(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20241106BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20241106BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20241106BHJP
F02B 19/12 20060101ALI20241106BHJP
F02B 23/10 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 B
F02P13/00 302B
F02P13/00 302A
F02P13/00 303A
F02B19/12 D
F02B23/10 P
F02B23/10 T
(21)【出願番号】P 2021121092
(22)【出願日】2021-07-22
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-009747(JP,A)
【文献】特開平08-284665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/54
H01T 13/20
F02P 13/00
F02B 19/12
F02B 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有する内燃機関用のスパークプラグ(1)であって、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる3個以上の噴孔(51)が形成されており、
上記噴孔の噴孔軸(511L、512L)は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、プラグ軸方向(Z)に対して傾斜していると共に、プラグ軸方向から見たとき、プラグ径方向に沿うように形成されており、
プラグ中心軸(C)を含む仮想平面(P)によって上記スパークプラグを第一プラグ部(11)と第二プラグ部(12)とに2分割したとき、上記第一プラグ部に形成された上記噴孔である第一噴孔(511)と、上記第二プラグ部に形成された上記噴孔である第二噴孔(512)と、を有し、
プラグ軸方向に対する上記第一噴孔の噴孔軸(511L)の傾斜角度(θ1)は、プラグ軸方向に対する上記第二噴孔の噴孔軸(512L)の傾斜角度(θ2)よりも大きい、内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項2】
上記第一噴孔を噴孔軸に沿って延長した延長領域(511E)と、上記第二噴孔を噴孔軸に沿って延長した延長領域(512E)とは、上記プラグ中心軸上において互いに重ならないように、上記第一噴孔及び上記第二噴孔が形成されている、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
上記第一噴孔と上記第二噴孔との一方は、噴孔軸に沿って延長した延長領域(511E、512E)が、上記放電ギャップの少なくとも一部と重なる、又は上記放電ギャップに接するように形成されたギャップ向き噴孔であり、上記第一噴孔と上記第二噴孔との他方は、噴孔軸に沿って延長した延長領域(512E、511E)が、上記放電ギャップと重ならないように形成されている、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
上記噴孔として、他の噴孔よりも開口面積が大きい大噴孔を有し、該大噴孔は、上記ギャップ向き噴孔である、請求項3に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
上記接地電極は、上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、上記放電ギャップは、上記中心電極の先端部と上記接地電極とが、互いにプラグ軸方向に対向することにより形成されており、上記固定端部は、上記第一プラグ部と上記第二プラグ部とのうち上記ギャップ向き噴孔が形成された方に配されている、請求項3又は4に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグを搭載した内燃機関(10)であって、
主燃焼室(101)と、該主燃焼室に設けられた吸気弁(72)及び排気弁(73)と、を有し、
上記スパークプラグは、上記第一プラグ部と上記第二プラグ部とのうち上記ギャップ向き噴孔が形成された方が、上記吸気弁側を向いている、内燃機関。
【請求項7】
請求項4に記載の内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
主燃焼室(101)と、
上記主燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタ(71)と、を有し、
上記スパークプラグは、上記内燃機関の圧縮行程において該インジェクタから噴射された上記燃料を含む噴射流(F)が、上記大噴孔に向かうように、配置されている、内燃機関。
【請求項8】
上記主燃焼室に設けられた吸気弁(72)及び排気弁(73)を有し、上記スパークプラグは、上記大噴孔が上記吸気弁側を向いている、請求項7に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
副燃焼室を備えたスパークプラグが、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたスパークプラグにおいては、火炎ジェットの向きを考慮して、プラグカバーに形成した噴孔の向きを規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示のスパークプラグにおいては、副燃焼室内に流入する気流については特に考慮されていない。すなわち、複数の噴孔から副燃焼室内に流入する気流同士が、副燃焼室内において互いに衝突することが考えられる。この場合、放電ギャップ付近において充分な気流が得られ難く、着火性の観点で改善の余地があるといえる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、着火性を向上することができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有する内燃機関用のスパークプラグ(1)であって、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる3個以上の噴孔(51)が形成されており、
上記噴孔の噴孔軸(511L、512L)は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、プラグ軸方向(Z)に対して傾斜していると共に、プラグ軸方向から見たとき、プラグ径方向に沿うように形成されており、
プラグ中心軸(C)を含む仮想平面(P)によって上記スパークプラグを第一プラグ部(11)と第二プラグ部(12)とに2分割したとき、上記第一プラグ部に形成された上記噴孔である第一噴孔(511)と、上記第二プラグ部に形成された上記噴孔である第二噴孔(512)と、を有し、
プラグ軸方向に対する上記第一噴孔の噴孔軸(511L)の傾斜角度(θ1)は、プラグ軸方向に対する上記第二噴孔の噴孔軸(512L)の傾斜角度(θ2)よりも大きい、内燃機関用のスパークプラグにある。
【発明の効果】
【0007】
上記内燃機関用のスパークプラグにおいて、プラグ軸方向に対する第一噴孔の噴孔軸の傾斜角度は、プラグ軸方向に対する第二噴孔の噴孔軸の傾斜角度よりも大きい。これにより、第一噴孔の噴孔軸と第二噴孔の噴孔軸とが、プラグ中心軸において互いに交わることがない。それゆえ、第一噴孔及び第二噴孔からそれぞれ流入した気流は、少なくともプラグ中心軸付近までは、互いに邪魔されることなく、到達する。それゆえ、放電ギャップ付近における気流を確保しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近のプラグ中心軸に沿った断面図であって、
図2のI-I線矢視断面図。
【
図4】実施形態1における、延長領域を示したスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図5】実施形態1における、流入気流を示したスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図7】実施形態2における、スパークプラグの先端部付近のプラグ中心軸に沿った断面図であって、
図8のVII-VII線矢視断面図。
【
図9】
図8のIX矢視正面相当図であって、副燃焼室内の気流を示す説明図。
【
図10】実施形態3における、内燃機関の断面説明図。
【
図11】実施形態3における、主燃焼室に形成された気流の向きを説明する、内燃機関を先端側から見た説明図。
【
図12】実施形態4における、内燃機関の断面説明図。
【
図13】実施形態5における、内燃機関の断面説明図。
【
図14】実施形態6における、スパークプラグの先端部付近の正面図。
【
図15】実施形態7における、スパークプラグの先端部付近のプラグ中心軸に沿った断面図であって、
図16のXV-XV線矢視断面図。
【
図17】実施形態8における、プラグ軸方向に直交する平面による、スパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図18】実施形態9における、スパークプラグの先端部付近のプラグ中心軸に沿った断面図であって、
図19のXVIII-XVIII線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関に係る実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
本形態のスパークプラグ1は、
図1~
図3に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。
【0011】
中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。
【0012】
プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる3個以上の噴孔51が形成されている。
図1に示すごとく、噴孔51の噴孔軸511L、512Lは、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、プラグ軸方向Zに対して傾斜している。また、
図2に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、噴孔軸511L、512Lは、プラグ径方向に沿うように形成されている。
【0013】
スパークプラグ1は、以下に定義される第一噴孔511及び第二噴孔512を有する。
図1~
図3に示すごとく、プラグ中心軸Cを含む仮想平面Pによってスパークプラグ1を第一プラグ部11と第二プラグ部12とに2分割する。このとき、第一プラグ部11に形成された噴孔51を、第一噴孔511とする。第二プラグ部12に形成された噴孔51を、第二噴孔512とする。
【0014】
図1に示すごとく、プラグ軸方向Zに対する第一噴孔511の噴孔軸511Lの傾斜角度θ1は、プラグ軸方向Zに対する第二噴孔512の噴孔軸512Lの傾斜角度θ2よりも大きい。
換言すると、傾斜角度が比較的大きい噴孔51である第一噴孔511の形成範囲と、傾斜角度θ2が比較的小さい噴孔51である第二噴孔512の形成範囲とを、仮想平面Pによって2つの領域に分けることができる。そして、2分割された2つの領域のうち、第一噴孔511が形成された領域を第一プラグ部11といい、第二噴孔512が形成された領域を第二プラグ部12という。
【0015】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車、コージェネレーション等の内燃機関における着火手段として用いることができる。スパークプラグ1のプラグ軸方向Zの一端が、内燃機関の主燃焼室に配置される。プラグ軸方向Zにおいて、主燃焼室に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の中心軸(すなわちプラグ中心軸C)に直交する方向を、プラグ径方向というものとする。また、プラグ中心軸Cを中心とした円周に沿った方向をプラグ周方向というものとする。
【0016】
本形態において、噴孔51は4個形成されている。
図2に示すごとく、4個の噴孔51は、プラグ周方向において等間隔に配設されている。これら4個の噴孔51の噴孔軸511L、512Lは、プラグ軸方向Zから見て、プラグ径方向に沿っている。4個の噴孔51のうちの2個が、第一プラグ部11に形成された第一噴孔511であり、他の2個が、第二プラグ部12に形成された第二噴孔512である。
【0017】
本形態において、2個の第一噴孔511の噴孔軸511Lの傾斜角度θ1は、互いに同じである。また、本形態において、2個の第二噴孔512の噴孔軸512Lの傾斜角度θ2は、互いに同じである。
【0018】
ただし、複数の第一噴孔511がある場合、それぞれの噴孔軸511Lの傾斜角度θ1が互いに異なるものとすることができる。同様に、複数の第二噴孔512がある場合、それぞれの噴孔軸512Lの傾斜角度θ2が異なるものとすることができる。かかる場合においても、すべての噴孔軸511Lの傾斜角度θ1が、すべての噴孔軸512Lの傾斜角度θ2よりも大きい。
【0019】
図4に示すごとく、第一噴孔511を噴孔軸511Lに沿って延長した延長領域511Eと、第二噴孔512を噴孔軸512Lに沿って延長した延長領域512Eとは、プラグ中心軸C上において互いに重ならないように、第一噴孔511及び第二噴孔512が形成されている。延長領域511Eと延長領域512Eとは、第二プラグ部12において互いに重なっている。
【0020】
第一噴孔511は、噴孔軸511Lに沿って延長した延長領域511Eが、放電ギャップGの少なくとも一部と重なる、又は放電ギャップGに接するように形成されている。このように形成された噴孔51を、ギャップ向き噴孔というものとする。本形態においては、第一噴孔511がギャップ向き噴孔となる。第二噴孔512は、噴孔軸512Lに沿って延長した延長領域512Eが、放電ギャップGと重ならないように形成されている。本形態において、ギャップ向き噴孔の延長領域511Eが、放電ギャップGの少なくとも一部と重なる。
【0021】
図3に示すごとく、接地電極6は、ハウジング2又はプラグカバー5に固定された固定端部61から副燃焼室50内に突出している。放電ギャップGは、中心電極4の先端部と接地電極6とが、互いにプラグ軸方向Zに対向することにより形成されている。固定端部61は、第一プラグ部11に配されている。
【0022】
本形態においては、固定端部61は、ハウジング2の先端部に溶接等にて接合されている。接地電極6は、固定端部61において、屈曲部611を有する。この屈曲部611からプラグ中心軸Cに向かって、接地電極6は、プラグ径方向に延びている。接地電極6の突出端部付近の部位が、中心電極4の先端に対して、放電ギャップGを介して、プラグ軸方向Zに対向している。
【0023】
図2に示すごとく、固定端部61は、プラグ周方向において、2つの第一噴孔511の間に配されている。プラグ軸方向Zから見て、接地電極6の延設方向が、仮想平面Pに直交している。つまり、本形態においては、仮想平面Pは、プラグ軸方向Zから見て、接地電極6の延設方向に直交する平面である。
【0024】
プラグ軸方向Zから見て、2つの第一噴孔511は接地電極6を挟んで互いに対称となる位置及び向きに形成されている。また、プラグ軸方向Zから見て、2つの第二噴孔512は接地電極6の延長線を挟んで互いに対称となる位置及び向きに形成されている。
【0025】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記内燃機関用のスパークプラグ1において、プラグ軸方向Zに対する第一噴孔511の噴孔軸511Lの傾斜角度θ1は、プラグ軸方向Zに対する第二噴孔512の噴孔軸512Lの傾斜角度θ2よりも大きい。これにより、第一噴孔511と第二噴孔512とが、プラグ中心軸Cにおいて互いに交わることがない。それゆえ、
図5、
図6に示すごとく、第一噴孔511から流入した気流A1は、少なくともプラグ中心軸C付近までは、第二噴孔512から流入した気流A2によって邪魔されることなく、到達する。それゆえ、放電ギャップG付近における気流を確保しやすい。
【0026】
それゆえ、放電ギャップGにおいて生じた放電が伸長しやすくなる。また、副燃焼室50内において、初期火炎が拡散しやすくすくなる。その結果、副燃焼室50内における着火性を向上させることができる。これに伴い、噴孔51から主燃焼室に噴出する火炎ジェットが強化されやすくなり、主燃焼室における着火性も向上する。
【0027】
なお、2つの第一噴孔511からそれぞれ流入する気流A1同士が、副燃焼室50内において衝突することはあり得る。しかし、この衝突後の気流は、合流して、第一プラグ部11から第二プラグ部12へ向かう流れとなる。それゆえ、放電ギャップG付近の気流は確保される。
【0028】
また、
図4に示すごとく、第一噴孔511の延長領域511Eと、第二噴孔512の延長領域512Eとは、プラグ中心軸C上において互いに重ならない。それゆえ、より、第一噴孔511から流入した気流A1が、第二噴孔512から流入した気流A2によって邪魔されることなく、プラグ中心軸C付近まで到達しやすくなる。
【0029】
また、第一噴孔511の延長領域511Eが、放電ギャップGの少なくとも一部と重なる、又は放電ギャップGに接する。そして、第二噴孔512の延長領域512Eが、放電ギャップGと重ならない。これにより、第一噴孔511から流入した気流A1が、第二噴孔512から流入した気流A2によって邪魔されることなく、放電ギャップGまで到達しやすくなる。また、放電ギャップGにおける気流が、気流A2によって乱されることを防ぎやすい。それゆえ、放電ギャップGを通過する気流を充分に確保して、着火性を向上させることができる。
【0030】
また、接地電極6の固定端部61は、ギャップ向き噴孔が形成された第一プラグ部11に配されている。これにより、放電ギャップG付近の気流を、接地電極6の突出側へ向かう向きとしやすくなる。それゆえ、放電を、接地電極6から遠ざかる方向へ引き伸ばしやすくなる。また、初期火炎を、接地電極6から遠ざかる方向へ広げやすくなる。その結果、より効果的に、着火性を向上させることができる。
【0031】
以上のごとく、本形態によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及び内燃機関を提供することができる。
【0032】
(実施形態2)
本形態は、
図7~
図9に示すごとく、噴孔51として、他の噴孔51よりも開口面積が大きい大噴孔52を有する、スパークプラグ1の形態である。
大噴孔52は、ギャップ向き噴孔でもある第一噴孔511である。
【0033】
本形態においては、2個の第一噴孔511のうちの一個が、大噴孔52である。つまり、4個の噴孔51のうちの一個が、他の3つの噴孔51よりも開口面積が大きい大噴孔52である。本形態において、大噴孔52以外の3つの噴孔51は、開口面積が同等である。また、大噴孔52の開口面積は、他の3つの噴孔51のそれぞれの開口面積の約1.4~2倍程度である。大噴孔52の開口径は、他の3つの噴孔51のそれぞれの開口径の約1.2~1.4倍程度である。なお、開口面積は、各噴孔51の噴孔軸に直交する断面の面積である。
【0034】
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0035】
本形態においては、
図9に示すごとく、大噴孔52である第一噴孔511から流入する気流A1が強化されすい。そのため、放電ギャップGを通過する気流を強化しやすい。その結果、着火性をより向上させることができる。
【0036】
また、大噴孔52から流入した気流A1が第二プラグ部12の副燃焼室50において、基端側へ向かう。そして、これに伴い、タンブル流Atが形成され、その一部が、再び放電ギャップGに導かれやすくなる。それゆえ、一層着火性を向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0037】
(実施形態3)
本形態においては、
図10、
図11を参照して、スパークプラグ1を搭載した内燃機関10につき説明する。
内燃機関10は、主燃焼室101と、主燃焼室101に設けられた吸気弁72及び排気弁73と、を有する。スパークプラグ1は、第一プラグ部11が吸気弁72側を向いている。つまり、ギャップ向き噴孔が形成されている第一プラグ部11が、吸気弁72側を向いている。
【0038】
図11に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、ギャップ向き噴孔である第一噴孔511は、吸気弁72側を向くように形成されている。より具体的には、第一噴孔511の外側開口部が、吸気弁72側を向いている。本形態においては、2つの第一噴孔511が、吸気弁72側を向いている。
【0039】
本形態の内燃機関10は、
図10に示すごとく、シリンダヘッド76と、シリンダブロック75と、シリンダ70内を往復運動するピストン74とを備える。そして、シリンダヘッド76、シリンダブロック75、及びピストン74に囲まれて、主燃焼室101が形成される。シリンダヘッド76には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。そして、シリンダヘッド76における吸気ポート721と排気ポート731との間には、スパークプラグ1が取り付けられる。すなわち、
図10、
図11に示すごとく、スパークプラグ1は、シリンダヘッド76における、2つの吸気ポート721と2つの排気ポート731とに囲まれた位置に配設されている。
【0040】
吸気ポート721及び排気ポート731は、その開口方向が主燃焼室101の中心軸側に向かうように、ピストン74の進退方向に対して傾斜している。また、主燃焼室101の基端面は、スパークプラグ1から遠ざかるにつれて先端側へ向かうように傾斜している。
【0041】
内燃機関10においては、ピストン74の往復運動に伴って、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が順次繰り返される。吸気行程において、吸気ポート721からガス(主として空気)が主燃焼室101内に導入され、排気行程において、排気ポート731から主燃焼室101内のガスが排出される。吸気行程における気流の導入のされ方等に起因して、主燃焼室101に所定の気流が形成され、圧縮行程においても、その気流は残る。
【0042】
そして、主燃焼室101内においては、主として、
図10の矢印AF2に示すごとく、ピストン74の摺動方向に直交する方向の軸周りの気流である、タンブル流が形成される。そして、この気流AF2は、
図10、
図11に示すごとく、主燃焼室101内のスパークプラグ1の先端部付近においては、吸気弁72側から排気弁73側へ向かう向きとなる。より具体的には、
図11に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、2つの吸気ポート721の中間位置から、2つの排気ポート731の中間位置へ向かう方向に沿った気流AF2が、スパークプラグ1の先端部付近の主な気流となる。
【0043】
なお、主燃焼室101内の気流は、常に一定となっているわけではなく、サイクル間、或いは1サイクル中の異なるタイミングの間において、変動し得る。ただし、主な気流の向き、特に、点火タイミングにおける気流の向きは、概略定まっており、上述した気流AF2は、点火タイミングにおける主な気流を意味する。そして、「主燃焼室101の気流」というときは、特に断らない限り、上述の、点火タイミングにおける、スパークプラグ1の先端部付近の気流AF2を意味する。
その他は、実施形態1と同様である。
【0044】
本形態の内燃機関において、プラグ軸方向Zから見たとき、ギャップ向き噴孔である第一噴孔511は、外側開口部が吸気弁72側を向くように形成されている。これにより、第一噴孔511は、その外側開口部が主燃焼室101の気流AF2の上流側を向くこととなる。そうすると、特に圧縮行程において、第一噴孔511からの流入気流(
図5、
図6における矢印A1参照)を、より強化することができる。その結果、上述の実施形態1において説明した圧縮行程における着火性の向上効果を、より効果的に得ることができる。
なお、第二噴孔512をギャップ向き噴孔としたスパークプラグ1(例えば、後述する実施形態9参照)を用いた場合には、第二プラグ部12を吸気弁72側に向ける。これにより、上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
また、上述の実施形態3は、実施形態1のスパークプラグ1を内燃機関に取り付けた構成につき説明したが、実施形態2のスパークプラグ1を内燃機関に取り付けた構成も考えられる。この場合は、第一噴孔511である大噴孔52が、プラグ軸方向Zから見て、吸気弁72側を向くこととなる。これにより、大噴孔52からの流入気流A1を、さらに強化することができる。その結果、実施形態2において説明した作用効果を、より一層効果的に得ることができる。
【0046】
また、この場合、副燃焼室50から主燃焼室101へ噴出する火炎としては、大噴孔52を介して噴出する火炎が特に大きくなる。それゆえ、プラグ軸方向Zから見たとき、大噴孔52が主燃焼室101の吸気弁72側を向いていることにより、吸気弁72側へ大きい火炎を噴出させることができることとなる。そのため、プラグ軸方向Zから見て主燃焼室101における吸気弁72側の混合気の着火性を向上させることができる。それゆえ、主燃焼室101全体の混合気をバランスよく燃焼させることができる。その結果、ノッキング等の原因となる燃焼異常の抑制を図ることができる。
【0047】
つまり、主燃焼室101は、排気弁73側と比較して、吸気弁72側が低温となりやすい。吸気ポート721から、比較的低温のガスが主燃焼室101へ導入されるからである。それゆえ、一般に、主燃焼室101における、排気弁73側の混合気に対し、吸気弁72側の混合気の燃焼が遅れやすく、主燃焼室101における混合気の燃焼のバランスが悪くなる傾向がある。しかし、本形態においては、上記のごとく、副燃焼室50から主燃焼室101の吸気弁72側へ大きい火炎を噴出させることができる。そのため、主燃焼室101全体の混合気をバランスよく燃焼させることができる。その結果、ノッキング等の原因となる燃焼異常の抑制を図ることができる。
【0048】
(実施形態4)
本形態は、
図12に示すごとく、主燃焼室101に直接燃料を噴射するインジェクタ71を有する内燃機関10の形態である。
スパークプラグ1は、インジェクタ71から噴射された燃料を含む噴射流Fが、大噴孔52に向かうように、配置されている。
【0049】
内燃機関10の吸気行程から圧縮行程までのいずれかのタイミングにおいて、インジェクタ71から燃料が、主燃焼室101へ噴出される。この燃料を含む噴射流Fが、主燃焼室101において形成され、大噴孔52の外側開口部に向かう。
【0050】
なお、
図12に示す矢印Fは、燃料噴射直後の噴射流の向きを示すものであり、これは、必ずしも、吸気行程、圧縮行程又は膨張行程における主燃焼室101内の気流と一致するものではない。また、噴射流Fが大噴孔52に向かう状態とは、プラグカバー5近傍の噴射流Fの方向から大噴孔52の外側開口部が見えるような状態である。
【0051】
吸気ポート721に隣接する位置に、インジェクタ71が設けてある。インジェクタ71は、主燃焼室101の中心軸側に向かって燃料を噴射するような姿勢にて、取り付けられている。
【0052】
主燃焼室101へ噴射された燃料は、例えば、
図12に示すごとく、主燃焼室101内の空気と共に噴射流Fを形成して、ピストン74の基端面に当たる。本形態において、ピストン74の基端面は、凹状面を有する。ピストン74の基端面に当たった噴射流Fは、軌道を変えて、基端側、すなわちスパークプラグ1側へ向かう。このとき、噴射流Fは、スパークプラグ1の大噴孔52付近に到達する。
【0053】
噴射流Fは、燃料割合の比較的大きい混合気となっている。それゆえ、噴射流Fが到達した大噴孔52付近は、燃料を多く含む混合気となる。そして、この混合気は、大噴孔52を介して副燃焼室50に導入されることとなる。
その他、実施形態1と同様である。
【0054】
本形態の内燃機関10において、スパークプラグ1は、インジェクタ71から噴射された噴射流Fが大噴孔52に向かうように、配置されている。これにより、燃料密度の高い混合気が、大噴孔52から副燃焼室50内へ導入されやすくなる。その結果、副燃焼室50における着火性が向上し、ひいては主燃焼室101の着火性を向上させることができる。
【0055】
例えば、内燃機関の高負荷運転時のリタード噴射、リタード点火を行う際の着火性の向上効果を、特に期待することができる。リタード噴射が行われる圧縮行程においては、主燃焼室101内の雰囲気が圧縮され、噴孔51を介して、副燃焼室50へ空気が流入する。これにより、副燃焼室50内の圧力も上昇する。したがって、リタード点火のタイミングにおいては、比較的、副燃焼室50内へ混合気が流入しにくいところ、本形態によれば、高濃度の混合気を大噴孔52経由にて副燃焼室50へ導入しやすくなる。あるいは、比較的気流が弱く、燃焼濃度にムラが生じやすい、内燃機関の始動時における着火性の向上にも、特に有効といえる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0056】
(実施形態5)
本形態は、
図13に示すごとく、実施形態7に対し、内燃機関10に設置されたスパークプラグ1の配置の向きを変更した形態である。
【0057】
本形態の内燃機関10は、インジェクタ71から噴射された噴射流Fの一部が、直接、スパークプラグ1に向かうよう構成されている。そこで、本形態においては、スパークプラグ1を、噴射流Fの一部が大噴孔52に直接向かうような向きに配設している。つまり、インジェクタ71は、燃料を含む噴射流Fが、直接、大噴孔52の外側開口部に向かうように、主燃焼室101に燃料を噴射することとなる。
【0058】
本形態において、スパークプラグ1は、Z方向から見たとき、大噴孔52の外側開口部が、吸気弁72側を向くように、配置されている(図示略)。
その他は、実施形態4と同様である。
【0059】
スパークプラグ1は、インジェクタ71から噴射された噴射流Fが、直接、大噴孔52に向かうように、配置されている。これにより、燃料密度の高い混合気が、大噴孔52から副燃焼室50内へ確実に導入されやすくなる。
その他、実施形態4と同様の作用効果を有する。
【0060】
(実施形態6)
本形態は、
図14に示すごとく、接地電極6を、プラグ軸方向Zに対して傾斜させた形態である。
すなわち、本形態において、接地電極6は、固定端部61から突出端に向かうほど、プラグ軸方向Zの先端側へ向かうよう傾斜している。接地電極6の放電ギャップG側の面も、固定端部61から突出端に向かうほど、プラグ軸方向Zの先端側へ向かうよう傾斜している。
【0061】
本形態において、接地電極6は、略直棒形状を有し、特に屈曲部(
図3の符号611参照)を設けていない。また、実施形態2と同様に、第一噴孔511の少なくとも一つは、大噴孔52である。
その他は、実施形態2と同様である。
【0062】
本形態においては、実施形態2において説明したタンブル流Atの一部が、接地電極6にガイドされながら、放電ギャップGに向かいやすくなる。その結果、放電ギャップGに生じた放電を引き伸ばしやすくなり、着火性を向上させることができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0063】
(実施形態7)
本形態は、
図15、
図16に示すごとく、放電ギャップGが、互いにプラグ径方向に対向する、接地電極6と中心電極4との間に形成されている、内燃機関用のスパークプラグ1の形態である。
すなわち、放電ギャップGは、接地電極6における側面と中心電極4の側面との間に形成されている。
【0064】
図16に示すごとく、プラグ軸方向Zから見て、接地電極6は、プラグ径方向に対して傾斜している。そして、接地電極6の突出端部付近における側面が、プラグ径方向において、中心電極4の側面とプラグ径方向に対向している。この互いにプラグ径方向に対向した接地電極6の側面と中心電極4の側面との間に、放電ギャップGが形成されている。
【0065】
接地電極6は、プラグ軸方向Zの幅を、突出方向及びプラグ軸方向Zに直交する方向の幅よりも、大きくすることもできる。また、接地電極6における放電ギャップG側の側面は、平坦面となっている。
その他は、実施形態1と同様である。
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
(実施形態8)
本形態は、
図17に示すごとく、第一噴孔511の個数と、第二噴孔512の個数とを、互いに異ならせた形態である。
本形態においては、第一噴孔511を2個、第二噴孔512を1個とした。第二噴孔512は、プラグ軸方向Zから見て、接地電極6を突出方向に延長した延長線上に、配置されている。
その他は、実施形態1と同様である。本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
なお、第一噴孔511及び第二噴孔512の個数は、特に限定されるものではない。また、第一噴孔511の個数と第二噴孔512の個数とは、実施形態1等のように互いに同数とすることもできるし、実施形態8のように互いに異ならせることもできる。また、第一噴孔511の個数よりも、第二噴孔512の個数を多くすることもできる。
【0068】
(実施形態9)
本形態は、
図18~
図20に示すごとく、第二噴孔512をギャップ向き噴孔とした形態である。
つまり、第二噴孔512を噴孔軸512Lに沿って延長した延長領域512Eが、放電ギャップGの少なくとも一部と重なる、又は放電ギャップGに接する。換言すると、ギャップ向き噴孔の噴孔軸512Lの傾斜角度θ2が、第一噴孔511の噴孔軸511Lの傾斜角度θ1よりも、小さい。
【0069】
本形態においては、第一噴孔511の噴孔軸511Lは、放電ギャップGよりも、プラグ先端側を通過する。また、本形態においては、
図19、
図20に示すごとく、接地電極6の固定端部61が、第二プラグ部12に配されている。つまり、固定端部61は、第一プラグ部11と第二プラグ部12とのうちギャップ向き噴孔が形成された方である、第二プラグ部12に形成されている。
【0070】
また、本形態においては、
図18に示すごとく、放電ギャップGがハウジング2の先端よりも基端側に配されている。接地電極6の固定端部61は、ハウジング2の内面に固定されている。そして、固定端部61から突出端部に向かうほど先端側に向かうように傾斜している。
その他は、実施形態1と同様である。
本形態の場合にも、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
上述した実施形態1の他にも、種々の形態が考えられる。また、上記各実施形態を適宜互いに組み合わせた実施形態とすることもできる。
【0072】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…スパークプラグ、10…内燃機関、11…第一プラグ部、12…第二プラグ部、2…ハウジング、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…噴孔、511…第一噴孔、511L…(第一噴孔の)噴孔軸、512…第二噴孔、512L…(第二噴孔の)噴孔軸、6…接地電極、C…プラグ中心軸、G…放電ギャップ、P…仮想平面、Z…プラグ軸方向