(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/86 20200101AFI20241106BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01S17/86
G01S7/497
(21)【出願番号】P 2021096380
(22)【出願日】2021-06-09
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓光
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 広樹
(72)【発明者】
【氏名】宮里 和宏
(72)【発明者】
【氏名】木下 充広
(72)【発明者】
【氏名】内田 尚秀
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-255978(JP,A)
【文献】特開2004-271404(JP,A)
【文献】特開2020-076589(JP,A)
【文献】国際公開第2021/079911(WO,A1)
【文献】米国特許第10802121(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射し、照射した前記レーザ光の反射光を受光するライダーと、カメラとを備える物体検出装置であって、
前記カメラによって撮像されたカメラ画像に基づいて物標を認識する物標認識部と、
前記ライダーの検出データに基づいて、前記ライダーの投受光窓の汚れ領域を推定する汚れ領域推定部と、
前記ライダーが前記レーザ光を照射する領域のうち、前記物標認識部によって認識された前記物標に向けて前記レーザ光を照射したときに前記レーザ光が前記汚れ領域と重なる領域を調整必要領域として決定する調整領域決定部と、
前記ライダーにおける前記レーザ光の照射強度及び前記反射光の受光感度の少なくともいずれかを調整するライダー調整部と、
を備え、
前記ライダー調整部は、決定された前記調整必要領域について、他の領域よりも前記レーザ光の照射強度及び前記反射光の受光感度の少なくともいずれかを高くする、物体検出装置。
【請求項2】
前記ライダーは、前記レーザ光を照射する照射部と前記反射光を受光する受光部とを前記投受光窓の内側に有し、
前記ライダー調整部は、決定された前記調整必要領域が前記投受光窓上において前記照射部の前側位置である場合、前記レーザ光の照射強度を高くし、決定された前記調整必要領域が前記投受光窓上において前記受光部の前側位置である場合、前記受光感度を高くする、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記汚れ領域推定部は、前記投受光窓において前記レーザ光が透過可能な汚れが存在する領域を、前記汚れ領域として推定する、請求項1又は2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記汚れ領域推定部は、前記レーザ光の照射強度を高くした場合に、前記汚れを透過した前記レーザ光の前記反射光の受光強度が基準値以上となる前記汚れを、前記レーザ光が透過可能な前記汚れと判定し、前記汚れ領域を推定する、請求項3に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カメラ及びライダーを備える物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、検知方式の異なる2以上のセンサから入力される物標の検出結果に基づいて、周囲の物標の検出を行う装置が記載されている。また、この装置では、センサの性能劣化を予測し、予測された劣化度に基づいて、各センサのパラメータを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置の場合、センサの全視野に対して調整されたパラメータが適用される。このため、例えば、この装置がカメラとライダー[LIDAR:Light Detection and Ranging]とを備えている場合、ライダーのレーザ光の照射強度を高くしたときにはライダーの消費電力が増加し、ライダーの受光感度を高くしたときには受光センサの出力信号の飽和及びデータ量の増加が生じることがある。
【0005】
このため、本開示は、ライダーとカメラとを備える物体検出装置であって、ライダーの投受光窓に汚れが存在する場合であっても、ライダーによって物標の検出を適切に行うことができる物体検出装置について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、レーザ光を照射し、照射したレーザ光の反射光を受光するライダーと、カメラとを備える物体検出装置であって、カメラによって撮像されたカメラ画像に基づいて物標を認識する物標認識部と、ライダーの検出データに基づいて、ライダーの投受光窓の汚れ領域を推定する汚れ領域推定部と、ライダーがレーザ光を照射する領域のうち、物標認識部によって認識された物標に向けてレーザ光を照射したときにレーザ光が汚れ領域と重なる領域を調整必要領域として決定する調整領域決定部と、ライダーにおけるレーザ光の照射強度及び反射光の受光感度の少なくともいずれかを調整するライダー調整部と、を備え、ライダー調整部は、決定された調整必要領域について、他の領域よりもレーザ光の照射強度及び反射光の受光感度の少なくともいずれかを高くする。
【0007】
これにより、物体検出装置は、投受光部に汚れが存在する場合であっても、ライダーによる物標の検出を継続できる可能性を高めることができる。また、物体検出装置は、レーザ光の照射強度を調整する場合、調整必要領域についてのみ他の領域よりもレーザ光の照射強度を高くする。これにより、物体検出装置は、ライダーの全視野に対してレーザ光の照射強度を高くする場合に比べて、ライダーにおける消費電力の増加を抑制することができる。また、物体検出装置は、レーザ光の反射光の受光感度を調整する場合、調整必要領域についてのみ他の領域よりも反射光の受光感度を高くする。これにより、物体検出装置は、ライダーの全視野に対して反射光の受光感度を高くする場合に比べて、受光センサの出力信号の飽和及びデータ量の増加を抑制することができる。このように、物体検出装置は、ライダーの投受光窓に汚れが存在する場合であっても、ライダーによって物標の検出を適切に行うことができる。
【0008】
物体検出装置において、ライダーは、レーザ光を照射する照射部と反射光を受光する受光部とを投受光窓の内側に有し、ライダー調整部は、決定された調整必要領域が投受光窓上において照射部の前側位置である場合、レーザ光の照射強度を高くし、決定された調整必要領域が投受光窓上において受光部の前側位置である場合、受光感度を高くしてもよい。この場合、物体検出装置は、投受光窓の汚れ領域の位置に応じて、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を適切に調整することができる。
【0009】
物体検出装置において、汚れ領域推定部は、投受光窓においてレーザ光が透過可能な汚れが存在する領域を、汚れ領域として推定してもよい。この場合、物体検出装置は、このような汚れが存在していても、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を高くすることによって、ライダーにおける物体の検出を行うことができる。
【0010】
物体検出装置において、汚れ領域推定部は、レーザ光の照射強度を高くした場合に、汚れを透過したレーザ光の反射光の受光強度が基準値以上となる汚れを、レーザ光が透過可能な汚れと判定し、汚れ領域を推定してもよい。この場合、物体検出装置は、レーザ光が透過可能な汚れを適切に判定し、このような汚れが存在していてもライダーにおける物体の検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、ライダーの投受光窓に汚れが存在する場合であっても、ライダーによって物標の検出を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る物体検出装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、物体検出装置が搭載された車両の周囲を上方から見た図である。
【
図3】
図3は、ライダーの内部構成を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)は、ライダーの検出データの一例を示す図である。
図4(b)は、カメラのカメラ画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、ライダーの検出データにおいて投受光窓上の汚れを説明するための図である。
図5(b)は、ライダーの検出データにおいて投受光窓上の汚れ領域を説明するための図である。
【
図6】
図6は、カメラ画像に基づいて物標認識部が認識した物標を説明するための図である。
【
図7】
図7は、投受光窓上において汚れ領域と認識された物標とが重なる調整必要領域を説明するための図である。
【
図8】
図8(a)は、ライダーの検出データにおいて、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を他よりも高くした部分を説明するための図である。
図8(b)は、車両の周囲を上方から見たときに、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を高くした領域を説明するための図である。
【
図9】
図9は、物体検出ECUにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1に示されるように、物体検出装置1は、ライダー10、カメラ20、及び物体検出ECU[Electronic Control Unit]30を備えている。物体検出装置1は、ライダー10の検出データに基づいて周囲の物標を検出することができる。また、物体検出装置1は、カメラ20によって撮像されたカメラ画像に基づいて、周囲の物標を認識することができる。以下では、ライダー10の投受光窓に汚れが付着している場合であっても、ライダー10によって物標の検出を適切に行うための構成を中心に説明する。また、本実施形態において、物体検出装置1は、
図2に示される車両Vに搭載されており、車両Vの前方の物標を検出するものとする。
【0015】
図2に示されるように、ライダー10は、例えば、車両Vの前端部に設けられている。ライダー10は、車両Vの前方の物標を検出する。
図3に示されるように、ライダー10は、照射部11、及び受光部(受光センサ)12を備えている。照射部11及び受光部12は、筐体13内に収容されている。筐体13において、照射部11及び受光部12の前側(前面)には、レーザ光Lが透過可能な投受光窓13aが設けられている。つまり、照射部11及び受光部12は、投受光窓13aの内側に設けられている。投受光窓13aは、例えば、ガラス板等の部材によって構成されている。
【0016】
照射部11は、投受光窓13aを介して、車両Vの前方の複数の位置に向けてレーザ光Lを照射する。
図2では、上方から見た場合における、ライダー10のレーザ光の照射範囲S10(照射範囲の画角)が一例として示されている。受光部12は、物標で反射したレーザ光Lの反射光Laを、投受光窓13aを介して受光する。受光部12は、受光強度に応じた信号を出力する。なお、本実施形態において、照射部11は、レーザ光Lの照射強度を変更することができる。また、本実施形態において、受光部12は、反射光Laの受光感度を変更することができる。
【0017】
本実施形態では、
図2に示されるように、一例として、車両Vの右斜め前方に他車両Xが存在し、車両Vの左斜め前方の路側帯にポールPが設置されており、さらに車両Vの左斜め前方の路側帯を歩行者Hが歩いている場合について説明する。この場合、ライダー10は、
図4(a)に示されるように一例として、レーザ光が他車両Xで反射した反射光の点群G1、レーザ光がポールPで反射した反射光の点群G2、及び、レーザ光が歩行者Hで反射した反射光の点群G3を、車両Vの前方の検出データとして取得する。
【0018】
図2に示されるように、カメラ20は、例えば、車両Vのフロントガラスの内側に設けられている。カメラ20は、車両Vの前方を撮像する。
図2では、上方から見た場合における、カメラ20の撮像範囲S20(撮像範囲の画角)が一例として示されている。
【0019】
カメラ20は、
図4(b)に示されるように一例として、他車両X、ポールP、及び歩行者Hが写ったカメラ画像を、車両Vの前方を撮像したカメラ画像として取得する。
【0020】
図1に示されるように、物体検出ECU30は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。物体検出ECU30では、例えば、ROM又はRAMに記録されているプログラムをCPUで実行することにより各種の機能が実現される。物体検出ECU30は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0021】
物体検出ECU30は、機能的には、汚れ領域推定部31、物標認識部32、調整領域決定部33、及びライダー調整部34を有している。
【0022】
汚れ領域推定部31は、ライダー10の検出データに基づいて、ライダー10の投受光窓13aの汚れ領域を推定する。ここでは、汚れ領域推定部31は、例えば、ライダー10の検出データの時系列変化を監視することにより、投受光窓13a上の汚れの発生を検出することができる。例えば、汚れ領域推定部31は、検出データにおける反射光の受光強度の急激な変動等に基づいて、投受光窓13a上に汚れが発生したことを検出することができる。
【0023】
また、汚れ領域推定部31は、投受光窓13a上の汚れを検出した場合、投受光窓13a上における汚れが付着している範囲を示す汚れ領域を推定する。例えば、
図5(a)に示されるライダー10の検出データのように、投受光窓13a上に付着する汚れD1~D3が存在しているとする。この場合、汚れ領域推定部31は、
図5(b)に示されるように、汚れD1の範囲を示す汚れ領域DA1、汚れD2の範囲を示す汚れ領域DA2、及び、汚れD3の範囲を示す汚れ領域DA3を推定する。
【0024】
本実施形態においては、汚れD1(汚れ領域DA1)の一部が点群G1の一部と重なり、汚れD2(汚れ領域DA2)の一部が点群G2の一部と重なり、汚れD3(汚れ領域DA3)の一部が点群G3の一部と重なっているとする。
【0025】
なお、本実施形態において、汚れ領域推定部31は、投受光窓13aにおいてレーザ光が透過可能な汚れが存在する領域を、汚れ領域として推定する。つまり、汚れ領域推定部31は、雨滴、又は融雪剤等のレーザ光を透過可能な汚れの有無を判定し、これらの汚れの汚れ範囲を推定する。
【0026】
一例として、まず、汚れ領域推定部31は、投受光窓13aに何らかの汚れが付着したか否かを判定する。何らかの汚れが有る場合、汚れ領域推定部31は、この汚れ部分に対して照射するレーザ光の照射強度を高くし、汚れを透過したレーザ光の反射光の受光強度が基準値以上となるか否かを判定する。反射光の受光強度が基準値以上となった場合、汚れ領域推定部31は、この汚れをレーザ光が透過可能であると判定し、この汚れの汚れ領域を推定する。
【0027】
図1に示されるように、物標認識部32は、カメラ20によって撮像されたカメラ画像に基づいて、車両Vの前方の物標を認識する。また、物標認識部32は、物標の種類、及びカメラ画像中における物標の位置を認識する。物標認識部32は、周知の画像処理技術等を用いて、物標の認識等を行うことができる。例えば、物標認識部32は、
図6に示されるカメラ画像において、他車両X、ポールP、及び歩行者Hを認識することができる。
【0028】
図6では、カメラ画像中において、物標認識部32が認識した他車両Xの範囲が他車両認識範囲X1として枠によって示され、歩行者Hの範囲が歩行者認識範囲H1として枠によって示され、ポールPの範囲がポール認識範囲P1として枠によって示されている。
【0029】
ここで、物標認識部32は、認識した物標のうち、ライダー10によって測距を行いたい物標を選択する。例えば、ライダー10による測距をどの物標について行うかについては、物体検出装置1の検出結果を用いるシステムによって予め定められていてもよい。また、物標認識部32は、外部のシステムから入力された指示に基づいて、ライダー10によって測距を行う物標を選択してもよい。以下、本実施形態において、物標認識部32は、ライダー10によって測距を行う対象の物標として、他車両X及び歩行者Hを選択した場合について説明する。
【0030】
図1に示されるように、調整領域決定部33は、ライダー10がレーザ光を照射する領域のうち、物標認識部32によって認識された物標に向けてレーザ光を照射したときにレーザ光が汚れ領域と重なる領域を調整必要領域として決定する。なお、調整領域決定部33は、物標認識部32によって認識された物標として、ライダー10によって測距を行う対象として選択された物標(ここでは他車両X及び歩行者H)を用いる。
【0031】
調整必要領域を決定する具体的な方法の一例として、調整領域決定部33は、物標認識部32で選択された測距対象の物標のカメラ画像上の位置(ピクセル位置)を、ライダー10の投受光窓13a上の位置に変換する。この変換は、ライダー10及びカメラ20の取付位置等に基づいて行うことができる。また、この変換を行う場合、厳密には、カメラ20から各物標までの距離が必要となる。しかしながら、調整領域決定部33は、カメラ20としてステレオカメラを利用する、2フレームのカメラ画像を利用する、並びに、ライダー10及びカメラ20からの物標までのそれそれの距離がほぼ等しいと仮定する等の手段によって近似的に上述した変換を行うことができる。そして、調整領域決定部33は、変換した測距対象の物標の投受光窓13a上の位置と、推定された汚れ領域とが重なる領域を調整必要領域として決定する。
【0032】
具体的には、調整領域決定部33は、
図7に示されるように、物標認識部32によって認識された他車両認識範囲X1に向けてレーザ光を照射したときに、レーザ光が汚れ領域DA1と重なる領域を調整必要領域R1として決定する。また、調整領域決定部33は、物標認識部32によって認識された歩行者認識範囲H1に向けてレーザ光を照射したときに、レーザ光が汚れ領域DA3と重なる領域を調整必要領域R2として決定する。
【0033】
ライダー調整部34は、ライダー10の照射部11におけるレーザ光の照射強度、及びライダー10の受光部12における反射光の受光感度を調整する。より詳細には、ライダー調整部34は、調整領域決定部33によって決定された調整必要領域について、他の領域よりもレーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を高くする。
【0034】
具体的には、ライダー調整部34は、
図8(a)に示されるように、他車両認識範囲X1と汚れ領域DA1とが重なる調整必要領域R1、及び、歩行者認識範囲H1と汚れ領域DA3とが重なる調整必要領域R2について、他の領域よりも、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を高くする。
図8(a)では、調整必要領域R1及びR2に照射されたレーザ光の反射光の点群が白点で示されている。また、
図8(b)に示されるように、調整必要領域R1及びR2に対してレーザ光の照射強度及び反射光の受光感度が高くされた状態を上方から見た場合、ライダー10から他車両X及び歩行者Hに向う照射範囲S11及びS12について、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度が高くされる。
【0035】
このように、ライダー調整部34は、調整必要領域についてレーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を高くする。これにより、ライダー10は、投受光窓13aにレーザ光が透過可能な汚れが存在しても、物標の検出を継続できる。
【0036】
なお、ライダー調整部34は、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度の両方を高くすることに限定されない。ライダー調整部34は、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度の少なくともいずれか一方を高くすればよい。
【0037】
また、ライダー調整部34は、調整領域決定部33で決定された調整必要領域の投受光窓13a上の位置に応じて、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度のいずれかを高くするかを決定してもよい。この場合、ライダー調整部34は、決定された調整必要領域が投受光窓13a上において照射部11の前側位置(正面位置)である場合、レーザ光の照射強度を高する。また、ライダー調整部34は、決定された調整必要領域が投受光窓13a上において受光部12の前側位置(正面位置)である場合、受光感度を高くする。
【0038】
次に、物体検出装置1の物体検出ECU30で行われる処理の流れについて、
図9のフローチャートを用いて説明する。ここでは、ライダー10の投受光窓に汚れが付着している場合であっても、ライダー10によって物標の検出を適切に行うための調整処理について説明する。なお、
図9に示される処理は、処理がエンドに至った後、所定時間後に再びスタートから処理が開始される。
【0039】
図9に示されるように、汚れ領域推定部31は、ライダー10の検出データの時系列変化を監視する(S101)。そして、汚れ領域推定部31は、投受光窓13a上の汚れの発生を検出する(S102)。汚れの発生が検出されない場合(S102:NO)、物体検出ECU30は、今回の処理を終了し、所定時間後に再びS101から処理を開始する。
【0040】
汚れの発生が検出された場合(S102:YES)、汚れ領域推定部31は、検出された汚れがレーザ光が透過可能な汚れであるか否かを判定する(S103)。レーザ光が透過可能な汚れではない場合(S103:NO)、物体検出ECU30は、ライダー10による物標の検出を停止させる(S110)。これにより、物体検出ECU30は、ライダー10における消費電力を削減することができる。
【0041】
レーザ光が透過可能な汚れである場合(S103:YES)、汚れ領域推定部31は、投受光窓13a上における汚れ領域を推定する(S104)。物標認識部32は、カメラ20によって撮像されたカメラ画像に基づいて、車両Vの前方の物標を認識する(S105)。物標認識部32は、認識した物標のうち、ライダー10による測距対象の物標を選択する(S106)。測距対象の物標が複数存在する場合、物標認識部32は、これらの複数の物標を選択する。
【0042】
調整領域決定部33は、物標認識部32で選択された測距対象の物標のカメラ画像上の位置(ピクセル位置)を、ライダー10の投受光窓13a上の位置に変換する(S107)。そして、調整領域決定部33は、変換した測距対象の物標の投受光窓13a上の位置と、推定された汚れ領域とが重なる領域を調整必要領域として決定する(S108)。ライダー調整部34は、調整領域決定部33によって決定された調整必要領域について、他の領域よりもライダー10におけるレーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を高くする(S109)。
【0043】
以上のように物体検出装置1は、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を高くすることにより、投受光窓13aに汚れが存在する場合であっても、ライダー10による物標の検出を継続できる可能性を高めることができる。
【0044】
また、物体検出装置1は、レーザ光の照射強度を調整する場合、調整必要領域についてのみ他の領域よりもレーザ光の照射強度を高くする。これにより、物体検出装置1は、ライダー10の全視野に対してレーザ光の照射強度を高くする場合に比べて、ライダー10における消費電力の増加を抑制することができる。また、物体検出装置1は、レーザ光の反射光の受光感度を調整する場合、調整必要領域についてのみ他の領域よりも反射光の受光感度を高くする。これにより、物体検出装置1は、ライダー10の全視野に対して反射光の受光感度を高くする場合に比べて、受光部12の出力信号の飽和及びデータ量の増加を抑制することができる。
【0045】
このように、物体検出装置1は、ライダー10の投受光窓13aに汚れが存在する場合であっても、ライダー10によって物標の検出を適切に行うことができる。
【0046】
ライダー調整部34は、調整必要領域が投受光窓13a上において照射部11の前側位置である場合、レーザ光の照射強度を高くし、調整必要領域が投受光窓13a上において受光部12の前側位置である場合、受光感度を高くする。この場合、物体検出装置1は、投受光窓13aの汚れ領域の位置に応じて、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を適切に調整することができる。
【0047】
汚れ領域推定部31は、投受光窓13aにおいてレーザ光が透過可能な汚れが存在する領域を、汚れ領域として推定する。この場合、物体検出装置1は、このような汚れが存在していても、レーザ光の照射強度及び反射光の受光感度を高くすることによって、ライダー10における物体の検出を行うことができる。
【0048】
また、汚れ領域推定部31は、レーザ光の照射強度を高くした場合に反射光の受光強度が基準値以上となる汚れを、レーザ光が透過可能な汚れと判定し、汚れ領域を推定する。この場合、汚れ領域推定部31は、レーザ光が透過可能な汚れを適切に判定することができる。そして、物体検出装置1は、このような汚れが存在していても、ライダー10における物体の検出を行うことができる。
【0049】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、汚れ領域推定部31は、雨滴等のレーザ光が透過可能な物質を、レーザ光が透過可能な汚れとして用いることに限定されない。例えば、一般に、砂はレーザ光が透過しない。しかしながら、投受光窓13aに付着した砂埃の密度等によっては、レーザ光の照射強度を高くした場合に、砂埃を透過(粒子の隙間を透過)したレーザ光の反射光の受光強度が基準値以上となることがある。このため、汚れ領域推定部31は、このような砂埃等の汚れを、レーザ光が透過可能な汚れとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…物体検出装置、10…ライダー、11…照射部、12…受光部、13a…投受光窓、20…カメラ、31…汚れ領域推定部、32…物標認識部、33…調整領域決定部、34…ライダー調整部、D1~D3…汚れ、DA1~DA3…汚れ領域、R1,R2…調整必要領域。