(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】蒸発ガス処理システム及び蒸発ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20241106BHJP
F17C 11/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
F17C11/00 A
(21)【出願番号】P 2021108288
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】浦部 治貴
(72)【発明者】
【氏名】土居 真
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-242350(JP,A)
【文献】特開平09-060799(JP,A)
【文献】特開2000-213696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
F17C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液体が貯留された貯槽から発生する蒸発ガスを処理する蒸発ガス処理システムであって、
前記貯槽から発生する蒸発ガスを抜き出す抜き出しラインと、
前記蒸発ガスを吸着する吸着材が収容された三つ以上の吸着容器と、
前記貯槽から低温液体を送出する送出ポンプと、
該送出ポンプによって送出された低温液体及び該低温液体が気化した気化ガスが流れる低温液体・気化ガス送出ラインと、
該低温液体・気化ガス送出ラインに設けられて前記低温液体の冷熱を利用して熱交換する熱交換器と、
該熱交換器及び前記三つ以上の吸着容器と接続され、前記抜き出しラインから抜き出された蒸発ガスを導入して前記吸着容器のうち少なくとも一つと前記熱交換器との間で循環させる循環ラインと、
前記吸着材から脱着した脱着ガスを前記低温液体・気化ガス送出ライン又は前記貯槽内の圧力よりも高圧の系に供給する脱着ガス供給ラインと、
前記循環ラインと別に設けられて少なくとも一つの吸着容器内のガスを他の吸着容器のいずれかに移送するガス移送ラインと、
前記吸着材に吸着された蒸発ガスを脱着するための熱源として、前記低温液体・気化ガス送出ラインにおける前記気化ガスを前記吸着容器に供給する気化ガス供給ラインと、を備え、
前記ガス移送ラインは、前記気化ガス供給ラインの一部と、前記脱着ガス供給ラインの一部と、該気化ガス供給ラインの一部と脱着ガス供給ラインの一部とを接続する接続ラインからなることを特徴とする蒸発ガス処理システム。
【請求項2】
低温液体が貯留された貯槽から発生する蒸発ガスを処理する蒸発ガス処理システムであって、
前記貯槽から発生する蒸発ガスを抜き出す抜き出しラインと、
前記蒸発ガスを吸着する吸着材が収容された三つ以上の吸着容器と、
前記貯槽から低温液体を送出する送出ポンプと、
該送出ポンプによって送出された低温液体及び該低温液体が気化した気化ガスが流れる低温液体・気化ガス送出ラインと、
該低温液体・気化ガス送出ラインに設けられて前記低温液体の冷熱を利用して熱交換する熱交換器と、
該熱交換器及び前記三つ以上の吸着容器と接続され、前記抜き出しラインから抜き出された蒸発ガスを導入して前記吸着容器のうち少なくとも一つと前記熱交換器との間で循環させる循環ラインと、
前記吸着材から脱着した脱着ガスを前記低温液体・気化ガス送出ライン又は前記貯槽内の圧力よりも高圧の系に供給する脱着ガス供給ラインと、
前記循環ラインと別に設けられて少なくとも一つの吸着容器内のガスを他の吸着容器のいずれかに移送するガス移送ラインと、
前記吸着材に吸着された蒸発ガスを脱着するための熱源として、前記低温液体・気化ガス
送出ラインにおける前記気化ガスを前記吸着容器に供給する気化ガス供給ラインと、を備え、
前記ガス移送ラインは、前記三つ以上の吸着容器をそれぞれ直接接続してなることを特徴とする蒸発ガス処理システム。
【請求項3】
貯槽から発生する蒸発ガスを抜き出す抜き出しラインと、
前記蒸発ガスを吸着する吸着材が収容された三つ以上の吸着容器と、
前記貯槽から低温液体を送出する送出ポンプと、
該送出ポンプによって送出された低温液体及び該低温液体が気化した気化ガスが流れる低温液体・気化ガス送出ラインと、
該低温液体・気化ガス送出ラインに設けられて前記低温液体の冷熱を利用して熱交換する熱交換器と、
該熱交換器及び前記三つ以上の吸着容器と接続され、前記抜き出しラインから抜き出された蒸発ガスを導入して前記吸着容器のうち少なくとも一つと前記熱交換器との間で循環させる循環ラインと、
前記吸着材から脱着した脱着ガスを前記低温液体・気化ガス送出ライン又は前記貯槽内の圧力よりも高圧の系に供給する脱着ガス供給ラインと、
前記循環ラインと別に設けられて少なくとも一つの吸着容器内のガスを他の吸着容器のいずれかに移送するガス移送ラインとを備え、低温液体が貯留された貯槽から発生する蒸発ガスを処理する蒸発ガス処理システムを用いて蒸発ガスを処理する蒸発ガス処理方法であって、
前記吸着容器のそれぞれにおいて、
前記循環ラインを通流する蒸発ガスを前記吸着材に吸着させる吸着処理と、
該吸着処理で吸着した蒸発ガスを加熱して前記吸着材から脱着させ、該脱着により昇圧した蒸発ガスを前記低温液体・気化ガス送出ライン又は前記貯槽内の圧力よりも高圧の系に導入する脱着処理と、
該脱着処理の後、吸着容器に残った残ガスを排出して吸着容器内を減圧する残ガス処理とを行うこととし、
該残ガス処理は、
吸着処理を完了した他の吸着容器と当該吸着容器が均圧になるまで前記ガス移送ラインを介して当該吸着容器の前記残ガスを前記他の吸着容器に移送する第1残ガス処理と、
該第1残ガス処理で残った残ガスを吸着処理中の吸着容器に前記循環ラインを介して移送する第2残ガス処理とを有し、
前記三つ以上の吸着容器で前記吸着処理を順次行うことで前記貯槽から連続的に蒸発ガスを抜き出し、かつ、前記第1残ガス処理において他の吸着容器に移送した残ガスを該他の吸着容器の前記脱着処理において前記低温液体・気化ガス送出ライン又は前記貯槽内の圧力よりも高圧の系に導入するようにしたことを特徴とする蒸発ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスをはじめとする低温液体が貯留された貯槽内で発生する蒸発ガスを処理する蒸発ガス処理システム及び蒸発ガス処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ガス製造の原料である天然ガス(NG)は、日本国内においては液化天然ガス(LNG)として輸入、貯蔵される。LNGを始めとする低温液体の貯蔵には断熱材等で断熱されたタンクが用いられるが、タンクへの入熱により低温液体の一部が蒸発し、タンク内に蒸発ガス(BOG)が発生する。この蒸発ガスによってタンクの内圧が上昇すると、タンクの破損、及び、それに伴うガス漏れや爆発事故の危険性がある。これを防ぐため、蒸発ガスを何らかの方法によりタンク内から除去する必要がある。
【0003】
蒸発ガスをタンク内から除去する方法として、もっとも簡単な方法はタンク外への放出であるが、天然ガスのように蒸発ガスが可燃性や有毒性を有する場合、大気中に放出することは好ましくない。また、蒸発ガスが可燃性を有する場合にはフレアパージという手段もあるが、これも原料の有効利用や大気汚染の観点から好ましくない。
そのため、蒸発ガスを有効利用する処理方法として、タンクから回収した蒸発ガスをガス送出パイプラインのガスに導入する、あるいは、ガス送出パイプラインにおける気化前のLNGに導入して再液化させるといった処理が一般的に行われている。この場合、貯蔵タンクの蒸発ガスの圧力はガス送出パイプラインの圧力よりも低いので、ガス送出パイプラインに導入する前にガスコンプレッサーなどを用いて蒸発ガスを昇圧する必要がある。
【0004】
特許文献1には、蒸発ガスを効率よく処理する方法として、タンク内の液化ガスの一部を別のタンク内(以下、「冷却タンク」という)に補給し、その冷却タンク内に吸着材を充填した容器(以下、「吸着容器」という)を沈めることで吸着材を冷却し、その冷却された吸着材に蒸発ガスを吸着させた後、吸着容器を加熱して蒸発ガスを脱離・昇圧してガス送出パイプラインへ導入する、という技術が開示されている。
特許文献1の方法は、吸着材が低温になるほどガス吸着量が増大するという性質を利用したものであり、低温状態で蒸発ガスを吸着させた後に吸着容器を加熱して、蒸発ガスを脱離させると共に容器内の圧力を上昇させ、ガスコンプレッサー等で昇圧することなく蒸発ガスをガス送出パイプラインへ送出できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1の方法は、吸着容器を冷却して蒸発ガスを吸着回収し、その後吸着容器を加熱することで蒸発ガスを脱着し、脱着によって昇圧した蒸発ガス(以下、「脱着ガス」という)をガス送出パイプラインへ導入するものであった。この場合、脱着が進行して吸着容器内の蒸発ガス量が減少すると、それに伴って脱着ガスの圧力が徐々に低下する。脱着ガスの圧力がガス送出パイプラインの圧力以下になると、ガス送出パイプラインに脱着ガスを導入できなくなるので、所定量排出したところで、脱着ガスの排出を停止する。
【0007】
脱着ガスの排出を停止した吸着容器には、ガス送出パイプラインの圧力と同程度の圧力の蒸発ガスが残存しているので(以下、これを「残ガス」という)、新たにLNGタンクから蒸発ガスを回収するためには、吸着容器内の残ガスを処理してLNGタンクの内圧と同程度になるまで減圧する必要がある。
【0008】
この点、特許文献1は、冷却タンクにLNGを再補給することで吸着容器が再冷却されるので、残ガスが吸着材に吸着して減圧されるものの、吸着容器の再冷却の際には冷却タンクに補給されたLNGが蒸発して新たな蒸発ガスが冷却タンク内で発生するので、蒸発ガスの処理効率が低下する。
【0009】
また、残ガスが吸着容器内に残存し続けるので、その分該吸着容器における蒸発ガスの処理可能量が目減りし、蒸発ガスの処理能力が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、残ガスを効率的に処理して、蒸発ガスの処理能力を向上できる蒸発ガス処理システム及び蒸発ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る蒸発ガス処理システムは、低温液体が貯留された貯槽から発生する蒸発ガスを処理するものであって、前記貯槽から発生する蒸発ガスを抜き出す抜き出しラインと、前記蒸発ガスを吸着する吸着材が収容された三つ以上の吸着容器と、前記貯槽から低温液体を送出する送出ポンプと、該送出ポンプによって送出された低温液体及び該低温液体が気化した気化ガスが流れる低温液体・気化ガス送出ラインと、該低温液体・気化ガス送出ラインに設けられて前記低温液体の冷熱を利用して熱交換する熱交換器と、該熱交換器及び前記三つ以上の吸着容器と接続され、前記抜き出しラインから抜き出された蒸発ガスを導入して前記吸着容器のうち少なくとも一つと前記熱交換器との間で循環させる循環ラインと、前記吸着材から脱着した脱着ガスを前記低温液体・気化ガス送出ライン又は前記貯槽内の圧力よりも高圧の系に供給する脱着ガス供給ラインと、前記循環ラインと別に設けられて少なくとも一つの吸着容器内のガスを他の吸着容器のいずれかに移送するガス移送ラインと、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記吸着材に吸着された蒸発ガスを脱着するための熱源として、前記低温液体・気化ガス送出ラインにおける前記気化ガスを前記吸着容器に供給する気化ガス供給ラインを更に備え、前記ガス移送ラインは、前記気化ガス供給ラインの一部と、前記脱着ガス供給ラインの一部と、該気化ガス供給ラインの一部と脱着ガス供給ラインの一部とを接続する接続ラインからなることを特徴とするものである。
【0013】
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ガス移送ラインは、前記三つ以上の吸着容器をそれぞれ直接接続してなることを特徴とするものである。
【0014】
(4)また、本発明に係る蒸発ガス処理方法は、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の蒸発ガス処理システムを用いて蒸発ガスを処理する方法であって、前記吸着容器のそれぞれにおいて、前記循環ラインを通流する蒸発ガスを前記吸着材に吸着させる吸着処理と、該吸着処理で吸着した蒸発ガスを加熱して前記吸着材から脱着させ、該脱着により昇圧した蒸発ガスを前記低温液体・気化ガス送出ライン又は前記貯槽内の圧力よりも高圧の系に導入する脱着処理と、該脱着処理の後、吸着容器に残った残ガスを排出して吸着容器内を減圧する残ガス処理とを行うこととし、該残ガス処理は、吸着処理を完了した他の吸着容器と当該吸着容器が均圧になるまで前記ガス移送ラインを介して当該吸着容器の前記残ガスを前記他の吸着容器に移送する第1残ガス処理と、該第1残ガス処理で残った残ガスを吸着処理中の吸着容器に前記循環ラインを介して移送する第2残ガス処理とを有し、前記三つ以上の吸着容器で前記吸着処理を順次行うことで前記貯槽から連続的に蒸発ガスを抜き出し、かつ、前記第1残ガス処理において他の吸着容器に移送した残ガスを該他の吸着容器の前記脱着処理において前記低温液体・気化ガス送出ライン又は前記貯槽内の圧力よりも高圧の系に導入するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、貯槽から発生する蒸発ガスを抜き出す抜き出しラインと、蒸発ガスを吸着する吸着材が収容された三つ以上の吸着容器と、貯槽から低温液体を送出する送出ポンプと、送出ポンプによって送出された低温液体及び低温液体が気化した気化ガスが流れる低温液体・気化ガス送出ラインと、低温液体・気化ガス送出ラインに設けられて低温液体の冷熱を利用して熱交換する熱交換器と、熱交換器及び三つ以上の吸着容器と接続され、抜き出しラインから抜き出された蒸発ガスを導入して吸着容器のうち少なくとも一つと熱交換器との間で循環させる循環ラインと、前記吸着材から脱着した脱着ガスを前記低温液体・気化ガス送出ライン又は前記貯槽内の圧力よりも高圧の系に供給する脱着ガス供給ラインと、循環ラインと別に設けられて少なくとも一つの吸着容器内のガスを他の吸着容器のいずれかに移送するガス移送ラインと、を備えたことにより、残ガスを効率的に処理して、蒸発ガスの処理能力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る蒸発ガス処理システムの説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る蒸発ガス処理方法の説明図である。
【
図3】
図1の蒸発ガス処理システムにおける状態1の状態を示す図である。
【
図4】
図1の蒸発ガス処理システムにおける状態2の状態を示す図である。
【
図5】
図1の蒸発ガス処理システムにおける状態3の状態を示す図である。
【
図6】
図1の蒸発ガス処理システムにおける状態4の状態を示す図である。
【
図7】
図1の蒸発ガス処理システムにおける状態5の状態を示す図である。
【
図8】
図1の蒸発ガス処理システムにおける状態6の状態を示す図である。
【
図9】
図1の蒸発ガス処理システムにおける状態7の状態を示す図である。
【
図10】
図1の蒸発ガス処理システムにおける状態8の状態を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る蒸発ガス処理システムの他の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態に係る蒸発ガス処理システム1は、低温液体が貯留された貯槽から発生する蒸発ガスを処理するものであって、
図1に示すように、LNG等の低温液体3が貯留された貯槽5から発生する蒸発ガスを抜き出す抜き出しライン7と、蒸発ガスを吸着する吸着材が収容された三つの吸着容器9と、貯槽5から低温液体3を送出する送出ポンプ11と、送出ポンプ11によって送出された低温液体3及び低温液体3が気化した気化ガスが流れる低温液体・気化ガス送出ライン13と、低温液体・気化ガス送出ライン13に設けられて低温液体3の冷熱を利用して熱交換する熱交換器15と、熱交換器15及び三つの吸着容器9と接続され、抜き出しライン7から抜き出された蒸発ガスを導入して三つの吸着容器9のうち一つと熱交換器15との間で循環させる循環ライン17と、循環ライン17と別に設けられて一つの吸着容器9内のガスを他の吸着容器9のいずれかに移送するガス移送ライン18と、を備えている。蒸発ガス処理システム1の各構成について以下具体的に説明する。
【0018】
<抜き出しライン>
抜き出しライン7は、貯槽5に貯留された低温液体3が蒸発して発生する蒸発ガス(一般的に、「ボイルオフガス」、「BOG」ともいう)を、貯槽5から抜き出すラインであり、一端が貯槽5、他端が循環ライン17に接続されている。抜き出しライン7に設けられた開閉弁V1を開放することで、貯槽5から抜き出された蒸発ガスが循環ライン17に導入される。
【0019】
<吸着容器>
吸着容器9は、抜き出しライン7から抜き出された蒸発ガスを吸着するための吸着材が収容されたものである。
吸着容器9に収容される吸着材(例えば活性炭など)の吸着能力は、低温ほど大きくなるので、吸着材を低温状態に保つことで、吸着材の吸着量が増大し、大量の蒸発ガスを吸着することができる。また、大量の蒸発ガスを保持した吸着材に熱を与えて温度を上げることで、吸着材の吸着能力が低下し、吸着していた蒸発ガスを放出(脱着)させることができる。以下、吸着していた蒸発ガスが脱着したものを脱着ガスという。
なお、本実施の形態の蒸発ガス処理システム1は吸着容器9を三つ備えているので、以下、特定のため、それぞれの吸着容器9を、吸着容器A、吸着容器B、吸着容器Cとする。
【0020】
<低温液体・気化ガス送出ライン>
低温液体・気化ガス送出ライン13は、貯槽5から送出される低温液体3を気化してガス幹線へ送出するラインであり、貯槽5内に設けられた送出ポンプ11と、気液混合器19と、昇圧ポンプ21と、熱交換器15と、気化器23と、圧調弁25が設けられている。
送出ポンプ11によって貯槽5から払い出された低温液体3は、気液混合器19を介して昇圧ポンプ21に導入され、昇圧ポンプ21によって昇圧された後、熱交換器15を介して気化器23に導入され、気化器23によって加熱気化され、その後圧調弁25を介してガス幹線に送出される。気化器23の熱源としては、例えば海水があげられる。
【0021】
送出ポンプ11と昇圧ポンプ21の間に設けられた気液混合器19は、吸着容器9から脱着したガスを低温液体3に気液混合し、凝縮させるものである。気液混合器19には、気液混合器19に脱着したガスを導入する第2脱着ガス供給ライン31bが接続されている。第2脱着ガス供給ライン31bについては後述する。
貯槽5から払い出された低温液体3は、気液混合器19によって第2脱着ガス供給ライン31bから供給される脱着ガスと気液混合して脱着ガスを凝縮させたのち、昇圧ポンプ21に導入される。
【0022】
昇圧ポンプ21と気化器23の間に設けられた熱交換器15は、低温液体3の冷熱を利用して熱交換するものであり、熱交換器15には、循環ライン17が接続されている。
昇圧ポンプ21で昇圧されて過冷度の上がった低温液体3は、熱交換器15に導入され、低温液体3の冷熱によって、循環ライン17を流れる蒸発ガスを冷却する。
【0023】
気化器23の下流に設けられた圧調弁25は、低温液体・気化ガス送出ライン13における気化器23の下流のガス(以下、「気化ガス」という)の圧力を調整するものである。
詳しくは後述するが、本実施の形態は、低温液体・気化ガス送出ライン13における気化器23の下流の気化ガスを用いて、気化ガスと同程度の圧力に昇圧された蒸発ガス(脱着ガス)を低温液体・気化ガス送出ライン13の低温液体3及び気化ガスに導入するものである。
脱着ガスは気化ガスと同程度の圧力に昇圧されるものの、吸着容器9や配管の圧力損失によって圧力が低下して低温液体・気化ガス送出ライン13の気化ガスよりも低圧になるので、気化ガスに脱着ガスを導入できない場合がある。そのため、圧調弁25によって気化ガスを減圧して、脱着ガスを気化ガスに導入できるようにしている。
【0024】
もっとも、ガス幹線には所定の要求圧力があるので、それを下回るような減圧を行うことは難しい。したがって、上記圧力損失を考慮して、ガス幹線の要求圧力より高めに低温液体3を昇圧ポンプ21で昇圧し、圧調弁25で減圧してもガス幹線の要求圧力を満たすようにすればよい。
また、脱着ガス供給ライン31に昇圧装置を設けるなどして、脱着ガスを昇圧するようにしてもよい。その場合、圧調弁25は省略してもよい。
【0025】
<循環ライン>
循環ライン17は、抜き出しライン7から導入される蒸発ガスを、吸着容器A~Cのいずれか一つと熱交換器15との間で循環させるものである。
循環ライン17は分岐して、吸着容器A~Cとそれぞれ接続されており、吸着容器A側に接続している循環ライン17には開閉弁V2、V3、吸着容器B側に接続している循環ライン17には開閉弁V4、V5、吸着容器C側に接続している循環ライン17には開閉弁V6、V7が設けられている。
【0026】
吸着容器Aと熱交換器15との間で蒸発ガスを循環させる場合には、開閉弁V2、V3を開放すると共に開閉弁V4~V7を閉止する。
また、吸着容器Bと熱交換器15との間で蒸発ガスを循環させる場合には、開閉弁V4、V5を開放すると共に開閉弁V2、V3、V6、V7を閉止する。
同様に、吸着容器Cと熱交換器15との間で蒸発ガスを循環させる場合には、開閉弁V6、V7を開放すると共に開閉弁V2~V5を閉止する。
【0027】
抜き出しライン7から抜き出された蒸発ガスは、循環ライン17に設けられた循環ブロワ27の上流に導入され、循環ブロワ27によって熱交換器15へ供給される。蒸発ガスは熱交換器15で低温液体・気化ガス送出ライン13を流れる低温液体3の冷熱によって冷却され、吸着容器9(吸着容器A~C)のいずれか一つに導入される。
【0028】
吸着容器9に導入された蒸発ガスは、吸着容器9に収容された吸着材に吸着される。蒸発ガスは吸着容器9に導入される前に熱交換器15によって冷却されているので、蒸発ガスの冷熱によって吸着材が冷却され、蒸発ガスの吸着が促進される。
【0029】
吸着材が蒸発ガスを吸着すると、吸着熱が発生する。吸着熱とは、空間中を飛び回っていた気体の分子が吸着材表面に固定化される際に、気体の持っていた運動エネルギーが熱となって発現されるものである。吸着が進むと、この吸着熱によって、容器内の温度が上昇し、吸着量が低下する。
【0030】
ある程度吸着量が低下すると、吸着容器9に導入した蒸発ガスの全量を吸着することができなくなるので、吸着されない蒸発ガスは再度循環ライン17に払い出される。吸着容器9から循環ライン17に払い出された蒸発ガスは、抜き出しライン7から導入される蒸発ガスと混合されて、熱交換器15で再冷却されてから吸着容器9に戻される。再冷却された蒸発ガスの冷熱により、吸着材が冷却されて、再び蒸発ガスの吸着が促進される。
【0031】
このように、循環ライン17があることで吸着容器9内を冷却し続けることができるので、高い吸着量を保つことができ、大量の蒸発ガスを吸着することができる。
また、蒸発ガスを低温液体3の冷熱を用いて吸着材の冷却をするための冷媒として用いているので、吸着材との直接接触により熱輸送が行われ、温度変化の応答性が良い。これにより、吸着工程の処理時間を短く抑えることができる。
【0032】
吸着材によって所定の量まで蒸発ガスを吸着すると、吸着処理を停止して、脱着処理に移行する。前述したように、吸着材に吸着された蒸発ガスの脱着は吸着材を加熱することで行う。加熱のための熱源として、本実施の形態の蒸発ガス処理システム1では、
図1に示すような気化ガス供給ライン29を設けて、低温液体3が気化したガス(気化ガス)を吸着容器9に導入するようにしている。
【0033】
<気化ガス供給ライン>
気化ガス供給ライン29は、低温液体3が気化したガスを吸着容器9のいずれか一つに供給するものであり、一端側は低温液体・気化ガス送出ライン13における気化器23の下流側、他端側は分岐して吸着容器A~Cにそれぞれ接続されている。気化ガス供給ライン29における低温液体・気化ガス送出ライン13側には開閉弁V8が設けられており、分岐している部分の吸着容器A~C側には開閉弁V9~V11が設けられている。
【0034】
吸着容器Aに気化ガスを導入する場合には、開閉弁V8、V9を開放すると共に開閉弁V10、V11を閉止する。
また、吸着容器Bに気化ガスを導入する場合には、開閉弁V8、V10を開放すると共に開閉弁V9、V11を閉止する。
同様に、吸着容器Cに気化ガスを導入する場合には、開閉弁V8、V11を開放すると共に開閉弁V9、V10を閉止する。
【0035】
気化器23の下流側の気化ガスは、高温のガス(例えば5℃)であるので、気化ガス供給ライン29から気化ガスが吸着容器9に導入されることで、容器内の温度が上がり、吸着材に吸着された蒸発ガスの脱着が行われる。吸着容器9内は、蒸発ガスを冷却しながら循環させたことで、大量の蒸発ガスを保持した状態であり、そこに、高温の気化ガスを導入することで、吸着されていた大量の蒸発ガスが脱着され、高い圧力の脱着ガスを得ることができる。
また、熱源である気化ガスを直接吸着容器9内に導入するので、吸着材と直接接触して熱輸送が行われるため温度変化の応答性が良く、脱着工程の処理時間を短く抑えることができる。
【0036】
吸着材を加熱することによって得られた脱着ガスを有効利用するため、本実施の形態の蒸発ガス処理システム1では、脱着ガス供給ライン31を設けて、脱着ガスを低温液体・気化ガス送出ライン13に導入するようにしている。
【0037】
<脱着ガス供給ライン>
脱着ガス供給ライン31は、吸着容器9から払い出された脱着ガスを低温液体・気化ガス送出ライン13に導入するものであり、一端側が分岐して吸着容器A~Cとそれぞれ接続している。また、他端側も分岐して、一方が低温液体・気化ガス送出ライン13における気化器23の下流側、他方が気液混合器19に接続している。気化器23の下流側に接続している部分を第1脱着ガス供給ライン31a、気液混合器19に接続している部分を第2脱着ガス供給ライン31bとする。
脱着ガス供給ライン31における吸着容器A~Cに接続する部分にはそれぞれ開閉弁V12~V14が設けられている。また、第1脱着ガス供給ライン31aには開閉弁V15、第2脱着ガス供給ライン31bには開閉弁V16が設けられている。
【0038】
例えば、吸着容器Aの脱着ガスを低温液体・気化ガス送出ライン13における気化器23の下流の気化ガスに導入する場合には、開閉弁V12、V15を開放すると共に開閉弁V13、V14、V16を閉止する。また、吸着容器Aの脱着ガスを低温液体・気化ガス送出ライン13における気液混合器19に導入する場合には、開閉弁V12、V16を開放すると共に開閉弁V13~V15を閉止する。このように、開閉弁V15、V16の開閉状態を切り替えることにより、吸着容器Aから払いだされる脱着ガスを気化器23の下流の気体状態の低温液化ガス3(気化ガス)に導入するか、気化器23の上流の液体状態の低温液化ガス3に導入するかを切り替えることができる。開閉弁V12に代えて開閉弁V13又は開閉弁V14を操作すれば、吸着容器B又は吸着容器Cの脱着ガスを上記と同様に低温液体・気化ガス送出ライン13に導入することができる。
【0039】
脱着ガスを気化器23の下流に導入するか、上流に導入するかは、脱着ガスの圧力に応じて選択する。本実施の形態のように、吸着容器9に気化ガスを導入して蒸発ガスを脱着させた場合、脱着ガスは気化ガスと同程度の圧力まで昇圧されるので、まずは第1脱着ガス供給ライン31aを介して気化器23の下流の気化ガスに脱着ガスを導入する。
【0040】
前述のように吸着容器9内に吸着している蒸発ガス量が減少するのに伴って脱着ガスの圧力も低下するので、脱着ガスが気化ガスよりも低圧になった場合には、気化ガスへの導入を停止し、気液混合器19へ脱着ガスを導入する。この時の脱着ガスは気液混合器19を通流する低温液体3よりも高圧なので、昇圧装置等を必要とすることなく低温液体3に気液混合することができる。
【0041】
気液混合器19へ脱着ガスを導入する間も脱着ガスの圧力は徐々に低下するので、脱着ガスが低温液体3よりも低圧になった場合には、気液混合器19への導入を停止する。
この時、吸着容器9内には低温液体3の圧力と同程度の圧力の脱着ガス(残ガス)が残存している。これによって吸着容器9の内圧が貯槽5から抜き出される蒸発ガスの圧力よりも高圧となっているので、残ガスを処理して吸着容器9を減圧する必要がある。
これに対し、蒸発ガス処理システム1には、一つの吸着容器9内のガスを他の吸着容器9のいずれかに移送するガス移送ライン18が設けられている。
【0042】
<ガス移送ライン>
ガス移送ライン18は、気化ガス供給ライン29の一部と、脱着ガス供給ライン31の一部と、接続ライン18aからなるものである。
接続ライン18aは、気化ガス供給ライン29の一部と脱着ガス供給ライン31の一部とを接続するものであり、一端側は気化ガス供給ライン29、他端側は分岐して脱着ガス供給ライン31の吸着容器A~Cと接続している部分にそれぞれ接続している。接続ライン18aにおける脱着ガス供給ライン31と接続する部分には、それぞれ開閉弁V17~V19が設けられている。
【0043】
一つの吸着容器9から他の吸着容器9へのガスの移送は、圧力差のある二つの吸着容器9をガス移送ライン18を介して連通することで行われる。この点について、以下、例を挙げて具体的に説明する。
【0044】
例えば、吸着容器Aが脱着処理が完了して残ガスが残留している状態、吸着容器Bが吸着処理が完了して脱着処理を開始する前の状態である場合、吸着容器Bは吸着容器Aよりも低圧である。この時、接続ライン18aの開閉弁V17を開放すると共に開閉弁V18、V19を閉止し、気化ガス供給ライン29の開閉弁V10を開放すると共に開閉弁V9、V11を閉止すると、吸着容器Aと吸着容器Bが脱着ガス供給ライン31、接続ライン18a、気化ガス供給ライン29を介して連通する。吸着容器A、Bが連通すると高圧の吸着容器Aから低圧の吸着容器Bに残ガスが流れるので、吸着容器Aの内圧は減圧し、吸着容器Bの内圧は昇圧され、やがて吸着容器A、Bが均圧になる。
【0045】
吸着容器Bに移送された吸着容器Aの残ガスは、吸着容器Bの脱着処理の際に、吸着容器Bの吸着材から脱着した脱着ガスと共に低温液体・気化ガス送出ライン13に導入される。
なお、上記は吸着容器A、B間でガスを移送する例を説明したが、吸着容器B、C間、吸着容器A、C間でガスを移送する場合も同様であり、接続ライン18aの開閉弁V17~V19のうち一つと、気化ガス供給ライン29の開閉弁V9~V11のうち一つを開放して、圧力差のある任意の二つの吸着容器9を連通させて行えばよい。
【0046】
上記のように構成された蒸発ガス処理システム1を用いて行う蒸発ガス処理方法について、
図2を用いて説明する。
本実施の形態に係る蒸発ガス処理方法は、
図2に示すように、三つの吸着容器9のそれぞれにおいて、循環ライン17を通流する蒸発ガスを吸着材に吸着させる吸着処理と、該吸着処理で吸着した蒸発ガスを加熱して吸着材から脱着させ、該脱着により昇圧した蒸発ガス(脱着ガス)を低温液体・気化ガス送出ライン13に導入する脱着処理と、該脱着処理の後、吸着容器9に残った残ガスを排出して吸着容器9内を減圧する残ガス処理とを行うこととし、該残ガス処理は、吸着処理を完了した他の吸着容器9と当該吸着容器9が均圧になるまでガス移送ライン18を介して当該吸着容器9の残ガスを他の吸着容器9に移送する第1残ガス処理と、第1残ガス処理で残った残ガスを吸着処理中の吸着容器9に循環ライン17を介して移送する第2残ガス処理とを有し、三つの吸着容器9で吸着処理を順次行うことで貯槽5から連続的に蒸発ガスを抜き出し、かつ、第1残ガス処理において他の吸着容器9に移送した残ガスを他の吸着容器9の脱着処理において低温液体・気化ガス送出ライン13に導入するようにしたものである。
以下、
図2の蒸発ガス処理方法について、その過程における
図1の蒸発ガス処理システム1の開閉弁V1~V19の開閉状態を
図3~
図10に例示して説明する。なお、
図3~
図10の開閉弁V1~V19は、開状態の場合には白抜き、閉状態の場合には黒塗りで示している。さらに、低温液体3及び各ガス(蒸発ガス、気化ガス、脱着ガス)が通流している導管のみ、流れの方向を示すと共に太線にしている。
また、下記の説明における温度及び圧力は一例を示すものであり、実際の運用時にはこの限りではない。
【0047】
まず、
図3に示すように、開閉弁V1~V3を開放し、吸着容器Aを用いて吸着処理を開始する(状態1)。
貯槽5内のLNG等の低温液体3(例えば-163℃)は、送出ポンプ11によって例えば1MPa程度の圧力で低温液体・気化ガス送出ライン13に送出されて気液混合器19に導入される。状態1では気液混合器19に脱着ガスは供給されないので、低温液体3は気液混合器19を通過し、昇圧ポンプ21で4MPa~7MPaに昇圧されて、熱交換器15に導入される。
また、貯槽5内の蒸発ガス(-120℃~-150℃、約0.1MPa)は、抜き出しライン7から抜き出されて、循環ライン17に導入される。循環ライン17に導入された蒸発ガスは、循環ブロワ27によって熱交換器15に送出され、低温液体3と熱交換して、例えば-160℃に冷却される。
蒸発ガスと熱交換した低温液体3は、気化器23によって気化してガス(気化ガス)となり、ガス幹線に送出される。
【0048】
冷却された蒸発ガスは、吸着容器Aに導入され、吸着容器Aに収容された吸着材と直接接触することで、蒸発ガスが吸着材に吸着すると共に吸着材が冷却される。冷却によって吸着能力が向上するが、一定量吸着が進むと吸着熱によって吸着容器A内の温度が上昇するとともに容器内の蒸発ガスの温度も上昇し、冷却効率が低下して吸着能力の向上が鈍化する。
吸着材が吸着しきれなかった蒸発ガスは、再度循環ライン17に送出され、抜き出しライン7から導入される蒸発ガスと合流して再び熱交換器15で冷却される。冷却された蒸発ガスは吸着容器Aに導入され、吸着材を冷却し吸着が再び促進される。
【0049】
上記のように、発生した吸着熱を熱交換器15で除去しながら吸着材を冷却し続けることにより、吸着容器A内の吸着量が増大する。吸着容器Aによる吸着処理は、吸着容器Aの吸着量が規定量に到達するまで行う。吸着量は、吸着容器A内の圧力及び温度の初期状態からの変化量、または、吸着容器Aの導入側および払出側に設けた積算流量計値の差などから計算することができる。
【0050】
吸着容器Aの吸着量が規定量に到達したら、
図4に示すように、開閉弁V2、V3を閉止して吸着容器Aの吸着処理を終了すると共に、開閉弁V4、V5を開放して吸着容器Bの吸着処理を開始する(吸着容器Aと同様であるので説明を省略)。また、吸着処理を終了した吸着容器Aの脱着処理を開始する(状態2)。
図4において、吸着容器Aの脱着処理に用いる開閉弁V8、V9、V12、V15、V16を全て開状態(白抜き)で示しているが、脱着処理における各開閉弁の操作は下記のように行う。
【0051】
まず、開閉弁V8、V9を開放し、気化ガス供給ライン29より、気化ガス(5℃、4MPa~7MPa)を吸着容器Aに導入する。気化ガスを導入することで、蒸発ガスを吸着した吸着材と温度が高い気化ガスが直接接触して吸着材が加熱される。加熱によって、吸着材に吸着されていた蒸発ガスが脱着し、容器内で脱着を進行させることで容器内の脱着ガスの圧力が昇圧される。脱着ガスの昇圧は、必要に応じて任意の値に調整可能であるが、例えば7MPa程度(導入する気化ガスと同程度)まで昇圧することができる。
【0052】
吸着容器A内の脱着ガスの圧力が所定の圧力(例えばガス幹線の要求圧力以上)まで上昇したら、開閉弁V12、V15を開放して、脱着ガスを低温液体・気化ガス送出ライン13における気化器23の下流側へ導入する。脱着ガスは、吸着容器A内で昇圧されているが、吸着容器Aや配管の圧力損失により低温液体・気化ガス送出ライン13を通流する気化ガスの圧力(4MPa~7MPa)より低圧になるので、低温液体・気化ガス送出ライン13に設けられた圧調弁25によって気化ガスをガス幹線の要求圧力の範囲で減圧してから脱着ガスを低温液体・気化ガス送出ライン13に導入する。
【0053】
吸着材から脱着した脱着ガスの量(脱着量)が増えるにつれて、吸着容器A内のガスの量が減っていくので、脱着ガス供給ライン31を通流する脱着ガスの圧力は徐々に低下する。脱着量が規定量(例えば脱着ガスの圧力がガス幹線の要求圧力以下になると判断される値)に達したら、開閉弁V15を閉止すると共に開閉弁V16を開放して、脱着ガスを昇圧ポンプ21の上流に設けられた気液混合器19へ導入する。この時の脱着ガスの圧力は、ガス幹線の要求圧力を下回ってはいるが、気液混合器19を通流する低温液体3の圧力(0.5~1.5MPa)を上回っているので、圧縮機等を必要とすることなく、低温液体3に気液混合することができる。
吸着容器Aの脱着量が規定量(例えば脱着ガスの圧力が気液混合器19を通流する低温液体3の圧力以下になると判断される値)に到達したら、開閉弁V8、V9、V12、V16を閉止して脱着処理を終了する。
【0054】
上記は吸着処理終了後、直ちに脱着処理を開始する例であるが、脱着処理はガス幹線の需要状況などに応じて任意のタイミングで行ってもよい。
【0055】
吸着容器Bの吸着量が規定量に到達したら、
図5に示すように、開閉弁V4、V5を閉止して吸着容器Bの吸着処理を終了すると共に、開閉弁V6、V7を開放して吸着容器Cの吸着処理を開始する。また、開閉弁V10、V17を開放して吸着容器Aの第1残ガス処理を開始する(状態3)。
【0056】
吸着処理が完了した吸着容器Bの内圧が0.1MPa程度であるのに対し、脱着処理が完了した吸着容器Aの内圧は0.5~1.5MPa程度であるので、脱着ガス供給ライン31、接続ライン18a、気化ガス供給ライン29を介して吸着容器Aと吸着容器Bが連通すると、吸着容器Aの残ガスが吸着容器Bに移送される。
【0057】
吸着容器Aと吸着容器Bの圧力が同程度になったら、
図6に示すように、開閉弁V17を閉止すると共に開閉弁V3を開放して吸着容器Aの第2残ガス処理を開始する。また、ガス幹線の需要等、操業状況に応じて吸着容器Bの脱着処理を開始する(状態4)。吸着容器Bの脱着処理は開閉弁V8、V10、V13、V15、V16を操作して行うが、各操作については吸着容器Aと同様であるため説明を省略する。
吸着容器Bに移送された吸着容器Aの残ガスは、吸着容器Bの脱着処理において、吸着容器Bの脱着ガスと共に低温液体・気化ガス送出ライン13に導入される。
【0058】
第1残ガス処理が完了した時点では、吸着容器Aには例えば0.2~0.8MPa程度の圧力の残ガスが残存しているので、開閉弁V3を開放することで、高圧(0.2~0.8MPa)の吸着容器Aから低圧(およそ0.1MPa)の循環ラインに残ガスが排出され、吸着容器A内が減圧される。
この時、吸着容器Cは循環ライン17を介して吸着処理を行っているので、循環ライン17に排出された吸着容器Aの残ガスは、循環ライン17を循環する蒸発ガスと共に吸着容器Cに移送され、吸着容器Cの吸着材に吸着される。
【0059】
吸着容器A内の圧力が循環ラインの圧力と同程度まで下がったら、開閉弁V3を閉止して第2残ガス処理を終了する。また、吸着容器Bの脱着量が規定量に到達したら、開閉弁V8、V10、V13、V16を閉止して脱着処理を終了する。さらに、吸着容器Cの吸着量が規定量に到達したら、
図7に示すように、開閉弁V6、V7を閉止して吸着容器Cの吸着処理を終了すると共に、開閉弁V2、V3を開放して吸着容器Aの吸着処理を開始する。また、開閉弁V11、V18を開放して吸着容器Bの第1残ガス処理を開始する(状態5)。
【0060】
吸着処理が完了した吸着容器Cの内圧が0.1MPa程度であるのに対し、脱着処理が完了した吸着容器Bの内圧は0.5~1.5MPa程度あるので、脱着ガス供給ライン31、接続ライン18a、気化ガス供給ライン29を介して吸着容器Bと吸着容器Cが連通すると、吸着容器Bの残ガスが吸着容器Cに移送される。
【0061】
吸着容器Bと吸着容器Cの圧力が同程度になったら、
図8に示すように、開閉弁V18を閉止すると共に開閉弁V5を開放して吸着容器Bの第2残ガス処理を開始する。また、ガス幹線の需要等、操業状況に応じて吸着容器Cの脱着処理を開始する(状態6)。吸着容器Cの脱着処理は開閉弁V8、V11、V14、V15、V16を操作して行うが、各操作については吸着容器Aと同様であるため説明を省略する。
吸着容器Cに移送された吸着容器Bの残ガスは、吸着容器Cの脱着処理において、吸着容器Cの脱着ガスと共に低温液体・気化ガス送出ライン13に導入される。
【0062】
第1残ガス処理が完了した時点では、吸着容器Bには例えば0.2~0.8MPa程度の圧力の残ガスが残存しているので、開閉弁V5を開放することで、高圧(0.2~0.8MPa)の吸着容器Bから低圧(およそ0.1MPa)の循環ライン17に残ガスが排出され、吸着容器B内が減圧される。
この時、吸着容器Aは循環ライン17を介して吸着処理を行っているので、循環ライン17に排出された吸着容器Bの残ガスは、循環ライン17を循環する蒸発ガスと共に吸着容器Aに移送され、吸着容器Aの吸着材に吸着される。
【0063】
吸着容器B内の圧力が循環ラインの圧力と同程度まで下がったら、開閉弁V5を閉止して第2残ガス処理を終了する。また、吸着容器Cの脱着量が規定量に到達したら、開閉弁V8、V11、V14、V16を閉止して脱着処理を終了する。さらに、吸着容器Aの吸着量が規定量に到達したら、
図9に示すように、開閉弁V2、V3を閉止して吸着容器Aの吸着処理を終了すると共に、開閉弁V4、V5を開放して吸着容器Bの吸着処理を開始する。また、開閉弁V9、V19を開放して吸着容器Cの第1残ガス処理を開始する(状態7)。
【0064】
吸着処理が完了した吸着容器Aの内圧が0.1MPa程度であるのに対し、脱着処理が完了した吸着容器Cの内圧は0.5~1.5MPa程度あるので、脱着ガス供給ライン31、接続ライン18a、気化ガス供給ライン29を介して吸着容器Cと吸着容器Aが連通すると、吸着容器Cの残ガスが吸着容器Aに移送される。
【0065】
吸着容器Cと吸着容器Aの圧力が同程度になったら、
図10に示すように、開閉弁V19を閉止すると共に開閉弁V7を開放して吸着容器Cの第2残ガス処理を開始する。また、ガス幹線の需要等、操業状況に応じて吸着容器Aの脱着処理を開始する(状態8)。
吸着容器Aに移送された吸着容器Cの残ガスは、吸着容器Aの脱着処理において、吸着容器Aの脱着ガスと共に低温液体・気化ガス送出ライン13に導入される。
【0066】
第1残ガス処理が完了した時点では、吸着容器Cには例えば0.2~0.8MPa程度の圧力の残ガスが残存しているので、開閉弁V7を開放することで、高圧(0.2~0.8MPa)の吸着容器Cから低圧(およそ0.1MPa)の循環ライン17に残ガスが排出され、吸着容器C内が減圧される。
この時、吸着容器Bは循環ライン17を介して吸着処理を行っているので、循環ライン17に排出された吸着容器Cの残ガスは、循環ライン17を循環する蒸発ガスと共に吸着容器Bに移送され、吸着容器Bの吸着材に吸着される。
【0067】
以降、状態3~状態8を繰り返すことにより、三つの吸着容器9で吸着処理を交互に行い、貯槽5から連続的に蒸発ガスを抜き出すことができる。
また、第1残ガス処理において、吸着処理を完了した他の吸着容器9に残ガスを移送することにより、該移送した残ガスを低温液体・気化ガス送出ライン13に導入することができるので、系内に残留する残ガスを削減できる。
【0068】
上記は、ガス移送ライン18が、脱着ガス供給ライン31の一部と接続ライン18aと気化ガス供給ライン29の一部からなるものであったが、一つの吸着容器内のガスを他の吸着容器のいずれかに移送できるように構成されていればよく、態様はこの限りではない。ガス移送ラインの他の態様を
図11に示す。
【0069】
図11は、三つの吸着容器9をそれぞれ直接接続してなるガス移送ライン33を備えた蒸発ガス処理システム35の例である。
図11に示す蒸発ガス処理システム35のガス移送ライン33は、吸着容器A、Bを直接接続する接続ライン33a、吸着容器B、Cを直接接続する接続ライン33b、吸着容器C、Aを直接接続する接続ライン33cによって構成されており、接続ライン33a、33b、33cには、それぞれ開閉弁V20~V22が設けられている。
【0070】
上記のような態様の場合においても、第1残ガス処理において開閉弁V20~V22を操作して、一つの吸着容器を他の吸着容器のいずれかと連通させ、残ガスを移送することができるので、
図1の蒸発ガス処理システム1と同様に
図2の蒸発ガス処理方法を実施することができる。
【0071】
上述のように、本実施の形態においては、従来例のように残ガス処理において新たな蒸発ガスが発生することがないので、蒸発ガスの処理効率を低下させることがない。
また、残ガスを効率的に処理して系内に残留する残ガスを削減しているので、蒸発ガスの処理能力を向上できる。
【0072】
上記では三つの吸着容器9を有する蒸発ガス処理システム1、35を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、四つ以上の吸着容器9を有するものであってもよい。吸着容器9の数を増やすことによって、一つの吸着容器9の脱着処理や残ガス処理に要する時間が長い場合にも、支障なく蒸発ガスを連続処理できる。
【0073】
また、蒸発ガス処理システム1、35は、吸着処理の際に一つの吸着容器と熱交換器との間で蒸発ガスを循環させるものであったが、本発明はその限りではなく、二つ以上の吸着容器と熱交換器との間で蒸発ガスを循環させるものでもよい。これについて、
図1の吸着容器Aが二つの吸着容器A
1、A
2、吸着容器Bが二つの吸着容器B
1、B
2、吸着容器Cが二つの吸着容器C
1、C
2から構成される場合、即ち、蒸発ガス処理システム1が合計で六つの吸着容器A
1、A
2、B
1、B
2、C
1、C
2を備えている場合を例にあげて以下説明する。
上記の例では、
図3に示した状態1のとき、二つの吸着容器A
1、A
2が同時に吸着処理を行うので、循環ライン17を流れる蒸発ガスは二つの吸着容器A
1、A
2と熱交換器15との間で循環する。同様に、
図4に示す状態2のときには、二つの吸着容器A
1、A
2が脱着処理を行う間に、循環ライン17によって二つの吸着容器B
1、B
2と熱交換器15との間で蒸発ガスが循環する。このように、二つ以上の吸着容器が同時に吸着処理を行うものも本発明に含まれる。
【0074】
また、上記は、吸着材を加熱するための熱源として、気化ガスを用いる例であったが、例えば、海水やヒーターなどを用いて、吸着容器9を外部から加熱するようにしてもよく、その場合にも高い圧力の脱着ガスを得ることができる。
もっとも、前述したように、気化ガスを熱源として吸着容器9に導入することで、吸着材と直接接触して加熱することができるので、脱着工程の処理時間を短く抑えることができて好ましい。
【0075】
また、蒸発ガス処理システム1、35は、昇圧した脱着ガスを低温液体・気化ガス送出ライン13に導入する例であったが、脱着ガスの導入先はこれに限定されず、貯槽5内の圧力よりも高圧の他の系に脱着ガスを導入してもよい。低温液体送出ライン13以外の前記高圧の系としては、例えば、蒸発ガス処理システムが複数設置されているような場合において、脱着ガスを排出する蒸発ガス処理システムではない他の蒸発ガス処理システムの低温液体送出ライン、工場内あるいは工場周辺に設置されているガスホルダー、あるいは液化ガスを工場外に搬送するタンクローリーへの給液ラインなどが挙げられる。
【0076】
また、上記は、循環ライン17における循環ブロワ27の上流に抜き出しライン7を接続して蒸発ガスを導入する例であったが、例えば、抜き出しライン7を各吸着容器9にそれぞれ接続して、吸着容器9に直接蒸発ガスを導入するようにしてもよい。
もっとも、前述したように、吸着容器9に導入する前に蒸発ガスを熱交換器15に通流させて冷却することで、より効率的に吸着材を冷却することができるので好ましい。
【0077】
さらに、本実施の形態における吸着処理、脱着処理、残ガス処理の実施に伴う各開閉弁の開閉操作を自動制御によって行ってもよい。各開閉弁を自動制御する場合には、吸着容器の温度、圧力および各ラインにおける低温液体及びガスの温度、圧力及び流量を検知して制御演算装置に入力し、該入力値に基づいて、吸着量や脱着量等を算出し、算出した吸着量や脱着量及び各入力値に基づいて各開閉弁を自動制御するとよい。
【0078】
また、開閉弁V15は、例えばガス幹線の要求圧力以上の圧力で開く逆止弁としてもよい。その場合、設定圧力を境に開閉弁V15が自動開閉するため、開閉制御を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 蒸発ガス処理システム
3 低温液体
5 貯槽
7 抜き出しライン
9 吸着容器
11 送出ポンプ
13 低温液体・気化ガス送出ライン
15 熱交換器
17 循環ライン
18 ガス移送ライン
18a 接続ライン
19 気液混合器
21 昇圧ポンプ
23 気化器
25 圧調弁
27 循環ブロワ
29 気化ガス供給ライン
31 脱着ガス供給ライン
31a 第1脱着ガス供給ライン
31b 第2脱着ガス供給ライン
33 ガス移送ライン(他の態様)
33a 接続ライン
33b 接続ライン
33c 接続ライン
35 蒸発ガス処理システム(他の態様)
V1~22 開閉弁