(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241106BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241106BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20241106BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20241106BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657A
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652C
H01L29/78 652D
H01L29/78 657F
H01L29/91 K
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
(21)【出願番号】P 2021127533
(22)【出願日】2021-08-03
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-134666(JP,A)
【文献】特開2004-031386(JP,A)
【文献】特開2006-060184(JP,A)
【文献】特開2009-021308(JP,A)
【文献】特開2006-156571(JP,A)
【文献】特開2011-181809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/76
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子が形成されたアクティブ領域(Ra)と、該アクティブ領域の外周を囲む外周領域(Rb)およびパッド(12a~12d)が配置されるパッド配置領域(Rc)を有する半導体装置であって、
前記アクティブ領域に、一方向を長手方向としたゲート電極(109)を有する前記スイッチング素子が形成された半導体基板(101~106)と、
前記外周領域および前記パッド配置領域において、前記半導体基板の上に形成されていると共に、前記ゲート電極の長手方向と交差する方向に伸びる端部(110a)を有するフィールド絶縁膜(110)と、
前記ゲート電極から引き出され、前記アクティブ領域から前記外周領域に至ることで、前記フィールド絶縁膜における前記端部に乗り上げて形成されたゲート引出部(109a)と、
前記パッド配置領域に配置される前記パッドに含まれ、前記ゲート引出部を通じて前記ゲート電極に接続されたゲートパッド(12d)と、を有し、
前記ゲート引出部が乗り上げて形成される前記フィールド絶縁膜の端部は、前記アクティブ領域から前記外周領域に向かうほど該フィールド絶縁膜の厚みが徐々に厚くなるように傾斜させられて
おり、
前記フィールド絶縁膜の端部において該フィールド絶縁膜の厚みが変化する領域を厚さ遷移領域とし、該厚さ遷移領域の幅をL、前記ゲート電極の厚みをTgとして、Tg<Lとされている、半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート引出部が乗り上げて形成される前記フィールド絶縁膜の端部は、斜めに傾斜させられた傾斜面とされている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート引出部が乗り上げて形成される前記フィールド絶縁膜の端部は、階段状に傾斜させられている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極の厚みが前記フィールド絶縁膜の厚みよりも薄くなっている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート電極を有するスイッチング素子を備えた半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、スイッチング時に発生する高電圧に起因してゲート絶縁膜が破壊されることを抑制する技術が開示されている。
【0003】
MOSFETをオン状態からオフ状態にスイッチングするときには、p型ベース領域とn型ドリフト層との間の容量に相当する電流がソース-ドレイン間に流れる。この電流は、ドレイン電圧の時間変化が大きいほど、つまりdV/dtが大きいほど大きくなる。この電流は、ソース電極側では、p型ベース領域やp+型コンタクト領域が形成された領域を流れることになるが、p型ベース領域やp+型コンタクト領域の抵抗値が高いと、電流の大きさに比例してp型ベース領域やp+型コンタクト領域の電位が持ち上がる。つまり、ゲート電圧が0Vの状態に対して、p型ベース領域やp+型コンタクト領域の電位がそれよりも高い電位になる。この電位の持ち上がりによって、ゲート絶縁膜に高電圧が掛かり、ゲート絶縁膜が破壊され得る。このため、特許文献1では、ソースコンタクトホールの位置を工夫し、フィールド絶縁膜を貫通するソースコンタクトホールを設けた構造とすることで、ゲート絶縁膜に印加される電界強度を小さくし、ゲート絶縁膜の破壊を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の構造やスイッチング条件によっては、上記の電位の持ち上がりによってゲート絶縁膜だけでなく、半導体表面に形成されたフィールド絶縁膜も破壊するほど、フィールド絶縁膜の上下間に電位差が発生することがある。つまり、ゲート電極のうちフィールド絶縁膜上に配置される部分、具体的にはゲート電極のうちのゲートライナーの一部を構成するゲート引出部と半導体表面との間に電位差が発生し得る。フィールド絶縁膜の破壊を抑制するにはフィールド絶縁膜の厚膜化が有効であるが、半導体装置のレイアウト上、ゲート電極の端部からフィールド絶縁膜上に乗り上げるようにしてゲート引出部が配置される。このため、フィールド絶縁膜が厚いとゲート引出部を含むゲート電極の形成時に段差部でゲート引出部が薄くなり、段切れ、つまり途切れてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、フィールド絶縁膜の絶縁破壊を抑制しつつ、ゲート引出部が途切れてしまうことを抑制できる構造の半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、スイッチング素子が形成されたアクティブ領域(Ra)と、該アクティブ領域の外周を囲む外周領域(Rb)およびパッド(12a~12d)が配置されるパッド配置領域(Rc)を有する半導体装置であって、アクティブ領域に、一方向を長手方向としたゲート電極(109)を有するスイッチング素子が形成された半導体基板(101~106)と、外周領域およびパッド配置領域において、半導体基板の上に形成されていると共に、ゲート電極の長手方向と交差する方向に伸びる端部(110a)を有するフィールド絶縁膜(110)と、ゲート電極から引き出され、アクティブ領域から外周領域に至ることで、フィールド絶縁膜における端部に乗り上げて形成されたゲート引出部(109a)と、パッド配置領域に配置されるパッドに含まれ、ゲート引出部を通じてゲート電極に接続されたゲートパッド(12d)と、を有している。そして、ゲート引出部が乗り上げられたフィールド絶縁膜の端部は、アクティブ領域から外周領域に向かうほど該フィールド絶縁膜の厚みが徐々に厚くなるように傾斜させられている。そして、フィールド絶縁膜の端部において該フィールド絶縁膜の厚みが変化する領域を厚さ遷移領域とし、該厚さ遷移領域の幅をL、ゲート電極の厚みをTgとして、Tg<Lとされている。
【0008】
このように、ゲート引出部の下に位置しているフィールド絶縁膜の端部について、そのフィールド絶縁膜の端部が傾斜させられた状態になっている。このため、フィールド絶縁膜の端部の段差部においてゲート引出部が薄くなることが抑制される。これにより、ゲート引出部がフィールド絶縁膜の端部の段差によって段切れすることを抑制できる。このため、フィールド絶縁膜を絶縁破壊されない膜厚としつつも、ゲート引出部が途切れてしまうことを抑制できる構造の半導体装置にできる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態にかかる半導体装置を構成する半導体チップの上面レイアウト図である。
【
図5】
図4に示す断面において、スイッチング時に流れる電流と最もフィールド絶縁膜に高電圧が掛かる部分を示した図である。
【
図6】フィールド絶縁膜の端部における厚さ遷移領域の幅Lとゲート電極の厚みTgとの関係を示した断面図である。
【
図7A】半導体装置の製造方法のうちのフィールド絶縁膜の成膜工程を示した断面図である。
【
図7B】
図7Aに続くフィールド絶縁膜のパターニング工程を示した断面図である。
【
図8】第2実施形態にかかる半導体装置における
図3に相当する断面図である。
【
図9A】フィールド絶縁膜の端部を段差形状にするプロセスでの外周領域のうちアクティブ領域に隣接する部分とパッド配置領域に隣接する部分の断面図である。
【
図9B】
図9Aのプロセスの後に行われるゲート電極の形成プロセスでの外周領域のうちアクティブ領域に隣接する部分とパッド配置領域に隣接する部分の断面図である。
【
図10】第3実施形態にかかる半導体装置における外周領域のうちアクティブ領域に隣接する部分とパッド配置領域に隣接する部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。まず、
図1~
図4を参照して、本実施形態にかかる半導体装置の構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置は、半導体チップ10とされており、スイッチング素子としてトレンチゲート構造のMOSFETが形成されている。半導体装置は、アクティブ領域Raやその外側に位置する外周領域Rbおよびパッド12a~12dが配置されるパッド配置領域Rcを有し、アクティブ領域Raに半導体素子としてスイッチング素子が形成されている。
【0018】
図1に示すように、半導体チップ10は上面形状が四角形の板状で構成されている。半導体チップ10のうちの中央部を含む内部領域、具体的には
図1中に四角形状に囲んだ領域がアクティブ領域Raとされている。また、半導体チップ10のうちのアクティブ領域Raの外側となる外縁部が外周領域Rbとされている。さらに、アクティブ領域Raの外側、かつ、外周領域Rbの内側であって、アクティブ領域Raが構成する四角形状の一辺に沿う領域がパッド配置領域Rcとされている。
【0019】
半導体チップ10のうちのパッド配置領域Rc内に、感温素子が形成された感温素子領域11が備えられ、感温素子による温度検出に基づいて発熱素子による温度上昇が把握できるようになっている。
【0020】
また、アクティブ領域Raを囲むように外周領域Rbに設けられた太い実線で示した部分は、縦型MOSFETにおける後述するゲート電極109のゲート引出部109aやゲート配線層113により構成されるゲートライナー13である。本実施形態の場合、ゲートライナー13は、アクティブ領域Raの外周に位置する外周領域Rbに配置されている。
【0021】
なお、パッド配置領域Rcには、複数のパッド12a~12dが備えられている。本実施形態の場合、パッド配置領域Rcには、紙面左側からカソードパッド12a、アノードパッド12b、センスパッド12c、ゲートパッド12dが備えられている。これらは、感温素子領域11に備えられる感温素子の各部やアクティブ領域Raに備えられる縦型MOSFETの各部と電気的に接続される。これら各パッド12a~12dが図示しないボンディングワイヤに接続されることで、外部との電気的接続が行えるようになっている。
【0022】
また、半導体チップ10における各部の断面構成を
図2~
図4に示す。
【0023】
半導体チップ10には、SiCもしくはSi等で構成されたn+型基板101が用いられており、n+型基板101の主表面上に縦型MOSFETや感温素子を構成する各部が形成されている。
【0024】
具体的には、
図2に示すように、n
+型基板101の主表面上には、n
+型基板101よりも低不純物濃度のn
-型低濃度層102がエピタキシャル成長させられている。n
-型低濃度層102の表層部におけるn
+型基板101から離れた位置に、所定間隔でp型ディープ層103が形成されている。さらに、n
-型低濃度層102およびp型ディープ層103の上には、p型ベース領域104が形成され、p型ベース領域104の上には、n
+型ソース領域105およびp
+型コンタクト領域106が形成されている。n
+型ソース領域105は、n
-型低濃度層102のうちp型ディープ層103が形成されていない領域と対応する部分の上に形成されており、p
+型コンタクト領域106は、p型ディープ層103と対応する部分の上に形成されている。
【0025】
これらn
+型基板101、n
-型低濃度層102、p型ディープ層103、p型ベース領域104、n
+型ソース領域105およびp
+型コンタクト領域106を半導体で構成された半導体基板として、半導体基板の表層部にゲートトレンチ107が形成されている。具体的には、n
+型ソース領域105およびp型ベース領域104を貫通してn
-型低濃度層102に達するゲートトレンチ107が形成されている。このゲートトレンチ107の側面と接するように上述したp型ベース領域104およびn
+型ソース領域105が配置されている。ゲートトレンチ107は、
図2の紙面左右方向を幅方向、紙面法線方向となる一方向を長手方向、紙面上下方向を深さ方向とするライン状のレイアウトで形成されている。また、
図2には1本しか示していないが、ゲートトレンチ107は、複数本が紙面左右方向に等間隔に配置され、それぞれp型ディープ層103の間に挟まれるように配置されていてストライプ状とされている。
【0026】
また、p型ベース領域104のうちゲートトレンチ107の側面に位置している部分は、縦型MOSFETの作動時にn+型ソース領域105とn-型低濃度層102との間を繋ぐチャネル領域とされる。そして、このチャネル領域を含むゲートトレンチ107の内壁面にゲート絶縁膜108が形成されている。ゲート絶縁膜108の表面にはドープドPoly-Siにて構成されたゲート電極109が形成されており、これらゲート絶縁膜108およびゲート電極109がゲートトレンチ107内に埋め込まれている。このため、ゲート電極109もゲートトレンチ107の長手方向と同じ一方向を長手方向として延設されている。そして、このような構造により、トレンチゲート構造が構成されている。
【0027】
トレンチゲート構造は、
図3の断面図に示されるように、
図1の紙面左右方向に延設されている。そして、
図3に示すように、アクティブ領域Raよりも外側までトレンチゲート構造が張り出すように形成されている。また、ゲートトレンチ107の側面にn
+型ソース領域105が形成されることになるが、n
+型ソース領域105はアクティブ領域Raに形成され、それよりも外側には形成されていない。このため、アクティブ領域Ra内においてのみチャネル領域が形成されるようになっている。
【0028】
さらに、四角形状とされたアクティブ領域Raのうち少なくともトレンチゲート構造の先端に位置する辺では、
図3に示すように、ゲートトレンチ107の両先端から離れた位置におけるp型ベース領域104の表面に、フィールド絶縁膜110が形成されている。フィールド絶縁膜110は、トレンチゲート構造の長手方向と交差する方向に伸びる端部110aを有している。本実施形態では、フィールド絶縁膜110は、アクティブ領域Raにおいて開口されており、この開口端のうち
図1の紙面左右に位置する部分が各トレンチゲート構造の先端と対向させられている。また、
図3中には現れていないが、
図1における四角形状とされたアクティブ領域Raの上下の辺に沿うように、フィールド絶縁膜110の開口端が位置している。
【0029】
フィールド絶縁膜110は、高電圧が掛かっても破壊されないように厚くされている。ゲートトレンチ107内に形成されたゲート絶縁膜108は、ゲートトレンチ107の外側にも形成され、フィールド絶縁膜110の表面上にも形成されている。また、少なくともフィールド絶縁膜110のうちアクティブ領域Ra側、つまりトレンチゲート構造側の端部110aが斜めに傾斜させられた傾斜面とされている。そして、当該端部110aにおいて、フィールド絶縁膜110の厚みがアクティブ領域Raから外周領域Rbに向かうほど徐々に厚くなる構造とされている。また、ゲート電極109がゲートトレンチ107の内側だけでなく、ゲートトレンチ107の長手方向の両端からゲートトレンチ107の外側に引き出されており、フィールド絶縁膜110の上に至る位置まで引き出されている。ゲート電極109のうちゲートトレンチ107の外側に引き出された部分がゲートライナー13の一部となるゲート引出部109aを構成している。
【0030】
このゲート引出部109aは、厚く形成されたフィールド絶縁膜110を乗り上げるように配置される。つまり、ゲート引出部109aの下にフィールド絶縁膜110の端部110aが位置することになる。このため、仮に、フィールド絶縁膜110の端部110aが傾斜していなければ、フィールド絶縁膜110の端部110aの段差部においてゲート引出部109aが薄くなって、段切れが発生し得る。しかしながら、本実施形態では、フィールド絶縁膜110の端部110aを傾斜させているため、ゲート引出部109aがフィールド絶縁膜110の端部110aの段差によって段切れすることを抑制できる。特に、ゲート引出部109aを含むゲート電極109の厚みがフィールド絶縁膜110の厚みよりも薄くなる場合に段切れが発生し易くなるが、このような場合にも本実施形態の構成とすることで段切れが発生することを抑制できる。
【0031】
なお、ゲート絶縁膜108については、適宜パターニング可能であるため、必ずしもフィールド絶縁膜110の表面上に形成されている必要はなく、フィールド絶縁膜110の端部までゲート絶縁膜108が形成された構造とされていてもよい。また、ゲート絶縁膜108がp型ベース領域104の上に形成され、ゲート絶縁膜108の上にフィールド絶縁膜110が形成された構造であってもよい。
【0032】
一方、
図4に示すように、パッド配置領域Rcを通る断面においては、トレンチゲート構造が形成されたアクティブ領域Raとフィールド絶縁膜110とが離れていて、フィールド絶縁膜110へのゲート引出部109aの乗り上げが無い。つまり、パッド配置領域Rcに配置されるフィールド絶縁膜110のうちアクティブ領域Raに沿って伸びる端部については、ゲート引出部109aが乗り上げられていない。このため、この部分ではフィールド絶縁膜110の端部が必ずしも傾斜していなくても良い。
【0033】
また、
図2~
図4に示すように、n
+型ソース領域105、p
+型コンタクト領域106、ゲート引出部109aを含むゲート電極109の表面には、層間絶縁膜111が形成されている。そして、層間絶縁膜111の上に導体パターンとして、表面電極に相当するソース電極112や
図3および
図4に示すようなゲート配線層113が形成されている。ここでいうゲート配線層113が上記したゲートライナー13の一部を構成する部分であり、ゲート配線層113とゲート引出部109aとによってゲートライナー13が構成されている。また、層間絶縁膜111にはコンタクトホール111a、111bが形成されている。これにより、
図2に示すように、ソース電極112がコンタクトホール111aを通じてn
+型ソース領域105やp
+型コンタクト領域106と電気的に接触されている。また、
図3に示すように、ゲート配線層113がコンタクトホール111bを通じてゲート引出部109a、つまりゲート電極109と電気的に接続されている。
【0034】
また、n
+型基板101の裏面側、つまりソース電極112が形成された側と反対側の一面にはn
+型基板101と電気的に接続された裏面電極に相当するドレイン電極114が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造の縦型MOSFETが構成されている。このような縦型MOSFETが複数セル配置されることでアクティブ領域Raが構成されている。そして、
図3に示すように半導体チップ10の表面がパッシベーション膜115で覆われ、パッシベーション膜115のうちのソース電極112と対応する部分が除去されて開口させられている。また、
図4中には一部しか現れていないが、パッシベーション膜115のうちパッド配置領域Rcに備えられる各パッド12a~12dと対応する部分も除去されて開口させられている。このようにして、縦型MOSFETを備えた半導体チップ10が構成されている。
【0035】
また、感温素子領域11においては、感温素子として例えば感温ダイオードが形成されている。感温ダイオードは、例えばポリシリコンに対してp型不純物やn型不純物をイオン注入して形成したp型層とn型層によるPNダイオードを複数段備えることにより構成されている。この感温ダイオードのカソードをカソードパッド12aに接続し、アノードをアノードパッド12bに接続している。
【0036】
なお、パッド配置領域Rcに備えられた他のパッド12c、12dについては、縦型MOSFETの各部に電気的に接続される。センスパッド12cは、素子に流れる電流の一部を取り出すことでメインセルに流れる電流を測定できるようにしている。ゲートパッド12dについては、ゲートライナー13を介してゲート電極109と電気的に接続される。これにより、ゲートパッド12dを通じてゲート電極109に対してゲート電圧の印加が行われるようになっている。
【0037】
以上のようにして、本実施形態の半導体装置である半導体チップ10が構成されている。
【0038】
このように構成された半導体装置では、ゲート引出部109aの下に位置しているフィールド絶縁膜110の端部110aを斜めに傾斜させている。このため、フィールド絶縁膜110の端部110aの段差部においてゲート引出部109aが薄くなることが抑制される。これにより、ゲート引出部109aがフィールド絶縁膜110の端部110aの段差によって段切れすることを抑制できる。よって、フィールド絶縁膜110を絶縁破壊されない膜厚としつつも、ゲート引出部109aが途切れてしまうことを抑制できる構造の半導体装置にできる。
【0039】
具体的には、
図4に示した断面において、スイッチング時に流れる電流は
図5に示すような流れとなる。つまり、フィールド絶縁膜110の下方に電流が流れることになる。このときの電流をIとし、電流Iが流れる部分での半導体の抵抗値をRとすると、接地電位とされるゲート配線層113と半導体表面との間に、電流Iと抵抗値Rを掛け算した値の図中矢印Vbで示した高い電位差が発生する。この高い電位差によって絶縁破壊されないようにするには、フィールド絶縁膜110を厚くすることが必要になる。そして、本実施形態のような構造とすれば、ゲート引出部109aが段切れしないようにできるため、フィールド絶縁膜110を厚くして絶縁破壊を抑制することが可能となる。
【0040】
ここで、ゲート引出部109aの下に位置するフィールド絶縁膜110の端部について、傾斜させられていれば、フィールド絶縁膜110の端部の段差部においてゲート引出部109aが薄くなることが抑制可能である。しかしながら、フィールド絶縁膜110の端部の表面と下方に位置する半導体の表面との成す角度が垂直に近づくほど、ゲート引出部109aがフィールド絶縁膜110の端部の段差によって段切れし易くなる。このため、
図6に示す断面、つまり半導体チップ10を上面視したときにフィールド絶縁膜110の端部110aが伸びる方向に対して垂直な方向の断面において、Tg<Lを満たすようにすると好ましい。Tgは、ゲート引出部109aの厚みである。Lは、フィールド絶縁膜110の端部110aの膜厚が変化する領域である厚さ遷移領域の幅、つまり半導体チップ10を上面視したときのフィールド絶縁膜110の端部の伸びる方向に対する垂直方向での厚さ遷移領域の長さである。このように、TgよりもLの方を大きくすることで、ゲート引出部109aのうち厚さ遷移領域の上に形成される部分とそれ以外の上に形成される部分との厚みをほぼ変わらないようにでき、より確実にゲート引出部109aの段切れを抑制することが可能となる。
【0041】
続いて、上記のように構成された本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。ただし、半導体装置の製造方法のうち、トレンチゲート構造を含むスイッチング素子の形成工程などなどについては公知となっている手法を用いれば良いし、どのような手法で行っても良い。このため、フィールド絶縁膜110の形成工程について主に説明し、他の工程については簡単に説明する。
【0042】
まず、n+型基板101の主表面上にn-型低濃度層102を形成したのち、イオン注入等によってp型ディープ層103を形成し、さらにp型ベース領域104およびn+型ソース領域105を形成する。また、n+型ソース領域105に対してp型不純物をイオン注入してp+型コンタクト領域106を形成する。そして、n+型ソース領域105およびp型ベース領域104を貫通してn-型低濃度層102に達するゲートトレンチ107を形成する。
【0043】
そして、
図7Aに示すように、ゲートトレンチ107内を含めて、p型ベース領域104やn
+型ソース領域105およびp
+型コンタクト領域106などの半導体の表面に酸化膜などで構成されるフィールド絶縁膜110をデポジションする。その後、
図7Bに示すように、フォトリソグラフィにてフォトレジストマスク200でフィールド絶縁膜110として残す領域を覆い、この状態でフィールド絶縁膜110をウェットエッチングしてパターニングする。このとき、ウェットエッチングの横方向エッチングによって、フィールド絶縁膜110の端部110aが斜めに傾斜した形状になる。この後は、図示しないが、ゲート絶縁膜108の形成工程、ポリシリコン膜の形成およびパターニングによるゲート引出部109aを含むゲート電極109の形成工程、層間絶縁膜111の形成およびコンタクトホール111a、111bの形成工程を行う。さらに、配線電極材料の成膜およびパターニングによるソース電極112およびゲート配線層113の形成工程、パッシベーション膜115の形成およびパターニング工程、n
+型基板101の裏面側へのドレイン電極114の形成工程を行う。これにより、本実施形態の半導体装置を製造することができる。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してフィールド絶縁膜110の端部110aの形状を異ならせたものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0045】
上記第1実施形態では、
図7Bに示すようにウェットエッチングすることでフィールド絶縁膜110の端部110aが斜めに傾斜した形状となるようにした。この場合、フィールド絶縁膜110の端部110aは、全体が傾斜面として構成される。
【0046】
これに対して、本実施形態では、
図8に示すように、フィールド絶縁膜110の端部110aを厚みが階段状に徐々に厚くなる形状、つまり端部110aが階段状に傾斜した形状となるようにしている。このような形状は、
図9Aに示すように、フィールド絶縁膜110をドライエッチングでパターニングしたのち、さらに、フィールド絶縁膜110の端部110aの近傍をもう一度ドライエッチングすることで得られる。具体的には、フォトリソグラフィによってフィールド絶縁膜110の端部110aの近傍のみが開口するレジストマスク210を配置し、レジストマスク210で覆った状態でフィールド絶縁膜110の端部近傍をドライエッチングする。これにより、
図9Bに示すように、後工程としてゲート引出部109aを含むゲート電極109を形成したときに、ゲート引出部109aもフィールド絶縁膜110の端部110aの形状に沿って階段状に傾斜した形状にでき、段切れが抑制される。このような構造としても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、このように、フィールド絶縁膜110の端部110aが階段状に傾斜する場合には、Tg<Lの関係については、階段状の各段の先端位置を結ぶ直線を傾斜面と想定して、その傾斜面を厚さ遷移領域として考えれば良い。
【0047】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してフィールド絶縁膜110の構造を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0048】
図10に示すように、本実施形態では、ゲート引出部109aの下に端部が位置する部分であるか否かに応じてフィールド絶縁膜110の膜厚を異ならせている。具体的には、外周領域Rbのうちアクティブ領域Raに隣接する部分に位置するフィールド絶縁膜110、つまりフィールド絶縁膜110のうちのゲート引出部109aが乗り上げられる端部110aを構成する部分については厚みを薄くした薄膜部110bとしている。薄膜部110bの厚みについては、ゲート電極109より薄くされると好ましい。また、パッド配置領域Rcや外周領域Rbのうちパッド配置領域Rcに隣接する部分に位置するフィールド絶縁膜110、つまりフィールド絶縁膜110のうちゲート引出部109aが乗り上げられない端部を構成する部分については厚膜部110cとしている。厚膜部110cは、薄膜部110bよりも厚みが厚くなっている。このような構造とすれば、ゲート引出部109aの下に存在するフィールド絶縁膜110の端部による段差部を低くできるため、その段差部を乗り上げるようにゲート引出部109aが配置されても、ゲート引出部109aが段切れしないようにできる。また、スイッチング時にアクティブ領域Raから離れていてゲート配線層113と半導体表面との間に高い電位差が発生する部分については、フィールド絶縁膜110を絶縁破壊に耐えられる厚さにできる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0049】
このような構造の半導体装置の製造方法は、基本的には第1実施形態と同様であるが、各部を形成した半導体基板を用意してゲートトレンチ107を形成したのち、フィールド絶縁膜110を形成する際に、薄膜部110bと厚膜部110cが構成されるようにする。例えば、フィールド絶縁膜110を成膜する際に、デバイスの表面積に依存してフィールド絶縁膜110の膜厚が変わる成膜プロセス、例えばプラズマCVD(chemical vapor deposition)を用いると好ましい。
【0050】
具体的には、スイッチング素子として縦型MOSFETを形成する場合、アクティブ領域Raでは、ゲートトレンチ107を形成していることからデバイスの表面積がパッド配置領域Rcよりも大きくなる。同様に、外周領域Rbのうちアクティブ領域Raと隣接する領域、つまりトレンチゲート構造の両端に位置していてゲート引出部109aがフィールド絶縁膜110の端部110aに乗り上げる領域は、ゲートトレンチ107から近いため、単位面積当たりのデバイスの表面積が大きくなる。また、外周領域Rbでもアクティブ領域Raから離れている部分、つまり
図1でいうパッド配置領域Rcよりも下方に位置している部分では、表面の凹凸が少ないためデバイスの表面積が小さくなる。
【0051】
したがって、プラズマCVD等によってフィールド絶縁膜110を成膜すれば、アクティブ領域Raおよび外周領域Rbのうちアクティブ領域Raに隣接する領域では、パッド配置領域Rcと比較して薄くなって薄膜部110bが形成される。そして、パッド配置領域Rcや外周領域Rbでもアクティブ領域Raから離れている部分では、フィールド絶縁膜110が厚くなって厚膜部110cが形成される。この後、図示しないフォトマスクを用いてドライエッチングなどでフィールド絶縁膜110をパターニングすれば、
図10に示したような構造を形成できる。
【0052】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0053】
例えば、上記各実施形態では、アクティブ領域Ra内に備えられるスイッチング素子として縦型MOSFETを例に挙げているが、他のゲート電極を有するスイッチング素子、例えば縦型IGBTなどであっても良いし、複数種類の素子が組み合わせて備えられたものであっても良い。また、トレンチゲート構造のスイッチング素子に限らず、プレーナ型のスイッチング素子であっても、一方向に延設されたゲート電極109から引き出されたゲート引出部109aがフィールド絶縁膜110の端部に乗り上げる構造について、本発明を適用できる。
【0054】
また、上記各実施形態では、アクティブ領域Ra、外周領域Rbおよびパッド配置領域Rcのレイアウトの一例を示したが、ここに示したレイアウトに限るものではない。例えば、トレンチゲート構造が
図1中における半導体チップ10の左右方向の一方から他方に至るように形成されている必要はなく、左右方向において分割された構造とされていても良い。その場合、左右方向において分割された各トレンチゲート構造の間にもゲートライナー13が通過するようにレイアウトすることができる。そして、このような構成とする場合には、分割された各トレンチゲート構造の間にもフィールド絶縁膜110が形成され、そのフィールド絶縁膜110の端部を乗り上げるようにゲート引出部109aを配置した構造とすることができる。したがって、この部分を構成するフィールド絶縁膜110についても、上記第1、第2実施形態のように端部を傾斜させたり、第3実施形態のように薄膜部110bとしたりすることで、上記各実施形態の効果を得ることができる。
【0055】
また、パッド配置領域Rcにパッド12a~12dが配置された構成としたが、パッド数については任意であり、備える機能に応じたパッド数であれば良い。上記各実施形態では、アクティブ領域Raとパッド配置領域Rcとが外周領域Rbに囲まれつつ、これらが異なる位置に配置されていて重ならない構造としたが、これらの領域が重なるようにレイアウトされていても良い。ただし、第3実施形態については、デバイスの表面積に依って厚みが異なる製造プロセスに基づいてフィールド絶縁膜110を形成する場合、パッド配置領域Rcに備えられるフィールド絶縁膜110をアクティブ領域Raから離れた位置に形成する。
【0056】
さらに、上記実施形態では、半導体材料としてSiCやSiを例に挙げたが、他の半導体材料であっても良い。ただし、特にSiCを用いる場合には、使用電圧が高く、フィールド絶縁膜110に高電圧が印加されることから、本発明を適用すると好ましい。
【符号の説明】
【0057】
Ra…アクティブ領域、Rb…外周領域、Rc…パッド配置領域
10…半導体チップ、12a~12d…パッド、13…ゲートライナー
109…ゲート電極、109a…ゲート引出部、110…フィールド絶縁膜
110a…端部、112…ソース電極、114…ドレイン電極