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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】車線変更支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20241106BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B60W40/08
B60W30/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021115657
(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公開番号】P2023012171
(43)【公開日】2023-01-25
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健太郎
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-103769(JP,A)
【文献】特開2017-102519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行中の車線から隣接する車線に自動的に車線変更するための車線変更制御を実行可能に構成される制御ユニットを備える車線変更支援装置であって、
前記制御ユニットは、
所定の操作位置に操作されることにより前記車線変更制御を開始させるための操作部が、前記操作位置に継続して保持される保持時間を計時し、
計時した前記保持時間が予め設定された所定の閾値時間に達すると、前記車線変更制御を開始し、
前記車線変更制御の実行中に、前記車両の運転者の前記車線変更支援装置に対する操作の習熟度を算出するとともに、次回の車線変更制御に用いる前記閾値時間を前記習熟度に基づいて設定
前記習熟度は、前記車線変更制御の実行中における前記運転者の運転状況、及び前記車線変更制御の終了状態に基づいて算出される、
車線変更支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車線変更支援装置であって、
前記制御ユニットは、
前回の前記車線変更制御の実行中に算出した前回の習熟度と、今回の前記車線変更制御の実行中に算出した今回の習熟度とを比較し、
前記今回の習熟度が前記前回の習熟度よりも向上している場合は、次回の車線変更制御に用いる前記閾値時間を短縮し、
前記今回の習熟度が前記前回の習熟度よりも低下している場合は、次回の車線変更制御に用いる前記閾値時間を延長する、
車線変更支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車線変更支援装置であって、
前記運転者の運転状況は、前記運転者の保舵状況及び、周辺車両状況を含む、
車線変更支援装置。
【請求項4】
請求項に記載の車線変更支援制御であって、
前記習熟度は、前記運転者の保舵状況から求められる前記習熟度に関する評価点数と、前記周辺車両状況から求められる前記習熟度に関する評価点数と、前記車線変更制御の終了状態から求められる前記習熟度に関する評価点数と、に基づいて、算出される、
車線変更支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両を走行中の車線から隣接する車線に自動的に車線変更させる車線変更支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両を走行中の車線から隣接する車線に自動的に車線変更させる車線変更支援装置が開示されている。車線変更支援装置は、ドライバーによる操作レバーの操作を検出し、該操作レバーが所定の操作位置に継続的に保持されている保持時間を計時する。計時した保持時間が所定の閾値時間に達すると、車線変更支援装置は車線変更制御を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-103769号公報
【発明の概要】
【0004】
車線変更支援装置において、制御開始の判定に用いる閾値時間が長く設定されていると、ドライバーが車線変更の開始を意図したタイミングと、実際に車線変更制御が開始されるタイミングとに差異が生じる場合がある。また、状況によっては、車線変更制御を開始するより前に自車両と周辺車両との位置関係が変化することで、車線変更を実行できない場合もある。その結果、装置の使用性が損なわれたり、或いは、ドライバーに煩わしさを与えたりする可能性がある。
【0005】
一方、閾値時間が短く設定されていると、ドライバーによる装置の使用意図が明確でない状況、或いは、ドライバーが周辺状況の確認を怠っているような状況であっても、装置が作動してしまう場合があり、安全性に影響を与える可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、制御開始の判定に用いる閾値時間を適切に設定することにより、車線変更制御の開始タイミングの最適化を図ることができる車線変更支援装置を提供することである。
【0007】
本発明の車線変更支援装置は、
車両(VS)を走行中の車線から隣接する車線に自動的に車線変更するための車線変更制御(LCA制御)を実行可能に構成された制御ユニット(10)を備え、
前記制御ユニット(10)は、
所定の操作位置に操作されることにより前記車線変更制御(LCA制御)を開始させるための操作部(80)が、前記操作位置(P1L,P1R)に継続して保持される保持時間(Th)を計時し、
計時した前記保持時間(Th)が予め設定された所定の閾値時間(Tv)に達すると、前記車線変更制御(LCA制御)を開始し、
前記車線変更制御(LCA制御)の実行中に、前記車両の運転者の前記車線変更支援装置に対する操作の習熟度(L)を算出するとともに、次回の車線変更制御(LCA制御)に用いる前記閾値時間(Tv)を前記習熟度(L)に基づいて設定する。
【0008】
以上の構成によれば、制御ユニット(10)は、車線変更制御(LCA制御)の実行中にドライバーの習熟度を算出し、算出した習熟度に応じて次回の車線変更制御に用いる閾値時間(Tv)を適宜に更新する。これにより、車線変更制御(LCA制御)を安全、且つ、効率的に実行できるようになり、車線変更支援装置の使用性を高めることができる。
【0009】
本発明の車両変更支援装置の他の態様において、
前記制御ユニット(10)は、
前回の前記車線変更制御(LCA制御)の実行中に算出した前回の習熟度(Ln―1)と、今回の前記車線変更制御(LCA制御)の実行中に算出した今回の習熟度(L)とを比較し、
前記今回の習熟度(L)が前記前回の習熟度(Ln―1)よりも向上している場合は、次回の車線変更制御に用いる前記閾値時間(Tv)を短縮し、
前記今回の習熟度(L)が前記前回の習熟度(Ln―1)よりも低下している場合は、次回の車線変更制御に用いる前記閾値時間(Tv)を延長する。
【0010】
本態様によれば、閾値時間(Tv)を、ドライバーの習熟度に応じて適宜に延長又は短縮できるようになり、ドライバーに寄り添った車線変更制御(LCA制御)を実現することができる。
【0011】
本発明の車線変更支援装置の他の態様において、
前記習熟度(L)は、前記車線変更制御(LCA制御)の実行中における前記運転者の運転状況に基づいて求められる評価結果(S)、及び前記車線変更制御(LCA制御)の終了状態に基づいて求められる評価結果(R)、に基づいて、算出される。この場合、前記運転者の運転状況は、前記運転者の保舵状況及び周辺車両状況を含むと良い。
【0012】
本態様によれば、習熟度は、車線変更制御の実行中におけるドライバーの運転状況、例えば保舵状況(ドライバーがステアリングホイールを保持しているか否か)及び周辺車両状況(ドライバーが周辺車両状況を確認しながらLCA制御を実行しようとしているか否か)に基づいて、算出される。このため、車線変更制御の実行中におけるドライバーの行動を反映した適切な習熟度を算出することができる。また、習熟度は、車線変更制御の終了状態(正常終了したか異常終了したか)に基づいて、算出される。このため、車線変更制御の安全性に対するドライバーの認識を反映した適切な習熟度を算出することができる。
【0013】
本発明の車線変更支援装置の他の態様において、
前記習熟度(L)は、前記運転者の保舵状況から求められる前記習熟度に関する評価点数と、前記周辺車両状況から求められる前記習熟度に関する評価点数と、前記車線変更制御の終了状態から求められる前記習熟度に関する評価点数と、に基づいて、算出される。
【0014】
本態様によれば、習熟度が評価点数に基づいて数値化されるため、習熟度を定量的に算出することができる。このため客観的に習熟度を算出でき、汎用性を持たせることができる。
【0015】
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る車両の車線変更支援装置の概略構成図である。
図2】レーダセンサおよびカメラセンサの取り付け位置を説明する平面図である。
図3】車線関連車両情報を説明するための図である。
図4】方向指示器操作レバーの作動を説明するための図である。
図5】車線変更制御を実行するときのドライバーの方向指示器操作レバーの操作のタイミング等の例を説明するタイムチャートである。
図6】車線変更制御ルーチンの具体的な処理を説明するフローチャートである。
図7】習熟度評価及び、閾値時間の更新処理を実施するための各機能要素を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本実施形態に係る車線変更支援装置(以下、「本実施装置」とも称する。)を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0018】
[構成]
図1に示すように、本実施装置は、運転支援ECU10(制御ユニット)、ブレーキECU40、ステアリングECU50、メータECU60及び、ナビゲーションECU70を備えている。ECU10、40、50、60及び、70は、マイクロコンピュータを主要部として備えるとともに、図示しないCAN(Controller Area Network)を介して相互に送受信可能に接続されている。なお、ECUは、Electronic Control Unitの略である。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含み、CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。ECU10、40、50、60及び70の幾つか又は全ては一つのECUにコントローラとして統合されてもよい。以下では、本実施装置が搭載された車両を「自車両VS」と称する。
【0019】
運転支援ECU10は、ドライバーの運転支援を行う中枢となる制御装置であって、本実施形態では車線変更制御を実施する。運転支援ECU10は、周囲センサ20、操舵角センサ30、操舵トルクセンサ31、車速センサ32、アクセルセンサ33、ブレーキセンサ34、ヨーレートセンサ35、手放しセンサ36等の各種センサやスイッチに接続されており、これらのセンサ及びスイッチからの信号を所定の周期が経過する毎に取得するようになっている。
【0020】
操舵角センサ30は、不図示のステアリングホイール(又は、ステアリングシャフト)の操舵角θを検出する。操舵トルクセンサ31は、ステアリングホイールの操作により自車両VSのステアリングシャフト(不図示)に作用する操舵トルクを検出する。車速センサ32は、自車両VSの走行速度(車速)を検出する。アクセルセンサ33は、不図示のアクセルペダルの操作量を検出する。ブレーキセンサ34は、不図示のブレーキペダルの操作量を検出する。ヨーレートセンサ35は、自車両VSのヨーレートを検出する。
【0021】
周囲センサ20は、レーダセンサ21と、カメラセンサ22とを含む。具体的には、図2に示すように、レーダセンサ21は、中央前方レーダセンサ21FC、右前方レーダセンサ21FR、左前方レーダセンサ21FL、右後方レーダセンサ21RR及び、左後方レーダセンサ21RLを備えている。各センサ21FC,21FR,21FL,21RR,21RLは、本実施形態においてレーダセンサであるが、それに代えて、例えば、クリアランスソナーなど、他のセンサを採用することもできる。
【0022】
中央前方レーダセンサ21FCは、車体のフロント中央部に設けられており、自車両VSの前方領域に存在する立体物を検出する。右前方レーダセンサ21FRは、車体の右前コーナー部に設けられており、主に自車両VSの右前方領域に存在する立体物を検出する。左前方レーダセンサ21FLは、車体の左前コーナー部に設けられており、主に自車両VSの左前方領域に存在する立体物を検出する。右後方レーダセンサ21RRは、車体の右後コーナー部に設けられており、主に自車両VSの右後方領域に存在する立体物を検出する。左後方レーダセンサ21RLは、車体の左後コーナー部に設けられており、主に自車両VSの左後方領域に存在する立体物を検出する。
【0023】
各レーダセンサ21FC,21FR,21FL,21RR,21RLは、その検出領域が互いに異なるだけであり、基本的には互いに同じ構成である。なお、本開示は、各レーダセンサ21FC,21FR,21FL,21RR,21RLが互いに異なる構成であることを排除しない。また、以下、各レーダセンサ21FC,21FR,21FL,21RR,21RLを個々に区別する必要が無い場合には、それらを単にレーダセンサ21と呼ぶこともある。
【0024】
レーダセンサ21は、レーダ送受信部と信号処理部(図示略)とを備えており、レーダ送受信部が、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する。)を放射し、放射範囲内に存在する立体物(例えば、他車両、歩行者、自転車、建造物など)によって反射されたミリ波(即ち、反射波)を受信する。信号処理部は、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及びミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間等に基づいて、自車両VSと立体物との距離、自車両VSと立体物との相対速度、自車両VSに対する立体物の相対位置(方向)等を表す情報(以下、周辺情報と呼ぶ)を所定時間の経過毎に取得して運転支援ECU10に供給する。この周辺情報によって、自車両VSと立体物との距離における前後方向成分と横方向成分及び、自車両VSと立体物との相対速度における前後方向成分と横方向成分とを検出することができる。
【0025】
カメラセンサ22は、カメラ部及び、カメラ部によって撮影して得られた画像データを解析して道路の白線を認識するレーン認識部を備えている。カメラセンサ22(カメラ部)は、自車両VSの前方の風景を撮影する。カメラセンサ22(レーン認識部)は、認識した白線に関する情報を運転支援ECU10に供給する。
【0026】
運転支援ECU10は、カメラセンサ22から供給される情報に基づいて、図3に示すように、自車両VSが走行している車線における左右の白線WLの幅方向の中心位置となる車線中心ラインCLを設定する。また、運転支援ECU10は、車線中心ラインCLのカーブの曲率Cuを演算する。
【0027】
また、運転支援ECU10は、左右の白線WLで区画される車線における自車両VSの位置および向きを演算する。例えば、運転支援ECU10は、図3に示すように、自車両VSの基準点P(例えば、重心位置)と車線中心ラインCLとの道路幅方向の距離Dy、つまり、自車両VSが車線中心ラインCLに対して道路幅方向にずれている距離(横偏差)Dyを演算する。また、運転支援ECU10は、車線中心ラインCLの方向と自車両VSの向いている方向とのなす角度、つまり、車線中心ラインCLの方向に対して自車両VSの向いている方向が水平方向に傾いている角度(ヨー角)θyを演算する。以下、曲率Cu、横偏差Dy及び、ヨー角θyを表す情報(Cu、Dy、θy)を車線関連車両情報と呼ぶ。
【0028】
カメラセンサ22は、自車両VSの車線に限らず隣接する車線も含めて、検出した白線の種類(実線、破線)、隣り合う左右の白線間の距離(車線幅)、白線の形状等、白線に関する情報についても運転支援ECU10に供給する。白線が実線の場合は、車両がその白線を跨いで車線変更することは禁止されている。一方、白線が破線(一定の間隔で断続的に形成されている白線)の場合は、車両がその白線を跨いで車線変更することは許可されている。こうした車線関連車両情報(Cu、Dy、θy)、および、白線に関する情報を総称して車線情報と呼ぶ。
【0029】
なお、本実施形態においては、運転支援ECU10が車線関連車両情報(Cu、Dy、θy)を演算するが、それに代えて、カメラセンサ22が車線関連車両情報(Cu、Dy、θy)を演算して、その演算結果を運転支援ECU10に供給するように構成してもよい。
【0030】
ここで、カメラセンサ22は、画像データに基づいて自車両VSの前方に存在する立体物を検出することもできる。このため、カメラセンサ22は、車線情報に加えて、前方の周辺情報を演算により取得するようにしてもよい。この場合、例えば、中央前方レーダセンサ21FC、右前方レーダセンサ21FR及び、左前方レーダセンサ21FLによって取得された周辺情報と、カメラセンサ22によって取得された周辺情報とを合成して、検出精度の高い前方の周辺情報を生成する合成処理部(図示略)を設け、この合成処理部で生成された周辺情報を、自車両VSの前方の周辺情報として運転支援ECU10に供給するようにするとよい。
【0031】
図1に戻り、ブレーキECU40は、ブレーキアクチュエータ41に接続されている。ブレーキアクチュエータ41は、ブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧する図示しないマスタシリンダと、左右前後輪に設けられる摩擦ブレーキ機構42との間の油圧回路に設けられる。摩擦ブレーキ機構42は、車輪に固定されるブレーキディスク42aと、車体に固定されるブレーキキャリパ42bとを備える。ブレーキアクチュエータ41は、ブレーキECU40からの指示に応じてブレーキキャリパ42bに内蔵されたホイールシリンダに供給する油圧を調整し、その油圧によりホイールシリンダを作動させることによりブレーキパッドをブレーキディスク42aに押し付けて摩擦制動力を発生させる。なお、ブレーキシステムは、図示例のディスク式ブレーキに限定されず、ドラム式ブレーキ等であってもよい。
【0032】
ステアリングECU50は、電動パワーステアリング装置の制御装置であって、モータドライバ51及び、方向指示器スイッチ(方向指示器SW)90に接続されている。モータドライバ51は、転舵用モータ52に接続されている。転舵用モータ52は、ステアリング機構53(例えば、ラックアンドピニオン機構)に組み込まれている。ステアリングECU50は、操舵トルクセンサ31によって、ドライバーがステアリングホイール(図示略)に入力した操舵トルクを検出し、この操舵トルクに基づいて、モータドライバ51の通電を制御することにより、転舵用モータ52を駆動させる。この転舵用モータ52の駆動によってステアリング機構53に操舵トルクが付与されることで、操舵アシストトルクを発生させることができる。
【0033】
運転支援ECU10は、ステアリングECU50に対して操舵指令を送信可能に構成されている。ステアリングECU50は、操舵指令を受信すると、当該指令に応じて転舵用モータ52を駆動(制御)する。これにより、運転支援ECU10は、ステアリングECU50を介して転舵輪の転舵角を自動的に変更することができる。
【0034】
メータECU60は、左右の方向指示器61と接続されている。メータECU60は、図示しない駆動回路を介して、方向指示器SW90からの信号に応じて左又は右の方向指示器61を点滅させる。例えば、メータECU60は、方向指示器操作レバー80が左回りに操作されていることを示す信号を方向指示器SW90が出力しているとき、左の方向指示器61を点滅させる。また、メータECU60は、方向指示器操作レバー80が右回りに操作されていることを示す信号を方向指示器SW90が出力しているとき、右の方向指示器61を点滅させる。
【0035】
ナビゲーションECU70は、自車両VSの現在位置を検出するためのGPS信号を受信するGPS受信機71、地図情報等を記憶した地図データベース72及び、タッチパネル(タッチパネル式ディスプレイ)73に接続されている。ナビゲーションECU70は、GPS信号に基づいて現時点の自車両VSの位置を特定するとともに、自車両VSの位置及び地図データベース72に記憶されている地図情報等に基づいて各種の演算処理を行い、タッチパネル73を用いて経路案内を行う。
【0036】
地図データベース72に記憶されている地図情報には、道路情報が含まれている。道路情報には、その道路の区間毎における道路の形状を示すパラメータ(例えば、道路の曲がり方の程度を示す道路の曲率半径又は曲率、道路の車線幅など)が含まれている。また、道路情報には、自動車専用道路であるか否かを区別することができる道路種別情報、車線数情報及び、中央分離帯が設けられているか否かを区別することができる中央分離帯情報も含まれている。
【0037】
運転支援ECU10には、警報器75及び、表示器76が接続されている。
【0038】
警報器75は、運転支援ECU10からの鳴動信号を入力して鳴動する。運転支援ECU10は、ドライバーに対して運転支援状況を知らせる場合及び、又はドライバーに対して注意を促す場合等において警報器75を鳴動させる。
【0039】
表示器76は、例えば、運転席の正面に設けられたマルチインフォーメーションディスプレイであって、車速等のメータ類の計測値の表示に加えて、各種の情報を表示する。表示器76は、例えば、運転支援ECU10から運転支援状態に応じた表示指令を受信すると、その表示指令で指定された画面を表示器76に表示させる。なお、表示器76としては、マルチインフォーメーションディスプレイに代えて、あるいは、加えて、ヘッドアップディスプレイ(図示略)を採用することもできる。ヘッドアップディスプレイを採用する場合には、ヘッドアップディスプレイの表示を制御する専用のECUを設けるとよい。
【0040】
手放しセンサ36は、ドライバーがステアリングホイールを握っていないことを検出するセンサである。手放しセンサ36は、ドライバーがステアリングホイールを握っているか否かを表す手放し検出信号を運転支援ECU10に送信する。運転支援ECU10は、後述する車線変更制御の実行中において、ドライバーのステアリングホイールを握っていない状態が予め設定された手放し判定時間以上継続した場合、「手放し状態」であると判定する。運転支援ECU10は、手放し状態であると判定した場合、警報器75を鳴動させて、ドライバーに対して注意喚起する。この注意喚起を、「保舵要求」と呼ぶ。なお、「保舵要求」は、表示器76による表示によって行ってもよい。
【0041】
方向指示器操作レバー80(以下、操作レバー80と略す)は、方向指示器61を作動(点滅)させるための操作装置であり、例えばステアリングコラム等に設けられている。また、操作レバー80には、方向指示器SW90が設けられている。操作レバー80は、右回り操作方向、および、左回り操作方向のそれぞれについて、支軸周りに2段の操作ストロークにて回動可能に設けられる。
【0042】
具体的には、図4に示すように、操作レバー80は、右回り操作方向及び、左回り操作方向のそれぞれについて、中立位置PNから第1ストローク回動した(支軸Oの周りに第1角度θW1回動した)位置である第1操作位置P1L(P1R)と、中立位置PNから第1操作位置P1L(P1R)よりも深い第2ストローク回動した(支軸Oの周りに第2角度θW2(>θW1)回動した)位置である第2操作位置P2L(P2R)とに選択的に操作可能に構成される。操作レバー80が第1操作位置P1L(P1R)又は、第2操作位置P2Lに操作されている間、操作レバー80が操作された方向の方向指示器61が点滅し、操作レバー80が中立位置PNにある間、方向指示器61は消灯する。
【0043】
操作レバー80は、ドライバーによって第1操作位置P1L(P1R)にまで倒された場合には、ドライバーにクリック感を与えるとともに、その状態から操作レバー80への操作力が解除されると、バネ等の戻し機構(図示略)によって機械的に中立位置PNに戻される。また、操作レバー80は、ドライバーによって第2操作位置P2L(P2R)にまで倒された場合には、機械的なロック機構(図示略)によって、操作力が解除されても第2操作位置P2L(P2R)で保持される。
【0044】
操作レバー80は、第2操作位置P2L(P2R)に保持されている状態で、ステアリングホイールが逆回転して中立位置に戻された場合、或いは、ドライバーが操作レバー80を中立位置PN側に戻し操作した場合に、ロック機構によるロックが解除されて中立位置PNに戻される。つまり、操作レバー80は、第2操作位置P2L(P2R)に操作された場合、従来から一般的に実施されている方向指示器点滅装置と同様な作動をする。以下、操作レバー80が第1操作位置P1L(P1R)にまで倒される操作を「浅押し操作」と呼び、操作レバー80が第2操作位置P2L(P2R)にまで倒される操作を「深押し操作」と呼ぶ。
【0045】
方向指示器SW90は、操作レバー80が第1操作位置P1L(P1R)に浅押し操作れている場合にのみオンする第1スイッチ91L(91R)と、操作レバー80が第2操作位置P2L(P2R)に深押し操作されている場合にのみオンする第2スイッチ92L(92R)とを備えている。
【0046】
第1スイッチ91L(91R)は、操作レバー80が第1操作位置P1L(P1R)に位置している間、オン信号を運転支援ECU10に送信する。第2スイッチ92L(92R)は、操作レバー80が第2操作位置P2L(P2R)に位置している間、オン信号を運転支援ECU10に送信する。上記説明において、符号に括弧を付している操作位置およびスイッチは、右回り操作方向に関する操作位置およびスイッチを表している。
【0047】
運転支援ECU10は、操作レバー80の浅押し操作の有無、つまり、第1スイッチ91L(91R)のオン/オフ状態を表すモニタ信号、および、操作レバー80の深押し操作の有無、つまり、第2スイッチ92L(92R)のオン/オフ状態を表すモニタ信号を受信する。以下、第1スイッチ91L(91R)のオン/オフ状態を表すモニタ信号を「浅押し操作モニタ信号」と呼び、第2スイッチ92L(92R)のオン/オフ状態を表す「深押し操作モニタ信号」と呼ぶ。この浅押し操作モニタ信号、および、深押し操作モニタ信号には、操作レバー80の操作方向(左右方向)を特定する信号も含まれている。
【0048】
運転支援ECU10は、浅押し操作モニタ信号のオン継続時間、言い換えれば、操作レバー80がドライバーによって第1操作位置P1L(P1R)に継続して保持されている時間(以下、保持時間Thと呼ぶ)を計時する。また、運転支援ECU10は、計時した保持時間Thが予め設定した所定の閾値時間Tvに達したか否かを判定する。運転支援ECU10は、保持時間Thが閾値時間Tvに達すると、ドライバーの車線変更要求を確定し、車線変更制御を開始する。以下、車線変更制御をLCA制御(レーン・チェンジ・アシスト制御)と呼ぶ。
【0049】
[LCA制御]
LCA制御は、自車両VSが、現在走行中の車線(以下、元車線)からドライバーが希望する自車線に隣接する車線(以下、目標車線)に移動するように、転舵用モータ52を作動させて操舵トルクをステアリング機構53に付与することにより自車両VSの舵角を変更し、以て、ドライバーの操舵操作(ステアリングホイールの操作)を支援する制御である。従って、LCA制御によれば、ドライバーの操舵操作を必要とせずに、自車両VSを元車線から目標車線に自動的に車線変更することができる。
【0050】
LCA制御は、例えば、ドライバーの操作レバー80の操作に基づいて、自車両VSを所定の時間にて元車線から目標車線へと道路の幅方向に移動させるように、元車線の車線中央ラインを基準とした「自車両VSの目標横位置」をLCA制御開始からの時間tの関数として設定し、自車両VSの横位置をその目標横位置に一致させるように自車両VSの舵角を変更する制御である。
【0051】
図5は、自車両VSが右側の目標車線に車線変更を行うLCA制御を実行するときのドライバーの操作レバー80の操作のタイミング等の例を説明するタイムチャートである。なお、自車両VSが左側の目標車線に車線変更を行う場合の操作レバー80の操作のタイミング等の例は、図5の例と操作レバー80の操作及び車線変更の方向が異なること以外同様である。
【0052】
時刻t1にて操作レバー80を第1操作位置P1Rに保持する保持操作に伴って、右の方向指示器61が点滅する。次いで、時刻t2にて操作レバー80が第1操作位置P1Rに継続的に保持されている保持時間Thが閾値時間Tvに達すると、運転支援ECU10は、ドライバーの右側車線への車線変更要求が確定したと判定する。車線変更要求が確定すると、運転支援ECU10は、LCA制御を開始し、所定の実行許可条件が成立するかを判定する。
【0053】
ここで、LCA制御の実行許可条件としては、例えば以下の(1)~(4)が挙げられる。
(1)車線変更先の目標車線に他車両が存在しないこと。
(2)車線変更先の目標車線に所定時間以内に後方から接近する他車両が存在しないこと。
(3)カメラセンサ22が元車線に対する自車両VSの車線幅方向の相対位置を認識しており、且つ、操作レバー80の操作方向の白線(元車線と目標車線との境界となる白線)が破線であること。
(4)道路がLCA制御を実行可能な自動車専用道路(作動対象道路)であること。
【0054】
条件(1)は、自車両VSと目標車線を走行する他車両との相対速度に基づいて、車線変更後における両車両の車間距離が適正に確保されると推定される場合に成立する。条件(2)は、目標車線における自車両VSの死角領域に所定時間以内に進入すると予測される他車両が存在しない場合に成立する。他車両との相対速度は、例えば、周囲センサ20によって取得すればよい。
【0055】
条件(4)については、例えば、GPS受信機71で受信した自車両VSの現在位置と、地図データベース72に記憶されている地図情報(道路情報)とに基づいて、自車両VSが走行している道路が作動対象道路であるかを判定すればよい。なお、LCA制御の実行許可条件は、これらの条件(1)~(4)に限るものでは無く、任意に設定することができる。例えば、条件(1)~(4)に加え、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)制御を実行中であるという条件、及び、LTA(レーン・トレーシング・アシスト)制御を実行中であるという条件、を加えても良い。
【0056】
運転支援ECU10は、実行許可条件(1)~(4)の全てが成立すると、LCA制御による転舵用モータ52の作動を開始する。一方、運転支援ECU10は、車線変更要求の確定後、所定の受付拒否時間Tcが経過するまでの間に、実行許可条件(1)~(4)の全てが成立しない場合、LCA制御の実行による転舵用モータ52の作動を禁止(キャンセル)する。
【0057】
時刻t2でLCA制御による転舵用モータ52の作動が開始されると、自車両VSは、操作レバー80の操作方向に位置する右側の目標車線に向かって移動し、元車線と目標車線との境界となる白線WBL(破線)を跨いで目標車線に進入する。
【0058】
時刻t3にて、自車両VSが白線WBL(破線)を跨いで目標車線に進入すると、運転支援ECU10は、周囲センサ20の検出結果に基づいて、自車両VSに対して後方から所定時間以内に接近する他車両(以下、「後方接近車両」と呼ぶ)が存在するか否かを判定する。目標車線に「後方接近車両」が存在する場合、運転支援ECU10は、ドライバーに対して「車両接近警報」を行うとともに、LCA制御を中止し、自車両VSを元車線へと移動(復帰)させる。「車両接近警報」は、警報器75及び表示器76の何れか一方又は両方で行えばよい。後方接近車両が存在しない場合、運転支援ECU10はLCA制御を継続する。
【0059】
時刻t4にて、所定の方向指示器消灯条件が成立すると、運転支援ECU10は右の方向指示器61を消灯する。所定の方向指示器消灯条件は、例えば、自車両VSが白線(破線)WBLを跨いだ後であるとの条件、及び、自車両VSの現在位置と最終目標横位置との間の横方向距離が消灯許可距離以下であるとの条件の両方が満たされた場合に成立させればよい。
【0060】
時刻t5にて、所定のLCA完了条件が成立すると、運転支援ECU10は、LCA制御を完了(終了)する。所定のLCA完了条件は、例えば、方向指示器消灯条件が成立し、且つ、LCA制御の開始からの経過時間が目標車線変更時間に達した場合に成立させればよい。
【0061】
[具体的作動]
次に、運転支援ECU10の具体的作動について説明する。運転支援ECU10は、図6のフローチャートにより表された「LCA制御ルーチン」を実行する。また、本実施装置の運転支援ECU10は、ドライバーの習熟度を算出する習熟度評価機能と、算出した習熟度に応じて閾値時間Tvを延長又は短縮させる機能とを備えている。運転支援ECU10は、ドライバーの習熟度の算出を図6に示すLCA制御ルーチンとともに実行する。
【0062】
<LCA制御ルーチン>
先ず、図6に示すLCA制御ルーチンから説明する。運転支援ECU10は、ステップS100において、ドライバーが操作レバー80を第1操作位置P1L(P1R)に操作したかを取得する。操作レバー80が第1操作位置P1L(P1R)に操作されていない場合(No)、運転支援ECU10はLCA制御ルーチンを一旦終了する。一方、操作レバー80が第1操作位置P1L(P1R)に操作された場合(Yes)、運転支援ECU10は、その処理をステップS110に進めて、保持時間Thのカウント(計時)を開始する。
【0063】
ステップS120では、運転支援ECU10は、保持時間Thが所定の閾値時間Tvに達したか否かを判定する。保持時間Thが閾値時間Tvに達していない場合(No)、運転支援ECU10は、その処理をステップS100に戻し、操作レバー80が第1操作位置P1L(P1R)に操作されているかを判定する。ここでの判定が否定(No)の場合、すなわち、操作レバー80が短時間のみ第1操作位置P1L(P1R)に操作されていたよう場合、LCA制御ルーチンは一旦終了する。一方、ステップS120の判定にて、保持時間Thが閾値時間Tvに達した場合(Yes)、運転支援ECU10は、その処理をステップS130に進める。
【0064】
ステップS130では、運転支援ECU10は、LCA制御の実行許可条件が成立するか否かを判定する。LCA制御の実行許可条件の一例は、前述の条件(1)~(4)の通りである。LCA制御の実行許可条件が成立しない場合(No)、運転支援ECU10は、その処理をステップS135に進め、ステップS110からカウントした保持時間Thが所定の受付拒否時間Tcに達したか否かを判定する。保持時間Thが受付拒否時間Tcに達した場合(Yes)、運転支援ECU10は、その処理をステップS137に進めてLCA制御の実行をキャンセルし、後述するステップS160の処理に進む。一方、保持時間Thが受付拒否時間Tcに達していない場合(Yes)、運転支援ECU10は、その処理をステップS110に戻す。
【0065】
ステップS130において、LCA制御の実行許可条件が成立する場合(Yes)、運転支援ECU10は、その処理をステップS140に進めてLCA制御による転舵用モータ52の駆動を開始する。すなわち、自車両VSが元車線から隣接する目標車線に向けて移動を開始する。
【0066】
ステップS142では、運転支援ECU10は、目標車線を走行する他車両が自車両VSに接近し、車間距離を十分に確保できない第1の中止条件が成立するか否かを判定する。第1の中止条件が成立する場合(Yes)、運転支援ECU10は、自車両VSが元車線を走行している状態で、ステップS149の処理に進んでLCA制御を中止し、後述するステップS160の更新処理に進む。一方、第1の中止条件が成立しない場合(No)、運転支援ECU10は、LCA制御を継続しながら処理をステップS144に進める。
【0067】
ステップS144において、運転支援ECU10は、自車両VSが元車線と目標車線との間の白線(境界線)を跨いで目標車線に進入したか否かを判定する。目標車線に進入していない場合(No)、運転支援ECU10は、その処理をステップS142に戻す。一方、目標車線に進入した場合(Yes)、運転支援ECU10は、その処理をステップS146に進める。
【0068】
ステップS146において、運転支援ECU10は、自車両VSに対して後方から所定時間以内に接近する「後方接近車両」が存在する第2の中止条件が成立するか否かを判定する。第2の中止条件が成立する場合(Yes)、運転支援ECU10は、その処理をステップS147に進めて「車両接近警報」を行い、ステップS148で自車両VSを元車線に復帰させて、ステップS149にてLCA制御を中止する。その後、運転支援ECU10は、その処理を後述するステップS160の更新処理に進める。一方、第2の中止条件が成立しない場合(No)、運転支援ECU10は、LCA制御を継続しながらその処理をステップS150に進める。
【0069】
ステップS150において、運転支援ECU10は、所定のLCA完了条件が成立するか否かを判定する。LCA完了条件が成立しない場合(No)、運転支援ECU10は、その処理をステップS146に戻す。一方、LCA完了条件が成立する場合(Yes)、運転支援ECU10は、その処理をステップS160に進める。
【0070】
ここで、前述のステップS120の判定に用いる閾値時間Tvを、そのまま次回のLCA制御の開始判定に用いると、次回のLCA制御の実行時に種々の問題が生じる場合がある。
【0071】
具体的には、閾値時間TvがドライバーのLCAシステムに対する習熟度に対して長い時間に設定されていると、ドライバーが車線変更の開始を意図したタイミングと、実際にLCA制御が開始されるタイミングとに差異が生じてしまい、ドライバーに煩わしさを与える可能性がある。一方、ドライバーの習熟度に対して閾値時間Tvが短い時間に設定されていると、ドライバーの車線変更の意図が明確でない状況、或いは、ドライバーが周辺状況の確認を怠っているような状況であっても、LCA制御を開始してしまう可能性がある。
【0072】
本実施装置の運転支援ECU10は、これらの課題を解決するために、ドライバーの習熟度に応じて閾値時間Tvを適宜に延長又は短縮する機能を備えている。具体的には、ステップS160において、運転支援ECU10は、後述する習熟度算出機能で算出したドライバーの習熟度に応じて閾値時間Tvを更新(Tv→Tvn+1)し、更新した新たな閾値時間Tvn+1を次回のLCA制御の開始判定に用いる閾値として運転支援ECU10のメモリに格納する。閾値時間Tvn+1を格納すると、運転支援ECU10は、LCA制御ルーチンを一旦終了する。なお、本実施形態において、LCA制御は、図6のフローチャートのステップS120においてYesと判定された場合に開始される。そして、図6のフローチャートに示すLCA制御ルーチンが一旦終了したときに終了する。従って、LCA制御中であっても、転舵用モータ52が駆動していない場合(すなわち自車両VSが車線変更に係る動作を行っていない場合)もある。
【0073】
以下、運転支援ECU10が実施するドライバーの習熟度評価及び、閾値時間Tvの更新処理の詳細について説明する。
【0074】
<習熟度の算出及び、閾値時間の更新処理>
図7は、運転支援ECU10が備える、習熟度算出処理及び閾値時間の更新処理を実施する機能要素を模式的に示すブロック図である。運転支援ECU10は、ドライバー運転状態評価部11、システム作動状態評価部12、評価集計部13、保持時間演算部14、最大・最小ガード処理部15及び、閾値時間更新部16を各機能要素として備えている。
【0075】
ドライバー運転状態評価部11は、LCA制御の実行中に、ドライバーの本実施装置(車線変更支援装置)に対する過信度合いや運転状況という観点から、本実施装置に対するドライバーの操作の習熟度を評価する。具体的には、ドライバー運転状態評価部11は、今回のLCA制御において、ドライバーの保舵状況が以下の状況(A0),(A1),(A2)のいずれに該当するかを判断する。
(A0)正常保舵状況。この正常保舵状況は、LCA制御の実行中にドライバーがステアリングホイールを常に保持している状況である。この状況に該当する場合、ドライバー運転状態評価部11は、ドライバーが本実施装置(車線変更支援装置)を過信していないと判定する。
(A1)第1異常保舵状況。この第1異常保舵状況は、LCA制御の実行中にドライバーがステアリングホイールから手を放している状況(保舵していない状況)である。この状況に該当する場合、ドライバー運転状態評価部11は、ドライバーが本実施装置(車線変更支援装置)を過信している可能性があると判定する。
(A2)第2異常保舵状況。この第2異常保舵状況は、LCA制御の実行中にドライバーがステアリングホイールから手を放し、さらに、「保舵要求」が行われたにもかかわらず、ステアリングホイールを保持しなかった状況である。この状況に該当する場合、ドライバー運転状態評価部11は、ドライバーが本実施装置(車線変更支援装置)を大きく過信していると判定する。
【0076】
状況(A0)、(A1)、(A2)のいずれに該当するかついては、LCA制御の実行中に、手放しセンサ36からの検出信号に基づいて判定すればよい。なお、状況(A1)の第1異常保舵状況には、LCA制御の実行中において、ドライバーがステアリングホイールを一時的に保舵した状況も含まれる。
【0077】
また、ドライバー運転状態評価部11は、LCA制御の実行中に、今回のLCA制御を実行する際の周辺車両状況が以下の状況(A3),(A4),(A5)のいずれに該当するかを判断する。
(A3)第1周辺車両状況。この第1周辺車両状況は、目標車線に他車両(すなわち周辺車両)が存在する状態で、ドライバーが起動操作(操作レバー80の第1操作位置P1L(P1R)への操作)を行い、保持時間Thが受付拒否時間Tcに達するまで目標車線に他車両が存在したことで、運転支援ECU10がLCA制御を実行できなかった状況である。この状況に該当する場合、ドライバー運転状態評価部11は、ドライバーが本実施装置(車線変更支援装置)の作動状況、すなわちどのようなときにLCA制御が実行できるかを理解できていないと判定する。
(A4)第2周辺車両状況。この第2周辺車両状況は、目標車線に他車両が存在する状態で、ドライバーが起動操作(操作レバー80の第1操作位置P1L(P1R)への操作)を行い、保持時間Thが閾値時間Tvに達するまでに、自車両VSと目標車線を走行中の他車両との車間距離を十分に確保できず、運転支援ECU10が通常よりも遅れてLCA制御を開始した状況である。この状況に該当する場合、ドライバー運転状態評価部11は、ドライバーが周辺車両状況に応じて本実施装置(車線変更支援装置)の起動操作を行えていないと判定する。
(A5)第3周辺車両状況。この第3周辺車両状況は、目標車線に他車両が存在する状態で、ドライバーが起動操作(操作レバー80の第1操作位置P1L(P1R)への操作)を行い、保持時間Thが閾値時間Tvに達するまでに、自車両VSと目標車線を走行中の他車両との車間距離が確保され、運転支援ECU10がLCA制御を実行できた状況である。この状況に該当する場合、ドライバー運転状態評価部11は、ドライバーが周辺車両状況に応じて本実施装置(車線変更支援装置)の起動操作を行えており、本実施装置の作動操作を熟知していると判定する。
なお、ドライバー運転状態評価部11による状況の判断項目は、これらの状況(A1)~(A5)に限るものでは無く、任意に設定することができる。
【0078】
状況(A3)に該当する場合は、図6に示すフローチャートのステップS135の判定が肯定(Yes)の場合であり、状況(A4)に該当する場合は、図6に示すフローチャートのステップS135の判定が否定(No)で、一旦ステップS110に戻された後にステップS140へと進んだ場合である。状況(A5)に該当する場合は、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS135を経由することなくステップS140に進んだ場合である。
【0079】
上記のようにして、今回のLCA制御における保舵状況及び周辺車両状況を判断した後に、ドライバー運転状態評価部11は、判断した状況に応じて、ドライバーの運転状態から推定される、本実施装置に対するドライバーの操作の習熟度に関する評価を行う。具体的には、ドライバー運転状態評価部11は、保舵状況に基づいて習熟度の評価点数を算出するとともに、周辺車両状況に基づいて習熟度の評価点数を算出する。
【0080】
保舵状況に基づいて習熟度の評価点数を算出するにあたり、以下の点が参酌される。すなわち、状況(A2)の第2異常保舵状況は、LCA制御の開始から終了までの期間に亘って、ドライバーが「保舵要求」を無視してステアリングホイールを保舵していない状況である。このような状況は、本実施装置を過信しすぎている状況であり、本実施装置を過信し過ぎるあまりにドライバーは本実施装置に対する操作を習熟していないと考えられる。そのため、状況(A2)に該当する場合の評価点数は、状況(A1)に該当する場合の評価点数よりも低い。また、本実施装置を過信していない場合には、ドライバーは本実施装置の作動操作を自ら習熟しようとするため、本実施装置に対する操作の習熟度は高いと言える。よって、状況(A0)に該当する場合の評価点数は、状況(A1)に該当する場合の評価点数よりも高い。従って、状況(A0)に該当する場合の評価点数をS0、状況(A1)に該当する場合の評価点数をS1、状況(A2)に該当する場合の評価点数をS2とすると、これらの評価点数は、S0>S1>S2の関係にある。なお、評価点数が高いほど、習熟度の評価が高い。
【0081】
また、周辺車両状況に基づいて習熟度の評価点数を算出するにあたり、以下の点が参酌される。すなわち、LCA制御を実行できなかった状況(A3)に該当する場合は、ドライバーはLCA制御がどのような場合に実行できるかを理解しておらず、本実施装置に対する操作の習熟度は低いと言える。また、LCA制御を遅れて実行できた状況(A4)に該当する場合は、ドライバーはLCA制御がどのような場合に実行できるかは理解しているが、本実施装置に対する操作の習熟度はさほど高くないと言える。そして、LCA制御を遅れることなく実行できた状況(A5)に該当する場合は、ドライバーはLCA制御がどのような場合に実行できるかを理解し、且つ本実施装置に対する操作の習熟度は高いと言える。従って、状況(A3)に該当する場合の評価点数をS3、状況(A4)に該当する場合の評価点数をS4、状況(A5)に該当する場合の評価点数をS5とすると、各評価点数は、S5>S4>S3の関係にある。なお、評価点数が高いほど、習熟度の評価が高い。
【0082】
ドライバー運転状態評価部11は、上記の例のように保舵状況に基づいて算出した評価点数と周辺車両状況に基づいて算出した評価点数を加算して、今回のLCA制御における、ドライバーの運転状態から見た評価点数Sを算出する。なお、保舵状態に基づいて算出した評価点数と周辺車両状況に基づいて算出した評価点数にそれぞれ重み係数を掛けた値を加算して、ドライバーの運転状態から見た評価点数Sを算出してもよい。ドライバー運転状態評価部11は、算出した評価点数を評価集計部13に送信する。
【0083】
システム作動状態評価部12は、本実施装置が正常に作動し、LCA制御を完了できたかという観点から、本実施装置に対するドライバーの操作の習熟度を評価する。具体的には、システム作動状態評価部12は、今回のLCA制御の終了状態が、以下の状態(B1),(B2),(B3)のいずれの状態に該当するかを判断する。
(B1)正常終了状態。この状態は、運転支援ECU10がLCA制御を開始し、LCA制御を中止することなく完了できた状態である。この状態である場合、システム作動状態評価部12は、LCA制御を正常に作動できたと判定する。
(B2)第1異常終了状態。この状態は、運転支援ECU10がLCA制御を開始した後、自車両VSが目標車線に進入するよりも前に他車両が接近したことで、LCA制御を中止した状態である。
(B3)第2異常終了状態。この状態は、運転支援ECU10がLCA制御を開始した後、自車両VSが目標車線に進入した後に他車両(後方接近車両)が接近したことで「車両接近警報」がなされ、運転支援ECU10がLCA制御を中止した状態である。
なお、システム作動状態評価部12による状態の判断項目は、これらの状態(B1)~(B3)に限るものでは無く、任意に設定することができる。
【0084】
状態(B2)に該当する場合は、図6に示すフローチャートのステップS142にて、第1の中止条件が成立(Yes)と判定した場合であり、状態(B3)に該当する場合は、図6に示すフローチャートのステップS146にて、第2の中止条件が成立(Yes)と判定した場合である。状態(B1)に該当する場合は、図6に示すフローチャートのステップS142及びS146の中止条件がいずれも不成立(No)と判定した場合である。
【0085】
上記のようにして、今回のLCA制御の終了状態を判断した後に、システム作動状態評価部12は、判断した状態に応じて、システムの作動状態(終了状態)から推定される、本実施装置に対するドライバーの操作の習熟度に関する評価を行う。具体的には、システム作動状態評価部12は、システムの作動状態(LCA制御の終了状態)に基づいて習熟度の評価点数を算出する。
【0086】
システムの作動状態(終了状態)に基づいて習熟度の評価点数を算出するにあたり、以下の点が参酌される。すなわち、目標車線への進入に伴い他車両との衝突の可能性が高まる状況を招いた結果、LCA制御を中止した状態(B3)に該当する場合は、ドライバーがLCA制御の安全性に関する基礎的知識を習得しておらず、習熟度の評価点数は低い。また、目標車線への侵入前にLCA制御を中止した状態(B2)に該当する場合は、ドライバーがLCA制御の安全性に関する基礎的知識を十分に習得しておらず、習熟度の評価点数はさほど高くない。LCA制御を正常に終了できた状態(B1)に該当する場合は、LCA制御の安全性について熟知しており、習熟度の評価点数は最も高い。従って、状態(B1)に該当する場合の評価点数をR1、状態(B2)に該当する場合の評価点数をR2、状態(B3)に該当する場合の評価点数をR3とすると、各評価点数は、R1>R2>R3の関係を有する。なお、評価点数が高いほど、習熟度の評価が高い。
【0087】
そして、システム作動状態評価部12は、上記のようにして、今回のLCA制御における、システムの作動状態(終了状態)から見た評価点数Rを算出し、算出した評価点数を評価集計部13に送信する。
【0088】
評価集計部13は、ドライバー運転状態評価部11及び、システム作動状態評価部12から送信される評価結果(評価点数S,R)に基づいて、ドライバーの習熟度Lを演算する。本実施形態では、具体的には、評価集計部13は、ドライバー運転状態評価部11から送信される評価点数S及びシステム作動状態評価部12から送信される評価点数Rに対して、予め設定した重み係数k,kを掛け合わせて加算することにより、ドライバーの習熟度L(=S・k+R・k)を演算する。重み係数kは、各評価項目に対して重要度が高い評価項目ほど大きな値とすればよく、車両性能等の具体的な仕様に応じて任意の値に設定することができる。そして、評価集計部13は、演算したドライバーの習熟度Lを保持時間演算部14に送信する。
【0089】
このようにして求められた習熟度Lは、車線変更制御の実行中におけるドライバーの行動(ステアリングホイールを保舵状況、及び、周辺車両状況を確認状況)を反映している。さらに、習熟度Lは、LCA制御の安全性に対するドライバーの認識を反映している。つまり、本実施形態によれば、LCA制御の実行時におけるドライバーの行動及び安全性への認識に基づいて、適切に習熟度Lを算出することができる。
【0090】
保持時間演算部14は、ドライバーが次回のLCA制御の起動時に操作レバー80を保持すべき保持時間(以下、最適保持時間Thn+1と呼ぶ)を、評価集計部13から送信されるドライバーの習熟度Lに基づいて演算する。具体的には、保持時間演算部14は、前回のLCA制御の実行時に演算された習熟度(以下、前回習熟度Ln―1)と、今回のLCA制御の実行時に演算された習熟度(以下、今回習熟度L)とを比較する。
【0091】
保持時間演算部14は、今回習熟度Lが前回習熟度Ln―1よりも向上している場合(L>Ln―1)、これら習熟度L,Ln-1の差分ΔL(=L-Ln―1)に応じた減算時間TSubを求め、該減算時間TSubを運転支援ECU10のメモリに格納されている現在の閾値時間Tvから減算することにより、最適保持時間Thn+1(=Tv-TSub)を算出する。また、保持時間演算部14は、今回習熟度Lが前回習熟度Ln―1よりも低下している場合(L<Ln―1)、これら習熟度L,Ln-1の差分ΔL(=Ln―1-L)に応じた加算時間TAddを求め、該加算時間TAddを現在の閾値時間Tvに加算することにより、最適保持時間Thn+1(=Tv+TAdd)を演算する。また、保持時間演算部14は、今回習熟度Lが前回習熟度Ln―1と等しい場合(L=Ln―1)、現在の閾値時間Tvを最適保持時間Thn+1として保持する。
【0092】
ここで、減算時間TSub及び、加算時間TAddは、運転支援ECU10のメモリに予め格納したルックアップテーブルを差分ΔLに基づいて参照することにより求めればよい。ルックアップテーブルは、例えば、横軸を差分ΔL、縦軸を減算時間TSub及び加算時間TAddとし、差分ΔLが大きくなるに従い、これら減算時間TSub及び加算時間TAddが大きな値となるように設定することが好ましい。なお、減算時間TSubや加算時間TAddの算出は、ルックアップテーブルを用いる手法に限定されず、差分ΔLを代入値として含むモデル式等から算出してもよい。このようにして保持時間演算部14が演算する最適保持時間Thn+1は、最大・最小ガード処理部15へと送信される。
【0093】
最大・最小ガード処理部15は、保持時間演算部14から送信される最適保持時間Thn+1を所定の最小値TvMin及び、最大値TvMaxと比較し、後述する閾値時間の更新が最小値TvMinから最大値TvMaxの範囲内に収まるように処理するガード処理を実施する。
【0094】
例えば、保持時間演算部14で演算された最適保持時間Thn+1が最小値TvMinよりも短い場合において、当該最適保持時間Thn+1をそのまま次回の閾値時間として更新してしまうと、次回のLCA制御時にドライバーの本実施装置の使用意図を判定することが困難となってしまう可能性がある。一方、保持時間演算部14で演算された最適保持時間Thn+1が最大値TvMaxよりも長い場合において、当該最適保持時間Thn+1をそのまま次回の閾値時間として更新してしまうと、次回のLCA制御時にドライバーが実際に行う車線変更に比して方向指示器61の点滅時間が長くなることで、周辺車両に影響を与えるとともに、LCA制御を適切に実行できなくなるなど、実用性が損なわれてしまう可能性もある。
【0095】
最大・最小ガード処理部15は、保持時間演算部14から送信される最適保持時間Thn+1が最小値TvMinよりも短い場合(Thn+1<TvMin)、最小値TvMinを次回のLCA制御に適した最終的な閾値時間Tvn+1として決定する。また、最大・最小ガード処理部15は、保持時間演算部14から送信される最適保持時間Thn+1が最大値TvMaxよりも長い場合(Thn+1>TvMax)、最大値TvMaxを次回のLCA制御に適した最終的な閾値時間Tvn+1として決定する。また、最大・最小ガード処理部15は、保持時間演算部14から送信される最適保持時間Thn+1が最小値TvMin以上、且つ、最大値TvMax以下の場合(TvMin≦Thn+1≦TvMax)、ガード処理を行うことなく、最適保持時間Thn+1をそのまま次回のLCA制御に適した最終的な閾値時間Tvn+1として決定する。最小値TvMin及び、最大値TvMaxは、車両性能等の具体的な仕様に応じて設定すればよい。最大・最小ガード処理部15により決定された最終的な閾値時間Tvn+1は、閾値時間更新部16に送信される。
【0096】
閾値時間更新部16は、現在の閾値時間Tvを最大・最小ガード処理部15により決定された最終的な閾値時間Tvn+1に更新する更新処理を実施する。具体的には、閾値時間更新部16は、図6に示すフローチャートのステップS160の処理にて、運転支援ECU10のメモリに格納されている現在の閾値時間Tvを、最大・最小ガード処理部15から送信される最終的な閾値時間Tvn+1に書き換えることにより、閾値時間の更新処理を行う。
【0097】
このようにして更新された新たな閾値時間Tvn+1は、LCAシステムが次に起動する際に、LCA制御の開始判定を行う閾値時間として用いられる。すなわち、LCAシステムを次回起動する際は、ドライバーの習熟度に応じて設定された新たな閾値時間Tvn+1に基づいて、LCA制御の開始判定が行われるようになる。
【0098】
これにより、本実施装置によれば、ドライバーの今回の習熟度が前回の習熟度よりも向上していれば、次回のLCA制御の開始判定に用いる閾値時間を短縮することで、LCA制御をドライバーの意図するタイミングで開始できるようになり、装置の使用性を確実に向上することが可能になる。また、ドライバーの習熟度が前回の習熟度よりも低下していれば、次回のLCA制御の開始判定に用いる閾値時間を延長することで、ドライバーが周辺状況の確認を怠っているような状況でLCA制御を開始することを防止できるようになり、安全性を確実に向上することも可能になる。
【0099】
以上、本実施形態に係る車両の車線変更支援装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0100】
例えば、本実施装置は、上記の手順で設定した閾値時間Tvを、次回のLCA制御を開始する際の自車両VSの走行車速に応じて補正する機能を備えていてもよい。また、本実施装置は、上記の手順で設定した閾値時間Tvを、次回のLCA制御を開始する際に自車両VSが走行する周辺の混雑度等に応じて補正する機能を備えていてもよい。また、閾値時間Tvは、ドライバーの好みに応じて設定を変更できるように構成してもよい。また、ドライバーがLCA制御の作動を要求する操作部は、方向指示器の操作レバー80を一例に説明したが、操作レバー80以外の他の操作機構(例えば、スイッチ類等)であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
10…運転支援ECU,11…ドライバー運転状態評価部,12…システム作動状態評価部,13…評価集計部,14…保持時間演算部,15…最大・最小ガード処理部,16…閾値時間更新部,20…周囲センサ,21…レーダセンサ,22…カメラセンサ,30…操舵角センサ,31…操舵トルクセンサ,32…車速センサ,33…アクセルセンサ,34…ブレーキセンサ,35…ヨーレートセンサ,36…手放しセンサ,40…ブレーキECU,50…ステアリングECU,60…メータECU,61…方向指示器,70…ナビゲーションECU,71…GPS受信機,72…地図データベース,80…方向指示器操作レバー,VS…自車両

図1
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図5
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図7