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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241106BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241106BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20241106BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 321E
H02M7/48 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021130016
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023023998
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真悟
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162856(WO,A1)
【文献】特開2016-146444(JP,A)
【文献】特開2019-087684(JP,A)
【文献】特開2002-093995(JP,A)
【文献】特開2014-054103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 21/60
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板(17)と、前記回路基板に接続されたインバータ回路に適用される複数の半導体スイッチング素子(24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wn)と、複数のバスバと、前記回路基板と前記複数の半導体スイッチング素子と前記複数のバスバとを一体に封止するモールド(11)と、を備える半導体モジュール(10)であって、
前記複数の半導体スイッチング素子は、前記回路基板の平面方向に配置され、
前記複数のバスバは、
前記インバータ回路の各レグに含まれる複数の半導体スイッチング素子を互いに直列接続する第1バスバ(26U,26V,26W)と、
前記レグの高電位側または低電位側に接続され、前記第1バスバと前記回路基板との間に配置された第2バスバ(27)と、を含み、
前記第1バスバと前記第2バスバは、前記回路基板を平面視する方向に見たときに、少なくとも一部が互いに重なっており、
前記第1バスバに流れる電流の方向は、前記第2バスバに流れる電流の方向と対向し、
前記回路基板は、前記複数の半導体スイッチング素子のボンディングワイヤを通過させる通過孔(17Up,17Un,17Vp,17Vn,17Wp,17Wn)を備えている半導体モジュール。
【請求項2】
前記第2バスバは、前記回路基板を平面視する方向に見たときに、前記レグに含まれる複数の半導体スイッチングを覆っている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
回路基板(17)と、前記回路基板に接続されたインバータ回路に適用される複数の半導体スイッチング素子(24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wn)と、複数のバスバと、前記回路基板と前記複数の半導体スイッチング素子と前記複数のバスバとを一体に封止するモールド(11)と、を備える半導体モジュール(10)であって、
前記複数の半導体スイッチング素子は、前記回路基板の平面方向に配置され、
前記複数のバスバは、
前記インバータ回路の各レグに含まれる複数の半導体スイッチング素子を互いに直列接続する第1バスバ(26U,26V,26W)と、
前記レグの高電位側または低電位側に接続され、前記第1バスバと前記回路基板との間に配置された第2バスバ(27)と、を含み、
前記第1バスバと前記第2バスバは、前記回路基板を平面視する方向に見たときに、少なくとも一部が互いに重なっており、
前記第1バスバに流れる電流の方向は、前記第2バスバに流れる電流の方向と対向し、
前記第2バスバは、前記回路基板を平面視する方向に見たときに、前記レグに含まれる複数の半導体スイッチングを覆っている半導体モジュール。
【請求項4】
前記第2バスバは、前記レグの低電位側に接続された低電位バスバであり、グラウンド接続されている請求項1~3のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記回路基板は、前記半導体モジュールの外部と通信するための無線通信回路を備えている請求項1~4のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記モールドから露出するとともに前記回路基板に電気的に接続する信号端子(41,42)を備えている請求項1~のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記モールド内の前記回路基板に対して前記回路基板の厚み方向に離れた位置に、前記モールドよりも熱収縮率が低い低収縮層(50,51)を備える請求項1~6のいずれかに記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体素子を含む半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、絶縁基板と、プリント基板と、複数の半導体素子とが封止樹脂内に一体に封止された半導体モジュールが記載されている。複数の半導体素子は、絶縁基板の上面側かつプリント基板の下面側に配置されている。複数の半導体素子は、絶縁基板の上面に設けられた導電層の上面にはんだ層を介して接合されており、プリント基板の下面に設けられた導電層の下面にはんだ層を介して接合されている。プリント基板には上下方向に貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔内に配置された導電性部材により、複数の半導体素子の信号電極は、プリント基板と電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-153607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、プリント基板と複数の半導体素子との間には、電位の相違する複数の導電層が同一平面上に隣接して設けられている。このため、半導体モジュール内で電流や電位が急峻に変化した場合に、磁気ノイズや静電ノイズが発生して、プリント基板が誤動作することが懸念される。
【0005】
上記を鑑み、本発明は、半導体モジュール内での電流や電位の変化によりプリント基板が誤動作することを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回路基板と、前記回路基板に接続されたインバータ回路に適用される複数の半導体スイッチング素子と、複数のバスバと、前記回路基板と前記複数の半導体スイッチング素子と前記複数のバスバとを一体に封止するモールドと、を備える。この半導体モジュールでは、前記複数の半導体スイッチング素子は、前記回路基板の平面方向に配置される。前記複数のバスバは、前記インバータ回路の各レグに含まれる複数の半導体スイッチング素子を互いに直列接続する第1バスバと、前記レグの高電位側または低電位側に接続され、前記第1バスバと前記回路基板との間に配置された第2バスバと、を含む。前記第1バスバと前記第2バスバは、前記回路基板を平面視する方向に見たときに、少なくとも一部が互いに重なっており、前記第1バスバに流れる電流の方向は、前記第2バスバに流れる電流の方向と対向する。
【0007】
本発明に係る半導体モジュールでは、第1バスバと第2バスバとは、回路基板を平面視する方向に見たときに、少なくとも一部が互いに重なっている。さらに、第1バスバと第2バスバとは、流れる電流の方向が対向しているため、第1バスバを流れる電流と、第2バスバを流れる電流とが急峻に変化しても、重なり合った箇所においては電流変化に起因する磁界変化が抑制される。このため、インバータ回路の切換えにより各バスバの電流や電位が急峻に変化した場合に、磁気ノイズが発生すること抑制できる。また、第2バスバが電磁シールドとして機能し、インバータ回路における電流変化により生じる磁界が回路基板に影響することを抑制できる。その結果、半導体モジュール内での電流や電位の変化により回路基板が誤動作することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態にかかる半導体モジュールの外観を示す斜視図。
図2図1に示す半導体モジュールに内蔵されたインバータ回路。
図3図1に示す半導体モジュールからモールドを除去した状態を示す平面図。
図4図1に示す半導体モジュールからモールドを除去した状態を示す斜視図。
図5図4のV-V線断面図。
図6図4のVI-VI線断面図。
図7図4のVII-VII線断面図。
図8図3に示す状態からさらに回路基板を除去した状態を示す平面図。
図9図4に示す状態からさらに回路基板を除去した状態を示す斜視図。
図10図8のX-X線断面図。
図11図8に示す状態からさらに第2バスバを除去した状態を示す平面図。
図12図9に示す状態からさらに第2バスバを除去した状態を示す斜視図。
図13図10に示す状態からさらに第2バスバを除去した状態を示す断面図。
図14】半導体モジュールの断面を模式的に示す図。
図15】第1バスバに流れる電流と第2バスバに流れる電流を示す図。
図16】回路基板に備えられた無線通信回路により外部の回路基板との無線通信する状態を示す図。
図17】回路基板に備えられた外部端子により外部の回路基板と接続された状態を示す図。
図18】モールド内に低収縮層を備える半導体モジュールを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、半導体モジュール10では、回路基板17と、6個の半導体スイッチング素子とが、樹脂製のモールド11内に一体に封止されている。6個の半導体スイッチング素子は、構造および大きさが同様のnチャネル型RC-IGBTであり、半導体モジュール10内には、6個の半導体スイッチング素子によって、図2に示すようなインバータ回路が構成されている。
【0010】
インバータ回路は、直列接続された2個の半導体スイッチング素子で構成されたレグを3個含む三相フルブリッジ回路である。U端子14Uに接続された上アームスイッチSUp及び下アームスイッチSUbと、V端子14Vに接続された上アームスイッチSVp及び下アームスイッチSVnと、W端子14Wに接続された上アームスイッチSWp及び下アームスイッチSWnが、モールド11内に封止されている。各レグの高電位側はP端子12に接続され、低電位側はN端子13に接続されている。
【0011】
図1に示すように、モールド11からP端子12と、N端子13と、U端子14Uと、V端子14Vと、W端子14Wと、回路基板17の一部が突出した外観を有している。回路基板17の一部をモールド11から突出させることにより、突出部分から放熱させることができる。なお、各図において、x方向およびy方向は半導体モジュール10および回路基板17の平面方向に平行な方向であり、z方向は半導体モジュール10および回路基板17の厚み方向である。P端子12とN端子13とは、x方向に隣接して配置されており、モールド11に対してy軸の正方向に突出している。P端子12とN端子13のz方向の位置は略同一である。U端子14U、V端子14VおよびW端子14Wは、モールド11に対してP端子12およびN端子13と対向するx軸の負方向に突出している。U端子14U、V端子14V、W端子14Wは、x軸の負方向側から正方向側に向かってこの順序で隣接して配置されている。U端子14U、V端子14VおよびW端子14Wのz方向の位置は略同一である。
【0012】
図3~7は、図1に示す半導体モジュール10からモールド11を除去した状態を示す。図3~7に示すように、半導体モジュール10は、回路基板17と、6個の半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnと、3個の第1バスバ26U,26V,26Wとをモールド11内に一体に封止された状態で備えている。半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnは、それぞれ、図2に示す上アームスイッチSUp,下アームスイッチSUb,上アームスイッチSVp,下アームスイッチSVn,上アームスイッチSWp,下アームスイッチSWnに対応する。各レグに含まれる1対の半導体スイッチング素子24Upと24Un,24Vpと24Vn,24Wpと24Wnとは、それぞれy方向に配置されている。上アームスイッチに対応する半導体スイッチング素子24Up,24Vp,24Wpは、P端子12およびN端子13に近いy軸の正方向側に配置されており、下アームスイッチに対応する半導体スイッチング素子24Un,24Vn,24Wnは、U端子14U、V端子14VおよびW端子14Wに近いy軸の負方向側に配置されている。
【0013】
図3,4に示すように、回路基板17には、半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnの小信号パッドに対応する位置に、z方向に貫通する通過孔17Up,17Un,17Vp,17Vn,17Wp,17Wnが開孔している。回路基板17を上面視したときの角部には、それぞれ孔部17hが設けられている。
【0014】
図8~10は、半導体モジュール10から、さらに回路基板17を取り除いた状態を示す。回路基板17の直下には、第2バスバ27が配置されている。図8に示すように、第2バスバ27には、半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnの小信号パッドに対応する位置に、z方向に貫通する通過孔27Up,27Un,27Vp,27Vn,27Wp,27Wnが開孔している。
【0015】
通過孔17Up,17Un,17Vp,17Vn,17Wp,17Wnおよび通過孔27Up,27Un,27Vp,27Vn,27Wp,27Wnは、それぞれ、半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnの小信号パッドの上方向(z軸の正方向)に位置しており、半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnの小信号パッドに接続されたボンディングワイヤを各通過孔に通過させることにより、回路基板17の上面(z軸の正方向側の面)に、ボンディングワイヤを接続させることができる。
【0016】
第2バスバ27は、y軸の正方向から順に、非接合部27p、連結部27m、接合部27n,端部27eを含んでいる。非接合部27pは接合部27nよりも上方に位置しており、連結部27mは、非接合部27pと接合部27nとを連結している。端部27eは、接合部27nから上方に立ち上がっている。図5,8に示すように、非接合部27pおよび接合部27nは、x方向の両端部においてz軸の正方向に立ち上がっている。第2バスバ27は、下アームスイッチに対応する半導体スイッチング素子24Un,24Vn,24Wnの上面から、P端子12に隣接するN端子13に至るまでの領域に延在している。第2バスバ27は、回路基板17を平面視する方向に見たときに、各レグに含まれる複数の半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnを覆っている。
【0017】
図11~13は、半導体モジュール10から、さらに第2バスバ27を取り除いた状態を示す。第2バスバ27の直下には、第1バスバ26U,26V,26Wが配置されている。回路基板17を平面視する方向に見たときに、第1バスバ26U,26V,26Wはその大部分が第2バスバ27と重なっている。第1バスバ26U,26V,26Wは、第1バスバ26U,26V,26Wは、y軸方向に延在するとともにy軸の正方向の端部においてz軸の正方向に立ち上がった形状を有している。図8に示すように、立ち上がった端部以外の部分において、第1バスバ26U,26V,26Wは、第2バスバ27に覆われている。
【0018】
図5~7等に示すように、半導体モジュール10は、下面側(z軸の負方向側)から順に積層された第1放熱基板21p,21n、絶縁基板18、第2放熱基板22p,22Un,22Vn,22Vnをモールド11内に備えている。第1放熱基板21p,21nおよび第2放熱基板22p,22Un,22Vn,22Vnは、導電性の金属板であり、より具体的には、例えば、銅等を材料とする平板である。
【0019】
各半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnは、p型のコレクタ電極側が下面側となる向きで配置されている。第2放熱基板22pの上面には、はんだ層23Up,23Vp,23Wpを介して、半導体スイッチング素子24Up,24Vp,24Wpが接合されている。第2放熱基板22Un,22Vn,22Vnの上面には、それぞれ、はんだ層23Un,23Vn,23Wnを介して、半導体スイッチング素子24Un,24Vn,24Wnが接合されている。第2放熱基板22pの上面には、そのy軸の正方向の端部において、はんだ層33を介して、P端子12が接合されている。
【0020】
半導体スイッチング素子24Up,24Vp,24Wpの上面には、はんだ層25Up,25Vp,25Wpを介して、第1バスバ26U,26V,26Wが接合されている。図11等に示すように、第1バスバ26U,26V,26Wには、はんだ孔部26Uh,26Vh,26Whが設けられている。図11に示す状態で、上方からはんだ孔部26Uh,26Vh,26Whにはんだを流し入れることにより、はんだ層25Up,25Vp,25Wpを容易に形成することができ、半導体スイッチング素子24Up,24Vp,24Wpのコレクタ電極に対して第1バスバ26U,26V,26Wを正確に配置して接合できる。はんだ孔部26Uh,26Vh,26Whは、レーザ溶接に利用することもできる。
【0021】
第1バスバ26U,26V,26Wは、y軸の負方向の端部において、はんだ層31U等を介して、それぞれ、第2放熱基板22Un,22Vn,22Vnの上面に接合されている。第2放熱基板22Un,22Vn,22Vnの上面には、はんだ層32U等を介して、それぞれ、U端子14U、V端子14V、W端子14Wが接合されている。第2放熱基板22Un,22Vn,22Vnの上面には、それぞれ、y軸の正方向から負方向に向かって順に、第1バスバ26U,26V,26W、半導体スイッチング素子24Un,24Vn,24Wn、U端子14U、V端子14V、W端子14Wが接合されている。
【0022】
第1バスバ26U,26V,26Wは、それぞれ、半導体スイッチング素子24Up,24Vp,24Wpのエミッタ電極側となる上面と、半導体スイッチング素子24Un,24Vn,24Wnのコレクタ電極側となる下面と接合する第2放熱基板22Un,22Vn,22Vnの上面とを電気的に接続している。第1バスバ26U,26V,26Wによって、各レグに含まれる1対の半導体スイッチング素子24Upと24Un,24Vpと24Vn,24Wpと24Wnとは、互いに直列接続されている。第1バスバ26U,26V,26Wは、Oバスバである。
【0023】
図5~7等に示すように、第1バスバ26U,26V,26Wにおける各半導体スイッチング素子24Up,24Vp,24Wpとの接合部分の上方に、第2バスバ27の非接合部27pが配置されている。半導体スイッチング素子24Un,24Vn,24Wnの上面には、はんだ層25Un,25Vn,25Wnを介して、第2バスバ27の接合部27nが接合されている。第2バスバ27は、図2に示すインバータ回路の各レグの低電位側に接続されたNバスバ(低電位バスバ)であり、グラウンド接続されている。
【0024】
図8等に示すように、接合部27nには、はんだ孔部27Uh,27Vh,27Whが設けられている。図8に示す状態で、上方からはんだ孔部27Uh,27Vh,27Whにはんだを流し入れることにより、はんだ層25Un,25Vn,25Wnを容易に形成することができ、半導体スイッチング素子24Un,24Vn,24Wnのコレクタ電極に対して第2バスバ27を正確に配置して接合できる。はんだ孔部27Uh,27Vh,27Whは、レーザ溶接に利用することもできる。
【0025】
図14は、半導体モジュール10の断面を模式的に示す図である。図14における参照番号は、図1~13における参照番号と数字の部分において同じ構成を一括して示す。半導体モジュール10は、図14に示すように、モールド11内において、同一レグを構成する上アーム側の半導体スイッチング素子24pと、下アーム側の半導体スイッチング素子24nとが回路基板17の平面方向に配置されており、第1バスバ26によって互いに直列接続されている。上アーム側の半導体スイッチング素子24pのコレクタ電極側はP端子12と電気的に接続されており、下アーム側の半導体スイッチング素子24nは、第2バスバ27を介して、N端子13に電気的に接続されている。第2バスバ27は、第1バスバ26と回路基板17との間に配置されており、半導体スイッチング素子24nからN端子13までの間に配置された、さらに下方の構成を覆うように面状に延在している。例えば、第1バスバ26と第2バスバ27とは、回路基板17を平面視する方向に見たときに、大部分が互いに重なっている。
【0026】
図14に矢印で示すようにP端子12から、第2放熱基板22p、半導体スイッチング素子24p、第1バスバ26,第2放熱板22n、半導体スイッチング素子24n、第2バスバ27,N端子13の経路で電流が流れると、第1バスバ26に流れる電流の方向と、第2バスバ27に流れる電流の方向は、対向する。より具体的には、第1バスバ26Uには、図14および図15(a)に矢印で示すように略y軸の負方向に電流が流れる。第2バスバ27には、図14および図15(b)に矢印で示すように略y軸の正方向に電流が流れる。第2バスバ27が第1バスバ26を覆うようにz軸方向に離間して略平行に配置され、互いに逆向きの電流が流れるように構成されているため、第1バスバ26を流れる電流によって生じる磁界と、第2バスバ27を流れる電流によって生じる磁界が互いに打ち消される。このため、第1バスバ26を流れる電流と、第2バスバ27を流れる電流とが急峻に変化しても、重なり合った箇所においては電流変化に起因する磁界変化が抑制される。その結果、半導体モジュール10内での電流や電位の変化により回路基板17が誤動作することを抑制できる。
【0027】
また、半導体モジュール10では、回路基板17と、インバータ回路を構成する第1バスバ26および各半導体スイッチング素子24p,24n等との間に第2バスバ27が配置されて、第2バスバ27により回路基板17とインバータ回路とが隔離されている。このため、第2バスバ27が電磁シールドとして機能し、回路基板17における電流変化によって生じる磁界と、インバータ回路における電流変化によって生じる磁界とが互いに影響し合うことを抑制できる。その結果、インバータ回路において生じる磁界によって回路基板17が誤作動することを抑制できる。
【0028】
また、半導体モジュール10では、第2バスバ27はグラウンド接続されている。グラウンド接続された第2バスバ27により回路基板17とインバータ回路とが隔離されているため、第2バスバ27が静電シールドとして機能し、回路基板17における電圧変化によって生じる静電ノイズと、インバータ回路における電圧変化によって生じる静電ノイズとが互いに影響し合うことを抑制できる。特に、第2バスバ27は、回路基板17を平面視する方向に見たときに、各レグに含まれる複数の半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnを覆っているため、静電シールド、電磁シールドとして、静電ノイズおよび磁気ノイズをより効果的に抑制できる。
【0029】
上記のとおり、半導体モジュール10により具現化される構成によれば、インバータ回路によって生じる磁気ノイズや静電ノイズが回路基板17に影響することを効果的に抑制できる。RC-IGBTのようなパワー半導体素子を半導体スイッチング素子として用いるインバータ回路では、電流変化および電圧変化が大きくなるため、モールド内に一体に封止された回路基板への磁気ノイズや静電ノイズが大きくなる。半導体モジュール10によれば、パワー半導体素子を半導体スイッチング素子として用いるインバータ回路を回路基板17と共にモールド11内に封止しても、インバータ回路により生じる磁気ノイズや静電ノイズを効果的に抑制して回路基板17の誤作動を抑制できる。
【0030】
(変形例)
回路基板17には、無線通信回路が備えられていてもよい。無線通信回路を備えることにより、図16に示すように、半導体モジュール10の外部に存在する外部基板40と通信することができる。
【0031】
また、図17に示すように、半導体モジュール10は、モールド11から露出する信号端子41,42を備えていてもよい。信号端子41,42は、回路基板17と電気的に接続しており、信号端子41,42を半導体モジュール10の外部に存在する外部基板40とを接続することにより、回路基板17と外部基板40との間における信号の送受信が可能となる。信号端子41,42は、第2バスバ27が配置されている側と逆方向に突出していることが好ましい。なお、信号端子41,42は、図17に示すように、はんだ付け等により、直接、回路基板17に接続されていてもよいが、これに限定されない。例えば、モールド11内で、信号端子41,42と回路基板17が離間し、ボンディングワイヤ等を介して、間接的に、信号端子41,42と回路基板17とが接続されていてもよい。
【0032】
図18に示すように、モールド11内の回路基板17に対して回路基板17の厚み方向に離れた位置に、モールド11よりも熱収縮率が低い低収縮層50,51が備えられていてもよい。樹脂製のモールド11や金属製の第1放熱基板21等の熱収縮率が比較的高いことにより絶縁基板18が反って割れることを、低収縮層50,51により抑制できる。
【0033】
低収縮層50,51は、例えば、空気層であってもよい。この場合、モールド成形時に金型で空気層を作ることにより、低収縮層50,51を形成できる。低収縮層50は、回路基板17の上面に接合された駆動IC60よりも上方に設けられており、低収縮層51は、回路基板17の下面に接合された抵抗の下方かつ第2バスバ27の上方に設けられている。低収縮層は、回路基板17の上方または下方のいずれか一方にのみ設けられていてもよいし、上方および下方に設けられていてもよい。
【0034】
なお、上記の実施形態においては、インバータ回路を構成する複数の半導体スイッチング素子がnチャネル型RC-IGBTである場合を例示して説明したが、これに限定されない。複数の半導体スイッチング素子は、例えば、パワーMOSFETやIGBT等のパワー半導体素子であってもよく、パワーMOSFETやIGBTがダイオードと逆並列に接続されて各アームが構成されていてもよい。また、複数の半導体スイッチング素子は、nチャネル型であってもpチャネル型であってもよい。また、インバータ回路を構成する半導体スイッチング素子の個数は6個に限定されない。
【0035】
また、上記の実施形態においては、第2バスバ27が各レグの低電位側に接続されたNバスバである場合を例示して説明したが、各レグの高電位側に接続されたPバスバであってもよい。P端子12とN端子13とが入れ替えて、各半導体スイッチング素子もこれに対応して接続の方向を逆転させることによって、第2バスバ27がPバスバとして機能する構成を実現できる。
【0036】
上記の各実施形態によれば、下記の効果を得ることができる。
【0037】
半導体モジュール10は、回路基板17と、複数の半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnと、第1バスバ26U,26V,26Wと、第2バスバ27と、これら各構成を一体に封止するモールド11とを備える。複数の半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnは、回路基板17に接続されたインバータ回路に適用され、回路基板17の平面方向に配置されている。第1バスバ26U,26V,26Wは、インバータ回路の各レグに含まれる複数の半導体スイッチング素子(例えば、半導体スイッチング素子24Up,24Un)を互いに直列接続する。
【0038】
第2バスバ27は、レグの低電位側に接続され、第1バスバ26U,26V,26Wと回路基板17との間に配置されている。第1バスバ26U,26V,26Wと第2バスバ27は、回路基板17を平面視する方向に見たときに、少なくとも一部が互いに重なっており、第1バスバ26U,26V,26Wに流れる電流の方向は、第2バスバ27に流れる電流の方向と対向する。このため、第1バスバ26U,26V,26Wを流れる電流と、第2バスバ27を流れる電流とが急峻に変化しても、重なり合った箇所においては電流変化に起因する磁界変化が抑制される。このため、インバータ回路の切換えにより各バスバの電流や電位が急峻に変化した場合に、磁気ノイズが発生すること抑制できる。また、第2バスバ27が電磁シールドとして機能し、インバータ回路における電流変化により生じる磁界が回路基板17に影響することを抑制できる。その結果、半導体モジュール10内での電流や電位の変化により回路基板17が誤動作することを抑制できる。
【0039】
第2バスバ27は、各レグの低電位側に接続されたNバスバであり、グラウンド接続されている。このため、第2バスバ27が静電シールドとして機能し、回路基板17における電圧変化によって生じる静電ノイズにより回路基板17が誤作動することを抑制できる。
【0040】
回路基板17は、半導体モジュール10の外部と通信するための無線通信回路を備えていてもよい。また、半導体モジュール10は、モールド11から露出するとともに回路基板17と電気的に接続する信号端子41,42を備えていてもよい。
【0041】
第2バスバ27は、回路基板17を平面視する方向に見たときに、各レグに含まれる複数の半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnを覆っている。このため、静電シールド、電磁シールドとして機能する第2バスバ27が、静電ノイズおよび磁気ノイズをより効果的に抑制し、回路基板17の誤作動をより効果的に抑制できる。
【0042】
回路基板17は、複数の半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnのボンディングワイヤを通過させる通過孔17Up,17Un,17Vp,17Vn,17Wp,17Wnを備えていてもよい。同様に、第2バスバ27は、複数の半導体スイッチング素子24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wnのボンディングワイヤを通過させる通過孔27Up,27Un,27Vp,27Vn,27Wp,27Wnを備えていてもよい。
【0043】
半導体モジュール10は、モールド11内の回路基板17に対して回路基板17の厚み方向に離れた位置に、モールド11よりも熱収縮率が低い低収縮層50,51を備えていてもよい。低収縮層50,51により熱収縮を緩和でき、半導体モジュール10が破損することを抑制できる。
【符号の説明】
【0044】
10…半導体モジュール、11…モールド、17…回路基板、24Up,24Un,24Vp,24Vn,24Wp,24Wn…半導体スイッチング素子、26U,26V,26W…第1バスバ、27…第2バスバ
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