(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】乗客コンベアのスカートガードの安全スイッチの調整器具
(51)【国際特許分類】
B66B 29/04 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
B66B29/04 E
(21)【出願番号】P 2021106057
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸田 喬士郎
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-56667(JP,U)
【文献】特開2019-14559(JP,A)
【文献】米国特許第04413719(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/00-29/08
B66B 23/00-23/26
B66B 31/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向に移動するステップ、前記ステップに左右方向から表面が対向するスカートガード、前記進行方向を長手方向とし前記スカートガードを支持する支持体、前記スカートガードの裏面に取り付けられる板バネ、および前記板バネの前記スカートガードからの前記左右方向の突出量を前記スカートガードの表面から調整する調整ネジを有する乗客コンベアにおいて、前記スカートガードの裏側で前記板バネに対向するように配置されて前記スカートガードおよび前記ステップの間の異物の挟み込みによって前記スカートガードが撓むときに前記板バネに押されることで当該異物の挟み込みを検出する安全スイッチの調整器具であり、
前記進行方向における長さが前記スカートガードの長さより短く、前記スカートガードが取り外された前記支持体に裏側が取り付けられる板状部と、
前記板状部の裏面に取り付けられ、前記板状部が前記支持体に取り付けられるときに前記安全スイッチに対向する仮板バネと、
前記仮板バネの前記板状部からの前記左右方向の突出量を前記板状部の表面から調整する仮調整ネジと、
を備える調整器具。
【請求項2】
前記板状部の裏面に取り付けられ、前記支持体に掛るフック
を備え、
前記板状部は、前記フックが前記支持体に掛ることによって前記支持体に取り付けられる
請求項1に記載の調整器具。
【請求項3】
前記板状部の表面に取り付けられるハンドル
を備える
請求項1または請求項2に記載の調整器具。
【請求項4】
前記板状部は、表面から裏側が視認可能になるように可視光を透過させる窓を有する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の調整器具。
【請求項5】
前記進行方向および前記左右方向に垂直な幅方向において、前記板状部の幅は、前記スカートガードの幅との差が予め設定された範囲内にある
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の調整器具。
【請求項6】
前記進行方向および前記左右方向に垂直な幅方向において、前記板状部の弾性率は、前記スカートガードの弾性率との差が予め設定された範囲内にある
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の調整器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアのスカートガードの安全スイッチの調整器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、乗客コンベアのスカートガードの安全スイッチの動作力の測定の例を開示する。安全スイッチの動作力は、スカートガードにテンションゲージを押し付けることによって測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の安全スイッチにおいて測定された動作力が適正な範囲にない場合に、動作力の調整が必要になる。このとき、安全スイッチの設置位置の調整によって動作力を調整する場合に、スカートガードを一度取り外す必要がある。動作力の測定にはスカートガードを再び取り付ける必要があるので、安全スイッチの動作力が適正な範囲になるまでスカートガードの着脱を繰り返す必要がある。このため、調整作業の作業性が悪いという課題があった。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、乗客コンベアのスカートガードの安全スイッチの調整作業の作業性をより高められる調整器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る調整器具は、進行方向に移動するステップ、前記ステップに左右方向から表面が対向するスカートガード、前記進行方向を長手方向とし前記スカートガードを支持する支持体、前記スカートガードの裏面に取り付けられる板バネ、および前記板バネの前記スカートガードからの前記左右方向の突出量を前記スカートガードの表面から調整する調整ネジを有する乗客コンベアにおいて、前記スカートガードの裏側で前記板バネに対向するように配置されて前記スカートガードおよび前記ステップの間の異物の挟み込みによって前記スカートガードが撓むときに前記板バネに押されることで当該異物の挟み込みを検出する安全スイッチの調整器具であり、前記進行方向における長さが前記スカートガードの長さより短く、前記スカートガードが取り外された前記支持体に裏側が取り付けられる板状部と、前記板状部の裏面に取り付けられ、前記板状部が前記支持体に取り付けられるときに前記安全スイッチに対向する仮板バネと、前記仮板バネの前記板状部からの前記左右方向の突出量を前記板状部の表面から調整する仮調整ネジと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る調整器具によれば、乗客コンベアのスカートガードの安全スイッチの調整作業の作業性がより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る欄干の垂直断面図である。
【
図3】実施の形態1に係るスカートガードの正面図である。
【
図4】実施の形態1に係るスカートガードの要部拡大図である。
【
図5】実施の形態1に係る調整器具の正面図である。
【
図6】実施の形態1に係る調整器具の上面図である。
【
図7】実施の形態1に係る調整器具の背面図である。
【
図8】実施の形態1に係る調整器具の側面図である。
【
図9】実施の形態1に係る調整器具を用いた安全スイッチの調整の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。なお、本開示の対象は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、または実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベア1の構成図である。
【0011】
乗客コンベア1は、例えば、建物の上階と下階との間に掛け渡される傾斜式のエスカレーターである。このとき、乗客コンベア1は、上階および下階の間で乗客を輸送する。建物の上階側および下階側において、乗客コンベア1の乗降口2が設けられる。乗降口2は、乗客が乗客コンベア1から乗降する場所である。一方の乗降口2は、乗客が乗客コンベア1に乗り込む出発側の乗降口2である。他方の乗降口2は、乗客が乗客コンベア1から降りる到着側の乗降口2である。
【0012】
乗客コンベア1は、駆動装置3と、複数のステップ4と、一対の欄干5と、一対の手摺6と、制御装置7と、を備える。駆動装置3は、例えば乗客コンベア1の上端部、下端部、または中間部などに設けられる。駆動装置3は、駆動力を発生させる例えばモーターなどの装置である。各々のステップ4は、駆動装置3が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々のステップ4は、出発側の乗降口2から到着側の乗降口2まで往路を移動し、到着側の乗降口2から出発側の乗降口2まで往路より下方の帰路を移動する。複数のステップ4は、往路において階段状に配置される。一方の欄干5は、複数のステップ4の左側に配置される。他方の欄干5は、複数のステップ4の右側に配置される。すなわち、一対の欄干5は、複数のステップ4に対して左右方向の外側に配置される。各々の手摺6は、駆動装置3が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々の手摺6は、出発側の乗降口2から到着側の乗降口2まで往路を移動し、到着側の乗降口2から出発側の乗降口2まで往路より下方の帰路を移動する。各々の手摺6は、可撓性を有する環状の部材からなる。一方の手摺6は、複数のステップ4の左側に配置される。他方の手摺6は、複数のステップ4の右側に配置される。制御装置7は、乗客コンベア1の動作を制御する装置である。制御装置7は、例えば乗客コンベア1の上端部、下端部、または中間部などに設けられる。
【0013】
通常運転において、乗客コンベア1は、例えば一方の手摺6を掴みながらいずれかのステップ4の上に立ち止まっている乗客を、制御装置7の制御に基づいて駆動装置3が発生させる駆動力によって輸送する。このとき、各々のステップ4は、例えば予め設定された通常速度で往路において進行方向に移動する。各々の手摺6は、各々のステップ4に合わせた移動速度で循環移動する。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る欄干5の垂直断面図である。
【0015】
各々の欄干5は、手摺ガイド8と、内側板9と、スカートガード10と、インナーデッキ11と、を備える。手摺ガイド8は、手摺6の移動を案内する部材である。内側板9は、手摺6および手摺ガイド8の下方に配置される。内側板9は、乗客コンベア1に乗車している乗客に左右方向から面する部分である。スカートガード10は、ステップ4の側方に配置される。右側の欄干5のスカートガード10の表面は、右側からステップ4の側面に対向する。左側の欄干5のスカートガード10の表面は、左側からステップ4の側面に対向する。スカートガード10は、ステップ4の進行方向を長手方向とする、垂直に配置された板状の部材である。インナーデッキ11は、スカートガード10の上端部および内側板9の下端部の間に設けられる板状の部材である。
【0016】
各々の欄干5は、複数の支持体12を備える。この例において、各々の欄干5は、一対の支持体12を備える。一対の支持体12は、上下に並んで配置される。各々の支持体12は、例えばL字状の断面を有するアングル材である。各々の支持体12は、ステップ4の進行方向に長手方向を向けて配置される。この例において、アングル材である各々の支持体12は、一方の辺の先端が上方に向き、他方の辺の先端が左右方向の外側に向くように配置される。すなわち、各々の支持体12は、左右方向の内側に鉛直面を向けて配置される。複数の支持体12は、スカートガード10を支持する部材である。スカートガード10は、複数の支持体12にビス13によって取り付けられる。
【0017】
各々の欄干5のスカートガード10において、板バネ14が設けられる。板バネ14は、スカートガード10の裏面に取り付けられる。板バネ14は、スカートガード10の裏側で左右方向の外側に突出する。
【0018】
各々の欄干5において、安全スイッチ15が設けられる。安全スイッチ15は、支持部16と、マイクロスイッチ17と、を備える。支持部16は、マイクロスイッチ17を支持する部分である。支持部16は、欄干5において固定されている。支持部16は、例えば左右方向に長い長孔などによって、マイクロスイッチ17の左右方向の位置を調整可能に支持する。マイクロスイッチ17は、スカートガード10の裏側において板バネ14に対向するように配置される。マイクロスイッチ17は、スカートガード10およびステップ4の間の異物の挟み込みによってスカートガード10が左右方向の外側に撓むときに、当該スカートガード10の裏面の板バネ14に押されることで当該異物の挟み込みを検出する。マイクロスイッチ17が異物の挟み込みを検出するときに、制御装置7に検出信号が送信される。このとき、制御装置7は、駆動装置3の運転を停止させる。
【0019】
図3は、実施の形態1に係るスカートガード10の正面図である。
図3において、出発側の乗降口2から傾斜部に入る部分のスカートガード10の正面図が示される。
【0020】
安全スイッチ15は、スカートガード10の予め設定された位置が予め設定された大きさの力Fで押されるときにマイクロスイッチ17が検出信号を送信するように調整される。当該位置において、例えばスカートガード10の表面にマーク18が付されている。
【0021】
スカートガード10は、複数の板材から構成されていてもよい。このとき、板材は、例えば進行方向の長さL、および幅方向の幅Wの部材である。ここで、幅方向は、進行方向および左右方向の両方に垂直な方向である。
【0022】
図4は、実施の形態1に係るスカートガード10の要部拡大図である。
【0023】
各々の欄干5のスカートガード10において、調整ネジ19が設けられる。調整ネジ19は、スカートガード10の裏面からの左右方向の外側における板バネ14の突出量を調整するネジである。調整ネジ19は、スカートガード10の表面に設けられた孔を通じて、スカートガード10の表面から板バネ14の突出量を調整しうるように設けられる。
【0024】
安全スイッチ15の調整作業を行う作業員は、まず、スカートガード10を支持体12から取り外す。その後、作業員は、マイクロスイッチ17の支持位置の調整を行う。その後、作業員は、スカートガード10を支持体12に取り付ける。その後、作業員は、調整ネジ19によって板バネ14の突出量を調整することで、安全スイッチ15の微調整を行う。
【0025】
マイクロスイッチ17の支持位置の調整において、作業員は、
図4に図示されない調整器具を用いる。
【0026】
図5は、実施の形態1に係る調整器具20の正面図である。
【0027】
調整器具20は、板状部21を備える。調整器具20は、板状部21の表面を乗客コンベア1の左右方向の内側に向けて用いられる。調整器具20は、板状部21が支持体12に取り付けられた状態で用いられる。
【0028】
板状部21の形状は、例えば矩形状である。進行方向における板状部21の長さは、スカートガード10の板材の長さLより短い。幅方向における板状部21の幅およびスカートガード10の幅Wの差は、設計誤差および製造誤差などに対応する予め設定された範囲内にある。すなわち、幅方向における板状部21の幅は、スカートガード10の幅Wと同等である。また、幅方向において、板状部21の弾性率およびスカートガード10の弾性率の差は、設計誤差および製造誤差などに対応する予め設定された範囲内にある。すなわち、幅方向における板状部21の弾性率は、スカートガード10の弾性率と同等である。板状部21は、例えば、スカートガード10と同一の材質によって形成されていてもよい。
【0029】
板状部21の表面において、仮マーク22が付されている。仮マーク22は、支持体12に板状部21が取り付けられているときに、スカートガード10が支持体12に取り付けられているときのマーク18の位置に配置されるように設けられる。
【0030】
板状部21において、窓23が設けられる。窓23の形状は、例えば矩形状である。窓23は、可視光を透過させる部分である。すなわち、作業員は、窓23を通じて板状部21の正面から裏側を視認できる。
【0031】
調整器具20は、ハンドル24を備える。ハンドル24は、板状部21の表面に取り付けられる。この例において、ハンドル24は、乗客コンベア1の進行方向に沿うように配置される。
【0032】
図6は、実施の形態1に係る調整器具20の上面図である。
【0033】
調整器具20は、仮板バネ25と、仮調整ネジ26と、を備える。仮板バネ25は、板状部21の裏面に取り付けられる。仮板バネ25は、板状部21の裏面において、板状部21の裏側に突出する。仮板バネ25は、支持体12に板状部21が取り付けられているときに、スカートガード10が支持体12に取り付けられているときの板バネ14の位置に配置されるように設けられる。このとき、仮板バネ25は、マイクロスイッチ17に対向する。仮調整ネジ26は、板状部21の裏面における仮板バネ25の突出量を調整するネジである。仮調整ネジ26は、板状部21の表面に設けられた孔を通じて、板状部21の表面から仮板バネ25の突出量を調整しうるように設けられる。ここで、仮調整ネジ26によって調整可能な突出量の範囲は、調整ネジ19によって調整可能な範囲と同等である。
【0034】
図7は、実施の形態1に係る調整器具20の背面図である。
【0035】
調整器具20は、複数のフック27を備える。各々のフック27は、板状部21の裏面に取り付けられる。各々のフック27は、スカートガード10が取り外された支持体12に掛けられる部分である。
【0036】
図8は、実施の形態1に係る調整器具20の側面図である。
【0037】
各々のフック27の形状は、支持体12の鉛直面に上方から掛けられるように、下方に折れ曲がるような形状である。複数のフック27の一部は、上側の支持体12に掛けられる。複数のフック27の他の一部は、下側の支持体12に掛けられる。
【0038】
続いて、
図9を用いて、調整器具20を用いた安全スイッチ15の調整の例を説明する。
図9は、実施の形態1に係る調整器具20を用いた安全スイッチ15の調整の例を示す図である。
図9において、安全スイッチ15の調整中の欄干5の垂直断面図が示される。
【0039】
安全スイッチ15の調整を行うときに、作業員は、スカートガード10を取り外す。このとき、作業員は、インナーデッキ11も合わせて取り外してもよい。
【0040】
作業員は、調整器具20を支持体12に取り付ける前に、仮板バネ25の突出量が調整可能な突出量の範囲の中央付近の突出量となるように仮調整ネジ26によって調整を行う。
【0041】
その後、作業員は、マイクロスイッチ17の支持位置の調整を行う。マイクロスイッチ17の支持位置に変更の必要がない場合に、作業員は、ここでの支持位置の調整を省略してもよい。
【0042】
作業員は、調整器具20のハンドル24を持って板状部21の裏側を乗客コンベア1の左右方向の外側に向ける。作業員は、フック27をスカートガード10が取り外された支持体12に掛ける。これにより、調整器具20は、支持体12に取り付けられる。このとき、仮板バネ25は、マイクロスイッチ17に対向する。
【0043】
作業員は、マイクロスイッチ17および仮板バネ25の配置を確認する。このとき、作業員は、例えば板状部21の窓23を通じてマイクロスイッチ17および仮板バネ25の配置を見ることで確認を行う。また、進行方向における板状部21の長さはスカートガード10の長さLより短いので、作業員は、進行方向において板状部21の前方または後方から板状部21の裏側を直接見ることができる。このとき、作業員は、マイクロスイッチ17および仮板バネ25の配置を板状部21の前方または後方から直接見ることで確認を行ってもよい。
【0044】
マイクロスイッチ17および仮板バネ25の配置を確認した後に、作業員は、必要に応じてマイクロスイッチ17の支持位置の調整を行う。このとき、作業員は、例えばハンドル24を持って調整器具20を取り外してから支持位置の調整を行う。あるいは、作業員は、例えば板状部21の前方または後方から手を入れることで、調整器具20を取り外さずに支持位置の調整を行ってもよい。
【0045】
その後、作業員は、予め設定された大きさの力Fで、板状部21の表面の仮マーク22を左右方向の内側から押す。このとき、作業員は、力の大きさを計測しうるように、テンションゲージなどを用いて仮マーク22を押してもよい。
【0046】
ここで、幅方向における板状部21の幅および弾性率は、スカートガード10の幅Wおよび弾性率と同等である。また、マイクロスイッチ17に対する仮マーク22の位置は、マイクロスイッチ17に対するスカートガード10が支持体12に取り付けられているときのマーク18の位置と同等である。このため、調整器具20の板状部21は、マーク18の位置を力Fで押されたスカートガード10と同様に撓む。
【0047】
板状部21が撓むことで、仮板バネ25は、マイクロスイッチ17を押し込む。これにより、マイクロスイッチ17は検出信号を制御装置7に送信する。作業員は、このときに加えた力の大きさが予め設定された適正な範囲であるかを確認する。マイクロスイッチ17が検出信号を送信しないとき、および加えた力の大きさが適正な範囲外にあるときに、作業員は、マイクロスイッチ17の支持位置の調整を再度行う。
【0048】
マイクロスイッチ17の支持位置を調整した後に、作業員は、ハンドル24を持って調整器具20を支持体12から取り外す。その後、作業員は、スカートガード10を取り付ける。スカートガード10とともにインナーデッキ11が取り外されていた場合に、作業員は、インナーデッキ11も合わせて取り付ける。
【0049】
その後、作業員は、予め設定された大きさの力Fで、スカートガード10の表面のマーク18を左右方向の内側から押す。このとき、作業員は、力の大きさを計測しうるように、テンションゲージなどを用いてマーク18を押してもよい。
【0050】
スカートガード10が撓むことで、板バネ14は、マイクロスイッチ17を押し込む。これにより、マイクロスイッチ17は検出信号を制御装置7に送信する。作業員は、このときに加えた力の大きさが予め設定された適正な範囲であるかを確認する。加えた力の大きさが適正な範囲外にあるときに、作業員は、加えた力の大きさが適正な範囲内となるように調整ネジ19を用いて板バネ14の突出量を調整する。
【0051】
以上に説明したように、実施の形態1に係る調整器具20は、乗客コンベア1の安全スイッチ15の調整に適用される。乗客コンベア1は、ステップ4と、スカートガード10と、支持体12と、板バネ14と、調整ネジ19と、を備える。ステップ4は、進行方向に移動する。スカートガード10の表面は、ステップ4に左右方向から対向する。支持体12は、進行方向を長手方向とする。支持体12は、スカートガード10を支持する。板バネ14は、スカートガード10の裏面に取り付けられる。調整ネジ19は、板バネ14のスカートガード10からの左右方向の突出量を、スカートガード10の表面から調整する。安全スイッチ15は、スカートガード10の裏側で板バネ14に対向するように配置される。安全スイッチ15は、スカートガード10およびステップ4の間の異物の挟み込みによってスカートガード10が撓むときに、板バネ14に押されることで当該異物の挟み込みを検出する。調整器具20は、板状部21と、仮板バネ25と、仮調整ネジ26と、を備える。進行方向において、板状部21の長さは、スカートガード10の長さより短い。板状部21の裏側は、スカートガード10が取り外された支持体12に取り付けられる。仮板バネ25は、板状部21の裏面に取り付けられる。仮板バネ25は、板状部21が支持体12に取り付けられるときに、安全スイッチ15に対向する。仮調整ネジ26は、仮板バネ25の板状部21からの左右方向の突出量を、板状部21の表面から調整する。
【0052】
このような構成により、作業員は、板状部21の前方または後方から手を入れることで、調整器具20を取り外さずにマイクロスイッチ17の支持位置の調整などの安全スイッチ15の調整ができるようになる。このため、作業員は、安全スイッチ15の調整においてスカートガード10の着脱を繰り返す必要がなくなる。これにより、安全スイッチ15の調整作業の作業性がより高められる。また、仮板バネ25および仮調整ネジ26は、板バネ14および調整ネジ19と同様に構成されている。このため、作業員は、仮板バネ25に対する安全スイッチ15の調整によって、板バネ14が取り付けられたスカートガード10に対する安全スイッチ15の調整を行うことができる。作業員は、板状部21の前方または後方から仮板バネ25および安全スイッチ15の配置を視認しながら安全スイッチ15を調整できるようになる。これにより、調整作業の作業性がより高められる。
【0053】
また、調整器具20は、フック27を備える。フック27は、板状部21の裏面に取り付けられる。フック27は、支持部16に掛けられる。板状部21は、フック27が支持部16に掛ることによって支持体12に取り付けられる。
【0054】
このような構成により、支持体12への調整器具20の着脱が容易になる。これにより、調整作業の作業性がより高められる。
【0055】
また、調整器具20は、ハンドル24を備える。ハンドル24は、板状部21の表面に取り付けられる。
【0056】
このような構成により、作業員は、調整器具20をより取り回しやすくなる。これにより、調整作業の作業性がより高められる。
【0057】
また、板状部21は、窓23を有する。窓23は、板状部21の表面から裏側が視認可能になるように可視光を透過させる。
【0058】
このような構成により、作業員は、板状部21の表側から仮板バネ25および安全スイッチ15の配置を視認しながら安全スイッチ15を調整できるようになる。これにより、調整作業の作業性がより高められる。
【0059】
また、進行方向および左右方向に垂直な幅方向において、板状部21の幅は、スカートガード10の幅との差が予め設定された範囲内にある。
また、幅方向において、板状部21の弾性率は、スカートガード10の弾性率との差が予め設定された範囲内にある。
【0060】
このような構成により、調整器具20の板状部21は、予め設定された大きさの力Fで押されるときに、スカートガード10と同様に撓むようになる。これにより、作業員は、仮板バネ25に対する安全スイッチ15の調整によって、板バネ14が取り付けられたスカートガード10に対する安全スイッチ15の調整をより精度よく行うことができる。これにより、スカートガード10を取り付けた後の微調整量が小さくなるので、調整作業の作業性がより高められる。
【0061】
また、ハンドル24は、乗客コンベア1の進行方向に沿うように配置される。これにより、ハンドル24の弾性率による調整器具20の幅方向における正味の弾性率への影響が抑えられる。なお、例えばハンドル24の弾性率が板状部21の弾性率に対して十分小さい場合など、調整器具20の幅方向における正味の弾性率への影響が小さい場合などに、ハンドル24は進行方向に沿うように配置されていなくてもよい。ハンドル24は、例えば幅方向に沿うように配置されていてもよい。また、調整器具20は、複数のハンドル24を備えていてもよい。
【0062】
また、板状部21は、表面から裏側が視認可能になるように、全体が可視光を透過させるように形成されていてもよい。
【0063】
また、調整器具20において、上側に配置されたフック27および下側に配置されたフック27の間隔は、調整可能であってもよい。すなわち、上側に配置されたフック27または下側に配置されたフック27の一方または両方は、上下方向の位置が調整可能であってもよい。これにより、調整器具20は、上下の支持体12の間隔が異なる乗客コンベア1に対しても適用できるようになる。
【0064】
また、作業員は、調整器具20を支持体12の左右方向の位置の調整に用いてもよい。支持体12の位置は、支持体12に取り付けられたスカートガード10の表面およびステップ4の間隔が予め設定された適正な範囲内となるように調整される。この例において、板状部21の厚さおよびスカートガード10の厚さの差は、設計誤差および製造誤差などに対応する予め設定された範囲内にある。すなわち、板状部21の厚さは、スカートガード10の厚さと同等である。この場合に、作業員は、支持体12に取り付けられた板状部21の表面およびステップ4の間隔が予め設定された適正な範囲内となるように、支持体12の左右方向の位置を調整する。このとき、作業員は、板状部21の前方または後方から板状部21の表面およびステップ4の間隔を確認できる。これにより、支持体12の位置の調整作業の作業性がより高められる。
【0065】
また、乗客コンベア1は、例えば傾斜式の動く歩道などであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 乗客コンベア、 2 乗降口、 3 駆動装置、 4 ステップ、 5 欄干、 6 手摺、 7 制御装置、 8 手摺ガイド、 9 内側板、 10 スカートガード、 11 インナーデッキ、 12 支持体、 13 ビス、 14 板バネ、 15 安全スイッチ、 16 支持部、 17 マイクロスイッチ、 18 マーク、 19 調整ネジ、 20 調整器具、 21 板状部、 22 仮マーク、 23 窓、 24 ハンドル、 25 仮板バネ、 26 仮調整ネジ、 27 フック