(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、算出方法及び算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241106BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2021103256
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅人
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134599(JP,A)
【文献】特開2002-133117(JP,A)
【文献】特開2008-047037(JP,A)
【文献】特開2005-266914(JP,A)
【文献】特開2014-081750(JP,A)
【文献】特開2017-167710(JP,A)
【文献】特開2003-226230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0082378(US,A1)
【文献】米国特許第10102586(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両
の状態及び制御に関する車両情報
を取得する取得部と、
取得された前記車両情報に基づいて
事故及び故障を含むイベント
の発生を
判定する判定部と、
取得された前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転を診断する診断部と、
判定されたイベント毎に、各イベント
が発生した場合に前記車両のユーザが負担するコストを算出
する算出部と、
を備え、
前記算出部は、
所定期間における前記コストの総和である総コストの、過去の前記所定期間における前記総コストからの減少額を算出し、
算出された前記減少額に
、前記運転者の運転に関する診断結果の利用頻度が高い程低く設定される変動率を乗じることで、前記診断結果を提供するサービスの利用額を算出
し、
算出部において算出された前記コスト、前記総コスト、及び前記利用額を前記ユーザに通知する通知部をさらに備える情報処理装置。
【請求項2】
前記
算出部は、
所定の契機に前記利用額を算出する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定の契機とは、前記減少額が予め定めた金額となる場合である
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記
算出部は、
前記利用額として、第一期間毎に徴収する第一利用額と、前記第一期間よりも長い第二期間毎に徴収する第二利用額であって、前記利用額から前記第一利用額の総額を差し引いた前記第二利用額と、を算出する
請求項1~3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記
算出部は、
前記サービスの導入後に一定の利用が無い場合は、前記第一期間毎に前記第一利用額に代えて徴収する前記第一利用額よりも高い第三利用額を算出する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
車両
の状態及び制御に関する車両情報
を取得し、
取得された前記車両情報に基づいて、
事故及び故障を含むイベント
の発生を
判定し、
取得された前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転を診断し、
判定されたイベント毎に、各イベント
が発生した場合に前記車両のユーザが負担するコストを算出し、
所定期間における前記コストの総和である総コストの、過去の前記所定期間における前記総コストからの減少額を算出し、
算出された前記減少額に
、前記運転者の運転に関する診断結果の利用頻度が高い程低く設定される変動率を乗じることで、前記診断結果を提供するサービスの利用額を算出
し、
算出された前記コスト、前記総コスト、及び前記利用額を前記ユーザに通知する、
処理をコンピュータが実行する算出方法。
【請求項7】
車両
の状態及び制御に関する車両情報
を取得し、
取得された前記車両情報に基づいて、
事故及び故障を含むイベント
の発生を
判定し、
取得された前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転を診断し、
判定されたイベント毎に、各イベント
が発生した場合に前記車両のユーザが負担するコストを算出し、
所定期間における前記コストの総和である総コストの、過去の前記所定期間における前記総コストからの減少額を算出し、
算出された前記減少額に
、前記運転者の運転に関する診断結果の利用頻度が高い程低く設定される変動率を乗じることで、前記診断結果を提供するサービスの利用額を算出
し、
算出された前記コスト、前記総コスト、及び前記利用額を前記ユーザに通知する、
処理をコンピュータに実行させる算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を提供するサービスの利用額を算出する情報処理装置、算出方法及び算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車の事故を防止するための装置又はシステムの導入の成果をより明確に示せるようにする交通事故削減サービス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の交通事故削減サービス装置では、保険会社から提供される事故損害額に基づいて損害額の削減率を提示することでサービスの成果を示しているが、損害額の削減額がサービスの利用額に反映される訳ではない。そのため、事業者が事故の削減を目的とするサービスに対して興味を持ったとしても、当該サービスの利用に伴う損害額の削減額により当該サービスの利用コストを回収できなければ、事業者は当該サービスの導入をためらう虞がある。
【0005】
本発明は、運転に関する情報提供サービスの利用に際し、事故等のイベントに対応するコストの削減額を当該サービスの利用額に反映させることで、当該サービスの導入を促進することを可能とする情報処理装置、算出方法及び算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の情報処理装置は、車両の状態及び制御に関する車両情報を取得する取得部と、取得された前記車両情報に基づいて事故及び故障を含むイベントの発生を判定する判定部と、取得された前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転を診断する診断部と、判定されたイベント毎に、各イベントが発生した場合に前記車両のユーザが負担するコストを算出する算出部と、備え、前記算出部は、所定期間における前記コストの総和である総コストの、過去の前記所定期間における前記総コストからの減少額を算出し、算出された前記減少額に、前記運転者の運転に関する診断結果の利用頻度が高い程低く設定される変動率を乗じることで、前記診断結果を提供するサービスの利用額を算出し、算出部において算出された前記コスト、前記総コスト、及び前記利用額を前記ユーザに通知する通知部をさらに備える。
【0007】
請求項1に記載の情報処理装置は、車両の運転者の運転に関する情報を提供するサービスに係る利用額を算出する。当該情報処理装置は、プロセッサが車両の車両情報に基づいて検出されたイベント毎にコストを算出し、算出された個々のコストを累積して総コストを算出する。ここで、イベントとは、車両において生ずる事故及び故障の少なくとも何れかを含む。そして、プロセッサは、算出された所定期間の総コストの過去の所定期間の総コストからの減少額を算出し、当該減少額を基に利用額を算出する。当該情報処理装置によれば、運転に関する情報提供サービスの利用に際し、事故等のイベントに対応するコストの削減額を当該サービスの利用額に反映させることで、当該サービスの導入を促進することができる。また、サービスの対象者、利用頻度等に応じた利用額を設定することができる。
【0008】
請求項2に記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記算出部は、所定の契機に前記利用額を算出する。
【0009】
請求項2に記載の情報処理装置によれば、所定の契機に利用額を見直すことができる。
【0010】
請求項3に記載の情報処理装置は、請求項2に記載の情報処理装置において、前記所定の契機とは、前記減少額が予め定めた金額となる場合である。
【0011】
請求項3に記載の情報処理装置によれば、サービスの効果が得られた場合に利用額を算出することができる。
【0014】
請求項4に記載の情報処理装置は、請求項1~3の何れか1項に記載の情報処理装置において、前記算出部は、前記利用額として、第一期間毎に徴収する第一利用額と、前記第一期間よりも長い第二期間毎に徴収する第二利用額であって、前記利用額から前記第一利用額の総額を差し引いた前記第二利用額と、を算出する。
【0015】
請求項4に記載の情報処理装置では、利用額を短期の第一期間毎に徴収する第一利用額と、長期の第二期間毎に徴収する第二利用額と、に分けて算出する。例えば、第一利用額をインフラ維持のための利用額とすることにより、第二利用額を成功報酬とすることができる。当該情報処理装置によれば、車両の管理者が気軽にサービスを導入することと、サービスの継続性の維持の両立を図ることができる。
【0016】
請求項5に記載の情報処理装置は、請求項4に記載の情報処理装置において、前記算出部は、前記サービスの導入後に一定の利用が無い場合は、前記第一期間毎に前記第一利用額に代えて徴収する前記第一利用額よりも高い第三利用額を算出する。
【0017】
請求項5に記載の情報処理装置によれば、一定程度の利用が無い場合の利用額を増額することにより、サービスの利用促進を促すことができる。
【0018】
請求項6に記載の算出方法は、車両の状態及び制御に関する車両情報を取得し、取得された前記車両情報に基づいて、事故及び故障を含むイベントの発生を判定し、取得された前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転を診断し、判定されたイベント毎に、各イベントが発生した場合に前記車両のユーザが負担するコストを算出し、所定期間における前記コストの総和である総コストの、過去の前記所定期間における前記総コストからの減少額を算出し、算出された前記減少額に、前記運転者の運転に関する診断結果の利用頻度が高い程低く設定される変動率を乗じることで、前記診断結果を提供するサービスの利用額を算出し、算出された前記コスト、前記総コスト、及び前記利用額を前記ユーザに通知する、処理をコンピュータが実行する。
【0019】
請求項6に記載の算出方法は、車両の運転者の運転に関する情報を提供するサービスに係る利用額を算出する方法である。当該算出方法は、コンピュータが車両の車両情報に基づいて検出されたイベント毎にコストを算出し、算出された個々のコストを累積して総コストを算出する。ここで、イベントとは、上述のとおりである。そして、コンピュータは、算出された所定期間の総コストの過去の所定期間の総コストからの減少額を算出し、当該減少額を基に利用額を算出する。当該算出方法によれば、運転に関する情報提供サービスの利用に際し、事故等のイベントに対応するコストの削減額を当該サービスの利用額に反映させることで、当該サービスの導入を促進することができる。また、サービスの対象者、利用頻度等に応じた利用額を設定することができる。
【0020】
請求項7に記載の算出プログラムは、車両の状態及び制御に関する車両情報を取得し、取得された前記車両情報に基づいて、事故及び故障を含むイベントの発生を判定し、取得された前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転を診断し、判定されたイベント毎に、各イベントが発生した場合に前記車両のユーザが負担するコストを算出し、所定期間における前記コストの総和である総コストの、過去の前記所定期間における前記総コストからの減少額を算出し、算出された前記減少額に、前記運転者の運転に関する診断結果の利用頻度が高い程低く設定される変動率を乗じることで、前記診断結果を提供するサービスの利用額を算出し、算出された前記コスト、前記総コスト、及び前記利用額を前記ユーザに通知する、処理をコンピュータに実行させる。
【0021】
請求項7に記載の算出プログラムは、車両の運転者の運転に関する情報を提供するサービスに係る利用額を算出するプログラムであって、コンピュータに以下の処理を実行させる。すなわち、コンピュータが車両の車両情報に基づいて検出されたイベント毎にコストを算出し、算出された個々のコストを累積して総コストを算出する。ここで、イベントとは、上述のとおりである。そして、コンピュータは、算出された所定期間の総コストの過去の所定期間の総コストからの減少額を算出し、当該減少額を基に利用額を算出する。当該算出プログラムによれば、運転に関する情報提供サービスの利用に際し、事故等のイベントに対応するコストの削減額を当該サービスの利用額に反映させることで、当該サービスの導入を促進することができる。また、サービスの対象者、利用頻度等に応じた利用額を設定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、運転に関する情報提供サービスの利用に際し、事故等のイベントに対応するコストの削減額を当該サービスの利用額に反映させることで、当該サービスの導入を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第一の実施形態に係る車両診断システムの概略構成を示す図である。
【
図2】第一の実施形態の車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】第一の実施形態のセンタサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】第一の実施形態のセンタサーバの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】第一の実施形態のセンタサーバにおいて実行される算出通知処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第一の実施形態のセンタサーバにおいて実行される利用額算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第二の実施形態のセンタサーバにおいて実行される算出通知処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の情報処理装置を含む車両診断システムについて説明する。車両診断システムは、タクシー及びトラック等の運送車両を対象とする運転診断サービスを提供するシステムである。運転診断サービスは、運送車両から取得した車両情報を基に運送車両の運転状況を解析し、当該運送車両の運転者の診断を行うサービスである。
【0025】
[第一の実施形態]
(全体構成)
図1に示されるように、第一の実施形態の車両診断システム10は、複数の車両12と、情報処理装置としてのセンタサーバ30と、端末40と、を含んで構成されている。また、各車両12には車載器20がそれぞれ搭載されている。各車載器20、センタサーバ30及び端末40は、ネットワークNを通じて相互に接続されている。なお、
図1には、1のセンタサーバ30に対して、3台の車両12と、各車両12に対応する3台の車載器20、1台の端末40が図示されているが、車両12、車載器20及び端末40の台数はこの限りではない。
【0026】
車両12は、タクシー及びトラック等の運送車両が例示される。また、センタサーバ30は、例えば、運送車両としての車両12を管理する運送会社に設置されている。端末40は、車両12を管理する管理者が所持するスマートフォンやパーソナルコンピューターが例示される。
【0027】
(車両)
図2に示されるように、本実施形態に係る車両12は、車載器20と、複数のECU(Electronic Control Unit)22と、複数の車載機器24と、を含んで構成されている。
【0028】
車載器20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、車内通信I/F(Interface)20D、及び無線通信I/F20Eを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、車内通信I/F20D、及び無線通信I/F20Eは、内部バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0029】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0030】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、ECU22から車両12の状態及び制御に係る車両情報を収集し、センタサーバ30に提供する制御を行う制御プログラム50が記憶されている。
RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0031】
車内通信I/F20Dは、各ECU22と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。車内通信I/F20Dは、外部バス20Hに対して接続されている。
【0032】
無線通信I/F20Eは、センタサーバ30と通信するための無線通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。無線通信I/F20Eは、ネットワークNに対して接続されている。
【0033】
ECU22は、ADAS(Advanced Driver Assistance System)-ECU22A、ステアリングECU22B、ボデーECU22C及び情報系ECU22Dを含む。
【0034】
ADAS-ECU22Aは、先進運転支援システムを統括制御する。ADAS-ECU22Aには、車載機器24を構成する車速センサ25及びヨーレートセンサ26が接続されている。
【0035】
ステアリングECU22Bは、パワーステアリングを制御する。ステアリングECU22Bには、車載機器24を構成する舵角センサ27が接続されている。舵角センサ27はステアリングの舵角を検出するセンサである。
【0036】
ボデーECU22Cは、ウインカー等のライト類を制御する。ボデーECU22Cには、車載機器24を構成するウインカースイッチ28が接続されている。
【0037】
情報系ECU22Dは、カーナビゲーションシステム、及びオーディオ等を制御する。情報系ECU22Dには、車載機器24を構成するGPS装置29が接続されている。GPS装置29は車両12の現在位置を測定する装置である。GPS装置29は、GPS衛星からの信号を受信する図示しないアンテナを含んでいる。なお、GPS装置29は、車載器20に対して直接接続されていてもよい。
【0038】
(センタサーバ)
センタサーバ30は、車両12の車載器20から車両情報を取得し、車両12の運転状況を解析し、運転者の診断を実行する。また、センタサーバ30は、車両12に事故及び故障が発生した場合のコスト、並びに運転診断サービスの利用額を算出する機能を有している。
【0039】
図3に示されるように、センタサーバ30は、CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D及び通信I/F30Eを含んで構成されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D及び通信I/F30Eは、内部バス30Gを介して相互に通信可能に接続されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C及び通信I/F30Eの機能は、上述した車載器20のCPU20A、ROM20B、RAM20C及び無線通信I/F20Eと同じである。なお、通信I/F30Eは有線による通信を行ってもよい。
【0040】
記憶部としてのストレージ30Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のストレージ30Dには、処理プログラム100、総コストDB(データベース)110、設定情報120、参照テーブル130及び利用額DB140が記憶されている。なお、ROM30Bが処理プログラム100、総コストDB110、設定情報120、参照テーブル130及び利用額DB140を記憶してもよい。
【0041】
算出プログラムとしての処理プログラム100は、センタサーバ30を制御するためのプログラムである。処理プログラム100の実行に伴い、センタサーバ30は、車両12における運転者の運転診断を行う診断処理、及び運転診断サービスの利用額を算出して通知する算出通知処理を実行する。
【0042】
総コストDB110は、後述する算出部230により算出された総コストが記憶されたデータベースである。
設定情報120には、運転診断サービスの利用額を算出する際に使用される報酬率が記憶されている。
【0043】
参照テーブル130は、事故及び故障が発生した際のコストを算出する場合に参照される情報であって、事故及び故障の分類毎に要するコストの一覧情報が記憶されている。参照されるコストとしては、車両の修理費用、乗員の治療費用、保険費用、車両及び乗員の休業補償、事故及び故障に対応する事務処理費用等がある。
利用額DB140には、運転診断サービスを利用する事業者毎の利用額が記憶されている。
【0044】
図4に示されるように、本実施形態のセンタサーバ30では、CPU30Aが、処理プログラム100を実行することで、取得部200、判定部210、診断部220、算出部230及び通知部240として機能する。
【0045】
取得部200は、車両12の車載器20から、車両12の状態及び制御に係る車両情報、並びに車両12の位置情報をそれぞれ取得する機能を有している。取得部200は、定期的又は任意のタイミングで車載器20から車両情報及び位置情報を取得する。
【0046】
判定部210は、取得部200が取得した車両情報に基づいて、事故又は故障が発生したか否かの判定を行う機能を有している。例えば、判定部210は、所定の閾値を超える加速度を検知した場合、衝突を伴う事故が発生したと判定する。また例えば、判定部210は、車両情報からECU22及び車載機器24の故障を示すDTC(Diagnostic Trouble Code)を取得した場合、DTCに対応するECU22又は車載機器24に故障が生じていると判定する。また例えば、判定部210は、車外カメラ(図示せず)の画像を基にボデーに対する他の車両の接触、及びボデーパネルの凹みを検知した場合、車両12のボデーに変形を伴う事故が発生したと判定する。ここで、「事故」及び「故障」は本発明におけるイベントの一例である。
【0047】
診断部220は、車両情報を基に車両12の運転者の運転を診断する機能を有している。例えば、車両情報に含まれる加速度及びステアリングの操舵角を基に急ブレーキや急ハンドルに係る診断を行う。また例えば、車両情報に含まれる燃費情報を基にエコ運転に係る診断を行う。診断部220による診断結果は、車両12の管理者の端末40に送信して当該管理者に提供してもよいし、車載器20に送信して車両12の運転者に提供してもよい。
【0048】
算出部230は、車両12において事故及び故障が発生した場合におけるコストを算出する機能を有している。算出されるコストは、上述のとおり、車両の修理費用、乗員の治療費用、保険費用、車両及び乗員の休業補償、事故及び故障に対応する事務処理費用等を含む。また、算出部230は、所定期間中のコストの総和である総コストを算出する。所定期間とは、一定の年数又は月数であってもよいし、運転診断サービスの契約期間であってもよい。さらに、算出部230は、運転診断サービスの利用額を算出する機能を有している。
【0049】
通知部240は、算出部230において算出された事故及び故障の際のコスト、所定期間中の総コスト、並びに利用額等を車両12の管理者の端末40に送信して当該管理者に対して通知する機能を有している。
【0050】
(制御の流れ)
本実施形態において、運転診断サービスの利用額を決定するに際してセンタサーバ30で実行される算出通知処理の流れについて、
図5のフローチャートを用いて説明する。当該処理は、センタサーバ30のCPU30Aが取得部200、判定部210、診断部220、算出部230及び通知部240として機能することにより実行される。
【0051】
図5のステップS100において、CPU30Aは車両情報を取得する。具体的に、CPU30Aは運転診断サービスの対象とされる車両12の車載器20から車両情報を取得する。
【0052】
ステップS102において、CPU30Aは事故・故障判定処理を実行する。具体的には上述した判定部210の処理が実行される。
【0053】
ステップS104において、CPU30Aは事故及び故障の少なくとも何れかが発生しているか否かを判定する。CPU30Aは事故及び故障の少なくとも何れかが発生していると判定した場合(ステップS104でYESの場合)、ステップS106に進む。一方、CPU30Aは事故及び故障の少なくとも何れかが発生していない、すなわち、事故及び故障の何れも発生していないと判定した場合(ステップS104でNOの場合)、ステップS110に進む。
【0054】
ステップS106において、CPU30Aは事故及び故障に対応するコストを算出する。
【0055】
ステップS108において、CPU30Aは所定期間中の総コストを算出する。すなわち、CPU30AはステップS106において算出されたコストを積算する。
【0056】
ステップS110において、CPU30Aは所定期間を経過したか否かを判定する。CPU30Aは所定期間を経過したと判定した場合(ステップS110でYESの場合)、ステップS112に進む。一方、CPU30Aは所定期間を経過していないと判定した場合(ステップS110でNOの場合)、ステップS100に戻る。
【0057】
ステップS112において、CPU30Aは総コストの減少額を算出する。具体的に、CPU30Aは、過去の所定期間における総コストから、ステップS108において算出された総コストを減算することで、減少額を算出する。例えば、所定期間を一年間とした場合、
図7に示されるように、過去である2019年度の総コストから今回算出された2020年度の総コストを減算した減少額が算出される。なお、過去の所定期間の総コストは、過去に算出され総コストDB110に記憶された総コストであってもよいし、センタサーバ30に対して予め入力された金額データであってもよい。
【0058】
ステップS114において、CPU30Aは利用額算出処理を実行する。利用額算出処理の詳細については後述する。
【0059】
ステップS116において、CPU30Aは算出された利用額を通知する。すなわち、運転診断サービスを利用している車両12の管理者の端末40に送信する。
【0060】
ステップS118において、CPU30Aは所定期間中の総コストをリセットする。そして、ステップS100に戻る。
【0061】
次にステップS114の利用額算出処理の流れについて、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0062】
図6のステップS200において、CPU30Aは総コストの減少額に報酬率を乗じた報酬額を算出する(
図7参照)。
【0063】
ステップS202において、CPU30Aは報酬額が設定額を超えたか否かを判定する。CPU30Aは報酬額が設定額を超えたと判定した場合(ステップS202でYESの場合)、ステップS204に進む。一方、CPU30Aは報酬額が設定額を超えていないと判定した場合(ステップS202でNOの場合)、ステップS208に進む。
【0064】
ステップS204において、CPU30Aは予め定められた標準額を毎月の月額利用額として設定する(
図7参照)。ここで、一カ月は第一期間の一例であり、月額利用額は第一利用額の一例である。
【0065】
ステップS206において、CPU30Aは報酬額から一年間の月額利用額の総額を減じた額を定期利用額として設定する(
図7参照)。ここで、一年は第二期間の一例である。また、定期利用額は第二利用額の一例である。そして、利用額算出処理は終了する。
【0066】
ステップS208において、CPU30Aは毎月の利用額として標準額よりも高い割増利用額を設定する。ここで、割増利用額は第三利用額の一例である。そして、利用額算出処理は終了する。
【0067】
(まとめ)
本実施形態のセンタサーバ30は、車両12の運転診断サービスの利用額を算出する。センタサーバ30は、車両12の車両情報に基づいて検出された事故及び故障の少なくとも何れか含むイベント毎にコストを算出し、累積して総コストを算出する。そして、センタサーバ30は、過去の総コストからの減少額を算出し、減少額に報酬率を乗じて利用額を算出する。
【0068】
本実施形態によれば、運転診断サービスの利用に際し、事故等のイベントに対応するコストの削減額を当該運転診断サービスの利用額に反映させることで、運転診断サービスの導入を促進することができる。特に本実施形態によれば、運転診断サービスの利用額はコスト削減額から支払われることになるため、利用者は気軽に導入して同サービスの効果を享受することができる。
【0069】
また、本実施形態のセンタサーバ30は、所定期間毎に利用額を算出する。すなわち、本実施形態によれば、一定期間、契約期間毎に利用額を見直すことができる。
【0070】
また、本実施形態のセンタサーバ30では、利用額を短期の月額利用額と、長期の定期利用額とに分けて算出する。例えば、月額利用額をインフラ維持のための利用額とすることにより、定期利用額を成功報酬とすることができる。そのため、本実施形態によれば、車両12の管理者が気軽に運転診断サービスを導入することと、運転診断サービスの継続性の維持の両立を図ることができる。
【0071】
さらに、本実施形態のセンタサーバ30は、運転診断サービスの導入後に一定の利用が無く、報酬額が設定額に達していない場合は、月額利用額に代えて月額利用額よりも高い割増利用額を算出する。この場合の設定額は、例えば、インフラ維持のための費用を設定することができる。本実施形態によれば、一定程度の利用が無い場合の利用額を増額することにより、運転診断サービスの利用促進を促すことができる。
【0072】
[第二の実施形態]
第一の実施形態では算出通知処理において所定期間を経過した場合を利用額の算出契機としていたが、第二の実施形態では算出契機が第一の実施形態と異なる。以下、第一の実施形態との相違点について説明する。なお、構成は第一の実施形態と同様につき説明は割愛する。
【0073】
本実施形態の算出通知処理の流れについて、
図8のフローチャートを用いて説明する。なお、本実施形態の算出通知処理では第一の実施形態の同処理に対してステップS113が追加された以外、他のステップについては同様である。
【0074】
図8のステップS112において、CPU30Aは総コストの減少額を算出するとステップS113に進む。
【0075】
ステップS113において、CPU30Aは総コストの減少額が所定額を超えているか否かを判定する。CPU30Aは総コストの減少額が所定額を超えていると判定した場合(ステップS113でYESの場合)、ステップS114に進む。一方、CPU30Aは総コストの減少額が所定額を超えていないと判定した場合(ステップS113でNOの場合)、ステップS100に戻る。
【0076】
以上、本実施形態の算出通知処理では、総コストの減少額が所定額を超えた場合を契機に運転診断サービスの利用額を算出する。したがって、本実施形態によれば、第一の実施形態の効果に加えて、実際に運転診断サービスの効果が得られた場合に利用額を算出することができる。
【0077】
[備考]
上記実施形態の利用額算出処理では、総コストの減少額に対して予め設定された報酬率を乗じて報酬額を算出した。しかしこの限りではなく、総コストの減少額に対して変動する割合である変動率を乗じた金額を報酬額としてもよい。変動率は、サービスの利用者、利用頻度等に応じて設定することができる。一例として、運転診断サービスの導入初期において、低い変動率を設定すれば、同サービスの導入促進を図ることができる。このように、本実施形態によれば、運転診断サービスの対象者、利用頻度等に応じて利用額を算出することにより、同サービスの導入を更に促進することができる。
【0078】
上記実施形態における運転診断サービスは、ユーザである車両12の管理者及び運転者が診断結果を閲覧し、安全に対する意識が高まることで事故や故障を減らすことができ、ひいては車両12の運用コストの低減につなげる効果を期待できる。そのため、各実施形態においては、診断結果の閲覧数が利用額に反映されるように設定してもよい。例えば、診断結果の閲覧数に応じて上述の変動率を設定してもよい。
【0079】
なお、上記実施形態でCPU20A及びCPU30Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0080】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、車載器20における制御プログラム50はROM20Bに予め記憶され、センタサーバ30における処理プログラム100はストレージ30Dに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0081】
上記実施形態で説明した処理の流れは、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
12 車両
30 センタサーバ(情報処理装置)
30A CPU(プロセッサ)
100 処理プログラム(算出プログラム)