(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/36 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
F01N3/36 C
(21)【出願番号】P 2021096333
(22)【出願日】2021-06-09
【審査請求日】2023-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下笠 宏周
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-220300(JP,A)
【文献】特開2022-032532(JP,A)
【文献】特開2022-025478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73、53/86-53/90、
53/94、53/96
F01N 3/00、3/02、 3/04- 3/38、
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスが流れる流路と、
前記流路の下流側に接続され、前記排気ガスを浄化する排気浄化ユニットと、
前記流路内
における前記排気浄化ユニットの上流側に燃料を噴射する燃料添加弁と
、
前記流路を構成する本体と、
前記燃料添加弁から噴射された前記燃料が衝突するように前記流路内に設けられた燃料分散板とを備え
、
前記本体と前記燃料分散板とは鋳造により一体成形されており、
前記燃料分散板は、前記流路の一部を上側の第1空間と下側の第2空間とに区画するとともに、前記流路の上流側から下流側に向かって下側に傾斜するように設けら
れ、
前記第1空間は、前記流路の上流側に位置する入口部と、前記流路の下流側に位置する出口部とを有し、前記入口部および前記出口部は、楕円状の断面形状を各々有し、
前記燃料は、前記燃料添加弁から前記第1空間に噴射される、排気浄化装置。
【請求項2】
内燃機関からの排気ガスが流れる流路と、
前記流路の下流側に接続され、前記排気ガスを浄化する排気浄化ユニットと、
前記流路内における前記排気浄化ユニットの上流側に燃料を噴射する燃料添加弁と、
前記燃料添加弁から噴射された前記燃料が衝突するように前記流路内に設けられた燃料分散板とを備え、
前記燃料分散板は、前記流路の一部を上側の第1空間と下側の第2空間とに区画するとともに、前記流路の上流側から下流側に向かって下側に傾斜するように設けられ、
前記第1空間は、前記流路の上流側に位置する入口部と、前記流路の下流側に位置する出口部とを有し、
前記燃料は、前記燃料添加弁から前記第1空間に噴射され、
前記燃料添加弁の上流側に設けられ、前記第1空間の流路断面積を縮小させるように前記第1空間の内方に向かって突出する壁部をさらに備えた、排気浄化装置。
【請求項3】
前記燃料分散板は
、前記入口部および前記出口部とは異なる前記第1空間と前記第2空間とを連通させる開口を有する、請求項
1または請求項2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記入口部の断面積は、前記出口部の断面積よりも小さい、請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記第1空間は湾曲部を有し、
前記排気ガスは、第1方向に沿って前記第1空間に流入し、前記湾曲部を経て、前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記第1空間から流出する、請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどの内燃機関において、触媒の上流側に位置する排気通路に還元剤としての燃料を添加し、触媒において排気ガスを浄化することが従来から行われている。
【0003】
従来の排気浄化装置として、たとえば、特許文献1ないし7に記載のものを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-220300号公報
【文献】特開2006-214389号公報
【文献】特開2009-068460号公報
【文献】特開2007-154817号公報
【文献】特開2010-048095号公報
【文献】特開2007-032396号公報
【文献】特開2008-291688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気ガスの浄化を促進するために、排気通路中に還元剤を均一に分散させたいという要請がある。他方、排気通路の設置スペースには一定の制約があり、限られた長さの排気通路中において還元剤の分散を促進することが求められる。従来の排気浄化装置は、この観点から、必ずしも十分な構造を備えたものとはいえない。
【0006】
本技術の目的は、排気通路内における還元剤の分散が促進され、還元剤を均一に分散させることが可能な排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の1つの実施の形態に係る排気浄化装置は、内燃機関からの排気ガスが流れる流路と、流路の下流側に接続され、排気ガスを浄化する排気浄化ユニットと、流路内に燃料を噴射する燃料添加弁と、燃料添加弁から噴射された燃料が衝突するように流路内に設けられた燃料分散板とを備える。燃料分散板は、流路の一部を上側の第1空間と下側の第2空間とに区画するとともに、流路の上流側から下流側に向かって下側に傾斜するように設けられる。
【0008】
上記構成においては、燃料添加弁から噴射された燃料が衝突するように流路内に設けられた燃料分散板により、燃料が微粒化されるため、燃料の分散が促進される。さらに、流路の上流側から下流側に向かって下側に傾斜するように燃料分散板を設けることにより、微粒化された燃料が燃料分散板上で滞留して液滴になることが抑制される。また、上述した燃料分散板の傾斜により、第1空間への排気ガスの流入量を絞ることができるので、燃料添加弁からの燃料の噴射流が第1空間内で乱されることが抑制され、燃料分散板への燃料の衝突が阻害されない。この結果、燃料が微粒化され、燃料の分散がさらに促進される。
【0009】
上記排気浄化装置において、燃料分散板は、第1空間と第2空間とを連通させる開口を有するものであってもよい。開口を設けることにより、燃料分散板に衝突した燃料が第2空間の排気流にも晒されて気化し、燃料の分散がさらに促進される。ただし、本技術の燃料分散板は、これに限定されるものではない。
【0010】
上記排気浄化装置において、第1空間は、流路の上流側に位置する入口部と、流路の下流側に位置する出口部とを有し、入口部の断面積は、出口部の断面積よりも小さくてもよい。入口部の断面積を相対的に小さくすることにより、第1空間への排気ガスの流入量を絞ることができるので、燃料添加弁からの燃料の噴射流が第1空間内で乱されることが抑制され、燃料衝突板への燃料の衝突が阻害されない。この結果、燃料が微粒化され、燃料の分散がさらに促進される。ただし、本技術の排気浄化装置は、これに限定されるものではない。
【0011】
上記排気浄化装置において、第1空間は湾曲部を有し、排気ガスは、第1方向に沿って第1空間に流入し、湾曲部を経て、第1方向と交差する第2方向に沿って第1空間から流出してもよい。ただし、本技術の排気浄化装置は、これに限定されるものではない。
【0012】
上記排気浄化装置は、燃料添加弁の上流側に設けられ、第1空間の流路断面積を縮小させるように第1空間の内方に向かって突出する壁部をさらに備えてもよい。燃料添加弁の上流側における第1空間の流路断面積を壁部によって縮小させることにより、第1空間への排気ガスの流入量を絞ることができるので、燃料添加弁からの燃料の噴射流が第1空間内で乱されることが抑制され、燃料衝突板への燃料の衝突が阻害されない。この結果、燃料が微粒化され、燃料の分散がさらに促進される。ただし、本技術の排気浄化装置は、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、排気通路内における還元剤の分散が促進され、還元剤を均一に分散させることが可能な排気浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本技術の排気浄化装置が適用される内燃機関およびその吸排気系統を模式的に示す図である。
【
図2】本技術の排気浄化装置に含まれる排気通路内の構造を示す図である。
【
図3】
図2に示す排気通路内の構造を異なる角度から見た状態を断面図である。
【
図4】
図3に示す構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0016】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0017】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0018】
図1は、1つの実施の形態に係る排気浄化装置が適用される内燃機関およびその吸排気系統を模式的に示す図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係る排気浄化装置1が適用されるシステムは、エアクリーナ100と、吸気通路200と、内燃機関300と、排気通路400と、排気浄化ユニット500と、燃料添加弁600とを含む。
【0020】
エアクリーナ100を通過した空気は、吸気通路200を通じて内燃機関300に供給される。内燃機関300は、たとえば車両(図示せず)の走行用動力源として設けられたディーゼルエンジンである。
【0021】
排気通路400には、内燃機関300からの排気ガスが流れる。排気通路400を流れた排気ガスは、排気浄化ユニット500に達する。排気浄化ユニット500は、たとえばDOC(Diesel Oxidation Catalyst)およびDPF(Diesel Particulate Filter)を含む。これにより、排気ガスが浄化される。燃料添加弁600は、排気通路400内に向けて還元剤としての燃料を噴射する。
【0022】
図2は、排気浄化装置1における排気通路400内の構造を示す図である。
図3は、
図2に示す排気通路400内の構造を異なる角度(
図2中の矢印IIIの方向)から見た状態を断面図である。
【0023】
図2,
図3に示すように、排気通路400は、本体410と燃料分散板420とを含む。本体410と燃料分散板420とは、たとえば鋳造により一体的に成形することが可能である。
【0024】
本体410は、排気通路400を構成するように形成される。燃料分散板420は、燃料添加弁600から噴射された燃料が衝突するように排気通路400内に設けられる。燃料添加弁600から噴射された燃料が燃料分散板420に衝突することにより、燃料が微粒化されるため、還元剤としての燃料の分散が促進され、還元剤を排気ガス中に均一に分散させることができる。
【0025】
燃料分散板420は、排気通路400の一部を上側の第1空間400Aと下側の第2空間400Bとに区画する。燃料分散板420の上側に位置する第1空間400Aには、上流側の入口部421から矢印A(第1方向)に沿って排気ガスが流入し、下流側の出口部422から矢印B(第2方向)に沿って排気ガスが流出する。入口部421および出口部422は、たとえば略楕円状の断面形状を有する。
【0026】
図2に示すように、矢印A(第1方向)と矢印B(第2方向)とは、互いに交差する異なる方向を向いている。すなわち、第1空間400Aは、入口部421と出口部422との間に湾曲部420Aを有する。
【0027】
図3に示すように、燃料分散板420は、排気通路400の上流側から下流側に向かって下側に傾斜するように設けられる。排気通路400の上流側から下流側に向かって下側に傾斜するように燃料分散板420を設けることにより、燃料分散板420に衝突して微粒化された燃料が燃料分散板420上で滞留して液滴になることが抑制され、燃料の分散がさらに促進される。
【0028】
また、上述のとおり燃料分散板420を上流側から下流側に向かって下側に傾斜するように設けることにより、第1空間400Aの入口部421の高さ(H1)を低く抑えることができる。この結果、入口部421の断面積が縮小され、第1空間400Aへの排気ガスの流入量を絞ることができるので、燃料添加弁600からの燃料の噴射流が第1空間400A内で乱されることが抑制され、燃料分散板420への燃料の衝突が阻害されない。この結果、燃料が微粒化され、燃料の分散がさらに促進される。
【0029】
このように、本実施の形態に係る排気浄化装置1においては、上述の燃料分散板420が設けられることにより、排気通路400に噴射された燃料の分散が促進され、還元剤としての燃料を排気ガス中に均一に分散させることができる。この結果、排気浄化ユニット500における排気ガスの浄化の効率を向上させることが可能となる。
【0030】
排気浄化ユニット500における排気ガスの浄化の効率を向上させるための方策として、たとえば、排気通路400を長くして、排気ガス中に燃料を均一に分散させやすくすることが考えられる。他方、排気通路400を長くするためには、その搭載用空間を大きくする必要があり、排気浄化装置1の搭載の自由度が低下し得る。また、排気通路400を長くした場合、排気浄化ユニット500の触媒(DOC)が内燃機関300から離れ、触媒の早期暖気性および排気浄化装置1の冷間始動性が低下し得る。
【0031】
これに対し、本実施の形態に係る排気浄化装置1においては、排気通路400を過度に長くすることなく、上述の燃料分散板420により、排気通路400に噴射された燃料の分散を促進し、還元剤としての燃料を排気ガス中に均一に分散させることができる。
【0032】
燃料分散板420は、第1空間400Aと第2空間400Bとを連通させる開口(図示せず)を有するものであってもよい。これにより、燃料分散板420に衝突した燃料が第2空間400Bの排気流にも晒されて気化し、燃料の分散がさらに促進される。
【0033】
燃料添加弁600と燃料分散板420との距離は、第1空間400Aに流入した排気ガスの流れによっても、噴射された燃料が燃料分散板420に衝突することが阻害されないように設定される。
【0034】
第1空間400Aの入口部421の断面積は、出口部422の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0035】
入口部421の断面積を相対的に小さくすることにより、第1空間400Aへの排気ガスの流入量を絞ることができるので、燃料添加弁600からの燃料の噴射流が第1空間400A内で乱されることが抑制され、燃料分散板420への燃料の衝突が阻害されない。この結果、燃料が微粒化され、燃料の分散がさらに促進される。
【0036】
ただし、入口部421の断面積と出口部422の断面積とが略同じであってもよいし、入口部421の断面積が出口部422の断面積よりも大きくてもよい。
【0037】
図4は、
図3に示す構造の変形例を示す断面図である。
図4に示す変形例においては、燃料添加弁600の上流側に設けられ、第1空間400Aの流路断面積を縮小させるように第1空間400Aの内方に向かって突出する壁部430が設けられている。
【0038】
図4に示すように、燃料添加弁600の上流側における第1空間400Aの流路断面積を壁部430によって縮小させることにより、第1空間400Aへの排気ガスの流入量を絞ることができるので、燃料添加弁600からの燃料の噴射流が第1空間400A内で乱されることが抑制され、燃料分散板420への燃料の衝突が阻害されない。この結果、燃料が微粒化され、燃料の分散がさらに促進される。
【0039】
また、燃料添加弁600の上流側において第1空間400Aの流路断面積を縮小させることにより、高温の排気ガスおよび煤が燃料添加弁600の添加ポートに流入することが抑制され、燃料添加弁600の添加ポートにおけるデポジットの生成が抑制される。デポジットの生成は、燃料添加弁600の添加ポートの直径(D)を縮小することによっても得られる。
【0040】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 排気浄化装置、100 エアクリーナ、200 吸気通路、300 内燃機関、400 排気通路、400A 第1空間、400B 第2空間、410 本体、420 燃料分散板、420A 湾曲部、421 入口部、422 出口部、430 壁部、500 排気浄化ユニット、600 燃料添加弁。