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特許7582101乗車口ドアの開閉システム、乗車口ドアの開閉方法、及び乗車口ドアの開閉プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】乗車口ドアの開閉システム、乗車口ドアの開閉方法、及び乗車口ドアの開閉プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20241106BHJP
   G06Q 10/02 20120101ALI20241106BHJP
【FI】
G06Q50/40
G06Q10/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021114998
(22)【出願日】2021-07-12
(65)【公開番号】P2023011251
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大池 里佳
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-004318(JP,A)
【文献】特開2005-315024(JP,A)
【文献】特開2020-111896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室を予約した乗客に対して前記荷室の利用を提供する車両の乗車口ドアを開閉するシステムであって、
少なくとも1つのプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリと、
前記少なくも1つのメモリに結合された少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記乗客が前記乗車口ドアの付近にいることを第1条件とし、前記乗客が荷室ドアの付近から前記乗車口ドアに近づくまでの間に前記荷室ドアが開かれて閉じたこと、或いは、前記荷室の予約がキャンセルされたことを第2条件とする場合、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記第1条件と前記第2条件とがともに成立するまでは前記乗車口ドアを閉じた状態に保つことと、
前記第1条件と前記第2条件とがともに成立したことを受けて前記乗車口ドアを開く或いは前記乗車口ドアを開扉可能にすることと、を実行させるように構成されている
ことを特徴とする乗車口ドアの開閉システム。
【請求項2】
請求項1に記載の乗車口ドアの開閉システムにおいて、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記車両が前記乗客のもとに到着した後、前記乗客が前記荷室ドアの付近で検出されない場合、前記乗客に前記荷室の予約のキャンセルの意思を確認すること、を実行させるように構成されている
ことを特徴とする乗車口ドアの開閉システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗車口ドアの開閉システムにおいて、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記車両が前記乗客のもとに到着した後、前記乗客が前記荷室ドアの付近で検出されない場合、音声或いは表示により前記乗客を前記荷室ドアへ案内すること、を実行させるように構成されている
ことを特徴とする乗車口ドアの開閉システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の乗車口ドアの開閉システムにおいて、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記車両に設けられた開閉スイッチが押されたことを検知して前記荷室ドアを自動で開くことと、
前記開閉スイッチが再び押されたことを検知して前記荷室ドアを閉じることと、を実行させるように構成されている
ことを特徴とする乗車口ドアの開閉システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の乗車口ドアの開閉システムにおいて、
前記少なくとも1つのプログラムは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記車両と前記乗客との間で認証が行われた場合に前記荷室ドアのロックを解除することと、
開かれた前記荷室ドアが閉じたことを受けて前記荷室ドアをロックすることと、を実行させるように構成されている
ことを特徴とする乗車口ドアの開閉システム。
【請求項6】
荷室を予約した乗客に対して前記荷室の利用を提供する車両の乗車口ドアを開閉する方法であって、
前記乗客が前記乗車口ドアの付近にいることを第1条件とし、前記乗客が荷室ドアの付近から前記乗車口ドアに近づくまでの間に前記荷室ドアが開かれて閉じたこと、或いは、前記荷室の予約がキャンセルされたことを第2条件とする場合、
前記方法は、
前記第1条件と前記第2条件とがともに成立するまでは前記乗車口ドアを閉じた状態に保つことと、
前記第1条件と前記第2条件とがともに成立したことを受けて前記乗車口ドアを開く或いは前記乗車口ドアを開扉可能にすることと、を含む
ことを特徴とする乗車口ドアの開閉方法。
【請求項7】
荷室を予約した乗客に対して前記荷室の利用を提供する車両の乗車口ドアの開閉をコンピュータに制御させるプログラムであって、
前記乗客が前記乗車口ドアの付近にいることを第1条件とし、前記乗客が荷室ドアの付近から前記乗車口ドアに近づくまでの間に前記荷室ドアが開かれて閉じたこと、或いは、前記荷室の予約がキャンセルされたことを第2条件とする場合、
前記プログラムは、
前記第1条件と前記第2条件とがともに成立するまでは前記乗車口ドアを閉じた状態に保つことと、
前記第1条件と前記第2条件とがともに成立したことを受けて前記乗車口ドアを開く或いは前記乗車口ドアを開扉可能にすることと、を前記コンピュータに実行させるように構成されている
ことを特徴とする乗車口ドアの開閉プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷室を予約した乗客に対して荷室の利用を提供する車両の乗車口ドアを開閉するシステム、及び方法、並びに、上記車両の乗車口ドアの開閉をコンピュータに制御させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無人タクシーの制御に関する従来技術が開示されている。この従来技術では、乗客の接近を検知すると乗降口ドアを解錠し、さらに乗客が荷物室利用を予約している場合には荷物室ドアを解錠することが行われる。そして、乗客の乗車が完了すると各部ドアを施錠することが行われる。
【0003】
なお、本開示の技術分野における出願時の技術レベルを示す文献としては、上記特許文献1の他にも下記の特許文献2を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-020985号公報
【文献】特開2020-111896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術では、乗客が荷室を利用している間に、施錠されてない乗車口から別人が乗り込んでしまうおそれがある。さらに、日本のタクシーのように乗降口ドアが解錠とともに自動で開く場合、雨天時に車室内が濡れてしまう・不要な外気接触によりエアコン効率が悪くなってしまう等のトラブルが発生するおそれもある。また、荷室を予約していた乗客が乗車口に立ったときに乗車口ドアが自動で開くことで、乗客が思わず乗車してしまい結果的に荷物を入れそびれてしまうというトラブルの発生も予想される。さらには、乗車口ドアが自動で開くことにより、乗客が荷室をどう利用したら良いのか戸惑い、車両の発車を遅らせてしまうというトラブルの発生も予想される。
【0006】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものである。本開示は、乗客が荷室に荷物を預けて乗車する際のトラブルの発生を低減することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は乗車口ドアの開閉システムを提供する。本開示の乗車口ドアの開閉システムは、荷室を予約した乗客に対して荷室の利用を提供する車両の乗車口ドアを開閉するシステムである。本開示の乗車口ドアの開閉システムは、少なくとも1つのプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリと、少なくも1つのメモリに結合された少なくとも1つのプロセッサとを備える。乗客が乗車口ドアの付近にいることを第1条件とし、開かれた荷室ドアが閉じたこと、或いは、荷室の予約がキャンセルされたことを第2条件とする場合、少なくとも1つのプログラムは、少なくとも1つのプロセッサに以下を実行させるように構成されている。
・第1条件と第2条件とがともに成立するまでは乗車口ドアを閉じた状態に保つこと
・第1条件と第2条件とがともに成立したことを受けて乗車口ドアを開く或いは乗車口ドアを開扉可能にすること
【0008】
上記構成を備えた本開示の乗車口ドアの開閉システムによれば、第1条件と第2条件とがともに成立しない限りは乗車口ドアが開かれることはない。ゆえに、乗客が荷室を利用する前や乗客が荷室を利用している間に乗車口ドアが開くことや、乗車口ドアが開扉可能になることは防止される。
【0009】
本開示の乗車口ドアの開閉システムにおいて、上記少なくとも1つのプログラムは、上記少なくとも1つのプロセッサに、車両が乗客のもとに到着した後、乗客が荷室ドアの付近で検出されない場合、乗客に荷室の予約のキャンセルの意思を確認することを実行させるように構成されてもよい。これによれば、荷室の利用を必要としなくなった乗客に荷室の予約をキャンセルさせることができる。荷室の予約がキャンセルされれば、乗客が乗車口ドアの付近に立てば乗車口ドアが開くようになり、乗客は車内に乗り込むことができる。
【0010】
本開示の乗車口ドアの開閉システムにおいて、上記少なくとも1つのプログラムは、上記少なくとも1つのプロセッサに、車両が前記乗客のもとに到着した後、乗客が荷室ドアの付近で検出されない場合、音声或いは表示により乗客を荷室ドアへ案内することを実行させるように構成されてもよい。これによれば、荷室ドアの場所が分からない乗客を荷室ドアへ案内することができる。
【0011】
本開示の乗車口ドアの開閉システムにおいて、上記少なくとも1つのプログラムは、上記少なくとも1つのプロセッサに、以下の処理を実行させるように構成されてもよい。
・車両に設けられた開閉スイッチが押されたことを検知して荷室ドアを自動で開くこと
・開閉スイッチが再び押されたことを検知して荷室ドアを閉じること
【0012】
上記処理によれば、開閉スイッチの操作を検知して荷室ドアを開閉することで、乗客の意図と関係なく荷室ドアが誤って開くことも誤って閉じることも防ぐことができる。
【0013】
本開示の乗車口ドアの開閉システムにおいて、上記少なくとも1つのプログラムは、上記少なくとも1つのプロセッサに、以下の処理を実行させるように構成されてもよい。
・車両と乗客との間で認証が行われた場合に荷室ドアのロックを解除すること
・開かれた荷室ドアが閉じたことを受けて荷室ドアをロックすること
【0014】
上記処理によれば、荷室ドアが閉じたら荷室ドアが自動でロックされることで荷室内の荷物の安全を確保することができる。
【0015】
本開示は乗車口ドアの開閉方法を提供する。本開示の乗車口ドアの開閉方法は、荷室を予約した乗客に対して荷室の利用を提供する車両の乗車口ドアを開閉する方法である。乗客が乗車口ドアの付近にいることを第1条件とし、開かれた荷室ドアが閉じたこと、或いは、荷室の予約がキャンセルされたことを第2条件とする場合、本開示の乗車口ドアの開閉方法は、以下のステップを含む。
・第1条件と第2条件とがともに成立するまでは乗車口ドアを閉じた状態に保つこと
・第1条件と第2条件とがともに成立したことを受けて乗車口ドアを開く或いは乗車口ドアを開扉可能にすること
【0016】
上記ステップを含む本開示の乗車口ドアの開閉方法によれば、乗客が荷室を利用する前や乗客が荷室を利用している間に乗車口ドアが開くことや、乗車口ドアが開扉可能になることは防止される。
【0017】
本開示はコンピュータに実行させる乗車口ドアの開閉プログラムを提供する。本開示の乗車口ドアの開閉プログラムは、荷室を予約した乗客に対して荷室の利用を提供する車両の乗車口ドアの開閉をコンピュータに制御させるプログラムである。乗客が乗車口ドアの付近にいることを第1条件とし、開かれた荷室ドアが閉じたこと、或いは、荷室の予約がキャンセルされたことを第2条件とする場合、本開示の乗車口ドアの開閉プログラムは、以下をコンピュータに実行させるように構成されている。
・第1条件と第2条件とがともに成立するまでは乗車口ドアを閉じた状態に保つこと
・第1条件と第2条件とがともに成立したことを受けて乗車口ドアを開く或いは乗車口ドアを開扉可能にすること
【0018】
上記のように構成された本開示の乗車口ドアの開閉プログラムによれば、乗客が荷室を利用する前や乗客が荷室を利用している間に乗車口ドアが開くことや、乗車口ドアが開扉可能になることが防止されるよう、コンピュータに乗車口ドアの開閉を制御させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように本開示の技術によれば、乗客が荷室に荷物を預けて乗車する際のトラブルの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の実施形態に係る乗車口ドアの開閉方法を説明するための概略図である。
図2】本開示の実施形態に係る乗車口ドアの開閉システムが適用された車両の構成を示す概略図である。
図3】本開示の実施形態に係る乗車口ドアの開閉システムの構成を示すブロック図である。
図4】本開示の実施形態に係る乗車口ドアの開閉プログラムを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。
【0022】
1.乗車口ドアの開閉方法
まず、本開示の実施形態に係る乗車口ドアの開閉方法について説明する。本実施形態では、MaaS用の車両に本開示の乗車口ドアの開閉方法が適用される。車両は、バスのような乗合型の車両でもよいし、タクシーのような専用利用の車両でもよい。また、車両は、自律走行する自動運転車両でもよいし、監視センタの遠隔ドライバによって遠隔運転される遠隔運転車両でもよい。乗客は、例えば、MaaS車両を用いたモビリティサービスの会員となり、予約を行うことによって車両を利用可能になる。
【0023】
図1は、本実施形態に係る乗車口ドアの開閉方法(以下、本実施形態に係る開閉方法と呼ぶ)を説明するための概略図である。本実施形態に係る開閉方法が適用される車両2は、乗車口ドア6とは別に荷室ドア12が設けられ、荷室10へのアクセスは基本的に荷室ドア12からのみ行われる車両である。図1に模式的に示される車両2は、車両の側部にスライド式の乗車口ドア6を有し、車両2の後部に跳ね上げ式の荷室ドア12を有している。
【0024】
本実施形態に係る開閉方法は、荷物22を持っている乗客20が上記車両2に乗車する際の乗車口ドア6の開閉方法である。図1には、車両2と乗客20とが乗車ポイントに到着してから乗客20が車両2に乗り込むまでが3つのステップで表されている。
【0025】
図1に示すステップ1では、車両2を予約した乗客20と車両2とが乗車ポイントに到着する。乗車ポイントの一例は、バスやタクシーの乗り場のような予め定められた乗車場所である。また、乗車ポイントは、予約の際に乗客20が任意に指定した場所でもよいし、乗客20の現在位置でもよい。
【0026】
乗客20は荷物22を荷室10に積み込みたい。乗客20は、荷室10を利用したい場合、車両2の予約時に荷室10も併せて予約することを要求される。車両2と乗客20との間で認証が行われる際、乗客20が荷室10を予約している乗客かどうか確認される。乗客20が荷室10を予約していない乗客であれば、車両2は、乗客20の認証が完了すれば乗車口ドア6を開くか或いは乗車口ドア6を開扉可能にする。ここで、乗車口ドア6を開扉可能にするとは、乗車口ドア6が閉まった状態であって、乗車口ドア6のロックが解除された状態にすることを意味する。
【0027】
乗客20が荷室10を予約している乗客である場合、乗客20が乗車口ドア6の近くまできたとしても、車両2は、乗車口ドア6を開かない。乗車口ドア6を開かないとは、乗車口ドア6がアクチュ―エータによって自動で開閉される自動ドアの場合、乗車口ドア6が閉じた状態からアクチュエータを動作させないことを意味する。乗車口ドア6が乗客20によって手動で開閉される手動ドアの場合、乗車口ドア6を開かないとは、乗車口ドア6のロックを解除しないことを意味する。
【0028】
図1に示すステップ2では、乗客20が荷室ドア12を開き、荷物22を荷室10へ積み込む。荷室ドア12の開扉は乗客20が自身で行ってもよいし、アクチュエータによって自動で行われてもよい。荷室10への荷物22の積み込み後、乗客20は荷室ドア12を閉じる。荷室ドア12の閉扉は乗客20が自身で行ってもよいし、アクチュエータによって自動で行われてもよい。
【0029】
乗客20による荷室10への荷物22の積み込みが行われている間、車両2は、乗車口ドア6を閉じた状態に維持する。乗車口ドア6が自動ドアの場合、車両2は、アクチュエータを動作させないことによって乗車口ドア6を閉じた状態に維持する。乗車口ドア6が手動ドアの場合、車両2は、乗車口ドア6をロックしたままにすることによって乗車口ドア6を閉じた状態に維持する。
【0030】
図1に示すステップ3では、乗車口ドア6が開き、乗客20が客室4に乗車する。車両2は、開かれていた荷室ドア12が閉じられ、且つ、乗客20が乗車口ドア6の付近にいる場合、乗車口ドア6を開くか或いは乗車口ドア6を開扉可能にする。逆に言えば、乗客20が乗車口ドア6の付近にいたとしても、荷室ドア12が開かれたままであれば、車両2は、乗車口ドア6を閉じた状態に維持する。また、荷室ドア12が閉じられたとしても、乗客20が乗車口ドア6の付近にいなければ、車両2は、乗車口ドア6を閉じた状態に維持する。
【0031】
以上のように乗車口ドア6の開閉が制御されることにより、乗車口ドア6が自動ドアの場合、乗客20が荷室10に荷物22を積み終わって乗車口ドア6の近くにくるまで、乗車口ドア6が開けっ放しになることは防止される。また、乗車口ドア6が手動ドアの場合、乗客20が荷室10に荷物22を積み終わって乗車口ドア6の近くにくるまで、乗車口ドア6のドアが解除されることは防止される。これにより、乗客20が荷室10に荷物22を預けている間に他人が誤って乗車してしまう等のトラブルの発生を低減することができる。
【0032】
なお、車両2の予約時には荷室10を予約していたが、実際に車両2が到着したときに荷室10の利用は必要ないと考え直す乗客もいる。例えば、荷物22を客室4に持ち込めるような場合、乗客20は荷室10を利用するまでもないと考えるかもしれない。そのような乗客20に対しては荷室10の予約のキャンセルが認められる。乗客20が荷室10の予約をキャンセルした場合、車両2は、乗客20が乗車口ドア6の近くにいれば乗車口ドア6を開くか或いは乗車口ドア6を開扉可能にする。
【0033】
上記の説明のとおり本実施形態に係る開閉方法は、乗車口ドア6の開閉に関して2つの条件を有する。第1条件は、乗客20が乗車口ドア6の付近にいることである。第2条件は、開かれた荷室ドア12が閉じたこと、或いは、荷室10の予約がキャンセルされたことである。本実施形態に係る開閉方法は、第1条件と第2条件とがともに成立するまでは乗車口ドア6を閉じた状態に保つことと、第1条件と第2条件とがともに成立したことを受けて乗車口ドア6を開く或いは乗車口ドア6を開扉可能にすることとを含む。
【0034】
2.乗車口ドアの開閉システム
上述の本実施形態に係る開閉方法は、本開示の実施形態に係る乗車口ドアの開閉システム(以下、本実施形態に係る開閉システムと呼ぶ)によって実施される。以下、本実施形態に係る開閉システムについて説明する。
【0035】
図2は、本実施形態に係る開閉システムが適用された車両の構成を示す概略図である。図2Aは車両2の側面図、図2Bは車両2の平面図である。図2A及び図2Bに示すように、車両2は、乗車口ドア6に設けられた乗車口前カメラ34と、荷室ドア12に設けられた荷室ドア前カメラ32とを備える。また、車両2は、車両2の後部に設けられた荷室ドア開閉スイッチ30と、乗車口ドア6に取り付けられた案内装置36とを備える。
【0036】
乗車口前カメラ34は、その撮影範囲34aに乗車口ドア6の付近が収まるように取り付けられている。乗車口ドア6の付近にいる乗客20がいる場合、乗客20は乗車口前カメラ34によって検知される。荷室ドア前カメラ32は、その撮影範囲32aに荷室ドア12の付近が収まるように取り付けられている。荷室ドア12の付近にいる乗客20がいる場合、乗客20は荷室ドア前カメラ32によって検知される。乗車口前カメラ34の撮影範囲34aと荷室ドア前カメラ32の撮影範囲32aとは重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。
【0037】
荷室ドア開閉スイッチ30は、荷室ドア12の開閉に用いられるスイッチである。以下の説明では、荷室ドア12は、アクチュエータによって自動で開閉される自動ドアであるとする。荷室ドア12を開閉するアクチュエータは電動式でもよいし、油圧式でもよいし、バキューム式でもよい。荷室ドア12が閉じている状態で乗客20が荷室ドア開閉スイッチ30を押すことで、荷室ドア12はアクチュエータにより自動で開かれる。荷室ドア12が開いている状態で乗客20が荷室ドア開閉スイッチ30を押すことで、荷室ドア12はアクチュエータにより自動で閉じられる。荷室ドア開閉スイッチ30の操作を検知して荷室ドア12を開閉することで、乗客20の意図と関係なく荷室ドア12が誤って開くことも誤って閉じることも防ぐことができる。なお、荷室ドア開閉スイッチ30は、乗客20が指で押すボタンスイッチでもよいし、乗客20が足を入れることで反応するフットセンサでもよい。
【0038】
案内装置36は、乗客20に対して文字による案内を行うためのディスプレイと、乗客20に対して音声による案内を行うためのスピーカとを備える。ディスプレイに表示される文字情報と同内容の音声情報がスピーカから出力される。案内装置36は、乗客20が荷室10に荷物22を積み込み客室4に乗車するまでの一連の動作を案内するための文字情報及び音声情報を出力する。なお、案内装置36による具体的な案内の内容は後述する。
【0039】
また、図2Bに示すように、車両2は認証ユニット38と制御装置100とを備える。認証ユニット38は、乗客20の認証のために用いられる。車両2を予約した乗客20は、スマートフォン等の携帯端末24による移動体通信を用いてサーバから暗号キーを受け取る。暗号キーを受信した携帯端末24が車両2から一定距離の認証領域38aに入ると、認証ユニット38との近距離無線通信によって乗客20の自動認証が行われ、乗客20は車両2に乗車できるようになる。
【0040】
制御装置100は、本実施形態に係る開閉システムの中核となる装置である。ここで、図3は、本実施形態に係る開閉システムの構成を示すブロック図である。制御装置100には、乗車口前カメラ34、荷室ドア前カメラ32、荷室ドア開閉スイッチ30、及び認証ユニット38からの信号が入力される。また、制御装置100からは、乗車口ドアロック装置40、荷室ドアロック装置42、乗車口ドア開閉アクチュエータ44、荷室ドア開閉アクチュエータ46、及び案内装置36に対して信号が出力される。
【0041】
乗車口ドアロック装置40は、乗車口ドア6の解錠と施錠とを行う装置である。荷室ドアロック装置42は、荷室ドア12の解錠と施錠とを行う装置である。乗車口ドア開閉アクチュエータ44は、乗車口ドア6を自動で開閉するアクチュエータである。以下の説明では、乗車口ドア6は、アクチュエータによって自動で開閉される自動ドアであるとする。乗車口ドア開閉アクチュエータ44は電動式でもよいし、油圧式でもよいし、バキューム式でもよい。荷室ドア開閉アクチュエータ46は、荷室ドア12を自動で開閉するアクチュエータである。
【0042】
制御装置100は、少なくとも1つのプロセッサ102(以下、単にプロセッサ102と呼ぶ)とプロセッサ102に結合された少なくとも1つのメモリ104(以下、単にメモリ104と呼ぶ)とを備えるコンピュータである。メモリ104には、プロセッサ102で実行可能な少なくとも1つのプログラム106(以下、単にプログラム106と呼ぶ)とそれに関連する種々のデータ108とが記憶されている。メモリ104は主記憶装置と補助記憶装置とを含む。プログラム106及びデータ108は、主記憶装置に記憶されることもできるし、補助記憶装置であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されることもできる。
【0043】
3.乗車口ドアの開閉プログラム
本開示の実施形態に係る乗車口ドアの開閉プログラム(以下、本実施形態に係る開閉プログラムと呼ぶ)は、メモリ104に記憶されたプログラム106の1つである。本実施形態に係るプログラムは、プロセッサ102により実行されることで、制御装置100を乗車口ドアの開閉システムとして機能させる。以下、本実施形態に係る開閉プログラムについて説明する。
【0044】
図4は、本実施形態に係る開閉プログラムを説明するためのフローチャートである。このフローチャートにおいて、実線の枠は本実施形態に係る開閉システムとしての制御装置100の処理を示し、破線の枠は乗客20の動作を示し、一点鎖線の枠は案内装置36の案内内容を示している。
【0045】
まず、制御装置100は、乗客20と車両2との間での自動認証の完了を判定する(ステップS101)。車両2を予約した乗客20の携帯端末24には、認証サーバから暗号キーが送信される。乗客20がその携帯端末24を持って認証領域38aに入ることで、認証ユニット38による乗客20の自動認証が行われる。自動認証の完了を受けて、制御装置100は、乗車口ドアロック装置40と荷室ドアロック装置42とをそれぞれ作動させて乗車口ドア6と荷室ドア12のロックをそれぞれ解除する(ステップS102)。
【0046】
次に、制御装置100は、乗客20が荷室10を予約している乗客かどうか判定する(ステップS103)。乗客20が荷室10を予約しているかどうかは、例えば、サーバに問い合わせることによって判定してもよい。また、サーバから乗客20の携帯端末24に送信される暗号キーを荷室10の予約の有無によって異ならせることにより、乗客20が荷室10を予約しているかどうか判定してもよい。
【0047】
乗客20が荷室10を予約している場合、制御装置100は、乗客20が荷室ドア12の付近にいるかどうか判定する(ステップS104)。乗客20が荷室ドア12の付近にいるかどうかは、荷室ドア前カメラ32に乗客20が映っているかどうかによって判定される。或いは、近距離無線通信を用いた携帯端末24の車両2からの距離と方向の計測により、携帯端末24を所持する乗客20が荷室ドア12の付近にいるかどうか判定してもよい。
【0048】
乗客20が荷室ドア12の付近にいる場合、制御装置100は、荷室ドア開閉スイッチ30からの信号の入力を待つ。荷物22を荷室10に積み込みたい乗客20は、荷室ドア12を開けるために荷室ドア開閉スイッチ30を押す(ステップS105)。荷室ドア開閉スイッチ30からの信号の入力を受けて、制御装置100は、荷室ドア開閉アクチュエータ46を作動させて荷室ドア12を開く(ステップS106)。
【0049】
乗客20は、荷室ドア12が開いてアクセス可能となった荷室10へ荷物22を積み込む(ステップS107)。そして、荷室10への荷物22の積み込みが完了すると、乗客20は、荷室ドア12を閉めるために再び荷室ドア開閉スイッチ30を押す(ステップS108)。荷室ドア開閉スイッチ30からの信号の入力を受けて、制御装置100は、荷室ドア開閉アクチュエータ46を作動させて荷室ドア12を閉じ、さらに、荷室ドアロック装置42を作動させて荷室ドア12をロックする(ステップS109)。荷室ドア12が閉じたら荷室ドア12が自動でロックされることで、荷室10内の荷物22の安全を確保することができる
【0050】
荷物22を積み込み終わった乗客20は、乗車するために乗車口ドア6に近づく(ステップS110)。制御装置100は、乗客20が乗車口ドア6に近づいたことを乗車口前カメラ34に乗客20が映っているかどうかによって判定する。或いは、近距離無線通信を用いた携帯端末24の車両2からの距離と方向の計測により、携帯端末24を所持する乗客20が乗車口ドア6に近づいたかかどうか判定してもよい。
【0051】
乗客20が乗車口ドア6に近づいたことが確認されたことを受けて、制御装置100は乗車口ドア開閉アクチュエータ44を作動させて乗車口ドア6を開く(ステップS118)。自動認証の完了後、乗車口ドア6はこのとき初めて開く。乗客20は、開いた乗車口ドア6から客室4に乗り込むことができるようになる(ステップS119)。
【0052】
乗客20が荷室10を予約しているにも関わらず乗客20が荷室ドア12の付近にいない場合、ステップS104の判定は否定になる。この場合、制御装置100は、案内装置36による案内を行う(ステップS111)。案内装置36は、「荷室を予約されています。利用しますか?」とディスプレイに表示するとともに、スピーカから音声を流す。また、同時に、制御装置100は、携帯端末24に同内容の案内を表示させるとともに、「はい(利用する)」と「キャンセル(今すぐ乗る)」の2つの選択肢を表示させる。制御装置100による携帯端末24への案内と選択肢の表示は、近距離無線通信によって直接行ってもよいし、サーバを介した移動体通信によって間接的に行ってもよい。
【0053】
制御装置100は、乗客20による荷室10を利用するかどうかの選択を待つ(ステップS112)。乗客20が「はい」を選択したことが検知された場合、制御装置100は、案内装置36による案内を行う(ステップS113)。案内装置36は、「車両後方へ行き、荷室ドア開閉スイッチを押してください。」とディスプレイに表示するとともに、スピーカから音声を流す。また、同時に、制御装置100は、携帯端末24に同内容の案内を表示させる。
【0054】
案内装置36及び携帯端末24によって案内され、乗客20は荷室ドア12に近づく(ステップS114)。荷物22を荷室10に積み込みたい乗客20は、荷室ドア12を開けるために荷室ドア開閉スイッチ30を押す(ステップS105)。これ以降の制御装置100の処理、及び、乗客20の動作は前述の通りである。ステップS106,S107,S108,S109,S110,S118を経て、乗客20は、開いた乗車口ドア6から客室4に乗り込むことができるようになる(ステップS119)。
【0055】
一方、ステップS112において、乗客20が「キャンセル」を選択したことが検知された場合、制御装置100は、乗客20に荷室10の予約のキャンセルの意思があると判断する。予約のキャンセル処理の後、制御装置100は、乗客20が乗車口ドア6の付近にいるかどうか判定する(ステップS115)。乗客20が乗車口ドア6の付近にいるかどうかは、乗車口前カメラ34に乗客20が映っているかどうかによって判定される。或いは、近距離無線通信を用いた携帯端末24の車両2からの距離と方向の計測により、携帯端末24を所持する乗客20が乗車口ドア6の付近にいるかどうか判定してもよい。
【0056】
乗客20が乗車口ドア6の付近にいる場合、制御装置100は乗車口ドア開閉アクチュエータ44を作動させて乗車口ドア6を開く(ステップS118)。乗客20は、開いた乗車口ドア6から客室4に乗り込むことができるようになる(ステップS119)。
【0057】
乗客20が乗車口ドア6の付近にいない場合、制御装置100は、案内装置36による案内を行う(ステップS116)。案内装置36は、「乗車口ドアの前までお進みください。」とディスプレイに表示するとともに、スピーカから音声を流す。また、同時に、制御装置100は、携帯端末24に同内容の案内を表示させる。
【0058】
案内装置36及び携帯端末24によって案内され、乗客20は乗車口ドア6に近づく(ステップS117)。乗客20が乗車口ドア6に近づいたことが確認されたことを受けて、制御装置100は乗車口ドア開閉アクチュエータ44を作動させて乗車口ドア6を開く(ステップS118)。乗客20は、開いた乗車口ドア6から客室4に乗り込むことができるようになる(ステップS119)。
【0059】
以上説明した制御装置100の処理、及び、乗客20の動作は、乗客20が荷室10を予約していた場合の処理及び動作である。乗客20が初めから荷室10を予約していない場合、ステップS103の判定は否定になる。この場合、制御装置100は、乗客20が乗車口ドア6の付近にいるかどうか判定する(ステップS115)。乗客20が乗車口ドア6の付近にいれば、制御装置100は乗車口ドア6を開く(ステップS118)。乗客20が乗車口ドア6の付近にいなければ、制御装置100は、案内装置36及び携帯端末24によって乗客20を乗車口ドア6に案内する(ステップS116)。そして、乗客20が乗車口ドア6に近づいたことを受けて(ステップS117)、制御装置100は乗車口ドア6を開く(ステップS118)。乗客20は、開いた乗車口ドア6から客室4に乗り込むことができるようになる(ステップS119)。
【0060】
4.その他の実施形態
上述の実施形態では、車載の制御装置100によって乗車口ドア6の開閉に処理が行われているが、乗車口ドア6の開閉に係る判断はサーバにて行い、判断に基づくアクチュエータの制御を制御装置100にて行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
2 車両
4 客室
6 乗車口ドア
10 荷室
12 荷室ドア
20 乗客
22 荷物
30 荷室ドア開閉スイッチ
32 荷室ドア前カメラ
34 乗車口前カメラ
36 案内装置
38 認証ユニット
100 制御装置
図1
図2
図3
図4