(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ボルト供給装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20241106BHJP
B23P 19/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B65G47/14 A
B23P19/06 A
(21)【出願番号】P 2021127714
(22)【出願日】2021-08-03
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】吉良 和彦
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-052661(JP,A)
【文献】実公昭47-015807(JP,Y1)
【文献】実開昭51-123580(JP,U)
【文献】実開昭50-138780(JP,U)
【文献】特開平09-175638(JP,A)
【文献】特開昭60-053100(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104097930(CN,A)
【文献】特公昭43-025092(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/14
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ部を含む頭部と前記フランジ部から突出するネジ部とを有するボルトをボルト取出位置に供給するボルト供給装置であって、
鉛直方向に対して斜めに配置されたスライド板と、
前記スライド板の傾斜方向に沿って前記ボルトを下方に案内する案内溝の下端に存在する分岐位置から第1溝と第2溝とに分岐し、前記案内溝と前記第1溝とがなす第1角度より前記案内溝と前記第2溝とがなす第2角度が小さく形成される溝部と、
前記分岐位置近傍に回転可能に支持される振分部と、
前記第1溝および前記第2溝の各下端に設定される前記ボルト取出位置と、を有し、
前記溝部は、
前記スライド板において前記ネジ部が通過し且つ前記フランジ部が通過しない幅により形成され、
前記振分部は、
前記第1溝の幅の半分以上の長さに形成され、前記分岐位置に配置された前記ボルトに接触可能な第1接触面と前記第1溝に配置された前記ボルトに接触可能な第2接触面とを有する複数のガイド爪により構成され、
前記第1溝に配置された前記ボルトが前記第2接触面に接触している状態では回転を停止するとともに前記第1接触面が前記第1溝の入口を塞ぎ、
前記第1溝に配置された前記ボルトが前記第2接触面に接触していない状態では回転可能であるボルト供給装置。
【請求項2】
前記ボルト取出位置は、
さらに前記分岐位置に設定される請求項1に記載のボルト供給装置。
【請求項3】
前記第1接触面は、平坦に形成され、
前記第2接触面は、前記振分部の回転方向とは逆方向へ窪む半円弧状に形成される請求項1又は2に記載のボルト供給装置。
【請求項4】
前記案内溝は、
前記分岐位置を通って前記傾斜方向に延在する軸と、
前記軸から前記第2溝側に湾曲する第1曲部と、
前記第1曲部から上方に延びて前記第1曲部と反対側に湾曲する第2曲部と、を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のボルト供給装置。
【請求項5】
前記スライド板に、前記第1曲部の外縁の形状に沿って前記傾斜方向に直交する方向に延びたガイド面を有するスイングバイガイドが設けられ、
前記スイングバイガイドは、前記ネジ部が前記第2溝側に向かう方向を規制する請求項4に記載のボルト供給装置。
【請求項6】
前記スライド板に、前記第1溝および前記第2溝のそれぞれの内縁の形状に沿って前記傾斜方向に直交する方向に延びた各分岐ガイド面を有する分岐ガイドが設けられ、
前記分岐ガイドは、前記ネジ部が前記軸側に向かう方向を規制する請求項4又は5に記載のボルト供給装置。
【請求項7】
前記分岐ガイドは、分岐位置近傍において前記軸よりも前記第2溝側に配置される頂点部を有する請求項6に記載のボルト供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ライン等において自動的にボルトを供給するボルト供給装置が開発されている。このようなボルト供給装置では、ボルトを所定の位置に整列させることにより、作業効率の向上を図ることができる。
【0003】
特許文献1には、ボルトを投入するボルト投入部と、ボルト投入部の下方に配置されたV字状のガイドと、上面にU字の溝が形成されているとともに、溝にボルト投入部から投入されて落下するボルトが接触することでボルトの向きを変更した後に、V字状のガイドに落下させる回転促進板と、を備える。これにより、ボルト投入部において斜めに投入されたボルトの傾きを、V字状の溝に落下するまでの間に修正することができるボルト供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のボルト供給装置は、1つのボルト投入部に対応してボルトの供給先が1つ設けられる。例えば、1つのボルト投入部から複数存在する供給先のそれぞれにボルトを供給したい場合、特許文献1に記載の技術では、ボルトの供給先を制御するために動力を備えることが考えられるが、装置が大がかりになるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、小型であってボルトの供給先を制御可能なボルト供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかるボルト供給装置は、フランジ部を含む頭部とフランジ部から突出するネジ部とを有するボルトをボルト取出位置に供給するボルト供給装置であって、鉛直方向に対して斜めに配置されたスライド板と、スライド板の傾斜方向に沿ってボルトを下方に案内する案内溝の下端に存在する分岐位置から第1溝と第2溝とに分岐し、案内溝と第1溝とがなす第1角度より案内溝と第2溝とがなす第2角度が小さく形成される溝部と、分岐位置近傍に回転可能に支持される振分部と、第1溝および第2溝の各下端に設定されるボルト取出位置と、を有し、溝部は、スライド板においてネジ部が通過し且つフランジ部が通過しない幅により形成され、振分部は、第1溝の幅の半分以上の長さに形成され、分岐位置に配置されたボルトに接触可能な第1接触面と第1溝に配置されたボルトに接触可能な第2接触面とを有する複数のガイド爪により構成され、第1溝に配置されたボルトが第2接触面に接触している状態では回転を停止するとともに第1接触面が第1溝の入口を塞ぎ、第1溝に配置されたボルトが第2接触面に接触していない状態では回転可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、小型であってボルトの供給先を制御可能なボルト供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかるボルト供給装置の概観図である。
【
図4】ボルト傾倒部の動作の例を示す第1の図である。
【
図5】ボルト傾倒部の動作の例を示す第2の図である。
【
図6】ボルト傾倒部の支点部について説明する図である。
【
図7】ボルト姿勢制御部の構成を示す第1の図である。
【
図8】ボルト姿勢制御部の構成を示す第2の図である。
【
図9】ボルト姿勢制御部の構成を示す第3の図である。
【
図10】姿勢制御ガイドの機能を説明する図である。
【
図11】壁部間を通過するボルトの挙動の第1の例を示す図である。
【
図12】壁部間を通過するボルトの挙動の第2の例を示す図である。
【
図13】壁部間を通過するボルトの挙動の第3の例を示す図である。
【
図14】壁部間を通過するボルトの挙動の第4の例を示す図である。
【
図15】ボルト排出口の近傍におけるボルトの挙動の一例を示す図である。
【
図16】ボルト取出部の構成を示す第1の図である。
【
図17】ボルト取出部の構成を示す第2の図である。
【
図18】接続部におけるボルトの挙動の例を示す図である。
【
図19】第1曲部におけるボルトの挙動の例を示す図である。
【
図20】第2曲部におけるボルトの挙動の例を示す図である。
【
図23】ボルト取出部にボルトが充填された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。さらに、以下の説明において同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(ボルト供給装置1の概要)
以下に、本発明の実施の形態にかかるボルト供給装置1の概要を説明する。
図1は、実施の形態にかかるボルト供給装置の概観図である。
図2は、
図1に示すボルト供給装置の平面図である。なお、
図2は、ボルト誘導ブロックの上端を塞ぐ天板33を取り外した状態のボルト供給装置1を上方から観察している。
図1および
図2に示すボルト供給装置1は、投入された複数のボルト9がボルト取出部12に充填されることにより、ボルト取出位置にボルト9が供給された状態を示している。
【0012】
なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、
図1は、右手系の直交座標系が付されている。また、
図2以降において、直交座標系が付されている場合、
図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。本実施の形態において、X軸方向は、左右方向と称される場合があり、X軸プラス側は右側、X軸マイナス側は左側とそれぞれ称される場合がある。またY軸方向は、前後方向と称される場合があり、Y軸プラス側は後方、Y軸マイナス側は前方とそれぞれ称される場合がある。Z軸方向は、鉛直方向または上下方向と称される場合が有り、Z軸プラス側は上方、Z軸マイナス側は下方とそれぞれ称される場合がある。
【0013】
図1および
図2に示すボルト供給装置1は、フランジ付き六角ボルト(以下、単に「ボルト」と称する)を自動的に所定の位置に供給する機能を有する。ボルト供給装置1は、ボルト投入部11およびボルト取出部12を有している。ボルト供給装置1のユーザは、複数のボルト9をボルト投入部11に投入し、ボルト供給装置1を起動させる。ボルト供給装置1は、投入されたボルト9を、ボルト取出部12におけるボルト取出位置に供給する。
【0014】
ここで、本実施の形態におけるボルト供給装置1は、ボルト9を磁力により吸着することで以下の機能を実現する。そのため、本実施の形態におけるボルト9は、鉄、ステンレスまたは銅などを主成分とした材料により形成されたものである。
【0015】
そこで、
図3を参照してボルト9の概略を説明する。
図3は、ボルトの概略図である。ボルト供給装置1では、装置の大型化を抑制しつつも、サイズおよび重量が比較的大きいボルト9の姿勢を制御してボルト取出位置に整列させることができる。
【0016】
ボルト9は、フランジ部7および六角部8を含む頭部と、フランジ部7から突出するネジ部6と、を有している。フランジ部7は、六角部8におけるネジ部6側の端部外周縁に鍔状に形成されている。ボルト9の寸法は、六角部8の直径が直径D1である。フランジ部7の直径は直径D2である。ネジ部6の直径は直径D3である。六角部8の直径D1は、六角形の対角線の長さであって、六角部8の最大径に相当する。フランジ部7は六角部8より大径に形成される。ネジ部6は、六角部8より小径に形成される。また、ボルト9は、中心軸Cを有する。なお、フランジ部7については、六角部8側の端面を一端面とし、ネジ部6側の端面を他端面とする。
【0017】
図1および
図2に戻り、ボルト供給装置1を利用するユーザは、例えばボルト9を用いて組み立て作業を行う。ユーザは、例えば
図1に示すような工具900にボルト9をセットするためにボルト供給装置1を使用する。工具900は、三角形状の基部901の一方側に、つまみ部902を有し、反対側に、ソケット部903を有する。ユーザは、工具900をボルト供給装置1の予め設定された位置に載置した後に、工具900を取り上げる。ユーザが取り上げた工具900には、ソケット部903のそれぞれに、ボルト取出位置から取り出されたボルト9がセットされている。
【0018】
本実施形態では、工具900が3つのソケット部903を有している場合について説明する。ただし、1つの工具900が要するボルト9の数量は、3つに限らず、奇数個であっても偶数個であってもよい。ボルト供給装置1は、用いる工具900に応じて後述するボルト取出部12を適切に設計することにより、工具900に対して奇数個又は偶数個のボルト9を供給することが可能である。
【0019】
ボルト供給装置1は、主な構成として、ボルト搬送ユニット2、ボルト誘導ユニット3、およびボルト整列ユニット4を有している。ボルト搬送ユニット2は、ボルト投入部11に投入されたボルト9をボルト誘導ユニット3に搬送する。ボルト誘導ユニット3は、ボルト搬送ユニット2からボルト整列ユニット4にボルト9を受け渡す。ボルト整列ユニット4は、ボルト誘導ユニット3から受け入れたボルト9の姿勢を一定に揃えた状態でボルト9を振り分けながらボルト取出部12に整列させる。
【0020】
以下に、ボルト搬送ユニット2、ボルト誘導ユニット3、およびボルト整列ユニット4について説明する。ボルト供給装置1は、ボルト搬送ユニット2の上部にボルト整列ユニット4が構成され、さらに上部にボルト誘導ユニット3が構成されている。
【0021】
(ボルト搬送ユニット2の概要)
ボルト搬送ユニット2の概要について説明する。ボルト搬送ユニット2は、主な構成として、基台ブロック20およびボルト搬送ブロックを有している。
【0022】
基台ブロック20は、上面が開口した四角柱形状をしており、底部が床面と接する。基台ブロック20の右側の側部には、ユーザがボルト9を投入するためのボルト投入口が形成されている。基台ブロック20は、上面に開口を有し、立方体形状の内側にボルト9を受け入れる空間200を有している。空間200において、基台ブロック20は、後述するボルト搬送部24が上昇する領域に設けられるボルト貯留部210を有する。ボルト貯留部210は、ボルト搬送ブロックに接するように構成されている。基台ブロック20は、ボルト9が重力にしたがってボルト貯留部210に転がり落ち、ボルト貯留部210に集まり易くなるように形成されている。
【0023】
空間200を画成する底面は、基台ブロック20の外側から、ボルト貯留部210に向かって高さが低くなるように複数の斜面により構成されている。換言すると、当該底面は、すり鉢形状を呈している。ボルト貯留部210は、すり鉢形状の底部に相当する部分である。
【0024】
ボルト搬送ブロックは、上下に平行に延伸する板状部材220a、220bがコンベヤ23における幅方向(X軸方向)の両端部を挟み込む形状を呈し、板状部材220a、220bの相対的に低い位置(低位置)がボルト貯留部210に接するように設置されている。なお、右側の板状部材220aは、上端部の一部であって後述するボルト落下口34に対応する範囲がコンベヤ23の頂上より僅かに低くなるように下方に切り欠かれている。
【0025】
ボルト搬送ブロックは、ボルト貯留部210に集まったボルト9を上方に搬送し、搬送したボルト9をボルト貯留部210よりも高い位置(高位置)であるコンベヤ23の頂上に搬送する。ボルト搬送ブロックは、主な構成として、コンベヤ23、ボルト搬送部24、および切離しガイド25を有している。
【0026】
コンベヤ23は、無端ベルト状のコンベヤであって、鉛直方向における低位置と高位置とを循環可能に設けられている。コンベヤ23には、コンベヤ23を循環させるための駆動モータ(不図示)が接続されている。コンベヤ23は、ボルト貯留部210に対向する側において、ボルト貯留部210の近傍から、コンベヤ23の頂上であって切離しガイド25の近傍に移動し、再びボルト貯留部210の近傍に戻るという循環を行うように構成されている。
【0027】
ボルト搬送部24は、コンベヤ23に係合され、コンベヤ23の動作に併せて所定の経路を循環する。ボルト搬送部24は、コンベヤ23が形成する環の外面に突出しており、ボルト9を吸着するための磁石を有している。ボルト搬送部24は、ボルト貯留部210でボルト9を吸着し、吸着したボルト9を切離しガイド25の切離し面26に接触可能な位置に搬送する。ボルト搬送部24は、ボルト9を吸着したまま上昇し、吸着したボルト9を切離しガイド25に当接させる。
【0028】
ボルト搬送部24の磁石はボルト9の呼び径より小さい。そのため、ボルト搬送部24は図に示すように1本のボルト9を好適に吸着できる。ボルト搬送部24に吸着したボルト9は、コンベヤ23の頂上に向かう上昇中に、ボルト9の中心軸CがZ軸方向に近づく姿勢に制御されることが好ましい。
【0029】
なお、コンベヤ23には、循環方向に互いに間隔を空けて複数のボルト搬送部24を設けることができる。複数のボルト搬送部24により、ボルト供給装置1は、ボルト搬送のサイクル時間を短縮できる。
【0030】
切離しガイド25は、コンベヤ23の上方において、左右の板状部材220a、220bの上端部間の後方側に配置されている。切離しガイド25は、幅方向(X軸方向)の両端が板状部材220a、220bの各上端部における互いの対向面に接している。切離しガイド25は、後端面がX軸方向に沿って形成され、前端面が切離し面26を形成している。切離しガイド25は、左側の板状部材220bから右側の板状部材220aに向かってY軸方向の長さが短く形成されている。すなわち、切離し面26は、左前方から右後方に向かって傾斜している。
【0031】
切離しガイド25とコンベヤ23とは、ボルト搬送部24に吸着した状態のボルト9がコンベヤ23の頂上と切離しガイド25との間を通過できない隙間を介して配置されている。この隙間は、Z軸方向の長さがボルト搬送部24の厚みより僅かに長いため、ボルト搬送部24はこの隙間を通過することができる。
【0032】
ボルト9は、ボルト搬送部24に吸着された後、コンベヤ23の循環方向にしたがってZ軸方向の下方から上方に向かって上昇する。そして、ボルト9は、コンベヤ23の頂上を通過する時に、Y軸方向の前方から後方に向かうボルト9の進行方向(
図2の白抜き矢印の方向)に進行する。以下、本実施形態において、ボルト9の進行方向は、コンベヤ23の頂上においてボルト9が進行する方向と定義する。コンベヤ23の頂上では、切離し面26に当接したボルト9が進行を停止する一方、ボルト搬送部24は引き続きボルト9の進行方向に向かって進行する。これに伴い、吸着状態のボルト搬送部24とボルト9とは徐々に離れる。
【0033】
そして、ボルト搬送部24がコンベヤ23の頂上と切離しガイド25との間の隙間を通過し終えると、切離し面26に当接しているボルト9はボルト搬送部24の吸着力から解放されて、ボルト搬送部24から乖離する。このような構成により、吸着状態のボルト搬送部24とボルト9とを切り離すことができる。
【0034】
(ボルト誘導ユニット3の概要)
次に、ボルト誘導ユニット3の概要について説明する。ボルト誘導ユニット3は、主な構成として、ボルト誘導ブロック、ボルト落下口34、およびボルト傾倒部300を有する。ボルト誘導ブロックは、ボルト9をボルト搬送ユニット2からボルト整列ユニット4へ誘導する。ボルト誘導ブロックは、上下に平行に延伸する側板31a、31bを有する。
【0035】
側板31aは、右側の壁部51の外側に配置され、下端部の内側面が壁部51の上端部の外側面に接している。また側板31aは、側板31bに対向する側の面に直交して左方向に突出する板状部材32a、32bを有している。側板31bは、左側の板状部材220bの外側に配置され、下端がスライド板40に接している。側板31a、31bは、略同一の高さまで延伸しており、上端部が板状部材220bの上端から上方に突出している。さらに、ボルト誘導ブロックは、上端の開口を塞ぐ天板33を有する。
【0036】
板状部材32a、32bは、前後方向において、ボルト9の頭部からネジ部6のネジ先までの全長より大きな隙間を介して対向している。また、板状部材32a、32bの左右方向の長さは、それぞれボルト9の全長より短く形成されている。前方の板状部材32aは、ボルト排出ガイド53の上方においてボルト落下口34から下方に延びるように形成されている。後方の板状部材32bは、スライド板40の上部において下端がスライド板40に接し、ボルト落下口34に延びている。
【0037】
ボルト誘導ブロックの上部には、右側の側板31aおよび板状部材32a、32bに囲まれたボルト落下口34が形成されている。ボルト落下口34は、後述する姿勢制御溝44の上方に配置され、ボルト搬送部24から乖離したボルト9をボルト姿勢制御部50に受け入れる開口である。ボルト落下口34とコンベヤ23の頂上とは、X軸方向に隣り合って配置されている。そして、ボルト落下口34には、落下口ガイド36が備えられている。
【0038】
落下口ガイド36は、前後の板状部材32a、32b間に配置されている。落下口ガイド36は、前後方向の両端が板状部材32a、32bの互いの対向面に接している。落下口ガイド36は、右側端面が右側の側板31aと接しており、左側端面が落下口ガイド面37を形成している。落下口ガイド36は、右側の側板31aから左方向に向かってY軸方向の長さが短く形成されている。すなわち、落下口ガイド面37は、右前方から左後方に向かって傾斜している。
【0039】
ボルト傾倒部300は、ボルト9を傾けてボルト9の重心をボルト落下口34に近づく方向に移動させることにより、ボルト9をボルト落下口34に誘導する。ボルト傾倒部300は、左側の板状部材220bの上端面上に配置されている。ボルト傾倒部300は、揺動部材310、付勢手段320、および支点部330を有する。
【0040】
揺動部材310は、L字状を有し、ボルト9の進行方向と直交する方向に延びる第1接触部311と、ボルト9の進行方向に延びる第2接触部312と、を有する。第1接触部311は後方側に配置されてX軸方向に沿っている。第2接触部312は、第1接触部311の左端に接続して前方に延び、左側の板状部材220bに沿っている。揺動部材310は、XY平面上を揺動可能である。
【0041】
付勢手段320は、例えばねじりバネであり、両端が左側の側板31bの上端部に連結している。支点部330は、左側の板状部材220bの上端面において、揺動部材310を揺動可能に支持している。揺動部材310は、支点部330に設けられた付勢手段320によって、所定の付勢力でボルト9の進行方向とは逆方向に付勢されている。
【0042】
揺動部材310は、ボルト搬送部24に吸着してコンベヤ23により搬送されるボルト9の進行に伴って、ボルト9から圧力を受けてZ軸回りにボルト9の進行方向へ回転する。揺動部材310が回転すると、ボルト9の進行方向とは逆方向にあるボルト9の一方端がボルト落下口34に近づく右方向に移動してボルト9が進行方向から傾く。ボルト9から受ける圧力がなくなった場合、揺動部材310は付勢手段320の付勢力によって元の位置に復帰する。
【0043】
揺動部材310は、第1接触部311のボルト9と接触する面がボルト9の進行方向に直交する状態となる位置(元の位置)から、切離しガイド25の切離し面26と面一になる位置(切離し位置)まで回転する。なお、左側の側板31bは、揺動部材310の回転運動を妨げないように、上端部の一部が下方に向かって切り欠かれている。
【0044】
切離し面26および落下口ガイド面37は、ボルト落下口34の開口を挟んで左右方向に対向している。切離し面26および落下口ガイド面37は、前方から後方に向かうにしたがってX軸方向の互いの距離が接近するように、YZ面に対して傾斜した構成を有している。すなわち、切離し面26および落下口ガイド面37は、ボルト9の進行方向に向かって閉じた略V字状に配置されている。切離し面26および落下口ガイド面37は、ボルト9を確実にボルト落下口34の開口に導くことができるように、それぞれの傾斜角度を設計することが好ましい。
【0045】
図4および
図5を参照して、ボルト傾倒部300についてより詳細に説明する。
図4は、ボルト傾倒部の動作の例を示す第1の図である。
図5はボルト傾倒部の動作の例を示す第2の図である。
【0046】
図4は、相対的に弱い付勢力を有する付勢手段320を用いた場合を示している。
図5は、相対的に強い付勢力を有する付勢手段320を用いた場合を示している。
図4および
図5に示すボルト9は、頭部が前方にあってネジ部6が後方になる姿勢でボルト搬送部24に吸着し、コンベヤ23で搬送されている。この姿勢では、ボルト9の中心軸Cがボルトの進行方向(Y軸方向)に近づいている。
【0047】
図4に示す例では、まず、コンベヤ23の頂上において、コンベヤ23はボルト9を進行方向に向かって搬送している。この時、ボルト9の重心は、例えばボルト9の進行方向に平行なコンベヤ23の中心線上に位置した状態である。そして、コンベヤ23によって搬送されるボルト9が第1接触部311に当接して揺動部材310を押圧することにより、揺動部材310が元の位置から切離し位置に回転する。揺動部材310の回転に伴って、第2接触部312はボルト9に当接する。
【0048】
具体的には、ボルト9のネジ先が第1接触部311に当接することに伴って反時計回りに回転した揺動部材310の第2接触部312は、フランジ部7に当接してボルト9の頭部を右方向に押圧する。このように、揺動部材310により頭部が右方向に傾けられたボルト9の重心は、コンベヤ23の中心線よりも右側に移動する。すなわち、ボルト傾倒部300は、ボルト9の一方端をボルト落下口34側に傾けて、ボルト9の重心をボルト落下口34に近づく方向に移動させることができる。
【0049】
その後、揺動部材310が切離し位置に達すると、切離し面26によってボルト搬送部24からボルト9が乖離する。この時、ボルト9は、重心がボルト落下口34寄りに移動した状態にあるため、落下口ガイド36の落下口ガイド面37に案内されながら重力にしたがってボルト落下口34の開口に落下する。そして、ボルト9から受ける圧力がなくなった揺動部材310は、付勢手段320の付勢力によって元の位置に復帰する。
【0050】
一方、
図5に示す例では、揺動部材310が元の位置に復帰する時に、付勢手段320の付勢力によりボルト傾倒部300がボルト落下口34に向けてボルト9を撥ね飛ばしている。この場合、ボルト傾倒部300が撥ね飛ばしたボルト9は、前方の板状部材32aの対向面に頭部が当たることでネジ先が右方向に移動するように振れる。このように振れたボルト9のネジ部6は、落下口ガイド面37に当たることによってそれ以上の振れが規制される。これにより、ボルト9は中心軸CがY軸方向に近づいた姿勢でボルト落下口34の開口に落下する。このように、
図5に示す例では、揺動部材310を介してボルト9に適度な圧力をかけることができるように、付勢手段320の付勢力が調整されている。
【0051】
ここで、
図6を参照して、ボルト傾倒部300の支点部330について好ましい位置を説明する。
図6は、ボルト傾倒部の支点部について説明する図である。なお、
図6では、付勢手段320の図示を省略している。本実施形態では、揺動部材310の回転距離を確保するために、第2接触部312に設けた支点部330を板状部材220bの前方寄りの位置に配置することが好ましい。
【0052】
図6には、異なる位置に配置された支点部330を含むボルト傾倒部300の動作について、2つのパターン(第1パターンおよび第2パターン)を示している。第2パターンは、上述の好ましい位置に配置された支点部330を含むボルト傾倒部300の動作を示している。第1パターンは、第1接触部311および第2接触部312の交点に設けた支点部330を第2パターンよりも板状部材220bの後方寄りの位置に配置したボルト傾倒部300の動作を示している。
【0053】
図6に示すように、第2パターンでは、揺動部材310が元の位置から切離し位置に達するまでのボルト9の移動距離が第1パターンと比べて長くなる。そして、第2パターンでは、揺動部材310がより大きな回転半径で回転するため、揺動部材310の回転距離が第1パターンと比べて長くなる。これにより、第2パターンの方が揺動部材310の回転速度が遅くなるため、第2パターンではゆっくりと時間をかけてボルト9の傾きを変化させることができる。したがって、第2パターンに示したボルト傾倒部300の構成によれば、ボルト9を傾ける際に生じ得るボルト9のばたつきを抑制し、より安定した姿勢でボルト9をボルト落下口34に確実に落下させることができる。
【0054】
(ボルト整列ユニット4の概要)
次に、
図1および
図2に戻り、ボルト整列ユニット4の概要について説明する。ボルト整列ユニット4は、主な構成として、スライド板40、ボルト姿勢制御部50、およびボルト取出部12を有している。
【0055】
スライド板40は、ボルト誘導ブロックからボルト取出部12に亘って形成される板状の部材である。スライド板40は、後方から前方に向かって、ボルト誘導ブロックから離れるにしたがって下方に傾斜している。スライド板40は、傾斜表面41と、傾斜表面41の裏面である傾斜裏面42と、を有している。傾斜表面41および傾斜裏面42は、スライド板40の傾斜方向に沿って形成されている。傾斜表面41はボルト供給装置1の外部に面しており、傾斜裏面42はボルト供給装置1の内部に面している。
【0056】
スライド板40は、下方にボルト取出部12を有し、上方にボルト誘導ブロックが設けられている。また、スライド板40は、ボルト9を導くための溝部43を有している。ボルト9が溝部43に遊嵌すると、フランジ部7の他端面が傾斜表面41に接しながら、ボルト9が重力にしたがい溝部43に沿って下方に移動する。
【0057】
溝部43は、ボルト9のネジ部6が通過し且つフランジ部7が通過しない幅により形成されている。溝部43は、上端から下方に向かって、姿勢制御溝44、案内溝47、第1溝48、および第2溝49を有する。姿勢制御溝44の下端は、案内溝47に接続している。案内溝47は、下端に存在する分岐位置473から第1溝48と第2溝49とに分岐している。すなわち、案内溝47の下端は、第1溝48および第2溝49に接続している。
【0058】
ボルト姿勢制御部50は、ボルト誘導ユニット3から受け入れたボルト9を重力にしたがって所定の姿勢に制御しながらボルト排出口56に導き、ボルト排出口56からボルト9を排出する。ボルト取出部12は、ボルト排出口56を介してボルト姿勢制御部50から受け入れたボルト9を所定の姿勢のまま下方に導きボルト取出位置に供給する。
【0059】
続いて、
図7~
図9を参照して、ボルト姿勢制御部50の詳細について説明する。
図7は、ボルト姿勢制御部の構成を示す第1の図である。
図8は、ボルト姿勢制御部の構成を示す第2の図である。
図9は、ボルト姿勢制御部の構成を示す第3の図である。なお、
図7は、ボルト姿勢制御部50をZ軸方向の上方から観察した図である。
図8は、X軸方向の左側から観察したボルト姿勢制御部50の片側(右側)を示している。
図9は、ボルト姿勢制御部50をY軸方向の前方から観察した図である。
【0060】
以下に説明するボルト姿勢制御部50は、ネジ部6の長さが比較的長く形成され、ある程度の重量を有するボルト9に対して有用である。ある程度の重量とは、姿勢制御溝44を滑落するボルト9の頭部が床面部440の段差に当たった場合に、ネジ部6の自重によってボルト9が回転することができる程度の重量を意味する。
【0061】
ボルト姿勢制御部50は、ボルト落下口34の下方に配置されている(
図2)。
図7~
図9に示すように、ボルト姿勢制御部50は、2つの壁部51、2つの姿勢制御ガイド52、ボルト排出ガイド53、およびボルト排出口56を有している。
【0062】
2つの壁部51は、ボルト落下口34の直下に配置される姿勢制御溝44を左右方向に挟んでスライド板40の傾斜表面41に立設されている。2つの壁部51は、前後方向に延伸し、左右方向においてフランジ部7の直径より僅かに大きい隙間W3を介して対向している。壁部51の高さは、ネジ部6の長さよりも長く形成される。
【0063】
また、壁部51は、右側の板状部材220aと同様に、少なくともボルト落下口34に対応する範囲の上端はコンベヤ23の頂上より僅かに低くなっている。さらに、ボルト落下口34を介して落下するボルト9をスムーズに受け入れることができるように、壁部51の上端面は内側に向かって低くなるように傾斜している。2つの壁部51は、ボルト9の左右方向の傾きを規制しつつ、ボルト9を姿勢制御溝44へ誘導する。
【0064】
ここで、ボルト姿勢制御部50における溝部43は、上端から下方に向かって第1姿勢制御溝45および第2姿勢制御溝46を有する姿勢制御溝44により構成される。姿勢制御溝44は、第1姿勢制御溝45の幅W1よりも第2姿勢制御溝46の幅W2が狭くなるように形成されている。
【0065】
図7には、第1姿勢制御溝45を含むボルト姿勢制御部50の断面A-Aおよび第2姿勢制御溝46を含むボルト姿勢制御部50の断面B-Bが示されている。第1姿勢制御溝45の幅W1は、六角部8の直径D1より僅かに大きく、且つフランジ部7の直径D2より小さく形成されている。第2姿勢制御溝46の幅W2は、ネジ部6の直径D3より大きく、且つ六角部8の直径D1より僅かに小さく形成されている。したがって、第1姿勢制御溝45は、ネジ部6および六角部8が通過し、且つフランジ部7が通過しない幅W1により形成されている。また、第2姿勢制御溝46は、ネジ部6が通過し、且つ六角部8およびフランジ部7が通過しない幅W2により形成されている。
【0066】
したがって、左右の壁部51間の隙間W3は、姿勢制御溝44の幅W1、W2より大きいため、壁部51は姿勢制御溝44から離間して配置されている。ここで、2つの壁部51からそれぞれ姿勢制御溝44側にはみ出したスライド板の一部を床面部440とする。一対の床面部440は、左右対称形状であり、左右方向から姿勢制御溝44を挟み込むように配置されている。
【0067】
床面部440は、後方に配置される第1床面部441と、第1床面部441から前方に続いて配置される第2床面部442と、を有する。第2床面部442は、第1床面部441よりも左右方向の幅が大きく形成され、姿勢制御溝44側に突出している。これにより、床面部440には、第1姿勢制御溝45と第2姿勢制御溝46との境界にあたる位置に段差が形成されている。
【0068】
2つの姿勢制御ガイド52は、第2姿勢制御溝46の上方に配置され、左右の壁部51の前方側における互いの対向面から内側に突出し、左右対称に設けられている。姿勢制御ガイド52は、略三角形状に形成され、一辺がボルト排出ガイド53の後端面に接している。
【0069】
また、姿勢制御ガイド52は、斜面52aおよび斜面52bを有している。斜面52aは、後方から前方に向かって高くなるように傾斜しているとともに、内側に向かって低くなるように傾斜している。斜面52aは、ボルト落下口34から落下してきたボルト9のフランジ部7が当接した場合に、ボルト9を第1姿勢制御溝45に導く。斜面52bは、後方から前方に向かって低くなるように傾斜しているとともに、内側に向かって高くなるように傾斜している。斜面52bは、斜面52aの下端からボルト排出口56に向けて設けられている。
【0070】
ボルト排出ガイド53は、姿勢制御ガイド52よりも前方において左右の壁部51間に配置されている。ボルト排出ガイド53の左右方向の両端は、それぞれ左右の壁部51の対向面に接している。ボルト排出ガイド53は、前方に配置される板状部材32aの下方に配置され、ボルト排出口56を介して床面部440(第2床面部442)の上方に設けられている。
【0071】
ボルト排出ガイド53は、左右方向の中央部分が窪んで下方に開口した略U字形状に形成されている。ボルト排出ガイド53は、左右の壁部51の上端部間を繋ぐように設けられた基部54と、基部54における左右の両端部から下方に延伸した一対の規制部55と、を有している。一対の規制部55は、左右方向において、六角部8の直径D1より大きく、且つフランジ部7の直径D2より僅かに小さい隙間W4を介して対向している。
【0072】
続いて、
図10を参照して姿勢制御ガイド52の機能を説明する。
図10は、姿勢制御ガイドの機能を説明する図である。一対の姿勢制御ガイド52は、左右方向において、ネジ部6の直径D3より大きく、且つ六角部8の直径D1より小さい隙間W5を介して対向している。一対の姿勢制御ガイド52は、互いの間に形成される隙間W5を通過するネジ部6の左右方向の傾きを規制することにより、ボルト9の中心軸CがYZ平面に近づくようにボルト9の姿勢を制御する。そのため、姿勢制御ガイド52は、頭部を下方に向けた姿勢で姿勢制御溝44を滑落するボルト9のネジ部6が隙間W5を通過可能な高さに配置されている。
【0073】
次に、
図11~
図14を参照して、左右の壁部51間を通過するボルト9の挙動の例を説明する。
図11は、壁部間を通過するボルトの挙動の第1の例を示す図である。
図12は、壁部間を通過するボルトの挙動の第2の例を示す図である。
図13は、壁部間を通過するボルトの挙動の第3の例を示す図である。
図14は、壁部間を通過するボルトの挙動の第4の例を示す図である。なお、
図11~
図14は、壁部51、床面部440(第1床面部441および第2床面部442)、および姿勢制御ガイド52の片側(右側)を示している。
【0074】
図11に示すボルト9は、頭部を下方にした姿勢でボルト落下口34から落下している。この場合、ボルト9は、六角部8が第1姿勢制御溝45に入り込んだ状態で、フランジ部7の一端面が第1床面部441に接して滑り落ちる。その後、ボルト9は、床面部440の段差に当たり、六角部8と第2床面部442との当接点を中心としてネジ先が前方に移動するようにボルト9がX軸回りに回転する。ボルト9が回転することに伴って、一対の姿勢制御ガイド52間に形成される隙間W5をネジ部6が通過するため、ボルト9の左右方向の傾きが規制される。
【0075】
隙間W5を通過した後のボルト9は、ネジ部6を下方にした姿勢に反転している。そして、ボルト9は、ネジ部6が第2姿勢制御溝46に入り込んだ姿勢で、フランジ部7の他端面が第2床面部442に接して滑り落ち、ボルト排出口56から排出される。
【0076】
図12に示すボルト9は、ネジ部6を下方にした姿勢でボルト落下口34から落下している。この場合、ボルト9のネジ部6が第1姿勢制御溝45に入り込む。そして、ボルト9は、フランジ部7の他端面が第1床面部441および第2床面部442に接してボルト排出口56まで滑り落ち、ボルト排出口56から排出される。
【0077】
図13に示すボルト9は、ネジ部6を下方にした姿勢でボルト落下口34から落下し、フランジ部7が姿勢制御ガイド52の斜面52aに当たっている。この場合、斜面52aに当たったボルト9は、フランジ部7が斜面52aに接した状態で、斜面52aに沿って滑り落ちる。ボルト9は、斜面52aに導かれて第1姿勢制御溝45に向かい、ネジ先が第1姿勢制御溝45に向かって第2姿勢制御溝46を通過した後、ネジ部6が第1姿勢制御溝45に入り込む。そして、ボルト9は、フランジ部7の他端面が第1床面部441および第2床面部442に接してボルト排出口56まで滑り落ち、ボルト排出口56からボルト9が排出される。
【0078】
ここで、例えば、
図12および
図13に示す例では、ネジ部6が第1姿勢制御溝45に入り込む前に第1床面部441や姿勢制御ガイド52に当たった場合でも、左右の壁部51によってボルト9の左右方向の傾きが凡そ規制されるため、ネジ部6のネジ先を第1姿勢制御溝45に誘導することができる。
【0079】
しかしながら、
図14に示すように、ボルト9のネジ部6が姿勢制御溝44に入り込まない不具合が生じる場合がある。
図14の上側には、X軸方向の左側から観察した壁部51、床面部440(第1床面部441および第2床面部442)、および姿勢制御ガイド52の片側(右側)を示している。また、
図14の下側には、姿勢制御溝44の周辺をZ軸方向の上方から観察した状態を示している。
【0080】
図14に示すボルト9は中心軸Cが左右方向に大きく傾いているため、ネジ部6が姿勢制御溝44に入り込まずに、ボルト9全体が床面部440上に乗り上げたまま滑落する。このような問題に対しては、ボルト排出口56の近傍にボルト排出ガイド53が設けられる。
【0081】
そこで、
図15を参照して、ボルト排出ガイド53の機能について説明する。
図15は、ボルト排出口56の近傍におけるボルトの挙動の一例を示す図である。なお、
図15の上側には、X軸方向の左側から観察した床面部440およびボルト排出ガイド53を示している。また、
図15の下側には、Y軸方向の前方から観察した床面部440およびボルト排出ガイド53を示している。
図15に示すように、ボルト9全体が床面部440上に乗り上げて滑落する場合は、ボルト排出ガイド53がボルト9を所定の姿勢に制御する。
【0082】
ボルト排出ガイド53は、床面部440から上方に隙間H1をあけて配置されている。隙間H1は、規制部55の下端と当該下端から床面部440の上端面までの最短距離であって、ボルト排出口56の高さに相当する。隙間H1は、フランジ部7の直径D2より僅かに小さく、且つフランジ部7および六角部8を合わせた厚さより大きい。
【0083】
ボルト9は、ネジ部6が姿勢制御溝44に入り込むとともに頭部を上方にした姿勢では、床面部440と規制部55との間に形成される隙間H1を通過することができる。そのため、ボルト9が頭部を上方にした姿勢である場合は、フランジ部7の他端面が床面部440に接してボルト9が滑り落ち、頭部が隙間H1を通過することにより、ボルト排出口56からボルト9が排出される。
【0084】
図15に示すボルト9は、ネジ部6を前方にし、後方にある頭部が右方向に傾いた姿勢で滑落している。ボルト9全体が床面部440上に乗り上げると、ボルト9は、中心軸Cが左右方向に傾きつつ床面部440の傾斜に対しては略平行な状態で床面部440上を滑り落ちる。
【0085】
ボルト9が床面部440上を滑り落ちると、フランジ部7の右側の端部が右側の規制部55に当接することにより、ネジ先が右方向へ移動するようにボルト9が振れる。次いで、ボルト9のフランジ部7の左側の端部が左側の規制部55に当接する。これにより、フランジ部7の左右方向の両端部が左右の規制部55に当接し、ボルト9の中心軸CがYZ平面に沿った状態となるため、ボルト9の左右方向の傾きが制御される。そして、ネジ先が後方に移動するようにボルト9が振れて姿勢制御溝44(第2姿勢制御溝46)に入り込むと、フランジ部7の他端面が床面部440(第2床面部442)に接してボルト9が滑り落ち、ボルト排出口56からボルト9が排出される。
【0086】
以上、ボルト姿勢制御部50によって中心軸Cがスライド板40の傾斜方向に直交するようにボルト9の姿勢を一定に揃える例について説明した。ボルト姿勢制御部50は、上述の例に限らず、様々な姿勢によりボルト落下口34に落下するボルト9を、最終的にはネジ部6が溝部43に入り込む所定の姿勢に制御してボルト排出口56からボルト9を排出する。ボルト排出口56から排出されたボルト9は、所定の姿勢のまま溝部43を滑り落ちる。
【0087】
次に、
図16および
図17を参照してボルト取出部12について説明する。
図16は、ボルト取出部の構成を示す第1の図である。
図17は、ボルト取出部の構成を示す第2の図である。
図16および
図17は、スライド板40の傾斜方向に直交する方向から見たボルト取出部12を示している。
図16はボルト取出部12を上方から観察したものであり、
図17はボルト取出部12を下方から観察したものである。
【0088】
図16および
図17に示すように、スライド板40は、下部にボルト取出部12を有している。ボルト取出部12では、溝部43を滑り落ちるボルト9の速度を調整しつつボルト9を振り分けて所定の位置に供給する。
【0089】
まず、ボルト取出部12における溝部43について説明する。ボルト取出部12において、溝部43は、第2姿勢制御溝46の下端に接続する案内溝47を有し、さらに案内溝47の下端に存在する分岐位置473から分岐する第1溝48および第2溝49を有している。第1溝48および第2溝49は、分岐位置473を通ってスライド板40の傾斜方向に延在する軸Aに対して左右非対称形状になるように構成されている。
【0090】
案内溝47、第1溝48、および第2溝49の幅は、ネジ部6の直径D3より大きく、且つフランジ部7の直径D2より小さく形成されている。本実施形態では、案内溝47、第1溝48、および第2溝49は、第2姿勢制御溝46の幅W2と同様の幅であって、ネジ部6が通過し、且つ六角部8およびフランジ部7が通過しない幅により形成されている。
【0091】
案内溝47は、第2姿勢制御溝46の下端から分岐位置473まで下方に延び、略S字状に形成されている。案内溝47は、分岐位置473から上方に向かって第1曲部471および第2曲部472を有している。第1曲部471は、軸Aから第2溝49側に突出するように湾曲している。第1曲部471では、ボルト9の傾きを制御しながらボルト9が滑り落ちる速度を早くする。第2曲部472は、第1曲部471から上方に延びて第1曲部471と反対側に突出するように湾曲している。第2曲部472では、ボルト9が滑り落ちる速度を遅くする。また、案内溝47(第2曲部472)と姿勢制御溝44(第2姿勢制御溝46)とは、接続部470において90度より広く180度より狭い角度で接続している。接続部470では、ボルト9が滑り落ちる速度を遅くする。
【0092】
分岐位置473から分岐する溝部43は、案内溝47と第1溝48とがなす第1角度θ1より案内溝47と第2溝49とがなす第2角度θ2が小さく形成されている(θ1>θ2)。このような構成によると、案内溝47から第1溝48へボルト9が流れやすくなる。また、ボルト9が案内溝47から第2溝49に流れる際には、分岐位置473における屈曲によりボルト9の滑落する速度が減速する。これにより、第2溝49を滑り落ちるボルト9のフランジ部7が隣接するボルト9に乗り上げることを抑制できる。
【0093】
本実施形態では、案内溝47および第1溝48は第1角度が略180度となるように分岐位置473で接続している。また、案内溝47および第2溝49は、第2角度が略135度となるように分岐位置473で接続している。なお、略180度および略135度は、それぞれ±10度程度の範囲を含む。
【0094】
第1溝48および第2溝49は、分岐位置473から下方に向かって互いの距離が離れるように延伸した後に、互いの距離が近づくような曲線を描いて、それぞれの下端まで伸びている。さらに、第1溝48および第2溝49の各上端部は、それぞれ分岐位置473から外側に湾曲した形状を有する。本実施形態では、第1溝48および第2溝49は、それぞれボルト9が5個整列する長さに設定されている。
【0095】
ボルト取出部12は、スイングバイガイド121、分岐ガイド123、振分部127、工具載置部130、およびカバー131を有している。
【0096】
スイングバイガイド121は、第1曲部471に隣接して傾斜裏面42に立設されている。スイングバイガイド121は、第1曲部471における第2溝49側の外縁の形状に沿ってスライド板40の傾斜方向に直交する方向に延びたガイド面122を有する。スイングバイガイド121は、ガイド面122によって、第1曲部471を通過するボルト9のネジ部6が第2溝49側に向かう方向を規制するものである。ボルト9の種類が半ネジである場合は、ネジ山が形成された部分が形成されていない部分より大径に形成されることを考慮して、スイングバイガイド121を第1曲部471から僅かに離間して配置することが好ましい。
【0097】
分岐ガイド123は、第1溝48と第2溝49との間に介在して傾斜裏面42に立設されている。分岐ガイド123は、第1溝48および第2溝49のそれぞれの内縁の形状に沿ってスライド板40の傾斜方向に直交する方向に延びた分岐ガイド面124、125を有する。分岐ガイド123は、分岐ガイド面124によって第1溝48に配置されたボルト9のネジ部6が軸A側に向かう方向を規制するものである。また、分岐ガイド123は、分岐ガイド面125によって第2溝49に配置されたボルト9のネジ部6が軸A側に向かう方向を規制するものである。
【0098】
さらに、分岐ガイド123は、分岐位置473近傍に、略三角形状に形成される頂点部126を有する。頂点部126の先端は、軸Aよりも第2溝49側に配置されている。頂点部126の先端は、分岐ガイド面124と分岐ガイド面125とが交差する部分である。軸Aと頂点部126とがこのような位置関係であることにより、ボルト9が案内溝47から第1溝48へ流れやすくなる。さらに、頂点部126における分岐ガイド面124および分岐ガイド面125は、互いに外側に湾曲した形状を有する。これにより、分岐位置473を超える際に、ボルト9が頂点部126に乗り上げるように第1溝48又は第2溝49へ流れる。
【0099】
振分部127は、傾斜裏面42の分岐位置473近傍に、スライド板40と平行な平面上を回転可能に支持されている。具体的には、傾斜裏面42において、第1溝48の外縁側にスライド板40に直交する回転軸129を有している。振分部127は、案内溝47を滑落するボルト9が接触することによりボルト9から圧力を受けて回転軸129回りに回転する。振分部127は、回転軸129から径方向に放射状に延びる複数のガイド爪128により構成される。ガイド爪128は、それぞれスライド板40に直交する第1接触面128aおよび第2接触面128bを有する。
【0100】
第1接触面128aは、ガイド爪128において振分部127の回転方向とは逆方向に存在する端面である。第2接触面128bは、ガイド爪128において振分部127の回転方向に存在する端面である。第1接触面128aは、同一の振分部127において周方向に隣接するガイド爪128の第2接触面128bに繋がっている。振分部127が回転することにより、複数のガイド爪128は溝部43側に順次送り出される。溝部43側に送り出されたガイド爪128の第1接触面128aは、分岐位置473に配置されたボルト9に接触可能である。また、溝部43側に送り出されたガイド爪128の第2接触面128bは、第1溝48に配置されたボルト9に接触可能である。
【0101】
振分部127は、第1溝48に配置されたボルト9のネジ部6が第2接触面128bに接触している第1状態では、回転を停止するとともに、第1接触面128aが第1溝48の入口を塞ぐ。すなわち、第1状態は、第1溝48にボルト9が充填されている状態である。なお、第1溝48の入口とは、案内溝47と第1溝48との境界においてボルト9が第1溝48に進入するための入口を意味する。また、第1状態では、第1溝48が塞がれることに伴って、案内溝47から下方に屈曲する第2溝49へ続く経路が確保される。
【0102】
また、振分部127は、第1溝48に配置されたボルト9のネジ部6が第2接触面128bに接触していない第2状態では、回転可能である。すなわち、第2状態は、第1溝48にボルト9が充填されていない状態である。このように、振分部127は、第1状態において案内溝47から第1溝48へボルト9が流れることを阻止し、第2状態において案内溝47から第1溝48へボルト9が流れることを許容する。
【0103】
第1接触面128aは、第1溝48の幅の半分以上の長さに形成されている。また、第1接触面128aは平坦に形成されていることが好ましい。これにより、第1状態の場合、振分部127は第1接触面128aにより第1溝48の入口の少なくとも一部を塞ぐことができる。第1接触面128aにより塞がれた第1溝48の入口は、ネジ部6の直径より小さい幅であるため、ネジ部6は第1溝48の入口を通過することができない。
【0104】
第2接触面128bは、振分部127の回転方向とは逆方向へ窪む半円弧状に形成されることが好ましい。これにより、振分部127は、回転に伴って、ネジ部6を第2接触面128bに引っ掛けながらボルト9を案内溝47から第1溝48に誘導することができる。
【0105】
本実施形態において振分部127は、4つのガイド爪128が周方向に等間隔で配置された卍型の形状を有する。これにより、ボルト供給装置1は、ボルト9の振り分けを効率的に行なうことができる。
【0106】
工具載置部130は、傾斜表面41の下部に立設されている。工具載置部130は、工具900をボルト供給装置1にセットする際の位置決めとなる。すなわち、ユーザは、工具載置部130に工具900をセットする。
【0107】
カバー131は、カバー131が設けられる領域に配置されるボルト9が浮き上がる方向に移動することを規制する。カバー131は、スライド板40の傾斜方向に平行であって、ボルト取出部12に充填されたボルト9の頭部に接触しない位置に固定されている。カバー131は、ボルト9の状態がユーザにより観察できるように、透明な素材で構成されている。
【0108】
次に、
図18~
図20を参照して案内溝47におけるボルト9の動きを説明する。
図18は、接続部におけるボルトの挙動の例を示す図である。
図19は、第1曲部におけるボルトの挙動の例を示す図である。
図20は、第2曲部におけるボルトの挙動の例を示す図である。
【0109】
図18は、X軸方向の左側から観察した接続部470近傍におけるスライド板40の片側(右側)を示している。
図18に示すボルト9は、姿勢制御溝44に沿って滑落しながらボルト排出口56を通過した後、接続部470におけるカーブの外縁に当たっている。ボルト排出口56を通過するボルト9は、スライド板40の傾斜方向に沿って滑落している。そのため、カーブの外縁に当たった勢いでネジ先が前方に移動するようにボルト9が振れる。これにより、ボルト9は、接続部470において減速する。
【0110】
図19は、スライド板40の傾斜方向に沿って前方から観察した第2曲部472におけるスライド板40の断面を示している。
図19に示すボルト9は、第2曲部472におけるカーブによってボルト9のネジ先が左方向に移動するようにボルト9が振れる。これにより、ボルト9は、第2曲部472において減速する。
【0111】
図20は、スライド板40の傾斜方向に沿って前方から観察した第1曲部471におけるスライド板40およびスイングバイガイド121の断面を示している。
図20に示すボルト9は、第1曲部471を通過する際に、ネジ部6がスイングバイガイド121のガイド面122に当接する。ボルト9は、スイングバイガイド121によってネジ部6が第2溝49側に向かう方向を規制されている。そのため、第1曲部471において、ボルト9は左右方向の傾きが制御された状態で、第1曲部471を通過する際の遠心力により加速する。
【0112】
このように、案内溝47は、上流側(接続部470および第2曲部472)においてボルト9を緩やかに流し、下流側(第1曲部471)においてボルト9を第1溝48に優先的に流すことで、ボルト9が第2溝49に流れることを抑制する。
【0113】
次に、
図21および
図22を参照して、振分部127の動作について説明する。
図21は、振分部の動作を説明する第1の図である。
図22は、振分部の動作を説明する第2の図である。
図21および
図22は、振分部127とボルト9との位置関係を時間の経過と共に示している。
【0114】
さらに、
図21および
図22に示すボルト9については、滑落する順にボルトB1、ボルトB2、ボルトB3として個々のボルトB1~B3を区別している。そして、
図21及び
図22に示す振分部127のガイド爪128は、回転方向の時計回りにガイド爪G1、ガイド爪G2、ガイド爪G3、ガイド爪G4として個々のガイド爪G1~G4を区別している。なお、振分部127の軌跡を把握するために、ガイド爪G3にハッチングで示した点を付している。
【0115】
以下の説明では、ボルト取出部12にボルト9が充填された状態で、ユーザが工具900をボルト供給装置1にセットし、ボルト取出位置からボルト9を取り出した後の過程を示しているものとする。ボルト取出位置からボルト9が取り出されることにより、残されたボルト9はそれぞれ重力に従って滑落する。これにより、分岐位置473に停止しているボルト9と、分岐位置473に隣接する2つの停止位置で停止しているボルト9がなくなるため、振分部127が第1状態から第2状態に変化する。以下の説明において、振分部127は、時刻T1~T3の間に第2状態であり、時刻T4~T8の間に第1状態である。
【0116】
図21の左側には、時刻T1における位置関係を示している。時刻T1では、第1曲部471を通過した新たなボルトB1が案内溝47を第1溝48に向かって流れ、分岐位置473において第1溝48の入口を塞いでいるガイド爪G1の第1接触面128aに当たる。第2状態である場合、第1溝48の方向に向かって流れるボルトB1が第1接触面128aに接触すると、ガイド爪G1に対して回転方向の力がかかる。
【0117】
時刻T1の右側に、時刻T1の後の時刻T2における位置関係を示している。時刻T2では、ボルトB1からの圧力により振分部127が時計回りに回転を開始する。ボルトB1は、ガイド爪G1を押圧しながら分岐位置473を左側に超える。そして、ボルトB1を追うように、ガイド爪G4が時計回りに移動する。
【0118】
時刻T2の右側に、時刻T2の後の時刻T3における位置関係を示している。時刻T3では、ボルトB1のネジ部6がガイド爪G4の第2接触面128bの窪みに入り、ボルトB1がガイド爪G4の第2接触面128bにより左側に案内される。これにより、振分部127は、ボルトB1が第2溝49に向かう右側に流れることを阻止する。
【0119】
時刻T3の右側に、時刻T3の後の時刻T4における位置関係を示している。時刻T4では、振分部127に案内されたボルトB1が分岐位置473に隣接する第1溝48の停止位置に到達して停止する。分岐位置473に隣接する第1溝48の停止位置でボルトB1が停止している時は、第1溝48にボルト9が充填されているため、振分部127はそれ以上の回転を停止する。振分部127が回転を停止した第1状態では、ガイド爪G4の先端がボルトB1のネジ部6に接触している。以降、第1溝48のボルト取出位置からボルト9が取り出されるまでの間、振分部127は回転を停止した第1状態である。
【0120】
図22の左側には、時刻T4の後の時刻T5における位置関係を示している。時刻T5では、次のボルトB2が案内溝47を第1溝48に向かって滑落し、分岐位置473において第1溝48の入口を塞いでいるガイド爪G4の第1接触面128aに当たる。時刻T5において、振分部127は回転を停止しているため、ボルトB2がガイド爪G4の第1接触面128aに接触すると、第1接触面128aに沿ってボルトB2の流れる方向が左から右に方向転換する。
【0121】
時刻T5の右側に、時刻T5の後の時刻T6における位置関係を示している。時刻T6では、ボルトB2がガイド爪G4の第1接触面128aに沿って第2溝49に向かって流れ、分岐位置473を右側に超える。そして、振分部127に案内されながらボルトB2が分岐位置473に隣接する第2溝49の停止位置に到達して停止する。
【0122】
時刻T6の右側に、時刻T6の後の時刻T7における位置関係を示している。さらに、時刻T7の右側に、時刻T7の後の時刻T8における位置関係を示している。時刻T7では、さらに次のボルトB3が案内溝47を第1溝48に向かって流れる。続く時刻T8では、ボルトB3が分岐位置473に到達し、第1溝48の入口を塞いでいるガイド爪G4の第1接触面128aに当たる。ボルトB3およびボルトB2のフランジ部7同士が当接することにより、ボルトB3が分岐位置473で停止する。この時、ボルトB1とボルトB3とは、ガイド爪B4を介して隣接している。
【0123】
このような流れにより、ボルト供給装置1は、ボルトB1~B3を振り分ける。振分部127は、ボルト9を第1溝48または第2溝49に案内して左右に振り分けた後、分岐位置473でボルト9を停止させることができる。そのため、ボルト供給装置1は、偶数個のボルト9を供給する場合だけでなく、分岐位置473をボルト取出位置の1つに設定することによって奇数個のボルト9を供給する場合にも適用することができる。
【0124】
次に、
図23を参照して、ボルト取出位置の具体例について説明する。
図23は、ボルト取出部12にボルトが充填された状態を示す図である。なお、
図23は、
図16と同様の方向から観察したもので、スライド板40およびカバー131の図示は省略している。
図23に示すように、溝部43は蛇行しながら分岐位置473から第1溝48および第2溝49の2方向に分かれてスライド板40の下方に延びている。
【0125】
溝部43は、ボルト取出部12にボルト9が充填された状態において、工具900により取り出されるボルト9の位置として、少なくとも1つのボルト取出位置を有している。ボルト取出位置は、溝部43におけるボルト9の停止位置である第1停止位置91a~第10停止位置92eおよび分岐位置473から任意に選択され得る。
【0126】
第1溝48は、ボルト9が停止する複数の位置として、第1溝48の下端から上方に向かって第1停止位置91a~第5停止位置91eを有している。第1停止位置91aは、第1溝48の下端でボルト9のネジ部6が当接する位置である。第2停止位置91bは、第1停止位置91aで停止したボルト9とフランジ部7同士が当接することにより停止するボルト9の停止位置である。第3停止位置91c、第4停止位置91d、および第5停止位置91eも、同様に設定されている。
【0127】
第2溝49は、ボルト9が停止する複数の位置として、第2溝49の下端から上方に向かって第6停止位置92a~第10停止位置92eを有している。第6停止位置92aは、第2溝49の下端でボルト9のネジ部6が当接する位置である。第7停止位置92bは、第6停止位置92aで停止したボルト9とフランジ部7同士が当接することにより停止するボルト9の停止位置である。第8停止位置92c、第9停止位置92d、および第10停止位置92eも、同様に設定されている。
【0128】
案内溝47は、ボルト9が停止する位置として、分岐位置473を有している。案内溝47においては、分岐位置473にボルト9の中心が配置される。
【0129】
本実施形態において、ボルト取出位置は、第1停止位置91a、第6停止位置92a、および分岐位置473に設定される。工具900によりボルト9が取り出されると、取り出されたボルト9の停止位置からボルト9がなくなるため、取り出されたボルト9より上方に存在しているボルト9は、重力にしたがって、溝部43を下方へ滑り落ちる。この時、分岐位置473のボルト9は第1溝48に流れて第5停止位置91eで停止する。
【0130】
ここで、溝部43の形状は、第10停止位置92eに配置されるボルト9よりも第5停止位置91eに配置されるボルト9の方が軸Aに近い位置、且つ分岐位置473に配置されるボルト9から下方に離れて停止するように設計されることが好ましい。このような構成によれば、ボルト9が案内溝47から第1溝48に流れやすい。
【0131】
また、ボルト取出部12において、第2停止位置91b~第5停止位置91e及び第7停止位置92b~第10停止位置92eに対応する領域には、カバー131が設けられている。カバー131が設けられることにより、ボルト9が滑り落ちる際にボルト9が浮き上がって隣接するボルト9に乗り上げることを抑制できる。
【0132】
以上、ボルト取出部12の構成について説明したが、ボルト取出部12の構成は上述のものに限られない。例えば、ボルト取出位置およびその数量は、ボルト9をセットする工具900に応じて適宜設計されるものである。また、第1溝48および第2溝49の長さは、上述のボルト9が5個整列する長さに限らず、ボルト取出位置を考慮して適宜設計されるものである。そして、ボルト供給装置1は、工具900に1本以上の奇数個のボルト9を供給するものであってもよく、工具900に2本以上の偶数個のボルト9を供給するものであってもよい。
【0133】
上記で説明したように、本実施形態にかかるボルト供給装置1は、スライド板40と、溝部43と、振分部127と、ボルト取出位置と、を有する。スライド板40は、鉛直方向に対して斜めに配置される。溝部43は、スライド板40の傾斜方向に沿ってボルト9を下方に案内する案内溝47の下端に存在する分岐位置473から第1溝48と第2溝49とに分岐し、案内溝47と第1溝48とがなす第1角度θ1より案内溝47と第2溝49とがなす第2角度θ2が小さく形成される。振分部127は、分岐位置473近傍に回転可能に支持される。ボルト取出位置は、第1溝48および第2溝49の各下端に設定される。
【0134】
また、溝部43は、スライド板40においてネジ部6が通過し且つフランジ部7が通過しない幅により形成される。そして、振分部127は、第1溝48の幅の半分以上の長さに形成され、分岐位置473に配置されたボルト9に接触可能な第1接触面128aと第1溝48に配置されたボルト9に接触可能な第2接触面128bとを有する複数のガイド爪128により構成されている。振分部127は、第1溝48に配置されたボルト9が第2接触面128bに接触している状態では回転を停止するとともに第1接触面128aが第1溝48の入口を塞ぎ、第1溝48に配置されたボルト9が第2接触面128bに接触していない状態では回転可能である。
【0135】
上記ボルト供給装置1は、ボルト9の供給数に応じてボルト9の流れる方向を変化させることにより、ボルト9の供給先を制御することができる。本実施形態にかかるボルト供給装置1によれば、動力を用いることなくボルト9を複数の供給先に確実に振り分けながら一定の姿勢で整列させることができる。そのため、動力を用いてボルト9の振り分けを行なう場合と比べて装置を小型化することができる。
【0136】
また、上記ボルト供給装置1において、振分部127の第1接触面128aは平坦に形成され、第2接触面128bは振分部127の回転方向とは逆方向へ窪む半円弧状に形成される。これにより、ボルト9の流れる方向を確実に制御することができる。
【0137】
また、上記ボルト供給装置1は、ボルト取出位置としてさらに分岐位置473が設定される。これにより、奇数個のボルト9を要する工具等に対して適用することができる。
【0138】
また、上記ボルト供給装置1において、案内溝47は、分岐位置473を通って傾斜方向に延在する軸Aと、軸Aから第2溝49側に湾曲する第1曲部471と、第1曲部471から上方に延びて第1曲部471と反対側に湾曲する第2曲部472と、を有する。これにより、分岐位置473の上流でボルト9が滑落する速度を調整してボルト9を第1溝48へスムーズに流すことができる。
【0139】
また、上記ボルト供給装置1は、スライド板40に、第1曲部471の外縁の形状に沿って傾斜方向に直交する方向に延びたガイド面122を有するスイングバイガイド121を有する。これにより、分岐位置473の直前でボルト9の振れを抑制し、ボルト9を第1溝48へスムーズに流すことができる。
【0140】
また、上記ボルト供給装置1は、スライド板40に、第1溝48および第2溝49のそれぞれの内縁の形状に沿って傾斜方向に直交する方向に延びた各分岐ガイド面124、125を有する分岐ガイド123を有する。これにより、分岐位置473を超えたボルト9を正しい姿勢で整列させることができる。
【0141】
さらに、上記分岐ガイド123の頂点部126は、軸Aよりも第2溝49側に配置される。これにより、ボルト9が第1溝48へ流れやすくなる。
【0142】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 ボルト供給装置
2 ボルト搬送ユニット
3 ボルト誘導ユニット
4 ボルト整列ユニット
6 ネジ部
7 フランジ部
8 六角部
9 ボルト
11 ボルト投入部
12 ボルト取出部
20 基台ブロック
23 コンベヤ
24 ボルト搬送部
25 切離しガイド
26 切離し面
31a、31b 側板
32a、32b 板状部材
33 天板
34 ボルト落下口
36 落下口ガイド
37 落下口ガイド面
40 スライド板
41 傾斜表面
42 傾斜裏面
43 溝部
44 姿勢制御溝
45 第1姿勢制御溝
46 第2姿勢制御溝
47 案内溝
48 第1溝
49 第2溝
50 ボルト姿勢制御部
51 壁部
52 姿勢制御ガイド
52a、52b 斜面
53 ボルト排出ガイド
54 基部
55 規制部
56 ボルト排出口
121 スイングバイガイド
122 ガイド面
123 分岐ガイド
124、125 分岐ガイド面
126 頂点部
127 振分部
128 ガイド爪
128a 第1接触面
128b 第2接触面
129 回転軸
130 工具載置部
131 カバー
200 空間
210 ボルト貯留部
220a、220b 板状部材
300 ボルト傾倒部
310 揺動部材
311 第1接触部
312 第2接触部
320 付勢手段
330 支点部
440 床面部
441 第1床面部
442 第2床面部
470 接続部
471 第1曲部
472 第2曲部
473 分岐位置
900 工具
901 基部
902 つまみ部
903 ソケット部