に、CPU41と、RAM42と、不揮発性メモリ43bと、通信装置44と、を備える。ただし、電子制御ユニット40bに搭載される不揮発性メモリ43bは、ソフトウェアなどのデータを格納するための2つの格納領域46a及び46bを有するメモリ(以下「デュアルバンクメモリ」という)である。以下、この2つの格納領域46a及び46bを有する構成の不揮発性メモリ43bの種別を「第2種別」という。格納領域46a及び46bには、電子制御ユニット40bの機能を実現するためのソフトウェアの他に、バージョン情報やパラメータデータ、起動用のブートプログラム、ソフトウェア更新用のプログラムなどが格納される場合がある。電子制御ユニット40bのCPU41は、不揮発性メモリ43bが有する2つの格納領域46a及び46bのうち、いずれか一方を読み出し対象の格納領域(運用面)とし、この読み出し対象の格納領域に格納されるソフトウェアを実行する。読み出し対象ではない他方の格納領域(非運用面)には、読み出し対象の格納領域(運用面)のプログラムを実行中に、バックグラウンドで更新データに基づく更新ソフトウェア(更新版のプログラム)のインストール(書き込み)が可能である。ソフトウェア更新処理におけるアクティベート(更新ソフトウェアの有効化)時には、電子制御ユニット40bのCPU41によってプログラムの読み出し対象の格納領域を切り替えることによって、更新ソフトウェアをアクティベートすることができる。
【0032】
具体例として、デュアルバンクメモリである不揮発性メモリ43bの格納領域46aに現行のソフトウェアが格納されており、格納領域46bに更新ソフトウェアがインストールされた場合を想定する。OTAマスタ30から更新ソフトウェアのアクティベートが指示されると、例えば電子制御ユニット40bは、CPU41の読み出し開始アドレスを、格納領域46aの先頭アドレスから格納領域46bの先頭アドレスに切り替えることによって、このCPU41の読み出し対象(運用面)の格納領域を切り替え、格納領域46bにインストールされた更新ソフトウェアを実行することができる。なお、本開示においては、1つの格納領域を擬似的に2面に区画し、一方の面に格納されたプログラムを実行中に他方の面にプログラムの書き込みを可能にした「1面サスペンドメモリ」と呼ばれる構成も、第2種別のメモリに分類されるものとする。
【0033】
図7に、複数の電子制御ユニット40a~40dのそれぞれに搭載される不揮発性メモリの種別に関する情報である種別情報の一例を示す。
図7に例示した種別情報では、電子制御ユニットを識別するための番号であるECU_IDと、その電子制御ユニットに搭載される不揮発性メモリの種別(第1種別(シングルバンク)/第2種別(デュアルバンク))とが、対応付けられている。この種別情報は、OTAマスタ30の記憶部37及びセンタ10の記憶部16の一方又は両方に記憶されて管理される。種別情報は、車載ネットワーク20を構成する電子制御ユニット40a~40dの仕様に基づいて予め作成され、車両の製造時などにOTAマスタ30の記憶部37に格納されてもよいし、ソフトウェアの更新処理時にターゲット電子制御ユニットから車載ネットワーク20内の通信によってOTAマスタ30が取得してもよい。また、種別情報がセンタ10で管理されている場合には、OTAマスタ30がネットワーク70を介してセンタ10から種別情報を取得してもよい。
【0034】
通信モジュール50は、センタ10と車両との通信を制御する機能を持ったユニットであり、車載ネットワーク20をセンタ10に接続するための通信機器である。通信モジュール50は、ネットワーク70経由でセンタ10と無線で接続され、OTAマスタ30による車両の認証や更新データのダウンロードなどが行われる。この通信モジュール50は、OTAマスタ30に含まれて構成されてもよい。
【0035】
[ソフトウェア更新処理の概要]
OTAマスタ30は、例えば、車両の電源ONを契機として、ソフトウェアの更新確認要求をセンタ10に送信する。更新確認要求は、車両を識別するための車両IDと、車載ネットワーク20に接続される電子制御ユニット40a~40dのハードウェア及びソフトウェアの現バージョンなどの電子制御ユニットの状態(システム構成)に関する情報である車両構成情報と、を含む。車両構成情報は、車載ネットワーク20に接続される電子制御ユニット40a~40dから電子制御ユニットの識別番号(ECU_ID)と、電子制御ユニットのソフトウェアバージョンの識別番号(ECU_Software_ID)とを、取得することで作成可能である。車両ID及び電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの現バージョンは、センタ10が車両IDごとに保持するソフトウェアの最新バージョンとの比較により、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データがあるか否かを判定するために用いられる。センタ10は、OTAマスタ30から受信した更新確認要求に対する応答として、更新データの有無を示す通知をOTAマスタ30に送信する。電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データがある場合、OTAマスタ30は、配信パッケージのダウンロード要求をセンタ10に送信する。センタ10は、OTAマスタ30から受信したダウンロード要求に応じて、更新データの配信パッケージをOTAマスタ30に送信する。配信パッケージは、更新データの他に、更新データの真正性を検証するための検証用データや、更新データの数、種別情報、ソフトウェア更新時に用いる各種の制御情報などを含んでいてもよい。
【0036】
OTAマスタ30は、センタ10から受信した更新確認要求に対する応答に基づいて、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データがあるか否かを判定する。また、OTAマスタ30は、センタ10から受信して記憶装置13に格納した配信パッケージの真正性を検証する。また、OTAマスタ30は、配信パッケージでダウンロードした1つ以上の更新データをターゲット電子制御ユニットに転送し、ターゲット電子制御ユニットに更新データをインストールさせる。インストールの完了後、OTAマスタ30は、ターゲット電子制御ユニットに対して、インストールさせた更新版のソフトウェアを有効とするアクティベートを行うように指示をする。
【0037】
また、OTAマスタ30は、承諾要求処理において、ソフトウェア更新に対して承諾が必要である旨の通知やソフトウェア更新を承諾した旨の入力を促す通知を、出力装置に出力させる。出力装置としては、車載ネットワーク20に設けられた表示による通知を行う表示装置(図示せず)や音声による通知を行う音声出力装置(図示せず)などを利用できる。例えば、承諾要求処理において、表示装置を出力装置として用いる場合、OTAマスタ30は、ユーザー又は管理者にソフトウェア更新の承諾を求めるための承諾要求画面を表示装置に表示させたり、ユーザー又は管理者が承諾する場合には承諾ボタンを押下するなどの特定の入力操作を促す通知を表示装置に表示させたり、することができる。また、OTAマスタ30は、承諾要求処理において、電子制御ユニット40a~40dのソフトウェアの更新データがあることを通知する文言やアイコンなどを表示装置に表示させたり、ソフトウェア更新処理の実行中における制限事項などを表示装置に表示させたり、することができる。OTAマスタ30は、ユーザー又は管理者から承諾した旨の入力を受け付けると、上述したインストール及びアクティベートの制御処理を実行し、ターゲット電子制御ユニットのソフトウェアを更新する。
【0038】
ここで、ターゲット電子制御ユニットの不揮発性メモリが、シングルバンクメモリである場合は、原則的にインストールとアクティベートとがひと続きに行われるため、インストールの実行前に、ソフトウェア更新に対する承諾要求処理が行われる。なお、シングルバンクメモリのターゲット電子制御ユニットであっても、インストール完了の状態で更新処理を一時的に停止、つまりアクティベートを待機(保留)することが要求されることもあり得る。また、ターゲット電子制御ユニットの不揮発性メモリが、デュアルバンクメモリである場合は、少なくとも、インストールの実行後かつアクティベートの実行前に、ソフトウェア更新に対する承諾要求処理が行われる。なお、ターゲット電子制御ユニットの不揮発性メモリがデュアルバンクメモリである場合には、インストール実行前のソフトウェアの更新に対する承諾要求処理は、行われてもよいし省略されてもよい。
【0039】
ソフトウェア更新処理は、OTAマスタ30がセンタ10から更新データをダウンロードする(受信する)フェーズ(ダウンロードフェーズ)、ダウンロードした更新データをOTAマスタ30がターゲット電子制御ユニットに転送し、ターゲット電子制御ユニットの格納領域に更新データに基づく更新ソフトウェアをインストールする(書き込む)フェーズ(インストールフェーズ)、及びターゲット電子制御ユニットがインストールした更新ソフトウェアをアクティベートする(有効化する)フェーズ(アクティベートフェーズ)からなる。
【0040】
ダウンロードは、OTAマスタ30が、センタ10から配信パッケージによって送信された電子制御ユニットのソフトウェアを更新するための更新データを、受信して記憶部37に記憶する処理である。ダウンロードにおいては、デュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データの受信と、シングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットに向けた更新データの受信とが、個別に行われる。ダウンロードフェーズでは、ダウンロードの実行だけでなく、ダウンロードの実行可否判断、更新データの検証など、ダウンロードに関する一連の処理の制御を含む。
【0041】
センタ10からOTAマスタ30に送信される更新データは、電子制御ユニットの更新ソフトウェア(全データ又は差分データ)、更新ソフトウェアを圧縮した圧縮データ、更新ソフトウェア又は圧縮データを分割した分割データのいずれを含んでいてもよい。また、更新データは、ターゲット電子制御ユニットのECU_ID(又はシリアル番号)と、更新前のターゲット電子制御ユニットのECU_Software_IDとを、含んでいてもよい。更新データは、上述した配信パッケージとしてダウンロードされるが、配信パッケージには、単一の電子制御ユニットの更新データ、又はメモリ種別が同じである複数の電子制御ユニットに向けた複数の更新データが含まれる。
【0042】
インストールは、OTAマスタ30が、センタ10からダウンロードした更新データに基づいて、複数のターゲット電子制御ユニットの不揮発性メモリ43a及び/又は43bに更新ソフトウェア(更新版のプログラム)を定められた順序で書き込む処理である。インストールは、シングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットの更新データと、デュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットの更新データとが、並行して行われる。インストールフェーズでは、インストールの実行だけでなく、インストールの実行可否判断、更新データの転送及び更新ソフトウェアの検証など、インストールに関する一連の処理の制御を含む。
【0043】
更新データが更新ソフトウェアそのもの(全データ)を含む場合は、インストールフェーズにおいて、OTAマスタ30が更新データ(更新ソフトウェア)をターゲット電子制御ユニットに転送する。また、更新データが更新ソフトウェアの圧縮データ、又は差分データ、あるいは分割データを含む場合は、OTAマスタ30がターゲット電子制御ユニットに更新データを転送し、ターゲット電子制御ユニットが更新データから更新ソフトウェアを生成してもよいし、OTAマスタ30が更新データから更新ソフトウェアを生成してから、更新ソフトウェアをターゲット電子制御ユニットに転送してもよい。ここで、更新ソフトウェアの生成は、圧縮データの解凍や、差分データ又は分割データの組み付け(統合)により行うことができる。
【0044】
更新ソフトウェアのインストールは、OTAマスタ30からのインストール要求に基づいて、ターゲット電子制御ユニットが行うことができる。なお、更新データを受信した特定のターゲット電子制御ユニットについては、OTAマスタ30からの明示の指示を受けることなく、自律的にインストールを行ってもよい。
【0045】
アクティベートは、ターゲット電子制御ユニットが、不揮発性メモリ43a及び/又は43bにインストールした更新ソフトウェアを有効化(アクティベート)する処理である。アクティベートは、シングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットの更新データ、及びデュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットの更新データのいずれか一方を優先して行ってもよいし、相互に優劣なく行ってもよい。アクティベートフェーズでは、アクティベートの実行だけでなく、アクティベートの実行可否判断、アクティベートに対する車両のユーザー又は管理者への承諾要求、実行結果の検証など、アクティベートに関する一連の制御を含む。
【0046】
更新ソフトウェアのアクティベートは、OTAマスタ30からのアクティベート要求に基づいて、ターゲット電子制御ユニットが行うことができる。なお、更新データを受信した特定のターゲット電子制御ユニットについては、OTAマスタ30からの明示の指示を受けることなく、インストールの完了後に自律的にアクティベートを行ってもよい。
【0047】
なお、ソフトウェア更新処理は、複数のターゲット電子制御ユニットのそれぞれに対して、連続的あるいは並列的に行うことができる。
【0048】
また、本明細書における「ソフトウェア更新処理」は、ダウンロード、インストール、及びアクティベートの全てを連続して行う処理だけでなく、ダウンロード、インストール、及びアクティベートのうちの一部のみを行う処理も含む。
【0049】
[処理]
次に、
図8、
図9、及び
図10をさらに参照して、本実施形態に係るネットワークシステムにおいて実行されるソフトウェア更新処理に関する具体例をいくつか説明する。
【0050】
(1)ダウンロードの具体例
図8は、センタ10及びOTAマスタ30が行うダウンロードの具体例による処理手順を説明するフローチャートである。
図8に例示するダウンロード処理は、センタ10が、OTAマスタ30から配信パッケージのダウンロード要求を受信することによって、開始される。
【0051】
(ステップS801)
センタ10は、ソフトウェアの更新対象となるターゲット電子制御ユニット(以下「ターゲットECU」という)のうち、第1種別のターゲットECUに向けた更新データの配信パッケージを生成する。また、センタ10は、ソフトウェアの更新対象となるターゲットECUのうち、第2種別のターゲットECUに向けた更新データの配信パッケージを生成する。このとき、センタ10は、記憶部16が記憶している種別情報を参照して、ターゲットECUが搭載する不揮発性メモリのメモリ種別を判断することができる。複数の電子制御ユニット40a~40dにそれぞれ搭載される不揮発性メモリの種別をセンタ10が管理している場合は、メモリ種別に関する情報が配信パッケージに含まれてもよい。第1種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージ及び第2種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージがそれぞれ生成されると、ステップS802に処理が進む。
【0052】
(ステップS802)
センタ10は、第1種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージ及び第2種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージを、OTAマスタ30にそれぞれ送信する。すなわち、センタ10は、第1種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージと第2種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージとを、別個に送信する。各配信パッケージが送信されると、ステップS803に処理が進む。
【0053】
(ステップS803)
OTAマスタ30は、センタ10から別個に送信される第1種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージ及び第2種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージを、それぞれ受信する。この各配信パッケージの受信が完了すると、ステップS804に処理が進む。
【0054】
(ステップS804)
OTAマスタ30は、センタ10から配信パッケージでそれぞれ受信した更新データ(及びメモリ種別に関する情報など)を、記憶部37に記憶する。これにより、ダウンロード処理が終了する。
【0055】
このダウンロードの具体例によれば、OTAマスタ30は、第1種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージと、第2種別のターゲットECU向け更新データの配信パッケージとを、センタ10から別個に受信することができる。この処理によって、いずれかの更新データのダウンロードが失敗した場合には、その失敗した更新データの配信パッケージのみを再度ダウンロードすればよいため、ソフトウェア更新を早期に完了させることができる。
【0056】
(2)インストールの具体例
図9は、OTAマスタ30及びターゲットECUが行う具体例によるインストールの処理手順を説明するフローチャートである。
図9に例示するインストールの具体例は、少なくとも1つのターゲットECUの更新データのダウンロードが完了した後、かつ、所定の条件(インストール実行可、更新データの検証OKなど)が満足されることによって開始される。
【0057】
(ステップS901)
OTAマスタ30は、ターゲットECUに搭載される不揮発性メモリの種別(第1種別/第2種別)を取得する。このメモリ種別は、OTAマスタ30が管理している場合には記憶部37に記憶されている種別情報(
図7)を参照することによって取得することができ、センタ10が管理している場合には配信パッケージに含めて送信されてきたメモリ種別の情報を参照することによって取得することができる。ターゲットECUのメモリ種別が取得されると、ステップS902に処理が進む。
【0058】
(ステップS902)
OTAマスタ30及び各ターゲットECUは、更新データに基づいて、ターゲットECUの不揮発性メモリの格納領域に更新ソフトウェアを書き込む処理であるインストールについて、第1種別のターゲットECUの更新ソフトウェアのインストールと第2種別のターゲットECUの更新ソフトウェアのインストールとを、並行して開始する。更新データが更新ソフトウェアそのものを含む場合は、更新データがOTAマスタ30からターゲット電子制御ユニットに転送されることでインストールされる。このインストールは、ターゲットECUに搭載される不揮発性メモリの種別(第1種別/第2種別)に関わらず一斉に又は所定の順序で開始される。なお、第1種別のターゲットECUの更新ソフトウェアのインストールと第2種別のターゲットECUの更新ソフトウェアのインストールとが常に並列に行われている必要はなく、例えば、更新データのダウンロードが完了した更新ソフトウェアから順に行われてもよいし、所定の更新ソフトウェアの組み合わせによって行われてもよい。各ターゲットECUに対する並行したインストールが開始されると、ステップS903に処理が進む。
【0059】
(ステップS903)
OTAマスタ30は、全て(第1種別及び第2種別)のターゲットECUにおける更新ソフトウェアのインストールが完了したか否かを判断する。OTAマスタ30は、インストールの完了を、各ターゲットECUからの完了通知があったことで判断してもよいし、インストールの開始から所定の時間が経過後したことで判断してもよい。所定の時間は、例えば、各々のインストールに要する最大の時間以上に設定することができる。全てのターゲットECUにおける更新ソフトウェアのインストールが完了したと判断されると(ステップS903、はい)、ターゲットECUに対するインストールが完了し、本インストール処理が終了する。
【0060】
上記インストールの具体例によれば、ターゲットECUに搭載される不揮発性メモリの種別(第1種別/第2種別)に関わらず、各ターゲットECUの更新ソフトウェアのインストールを並行して行う。この処理によって、先行するいずれかの更新ソフトウェアのインストールが失敗した場合には、その失敗した更新ソフトウェアの再インストールを現在実施している他の更新ソフトウェアのインストールと並行して行えるため、ソフトウェア更新を早期に完了させることができる。
【0061】
(3)アクティベートの具体例
図10は、OTAマスタ30及びターゲットECUが行うアクティベートの具体例による処理手順を説明するフローチャートである。
図10に例示するアクティベート処理は、第1種別のターゲットECUの更新ソフトウェアのインストール及び第2種別のターゲットECUの更新ソフトウェアのインストールがそれぞれ完了した後、かつ、所定の条件(アクティベート実行可、更新データの検証OKなど)が満足されることによって開始される。
【0062】
(ステップS1001)
OTAマスタ30及び第1種別のターゲットECUは、第1種別のターゲットECUの不揮発性メモリの格納領域に書き込まれた更新ソフトウェアを有効化するアクティベートを開始する。このアクティベートの開始は、第1種別のターゲットECUの全てについて、一斉に又は所定の順序で行われる。第1種別のターゲットECUにおける更新ソフトウェアのアクティベートが開始されると、ステップS1002に処理が進む。
【0063】
(ステップS1002)
OTAマスタ30及び第2種別のターゲットECUは、第2種別のターゲットECUの不揮発性メモリの格納領域に書き込まれた更新ソフトウェアを有効化するアクティベートを開始する。このアクティベートの開始は、第2種別のターゲットECUの全てについて、一斉に又は所定の順序で行われる。なお、第2種別のターゲットECUの更新ソフトウェアのアクティベートは、第1種別のターゲットECUの更新ソフトウェアのアクティベートが全て完了してから開始されてもよいし、第1種別のターゲットECUの予め定められた一部の更新ソフトウェアのアクティベートが完了してから開始されてもよい。第2種別のターゲットECUにおける更新ソフトウェアのアクティベートが開始されると、ステップS1003に処理が進む。
【0064】
(ステップS1003)
OTAマスタ30は、全て(第1種別及び第2種別)のターゲットECUにおける更新ソフトウェアのアクティベートが完了したか否かを判断する。OTAマスタ30は、アクティベートの完了を、各ターゲットECUからの完了通知があったことで判断してもよいし、アクティベートの開始から所定の時間が経過後したことで判断してもよい。所定の時間は、例えば、各々のアクティベートに要する最大の時間以上に設定することができる。全てのターゲットECUにおける更新ソフトウェアのアクティベートが完了したと判断されると(ステップS1003、はい)、ターゲットECUに対するアクティベートが完了し、本アクティベート処理が終了する。
【0065】
上記アクティベートの具体例によれば、第1種別のターゲットECUのソフトウェア更新の成功を確認した後に、第2種別のターゲットECUのソフトウェア更新を実施することができるので、シングルバンクメモリを搭載したターゲットECUとデュアルバンクメモリを搭載したターゲットECUとの両方を構成に含むシステムのソフトウェア更新処理を好適に実行することができる。なお、アクティベートの処理として、最初に第2種別のターゲットECUの更新ソフトウェアに対するアクティベートを開始し(ステップS1002)、その次に第1種別のターゲットECUの更新ソフトウェアに対するアクティベートを開始しても(ステップS1001)構わない。
【0066】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係るネットワークシステムによれば、OTAマスタがセンタから、シングルバンクメモリ(第1種別の不揮発性メモリ)を搭載した電子制御ユニットに向けた更新データと、デュアルバンクメモリ(第2種別の不揮発性メモリ)を搭載した電子制御ユニットに向けた更新データとを、別個の配信パッケージで受信する。そして、OTAマスタは、並列に受信した各更新データに基づいて、シングルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットの更新ソフトウェアのインストールと、デュアルバンクメモリを搭載した電子制御ユニットの更新ソフトウェアのインストールとを、並行して行う。
【0067】
この処理により、通信異常などによって配信パッケージが正常に送受信できなかった時には、その配信パッケージのみを再度送受信すればよいため、センタとOTAマスタとの間の通信量(通信負荷)の増加を抑制することができる。また、更新ソフトウェアのインストールが失敗した時には、失敗した更新ソフトウェアの再インストールを他の更新ソフトウェアのインストールと並行して行えるため、ソフトウェア更新を早期に完了させることができる。
【0068】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、OTAマスタだけでなく、プロセッサとメモリを備えたOTAマスタが実行する方法、プログラム、プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記憶媒体、OTAマスタを通信可能なセンタ、センタとOTAマスタとを備えるシステム、あるいはOTAマスタを備えた車両など、として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示技術は、電子制御ユニットのソフトウェアを更新するためのネットワークシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0070】
10 センタ
11、31、41 CPU
12、32、42 RAM
13、34 記憶装置
14、36、44 通信装置
16、37 記憶部
17、38 通信部
18、39 制御部
20 車載ネットワーク
30 OTAマスタ
33 ROM
35 マイクロコンピューター
40a~40d 電子制御ユニット(ECU)
43a、43b 不揮発性メモリ
45、46a、46b 格納領域
50 通信モジュール
60a~60c バス
70 ネットワーク